特許第6561640号(P6561640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561640
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】歪みセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   G01B7/16 R
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-138130(P2015-138130)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-20872(P2017-20872A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176876
【弁理士】
【氏名又は名称】各務 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克典
(72)【発明者】
【氏名】奥宮 保郎
(72)【発明者】
【氏名】谷高 幸司
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−078967(JP,A)
【文献】 特開2014−038088(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0048849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00− 7/34
C01B 32/00−32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する帯状の基板と、
前記基板の一方の面に積層されるCNT膜と、
前記基板又はCNT膜の少なくとも一方の面に積層され、CNT膜と電気的に接続される少なくとも一対の電極と、
前記電極と共に前記基板及びCNT膜を挟持する挟持シートと
を備える歪みセンサ素子であって、
前記電極及び挟持シートによる挟持領域又はその領域から延出する領域に縫製可能部を有し、
前記一対の電極の間で前記基板及びCNT膜を挟持する中間保持シートをさらに備え、
前記中間保持シートによる挟持領域又はその領域から延出する領域にさらなる縫製可能部を有することを特徴とする歪みセンサ素子。
【請求項2】
前記縫製可能部が、前記挟持領域又は前記延出領域に形成される貫通孔である請求項1に記載の歪みセンサ素子。
【請求項3】
前記縫製可能部が、前記挟持領域又は前記延出領域の側縁に形成される凹部である請求項1に記載の歪みセンサ素子。
【請求項4】
前記縫製可能部が、前記延出領域に配設される布帛である請求項1に記載の歪みセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪みセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮に対する抵抗体の抵抗変化から歪みを検出する歪みセンサ素子が知られている。また、このような抵抗体としては、一般的には金属や半導体が用いられている。しかしながら、金属や半導体は可逆的に伸縮可能な変形量が小さい。そのため、抵抗体として金属や半導体を用いた歪みセンサ素子は用途等に制限がある。
【0003】
そこで、前記抵抗体として、カーボンナノチューブ(CNT)を用いた歪みセンサ素子が提案されている(特開2011−47702号公報参照)。この歪みセンサ素子は、所定方向に配向させた複数のカーボンナノチューブを含むCNT膜を有し、CNT膜の両端部の表面に一対の電極を設けることにより、この一対の電極によってCNT膜の抵抗の変化を検出可能とされている。この歪みセンサ素子は、CNT膜がカーボンナノチューブの配向方向又は配向方向と垂直方向へ比較的大きく伸縮できるため、大きな歪みにも対応できる。
【0004】
前記公報記載の歪みセンサ素子は、衣服等に貼り付けて人体の動きを検出するために使用することが企図されている。しかしながら、衣服等の正確な位置に歪みセンサ素子を適切に貼着することは必ずしも容易ではない。具体的には、歪みセンサ素子が位置ずれしてCNT膜が衣服の生地に対して弛んだ状態で貼着されると人体の小さな動きを検出することができない。逆に、歪みセンサ素子の位置ずれによりCNT膜に対して衣服の生地が弛んだ状態で貼着されると、衣服の着用時に歪みセンサ素子の弾性によって生地がひだ寄せされて人体に密着できなくなることで、人体の動きを正確に検出できなくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−47702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、衣服等に適切に取り付けられる歪みセンサ素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた発明は、柔軟性を有する帯状の基板と、前記基板の一方の面に積層されるCNT膜と、前記基板又はCNT膜の少なくとも一方の面に積層され、CNT膜と電気的に接続される少なくとも一対の電極と、前記電極と共に前記基板及びCNT膜を挟持する挟持シートとを備える歪みセンサ素子であって、前記電極及び挟持シートによる挟持領域又はその領域から延出する領域に縫製可能部を有することを特徴とする歪みセンサ素子である。
