(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。
【0012】
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の寸法や比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、各図面において同じ構成および作用効果については、同一符号を用いてその説明を省略する。
【0013】
以下、従来のヒータの構成を、
図1、
図2を参照して説明する。
【0014】
図1に例示するように、ヒータ1Aは、基板2と、一対の導体3と、抵抗発熱体4anと、を具備する。ここでnとは正の整数であり、抵抗発熱体4anが基板2上で配設される数量を表す。従来のヒータ1Aの基板2長手方向に、例えば31個の抵抗発熱体4a1〜4a31を形成する。
【0015】
図2に例示するようにヒータ1Aは、導体3a、3bの間に並設される複数の抵抗発熱体4anの斜設される角度θが、ヒータ1A長手方向において一様に形成されている。抵抗発熱体4anの斜設される角度θとは、並設される抵抗発熱体4anどうしがヒータ1A短手方向においてオーバーラップする対角どうしを結ぶ直線L1と、一方の対角が導体3に接続される端部どうしをヒータ1A長手方向において結ぶ直線L2との間の角度として定義する。
【0016】
また各抵抗発熱体4anの長さAnと幅Bn、抵抗発熱体4anが導体3a、3bと接続される角度θ4anも、基板2長手方向において一様に形成されている。角度θ4anは、抵抗発熱体4anと導体3とが接続される面に引かれる直線L3と、並設される抵抗発熱体4anどうしが基板2短手方向においてオーバーラップする対角の一方が、導体3に接続される端部どうしを基板2長手方向において結ぶ直線L2との間の角度として定義する。
【0017】
図1に例示するように、各抵抗発熱体4anが基板2長手方向において発熱する領域を、発熱領域Tnとし、ヒータ1Aが基板2長手方向において発熱する領域を発熱領域Tとすると、T=Tn×31となる。例えば、基板2中央の抵抗発熱体4a11〜4a21が形成される発熱領域T11〜T21を通紙部とし、基板2両端の抵抗発熱体4a1〜4a10が形成されるT1〜T10と、抵抗発熱体4a22〜4a31が形成される発熱領域T22〜T31を非通紙部とする。
【0018】
例えば、小さいサイズの紙等が連続してヒータ1Aを通過する場合、基板2端部は非通紙部となるため、徐々に昇温する現象が発生する。非通紙部が過度に昇温すると、ヒータ1Aが搭載されるプリンターの部品が損傷する可能性がある。また、非通紙部が昇温した状態で大きいサイズの記録媒体が通過すると、高温オフセットとなり、トナーが均一に定着しないなどの不具合が起こりやすくなる。
【0019】
非通紙部の昇温対策として、例えば基板2端部における抵抗発熱体4anの材料を調整する方法がある。基板2端部に配設される抵抗発熱体4anを、高抵抗値の抵抗体ペーストを用いて構成する場合、電流が流れにくくなるため発熱量を抑制することが可能となる。しかし抵抗発熱体4anの形成時に少なくとも2種類の抵抗体ペーストを使用するため、工程数が増え製造コスト増加につながる。また、基板2上に抵抗体ペーストを塗布する際、抵抗値の異なる抵抗体ペースト同士が混同しないよう、工程上の位置ずれを考慮して、抵抗発熱体4an同士の間隔を広くとる必要がある。その場合、基板2長手方向において抵抗発熱体4anが形成されない領域が広くなり、ヒータ1Aの発熱分布が不均一になりやすい。また、抵抗発熱体4anの配設数が減少することにより、温度分布を細かく調整することが困難となる。
【0020】
従来の非通紙部昇温対策として、基板両端部における抵抗発熱体4anの幅Bnを狭く形成し、発熱量を減少させる方法を、
図3を参照して説明する。
【0021】
例えば、ヒータ1B長手方向の非通紙部における抵抗発熱体4a1〜4a10と4a22〜4a31の幅Bnを、基板2通紙部における抵抗発熱体4a11〜4a21の幅Bnよりも狭く形成する。
図3に例示するように、抵抗発熱体4a22の幅B22は、隣り合う抵抗発熱体4a21の幅B21よりも狭く形成されている。これにより、抵抗発熱体4a22は高抵抗化するため電流が流れにくくなり、発熱量が減少する。したがって非通紙部における抵抗発熱体4anの幅Bnを狭く形成する場合、非通紙部における発熱量は減少する。
