特許第6561638号(P6561638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561638フレキシブルプリント配線板、集光型太陽光発電モジュール、及び、集光型太陽光発電パネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561638
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板、集光型太陽光発電モジュール、及び、集光型太陽光発電パネル
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20190808BHJP
   H01L 31/054 20140101ALI20190808BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20190808BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L31/04 570
   H01L31/04 620
   H05K1/02 E
   B32B15/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-137836(P2015-137836)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-22231(P2017-22231A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷 和正
(72)【発明者】
【氏名】永井 陽一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 健司
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 孝
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−149831(JP,A)
【文献】 特開2004−153123(JP,A)
【文献】 特開昭58−111206(JP,A)
【文献】 特表2013−535100(JP,A)
【文献】 特開2009−147155(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0061718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/056
H02S 40/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電素子が接続される導電層と、絶縁性を有しかつ前記導電層が接合される絶縁層と、この絶縁層を補強する補強層と、前記絶縁層と前記補強層とを接合する第1の接着層と、前記補強層と集光型太陽光発電モジュールの筐体とを接合する第2の接着層とを有する集光型太陽光発電モジュール用のフレキシブルプリント配線板であって、
前記補強層が、前記導電層と同一材料により形成され、
前記補強層の厚さが、前記導電層と前記絶縁層と前記第1及び第2の接着層との厚さの和よりも小さい、フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記導電層及び前記補強層が、銅製である、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記絶縁層に接合される前記補強層の一面に黒化処理が施されている、請求項1又は請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記補強層の厚さが、30〜140μmの範囲で設定されている、請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記発電素子が接続される前記導電層の面を、前記発電素子を避けた状態で覆う保護層が設けられている、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
取付面を有する筐体と、前記取付面に接合される請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板と、このフレキシブルプリント配線板の発電素子に対応して前記筐体に取り付けられ、太陽光を前記発電素子に集光するレンズ要素と、を備えている集光型太陽光発電モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の集光型太陽光発電モジュールを複数個集合させてなる集光型太陽光発電パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を発電素子に集光させて発電する集光型太陽光発電(CPV:Concentrated Photovoltaic)に用いられるフレキシブルプリント配線板、集光型太陽光発電モジュール、及び集光型太陽光発電パネルに関し、さらに、フレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の集光型太陽光発電モジュールを縦横に配列させた集光型太陽光発電パネルによって、所望の発電電力を得るようにした集光型太陽光発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載の発電装置に用いられる発電モジュールは、器形状の筐体の内部に、発電素子を有するフレキシブルプリント配線板を備え、筐体の表面側に設けられた集光レンズにより発電素子に太陽光を集め、発電素子において発電を行うものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−80760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のフレキシブルプリント配線板は、発電素子に接続される銅製の導電層と、この導電層を筐体側から絶縁する絶縁層とを備え、筐体に対して密着した取り付けができるようにある程度の柔軟性を有している。