(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561652
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】移動物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20190808BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20190808BHJP
G01B 7/14 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
G01D5/245 110K
G01D5/12 A
G01B7/14
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-143542(P2015-143542)
(22)【出願日】2015年7月20日
(65)【公開番号】特開2017-26399(P2017-26399A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須山 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 将幹
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−125117(JP,A)
【文献】
特開2011−133280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
G01B 7/14
G01D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石と、
前記磁石による磁界の変化に応じた電気信号として出力する磁気検出素子と、
前記磁石および前記磁気検出素子を保持するケースと、
前記ケースとともに前記磁石および前記磁気検出素子を収納するカバーと、
前記ケースと前記カバーとの間に介在し前記磁石および前記磁気検出素子の収納空間を気密にするパッキンと、を備え、
前記カバーは、前記ケースとの対向面で、かつ前記パッキンとの接触位置よりも前記カバーの開口端部側に前記ケースと離れる方向への傾斜面を設け、
前記傾斜面よりも前記開口端部側に、前記ケースと係合保持するための保持部を設け、
前記ケースに、前記保持部に対応する係合部を設けた
ことを特徴とする移動物体検出装置。
【請求項2】
前記カバーは、一端を開口する筒状に形成され、前記ケースに嵌合することで内部に前記収納空間を形成し、
前記傾斜面によって前記カバーの開口端部側の内径が、前記ケースとの対向面の外径よりも径大に形成されることを特徴とする請求項1に記載の移動物体検出装置。
【請求項3】
前記係合部は、凸形状であり、
前記保持部は、孔形状である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動物体検出装置に関し、例えば、金属歯車等の被検出体の回転移動を検出する移動物体検出装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の移動物体検出装置は、例えば、特許文献1に開示されるものがある。この移動物体検出装置は、磁気検出素子と、前記磁気検出素子に磁界を加える磁石と、前記磁気検出素子と電気的に接続された基板と、前記磁石と前記基板とを配設し前記基板と電気的に接続するリード端子とを備えたケースと、前記磁気検出素子と前記磁石と前記基板とを覆うカバーと、前記ケースと前記カバーとを相互に嵌合固定する嵌合部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−7670号公報(
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、特許文献1に記載の移動物体検出装置のケースには、基板を覆うように設けられるカバーとの対向箇所に形成される溝部にOリングを配置し、ケースとカバーの気密性を確保する構造を適用している。このため、Oリングをケースの溝部に組み付ける際に、カバーの端部や内壁面等がOリングに触れることで、Oリングに傷を付けたり、延いては気密性の低下を招いてしまう虞があった。このため、組み付け作業を慎重に行う必要があり煩雑な作業となっていた。
【0005】
そこで本発明の目的は、前述課題に着目し、簡単な組み付け作業であっても、ケースとカバーとの気密性を良好にする移動物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の移動物体検出装置1は、磁石3と、磁石3による磁界の変化に応じた電気信号として出力する磁気検出素子2と、磁石3および磁気検出素子2を保持するケース6と、ケース6とともに磁石3および磁気検出素子2を収納するカバー7と、ケース6とカバー7との間に介在し磁石3および磁気検出素子2の収納空間を気密にするパッキン10aと、を備え、カバー7は、ケース6との対向面で、かつパッキン10aとの接触位置よりもカバー7の開口端部75側にケース6と離れる方向への傾斜面74を設け
、傾斜面74よりも開口端部75側に、ケース6と係合保持するための保持部73を設け、ケース6に、保持部73に対応する係合部67を設けたものである。