【0022】
しかしこの場合、ヒータ1B通紙方向視において抵抗発熱体4anが存在しない非発熱領域Gが形成される。例えば
図3に例示するように、抵抗発熱体4a21、4a22、4a23それぞれの発熱領域T21、T22、T23の間には非発熱領域Gが形成されている。非発熱領域Gは、ヒータ1Bの通紙方向視において抵抗発熱体4anが形成されない領域であるため発熱せず、非発熱領域Gの面積が広いほどヒータ1Bの発熱分布が不均一となり、通過する記録媒体に、部分的なトナー定着不良が発生する。この対策として、例えば非通紙部の抵抗発熱体4anを近接して並設し、非発熱領域Gが形成されないようにする方法がある。しかしこの場合、基板2長手方向の発熱領域Tの長さが短くなるため、抵抗発熱体4anを配設する数量を増やす必要が生じてくる。
【0023】
他の非通紙部昇温対策として、基板非通紙部における抵抗発熱体4anの長さAnを長く形成し、発熱量を減少させる方法を、
図4を参照して説明する。
【0024】
例えば、ヒータ1C長手方向の非通紙部における抵抗発熱体4a1〜4a10、4a22〜4a31の長さAnを、ヒータ1C通紙部における抵抗発熱体4a11〜4a21の長さAnよりも長く形成する。
図4に例示するように、抵抗発熱体4a22の長さA22は、隣り合う抵抗発熱体4a21の長さA21よりも長く形成されている。これにより、抵抗発熱体4a22は高抵抗化するため電流が流れにくくなり、発熱量が減少する。したがって非通紙部における抵抗発熱体4anの長さAnを長く形成する場合、非通紙部における発熱量は減少する。
【0025】
しかしこの場合、ヒータ1Cの通紙方向視において、抵抗発熱体4a22の発熱領域T22と、隣り合う抵抗発熱体4a23の発熱領域T23の一部が重なっている。非通紙部における発熱領域T22とT23が重なる面積は、通紙部における発熱領域T20とT21が重なる面積よりも広く形成されている。このため、ヒータ1Cでは、通過する箇所によって記録媒体が受け取る熱量に差が生じ、トナー定着が不均一となるおそれがある。
【0026】
この対策として、ヒータ1Cの非通紙部において抵抗発熱体4anの間隔を広げて並設し、発熱領域Tnが重ならないように形成する方法がある。ただし、ヒータ1C長手方向の発熱領域Tの長さに制約がある場合、抵抗発熱体4anが配設される数量を少なくする必要が生じてくる。
【0027】
非通紙部の昇温対策として、抵抗発熱体4anの長さAnや幅Bnを調整する場合、上述するようにヒータ1B、1Cの長手方向における発熱領域Tの長さが変動したり、抵抗発熱体4anが配設される数量を調整したりする必要が生じる。
【0028】
本発明に係るヒータ1は、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとが接続される角度を基板2長手方向において調整することによって、抵抗発熱体4anの抵抗値を変化させることができる。その際、基板2長手方向における発熱領域Tの長さや抵抗発熱体4anが配設される数量を考慮することなく、所望とする発熱分布を実現することを可能とする。
【0029】
第1の実施形態について、
図5を参照して説明する。
【0030】
一対をなす導体3a、3bは、ヒータ1Dの一方の面上に設けられ、抵抗発熱体4anに電力を供給するものである。導体3a、3bは、ヒータ1Dの短手方向における幅を一定とし、ヒータ1Dの長手方向に沿って互いに所定の間隔を保って形成される。導体3a、3bは、抵抗発熱体4anと比較して抵抗値が十分低い銀(Ag)等の導体ペーストで構成されている。
【0031】
抵抗発熱体4anはPTC特性を有し、ヒータ1Dの長手方向に互いに離間するように複数に分割して並設されている。複数の抵抗発熱体4anは、導体3a、3bの間に並列接続され、導体3aと3bを電気的に直列接続している。複数の抵抗発熱体4anは、ヒータ1Dの短手方向において、並設される抵抗発熱体4anの少なくとも一部がオーバーラップするように斜設されている。
【0032】
本実施形態におけるヒータ1Dは、通紙部における抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を調整している。これにより、通紙部における抵抗発熱体4anの抵抗値は、非通紙部における抵抗発熱体4anの抵抗値よりも小さくなる。ここで、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの調整前の接続角度と、調整後の接続角度との差をΔθ1と定義する。
