特許第6561616号(P6561616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561616車載ヘッドアップディスプレイ装置及び車載表示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561616
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】車載ヘッドアップディスプレイ装置及び車載表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20190808BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20190808BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20190808BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   B60R11/02 C
   G01C21/36
   G08G1/16 E
   G08G1/16 C
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-124270(P2015-124270)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-7481(P2017-7481A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
(72)【発明者】
【氏名】谷内田 武志
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−009677(JP,A)
【文献】 特開2011−119917(JP,A)
【文献】 特開2015−080988(JP,A)
【文献】 特開2015−101311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60R 11/02
G01C 21/36
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の車室内から見える実景に重畳させるように画像を表示する車載ヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記車両の周囲に存在する対象物を検出する対象物検出装置によって検出された前記対象物の少なくとも一部を含む選択範囲を持つ強調記号を前記画像として表示し、前記車両の傾きを検出する傾き検出装置により検出された前記車両の傾きが大きいほど前記強調記号の前記選択範囲を大きく設定する表示制御部を備え、
前記表示制御部は、前記車両の傾きが閾値未満であるとき、前記強調記号である第1の強調記号を表示し、
前記車両の傾きが前記閾値以上であるとき、前記第1の強調記号より前記選択範囲が大きい前記強調記号である第2の強調記号を表示し、前記車両の重量バランスの是正を促す案内を前記車両の乗員に対して行い、前記案内の後に、前記車両の傾きが前記閾値以上であるとき、前記第2の強調記号を表示し、前記車両の傾きが前記閾値未満であるとき、前記第1の強調記号を表示し、
前記閾値は、前記対象物に対する前記第1の強調記号のずれに伴い視認者に違和感を与えることが予想される前記車両の傾きに設定される、
ことを特徴とする車載ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
車両の周囲に存在する対象物を検出する対象物検出装置と、
前記車両の傾きを検出する傾き検出装置と、
前記車両の車室内から見える実景に重畳させるように画像を表示する車載ヘッドアップディスプレイ装置と、を備え、
前記車載ヘッドアップディスプレイ装置は、前記対象物検出装置によって検出された前記対象物の少なくとも一部を含む選択範囲を持つ強調記号を前記画像として表示し、前記傾き検出装置により検出された前記車両の傾きが大きいほど前記強調記号の前記選択範囲を大きく設定する表示制御部を備え、
前記表示制御部は、前記車両の傾きが閾値未満であるとき、前記強調記号である第1の強調記号を表示し、
前記車両の傾きが前記閾値以上であるとき、前記第1の強調記号より前記選択範囲が大きい前記強調記号である第2の強調記号を表示し、前記車両の重量バランスの是正を促す案内を前記車両の乗員に対して行い、前記案内の後に、前記車両の傾きが前記閾値以上であるとき、前記第2の強調記号を表示し、前記車両の傾きが前記閾値未満であるとき、前記第1の強調記号を表示し、
前記閾値は、前記対象物に対する前記第1の強調記号のずれに伴い視認者に違和感を与えることが予想される前記車両の傾きに設定される、
