(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本発明の一態様に係る充電状態均等化装置は、複数の単電池を直列接続してなる車載バッテリの各単電池を各別に放電させる放電部を備え、各単電池の充電状態を均等化する充電状態均等化装置であって、各単電池の充電状態を特定する充電状態特定部と、該充電状態特定部にて特定された各単電池の充電状態に応じて、特定の放電可能時間を前記複数の単電池に配分することにより、少なくとも各単電池の放電時間を含む放電計画を作成する作成部と、該作成部にて作成した放電計画に基づいて、前記放電部による各単電池の放電を制御する制御部とを備える。
【0014】
本態様にあっては、充電状態特定部が各単電池の充電状態を特定する。ここで行われる充電状態の特定は、均等化処理のための放電計画を作成するためのものである。そして、作成部は、充電状態特定部によって特定された各単電池の充電状態に応じた放電計画を作成する。放電計画は、特定の充電状態を目標値を設定するものでは無く、各単電池に配分された放電時間によって構成されている。そして、制御部は、放電計画に基づいて、各単電池を放電させる。放電計画は、充電状態を目標値としていないため、各単電池の充電状態を監視するために均等化処理を中断させる必要が無い。従って、均等化処理を効率的に実行することができる。
【0015】
(2)前記車載バッテリを搭載した車両が停車する位置及び停車する時間を対応付けて記憶する記憶部と、前記車両の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、該位置情報取得部にて取得した位置情報、前記記憶部が記憶する情報に基づいて、前記放電可能時間を推定する推定部とを備える構成が好ましい。
【0016】
本態様にあっては、記憶部は、車両が停車する位置と、該位置で車両が停車する時間とを対応付けて記憶している。例えば、記憶部は車両の停車履歴、つまり過去に車両が停車した位置と、そのときの停車時間とを対応付けて記憶している。なお、記憶部は一般的な傾向としての車両の停車位置及び停車時間を記憶するものであっても良い。位置情報取得部が取得する位置情報は、現在の車両の位置を示している。推定部は、現在の車両の位置情報と、記憶部が記憶する情報とに基づいて、車載バッテリの充放電が継続的に停止されるであろう放電可能時間を推定することができる。
【0017】
(3)前記車載バッテリを搭載した車両が停車する位置、停車する時間帯及び停車する時間を対応付けて記憶する記憶部と、前記車両の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、時計部と、前記位置情報取得部にて取得した位置情報、前記時計部の時刻情報、前記記憶部が記憶する情報に基づいて、前記放電可能時間を推定する推定部とを備える構成が好ましい。
【0018】
本態様にあっては、記憶部は、車両が停車する位置と、停車した時間帯と、該位置及び時間帯で車両が停車する時間とを対応付けて記憶している。例えば、記憶部は車両の停車履歴、つまり過去に車両が停車した位置と、停車したときの時間帯と、そのときの停車時間とを対応付けて記憶している。なお、記憶部は一般的な傾向としての車両の停車位置、停車時間帯及び停車時間を記憶するものであっても良い。位置情報取得部が取得する位置情報は、現在の車両の位置を示している。推定部は、現在の車両の位置情報と、現在の時刻情報と、記憶部が記憶する情報とに基づいて、車載バッテリの充放電が継続的に停止されるであろう放電可能時間を推定することができる。
【0019】
(4)前記車載バッテリを搭載した車両が停車する施設の種類及び該施設に停車する時間を対応付けて記憶する記憶部と、前記車両が位置する施設の種類を示す施設情報を取得する施設情報取得部と、該施設情報取得部にて取得した施設情報、前記記憶部が記憶する情報に基づいて、前記放電可能時間を推定する推定部とを備える構成が好ましい。
【0020】
本態様にあっては、記憶部は、車両が停車する施設の種類と、該施設に車両が停車する時間とを対応付けて記憶している。記憶部は一般的な傾向として、当該種類の施設に車両が停車する時間を記憶しても良いし、車両の停車履歴として当該種類の施設に車両が停車する時間を記憶しても良い。施設情報取得部は、車両が現在位置する施設の種類を示している。推定部は、車両が現在位置する施設を示す施設情報と、記憶部が記憶する情報とに基づいて、車載バッテリの充放電が継続的に停止されるであろう放電可能時間を推定することができる。
【0021】
