特許第6561586号(P6561586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561586
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ボールねじ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20190808BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F16H25/22 K
   F16H25/24 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-108780(P2015-108780)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-223493(P2016-223493A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴史
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−219249(JP,A)
【文献】 特開平05−138481(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0165759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸と、前記ねじ軸が貫通するとともに互いに当接する二つのナットと、前記二つのナット相互の当接側に設けられた定位置予圧付与機構とを備え、
前記定位置予圧付与機構は、前記二つのナットのうち、一方のナットに設けられて他方のナット側に向けて軸方向に延びる凸部と、他方のナットに設けられて前記一方のナットの凸部を収容可能な凹部と、前記凸部の外周面に形成された4箇所の押圧面と、前記他方のナットの外周面に前記凸部の押圧面とそれぞれ対向する位置に貫通形成された4箇所の雌ねじと、前記4箇所の雌ねじにそれぞれ螺合する4つの押しねじとを有し、
前記凸部は、周方向に離隔する複数の張り出し部から形成され、前記4箇所の押圧面は、前記複数の張り出し部の外面のうち周方向を向く面から形成されており、
前記4つの押しねじを締め込んで、前記凸部に形成された4箇所の押圧面を押圧して前記二つのナット相互を軸回りで互いの位相をずらす力により予圧を与えるとともにその予圧を与えた位置を保持することを特徴とするボールねじ。
【請求項2】
前記4箇所の押圧面は、前記ねじ軸中心を対称点として、前記凸部上の点対称な位置に形成された4つの平面から構成され、
前記4箇所の雌ねじに螺合された4つの押しねじは、点対称な位置に配置された二本の押しねじが予圧付与用の押しねじの組となり、点対称な位置に配置された他の二本の押しねじが予圧抜き用の押しねじの組となっている請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
前記定位置予圧付与機構で付与された予圧状態を監視する予圧付与状態監視機構を有する請求項1または2に記載のボールねじ。
【請求項4】
前記予圧付与状態監視機構は、前記二つのナットが対向する面相互間に作用する軸方向の力を検出可能な歪みセンサと、該歪みセンサで検出された前記軸方向の力の検出値を取得するコントローラとを有し、
前記コントローラは、経時変化による予圧抜け状態を随時に監視し、前記取得した軸方向の力の検出値に基づき予圧抜け状態を判定する請求項に記載のボールねじ。
【請求項5】
前記歪みセンサは、前記二つのナットが対向する面の複数個所に形成された凹部にそれぞれ収容されている請求項に記載のボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじに係り、特に、ダブルナット方式のボールねじの予圧技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルナット方式のボールねじとして、例えば特許文献1に記載の技術が開示されている。同文献記載のボールねじは、ねじ軸と、ねじ軸が貫通する二つのナットとを有する。二つのナット同士の間には、間座が介装され定位置予圧により予圧が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−204141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のボールねじは、二つのナット相互の対向面間に間座を介装し、この間座の厚さを変えることにより予圧を付与するので、間座の厚さを変える予圧調整では、所望の予圧を得るまでの調整時間とコストが比較的に多く必要であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、間座を使用することなく予圧を調整可能なボールねじを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るボールねじは、ねじ軸と、前記ねじ軸が貫通するとともに互いに当接する二つのナットと、前記二つのナット相互の当接側に設けられた定位置予圧付与機構とを備え、前記定位置予圧付与機構は、前記二つのナットのうち、一方のナットに設けられて他方のナット側に向けて軸方向に延びる凸部と、他方のナットに設けられて前記一方のナットの凸部を収容可能な凹部と、前記凸部の外周面に形成された4箇所の押圧面と、前記他方のナットの外周面に前記凸部の押圧面とそれぞれ対向する位置に貫通形成された4箇所の雌ねじと、前記4箇所の雌ねじにそれぞれ螺合する4つの押しねじとを有し、前記凸部は、周方向に離隔する複数の張り出し部から形成され、前記4箇所の押圧面は、前記複数の張り出し部の外面のうち周方向を向く面から形成されており、前記4つの押しねじを締め込んで、前記凸部に形成された4箇所の押圧面を押圧して前記二つのナット相互を軸回りで互いの位相をずらす力により予圧を与えるとともにその予圧を与えた位置を保持することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るボールねじによれば、4箇所の押圧面に4つの押しねじを締め込んで、二つのナット相互を軸回りで互いの位相をずらす力により予圧を与えることができるので、間座を使用することなく予圧を与えることができる。
ここで、本発明の一態様に係るボールねじにおいて、前記4箇所の押圧面は、前記ねじ軸中心を対称点として、前記凸部上の点対称な位置に形成された4つの平面から構成され、前記4箇所の雌ねじに螺合された4つの押しねじは、点対称な位置に配置された二本の押しねじが予圧付与用の押しねじの組となり、点対称な位置に配置された他の二本の押しねじが予圧抜き用の押しねじの組となっていることは好ましい。
【0008】
このような構成であれば、4箇所の押圧面に対応する押しねじのうち、点対称な位置に配置された二本の予圧付与用の押しねじと、点対称な位置に配置された二本の予圧抜き用の押しねじとを有するので、点対称な位置に設けた二組の押しねじにより、ナット相互をこじらせることなく、二つのナット相互を軸回りで互いの位相をずらす力により予圧を付与するとともにその予圧を与えた位置を保持する上で好適である。
【0010】
また、本発明の一態様に係るボールねじにおいて、前記定位置予圧付与機構で付与された予圧状態を監視する予圧付与状態監視機構を有することは好ましい。さらに、前記予圧付与状態監視機構は、前記二つのナットが対向する面相互間に作用する軸方向の力を検出可能な歪みセンサと、該歪みセンサで検出された前記軸方向の力の検出値を取得するコントローラとを有し、前記コントローラは、経時変化による予圧抜け状態を随時に監視し、前記取得した軸方向の力の検出値に基づき予圧抜け状態を判定することは好ましい。また、前記歪みセンサは、前記二つのナットが対向する面の複数個所に形成された凹部にそれぞれ収容されていることは好ましい。
このような構成であれば、予圧付与状態監視機構により、定位置予圧付与機構で付与された予圧状態を監視することができるので、経時変化による予圧抜け状態を随時に監視し、監視した予圧抜け状態に基づき、再予圧を付与すべきメンテナンス時期や、ボールねじの整備や交換時期を容易に判断する上で好適である。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明によれば、間座を使用することなく、予圧を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様に係るボールねじの第一実施形態を示す平面図であり、同図では、一部を破断して図示している。
図2図1のZ−Z断面図である。
図3図1のY−Y断面でのナットの端面図である。
図4】本発明の一態様に係るボールねじを構成する第一ナットの一実施形態の説明図であり、同図(a)は平面図、(b)は(a)の右側面図である。
図5】本発明の一態様に係るボールねじを構成する第二ナットの一実施形態の説明図であり、同図(a)は平面図、(b)は(a)でのX−X断面図である。
図6】本発明の一態様に係るボールねじを構成する第一ナットの他の実施形態の説明図であり、同図(a)は平面図、(b)は(a)の右側面図である。
図7】本発明の一態様に係るボールねじの第二実施形態を示す平面図であり、同図では、一部を破断して図示している。
図8】本発明の一態様に係るボールねじの第三実施形態の説明図であり、同図(a)は一部を破断して示す平面図、(b)は(a)でのY−Y断面図、(c)は予圧付与状態監視機構を構成する歪みセンサの模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一態様に係るボールねじの実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0014】
第一実施形態のボールねじは、ダブルナット方式のボールねじであって、図1に示すように、ねじ軸10と、ねじ軸10が貫通する二つのナット20A、20Bとを有する。二つのナット20A、20Bは、第一ナット20Aが円環状のフランジ25を有し、第二ナット20Bがフランジを有しない円筒状である。
図2に第一ナット20Aの循環回路部分の縦断面を示す。なお、循環回路の構成は、上記二つのナット20A、20Bともに同様なので、第二ナット20Bについては、循環回路の図示および説明を省略する。
【0015】
