【実施例】
【0038】
次に、本発明に基づく実施例について説明する。
[実施例1]
基材層2としてポリプロピレンフィルム(リケンテクノス(株)製「OW」)を使用し、その片面に絵柄模様層3としてグラビアインキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)で木目印刷をグラビア印刷機により印刷して設けた。その後、基材層2の絵柄模様層3とは逆の面にシリカ粉末を含有する2液ウレタン系プライマー樹脂を乾燥後の厚さが1μmとなるようにグラビア塗工した。
【0039】
次に、絵柄模様層3上に、ポリエステルポリオールを主剤としイソホロンジイソシアネートを硬化剤とする2液ウレタン樹脂系接着剤を、乾燥後の塗布量が2g/m
2になるように塗工した。
その後、透明接着層4(マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)10μmと、ホモポリプロピレン(プライムポリマー(株)製)を主成分とした透明熱可塑性樹脂層580μmとを、透明接着層4が絵柄模様層3側になるように共押出ラミネートした。
【0040】
次に、透明熱可塑性樹脂層5の上に、第1表面保護層6aとして、熱硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス(株)製)をイソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス(株)製)および艶消しシリカ(エボニックジャパン(株)製)5質量部)と混合した塗液を乾燥後の厚さ約10μmになるよう塗工して塗膜形成し、その後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させた。
【0041】
さらに、第1表面保護層6aの上に、第2表面保護層6bとして、熱硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス(株)製)とイソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス(株)製)とを混合した塗液を、乾燥後の厚さ約6μmになるよう塗工して塗膜形成し、その後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させた。
このとき、表面保護層6の表面から測定した光沢値が10になるよう混合量を調整した。
これによって、実施例1の化粧シート1を得た。
【0042】
[実施例2]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約20μmになるよう塗工した以外は、実施例1と同様の手順で実施例2の化粧シート1を作製した。
[実施例3]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約30μmになるよう塗工した以外は実施例1と同様の手順で実施例3の化粧シート1を作製した。
【0043】
[実施例4]
実施例1に記載の手順中、第1表面保護層6aの形成手順を下記の通り変更して作製した化粧シート1。すなわち、第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約40μmになるよう塗工した以外は実施例1と同様の手順で実施例4の化粧シート1を作製した。
[実施例5]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約20μmに、第2表面保護層6bの乾燥後の厚さを約3μmになるよう塗工した以外は、実施例1と同様の手順で実施例5の化粧シート1を作製した。
【0044】
[実施例6]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約30μmに、第2表面保護層6bの乾燥後の厚さを約3μmになるよう塗工した以外は、実施例1と同様の手順で実施例6の化粧シート1を作製した。
[実施例7]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約40μmに、第2表面保護層6bの乾燥後の厚さを約3μmになるよう塗工した以外は実施例1と同様の手順で実施例7の化粧シート1を作製した。
【0045】
[実施例8]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約20μmとした。
また、第2表面保護層6bの形成手順において、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)および熱硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス(株)製)を質量比1:1になるよう混合し、イソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス(株)製)と混合した塗液を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で実施例8の化粧シート1を作製した。
【0046】
[実施例9]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約40μmとした。
また、第2表面保護層6bの形成手順において、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)および熱硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス(株)製)を質量比1:1になるよう混合し、イソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス(株)製)と混合した塗液を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で実施例9の化粧シート1を作製した。
【0047】
[実施例10]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約20μmとした。
また、第2表面保護層6bの形成手順において、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)および熱硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス(株)製)を質量比7:3になるよう混合し、イソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス(株)製)と混合した塗液を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で実施例10の化粧シート1を作製した。
【0048】
[実施例11]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約40μmとした。
また、第2表面保護層6bの形成手順において、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)および熱硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス(株)製)を質量比7:3になるよう混合し、イソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス(株)製)と混合した塗液を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で実施例11の化粧シート1を作製した。
【0049】
[実施例12]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約20μmとした。
また、第2表面保護層6bの形成手順において、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で実施例12の化粧シート1を作製した。
【0050】
[実施例13]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約40μmとした。
また、第2表面保護層6bの形成手順において、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で実施例12の化粧シート1を作製した。
