(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部が前記複数の操舵側モータのうち少なくとも一つの駆動力を操舵力として前記ステアリングシャフトに付与する自動操舵制御を実行する請求項3に記載の操舵装置であって、
前記制御部は、前記自動操舵制御を実行するときには、前記複数の操舵側モータのうち減速比がより小さい前記操舵側モータを駆動させ、
前記自動操舵制御中に手動操舵があったときには、前記複数の操舵側モータのうち減速比がより大きい前記操舵側モータを駆動させる
操舵装置。
前記制御部は、前記転舵側モータに異常が発生したとき、前記クラッチによって前記操舵機構と前記転舵機構とを機械的に接続して、前記ステアリングホイールの操舵に応じて前記複数の操舵側モータのうち少なくとも一つの駆動力を操舵力として前記ステアリングシャフトに付与する
請求項5に記載の操舵装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような操舵装置に設けられる操舵角センサは、ステアリングシャフトにおいてステアリングホイールとトルクセンサとの間に設けられている。このため、操舵角センサをステアリングシャフトに装着させるための遊びや取付公差等によって、操舵角度の検出精度が低くなるおそれがある。なお、操舵装置の操舵角センサに限らずシャフトに装着される回転角センサであれば同様のことが懸念される。
【0006】
本発明の目的は、回転角度の検出精度の低下を抑制することのできる回転角度検出装置および操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について説明する。
上記課題を解決する回転角度検出装置は、回転検出対象であるシャフトに対して異なる減速比で連結されて前記シャフトに連動して回転する複数のモータと、前記複数のモータの相対回転角度を検出する複数の相対角度センサと、前記複数の相対角度センサを通じて検出される複数の相対回転角度のうち少なくとも2つに基づいて前記シャフトの絶対回転角度を算出する演算部と、を備えることをその要旨としている。
【0008】
上記構成によれば、異なる減速比で連結された複数のモータの相対回転角度を用いてシャフトの絶対回転角度を算出することができる。これにより、シャフトに回転角センサが設けられることなく、シャフトの回転角度を算出することができるので、当該回転角度の検出精度の低下を抑制することができる。
【0009】
上記回転角度検出装置について、前記複数のモータは、それぞれベルトを介して前記シャフトに動力伝達可能に連結されることが好ましい。
上記構成によれば、複数のモータがそれぞれベルトを介してシャフトに連結される。このため、複数のモータとシャフトとがギヤによって連結される場合に比べて作動音を抑制することができる。また、減速比の設定を比較的容易に行うことができる。
【0010】
上記課題を解決する操舵装置は、上記の回転角度検出装置と、ステアリングホイールおよび前記回転検出対象であるステアリングシャフトを有する操舵機構と、前記回転角度検出装置を通じて検出される前記ステアリングシャフトの絶対回転角度に応じて転舵動作を行う転舵機構と、前記複数のモータである複数の操舵側モータの駆動をそれぞれ制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の操舵側モータのうち少なくとも一つの駆動力を操舵力として前記ステアリングシャフトに付与する制御を実行することをその要旨としている。
【0011】
上記構成によれば、操舵補助を行う操舵装置であっても、ステアリングシャフトに操舵角センサが設けられることなく、操舵角度(絶対角度)を算出することができる。このため、操舵角度の検出精度の低下を抑制することができる。また、複数の操舵側モータを有するので回転角度検出装置、ひいては操舵装置の冗長性が高まる。
【0012】
上記操舵装置について、前記制御部が前記複数の操舵側モータのうち少なくとも一つの駆動力を操舵力として前記ステアリングシャフトに付与する自動操舵制御を実行する上記操舵装置であって、前記制御部は、前記自動操舵制御を実行するときには、前記複数の操舵側モータのうち減速比がより小さい前記操舵側モータを駆動させ、前記自動操舵制御中に手動操舵があったときには、前記複数の操舵側モータのうち減速比がより大きい前記操舵側モータを駆動させることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、自動操舵時に減速比がより小さい操舵側モータを駆動させ、自動操舵中に手動操舵があったときに減速比がより大きい操舵側モータを駆動させることで、手動操舵における駆動力が勝り、手動操舵を容易に優先させることができる。
【0014】