【0008】
当該歪みセンサ素子は、前記挟持領域又はその領域から延出する領域に縫製可能部を有することによって、衣服等の生地に縫い付けることができる。このため、CNT膜の両端を衣服の生地上の正確な位置に縫い付けて固定したり、仮縫いした状態で接着剤等により固定することができる。従って、当該歪みセンサ素子は、測定対象物(人体等)の動きを比較的正確に検出できるよう、衣服等に適切に取り付けることができる。なお、「帯状」とは、平面視で長方形状であるものに限られず、その幅が変化するものも含む。
【0009】
前記一対の電極の間で前記基板及びCNT膜を挟持する中間保持シートをさらに備え、前記中間保持シートによる挟持領域又はその領域から延出する領域にさらなる縫製可能部を有する。このように、前記一対の電極の間で前記基板及びCNT膜を挟持する中間保持シートをさらに備え、前記中間保持シートによる挟持領域又はその領域から延出する領域にさらなる縫製可能部を有することによって、CNT膜を衣服の生地に対して比較的正確に固定することができ、検出精度をより向上することができる。
【0010】
前記縫製可能部が前記挟持領域又は前記延出領域に形成される貫通孔であるとよい。このように、前記縫製可能部が前記挟持領域又は前記延出領域に形成される貫通孔であることにより、この貫通孔に糸を通すようにして比較的容易に衣服等に縫い付けて適切に固定することができる。
【0011】
前記縫製可能部が前記挟持領域又は前記延出領域の側縁に形成される凹部であってもよい。このように、前記縫製可能部が前記挟持領域又は前記延出領域の側縁に形成される凹部であることによって、当該歪みセンサ素子が比較的小型である場合にも、電極の中央部が残されるので配線接続を困難にすることなく被覆等に縫い付けて適切に固定することを可能にできる。
【0012】
前記縫製可能部が前記延出領域に配設される布帛であってもよい。このように、前記縫製可能部が前記延出領域に配設される布帛であることによって、前記縫製可能部を衣服の縫製と同様の手法で衣服の生地に縫い付けることができ、当該歪みセンサ素子を衣服に対してより容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の歪みセンサ素子は、衣服等に適切に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の歪みセンサ素子の模式的平面図である。
図2図1の歪みセンサ素子の模式的断面図である。
図3】本発明の図1とは異なる実施形態の歪みセンサ素子の模式的平面図である。
図4】本発明の図1及び図3とは異なる実施形態の歪みセンサ素子の模式的平面図である。
図5】本発明の図1図3及び図4とは異なる実施形態の歪みセンサ素子の模式的平面図である。
図6】本発明の図1図3乃至図5とは異なる実施形態の歪みセンサ素子の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0016】
[第一実施形態]
図1及び図2に示す本発明の第一実施形態の歪みセンサ素子は、柔軟性を有する帯状の基板1と、この基板1の一方の面(図では表面)に積層されるCNT膜2と、このCNT膜2の少なくとも一方の面(図では表面)に積層され、CNT膜2と電気的に接続される一対の電極3と、電極3と共に基板1及びCNT膜2を挟持する一対の挟持シート4とを備える。なお、以下の説明において、「表面側」とは、前記基板を基準として前記CNT膜が積層される側を意味し、必ずしも歪みセンサ素子の使用状態における位置関係とは一致しない。
【0017】
当該歪みセンサ素子は、前記電極3及び挟持シート4による挟持領域に貫通孔である縫製可能部5を有する。
【0018】
<基板>
基板1は、当該歪みセンサ素子の構造材であり、CNT膜2、一対の電極3及び一対の挟持シート4を保持する。また、基板1は、当該歪みセンサ素子が取り付けられた測定対象と共に伸縮し、この伸縮をCNT膜2に伝達することによってCNT膜2を測定対象と共に伸縮させる機能を果たす。
【0019】
基板1の材質としては、柔軟性を有する限り特に限定されず、例えば合成樹脂、ゴム、不織布、変形可能な形状又は材質の金属や金属化合物等が挙げられ、好ましくは合成樹脂やゴムを主成分とし、柔軟性に優れるエラストマーが用いられる。
【0020】
前記合成樹脂としては、例えばフェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、ポリメチルメタアクリル(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)等が挙げられる。
【0021】
前記ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(U)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、フッ素ゴム(FKM)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等が挙げられる。中でも、強度等の点から天然ゴムが好ましい。
【0022】