【0033】
ヒータ1Dの通紙部上に並設される複数の抵抗発熱体4anは、斜設される角度θが、ヒータ1D長手方向において一様に形成されている。また、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとが接続される角度θ4anは、ヒータ1D中央の通紙部と両端の非通紙部では異なる角度に形成されている。
【0034】
図5に例示するように、ヒータ1D通紙部に形成される抵抗発熱体4a21が、導体3a、3bと接続される角度をθ4a21とする。また、ヒータ1D非通紙部に形成される抵抗発熱体4a22が、導体3a、3bと接続される角度をθ4a22とする。θ4a21は、調整前の大きさがθ4a22と同等であり、調整後はθ4a22よりもΔθ1小さく形成されており、以下の式となる。
【0036】
θ4a21がθ4s22よりもΔθ1小さく形成されることにより、抵抗発熱体4a21の幅B21は変化しないが、長さA21は抵抗発熱体4a22の長さA22と比較して、短く形成されている。そのため、抵抗発熱体4a21は、抵抗発熱体4a22と比較して低抵抗となり、電流が流れやすくなるため発熱量が大きくなる。
【0037】
このように、通紙部における抵抗発熱体4anが導体3a、3bと接続される角度が、非通紙部における抵抗発熱体4anが導体3a、3bと接続される角度よりΔθ1小さく形成されることにより、通紙部は非通紙部と比較して発熱量を大きくすることが可能となる。したがってヒータ1Dを記録媒体が通過する際、非通紙部の過度の昇温を抑制することが可能となる。
【0038】
本実施形態において、通紙部における抵抗発熱体4anの斜設される角度θと、並設される抵抗発熱体4anどうしがヒータ1D短手方向においてオーバーラップする対角どうしを結ぶ直線の長さL1は、ヒータ1D長手方向において一様となるよう形成されている。これにより、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度θ4anを調整しても、複数の抵抗発熱体4anの各発熱領域Tnは、ヒータ1D長手方向においてすべて同等の長さに形成することが可能となる。これにより、ヒータ1D長手方向の発熱領域Tは、ヒータ1A長手方向の発熱領域Tと同等の長さに形成される。
【0039】
従来の昇温対策のように、並設される発熱領域Tnがヒータ1Dの通紙方向視で重なったり、非発熱領域Gが形成されたりするなどの現象が生じないため、抵抗発熱体4anの配設数や発熱領域Tの長さを調整する必要がない。抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を調整することにより、抵抗発熱体4anを所望の抵抗値に調整することができ、ヒータ1Tの非通紙部における過度の昇温を抑制することが可能となる。
【0040】
次に、第2の実施形態について、
図6を参照して説明する。
【0041】
本実施形態におけるヒータ1Eは、通紙部における抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を調整している。これにより、通紙部における抵抗発熱体4anの抵抗値は、非通紙部における抵抗発熱体4anの抵抗値よりも小さくなる。ここで、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの元の接続角度と、調整後の接続角度との差をΔθ2と定義する。
【0042】
ヒータ1Eの通紙部上に並設される複数の抵抗発熱体4anは、斜設される角度θが、ヒータ1E長手方向において一様に形成されている。また、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとが接続される角度θ4anは、ヒータ1E中央の通紙部と両端の非通紙部では異なる角度に形成されている。
【0043】
図6に例示するように、ヒータ1E通紙部に形成される抵抗発熱体4a21が、導体3a、3bと接続される角度をθ4a21とする。また、ヒータ1E非通紙部に形成される抵抗発熱体4a22が、導体3a、3bと接続される角度をθ4a22とする。θ4a21は、調整前の大きさがθ4a22と同等であり、調整後はθ4a22よりもΔθ2小さく形成されており、以下の式となる。