ことを特徴とする車載表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ヘッドアップディスプレイ装置及び車載表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両のフロントガラス等に画像に係る表示光を投影することで、車室内からフロントガラスを通じて見える実景に重畳する虚像を視認者に視認させる車載ヘッドアップディスプレイ装置(車載HUD装置)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されるように、車載HUD装置は、対象物である前方車両を囲むような枠を虚像として表示する。これにより、視認者は、枠内の前方車両を確実に認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−074391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両には、例えばトランクへの荷物の積み込み、又は偏った乗員配置等が原因で傾きが発生するおそれがある。この車両の傾きにより、対象物(例えば前方車両)に対して上記虚像としての枠がずれて、視認者に違和感を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、車両の傾きにより視認者に与える違和感を低減する車載ヘッドアップディスプレイ装置及び車載表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る車載ヘッドアップディスプレイ装置は、車両に搭載され、前記車両の車室内から見える実景に重畳させるように画像を表示する車載ヘッドアップディスプレイ装置であって、前記車両の周囲に存在する対象物を検出する対象物検出装置によって検出された前記対象物の少なくとも一部を含む選択範囲を持つ強調記号を前記画像として表示し、前記車両の傾きを検出する傾き検出装置により検出された前記車両の傾きが大きいほど前記強調記号の前記選択範囲を大きく設定する表示制御部を備え、前記表示制御部は、前記車両の傾きが閾値未満であるとき、前記強調記号である第1の強調記号を表示し、前記車両の傾きが前記閾値以上であるとき、前記第1の強調記号より前記選択範囲が大きい前記強調記号である第2の強調記号を表示し、前記車両の重量バランスの是正を促す案内を前記車両の乗員に対して行い、前記案内の後に、前記車両の傾きが前記閾値以上であるとき、前記第2の強調記号を表示し、前記車両の傾きが前記閾値未満であるとき、前記第1の強調記号を表示し、前記閾値は、前記対象物に対する前記第1の強調記号のずれに伴い視認者に違和感を与えることが予想される前記車両の傾きに設定される
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る車載表示システムは、車両の周囲に存在する対象物を検出する対象物検出装置と、前記車両の傾きを検出する傾き検出装置と、前記車両の車室内から見える実景に重畳させるように画像を表示する車載ヘッドアップディスプレイ装置と、を備え、前記車載ヘッドアップディスプレイ装置は、前記対象物検出装置によって検出された前記対象物の少なくとも一部を含む選択範囲を持つ強調記号を前記画像として表示し、前記傾き検出装置により検出された前記車両の傾きが大きいほど前記強調記号の前記選択範囲を大きく設定する表示制御部を備え、前記表示制御部は、前記車両の傾きが閾値未満であるとき、前記強調記号である第1の強調記号を表示し、前記車両の傾きが前記閾値以上であるとき、前記第1の強調記号より前記選択範囲が大きい前記強調記号である第2の強調記号を表示し、前記車両の重量バランスの是正を促す案内を前記車両の乗員に対して行い、前記案内の後に、前記車両の傾きが前記閾値以上であるとき、前記第2の強調記号を表示し、前記車両の傾きが前記閾値未満であるとき、前記第1の強調記号を表示し、前記閾値は、前記対象物に対する前記第1の強調記号のずれに伴い視認者に違和感を与えることが予想される前記車両の傾きに設定される
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の傾きにより視認者に与える違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る車載表示システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車載HUDが搭載された車両の模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車載HUDの構成を示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る(a)は乗員から見える前方車両に第1の強調記号が重畳した虚像を示す図であり、(b)は乗員から見える前方車両に第2の強調記号が重畳した虚像を示す図である。