また、製造時等の取り扱いを容易にするため、フレキシブルプリント配線板にある程度の剛性を持たせる補強板が絶縁層の裏面側に設けられている。この補強板は、発電素子や導電層からの熱を筐体側へ逃がすために放熱性を有するアルミニウム材によって形成されている。
【0005】
しかし、アルミニウム材からなる補強板は、十分な放熱性を確保するために分厚くせざるを得ず、フレキシブルプリント配線板の軽量化等が困難となる。
また、銅製の導電層とアルミニウム製の補強板とは熱膨張率が異なるため、熱プレス等によってこれらを接合したときの熱膨張差等によって寸法にズレが生じ易くなる。そして、導電層、絶縁層、及び補強板を接合した中間材料から所望形状のフレキシブルプリント配線板を切り出す加工を行う場合、材料の異なる導電層と補強板との双方の切断条件を考慮しなければならないので、導電層及び絶縁層と、補強板とをそれぞれ別々に所望形状に切断し、その後、これらを接合するという製造方法が採られているのが実状である。この場合、製造に要する工程が多くなるとともに、接合の際の位置合わせが困難となる。
さらに、補強板の剛性が低い場合、切断後の熱プレス等による接合が困難となるため、上述のような放熱性による理由だけでなく、製造上の理由からも補強板を分厚く形成して剛性を高める必要があった。
【0006】
本発明は、上述したような製造上の問題等を解決し、製造性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板は、
発電素子が接続される導電層と、絶縁性を有する絶縁層と、この絶縁層を補強する補強層とが接合されている集光型太陽光発電モジュール用のフレキシブルプリント配線板であって、
前記補強層が、前記導電層と同一材料により形成されているものである。
【0008】
本発明に係る集光型太陽光発電モジュールは、
取付面を有する筐体と、前記取付面に接合される上記のフレキシブルプリント配線板と、前記発電素子に対応して前記筐体に取り付けられ、太陽光を前記発電素子に集光するレンズ要素と、を備えている。
【0009】
本発明に係る集光型太陽光発電パネルは、上記の集光型太陽光発電モジュールを複数個集合させてなる。
【0010】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、
発電素子が接続される導電層と、絶縁性を有する絶縁層と、前記導電層と同一材料により形成され、前記絶縁層を補強する補強層とを接合し、集光型太陽光発電モジュール用のフレキシブルプリント配線板の中間材料を形成する工程、及び
前記中間材料を所望の形状に切断加工する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フレキシブルプリント配線板の製造性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る集光型太陽光発電装置を示す斜視図である。
図2】集光型太陽光発電モジュールを拡大して示す斜視図(一部破断)である。
図3図2におけるIII部の拡大図である。
図4】発電素子が設けられている部位での、集光型太陽光発電モジュールの部分断面の概要を示す図である。
図5】実施形態と従来技術とのフレキシブルプリント配線板の断面を比較して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
(1)実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、
発電素子が接続される導電層と、絶縁性を有する絶縁層と、この絶縁層を補強する補強層とが接合されている集光型太陽光発電モジュール用のフレキシブルプリント配線板であって、
前記補強層が、前記導電層と同一材料により形成されているものである。
【0014】
このような構成によって、補強層と導電層との熱膨張率が同一となるので、これらを含む各層を熱プレス等によって接合したとしても寸法のズレが生じ難い。また、補強層と導電層とを同一の条件で加工することができるので、これらを含む各層を接合した状態で所望の形状に加工し易くすることができる。
【0015】
(2)前記導電層及び前記補強層は、銅製であってもよい。
補強層が銅製である場合、従来のアルミニウム製の補強層と比べて熱伝導率が高いため、放熱性を確保した上で薄く形成することができる。したがって、フレキシブルプリント配線板の軽量化を図ることができる。
【0016】
(3)前記絶縁層に接合される前記補強層の一面には、黒化処理が施されていることが好ましい。
これによって、補強層と絶縁層との接合強度を高めることができる。
【0017】
(4)前記補強層の厚さは、30〜140μmの範囲で設定されることが好ましい。