同図に示すように、ねじ軸10の外周面には、螺旋状のねじ溝11が形成され、第一ナット20Aの内周面には、ねじ軸10のねじ溝11に対向する螺旋状のねじ溝21が形成されている。各ねじ溝11、21は、ゴシックアーチ形状に形成されている。これらねじ溝11、21により螺旋状の転動路40が設けられ、その転動路40に複数のボール30が転動自在に介装されている。本実施形態では、第一ナット20Aには、転動路40が二条構成されている。
【0016】
各転動路40には、ボール循環通路を有するリターンチューブ50が設けられている。リターンチューブ50は、ナット外周面に形成された平面部に固定金具60で固定されている。これにより、転動する複数のボール30が転動路40の一方の端部まで移動した後にリターンチューブ50に掬い上げられ、リターンチューブ50内のボール循環通路を通って反対側の端部に移動し、他方の端部から再び転動路40に戻る循環回路が構成されている。
【0017】
ここで、このボールねじは、図3に要部の断面を示すように、二つのナット20A、20B相互の当接側の部分に定位置予圧付与機構1を備えている。本実施形態では、定位置予圧付与機構1として、一方の第一ナット20Aには、軸方向に延びる凸部2を設け、他方の第二ナット20Bには、この凸部2を収容可能な凹部5を設けている。
詳しくは、一方の第一ナット20Aは、図4に示すように、上記凸部2が、ねじ軸10と同軸の円筒状に形成され、他方のナット側の端面20tと一体に設けられている。円筒状の凸部2の外周面には、同図(b)に示すように、凸部2の外周面上の点対称な位置に、周方向に離隔する切欠きによって4つの平面が形成され、各平面を押圧面3A、3B、4A、4Bとして設けている。各押圧面3A、3B、4A、4Bは、ねじ軸1の軸線と並行であり、また、第一ナット20Aの外周面20gに形成された平面部(リターンチューブ50の装着面)に直交する平面とされている。
【0018】
他方の第二ナット20Bは、図5および図3に示すように、第一ナット20Aの凸部2を収容可能な凹部5が、第一ナット20Aに当接する側の端面20fに設けられている。凹部5は、ねじ軸10と同軸の円筒状に形成され、凸部2の外周面と円筒状の凹部5の内周面とは緩い嵌め合いになっている。
さらに、第二ナット20Bの外周面20hには、図5(b)に示すように、上記凸部2の各押圧面3A、3B、4A、4Bと対向する位置(つまり、点対称な位置)に雌ねじ6A、6B、7A、7Bを4箇所に設けている。そして、図3に示すように、これら4箇所の雌ねじ6A、6B、7A、7Bに螺合する押しねじ8A、8B、9A、9Bがそれぞれ装着される。押圧面3A、3B、4A、4Bに対して押圧力を付与していない状態において、各雌ねじ6A、6B、7A、7Bの軸線は、対向する各押圧面3A、3B、4A、4Bに直交するように設けられている。
【0019】
ここで、図3において、4箇所の押しねじ8A、8B、9A、9Bのうち、点対称な位置に配置された二本の押しねじ8A、8Bが予圧付与用の押しねじの組となり、点対称な位置に配置された他の二本の押しねじ9A、9Bが予圧抜き用の押しねじの組となっている。これにより、4箇所の押しねじ8A、8B、9A、9Bを適宜に締め込んで凸部2に形成された押圧面3A、3B、4A、4Bを押圧して二つのナット20A、20B相互を軸回りで互いの位相をずらす力により予圧付与可能な定位置予圧付与機構1が構成されている。
【0020】
次に、本実施形態のボールねじの作用効果について説明する。
本実施形態のボールねじを組み付ける際は、二つのナット20A、20B相互の対向する面20tと20fとを当接させる。このとき、第一ナット20Aの押圧面3A、3B、4A、4Bと対向する位置に、第二ナット20Bの4箇所の雌ねじ6A、6B、7A、7Bが位置するように、第一ナット20Aの凸部2に、第二ナット20Bの凹部5を嵌合させる。第二ナット20Bの4箇所の雌ねじ6A、6B、7A、7Bには、上記4つの押しねじ8A、8B、9A、9Bを上記嵌合前または嵌合後に螺合する。
【0021】
次いで、これら押しねじ8A、8B、9A、9Bを4箇所の雌ねじ6A、6B、7A、7Bに締め込んで、凸部2に形成された押圧面3A、3B、4A、4Bを押圧する。
このとき、二つのナット20A、20Bのリードの方向は、二本の押しねじ8A、8Bが締め込まれるときの回転方向が予圧を付与する方向に設定されているため、二本の押しねじ8A、8Bが予圧付与用の押しねじとして機能し、他の二本の押しねじ9A、9Bが予圧抜き用の押しねじとして機能する。
【0022】
これにより、これら4本の押しねじ8A、8B、9A、9Bを適宜に締め付けることにより、二つのナット20A、20B相互を軸回りで互いの位相をずらす力により予圧を与えるとともに、その予圧を与えた位置を保持することができる。よって、本実施形態のボールねじによれば、間座を使用することなく予圧を与えることができる。また、本実施形態のボールねじであれば、ナット全体の長さは、間座を有する通常のダブルナット方式のボールねじに比べて、同等またはそれ以下とすることができる。
【0023】
特に、本実施形態では、上記4箇所の押しねじ8A、8B、9A、9Bのうち、点対称な位置に配置された二本の予圧付与用の押しねじ8A、8Bと、点対称な位置に配置された他の二本の予圧抜き用の押しねじ9A、9Bとを有するので、点対称な位置に設けた二箇所の押しねじ8A、8Bと、押しねじ9A、9Bとにより、ナットをこじらせることなく、二つのナット20A、20B相互を軸回りで互いの位相をずらす力により予圧を付与することができるのである。