【0045】
θ4a21がθ4a22よりもΔθ2小さく形成されることにより、抵抗発熱体4a21の長さA21は抵抗発熱体4a22の長さA22と比較して、短く形成されている。また、抵抗発熱体4a21の幅B21は、抵抗発熱体4a22の幅B22よりも広く形成されている。そのため、抵抗発熱体4a21は、抵抗発熱体4a22と比較して低抵抗となり、電流が流れやすくなるため発熱量が大きくなる。
【0046】
このように、通紙部における抵抗発熱体4anが導体3a、3bと接続される角度が、非通紙部における抵抗発熱体4anが導体3a、3bと接続される角度よりΔθ2小さく形成されることにより、通紙部は非通紙部と比較して発熱量を大きくすることが可能となる。したがってヒータ1Eを記録媒体が通過する際、非通紙部の過度の昇温を抑制することが可能となる。
【0047】
本実施形態において、通紙部における抵抗発熱体4anが斜設される角度θと、並設される抵抗発熱体4anどうしがヒータ1E短手方向においてオーバーラップする対角どうしを結ぶ直線の長さL1は、ヒータ1E長手方向において一様となるよう形成されている。これにより、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度θ4anを調整しても、複数の抵抗発熱体4anの各発熱領域Tnは、ヒータ1E長手方向においてすべて同等の長さに形成することが可能となる。これにより、ヒータ1E長手方向の発熱領域Tは、ヒータ1A長手方向の発熱領域Tと同等の長さとすることが可能となる。
【0048】
従来の昇温対策のように、並設される発熱領域Tnがヒータ1Eの通紙方向視で重なったり、非発熱領域Gが形成されたりするなどの現象が生じないため、抵抗発熱体4anの配設数や発熱領域Tの長さを調整する必要がない。抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を調整することにより、抵抗発熱体4anを所望の抵抗値に調整することができ、ヒータ1E非通紙部における過度の昇温を抑制することが可能となる。
【0049】
次に、第3の実施形態について、
図7を参照して説明する。
【0050】
本実施形態におけるヒータ1Fは、非通紙部における抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を調整している。これにより、非通紙部における抵抗発熱体4aの抵抗値は、通紙部における抵抗発熱体4anの抵抗値よりも大きくなる。ここで、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの元の接続角度と、調整後の接続角度との差をΔθ3と定義する。
【0051】
ヒータ1Fの非通紙部上に並設される複数の抵抗発熱体4anは、斜設される角度θが、ヒータ1F長手方向において一様に形成されている。また、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとが接続される角度θ4anは、ヒータ1F中央の通紙部と両端の非通紙部では異なる角度に形成されている。
【0052】
図6に例示するように、ヒータ1F通紙部に形成される抵抗発熱体4a21が、導体3a、3bと接続される角度をθ4a21とする。また、ヒータ1F非通紙部に形成される抵抗発熱体4a22が、導体3a、3bと接続される角度をθ4a22とする。θ4a22は、調整前の大きさがθ4a21と同等であり、調整後はθ4a21よりもΔθ3大きく形成されており、以下の式となる。
【0054】
θ4a22がθ4a21よりもΔθ3大きく形成されることにより、抵抗発熱体4a22の長さA22は抵抗発熱体4a21の長さA21と比較して、長く形成されている。そのため、抵抗発熱体4a22は、抵抗発熱体4a21と比較して高抵抗となり、電流が流れにくくなるため発熱量が小さくなる。
【0055】
このように、通紙部における抵抗発熱体4anが導体3a、3bと接続される角度が、非通紙部における抵抗発熱体4anが導体3a、3bと接続される角度よりΔθ3大きく形成されることにより、非通紙部は通紙部と比較して発熱量を小さくすることが可能となる。したがってヒータ1Fを記録媒体が通過する際、非通紙部の過度の昇温を抑制することが可能となる。
【0056】