上記課題を解決する操舵装置は、上記の回転角度検出装置と、ステアリングホイールおよび前記回転検出対象であるステアリングシャフトを有する操舵機構と、転舵シャフトおよび前記転舵シャフトの駆動源である転舵側モータを有する転舵機構と、前記操舵機構と前記転舵機構との間を機械的に断続するクラッチと、前記複数のモータである複数の操舵側モータ、前記転舵側モータの駆動および前記クラッチの断接をそれぞれ制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記クラッチによって前記操舵機構と前記転舵機構とを機械的に切断しているとき、前記複数の操舵側モータのうち少なくとも一つの駆動力を操舵反力として前記ステアリングシャフトに付与するとともに、前記回転角度検出装置を通じて検出される前記ステアリングシャフトの絶対回転角度に応じて前記転舵側モータの駆動力を転舵力として前記転舵シャフトに付与することをその要旨としている。
【0015】
上記構成によれば、操舵機構と転舵機構とが機械的に分離されるステアバイワイヤであっても、ステアリングシャフトに操舵角センサが設けられることなく、操舵角度を算出することができる。このため、操舵角度の検出精度の低下を抑制することができる。また操舵角度に基づく転舵制御の精度の維持向上も図られる。
【0016】
上記操舵装置について、前記制御部は、前記転舵側モータに異常が発生したとき、前記クラッチによって前記操舵機構と前記転舵機構とを機械的に接続して、前記ステアリングホイールの操舵に応じて前記複数の操舵側モータのうち少なくとも一つの駆動力を操舵力として前記ステアリングシャフトに付与することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、転舵側モータに異常が発生したとき、クラッチによって操舵機構と転舵機構とを機械的に接続して、転舵側モータに代わって複数の操舵側モータによって転舵機構を駆動させることで、駆動力を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転角度の検出精度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図3を参照して、回転角度検出装置を備えた操舵装置の第1の実施形態について説明する。本実施形態の操舵装置は、自動操舵および操舵アシストを行うことが可能である。
【0021】
図1に示されるように、操舵装置は、運転者により操作されるステアリングホイール10、およびステアリングホイール10に固定されるステアリングシャフト11を備えている。ステアリングシャフト11におけるステアリングホイール10とは反対側の端部には、ピニオンシャフト12が設けられている。ピニオンシャフト12に設けられたピニオンギヤ12aは、ラック軸13に設けられたラックギヤ14に噛み合わされている。ピニオンシャフト12の回転運動は、ピニオンギヤ12aおよびラックギヤ14を介してラック軸13の軸方向の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動がラック軸13の両端にそれぞれ連結されたタイロッド15,15を介して左右の転舵輪16,16にそれぞれ伝達されることにより、これら転舵輪16,16の転舵角が変更される。なお、ステアリングホイール10およびステアリングシャフト11は、操舵機構を構成する。また、ピニオンシャフト12、ラック軸13、およびラックギヤ14は、転舵機構を構成する。ここで、ステアリングシャフト11が回転検出対象であるシャフトに相当する。
【0022】
操舵装置は、ステアリングシャフト11に操舵力を付与する第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30を備えている。第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30は、それぞれ減速機を介してステアリングシャフト11に連結されている。
【0023】
第1操舵側モータ20の回転軸には、第1プーリ21が固定されている。第1プーリ21の外周には、歯が等間隔に設けられている。第1プーリ21の歯数は、例えば43である。第2操舵側モータ30の回転軸には、第2プーリ31が固定されている。第2プーリ31の外周には、歯が等間隔に設けられている。第2プーリ31の歯数は、第1プーリ21の歯数よりも多く設定されている。第2プーリ31の歯数は、例えば45である。ステアリングシャフト11の中間部には、第3プーリ18が固定されている。第3プーリ18の外周には、歯が等間隔に設けられている。第3プーリ18の歯数は、例えば133である。
【0024】
第1プーリ21と第3プーリ18との間には、第1ベルト22が巻き掛けられている。第1プーリ21と第3プーリ18と第1ベルト22とが第1減速機として機能する。第1操舵側モータ20の駆動力は、第1減速機を介してステアリングシャフト11に付与される。
【0025】
第2プーリ31と第3プーリ18との間には、第2ベルト32が巻き掛けられている。第2プーリ31と第3プーリ18と第2ベルト32とが第2減速機として機能する。第2操舵側モータ30の駆動力は、第2減速機を介してステアリングシャフト11に付与される。
【0026】