基板1の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、基板1の平均厚さの上限としては、5mmが好ましく、2mmがより好ましい。基板1の平均厚さが前記下限に満たない場合、強度が不十分となるおそれがある。逆に、基板1の平均厚さが前記上限を超える場合、当該歪みセンサ素子が不必要に厚くなるおそれや、当該歪みセンサ素子の弾性率が不必要に大きくなり測定対象の変形を阻害するおそれがある。
【0023】
<CNT膜>
CNT膜2は、一方向に引き揃えられる複数のCNT繊維から形成される層からなり、少なくとも表層(表面近傍領域)に後述の絶縁性エラストマーが含浸することにより膜状に形成されている。CNT膜2の表層に含浸する絶縁性エラストマーは、上述の基板1を形成する絶縁性エラストマーの一部であってもよい。また、絶縁性エラストマーはCNT繊維間の電気的接触を阻害するため、CNT膜2の中心部には絶縁性エラストマーが含浸しない領域が残される。このため、CNT膜2は、3層構造と考えることもでき、この場合CNT膜2の最下層が基板1と一体であってもよい。CNT膜2は、前記絶縁性エラストマーの弾性力によって弾性を有し、少なくとも長手方向に伸縮可能である。このCNT膜2は、少なくとも長手方向に伸長することによってCNT繊維同士が離間して電気抵抗が増大し、弾性力により収縮することで、CNT繊維同士が再度接触して電気抵抗が減少する。なお、CNT膜2は、CNT繊維間の接触率を抑制して電気抵抗を調整するために、例えば合成樹脂等からなる絶縁性の繊維を含んでもよい。
【0024】
CNT膜2は、少なくとも表層に絶縁性エラストマーが含浸しつつ積層されているので、後述のCNT繊維束を絶縁性エラストマーが被覆するため、この絶縁性エラストマーが複数のCNT繊維束の伸縮方向をガイドするガイド部材としても機能する。その結果、当該歪みセンサ素子は、伸長時に離間されたCNT繊維同士を収縮時に再度同一部位で再接触させることが可能となり、繰り返し使用に基づく伸縮歪みの検出精度の低下を防止することができる。さらに、かかる構成によると、複数のCNT繊維間の当接関係が維持され易いと共に、複数のCNT繊維の伸縮性を調整し易い。従って、CNT膜2の伸縮歪みをさらに精度よく検出することができる。また、このような当接関係の維持及び伸縮性の調整をさらに容易にするためには、CNT膜2の裏層(裏面近傍領域)にも絶縁性エラストマーが含浸しているのが好ましい。この際、CNT繊維束の表層の少なくとも一部に絶縁性エラストマーが含浸するので、CNT繊維束と絶縁性エラストマーとの結合力も高まる。また、基板1又はCNT膜2の少なくとも上面又は下面に、歪みセンサの弾性力を高めるためのアシスト樹脂をさらに積層してもよい。
【0025】
(CNT繊維)
CNT膜2を構成するCNT繊維は、それぞれ複数のCNT単繊維から形成することができる。ここで、CNT単繊維とは、1本の長尺のカーボンナノチューブをいう。また、CNT繊維は、CNT単繊維の端部同士が連結する連結部を有する。CNT単繊維同士は、これらのCNT単繊維の長手方向に連結している。このように、CNT膜2において、CNT単繊維同士がその長手方向に連結することでCNT繊維の配向長さの大きいCNT膜2を形成することができ、当該歪みセンサ素子の長手方向の長さを大きくして感度を向上することができる。
【0026】
また、CNT膜2を構成する複数のCNT繊維は、網目構造を形成していてもよい。具体的には、複数のCNT繊維はCNT単繊維同士が連結する連結部等により網目状に連結又は接触していてもよい。この際、この連結部では3つ以上のCNT単繊維の端部が結合していてもよく、2つのCNT単繊維の端部と他の単繊維の中間部とが結合していてもよい。複数のCNT繊維がこのような網目構造を形成することで、CNT繊維同士が密接し、CNT膜2の抵抗を下げることができる。
【0027】
さらに、CNT膜2は、長手方向に配向する複数のCNT繊維からなるCNT繊維束を有してもよい。CNT膜2が長手方向に配向する複数のCNT繊維束を有する場合、CNT膜2が伸縮方向に延伸されるよう歪みが加わった際にCNT繊維の切断、離間、CNT繊維束の切断空間(ギャップ)の伸縮等によりCNT膜2の抵抗がより的確に変化する。
【0028】
より具体的には、前記CNT繊維束は、複数のCNT繊維からなるバンドル構造となっており、このCNT繊維束の任意の横断面においては、切断されないCNT繊維と、CNT繊維が切断及び離間したギャップの両方が存在することになる。また、複数のCNT繊維束は表層を絶縁性エラストマーで被覆されているので、このギャップ内の圧力は大気圧よりも低い(負圧である)と考えられるため、当該歪みセンサ素子の収縮時(歪の解放時)にはこのギャップの収縮力によって歪みセンサ素子の収縮が付勢される。さらに、このギャップ内ではCNT繊維同士の摩擦が低減されるため、CNT繊維の動きが制限され難い。
【0029】
なお、CNT膜2は、複数のCNT繊維又は複数のCNT繊維束を平面状に略平行に配置した単層構造からなってもよいし、多層構造からなってもよい。但し、ある程度の導電性を確保するためには、多層構造とすることが好ましい。
【0030】
CNT単繊維としては、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)や、多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)のいずれも用いることができるが、導電性及び熱容量等の点から、MWNTが好ましく、直径1.5nm以上100nm以下のMWNTがさらに好ましい。