図5】(a)は、本発明の一実施形態との比較例であって、自車両が傾いた場合における、乗員から見える第1の強調記号に係る虚像を示す図であり、(b)は本発明の一実施形態に係る自車両が傾いた場合における、乗員から見える前方車両に第2の強調記号が重畳した虚像を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る(a)は乗員から見える前方車両に第1の強調記号が重畳した虚像を示す図であり、(b)は乗員から見える前方車両に第2の強調記号が重畳した虚像を示す図である。
図7】(a)は、本発明の一実施形態との比較例であって、車両が傾いた場合における、乗員から見える前方車両に第1の強調記号が重畳した虚像を示す図であり、(b)は本発明の一実施形態に係る、車両が傾いた場合における、乗員から見える前方車両に第2の強調記号が重畳した虚像を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る表示制御部が実行する強調記号の設定に係るプログラムの処理手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の変形例に係る(a)は乗員から見える前方車両を指し示す第2の強調記号を表示する虚像を示す図であり、(b)は当該第2の強調記号の選択範囲を仮想的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る車載用ヘッドアップディスプレイ装置を備えた車載表示システムについて図面を参照しつつ説明する。
【0012】
車載表示システム1は、図1に示すように、車両2に搭載されるシステムであって、車載ヘッドアップディスプレイ装置(車載HUD装置)10と、対象物検出装置の一例である前方状況検出装置101と、傾き検出装置107と、を備える。
【0013】
前方状況検出装置101は、車両2の前方の状況を検出するものであって、例えば、ステレオカメラ101a及び前方状況解析部101bを備える。ステレオカメラ101aは、図2に示すように、例えば車室内の天井であって、バックミラーの両側方に配置される一対のカメラからなる。ステレオカメラ101aは、撮像した車両2の前方の画像情報を前方状況解析部101bに出力する。前方状況解析部101bは、ステレオカメラ101aによって撮影された画像情報を解析し、その解析結果を車両2の前方状況に関する情報として車載HUD装置10(正確には後述する表示制御部14)に出力する。この車両2の前方状況に関する情報は、車両2の前方に存在する対象物である前方車両、障害物又は白線等の位置及び形状を含む情報である。
【0014】
傾き検出装置107は、車両2の傾きを検出する装置であって、例えば、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の加速度を検出する3軸加速度センサ107aと、3軸加速度センサ107aの各軸における検出結果に基づき車両2の傾き具合を算出する傾き算出部107bと、を備える。この車両2の傾きは、荷物及び乗員が車室内において偏在することによって生じうる。傾き算出部107bは、車両2が平地に駐車され、かつ車両2に傾きがない状態での3軸加速度センサ107aの検出結果を予め記憶し、その記憶された検出結果と現在の3軸加速度センサ107aの検出結果との比較に基づき車両2の傾きを算出し、その算出結果を車載HUD装置10(正確には後述する表示制御部14)に出力する。この3軸加速度センサ107aは、車載表示システム1のために新たに設けてもよいし、予め車両2に搭載されている加速度センサ、例えば、車両の挙動を安定化するための横滑り防止装置又は車両安定制御システム等において使用されている加速度センサを利用してもよい。
【0015】
車載HUD装置10は、図2に示すように、車両2のフロントガラス3に表示光Lを投影する。視認者(乗員)5は、フロントガラス3に反射した表示光Lを受けて、フロントガラス3を通して見える実景の対象物(例えば前方車両)に重畳する虚像Vを視認可能となる。
【0016】
詳しくは、車載HUD装置10は、図3に示すように、表示制御部14と、表示器15と、第1及び第2のミラー部材11,12と、筐体13と、を備える。
【0017】
筐体13は、非透光性樹脂材料又は金属材料で形成されるとともに、中空の略直方体をなす。筐体13には、フロントガラス3に対向する位置に開口部13aが形成されている。筐体13は、開口部13aを塞ぐ湾曲板状の窓部16を備える。この窓部16は、表示光Lが通過するアクリルなどの透光性樹脂材料からなる。筐体13内には、車載HUD装置10の上記各構成が収納されている。