(5)前記作成部は、前記放電可能時間にて放電が可能な最大放電量を算出する最大放電量算出部と、充電量又は充電率が最小の単電池と、他の単電池との充電量又は充電率の差分をそれぞれ算出する差分算出部と、該差分算出部にて算出した差分の和に対応する総放電量を算出する放電量算出部と、前記最大放電量算出部にて算出した最大放電量及び前記放電量算出部にて算出した総放電量を比較する比較部と、前記最大放電量算出部にて算出した最大放電量が前記放電量算出部にて算出した総放電量以上である場合、前記他の単電池に係る差分に応じた放電量を放電するために必要な放電時間を算出する放電時間算出部と、前記最大放電量算出部にて算出した最大放電量が前記放電量算出部にて算出した総放電量未満である場合、前記他の単電池に係る差分に対応する比率で前記放電可能時間を配分する配分部とを備える構成が好ましい。
【0022】
本態様にあっては、均等化処理を継続的に実行することができる放電可能時間が短い場合、配分部は、充電量又は充電率が最小の単電池と、他の単電池との充電量又は充電率の差分に対応する比率で、各単電池に前記放電可能時間を配分する。このように放電可能時間を配分して得られる放電計画によれば、各単電池のばらつきを全体的に抑えるようにして均等化処理を進めることができる(
図11参照)。
従って、特定の目標値を設定して各単電池を放電させる構成に比べて、放電可能時間が経過する前に均等化処理が中断された場合、各単電池の充電状態のばらつきを効果的に抑えた状態で均等化処理を終了することができる。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る充電状態均等化装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
図1は、本発明の実施形態1に係る充電状態均等化装置2の構成例を示すブロック図である。充電状態均等化装置2は、複数の単電池10を直列接続してなる車載バッテリ1に設けられており、複数の単電池10を各別に放電させることによって、各単電池10の充電状態を均等化する処理を行う。車載バッテリ1は、例えばリチウムイオン電池である。
なお、リチウムイオン電池は一例であり、ニッケル水素電池、コンデンサ、その他のキャパシタを車載バッテリ1として構成しても良い。
車載バッテリ1は、図示しない発電機、車両を駆動するモータ、車内灯、パワーウィンド等の車載負荷に接続されている。発電機は、ガソリンエンジンによって駆動し、発電する。発電機から車載バッテリ1に電力が供給され、車載バッテリ1の充電が行われる。車載負荷は、車載バッテリ1に蓄えられた電力にて駆動する。
【0025】
充電状態均等化装置2は、複数の単電池10を各別に放電させる放電部20と、車載バッテリ1の温度を検出する複数の温度検出部21と、各単電池10の電圧を検出する複数の電圧検出部22と、車載バッテリ1の電流を検出する電流検出部23と、マルチプレクサ24とを備える。また、バッテリ制御装置は、放電部20及びマルチプレクサ24の動作を制御する制御部25を備える。
【0026】
放電部20は各単電池10にそれぞれ設けられている。放電部20は、直列接続された放電スイッチ20aと、定電流回路20bとを備える。放電スイッチ20aの一端部は単電池10の正極に接続され、放電スイッチ20aの他端部は定電流回路20bの一端部に接続されている。定電流回路20bの他端部は単電池10の負極に接続されている。放電スイッチ20aのオンオフは制御部25によって制御される。
【0027】
各温度検出部21は、例えば、サーミスタ21a及び比較回路21bを備える。各温度検出部21のサーミスタ21aは、それぞれ車載バッテリ1の所定箇所に配されている。比較回路21bは、サーミスタ21aの両端電圧を比較し、該所定箇所の温度に応じた信号をマルチプレクサ24へ出力する。作図の便宜上、サーミスタ21a及び比較回路21bの接続状態を簡略化して図示しているが、サーミスタ21aには定電圧電源に接続されており、比較回路21bの2つの入力端子には、サーミスタ21aの各端部の電圧がそれぞれ入力されている。
【0028】
各電圧検出部22は、例えば、車載バッテリ1を構成する各単電池10の両端電圧を比較し、該単電池10の電圧に応じた信号をマルチプレクサ24へ出力する比較回路を備える。作図の便宜上、単電池10及び比較回路の接続状態を簡略化して図示しているが、比較回路の2つの入力端子には、単電池10の正極及び負極の電圧がそれぞれ入力されている。
【0029】
電流検出部23は、例えば、車載バッテリ1の電流を検出するための電流検出素子23aと、該電流検出素子23aの両端電圧を比較し、車載バッテリ1の電流に応じた信号をマルチプレクサ24へ出力する比較回路23bとを備える。電流検出素子23aは、例えば車載バッテリ1に直接接続されたシャント抵抗である。作図の便宜上、シャント抵抗及び比較回路23bの接続状態を簡略化して図示しているが、比較回路23bの2つの入力端子には、シャント抵抗の各端部の電圧がそれぞれ入力されている。