この範囲よりも小さいと、放熱性や補強の効果が小さくなり、この範囲よりも大きいと、軽量化や柔軟性、低コスト化の効果が小さくなるからである。
【0018】
(5)前記発電素子が接続される前記導電層の面には、前記発電素子を避けた状態で覆う保護層が設けられていてもよい。
このような構成によって、保護層によって導電層が保護され、耐久性を高めることができるともに、漏電の発生を防止することができる。
【0019】
(6)前記絶縁層が接合される面とは反対側の前記補強層の面には、集光型太陽光発電モジュールの筐体に接合させるための接着層が設けられていてもよい。
このような構成によって、集光型太陽光発電モジュールの筐体に、フレキシブルプリント配線板を接着して取り付ける作業を迅速かつ簡単に行うことができる。
【0020】
(7)実施形態に係る集光型太陽光発電モジュールは、
取付面を有する筐体と、前記取付面に接合される上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のフレキシブルプリント配線板と、このフレキシブルプリント配線板の発電素子に対応して前記筐体に取り付けられ、太陽光を前記発電素子に集光するレンズ要素と、を備えている。
このような構成によって、製造性の良好な集光型太陽光発電モジュールを提供することができる。
【0021】
(8)実施形態に係る集光型太陽光発電パネルは、上記(7)に記載の集光型太陽光発電モジュールを複数個集合させてなる。
このような構成によって、製造性の良好な集光型太陽光発電パネルを提供することができる。
【0022】
(9)実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、
発電素子が接続される導電層と、絶縁性を有する絶縁層と、前記導電層と同一材料により形成され、前記絶縁層を補強する補強層とを接合し、集光型太陽光発電モジュール用のフレキシブルプリント配線板の中間材料を形成する工程、及び
前記中間材料を所望の形状に切断加工する工程と、を含む。
【0023】
この構成によれば、導電層と補強層とが同一材料であるので、これらを含む各層を接合した状態で所望の形状に容易に切断することができ、製造工程を少なくし、製造コストの低減を図ることができる。また、導電層と補強層とを含む各層を予め接合した状態で所望の形状に切断するので、切断の際に補強層に求められる剛性を低くすることができ、補強層の薄肉化を図ることができる。
【0024】
[実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係る集光型太陽光発電装置を示す斜視図である。
図において、集光型太陽光発電装置100は、集光型太陽光発電パネル1と、これを背面中央で支持する支柱2と、支柱2を取り付ける架台3とを備えている。
集光型太陽光発電パネル1は、例えば、支柱2との接続用の中央部を除く、62個(縦7×横9−1)の集光型太陽光発電モジュール1Mを縦横に集合させて成る。
【0025】
1個の集光型太陽光発電モジュール1Mの定格出力は例えば約120Wであり、集光型太陽光発電パネル1全体としては、約7.5kWの定格出力となる。
太陽光発電パネル1は、図示しない回転機構により支柱2を軸として方位角及び仰角の2方向に回動することができ、集光型太陽光発電パネル1を常に太陽の方向へ向けるように追尾させることができる。
【0026】
図2は、集光型太陽光発電モジュール(以下、単にモジュールとも言う。)1Mを拡大して示す斜視図(一部破断)である。
モジュール1Mは、底板11aを有する器状(バット状)の筐体11と、底板11aの上面(取付面)に接して設けられたフレキシブルプリント配線板12と、筐体11の開口部分を塞ぐように、鍔部11bに取り付けられた1次集光部13とを、主要な構成要素として備えている。筐体11は、金属製であり、好ましくはアルミニウム製である。筐体11は、金属製であることによって良好な熱伝導性を有する。したがって、フレキシブルプリント配線板12から筐体11への放熱性が特に良い。モジュール1Mの大きさは、例えば、縦、横、及び深さの寸法をそれぞれ840mm、640mm、85mmとすることができる。
【0027】
1次集光部13は、フレネルレンズアレイであり、太陽光を集光するレンズ要素としてのフレネルレンズ13fがマトリックス状に複数個(例えば縦16×横12で、192個)並んで形成されている。このような1次集光部13は、例えば、ガラス板を基材として、その裏面(内側)にシリコーン樹脂膜を形成したものとすることができる。フレネルレンズ13fは、この樹脂膜に形成される。筐体11の外面には、モジュール1Mの出力を取り出すためのコネクタ14が設けられている。
【0028】
図3は、図2におけるIII部の拡大図である。図3において、フレキシブルプリント配線板12は、リボン状のフレキシブル基板12fと、その上面に設けられた発電素子(太陽電池)121と、この発電素子121に被せるように設けられた2次集光部122とを備えている。発電素子121及び2次集光部122のセットは、1次集光部13の各フレネルレンズ13fに対応した位置に、同一の個数だけ設けられている。2次集光部122は、各フレネルレンズ13fから入射された太陽光を発電素子121上に集める。2次集光部122は、例えばレンズである。本実施形態では、球形のレンズが用いられているが、球形以外の形状であってもよい。また、レンズに変えて、光を乱反射しながら下方へ導く反射鏡であってもよい。