【0031】
前記CNT単繊維は、公知の方法で製造することができ、例えばCVD法、アーク法、レーザーアブレーション法、DIPS法、CoMoCAT法等により製造することができる。これらの中でも、所望するサイズのカーボンナノチューブ(MWNT)を効率的に得ることができる点から、鉄を触媒とし、エチレンガスを用いたCVD法により製造することが好ましい。この場合、石英ガラス基板や酸化膜付きシリコン基板等の基板上に触媒となる鉄又はニッケル薄膜を成膜し、カーボンナノチューブを垂直配向成長させることによって所望の長さのカーボンナノチューブの結晶を得ることができる。
【0032】
(絶縁性エラストマー)
CNT膜2に含浸する絶縁性エラストマーとしては、基材層1を形成するエラストマーと同様の材料を用いることができる。
【0033】
また、CNT膜2に含浸する絶縁性エラストマーは、水性エマルジョンの塗工により含浸されているとよい。前記水性エマルジョンとは、分散媒の主成分が水であるエマルジョンをいう。カーボンナノチューブは疎水性が高いため、水性エマルジョンを用いた塗工により絶縁性エラストマーを被覆させると、この絶縁性エラストマーは複数のCNT繊維間に完全には入り込まない。つまり、複数のCNT繊維の間には部分的に絶縁性エラストマーが含浸するが、この絶縁性エラストマーは各CNT繊維の厚さ方向の断面における全領域には付着しない。これにより、絶縁性エラストマーが複数のCNT繊維間に完全にしみ込んで、CNT膜2の抵抗変化に影響を及ぼすことを抑制し、絶縁性エラストマーの存在に起因するCNT膜2の歪みに対する感度の低下を抑えることができる。
【0034】
前記水性エマルジョンの分散媒の主成分は、水であるが、その他の例えばアルコール等の親水性分散媒が含有されていてもよい。
【0035】
好ましいエマルジョンとしては、分散媒を水とし、ゴムを分散質とするいわゆるラテックスが挙げられ、天然ゴムラテックスが好ましい。天然ゴムラテックスを用いることで、薄くかつ強度のある被膜を形成することができる。
【0036】
また、前記絶縁性エラストマーはカップリング剤を含有しているとよい。絶縁性エラストマーがカップリング剤を含有することで、絶縁性エラストマーとCNT繊維とを架橋し、絶縁性エラストマーとCNT繊維との接合力を向上させることができる。
【0037】
前記カップリング剤としては、例えばアミノシランカップリング剤、アミノチタンカップリング剤、アミノアルミニウムカップリング剤等のアミノカップリング剤やシランカップリング剤などを用いることができる。
【0038】
また、絶縁性エラストマーはCNT繊維に対する吸着性を有する分散剤を含有することが好ましい。このような吸着性を有する分散剤としては、例えば吸着基部分が塩構造になっているもの(例えばアルキルアンモニウム塩等)、CNT繊維の疎水性の基(例えばアルキル鎖や芳香族リング等)と相互作用できる親水性の基(例えばポリエーテル等)を分子中に有するもの等を用いることができる。
【0039】
CNT膜2の長手方向の平均長さとしては、特に限定されず、当該歪みセンサ素子を用いる測定対象に応じて自由に選択することができるが、例えば1cm以上20cm以下とすることができる。
【0040】
CNT膜2の平面視で一対の電極3間に挟まれる領域における長手方向の平均長さは、当該歪みセンサ素子を用いる測定対象に応じて自由に選択することができる。前記平均長さとしては、例えば2mm以上18cm以下とすることができる。
【0041】
CNT膜2の平面視で一対の電極3と重複する領域における長手方向の平均長さは、測定対象への固定方法、電極3への配線方法等に応じて適宜選択されるが、例えば3mm以上5cm以下とすることができる。
【0042】
CNT膜2の平均幅は、当該歪みセンサ素子を用いる測定対象に応じて自由に選択することができる。CNT膜2の平均幅の下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。一方、CNT膜2の平均幅の上限としては、10cmが好ましく、5cmがより好ましい。CNT膜2の平均幅が前記下限に満たない場合、CNT膜2の電気抵抗が過度に大きくなったり、ばらついたりするおそれがある。逆に、CNT膜2の平均幅が前記上限を超える場合、当該歪みセンサ素子が大きくなり、適用可能な測定対象が過度に限定されるおそれがある。
【0043】
CNT膜2の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、CNT膜2の平均厚さの上限としては、5mmが好ましく、1mmがより好ましい。CNT膜2の平均厚さが前記下限に満たない場合、CNT膜2の形成が困難になるおそれや、抵抗が上昇しすぎるおそれがある。逆に、CNT膜2の平均厚さが前記上限を超える場合、歪みに対する感度が低下するおそれがある。
【0044】