【0030】
マルチプレクサ24には、複数の温度検出部21、複数の電圧検出部22及び電流検出部23からそれぞれ出力された信号が入力する。マルチプレクサ24の動作は、制御部25によって制御される。マルチプレクサ24は、入力した信号の内、制御部25の制御に従って一の信号を選択し、選択された一の信号を制御部25へ出力する。
【0031】
制御部25は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、タイマ、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータである。制御部25の入出力インタフェースには、マルチプレクサ24、時刻を計時する時計部26及び取得部27が接続されている。
制御部25は、車載バッテリ1の温度、電流及び各単電池10の電圧に対応する信号の内、一の信号の出力を指示する選択信号をマルチプレクサ24へ出力する。マルチプレクサ24は、制御部25から出力された選択信号に基づいて、入力する複数の信号の内一の信号を選択し、選択された信号を制御部25へ出力する。制御部25は、マルチプレクサ24から出力され、入力した信号をデジタルデータにAD変換することによって、車載バッテリ1の温度、電流、各単電池10の電圧を示すデジタルデータを取得する。
【0032】
取得部27は、車載バッテリ1及び充電状態均等化装置2が搭載された車両の位置を示す位置情報、車両が位置する施設の種類を示す施設情報を取得する通信回路である。例えば、取得部27は、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)等の通信プロトコルに従って、カーナビゲーション装置との間でデータを送受信する。カーナビゲーション装置は、車両の位置情報及び施設情報を充電状態均等化装置2へ送信する通信機を備える。取得部27は、前記カーナビゲーション装置から送信された位置情報及び施設情報を取得する。
【0033】
また、制御部25は、単電池特性記憶部25a、充電率特性記憶部25b、ユーザ停車時間記憶部25c及び施設停車時間記憶部25dを備える。
【0034】
図2は、単電池特性記憶部25aが記憶するテーブルの一例を示す概念図である。単電池特性記憶部25aは、車載バッテリ1を構成する各単電池10を示す単電池番号と、満充電容量と、放電部20によって単電池10が放電する際に流れる電流の値と、各単電池10に対応する充電率特性を示す充電率特性IDとを対応付けて記憶している。本実施形態においては、放電部20によって各単電池10に流れる電流は、各単電池10で同一であるものとして説明する。放電部20によって単電池10に流れる電流の値を、所定均等化電流値と呼ぶ。
【0035】
図3は、充電率特性記憶部25bが記憶する充電率特性の一例を示す概念図である。充電率特性記憶部25bは、単電池10の充電率と、該単電池10の開放電圧との関係を示した充電率特性を記憶している。
図3は、ある温度における一つの単電池10の充電率特性を示しているが、開放電圧と、充電率との関係は車載バッテリ1の温度及び単電池10毎に異なり、充電率特性記憶部25bは、複数の温度及び単電池10毎に充電率特性を記憶している。各単電池10の充電率特性は、充電率特性IDに関連付けられており、制御部25は、単電池特性記憶部25aが記憶する情報から各単電池10の充電率特性IDを特定し、該充電率特性IDに基づいて、各単電池10の充電率特性の情報を充電率特性記憶部25bから読み出すことができる。
【0036】
図4は、ユーザ停車時間記憶部25cが記憶する情報の一例を示す概念図である。ユーザ停車時間記憶部25cは、車両が停車した時の時間帯と、車両の停車位置と、継続的に車両が停車した停車時間の平均値とを対応付けて記憶する。時間帯は、24時間を所定の時間間隔、例えば30分毎に区分して得られるものである。停車位置は、例えば緯度及び経度によって表される。
制御部25は、取得部27にて取得した車両の位置情報と、時計部26から得られる時刻情報とを用いて、車両の移動状態及び停止状態を認識することができ、車両が停車した時間帯、停車位置、及び停車時間の平均値を求め、ユーザ停車時間記憶部25cに格納する。
【0037】
図5は、施設停車時間記憶部25dが記憶するテーブルの一例を示す概念図である。施設停車時間記憶部25dは、車両が停車した位置にある施設と、該施設に車両が継続的に停車する停車時間とを対応付けて記憶する。
【0038】
図6は、均等化処理の処理手順を示すフローチャートである。制御部25は、現在の車両の位置及び時刻に基づいて、車両が継続的に停車すると予想される停車時間を推定する(ステップS11)。停車時間は、均等化処理を実行することができる放電可能時間に対応する。