【0024】
なお、本発明に係るボールねじは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、第一ナット20Aの凸部2は、ねじ軸1と同軸の円筒状に形成され、その4箇所の押圧面3A、3B、4A、4Bは、円筒状の凸部2の外周面に形成された切欠きによる面から形成されている例で説明したが、これに限定されるものではない。
【0025】
例えば、図6に第一ナット20Aの他の実施形態を示すように、周方向に離隔する複数の張り出し部から複数の凸部2A、2Bを形成し、4箇所の押圧面は、複数の凸部(張り出し部)2A、2Bの外面のうち、周方向を向く平面3A、4Aおよび平面3B、4Bからそれぞれ形成することができる。
また、例えば上記第一実施形態のボールねじでは、二つのナット20A、20Bのうち、フランジ25を有する第一ナット20Aに凸部2を設け、他方の第二ナット20Bに、凸部2を収容可能な凹部5を設けた例で説明したが、これに限らず、例えば図7に第二実施形態のボールねじを示すように、二つのナット20A、20Bのうち、フランジを有しない第二ナット20Bに、押圧面3、4を有する凸部2を設け、フランジ25を有する他方の第一ナット20Aに、凸部2を収容可能な凹部5および押しねじ8、9の組が螺合する雌ねじ6、7を設ける構成としてもよい。
【0026】
また、例えば、図8に示す第三実施形態のように、上述した定位置予圧付与機構1に加え、更に、定位置予圧付与機構1で付与された予圧状態を監視する予圧付与状態監視機構70を設けることができる。なお、この第三実施形態のボールねじは、上記第一実施形態のボールねじに対し、更に、予圧付与状態監視機構70を設けた点のみ異なるので、他の説明については省略する。
【0027】
同図に示すように、予圧付与状態監視機構70は、二つのナット20A、20Bが対向する面20tと20f相互間に作用する軸方向の力を検出可能な歪みセンサ80を有する。この例では、同図(b)に示すように、歪みセンサ80は、第一ナット20Aの端面20tに、周方向の4箇所に等間隔で配置されている。各歪みセンサ80は、信号線を介してコントローラ90に接続される。なお、この例では、歪みセンサ80を周方向の4箇所に等配した例を示したが、これに限らず、1または複数の歪みセンサ80により予圧付与状態監視機構70を構成してもよい。また、第一ナット20Aの端面20tに限らず、第二ナット20Bの端面20fに配置してもよい。
【0028】
本実施形態では、第一ナット20Aの端面20tに、有底円筒状の凹部71が周方向の4箇所に等間隔で形成され、各凹部71の底面に雌ねじ73が軸方向に沿って形成されている。各凹部71内には、歪みセンサ80がそれぞれ収容される。各歪みセンサ80は、上記凹部71に嵌め込み可能な円筒状をなし、中心部には、雌ねじ73に固定するための締めねじ72を挿入可能な段付きの装着穴82が設けられている。歪みセンサ80としては、歪みゲージや、水晶圧電素子等を用いたロードセル(荷重計)を採用することができる。
【0029】
歪みセンサ80で取得された、二つのナット20A、20Bが対向する面20tと20f相互間に作用する軸方向の力の検出値は、信号線を介してコントローラ90に入力される。コントローラ90は、予め設定された予圧付与状態監視処理のプログラムを実行して、経時変化による予圧抜け状態を随時に監視し、取得した軸方向の力の検出値に基づき予圧抜け状態を判定可能に構成されている。なお、予圧状態の判定は、予め設定されている予圧荷重値との比較等により行うことができる。
【0030】
ボールねじの作動による経時変化により、例えばボール30または転動路40等が摩耗すると、定位置予圧付与機構1により当初に付与していた予圧が抜けた場合、二つのナット20A、20Bが対向する面20tと20f相互間に作用する軸方向の力が変化する。
これに対し、この第三実施形態のボールねじによれば、予圧付与状態監視機構70の各歪みセンサ80は、二つのナット20A、20Bが対向する面20tと20f相互間に作用する軸方向の力を検出できる。そして、コントローラ90は、経時変化による予圧抜け状態を随時に監視し、取得した軸方向の力の検出値に基づき、予圧抜け状態を判定することができる。
よって、この予圧付与状態監視機構70を備えた第三実施形態のボールねじによれば、経時変化による予圧抜け状態を随時に監視し、監視した予圧抜け状態に基づき、再予圧を付与すべきメンテナンス時期や、ボールねじの整備や交換時期を容易に判断することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 定位置予圧付与機構
2 凸部
3A、3B 押圧面(予圧付与用)
4A、4B 押圧面(予圧抜き用)
5 凹部
6A、6B 雌ねじ(予圧付与用)
7A、7B 雌ねじ(予圧抜き用)
8A、8B 押しねじ(予圧付与用)
9A、9B 押しねじ(予圧抜き用)
10 ねじ軸
11 (ねじ軸の)ねじ溝
20A 第一ナット
20B 第二ナット
21 (ナットの)ねじ溝
25 フランジ
30 ボール
40 転動路
50 リターンチューブ
60 固定金具
70 予圧付与状態監視機構
80 歪みセンサ
90 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8