第1操舵側モータ20には、第1操舵側モータ20の回転軸の回転角度である第1相対回転角度θ1を検出する第1相対角度センサ23が設けられている。また、第2操舵側モータ30には、第2操舵側モータ30の回転軸の回転角度である第2相対回転角度θ2を検出する第2相対角度センサ33が設けられている。第1相対角度センサ23および第2相対角度センサ33としては、それぞれMRセンサが採用されている。MRセンサは、回転軸の回転に応じてsin信号およびcos信号の2つのアナログ信号を生成する。
【0027】
ステアリングシャフト11において、第3プーリ18とステアリングホイール10との間には、トルクセンサ19が設けられている。トルクセンサ19はステアリングシャフト11に付与される操舵トルクを検出する。
【0028】
図2に示されるように、操舵装置は、第1操舵側モータ20と第2操舵側モータ30とを制御するECU40を備えている。なお、ECU40が回転角度検出装置の演算部および操舵装置の制御部として機能する。
【0029】
ECU40は、第1相対角度センサ23を通じて検出される第1相対回転角度θ1および第2相対角度センサ33を通じて検出される第2相対回転角度θ2に基づきステアリングシャフト11の回転角度である操舵角度(絶対回転角度)を算出する。ECU40は、絶対回転角度に基づいて第1操舵側モータ20と第2操舵側モータ30とをそれぞれ制御する。なお、
図2では、説明の便宜上、第1相対角度センサ23からの出力に第1相対回転角度を示す符号「θ1」を付し、第2相対角度センサ33からの出力に第2相対回転角度を示す符号「θ2」を付している。
【0030】
ここで、
図3を参照して、ECU40による絶対回転角度の算出を説明する。
ECU40は、第1相対角度センサ23から取得される2つのアナログ信号からアークタンジェントを求めることにより第1相対回転角度θ1を算出する。ECU40は、第2相対角度センサ33から取得される2つのアナログ信号からアークタンジェントを求めることにより第2相対回転角度θ2を算出する。
【0031】
図3に示したグラフの縦軸は第1相対回転角度θ1と第2相対回転角度θ2とを示し、横軸はステアリングシャフト11の多回転の絶対回転角度φを示している。実線は第1相対回転角度θ1の遷移を示し、破線は第2相対回転角度θ2の遷移を示している。なお、第1相対角度センサ23および第2相対角度センサ33の出力信号はそれぞれ軸倍角1倍である。そして、第1操舵側モータ20と第2操舵側モータ30との減速比の違いにより、実線の波形の位相および破線の波形の位相が回転とともにずれていく。第1相対回転角度θ1と第2相対回転角度θ2とは、それぞれMRセンサの検出範囲の回転角度(0°〜360°)である。すなわち、第1相対回転角度θ1および第2相対回転角度θ2のそれぞれからでは、ステアリングシャフト11の多回転の回転角度である絶対回転角度φを算出することができない。
【0032】
そこで、ECU40は、これら第1相対回転角度θ1と第2相対回転角度θ2との角度差(|θ1−θ2|)を算出する。
図3のグラフの太線が角度差を示している。
図3に示すように、絶対回転角度φが大きくなるほど、角度差(|θ1−θ2|)が絶対回転角度φに比例して大きくなる。このため、ECU40は、角度差(|θ1−θ2|)に対する絶対回転角度φを予め把握していることで、角度差(|θ1−θ2|)から絶対回転角度φを算出することができる。ECU40は、メモリ41を有している。メモリ41には、角度差(|θ1−θ2|)に対する絶対回転角度φが予め記憶されている。
【0033】
ECU40は、車載される自動操舵制御装置45と接続されている。自動操舵制御装置45は、車載される各種のセンサを通じて取得される各種の情報(車速、ヨーレートなど)に基づき目標操舵角を演算する。ECU40は、自動操舵および操舵アシストを行うために、第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30をそれぞれ制御する。操舵装置の動作モードとして、自動操舵モードと操舵アシストモードとは切替可能である。自動操舵と操舵アシストとの切り替えは、例えば車載されるスイッチなどの操作を通じて行うことも可能である。
【0034】
ECU40は、自動操舵制御の実行時、自動操舵制御装置45により演算される目標操舵角に実際の操舵角(実操舵角)を一致させるように、第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30を制御する。
【0035】
ECU40は、操舵アシスト制御の実行時、第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30を駆動させることにより、ステアリングシャフト11にアシスト力を付与する。また、ECU40は、自動制御操舵の実行中にたとえば運転者による介入操舵が検出されるとき、自動操舵制御の実行を停止して操舵アシスト制御を実行開始する。
【0036】
次に、上記のように構成した操舵装置の作用について説明する。
(自動操舵)
