(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561583
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】油面レベル上限検出構造
(51)【国際特許分類】
G01F 23/62 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
G01F23/62 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-107201(P2015-107201)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-223785(P2016-223785A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 眞
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 秀次
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 昴
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−153920(JP,A)
【文献】
特開2005−214032(JP,A)
【文献】
特開昭51−059130(JP,A)
【文献】
実開平04−029838(JP,U)
【文献】
米国特許第05872509(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/56−23/62
F01M 11/00−11/12
F01M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパンの油面レベルに連動して摺動するフロートを使用して前記油面レベルが上限レベルに達しているか否かを検出する油面レベル上限検出構造であって、
前記オイルパンに設置されると共に車両のエンジンの駆動中に前記エンジンを循環して前記オイルパンに戻されるオイルを貯留して前記フロートを油没させるバスタブを備え、
前記バスタブは、前記オイルパンの内壁面と、水平に形成される底面部と、前記底面部に対して垂直に形成される側壁部とから構成され、
前記内壁面と前記側壁部との間には、重力方向上側に向かって拡がるように傾斜した傾斜部が形成されることを特徴とする油面レベル上限検出構造。
【請求項2】
前記バスタブは、前記上限レベルより低い位置に前記バスタブに貯留されたオイルを前記オイルパンに排出する排出孔を有している請求項1に記載の油面レベル上限検出構造。
【請求項3】
前記排出孔は、前記バスタブを水平に貫通している請求項2に記載の油面レベル上限検出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパンの油面レベルに連動して摺動するフロートを使用して油面レベルが上限レベルに達しているか否かを検出する油面レベル上限検出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ディーゼル車は、エンジンから排出される排気に含まれている粒子状物質(PM)を捕集して排気を浄化するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を搭載している。
【0003】
ディーゼルパティキュレートフィルタに捕集されている粒子状物質の量が増加するに連れて粒子状物質の捕集機能が低下するため、ディーゼル車においては、ディーゼルパティキュレートフィルタに捕集されている粒子状物質の量が閾値を超えている時にポスト噴射を実施して酸化触媒に未燃燃料を供給すると共に排気温度を意図的に上昇させることにより、ディーゼルパティキュレートフィルタに捕集されている粒子状物質を燃焼させている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
このとき、未燃燃料がシリンダの壁面を通じてエンジンオイルに混入してエンジンオイルが希釈されるため、ポスト噴射の実施に伴ってオイルパンの油面レベルが徐々に上昇していくことになる。オイルパンの油面レベルが過度に上昇すると、大量のオイルがブローバイガスと共に吸気に還流されるため、エンジンの吹き上がりが悪くなったり液圧縮を原因とするコネクティングロッドの座屈等が生じたりして最悪の場合はエンジンが破損する虞もある。
【0005】
このような事態を防止するため、従来から、オイルパンの油面レベルを検出している。油面レベルを検出する油面レベル検出センサとしては、熱線や超音波を利用するものが乗用車を中心に商品化されているものの(例えば、特許文献2を参照)、何れも高価であったり高度な電子制御が必要であったり、また取り付け上の制約がある等の理由から、広く普及しているとは言えない実情がある。熱線や超音波を利用する油面レベル検出センサの他にも、油面レベルに連動して摺動するフロートでスイッチのオン/オフを切り替えることにより、高度な電子制御を必要とせずに油面レベルが規定レベルに達しているか否かを検出することができる安価で取り付けも簡単な油面レベル検出センサが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−116817号公報
【特許文献2】特開2014−227942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フロートを利用する油面レベル検出センサを、油面レベルが上限レベルに達しているか否かを検出するために使用しようとしても、オイルパンの油面レベルが低下するエンジンの駆動中等にフロートを充分に油没させることができず、エンジンの振動等でフロートが暴れてスイッチを破壊する虞があるため、フロートを利用する油面レベル検出センサを、油面レベルが上限レベルに達しているか否かを検出するために使用することができないという課題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、エンジンの振動等に伴うスイッチの破壊を防止しながら、フロートを利用する油面レベル検出センサを、油面レベルが上限レベルに達しているか否かを検出するために使用することができる油面レベル上限検出構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、オイルパンの油面レベルに連動して摺動するフロートを使用して前記油面レベルが上限レベルに達しているか否かを検出する油面レベル上限検出構造であって、前記オイルパンに設置されると共に車両のエンジンの駆動中に前記エンジンを循環して前記オイルパンに戻されるオイルを貯留して前記フロートを油没させるバスタブを備えている油面レベル上限検出構造である。
【0010】
前記バスタブは、前記上限レベルより低い位置に前記バスタブに貯留されたオイルを前記オイルパンに排出する排出孔を有していることが望ましい。
【0011】