本実施形態において、非通紙部における抵抗発熱体4anの斜設される角度θと、並設される抵抗発熱体4anどうしがヒータ1F短手方向においてオーバーラップする対角どうしを結ぶ直線の長さL1は、ヒータ1E長手方向において一様となるよう形成されている。これにより、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度θ4anを調整しても、複数の抵抗発熱体4anの各発熱領域Tnは、ヒータ1F長手方向においてすべて同等の長さに形成することが可能となる。これにより、ヒータ1F長手方向の発熱領域Tは、ヒータ1A長手方向の発熱領域Tと同等の長さとすることが可能となる。
【0057】
従来の昇温対策のように、並設される抵抗発熱体4anの発熱領域Tnがヒータ1Fの通紙方向視で重なったり、非発熱領域Gが形成されたりするなどの現象が生じないため、抵抗発熱体4anの配設数や発熱領域Tの長さを調整する必要がない。抵抗発熱体4aと導体3a、3bとの接続角度を調整することにより、抵抗発熱体4anを所望の抵抗値に調整することができ、ヒータ1F非通紙部における過度の昇温を抑制することが可能となる。
【0058】
本実施形態におけるヒータ1Fは、ヒータ1F非通紙部における抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を調整することにより、抵抗値が大きくなるよう形成されている。ここで、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの元の接続角度と、調整後の接続角度との差をΔθ3と定義する。
【0059】
ヒータ1F上に並設される複数の抵抗発熱体4anは、斜設される角度θが、ヒータ1F長手方向において一様に形成されている。また、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとが接続される角度θ4aは、ヒータ1F中央の通紙部と両端の非通紙部では異なる角度に形成されている。
【0060】
図7に例示するように、通紙部に形成される抵抗発熱体4a21と、導体3a、3bとが接続される角度をθ4a21とする。また、非通紙部に形成される抵抗発熱体4a22と、導体3a、3bとが接続される角度をθ4a22とする。θ4a22はθ4a21よりもΔθ3大きく形成されており、以下の式となる。
【0062】
θ4a22がθ4a21よりもΔθ3大きく形成されることにより、抵抗発熱体4a22の長さA22は、抵抗発熱体4a21の長さA21と比較して、長く形成されている。そのため、抵抗発熱体4a22は、抵抗発熱体4a21よりも低抵抗となり、電流が流れにくくなるため発熱量が小さくなる。
【0063】
このように、非通紙部における抵抗発熱体4a1〜4a10、抵抗発熱体4a22〜4a31が導体3a、3bに接続される角度が、通紙部における抵抗発熱体4a11〜4a21が導体3a、3bに接続される角度よりもΔθ3大きく形成されることにより、通紙部と比較して発熱量を小さくすることが可能となる。
【0064】
本実施形態において、抵抗発熱体4anの斜設される角度θと、並設される抵抗発熱体4anどうしがヒータ1F短手方向においてオーバーラップする対角どうしを結ぶ直線の長さL1は、ヒータ1F長手方向において一様に形成されている。これにより、抵抗発熱体4aの抵抗値を変化させるためにθ4aを調整しても、複数の抵抗発熱体4anの各発熱領域Tnは、ヒータ1F長手方向において同等の長さとすることが可能となる。抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を調整する際、発熱領域Tnがヒータ1F長手方向において同等の長さであることにより、ヒータ1F長手方向における発熱領域Tは、ヒータ1Aの発熱領域Tと同等の長さとなる。
【0065】
したがって、隣り合う抵抗発熱体4anどうしがヒータ1F通紙方向視で重なったり、非発熱領域が形成されたりするなどの現象が生じないため、抵抗発熱体4anの配設数や発熱領域Tを調整する必要がない。抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を調整することにより、抵抗発熱体4anを所望の抵抗値に調整することができ、ヒータ1Fの非通紙部における昇温を抑制することが可能となる。
【0066】