CNT膜2の歪みがない状態での電気抵抗(一対の電極3間で測定される値)の下限としては、10Ωが好ましく、100Ωがより好ましい。一方、CNT膜2の歪みがない状態での電気抵抗の上限としては、100kΩが好ましく、10kΩがより好ましい。CNT膜2の歪みがない状態での電気抵抗が前記下限に満たない場合、伸び歪みを検出するための電流が大きくなり当該歪みセンサ素子の消費電力が大きくなるおそれがある。逆に、CNT膜2の歪みがない状態での電気抵抗が前記上限を超える場合、検出回路の電圧が高くなり、当該歪みセンサ素子の出力を処理する装置の小型化や省電力化が困難となるおそれがある。
【0045】
<電極>
一対の電極3は、基板1の両端部の表面側にカーボンナノチューブの両端部領域を覆うよう積層される。
【0046】
電極3とCNT膜2との電気的接続方法としては、特に限定されないが、CNT膜2のカーボンナノチューブが露出する端面と電極3の端面とに跨るよう導電性接着剤等を盛り付ける方法、電極3又は電極3と電気的に接続される導電性の部材にCNT膜2を貫通させる方法等が挙げられる。
【0047】
電極3は当該歪みセンサ素子の検出信号を電気的に取り出すための端子として使用される。また、電極3は、当該歪みセンサ素子の使用中に実質的に伸縮しない。なお、「実質的に伸縮しない」とは、当該歪みセンサ素子を用いた測定中における平面視で一対の電極3間に配設される領域(以下、「伸縮領域」ともいう。)の長手方向の伸縮率に対する電極3の長手方向の伸縮率の比が、1/100以下、好ましくは1/1000以下であることを意味する。
【0048】
また、当該歪みセンサ素子を用いた測定中における電極3の伸縮率に対する伸縮領域の伸縮率の比の桁数としては、測定における有効数値の桁数より大きいことが好ましく、2桁以上大きいことがより好ましい。
【0049】
電極3を構成する材料としては、十分な非伸縮性(引張強度)と導電性とを有するものであれば特に限定されないが、例えば金属箔、導電性布等が使用される。また、電極3は、少なくとも外面に配置される導電層と、非伸縮性を付与する補強材層とを有する積層体であってもよい。前記金属箔の材質としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等が挙げられる。また、前記導電性布としては、少なくとも表面に導電性を有する繊維を含む織布や不織布が使用できる。さらに、電極3の表面を金等の腐食しにくい材料で被覆してもよい。また、セラミックスの表面を金等で被覆することで電極3を構成してもよい。
【0050】
電極3の平均厚みの下限としては、10μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、電極3の平均厚みの上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。電極3の平均厚みが前記下限に満たない場合、曲げ等により電極3が破断するおそれがある。逆に、電極3の平均厚みが前記上限を超える場合、当該歪みセンサ素子が不必要に厚くなるおそれや、非伸縮領域の可撓性が不足して測定対象に適切に貼着できないおそれがある。
【0051】
電極3は、例えばCNT膜2の非存在領域に充填される接着剤を用いて積層することができる。またこの接着剤としては、例えば粘着剤、硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等が使用できる。前記粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤等が挙げられる。前記硬化性接着剤としては、エポキシ系接着剤等が挙げられる。また、前記接着剤としては、合成樹脂中に導電性フィラーを含有する導電性接着剤を用いることもできる。
【0052】
<挟持シートト>
挟持シート4は、非伸縮領域の裏面を覆うよう基板1の裏面に、電極3にそれぞれ対向するよう積層されている。挟持シート4は、例えば接着剤を用いて積層することができる。この接着剤としては、電極3を積層するために使用されるものと同様のものを用いることができる。
【0053】
この挟持シート4は、電極3と同様に、当該歪みセンサ素子の使用中に実質的に伸縮せず、非伸縮領域の伸縮を防止する。つまり、挟持シート4は、電極3との間に基板1及びCNT膜2の非伸縮領域を挟み込むことで、非伸縮領域の伸縮をより確実に防止する。このため、挟持シート4を備えることにより、当該歪みセンサ素子は、基板1及びCNT膜2の非伸縮領域と伸縮領域とがより明確に区分される。従って、当該歪みセンサ素子は、伸縮量とCNT膜2の電気抵抗との相関が高く、歪の検出精度に優れる。
【0054】
挟持シート4の材質としては、十分な非伸縮性を有するものであればよく、導電性のものであっても絶縁性のものであってもよい。具体的には、挟持シート4としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等を主成分とする樹脂製シート、ガラスクロス等の織布などを使用することができ、電極3と同様のものを使用することもできる。また、挟持シート4として、予め粘着剤が積層された市販の粘着テープを使用してもよい。
【0055】
挟持シート4の平均厚みの下限としては、20μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、挟持シート4の平均厚みの上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。挟持シート4の平均厚みが前記下限に満たない場合、曲げ等により挟持シート4が破断するおそれがある。逆に、挟持シート4の平均厚みが前記上限を超える場合、当該歪みセンサ素子が不必要に厚くなるおそれや、非伸縮領域の可撓性が不足して測定対象に適切に貼着できないおそれがある。