【0051】
[実施例14]
第1表面保護層6aを、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)および熱硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス(株)製)を質量比7:3になるよう混合し、イソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス(株)製)および艶消しシリカ(エボニックジャパン(株)製)5質量部)と混合した塗液を乾燥後の厚さ約20μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させることで形成した。
【0052】
更に、この第1表面保護層6aの上に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で実施例14の化粧シート1を作製した。
【0053】
[比較例1]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約6μmになるよう塗工した以外は、実施例1と同様の手順で比較例1の化粧シート1を作製した。
[比較例2]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約50μmになるよう塗工した以外は、実施例1と同様の手順で比較例2の化粧シート1を作製した。
【0054】
[比較例3]
第2表面保護層6bの乾燥後の厚さを約3μmになるよう塗工した以外は、実施例1と同様の手順で比較例3の化粧シート1を作製した。
[比較例4]
第1表面保護層6aの乾燥後の厚さを約50μmに、第2表面保護層6bの乾燥後の厚さを約3μmになるよう塗工した以外は、実施例1と同様の手順で比較例4の化粧シート1を作製した。
【0055】
[比較例5]
第1表面保護層6aの艶消しシリカを含有させずに乾燥後の厚さを約20μmとした。
第2表面保護層6bの形成手順において、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)および熱硬化型アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス(株)製)を質量比7:3になるよう混合し、イソシアネート系硬化剤(DICグラフィックス(株)製)と混合した塗液を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で比較例5の化粧シート1を作製した。
【0056】
[比較例6]
第1表面保護層6aを、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)および艶消しシリカを混合した塗液を乾燥後の厚さ約20μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させることで形成した。
さらにこの第1表面保護層6aの上に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DICグラフィックス(株)製)を乾燥後の厚さ約6μmで塗工して塗膜形成しその後温度60℃で30秒間溶剤乾燥させ、さらにそこへ紫外線(高圧水銀灯、約200mJ/cm
2)を照射して第2表面保護層6bを形成した。
それ以外は実施例1と同様の手順で比較例6の化粧シート1を作製した。
【0057】
<評価用化粧板9の作成>
上記実施例1〜実施例14、比較例1〜6で作製した各化粧シート1を、厚さ3mmのMDF(広葉樹)からなる基材の表面に貼り合わせて、それぞれを化粧材とした。
ここで、接着剤として、2液水性エマルジョン接着剤(ジャパンコーティングレジン(株)製リカボンド(登録商標)BA−10L/BA−11B=100:2.5)を使用し、その接着剤をウエット状態で80g/m
2の塗工量で塗布して貼り合わせた。次いで7日間養生して評価用化粧板9とした。
【0058】
<評価項目および評価方法>
上記実施例1〜実施例14、比較例1〜6の材料構成、手順によって作製した化粧シート1を用いた各化粧板9について、下記の評価項目および評価方法によって試験、評価した。
(1)鉛筆引掻き試験
試験方法はJIS−K5600「引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して行った。
評価基準は下記のとおりである。
◎:塗膜が剥がれない最高硬度が3H以上の場合。
○:塗膜が剥がれない最高硬度がF以上2H以下であり、かつ凹みの付かない最高硬度が2B以上の場合。
△:塗膜が剥がれない最高硬度がF以上2H以下であり、かつ凹みの付かない最高硬度が3B以下の場合。
×:塗膜が剥がれない最高硬度がHB以下の場合。
【0059】
(2)スチールウール試験
市販のスチールウール(日本スチールウール(株)製「ボンスター#0〜1」)を1cm角の正方形形状にカットし、これを荷重1kgで化粧板9表面に当て20往復スクラッチした。
評価基準は下記のとおりである。
◎:試験部表面に、擦り傷が見られず、かつ未試験部表面との光沢変化が見られない場合。
○:試験部表面に、擦り傷が見られず、かつ未試験部表面との光沢変化がわずかに見られる場合。
×:試験部表面に、擦り傷が見られ、かつ未試験部表面との光沢変化が見られる場合。
【0060】
(3)コインスクラッチ試験
十円硬貨を45°の角度で傾けた状態で床用化粧材表面に当て、荷重を1kg、2kg、3kg、4kgと変化させて、十円硬貨を傾けた方向へスクラッチした。
評価基準は、下記のとおりである。
○:塗膜が剥がれる最小荷重が3kg以上の場合。
×:塗膜が剥がれる最小荷重が2kg以下の場合。
【0061】
(4)低光沢化検証
艶消しシリカの含有により光沢値が低下するか検証した。
評価基準は、下記のとおりである。
○:光沢値が10以下に調整できる場合。
×:光沢値が10以下に調整できない場合。
【0062】
(5)ヘイズ値測定
実施例1〜14、比較例1〜6のシートにおいて、透明接着層より表面側のシートのみを用いて写像性測定器(日本電色工業(株)製,NDH−2000)を使用してヘイズ値を測定した。
評価基準は下記のとおりである。
○:ヘイズ値が40%未満の場合。
×:ヘイズ値が40%以上の場合。
【0063】
<評価結果>
評価結果を表1に示す。
【表1】
【0064】
本発明に基づく化粧シート1である実施例1〜実施例14においては、いずれも表面物性に関する評価項目において△以上の評価結果であり、良好な表面物性を示している。
表面保護層6の総厚が薄い比較例1および比較例3においては、相対的に耐傷付き性の低下が見られる。これは耐傷付き性を確保するためには表面保護層6の総厚が16μm以上必要であることを示している。
【0065】
逆に表面保護層6の総厚が厚い比較例2および比較例4においては、ヘイズが高く意匠感が低くなっている。これは厚い層を充填するために多量の艶消し剤が必要であることを示している。
また第1表面保護層6aに艶消し剤を含有しない比較例5は表面凹凸を形成せず低光沢化が困難となっている。
【0066】
また第1表面保護層6aに熱硬化型樹脂を含まない比較例6においては透明熱可塑性樹脂層5との密着が弱いため耐傷付き性が低くなっている。
一方、第2表面保護層6bを構成する成分が紫外線硬化型樹脂および熱硬化型樹脂を質量比1:1以上で作製した実施例8〜14においては、いずれも鉛筆引掻き試験およびスチールウール試験といった耐傷付き性において、紫外線硬化型樹脂を含まない実施例1〜7と比べて特に優れている。これは紫外線硬化型樹脂が表面硬度を上げ、耐傷性を上げることに効果があることを示している。特に紫外線硬化型樹脂のみで形成されている実施例12〜14は大幅に耐傷付き性が向上している。
【0067】
ここで、第1表面保護層6aに添加する艶消し剤が5質量部の場合であるが、艶消し剤の添加量を増やしても良い。艶消し剤の添加量を増やしても、目的とする低光沢度及びヘイズに応じて、第1表面保護層6aの厚さを適宜調整し、目的の耐傷付き性に応じて第2表面保護層6bの厚さを適宜調整すればよい。
以上の結果から、本発明によれば、諸物性において優れた化粧シート1およびそれを用いた化粧材を提供することが可能であることを検証することができた。