【0018】
表示器15は、所定の画像を表す表示光Lを生成し、その生成した表示光Lを第1のミラー部材11に向けて出射する。第1のミラー部材11は、平面鏡であって、表示器15が出射した表示光Lを第2のミラー部材12に向けて反射させる。第2のミラー部材12は、凹面鏡であって、第1のミラー部材11からの表示光Lをフロントガラス3に向けて拡大させつつ反射させる。視認者5は、フロントガラス3に反射した表示光Lを受けて実景に重畳する虚像Vを視認可能となる。
【0019】
車載HUD装置10は、虚像Vとして、例えば、案内経路映像、白線認識映像、衝突警告映像、前方車両ロック映像又は車間距離映像を表示する。具体的には、案内経路映像は、実景の道路に目的地までの経路に係る表示を重畳させて、視認者を案内するための映像である。白線認識映像は、自車両が車線を逸脱しそうになった場合、白線近傍に強調記号を重畳させて白線の存在を視認者に認識させて車線逸脱を抑制する、または単に白線近傍に強調記号を重畳させて白線の存在を視認者に認識させるための映像である。衝突警告映像は、自車両の車線上にある対象物(前方車両又は障害物)の近傍に強調記号を重畳させて視認者に注意を促すための映像である。前方車両ロック映像は、前方車両に追従するように自車両の速度を制御するアダプティブクルーズコントロール(ACC)を使用する際に、追従する前方車両に強調記号を重畳させて、視認者に追従する前方車両を認識させるための映像である。車間距離映像は、前方車両と自車両との距離に関する指標を前方車両と自車両との間の車線に重畳させることにより、車間距離を視認者5に認識させるための映像である。
【0020】
表示制御部14は、前方状況検出装置101からの検出結果(車両2の前方状況に関する情報)に基づき、フロントガラス3を通した実景の対象物(例えば、前方車両)を認識し、その対象物に合わせた虚像Vを視認者5に視認させる。
【0021】
具体的には、表示制御部14は、例えば衝突警告映像に係る虚像Vとして、図4(a),(b)に示すように、対象物に相当する前方車両W1を強調する第1及び第2の強調記号Va1,Va2を表示する。図4(a),(b)においては、車両2の傾きが小さい場合における前方車両W1に対する第1及び第2の強調記号Va1,Va2が示されている。第1及び第2の強調記号Va1,Va2は、略正三角形の中に「!」が表示されてなり、実景の前方車両W1の一部に重なるように表示される。第2の強調記号Va2は、第1の強調記号Va1より大きい面積の略正三角形にて形成される。本例では、第1及び第2の強調記号Va1,Va2の面積は、第1及び第2の強調記号Va1,Va2の選択範囲に一致する。すなわち、第2の強調記号Va2の選択範囲は、第1の強調記号Va1の選択範囲より大きく形成されている。
【0022】
表示制御部14は、例えば前方車両ロック映像に係る虚像Vとして、図6(a),(b)に示すように、前方車両W1を強調するように前方車両W1の周囲を破線で囲む第1及び第2の強調記号Vb1,Vb2を表示する。図6(a),(b)においては、車両2の傾きが小さい場合における前方車両W1に対する第1及び第2の強調記号Vb1,Vb2が示されている。第1の強調記号Vb1は、図6(a)に示すように、前方車両W1の外形に沿った形状をなしている。よって、第1の強調記号Vb1と前方車両W1の外形との隙間は小さく設定されている。第2の強調記号Vb2は、図6(b)に示すように、前方車両W1を内包する長方形をなしている。よって、第2の強調記号Vb2と前方車両W1の外形との隙間は、上記第1の強調記号Vb1と前方車両W1の外形との隙間に比べて大きい。第1及び第2の強調記号Vb1,Vb2の選択範囲は、それらの破線内の面積である。第2の強調記号Vb2の選択範囲は、第1の強調記号Vb1の選択範囲より大きく形成されている。
【0023】
表示制御部14は、車両2の傾きが閾値未満であるとき、図4(a)及び図6(a)に示すように、第1の強調記号Va1,Vb1にて対象物(前方車両W1)を強調する。また、表示制御部14は、車両2の傾きが閾値以上であるとき、図5(b)及び図7(b)に示すように、第2の強調記号Va2,Vb2にて前方車両W1を強調する。図5(a)に示すように、仮に、車両2の傾きが閾値以上である場合に、選択範囲が狭い第1の強調記号Va1にて前方車両W1を強調すると、第1の強調記号Va1が前方車両W1から外れるため、この第1の強調記号Va1が強調する対象が不明確となり、好ましくない。この点、本実施形態では、車両2の傾きが閾値以上である場合に、図5(b)に示すように、第1の強調記号Va1より選択範囲が大きい第2の強調記号Va2にて前方車両W1を強調することで、第2の強調記号Va2及びその選択範囲が前方車両W1の一部に重なった状態が維持される。