ECU40は、自動操舵制御の実行時、自動操舵制御装置45の指示に応じて自動操舵を実行する。ECU40は、車両の電源がオンされると、ステアリングホイール10の操舵角度(絶対回転角度φ)を算出する。ECU40は、第1相対角度センサ23および第2相対角度センサ33から得られる第1相対回転角度θ1と第2相対回転角度θ2とを使用して絶対回転角度φを算出する。ECU40は、算出される実際の絶対回転角度φが目標操舵角に応じた絶対回転角度となるように、第1操舵側モータ20よりも減速比が小さい第2操舵側モータ30を駆動制御する。第2操舵側モータ30の回転制御によってステアリングシャフト11の回転速度および回転角度(絶対回転角度)が制御される。
【0037】
なおこのとき、第1操舵側モータ20は駆動制御されない。第2操舵側モータ30の駆動に伴うステアリングシャフト11の回転は、第3プーリ18および第1ベルト22を介して第1操舵側モータ20に伝達される。これにより第1操舵側モータ20はステアリングシャフト11と連れ回りする。
【0038】
(操舵アシスト)
ECU40は、操舵アシスト制御の実行時、車速および操舵トルクに基づき目標アシストトルクを演算する。ECU40は、ステアリングシャフト11に付与されるアシストトルクが目標アシストトルクとなるように、第2操舵側モータ30よりも減速比が大きい第1操舵側モータ20を駆動制御する。また、ECU40は、車両の電源がオンされると、ステアリングホイール10の操舵角度(絶対回転角度φ)を算出する。ECU40は、第1相対角度センサ23および第2相対角度センサ33から得られる第1相対回転角度θ1と第2相対回転角度θ2とを使用して絶対回転角度φを算出する。
【0039】
なおこのとき、第2操舵側モータ30は駆動制御されない。第1操舵側モータ20の駆動に伴うステアリングシャフト11の回転は、第3プーリ18および第2ベルト32を介して第2操舵側モータ30に伝達される。これにより、第2操舵側モータ30はステアリングシャフト11と連れ回りする。
【0040】
(自動操舵→操舵アシスト)
また、自動操舵中に運転者によってステアリングホイール10が操作されたときには、ECU40は、第2操舵側モータ30の駆動制御を停止して、第1操舵側モータ20の駆動制御を行うことで、操舵をアシストする。このとき、減速比の大きい第1操舵側モータ20が駆動制御されることで、手動操舵の介入操作が優先されるようになっている。
【0041】
(ストッパ機能)
さらに、ステアリングホイール10の絶対回転角度φが所定角度以上となるとステアリングロールコネクタの配線に負荷が掛かることで断線するおそれがある。そこで、ステアリングホイール10の絶対回転角度φが所定角度以上となるおそれがある場合には、ECU40は、第1操舵側モータ20と第2操舵側モータ30との両方を駆動させて、ステアリングホイール10の回転方向と反対方向へ向けた操舵反力を高めることでステアリングシャフト11の回転を規制する。第1操舵側モータ20と第2操舵側モータ30との両方を駆動させることで、ステアリングシャフト11が所定角度以上回転することを、より確実に規制することができるようになる。
【0042】
上記のような操舵装置によれば、第1相対角度センサ23および第2相対角度センサ33から得られる第1相対回転角度θ1および第2相対回転角度θ2によって絶対回転角度φを算出することができるので、操舵角度の検出精度の低下を抑制することができるようになる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)異なる減速比で接続された第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30を通じて得られる第1相対回転角度θ1と第2相対回転角度θ2とを用いてステアリングシャフト11の絶対回転角度φを算出することができる。ステアリングシャフトに操舵角センサが設けられることなく操舵角度を算出することができるので、操舵角度(絶対回転角度φ)の検出精度の低下を抑制することができる。
【0044】
(2)第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30はそれぞれ第1ベルト22および第2ベルト32を介してステアリングシャフト11に連結される。ベルトを利用した減速機は、複数の歯車が噛み合う歯車減速機に比べて作動音が小さい。このため、自動操舵時または操舵アシスト時の作動音を抑制することができる。また、減速比の設定を比較的容易に行うことができる。
【0045】
(3)2個の第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30を有するので冗長性が高まる。フェールセーフの観点から、自動操舵を行う装置においては、特に好適である。
(4)自動操舵時に減速比がより小さい第2操舵側モータ30を駆動させ、自動操舵中に手動操舵があったときに減速比がより大きい第1操舵側モータ20を駆動させることで、手動操舵における駆動力が勝り、手動操舵を容易に優先させることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
以下、
図4および