【0039】
次いで制御部25は、各単電池10の充電状態を特定し(ステップS12)、均等化処理のための放電計画を作成する(ステップS13)。そして、制御部25は作成した放電計画に基づいて、放電部20による各単電池10の放電を制御する(ステップS14)。放電計画に従って均等化処理を終えた制御部25は、再び各単電池10の充電状態を特定し(ステップS15)、各単電池10の充電状態の微調整が必要か否かを判定する(ステップS16)。具体的には、各単電池10の充電率又は充電量の差分が所定値未満であるか否かを判定する。微調整が不要であると判定した場合(ステップS16:NO)、制御部25は処理を終える。微調整が必要であると判定した場合(ステップS16:YES)、制御部25は、充電率又は充電量の差分が所定値未満になるように各単電池10の放電を制御し(ステップS17)、処理を終える。
【0040】
図7は、停車時間の推定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。ステップS11において、制御部25は以下の処理を実行する。制御部25は、取得部27にて車両の位置情報を取得する(ステップS31)。また、制御部25は、取得部27にて車両が位置する施設情報を取得する(ステップS32)。なお、ステップS31を実行する制御部25及び取得部27は位置情報取得部として機能する。また、ステップS32を実行する制御部25及び取得部27は施設情報取得部として機能する。
【0041】
次いで、制御部25は、時計部26から時刻情報を取得する(ステップS33)。そして、制御部25は、ユーザの停車履歴に基づいて、放電可能時間を推定する(ステップS34)。具体的には、制御部25は、現在の車両の位置及び時刻に対応する平均停車時間をユーザ停車時間記憶部25cから読み出し、読み出された該平均停車時間を放電可能時間とする。
【0042】
次いで、制御部25は、放電可能時間を推定できたか否かを判定する(ステップS35)。推定できたと判定した場合(ステップS35:YES)、制御部25は、処理を終える。放電可能時間を推定できていないと判定した場合(ステップS35:NO)、制御部25は、車両が停車した施設の種類に基づいて、放電可能時間を推定し(ステップS36)、処理を終える。例えば、制御部25は、ステップS32にて取得した施設情報が示す施設の種類に対応する停車時間を、施設停車時間記憶部25dから読み出し、読み出された停車時間を放電可能時間とする。
【0043】
図8は、充電状態の特定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。ステップS12又はステップS15において、制御部25は以下の処理を実行する。制御部25は、電圧検出部22にて各単電池10の電圧を検出する(ステップS51)。また、制御部25は、温度検出部21にて車載バッテリ1の温度を検出する(ステップS52)。次いで、制御部25は、各単電池10の充電率又は充電量を特定する(ステップS53)。具体的には、制御部25は、各単電池10の電圧及び温度に対応する充電率特性を充電率特性記憶部25bから読み出し、読み出された充電率特性と、単電池10の電圧とに基づいて、該単電池10の充電率を特定することができる。また、各単電池10の充電容量を単電池特性記憶部25aから読み出し、読み出された充電容量と、充電率とを乗算することによって充電量を算出することができる。
なお、制御部25は、充電率又は充電量のいずれかを特定すれば良い。つまり、制御部25は、充電率を均等化する場合、制御部25は充電率を特定し、充電量を均等化する場合、制御部25は充電量を特定する。
【0044】
次いで、制御部25は、充電率又は充電量が最小の単電池10を特定する(ステップS54)。そして、制御部25は、充電率又は充電量が最小の単電池10と、他の単電池10との充電率又は充電量との差分を算出し(ステップS55)、処理を終える。
【0045】
図9は、放電計画の作成に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。ステップS13において、制御部25は以下の処理を実行する。制御部25は、ステップS11にて推定された放電可能時間で放電可能な最大放電量Dmaxを算出する(ステップS71)。具体的には、制御部25は、ステップS11にて推定された放電可能時間に、所定均等化電流値を乗算することによって、最大放電量Dmaxを算出することができる(ステップS71)。
【0046】
次いで、制御部25は、各単電池10の均等化処理に必要な総放電量Dを算出する(ステップS72)。