よって、車両2の傾きが大きい場合でも、第2の強調記号Va2が強調する前方車両W1が明確となる。同様に、図7(a)に示すように、仮に、車両2の傾きが閾値以上である場合に、選択範囲が狭い第1の強調記号Vb1にて前方車両W1を強調すると、前方車両W1に対して第1の強調記号Vb1がずれるため、視認者5に違和感を与える。この点、本実施形態では、車両2の傾きが閾値以上である場合に、図7(b)に示すように、第1の強調記号Vb1より選択範囲が大きい第2の強調記号Vb2にて前方車両W1を強調することで、第2の強調記号Vb2が前方車両W1を内包した状態が維持される。よって、車両2の傾きが大きい場合でも、視認者5に与える違和感を低減することができる。
【0024】
次に、図8のフローチャートを参照しつつ表示制御部14が実行する強調記号の設定に係るプログラムの処理手順について説明する。
【0025】
表示制御部14は、車両2のイグニッション(IGN)スイッチがオフ状態からオン状態に切り替わるのを待つ(ステップS1;NO)。表示制御部14は、IGNスイッチがオフ状態からオン状態に切り替わった旨判別すると(ステップS1;YES)、傾き検出装置107から車両2の傾き情報を取得する(ステップS2)。
【0026】
表示制御部14は、ステップS2で取得した車両2の傾きが予め設定される閾値Th以上か否かを判別する(ステップS3)。この閾値Thは、対象物(例えば、前方車両W1)に対する第1の強調記号Va1,Vb1のずれに伴い視認者5に違和感を与えることが予想される車両2の傾きに設定される。
【0027】
表示制御部14は、車両2の傾きが閾値Th未満である旨判別すると(ステップS3;NO)、図4(a)又は図6(a)に示すように、前方車両W1を強調する強調記号を第1の強調記号Va1,Vb1に設定し(ステップS8)、本フローチャートを終了する(エンド)。一方、表示制御部14は、車両2の傾きが閾値Th以上である旨判別したとき(ステップS3;YES)、乗員に対して車両2の重量バランスを是正する旨の案内を虚像Vの表示にて行う(ステップS4)。視認者5は、この案内に沿って、荷物の積載位置の移動、又は同乗者の座席移動を行う。なお、この案内は、虚像Vを通じた表示に替えて、又は虚像Vを通じた表示とともに、スピーカからの音声を通じて行ってもよい。
【0028】
表示制御部14は、上記案内(ステップS4)後に一定時間が経過するのを待つ(ステップS5;NO)。この一定時間は、視認者5が車両の重量バランスを是正するために必要な時間に設定されている。表示制御部14は、上記案内後に一定時間が経過した旨判別すると(ステップS5;YES)、再び、車両2の傾きが閾値Th以上か否かを判別する(ステップS6)。表示制御部14は、車両2の傾きが閾値Th以上である旨判別すると(ステップS6;YES)、図5(b)又は図7(b)に示すように、前方車両W1を強調する強調記号を第2の強調記号Va2,Vb2に設定し(ステップS7)、本フローチャートを終了する(エンド)。一方、上記案内により車両2の重量バランスが是正された場合、表示制御部14は、車両2の傾きが閾値Th未満である旨判別して(ステップS6;NO)、図4(a)又は図6(a)に示すように、前方車両W1を強調する強調記号を第1の強調記号Va1,Vb1に設定し(ステップS8)、本フローチャートを終了する(エンド)。
【0029】
表示制御部14は、図8のフローチャートを実行した後、IGNスイッチがオフ状態に切り替えられるまで、前方状況検出装置101からの車両2の前方状況に関する情報に基づき、前方車両W1の位置を把握する。そして、表示制御部14は、その前方車両W1を追従するように、上記ステップS7又はステップS8にて設定された第1の強調記号Va1,Vb1又は第2の強調記号Va2,Vb2の位置を移動して表示する。
【0030】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0031】
(1)車両2は、車両2の前方に存在する前方車両W1(対象物)を検出する前方状況検出装置101と、車両2の傾きを検出する傾き検出装置107と、車両2の車室内から見える実景に重畳させるように画像(虚像V)を表示する車載ヘッドアップディスプレイ装置(車載HUD装置)10とを備える。車載HUD装置10は、前方状況検出装置101によって検出された前方車両W1(対象物)の少なくとも一部を含む選択範囲を持つ強調記号Va1,Va2,Vb1,Vb2を画像として表示する表示制御部14を備える。表示制御部14は、傾き検出装置107により検出された車両2の傾きが大きい場合、第1の強調記号Va1,Vb1より選択範囲が大きい第2の強調記号Va2,Vb2を表示する。強調記号の選択範囲が大きくなることで、図5(b)及び図7(b)に示すように、第2の強調記号Va2,Vb2にて視認者5にとって違和感なく前方車両W1が強調された状態が維持される。従って、図5(a)に示すように、第1の強調記号Va1の選択範囲と前方車両W1とが離れること、又は図7(a)に示すように、第1の強調記号Vb1の選択範囲に前方車両W1が内包されなくなることが抑制される。これにより、視認者5に与える違和感を低減することができる。