本実施形態では、抵抗発熱体4anの列を1列で例示したが、基板2の短手方向において、複数列に形成されていてもよい。また、抵抗発熱体4anの分割される数量や大きさは本実施形態に限定されず、ヒータの種類や大きさ、用途に応じて適宜変更することが可能である。
【0067】
また本実施形態では、ヒータ1の非通紙部における昇温抑制対策について例示したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、基板2に当接されるサーミスタ等の部品によって、ヒータ1の温度が部分的に低下する対策を講じる場合や、ヒータ1を用途に応じた発熱分布に設計したい場合などがある。その際、抵抗発熱体4anと導体3a、3bとの接続角度を適宜調整することにより、所望とする発熱分布を実現することが可能となる。
【0068】
本発明における基板2は、耐熱性および絶縁性を有し、本実施形態では矩形状に形成されている。基板2は、例えば厚みが0.5mmから1.0mm程度の平板であり、アルミナ等のセラミックやガラスセラミック、または耐熱複合材料などから構成される。基板2の形状は、短手方向および短手方向と交差する長手方向を有していれば、本実施形態に限定されるものではない。
【0069】
抵抗発熱体4anは、PTC特性を有しており、ホウケイ酸などのガラスに、8族、9族のルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)などの酸化物のうち、少なくとも1種類、あるいはそれ以上の種類を添加した混合物からなる抵抗体ペーストで構成されている。抵抗発熱体4aは、抵抗体ペーストを基板2上に塗布し、乾燥、焼成して形成される。「塗布」とは、基板2上に抵抗体ペーストを塗りつけることができればどのような方法でもよく、スクリーン印刷を含むものである。
【0070】
オーバーコート層6は、基板2上に形成された一対の導体3a、3bおよび抵抗発熱体4aを覆っており、本実施形態では帯状に形成されている。オーバーコート層6は、例えば、アルミナ等の熱伝導性に優れた無機酸化物フィラーを、25〜35質量%加えたガラス層である。
【0071】
オーバーコート層6は、導体3a、3bおよび抵抗発熱体4aを覆うことで、導体3a、3bおよび抵抗発熱体4aが直接大気に露出することを防止し、外部からの干渉(例えば、機械的、化学的、電気的な干渉)によって導体3a、3bおよび抵抗発熱体4anが損傷・破損することを抑制するものである。
【0072】
次に、ヒータ1を備えた定着装置100の一実施形態について説明する。
図8はヒータ1の使用例である定着装置100を示す説明図である。定着装置100は、ヒータ1と、定着フィルム200と、加圧ローラ300とで構成されている。なお、定着装置100は、実際は画像形成装置に内蔵されているが、画像形成装置は省略する。
【0073】
定着フィルム200は、ポリイミド樹脂等の耐熱性シートからなるロール状のフィルムである。この定着フィルム200の底部に、ヒータ1が配置されている。
【0074】
加圧ローラ300は、回転軸によって回転可能に構成されたローラである。そのローラの表面には、耐熱性の弾性材料として、シリコーンゴム層が形成されている。シリコーンゴム層は、定着フィルム200を介して、ヒータ1と弾接している。
【0075】
ヒータ1が通電され、抵抗発熱体4anで熱が発生し、その熱は基板を介し、定着フィルム200および加圧ローラ300を加熱する。そこに、定着フィルム200および加圧ローラ300の回転によってトナー像500が付着した用紙400が送られると、トナー像500は自然放熱して冷却固化し、画像形成装置から離れる。
【0076】
本実施形態によれば、所望とする発熱分布を実現したヒータ1を用いることにより、用途に応じた画像形成装置100を提供することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、ヒータ1を画像形成装置100のトナー定着用に使用する例を説明した。しかし、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。例えば、家庭用の電気製品、業務用や実験用の精密機器や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源として使用することができる。
【0078】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。