【0029】
図4は、発電素子121が設けられている部位での、モジュール1Mの部分断面の概要を示す図である。
フレキシブル基板12fは、接着層等もその一部であると考えると、下から順に、接着層123と、補強板(補強層)124と、接着層125と、絶縁基材(絶縁層)126と、パターン(導電層)127と、カバーレイ(保護層)128とによって構成されている。そして、フレキシブルプリント配線板12は、フレキシブル基板12fを構成する各層と、発電素子121及び2次集光部122とが一体となることによって構成されている。なお、図4に示している各層123〜128の厚さは、実寸とほぼ比例している。
【0030】
発電素子121は、出力端子であるリードフレーム121aを有しており、このリードフレーム121aが、パターン127の所定部位に電気的に接続されている。また、図4中の122aは、発電素子121上において2次集光部122を支持する支持体である。
パターン127は、例えば銅箔からなり、絶縁基材126上にエッチング等により形成されている。
絶縁基材126は、例えば耐熱性に優れたポリイミド製である。絶縁基材126によって、パターン127は、筐体11から絶縁されている。
【0031】
一番下の接着層123は、筐体11の底板11aと補強板124とを互いに接着している。この接着層123は、筐体11と補強板124を同一の電位(接地電位)に保つべく導電性を有している。また、この接着層123は、例えば両面テープにより構成され、フレキシブルプリント配線板12が筐体11に取り付けられていない単体の状態で、予め補強板124の下面に取り付けられる。
【0032】
他の接着層125は、補強板124と絶縁基材126とを互いに接着している。具体的には、補強板124と絶縁基材126とは接着層125を介して熱プレスによって接合される。絶縁基材126とパターン127とは、狭義のフレキシブル基板12fを構成している。
【0033】
パターン127をカバーするカバーレイ128は、絶縁材料の層であり、耐電圧に優れている。カバーレイ128は、例えばポリイミド等の合成樹脂製とすることができる。カバーレイ128は、熱溶着によってパターン127に密着した状態で接合される。カバーレイ128は、パターン127を覆うことによって保護するとともに、漏電の発生を防止する。
【0034】
カバーレイ128は、熱伝導率が0.2[W/m・K]程度とされる。このように、カバーレイ128の熱伝導率が比較的低く設定されることによって、太陽光の熱伝導を抑制することができる。この観点から、カバーレイ128は、太陽光の反射率の高い「白色」系とすることが好ましい。
【0035】
補強板124は、柔軟性を失わせない程度に、フレキシブルプリント配線板12に若干の剛性を持たせている。そのため、発電モジュール1Mの製造時等におけるフレキシブルプリント配線板12の取り扱いを容易にすることができる。また、補強板124により、フレキシブルプリント配線板12全体の変形防止効果が得られ、パターン127の形状を保つことができる。
【0036】
本実施形態の補強板124は、銅製とされている。そのため、発電素子121やパターン127等の熱を筐体11の底板11aへ放熱させるための優れた熱伝導性(放熱性)を有している。
表1に、フレキシブルプリント配線板12の各層の厚さについて、その推奨値と適用可能な範囲とをそれぞれ示す。なお、表1における各層の上下方向の記載順は、図4における各層の上下方向の積層順に対応している。
【0037】
【表1】
【0038】
本実施形態の補強板124は銅製であり、放熱性及び補強の観点から、望ましい厚さが105μmとされている。一方、従来(例えば、特許文献1参照)のフレキシブル基板の補強板は、アルミニウム製とされている。アルミニウムの熱伝導率は、240W/mKであり、銅の熱伝導率400W/mKよりも小さいため、所望の放熱性を得ようとするとより厚さを大きくしなければならない。
【0039】
具体的に、本実施形態の銅製の補強板124は、厚さが105μmであるのに対して、従来のアルミニウム製の補強板は、厚さが800μmとされている。その結果、本実施形態のフレキシブルプリント配線板12は、補強板124以外の各層の厚さを同一とした場合の従来のフレキシブルプリント配線板と比較して、約1/5の厚さとなる。図5は、本実施形態と従来技術とでフレキシブルプリント配線板12の厚さの違いを視覚的に表したものである。図5において、従来技術には、本実施形態と対応する層に「’」付きの符号を付している。
【0040】
一方、銅の比重は約9.0であり、アルミニウムの比重である約2.7よりも大きい。しかしながら、本実施形態の補強板124の厚さ(105μm)は、従来のアルミニウム製の補強板の厚さ(800μm)から大きく減少しているので、その重量は約半分となっている。したがって、本実施形態の補強板124は、厚さ及び重量のいずれもが従来よりも小さくなり、材料費を低減することができる。
【0041】
また、補強板124の厚さ及び重量が小さくなるため、フレキシブルプリント配線板12全体の薄肉化及び軽量化を図ることができる。そのため、フレキシブルプリント配線板12の取り扱いがより容易となり、太陽光発電モジュールを製造する際の作業性を向上させることができる。
【0042】