【0032】
また、車両2の傾きが大きい場合であっても、図5(b)に示すように、第2の強調記号Va2の選択範囲が前方車両W1の一部に重なった状態に維持されるため、視認者5は前方車両W1を認識することができる。このため、車両2の傾きが大きい場合であっても、視認者5に対してより正確な情報提示が可能となる。
【0033】
(2)表示制御部14は、車両2の傾きが閾値Th未満であるとき、第1の強調記号Va1,Vb1を表示し、車両2の傾きが閾値Th以上であるとき、第1の強調記号Va1,Vb1より選択範囲が大きい第2の強調記号Va2,Vb2を表示する。この閾値Thは、前方車両W1に対する第1の強調記号Va1,Vb1のずれに伴い視認者に違和感を与えることが予想される車両2の傾きに設定される。このように、1つの閾値を利用して車両2の傾きの大小が判断されたうえで、第1及び第2の強調記号Va1,Va2,Vb1,Vb2が使い分けられる。よって、表示制御部14による簡易な制御によって、上述したように視認者5に与える違和感を低減することができる。
【0034】
(3)表示制御部14は、車両2の傾きが閾値Th以上であるとき、車両2の重量バランスの是正を促す案内を視認者(乗員)5に対して行う。その後に、表示制御部14は、再度、車両2の傾きが閾値Th以上であるとき、第2の強調記号Va2,Vb2を表示し、車両2の傾きが閾値Th未満であるとき、第1の強調記号Va1,Vb1を表示する。この案内に従って、視認者5が荷物の積載位置の移動、又は同乗者が座席移動を行った場合には、比較的に選択範囲が狭い第1の強調記号Va1,Vb1が表示される。従って、視認者5は、第1の強調記号Va1,Vb1を通じて前方車両W1をより確実に認識できる。
【0035】
(4)表示制御部14は、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替わった旨判別すると(ステップS1;YES)、ステップS2以降の処理、すなわち、強調記号の設定に係る処理を行う。ここで、イグニッションスイッチがオン状態に切り替えられたときには、車両2は停止した状態にある。よって、表示制御部14がステップS2にて取得する車両2の傾きに係る値に、車両2の走行(具体的には車両の減速、加速、右折又は左折等)に伴う外乱が混じることが抑制される。よって、表示制御部14は、実際の車両2の傾きに応じた強調記号を設定可能となる。
【0036】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0037】
上記実施形態においては、前方状況検出装置101は、ステレオカメラ101aを備えていたが、前方状況検出装置101は、ステレオカメラ101aに替えて又はステレオカメラ101aに加えて、赤外線カメラ、ミリ波レーザ等の近距離検出用レーダ又は超音波等を用いたソナー等を備えていてもよい。また、前方状況検出装置101は、車両2の前方の状況を把握できればよいので、車両2の位置を特定し、車両2が走行する道路に関する情報を取得可能なナビゲーションシステムで構成されていてもよい。また、前方状況検出装置101は、外部と通信可能な通信手段によって構成されてもよい。この構成においては、前方状況検出装置101は、道路交通情報通信システムなどの外部通信装置との間で通信を行うことによって、車両2の前方の状況を推定してもよい。
【0038】
上記実施形態においては、表示制御部14は、車両2の傾きが閾値Th以上であるか否かに基づき、第1及び第2の強調記号Va1,Va2,Vb1,Vb2を使い分けていた。しかし、閾値は、一つでなく、複数設定されてもよい。この場合、表示制御部14は、車両2の傾きと複数の閾値との比較に基づき、3つ以上の強調記号を使い分ける。さらに、表示制御部14は、車両2の傾きの大きさに応じて、強調記号の選択範囲の大きさを設定してもよい。これにより、車両2の傾き具合にいっそう適した強調記号が設定される。
【0039】
上記実施形態では、傾き検出装置107の傾き算出部107bが車両2の傾きを算出していたが、表示制御部14がこの算出処理を行ってもよい。同様に、前方状況検出装置101の前方状況解析部101bが実行していた処理を表示制御部14が行ってもよい。
【0040】