【0007】
また、カバー7は、一端を開口する筒状に形成され、ケース6に嵌合することで内部に収納空間を形成し、傾斜面74によってカバー7の開口端部75側の内径が、ケース6との対向面の外径よりも径大に形成されることを特徴とする。
【0008】
係合部67は、凸形状であり、保持部73は、孔形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の移動物体検出装置は、簡単な組み付け作業であっても、ケースとカバーとの気密性を良好にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態における移動物体検出装置を示す断面図。
【
図2】同上実施の形態の移動物体検出装置を示す一部分解した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が適用された実施の形態について車両に搭載されるギアツースセンサに適用したものについて例にあげて、添付図面を用いて説明する。
【0012】
本発明の移動物体検出装置1は、
図1,2に示すように、磁気検出素子2と、磁石3と、基板4と、リード端子5と、ケース6と、カバー7、接着剤8,9とを備えている。
【0013】
磁気検出素子2は、ホールICを適用でき、被検出体である移動物体の移動にともなう磁力の変化を電気信号に変換し、基板4やリード端子5を介して外部に出力する。磁気検出素子2は、基板4に実装され、カバー7に覆われた状態にて配置される。
【0014】
また、磁気検出素子2は、この場合、基板4の開口部41に配置する略直方体のパッケージに、基板4に接続するための電源線や信号線等の4本のリード部21を設けている。また、被検出体として車両の駆動力を伝える金属製のギアを適用でき、ギア歯の凹凸面との距離変化にともなう磁石3からの磁力変化を検出する構成である。
【0015】
磁石3は、永久磁石からなり、直方体形状をなしている。また、磁石3は、基板4に設けた開口部41から臨む位置で、接着剤8を用いてケース6に固定されており、磁気検出素子2に磁界を与える。
【0016】
基板4は、ガラスエポキシ樹脂などの硬質の絶縁材に、銅などの導電材料からなる配線パターンを設けているプリント配線基板を適用できる。この基板4は、磁気検出素子2、リード端子5と電気的に接続している。また、
図3に示すように、基板4には、電子部品42が実装されており、基板4のほぼ中央に磁気検出素子2を磁石3上に配置するための磁気検出素子2の外形よりも大きな矩形状の開口部41が形成されている。
【0017】
また、基板4は、開口部41に磁気検出素子2を配置することになるが、その開口部41に磁気検出素子2のリード部21が引き出される一辺と当接する当接部43を設け、磁気検出素子2は、その一辺が基板4の当接部43に当接した状態で、その一辺と対向する一辺と磁気検出素子2との間に隙間41aを設け、この隙間41aに磁気検出素子2と磁石3とを固定する接着剤9の余剰接着剤91を導くことで、磁気検出素子2のリード部21と基板4のランド部44との半田付け箇所に余剰接着剤91が及びにくい構成としている。
【0018】
基板4は、ケース6の開口端(カバー7に覆われる部分)上に、リード端子5との半田付け等によって固定されている。また、基板4は、磁石3上に接着剤9を介して固定された磁気検出素子2のリード部21をそれぞれ半田接続するためのランド部44を当接部43の近傍に設けている。なお、この場合、基板4は、ケース6に載置され、前述のようにリード端子5やリード部21の箇所が半田接続される。
【0019】
リード端子5は、屈曲形成された3本のリードフレームからなり、ケース6に要部が内蔵されている。各リード端子5の一端部51は、ケース6に設けたコネクタ部60から露出しており、リード端子5の他端部52は半田によって基板4と電気的に接続されている。なお、コネクタ部60は、磁気検出素子2からの出力を外部機器へ接続伝達する。
【0020】
ケース6は、合成樹脂からなり、リード端子5をインサート成形することで、コネクタ部60を一体に備えた構造体である。ケース6のコネクタ部60の反対側には凹部形状をなしており、そのほぼ中央に磁石3を配置するための底部61と収納壁62とを有する収納部63を備えており、その収納部63内に接着剤8を介して磁石3が固定されている。
【0021】
また、ケース6は、開口端上に基板4を載せる載置部64と、基板4の位置決めのために開口端上方に突出する凸部(突起)64aとが3箇所に設けられている。この載置部64の載置面から突出する凸部64aの高さは、基板4の厚みよりも低くなるように設けられている。一方、基板4には、この凸部64aに嵌る凹部45が縁部に設けられており、その凹部45からケース6の凸部64aが基板4の実装面よりも上方に突出しないようになっている。即ち、基板4が、実装された状態において、凸部64aが突出しない寸法で形成される。また、基板4の外径はケース6の開口端の外周よりも小さくなるように形成されている。なお、ケース6の載置部64に塗布された接着剤を介して基板4を保持することもできる。
【0022】
また、