具体的には、充電率を均等化したい場合、制御部25は、充電率が最小の単電池10と、他の単電池10との充電率の差分に、該他の単電池の満充電量を乗算することによって、均等化処理に必要な前記他の単電池の放電量を算出する。そして、制御部25は、複
数の他の単電池10それぞれの放電量を加算することによって、総放電量Dを算出する。
充電量を均等化したい場合、制御部25は、充電量が最小の単電池10と、複数の他の単電池10との充電量の差分を加算することによって、総放電量Dを算出する。
【0047】
次いで、制御部25は、最大放電量Dmaxが総放電量D以上であるか否かを判定する(ステップS73)。最大放電量Dmaxが総放電量D以上であると判定した場合(ステップS73:YES)、制御部25は、各単電池10に係る差分に対応する充電量を所定均等化電流にて除算することによって、均等化処理に必要な各単電池10の放電時間を求める(ステップS74)。
具体的には、充電率を均等化する場合、制御部25は、最小の充電率に所定値を加算した充電率と、充電率が非最小である他の単電池10の充電率との差分に、該他の単電池10の満充電量を乗算する。そして、制御部25は、乗算して得た値を所定均等化電流にて除算することによって、均等化処理に必要な前記他の各単電池10の放電時間を求める。
充電量を均等化する場合、制御部25は、最小の充電量に所定値を加算した充電量と、充電量が非最小である他の単電池10の充電量との差分を所定均等化電流にて除算することによって、均等化処理に必要な前記他の各単電池10の放電時間を求める。
なお、ここで加算される所定値はマージンであり、他の単電池10の放電が進行し過ぎて、充電率が前記最小の充電率よりも低くなってしまうことを防止するためのものである。所定値は例えば30mVである。
【0048】
最大放電量Dmaxが総放電量D未満であると判定した場合(ステップS73:NO)、制御部25は、各単電池10に係る差分に対応する比率で放電可能時間を配分することによって、均等化処理に必要な各単電池10の放電時間を求める(ステップS75)。
具体的には、充電率を均等化する場合、制御部25は、最小の充電率に所定値を加算した充電率と、充電率が非最小の単電池10の充電率との差分を算出し、各単電池10の差分の比率を算出する。次いで、制御部25は、各単電池の前記差分に満充電量を乗算し、乗算して得た値の比率を算出する。そして、制御部25は、放電可能時間を、各単電池10の前記比率にて配分する。
充電量を均等化する場合、制御部25は、最小の充電量に所定値を加算した充電量と、充電量が非最小の単電池10の充電量との差分を算出し、各単電池10の差分の比率を算出する。そして、制御部25は、放電可能時間を、各単電池10の前記比率にて配分すると良い。
【0049】
ステップS74又はステップS75の処理を終えた制御部25は、各単電池10の放電順序を決定し(ステップS76)、処理を終える。例えば、制御部25は、充電率又は充電量が最小の単電池10と、他の単電池10との充電率又は充電量との差分が大きい単電池10から順に放電を行うように、放電順序を決定すれば良い。
【0050】
図10は、放電可能時間が十分であるときの放電計画の一例を示す概念図である。つまり、ステップS74の処理で算出される放電計画を示す概念図である。横軸は時間、縦軸は各単電池10の充電率を示している。ここでは、4つの単電池10を直列して車載バッテリ1が構成されている例を説明する。また、4つの単電池10の満充電量が等しく、充電率を均等化するものとして説明する。
図10中、「単電池X」、「単電池Y」、「単電池Z」及び「単電池M」は、4つの単電池10それぞれの充電率を示している。特に「単電池M」は、充電率が最も低い単電池10の充電率を示している。
【0051】
放電可能時間が十分長い場合、制御部25は、
図10に示すように、「単電池X」、「単電池Y」及び「単電池Z」それぞれの充電率が、最小の充電率よりも所定値だけ高い充電率(以下、目標充電率と呼ぶ。)になるまで各単電池10が放電するように放電計画を作成する。具体的には、単電池Xの放電時間は、目標充電率と、単電池Xの充電率との差分に満充電量を乗算し、乗算して得た値を所定均等化電流値で除算して得られる時間である。同様にして、単電池Y及び単電池Zの放電時間は、目標充電率と、単電池Y及び単電池Zの充電率との差分に満充電量を乗算し、乗算して得た値を所定均等化電流値で除算して得られる時間である。
【0052】
図11は、放電可能時間が不十分であるときの放電計画の一例を示す概念図である。つまり、ステップS75の処理で算出される放電計画を示す概念図である。放電時間が不十分である場合、各単電池10の充電率が目標充電率になるまで放電させることはできない。そこで、