アルミニウムは、モース硬度が約2.5であるのに対して、銅は、モース硬度が約3.0であり、アルミニウムよりもやや大きくなる。しかし、本実施形態の補強板124は、従来よりも厚さが小さくなっているため、フレキシブルプリント配線板12に求められる柔軟性を十分に確保することができる。
【0043】
なお、表1に示すように、補強板124の厚さは、30μm〜140μmの範囲に設定することができる。補強板124の厚さが30μmよりも小さいと放熱性や補強としての効果が小さくなり、140μmよりも大きいと、フレキシブルプリント配線板12の軽量化や柔軟性、低コスト化の効果が小さくなるからである。なお、補強板124の軽量化、柔軟性、及び低コスト化を重視する場合、補強板124の厚さは、30μm〜110μmの範囲に設定することがより好ましい。
【0044】
フレキシブルプリント配線板12は、パターン127が形成された絶縁基材126に、接着層125を介して補強板124を接合した後、プレス等を用いて所定の形状(細長いリボン状)に切断加工(打ち抜き加工)される。あるいは、パターン127が形成された絶縁基材126に補強板124を接合した後、パターン127上に発電素子121及び2次集光部122を取り付け、補強板124に接着層123を取り付け、その後、所定の形状に切断加工される。
【0045】
本実施形態では、パターン127と補強板124とがともに銅製であるため、ほぼ同じ条件でこれらを切断加工することができる。したがって、パターン127を形成した絶縁基材126と補強板124とを別々に切断しなくても、接合した状態で同時に切断加工を行うことができ、別々に切断する場合に比べて製造工程を少なくすることができる。
【0046】
また、パターン127と補強板124とが同一材料であり、熱膨張率も同一であるため、これらが熱プレスによって接合されたときの熱膨張差や、接合後冷却されたときの熱収縮差によって寸法のずれが生じ難くなっている。そのため、製品の寸法精度を高めることが可能となり、製品の不良を減少させ、歩留まりを向上させることができる。
さらに、パターン127を形成した絶縁基材126と補強板124とを別々に切断した後に熱プレスによって接合する場合、補強板124の剛性が低いと熱プレスによって適切に接合することが難しくなるが、本実施形態では、パターン127を形成した絶縁基材126と補強板124とを予め接合してから切断を行うので、補強板124に求められる剛性が低くなり、その分、補強板124を薄肉化することができる。また、本実施形態では、従来のアルミニウム製の補強板に比べて加工性のよい銅製の補強板124を用いているので、切断に用いる金型の寿命を高めることができる。また、薄肉の銅板は流通量が多いため、コストを抑制することができる。
【0047】
補強板124は、接着層125側の面に黒化処理が施され、表面に微細な凹凸が形成されている。これにより、絶縁基材126に対する接着力を高めることができるとともに、気泡の発生を抑制することができる。本実施形態においては、おおよそ3〜5倍に接着力を高めることができた。また、補強板124の接着層123側の面は鏡面加工とされている。この面は、接着層123を介して筐体11の底板11aと同電位とされれば足りるため、黒化処理は施さなくてもよい。
【0048】
なお、上記実施形態において筐体11は金属製としたが、金属製に限定される訳ではなく、樹脂製とすることも可能である。この場合、筐体11が特に軽量となり、集光型太陽光発電モジュール1M全体としても特に軽量となる。なお、樹脂であっても熱伝導性はあるので、一定の放熱性は得られる。特に、高熱伝導性を有する絶縁性フィラー(例えば、アルミナ、シリカ、炭化珪素、酸化マグネシウム等)を添加した樹脂は、熱伝導性に優れ、放熱性が向上するので、好適である。また、樹脂の表面に金属コーティングを施すことにより、表面の熱伝導性を金属と同等に高めることもできる。
【0049】
また、上記実施形態において、2次集光部122は発電素子121とともにフレキシブル基板12f上に実装したが、2次集光部122をフレキシブル基板12fとは別に設けることも可能であり、また、2次集光部そのものを省略することもあり得る。
パターン127と補強板124とは、同一の材料であれば銅以外の金属により形成されてもよい。
【0050】
表1に示す各層の推奨値や適用範囲は一例であり、必ずしも限定されるものではなく、各層の素材によっても変化するものである。特に、補強板については、放熱性、軽量化、柔軟性、コストの観点で、従来のアルミニウム製の補強板と略同等か、少なくとも1つが優れた結果を得ることができる厚さ又はその範囲が設定されればよい。
【0051】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 :集光型太陽光発電パネル
1M :集光型太陽光発電モジュール
2 :支柱
3 :架台
11 :筐体
11a :底板
11b :鍔部
12 :フレキシブルプリント配線板
12f :フレキシブル基板
13 :1次集光部
13f :フレネルレンズ
14 :コネクタ
100 :集光型太陽光発電装置
121 :発電素子
121a :リードフレーム
122 :2次集光部
123 :接着層
123’ :接着層
124 :補強板(補強層)
124’ :補強板(補強層)
125 :接着層
125’ :接着層
126 :絶縁基材(絶縁層)
126’ :絶縁基材(絶縁層)
127 :パターン(導電層)
127’ :パターン(導電層)
128 :カバーレイ(保護層)
128’ :カバーレイ(保護層)
図1
図2
図3
図4
図5