【0056】
対向し合う電極3と挟持シート4とは、例えばボルト、リベット、クランプ等の締結部材(不図示)により挟持されてもよい。この締結部材は、基板1、CNT膜2、電極3及び挟持シート4を貫通してもよい。また、締結部材は、測定対象に当該歪みセンサ素子を固定するための部材と兼用されてもよい。
【0057】
<縫製可能部>
縫製可能部5は、少なくとも一対の電極3及び挟持シート4の同じ位置にそれぞれ形成される一対の貫通孔3a及び一対の貫通孔4aによって画定される。図示する当該歪みセンサ素子は、縫製可能部5において、基板1及びCNT膜2にも貫通孔が形成されているが、基板1及びCNT膜2は、例えば縫い針等を用いて容易に縫糸を貫通させられるので、貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0058】
縫製可能部5を構成する貫通孔の平均内径(真円相当径)の下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。一方、縫製可能部5を構成する貫通孔の平均内径の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。縫製可能部5を構成する貫通孔の平均内径が前記下限に満たない場合、当該歪みセンサ素子を衣類等に縫い付けることが容易でなくなるおそれがある。逆に、縫製可能部5を構成する貫通孔の平均内径が前記上限を超える場合、当該歪みセンサ素子の端部領域の強度が不十分となるおそれがある。
【0059】
<製造方法>
当該歪みセンサ素子は、基板1及びCNT膜2の積層構造を有するシート体を形成する工程と、このシート体を個々の歪みセンサ素子に対応する帯状に切断する工程と、CNT膜2に一対の電極3を配設する工程と、基板1の裏面に一対の挟持シート4を配設する工程と、電極3、基板1、CNT膜2及び挟持シート4の積層体の両端部領域に貫通孔を形成して縫製可能部5を設ける工程とを備える方法により製造することができる。
【0060】
<利点>
当該歪みセンサ素子は、縫製可能部5を有するので、衣服等の生地に縫い付けて固定したり、仮縫いにより位置決めしてから接着剤等で固定することができる。従って、当該歪みセンサ素子は、測定対象物の動きを比較的正確に検出できるよう、衣服等の生地に適切に取り付けることができる。
【0061】
[第二実施形態]
図3に示す本発明の第二実施形態の歪みセンサ素子は、柔軟性を有する帯状の基板(不図示)と、この基板の表面側に積層されるCNT膜2と、このCNT膜2の表面側のうち長手方向両端部領域に積層され、CNT膜2と電気的に接続される一対の電極3と、この電極3と共に前記基板及びCNT膜2を挟持する一対の挟持シート(不図示)とを備える。
【0062】
当該歪みセンサ素子は、前記挟持領域(電極3が積層されている領域)の両側縁(基板の幅方向両側の)にそれぞれ形成される凹部(切り欠き)である二対の縫製可能部15を有する。
【0063】
図3の歪みセンサ素子における基板、CNT膜2、一対の電極3及び一対の挟持シートは、縫製可能部15の形態を除いて、図1の歪みセンサ素子における基板1、CNT膜2、一対の電極3及び一対の挟持シート4と同様である。このため、図3の歪みセンサ素子について、図1の歪みセンサ素子と重複する説明は省略する。
【0064】
<縫製可能部>
一対の縫製可能部15は、挟持領域の基板、CNT膜2、電極3及び挟持シートに形成される凹部(切り欠き)によって画定される。当該歪みセンサ素子は、例えば一対の縫製可能部15間に縫糸を掛け渡すようにして衣服等の生地に縫い付けることができる。
【0065】
縫製可能部15を構成する凹部の平均深さ(凹部のエッジの端部領域の延長線からの垂直距離の平均値)の下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。一方、縫製可能部15を構成する凹部の平均深さの上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。縫製可能部15を構成する凹部の平均深さが前記下限に満たない場合、当該歪みセンサ素子を衣類等に縫い付けたとき、縫製可能部15から縫糸が脱離して歪みセンサ素子のずれを防止できないおそれがある。逆に、縫製可能部15を構成する凹部の平均深さが前記上限を超える場合、当該歪みセンサ素子の端部領域の強度が不十分となるおそれがある。
【0066】
[第三実施形態]
図4に示す本発明の第三実施形態の歪みセンサ素子は、柔軟性を有する帯状の基板(不図示)と、この基板の表面側に積層されるCNT膜2と、このCNT膜2の表面側のうち長手方向両端部領域に積層され、CNT膜2と電気的に接続される一対の電極3と、この一対の電極3と共に前記基板及びCNT膜2を挟持する一対の挟持シート24とを備える。
【0067】
当該歪みセンサ素子は、挟持シート24が、縫製可能な布帛から形成されている。この挟持シート24は、挟持領域からそれぞれ側方両側に延出し、この延出領域が二対の縫製可能部25を形成している。
【0068】