図5を参照して、回転角度検出装置を備えた操舵装置の第2の実施形態について説明する。この実施形態の操舵装置は、操舵機構と転舵機構とが機械的に分離されるステアバイワイヤである点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0047】
図4に示されるように、操舵装置は、操舵機構と転舵機構との間を機械的に断続するクラッチ50を備えている。クラッチ50は、ステアリングシャフト11の第3プーリ18が設けられている位置よりも転舵輪16側に設けられている。クラッチ50は、ECU40からの通電が行われることで切断され、ECU40からの通電が停止されることで接続される。クラッチ50が切断されると、ステアリングホイール10と転舵輪16とが機械的に分離される。クラッチ50が接続されると、ステアリングホイール10と転舵輪16とが機械的に連結される。
【0048】
第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30は、それぞれステアリングシャフト11におけるクラッチ50よりもステアリングホイール10側の部分に反力を付与する反力モータとして機能する。
【0049】
操舵装置は、運転者の操舵に応じて、転舵輪16を転舵させるラック駆動機構60を備えている。ラック駆動機構60は、転舵力の発生源である転舵側モータ61、転舵側モータ61の回転を減速する減速機(例えばウォーム減速機)63と、ラック軸13に噛み合わされる第2ピニオンシャフト65とを備えている。第2ピニオンシャフト65は、ラック軸13に設けられた第2ラックギヤ66に噛み合わせられる第2ピニオンギヤ65aを有している。第2ピニオンシャフト65の回転運動は、第2ピニオンギヤ65aおよび第2ラックギヤ66を介してラック軸13の軸方向の往復直線運動に変換される。なお、ラック駆動機構60は、ピニオンシャフト12、ラック軸13、およびラックギヤ14とともに転舵機構を構成する。ラック軸13が転舵シャフトに相当する。
【0050】
転舵側モータ61には、転舵側モータ61の回転軸の回転角度を検出する第3相対角度センサ62が設けられている。第3相対角度センサ62としてはMRセンサが採用されている。
【0051】
減速機63は、転舵側モータ61の回転軸に設けられるウォーム61a、およびウォーム61aが噛み合うウォームホイール63aを有している。ウォームホイール63aには、第2ピニオンシャフト65が固定されている。
【0052】
図5に示されるように、ECU40は、第3相対角度センサ62から得られる転舵側モータ61の回転角度によってフィードバック制御を行いながら、ステアリングホイール10の操舵に合わせて転舵輪16が転舵するように転舵側モータ61を駆動制御する。ECU40は、第1相対角度センサ23および第2相対角度センサ33を通じて検出される第1相対回転角度θ1と第2相対回転角度θ2とに基づき操舵角を演算し、当該操舵角に基づき転舵輪16の目標転舵角を演算する。そしてECU40は、転舵側モータ61の回転角に基づき検出される実際の転舵角を目標転舵角に一致させるように、転舵側モータ61を制御する。なお、ステアリングホイール10が操作された分だけ転舵輪16を転舵させるようにしてもよい。このときECU40は、実際の転舵角を操舵角に一致させるように転舵側モータ61を制御する。
【0053】
ECU40は、第2操舵側モータ30の駆動制御を通じて操舵トルクに応じた操舵反力を発生させる反力制御を実行する。すなわち、ECU40はトルクセンサ19を通じて検出される操舵トルクに基づき目標操舵反力(目標反力トルク)を演算する。そしてECU40は、ステアリングシャフト11に付与される実際の操舵反力(反力トルク)を目標操舵反力に一致させるように、第2操舵側モータ30を駆動制御する。
【0054】
次に、上記のように構成した操舵装置の作用について説明する。
(ステアバイワイヤ)
クラッチ50が切断されて、操舵装置がステアバイワイヤとして機能するときには、ECU40は、運転者による操舵に対して第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30によって操舵反力を付与するとともに、運転者の操舵に応じてラック駆動機構60の転舵側モータ61を駆動させて転舵輪16を転舵させる。
【0055】
すなわち、ECU40は、車両の電源がオンされると、第1相対角度センサ23および第2相対角度センサ33から得られる第1相対回転角度θ1と第2相対回転角度θ2とからステアリングホイール10の操舵角度(絶対回転角度φ)を算出する。そしてECU40は、ステアリングシャフト11の絶対回転角度φに対応する転舵が行われるように転舵側モータ61を駆動制御する。また、ECU40は、ステアリングシャフト11に付与される実際の反力トルクが目標反力トルクに一致するように、第2操舵側モータ30を駆動制御する。
【0056】
このように操舵装置がステアバイワイヤとして機能するときには、クラッチ50によって操舵機構と転舵機構との間の動力伝達経路が機械的に切断されているので、転舵輪16からの振動等はステアリングホイール10に伝達されることが抑制される。ステアリングホイール10の操作に応じて転舵輪16が転舵されるため、運転者は快適な操舵を行うことができる。