図11に示すように、各単電池10の充電率と、目標充電率との差分に比例するように放電可能時間を配分することによって、放電計画を作成する。
具体的には、単電池X,Y,Zの充電率と、目標充電率との差分をそれぞれ、差分x、差分y、差分z、各単電池X,Y,Zそれぞれの放電時間をT1,T2,T3とした場合、下記式(1)及び(2)を満たすように各単電池10の放電時間を算出する。
差分x/T1=差分y/T2=差分z/T3…(1)
放電可能時間=T1+T2+T3…(2)
【0053】
なお、各単電池10の満充電量が異なる場合、各単電池X,Y,Zの満充電量をそれぞれ、Xm,Ym,Zmとすると、下記式(3)及び(4)を満たすように各単電池10の放電時間を算出する。
差分x・Xm/T1=差分y・Ym/T2=差分z・Zm/T3…(3)
放電可能時間=T1+T2+T3…(4)
【0054】
図12は、放電制御に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。ステップS14において、制御部25は以下の処理を実行する。制御部25は、作成された放電計画に従って、一の単電池10の放電スイッチ20aをオンにし、該単電池10の放電を開始させる(ステップS91)。そして、制御部25は、タイマにて計時を開始し(ステップS92)、放電計画が示す前記単電池10の放電時間が経過したか否かを判定する(ステップS93)。放電計画が示す放電時間が経過していないと判定した場合(ステップS93:NO)、制御部25は処理をステップS92へ戻し、単電池10の放電を継続させる。放電計画が示す放電時間が経過したと判定した場合(ステップS93:YES)、制御部25は、放電スイッチ20aをオフにし、放電を停止させる(ステップS94)。
【0055】
次いで、制御部25は、放電計画に従った均等化処理を終了したか否かを判定する(ステップS95)。均等化処理を終了したと判定した場合(ステップS95:YES)、制御部25は処理を終える。均等化処理を終了していないと判定した場合(ステップS95:NO)、制御部25は、処理をステップS91へ戻し、他の単電池10の放電処理を行う。
【0056】
このように構成された充電状態均等化装置2によれば、各単電池10の充電状態の監視が不要な放電計画を作成し、車載バッテリ1を構成する各単電池10の均等化処理を効率的に実行することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、ユーザの車両停車履歴を用いて、車両が停車し、継続的に均等化処理が可能な放電可能時間を推定することができる。従って、より的確に車載バッテリ1の均等化処理を実行することができる。
【0058】
特に、本実施形態によれば、ユーザ停車時間記憶部25cは、停車した車両の位置、停車した時の時間帯と、車両の停車時間とを対応付けて記憶している。従って、制御部25は、車両が停車した位置及び時間帯を考慮して、車両が停車し、継続的に均等化処理が可能な放電可能時間を推定することができる。よって、より的確に車載バッテリ1の均等化処理を実行することができる。
【0059】
更に、本実施形態によれば、車両が停車した位置の施設の種類に基づいて、車両が停車し、継続的に均等化処理が可能な放電可能時間を推定することができる。従って、ユーザの停車履歴の情報が無くても、的確に車載バッテリ1の均等化処理を実行することができる。
【0060】
更にまた、本実施形態によれば、各単電池に係る充電率又は充電量の差分の比率に応じて、放電可能時間を配分する構成であるため、たとえ均等化処理が中断されても各単電池10の充電状態のばらつきを効果的に抑えた状態で均等化処理を終了することができる。
【0061】
(変形例1)
なお、本実施形態によれば、ステップS76において、各単電池10を1回ずつ放電させるように放電順序を決定する例を説明したが、各単電池10を複数回に分けて順次放電させるように放電順序を決定しても良い。例えば、3つの単電池X、単電池Y、単電池Zを放電させる場合、X、Y、Zの順で1巡にて単電池10を放電させても良いし、X、Y、Z、X、Y、Zの順で2巡にて単電池10を放電させても良い。もちろん、3回以上、複数巡にわたって複数の単電池10を放電させるようにしても良い。
【0062】
(変形例2)
また、本実施形態では、放電可能時間を推定する構成を説明したが、放電可能時間を推定値では無く、固定値の所定時間として、放電計画を作成し、均等化処理を実行しても良い。
【0063】
(変形例3)
更に、本実施形態では、車両の停車履歴情報を用いて放電可能時間を推定する処理と、車両が停車した位置の施設の種類に基づいて放電可能時間を推定する処理との双方を行える構成を説明したが、言うまでもなく、いずれか一方の処理を実行するように構成しても良い。