図4の歪みセンサ素子における基板、CNT膜2及び一対の電極3は、図1の歪みセンサ素子における基板1、CNT膜2及び一対の電極3と同様である。このため、図4の歪みセンサ素子について、図1の歪みセンサ素子と重複する説明は省略する。
【0069】
<挟持シート>
一対の挟持シート24は、基板の裏面側に端部領域を覆うよう、前記電極3にそれぞれ対向して積層されている。挟持シート24は、例えば接着剤を用いて積層することができる。
【0070】
この挟持シート24を形成する材料としては、当該歪みセンサ素子の使用中に実質的に伸縮せず、任意の位置に縫糸を貫通させて縫製できる材料が用いられる。具体的には、挟持シート24としては、例えば天然繊維、合成繊維、無機繊維等から形成される織布などを用いることができ、中でもガラスクロスが好適に用いられる。
【0071】
挟持シート24の平均厚みの下限としては、100μmが好ましく、200μmがより好ましい。一方、挟持シート24の平均厚みの上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。挟持シート24の平均厚みが前記下限に満たない場合、挟持シートの強度が不足して挟持領域を測定対象に対して正確に位置決めできないおそれがある。逆に、挟持シート24の平均厚みが前記上限を超える場合、当該歪みセンサ素子が不必要に厚くなるおそれや、非伸縮領域の可撓性が不足して測定対象に適切に貼着できないおそれがある。
【0072】
<縫製可能部>
二対の縫製可能部25は、一対の挟持シート24の端部領域から両側にそれぞれ延出する部分により形成される。当該歪みセンサ素子は、この縫製可能部を衣服等の生地に縫い付けることで衣服等に固定できる。特に、当該歪みセンサ素子の縫製可能部25は、任意の位置に縫糸を通すことができるので、通常の布と同様にミシン等を用いて衣服に縫い付けることが可能である。
【0073】
縫製可能部25の端部領域端縁からの平均延出長さの下限としては、3mmが好ましく、5mmがより好ましい。一方、縫製可能部25の端部領域端縁からの平均延出長さの上限としては、3cmが好ましく、2cmがより好ましい。縫製可能部25の端部領域端縁からの平均延出長さが前記下限に満たない場合、縫製可能部25の縫製が容易ではなくなるおそれがある。逆に、縫製可能部25の端部領域端縁からの平均延出長さが前記上限を超える場合、縫製可能部25が、測定対象である人体への衣服の密着性を損ない、検出精度を低下させるおそれがある。
【0074】
縫製可能部25の端部領域端縁に沿う方向の平均延出幅の下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、縫製可能部25の前記平均延出幅の上限としては、5cmが好ましく、3cmがより好ましい。縫製可能部25の前記平均延出幅が前記下限に満たない場合、縫製可能部25の縫製が容易ではなくなるおそれがある。逆に、縫製可能部25の前記平均延出幅が前記上限を超える場合、縫製可能部25が、測定対象である人体への衣服の密着性を損ない、検出精度を低下させるおそれがある。
【0075】
[第四実施形態]
図5に示す本発明の第四実施形態の歪みセンサ素子は、柔軟性を有する帯状の基板(不図示)と、この基板の表面側に積層されるCNT膜2と、このCNT膜2の表面側のうち長手方向両端部領域
に積層され、CNT膜2と電気的に接続される一対の電極3と、この電極3と共に前記基板及びCNT膜2を挟持する一対の挟持シート34とを備える。
【0076】
当該歪みセンサ素子は、挟持シート34が挟持領域からそれぞれ側方両側に延出する延出領域34aを有し、この延出領域34aに形成される貫通孔である二対の縫製可能部35を有する。
【0077】
図5の歪みセンサ素子における基板、CNT膜2及び一対の電極3は、図1の歪みセンサ素子における基板1、CNT膜2及び一対の電極3と同様である。このため、図5の歪みセンサ素子について、図1の歪みセンサ素子と重複する説明は省略する。
【0078】
<挟持シート>
一対の挟持シート34は、基板の裏面側に端部領域を覆うよう、前記電極3にそれぞれ対向して積層されている。挟持シート34は、例えば接着剤を用いて積層することができる。
【0079】
この挟持シート34の材質としては、十分な非伸縮性を有するものであればよく、導電性のものであっても絶縁性のものであってもよい。具体的には、挟持シート34としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等を主成分とする樹脂製シート、ガラスクロス等の織布などを使用することができる。
【0080】
挟持シート34の平均厚みの下限としては、100μmが好ましく、200μmがより好ましい。一方、挟持シート34の平均厚みの上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。挟持シート34の平均厚みが前記下限に満たない場合、挟持シートの強度が不足して挟持領域を測定対象に対して正確に位置決めできないおそれがある。逆に、挟持シート34の平均厚みが前記上限を超える場合、当該歪みセンサ素子が不必要に厚くなるおそれや、非伸縮領域の可撓性が不足して測定対象に適切に貼着できないおそれがある。
【0081】
<縫製可能部>
二対の縫製可能部35は、一対の挟持シート34の端部領域から延出する二対の延出領域34aに形成される。当該歪みセンサ素子は、この縫製可能部35に縫糸を通すようにして衣服等の生地に縫い付けることで衣服等に固定できる。