前記排出孔は、前記バスタブを水平に貫通していることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンの振動等に伴うスイッチの破壊を防止しながら、フロートを利用する油面レベル検出センサを、油面レベルが上限レベルに達しているか否かを検出するために使用することができる油面レベル上限検出構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る油面レベル上限検出構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示す通り、本発明の実施の形態に係る油面レベル上限検出構造100は、オイルパン101の油面レベルXに連動して摺動するフロート102を使用して油面レベルXが上限レベルUに達しているか否かを検出するための構造である。
【0016】
この油面レベル上限検出構造100は、オイルパン101に設置されると共に車両のエンジン(不図示)の駆動中にエンジンを循環してオイルパン101に戻されるオイル103を貯留してフロート102を油没させるバスタブ104を備えている。
【0017】
オイルパン101は、エンジンの重力方向下方に設置されており、エンジンを循環する全てのオイル103を貯留することができる容積を有している。通常は、エンジンを循環している全てのオイル103がオイルパン101に戻されるエンジンの停止時にオイルパン101の油面レベルXが下限レベルLと上限レベルUとの間に位置するようにオイル103の総量が調整されている。
【0018】
このオイルパン101は、ピストン(不図示)の焼き付き等を防止すべくシリンダ(不図示)の壁面に供給されたオイル103をオイルパン101に戻すことができるように燃焼室と連通されているため、ポスト噴射を実施すると、未燃燃料がシリンダの壁面を通じて燃焼室からオイルパン101に流入し、オイルパン101の油面レベルXが上昇していくことになる。
【0019】
フロート102は、
図2に示す通り、オイルパン101の油面レベルXに連動して摺動し、オイルパン101の油面レベルXが上限レベルUに達した時に、フロート102と共にオイルパン101の油面レベルXに連動して摺動する磁石105によってスイッチ106をオンにするための部品である。このフロート102と磁石105とスイッチ106とによって油面レベル検出センサ107が構成されている。
【0020】
バスタブ104は、エンジンの駆動中にエンジンを循環してオイルパン101に戻されるオイル103が流入する位置に設置されており、
図3に示す通り、オイルパン101の油面レベルXが低下するエンジンの駆動中にフロート102を充分に油没させることができる量のオイル103を貯留することが可能な容積を有している。但し、バスタブ104にオイル103が貯留される分だけ本来よりもオイル103の量を多くする必要があり、バスタブ104の容積を大きくし過ぎると、オイル103の総量が大幅に増加するので留意する必要がある。
【0021】
また、バスタブ104は、上限レベルUより低い位置にバスタブ104に貯留されたオイル103をオイルパン101に排出する排出孔108を有しており、オイルパン101の油面レベルXが上限レベルUに位置するときにバスタブ104の内外で油面レベルXの差を無くし、オイルパン101の油面レベルXが上限レベルUに達しているか否かを正確に検出することができるようになっている。
【0022】
排出孔108は、エンジンの駆動中においては、排出孔108を通じてバスタブ104からオイルパン101に排出されるオイル103の量がバスタブ104に流入するオイル103の量よりも少なくなり、エンジンの停止中においては、速やかに、例えば、エンジンが停止されて10分程度で排出孔108よりも重力方向上方に位置するオイル103を排出することができる大きさに形成されていることが望ましい。
【0023】
これにより、エンジンの駆動中はフロート102を充分に油没させることができると共にエンジンの停止時間が短くても(例えば、20分程度であっても)次回のエンジンの始動時にオイルパン101の油面レベルXが上限レベルUに達しているか否かを検出することができるようになる。
【0024】
なお、バスタブ104は、例えば、
図4に示すように、オイルパン101の内壁面109と、水平に形成される底面部110と、底面部110に対して垂直に形成される側壁部111とから構成されており、重力方向上側に形成された開口部112からオイル103を流入させて貯留する。
【0025】
具体的には、バスタブ104の側壁部111は、オイルパン101の内壁面109に対して垂直に形成された第一側壁部111aと、内壁面109に対して平行に形成された第二側壁部111bと、第一側壁部111aから第二側壁部111bに連続して形成された第三側壁部111cとを有する。
【0026】
また、第一側壁部111aと内壁面109との間には、重力方向上側に向かって拡がるように傾斜した傾斜部113が形成されており、これにより内壁面109を伝って落ちるオイル103は、内壁面109における開口部112の幅(a)よりも広い幅(b)で開口部112に導かれる。
【0027】
また、排出孔108は、オイルパン101の油面レベルXが上限レベルUに達しているか否かを正確に検出できるように、例えば、第一側壁部111aを水平に貫通して形成されることが好ましい。
【0028】
本発明の実施の形態に係る油面レベル上限検出構造の作用及び効果を説明する。
【0029】
本発明の実施の形態に係る油面レベル上限検出構造100においては、エンジンの駆動中は、エンジンを循環してオイルパン101に戻されるオイル103がバスタブ104に貯留されて、油量レベルセンサ107のフロート102が油没される。これにより、バスタブ104に貯留されたオイル103によりエンジンからフロート102に伝わる振動が減衰抑制され、振動によるスイッチ106の破壊を防止することが可能になる。
【0030】
一方、エンジンの停止されたときは、速やかに、バスタブ104の排出孔108から排出孔108よりも重力方向上方に位置するオイル103が排出される。これにより、次回のエンジンの始動時にオイルパン101の油面レベルXが上限レベルUに達しているか否かを正確に検出することができる。
【0031】
なお、ここでいうエンジンの始動時とは、エンジンが停止してからオイルパン101の油面レベルが安定する時間(例えば、20分以上)が経過した場合におけるキーオン時である。
【0032】
エンジンの始動時にオイルパン101の油面レベルXが上限レベルUに達しているときは、油面レベル検出センサ107のスイッチ106がオンになる。スイッチ106の信号は、油面レベル検出センサ107のハーネス114を通じて電子制御ユニット(ECU)115に送信され、運転者に対して警告を発する。
【0033】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 油面レベル上限検出構造
101 オイルパン
102 フロート
103 オイル
104 バスタブ
107 油面レベル検出センサ