上記実施形態においては、図6(b)に示すように、第2の強調記号Vb2は、前方車両W1を囲むように形成されていたが、これに限定されない。例えば、図9(a)に示すように、第2の強調記号Vc2は、矢印のアイコンであってもよい。矢印のアイコンの場合、図9(b)の一点鎖線で示すように、その矢印が指し示す所定の領域が選択領域Aである。すなわち、この第2の強調記号Vc2と、その選択範囲Aとが異なる領域に設定されている。この場合にも、第2の強調記号Vc2の選択範囲Aは、第1の強調記号Vb1の選択範囲に比べて大きくなる。
【0041】
上記実施形態においては、第1及び第2の強調記号Va1,Va2,Vb1,Vb2,Vc2によって対象物としての前方車両W1が強調されていた。しかし、表示制御部14は、強調記号を通じて、道路の白線、歩行者又は障害物等を強調してもよい。この場合、この強調記号は、白線、歩行者又は障害物等に応じた形状に設定される。そして、上記実施形態と同様に、表示制御部14は、車両2の傾きが大きいほど、強調記号の選択範囲を大きくする。
【0042】
上記実施形態においては、表示制御部14は、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替わった旨判別すると(ステップS1;YES)、ステップS2以降の処理を実行していた。表示制御部14は、このステップS1に替えて、車速がゼロであるか否かを判断し、車速がゼロである旨判断したときのみステップS2以降の処理を実行してもよい。この構成によれば、車両2の走行開始後に車両2の重量バランスが是正された場合にも、停車したタイミングで、第2の強調記号Va2,Vb2から第1の強調記号Va1,Vb1に切り替え可能となる。また、このステップS1の処理を省略してもよい。この場合、表示制御部14は、車両2の走行中に、ステップS2〜S8の処理を繰り返し実行してもよい。
【0043】
上記実施形態では、図8のステップS3において、表示制御部14は、ステップS2における時刻での傾き情報に基づき車両の傾きを判断していたが、表示制御部14は、例えば時系列をずらして取得した複数の車両の傾きの平均値を算出し、その算出した平均値が所定の閾値以上か否かを判断してもよい。これにより、一時的な車両2の傾きにより、車両2が傾いていると判断されて、第2の強調記号Vb2が表示されることが抑制される。また、上記実施形態では、図8のステップS4において、表示制御部14は、乗員に対して車両2の重量バランスを是正する旨の案内を行った後に一定時間が経過するのを待って、ステップS6以降の処理を実行していた。表示制御部14は、さらにステップS5で一定時間が経過する前やステップS2からS5の処理を実行中に車速がゼロでない旨判断した場合にもステップS6以降の処理を実行してもよい。これにより、車両2が走行を開始した際に、遅滞なく車両2の最終的な傾きを判断し、傾きに応じた強調記号を表示することができる。
【0044】
上記実施形態においては、傾き検出装置107は、その3軸加速度センサ107aの検出結果に基づき車両2の傾きを検出していた。しかし、傾き検出装置107は、車両2の傾きを検出することができれば、3軸加速度センサ107aに限らず、1軸又は2軸の加速度センサを採用してもよい。また、傾き検出装置107は、ステレオカメラ101aからの画像情報に基づき、車両2の傾きを検出してもよい。具体的には、傾き検出装置107は、予め記憶される車両2に傾きがない場合のステレオカメラ101aからの画像情報と、現在のステレオカメラ101aからの画像情報とを比較して車両2の傾きを検出する。この場合、3軸加速度センサ107aが不要となるため、車載表示システム1はより簡易に構成される。
【0045】
上記実施形態においては、表示制御部14は、車載HUD装置10の筐体13の内部に設けられていたが、筐体13の外部に設けられていてもよい。
【0046】
上記実施形態においては、車載HUD装置10は、フロントガラス3に表示光Lを投射していたが、これに限らず、板状のハーフミラー、ホログラム素子等により構成されているコンバイナに表示光Lを投射してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…車載表示システム
2…車両
3…フロントガラス
5…視認者(乗員)
10…車載ヘッドアップディスプレイ装置(車載HUD装置)
14… 表示制御部
15…表示器
101…前方状況検出装置
101a…ステレオカメラ
101b…前方状況解析部
107…傾き検出装置
107a…3軸加速度センサ
107b…傾き算出部
Va1,Vb1…第1の強調記号
Va2,Vb2,Vc2…第2の強調記号
W1…前方車両
図1
図2
図3
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図7
図8
図9