【0082】
縫製可能部35を構成する貫通孔の平均内径(円相当径)の下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。一方、縫製可能部5を構成する貫通孔の平均内径の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。縫製可能部35を構成する貫通孔の平均内径が前記下限に満たない場合、当該歪みセンサ素子を衣類等に縫い付けることが容易でなくなるおそれがある。逆に、縫製可能部35を構成する貫通孔の平均内径が前記上限を超える場合、挟持シート34の延出領域34aが不必要に大きくなり、測定対象である人体への衣服の密着性を損ない、検出精度を低下させるおそれがある。
【0083】
[第五実施形態]
図6に示す本発明の第五実施形態の歪みセンサ素子は、柔軟性を有する帯状の基板(不図示)と、この基板の表面側に積層されるCNT膜2と、このCNT膜2の表面側のうち長手方向両端部領域に積層され、CNT膜2と電気的に接続される一対の電極3と、この電極3と共に前記基板及びCNT膜2を挟持する一対の挟持シート34と、一対の電極3の間で前記基板及びCNT膜2を挟持する一対の中間保持シート46とを備える。
【0084】
当該歪みセンサ素子は、一対の挟持シート34が両端部の挟持領域からそれぞれ側方両側に延出する二対の延出領域34aを有し、この延出領域34aに形成される貫通孔である二対の縫製可能部35を有する。また、当該歪みセンサ素子は、中間保持シート46が基板及びCNT膜2の積層体の中間部、つまり一対の電極3の間から側方両側に延出する一対の第二延出領域46aを有し、この第二延出領域46aに形成される貫通孔である二対の第二縫製可能部47を有する。
【0085】
図6の歪みセンサ素子における基板、CNT膜2、一対の電極3、挟持シート34及び縫製可能部35は、図1の歪みセンサ素子における基板1、CNT膜2、一対の電極3、挟持シート34及び縫製可能部35と同様である。このため、図6の歪みセンサ素子について、図5の歪みセンサ素子と重複する説明は省略する。
【0086】
<中間保持シート>
一対の中間保持シート46は、基板及びCNT膜2の積層体の長手方向中間部を表裏両側から挟み込んでいる。この一対の中間保持シート46は、基板及びCNT膜2の積層体の中間部を固定し、CNT膜2の伸縮領域を複数に分割することで、各伸縮領域の伸縮量を測定対象の伸縮量にそれぞれ近づけることによって検出精度を向上させる。
【0087】
この一対の中間保持シート46の材質、厚さ等は、挟持シート34と同様とすることができる。
【0088】
一対の中間保持シート46は、表裏対称に形成され、第二延出領域46aにおいて互いに貼り合わされてもよい。
【0089】
<第二縫製可能部>
第二縫製可能部47は、中間保持シート46の第二延出領域46aに形成され、縫糸を貫通させるよう縫い付けられることで、基板及びCNT膜2の積層体の中間部を衣服等に対して位置決めするために用いられる。
【0090】
この第二縫製可能部47を画定する貫通孔の平均径としては、縫製可能部35を画定する貫通孔と同様とすることができる。
【0091】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0092】
当該歪みセンサ素子において、縫製可能部は、電極及び挟持シートによる1以上の挟持領域又はこの1以上の挟持領域から延出する領域に形成されればよい。
【0093】
また、当該歪みセンサ素子は、3つ以上の電極及びこれに対向して基板及びCNT膜を挟持する3つ以上の挟持シートを有するものであってもよい。
【0094】
当該歪みセンサ素子において、縫製可能部を形成する延出領域は、端部領域から長手方向外側に延出してもよい。また、延出領域又は第二延出領域の側縁に凹部を形成して縫製可能部を画定してもよい。
【0095】
また、当該歪みセンサ素子において、端部領域から延出する延出領域に縫製可能部を設ける場合、電極に端部領域から延出する延出領域を設けて、この電極の延出領域に縫製可能部を設けてもよい。例えば金属板からなる電極の延出領域に貫通孔を形成して縫製可能部としてもよく、電極を縫製可能な導電性布等で形成し、端部領域から延出させた延出領域を縫製可能部としてもよい。また、電極及び挟持シートが共に縫製可能な布帛によって形成され、両者が端部領域から延出して縫製可能部を形成してもよい。
【0096】
当該歪みセンサ素子において、縫製可能部は、それぞれの端部領域又は延出領域に任意の数だけ設けられてもよい。
【0097】
当該歪みセンサ素子において、中間保持シートは縫製可能な布帛であってもよい。つまり、第二縫製可能部は第二延出領域に配設される布帛であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る歪みセンサ素子は、ウェアラブルデバイス等のセンサとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0099】
1 基板
2 CNT膜
3 電極
3a 貫通孔
4,24,34 挟持シート
4a 貫通孔
34a 延出領域
5,15,25,35 縫製可能部
46 中間保持シート
46a 第二延出領域
47 第二縫製可能部
図1
図2
図3
図4
図5
図6