【0057】
なお、転舵側モータ61に異常が発生したときには、ECU40は、クラッチ50を接続させることで、操舵機構と転舵機構とを機械的に接続し、ステアリングシャフト11の回転を転舵輪16に直接伝達することを可能とする。そして、ECU40は、第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30をそれぞれ駆動制御することで、ステアリングシャフト11にアシスト力を付与する。よって、ステアリングシャフト11にアシスト力が付与されることで運転者の操舵が補助される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態の(1)および(2)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(5)操舵機構と転舵機構とが機械的に分離されるステアバイワイヤであっても、ステアリングシャフト11に操舵角センサが設けられることなく、絶対回転角度φを検出することができる。このため、絶対回転角度φの検出精度の低下を抑制することができる。
【0059】
(6)転舵側モータ61に異常が発生したときにクラッチ50によって操舵機構と転舵機構とを機械的に接続して、転舵側モータ61に代わって第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30によって転舵機構を駆動させることで、ラック軸13を移動させるための駆動力(転舵力)を確保することができる。この駆動力は、操舵を補助するアシスト力としてステアリングシャフト11に作用させることもできる。
【0060】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記各実施形態では、第1相対角度センサ23および第2相対角度センサ33としてMRセンサを用いたが、ホールセンサを用いてもよく、レゾルバを用いてもよい。第2の実施形態の第3相対角度センサ62についても同様である。
【0061】
・上記各実施形態では、第1操舵側モータ20および第2操舵側モータをそれぞれ第1ベルト22および第2ベルト32を介してステアリングシャフト11に連結した。しかし第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30をそれぞれベルトに代えてギヤを介してステアリングシャフト11に連結してもよい。
【0062】
・上記各実施形態において、第1プーリ21の歯数、第2プーリ31の歯数、第3プーリ18の歯数は、減速比の大小関係が維持されれば、任意に設定可能である。
・上記各実施形態では、ステアリングシャフト11に設けられる操舵側モータを2個設けたが、操舵側モータを3個以上設けてもよい。この場合、上記各実施形態と同様に3個以上の操舵側モータをステアリングシャフト11に連結し、3個以上の操舵側モータのうち少なくとも2個の操舵側モータの回転角度差から絶対回転角度φを算出するようにしてもよい。
【0063】
・上記第2の実施形態では、ECU40と自動操舵制御装置45とを別々に設けたが、ECUと自動操舵制御装置とを1つにまとめた制御装置として設けてもよい。
・上記第1の実施形態では、1個のECU40が第1操舵側モータ20、第2操舵側モータ30を制御したが、各第1操舵側モータ20と第2操舵側モータ30とにECU40をそれぞれ一体に設けてもよい。
【0064】
・上記第2の実施形態では、1個のECU40が第1操舵側モータ20、第2操舵側モータ30、転舵側モータ61を制御したが、各第1操舵側モータ20と第2操舵側モータ30と転舵側モータ61とにECU40をそれぞれ一体に設けてもよい。
【0065】
・上記第2の実施形態において、ウォームホイール63aに相対角度センサ64を設けてもよい。相対角度センサ64はウォームホイール63a(ひいては第2ピニオンシャフト65)の回転角度を検出する。ECU40は、相対角度センサ64を通じて検出されるウォームホイール63aの回転角度に基づき実際の転舵角を演算するようにしてもよい。
【0066】
・第1の実施形態では、自動操舵制御の実行時、第2操舵側モータ30を使用して操舵力を発生させたが、第1操舵側モータ20により操舵力を発生させてもよい。また、第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30の両方を使用して操舵力を発生させてもよい。
【0067】
・第2の実施形態では、第2操舵側モータ30を使用して操舵反力を発生させたが、第1操舵側モータ20により操舵反力を発生させてもよい。また、第1操舵側モータ20および第2操舵側モータ30の両方を使用して操舵反力を発生させてもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、回転角検出装置によりステアリングシャフト11の回転角度(操舵角)を検出する例を挙げたが、他のシャフトの回転角度を求めるために使用してもよい。また、車載用途に限らない。