図4に示すように、ケース6の収納部63は、底部61に接着剤8を塗布し磁石3を配置し、磁石3を配置した際に発生する余剰接着剤81を収納部63の周りに設けられた空間部65にはみ出させるためのスリット部66が設けられており、そのスリット部66は収納壁62における磁石3の角部に対応した4隅に設けられている。また、スリット部66は収納部63の底部61から所定距離離れ、4隅から開口側(基板4側)に向かって形成されている。このため、収納部63は、カップ状の部分が設けられるため、この部分にて、十分に接着剤8を介在させることで磁石3を強固に保持できる。
【0023】
ケース6の検出部側は、略円柱形状をしており、二つの環状の溝10,11が形成されている。一方の溝10は、他方の溝11より直径が小さく、他方の溝11より磁気検出素子2側で、カバー7で覆われる位置に設けられている。他方の溝11は、ケース6の中程に設けられている。そして、各々の溝10,11には、封止部材であるOリング10a,11aが装着されている。Oリング(パッキン)
11aは、移動物体検出装置1を図示しない機器などに取り付けた場合に、気密性を確保するために装着される。
【0024】
ケース6は、ケース6とカバー7とを嵌合固定する嵌合部を構成する複数の突起部(係合部)67を備えている。この場合、突起部67は、二つの溝10,11間に設けられる。
【0025】
カバー7は、樹脂材料からなり、円盤状の天板71と、円筒形状の周壁部72とを備えたカップ形状である。このカバー7は、磁気検出素子2、磁石3、基板4を覆っている。カバー7は、ケース6の溝10に設けたOリング10aが、ケース6の溝10とカバー7の周壁部72の内側との間で圧縮されて、ケース6とカバー7とで形成される収納空間内に水や空気などが入り込まないように封止している。
【0026】
また、カバー7は、ケース6の突起部67に対応する孔(保持部)73が形成されている。孔73と突起部67によって、カバー7とケース6とが係合される。
【0027】
また、カバー7の内側(ケース6に対向する面)の、Oリング10aよりもカバー7の開口端部75側には傾斜面74が形成されている。カバー7の開口端部75側の内径は、ケース6との対向面の外径よりも径が大きく形成されている。
【0028】
接着剤8,9は、自然硬化型の液状接着剤を適用でき、例えば、湿気等による水分で硬化するポリマー系接着剤を適用できる。接着剤8は、収納部63内に磁石3を固定するために流入される。また、接着剤9は、磁石3を収納部63に収めてから別工程によって、磁石3と磁気検出素子2とを接着するために塗布される。また、同様の接着剤を、載置部64に塗布して、基板4を保持させることもできる。
【0029】
斯かる移動物体検出装置1は、磁石3と、磁石3による磁界の変化に応じた電気信号として出力する磁気検出素子2と、磁石3および磁気検出素子2を保持するケース6と、ケース6とともに磁石3および磁気検出素子2を収納するカバー7と、ケース6とカバー7との間に介在し磁石3および磁気検出素子2の収納空間を気密にするOリング10aと、を備え、カバー7は、ケース6との対向面で、かつOリング10aとの接触位置よりもカバー7の開口端部75側にケース6と離れる方向への傾斜面74が設けられている。
【0030】
従って、ケース6とカバー7とOリング10aによって、磁石3および磁気検出素子2の収納空間の気密性を保持する事ができる。
【0031】
また、カバー7は、一端を開口する筒状に形成され、ケース6に嵌合することで内部に収納空間を形成し、傾斜面74によってカバー7の開口端部75側の内径が、ケース6との対向面の外径よりも径大に形成されている。
【0032】
従って、カバー7をケース6に組み付ける際に、ケース6に実装されたOリング10aがカバー7の内壁や開口端部75に触れにくい。
【0033】
また、カバー7は、傾斜面74よりもカバー7の開口端部75側に、ケース6と係合保持するための孔(保持部)73が形成されている。
【0034】
従って、カバー7の成形時に孔73にバリ(樹脂材料の残材部分)が生じたとしても、カバー7をケース6に組み付ける際に、このバリがOリング10aに触れにくい。
【0035】
更に、カバー7の傾斜面74から開口端部75側は、Oリング10aの当接位置付近よりも厚みが薄くなっているため変形しやすく、突起部67と孔73を容易に嵌合固定させることができる。
【0036】
このような構成によってOリング10aに傷を付けたり、延いては気密性の低下を招いてしまう不具合を防止できる。また、傾斜面74によって誘い込むように適正位置にカバー7を組み付けできるため、従来よりも簡単に組み付けができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。例えば、
図1において、カバー7の開口端部75側と傾斜面74は異なる角度で構成されているが、傾斜面74の角度は孔73に生じうるバリの高さを吸収できれば良く、カバー7の開口端部75側は傾斜面74と同じ傾斜で一体に構成されていても良い。
【0038】
また、カバー7の孔と、ケース6の突起部67とが係合してカバー7とケース6とを係合保持するものを示したが、カバー7にフック状の突起(保持部)、ケース6にこの突起に対応する凹部をもうけて係止させる構造であってもよい。この場合にあっても、上述の傾斜面74等の構成を採用することで、Oリング10aが該突起に触れにくい構造となるため、上述実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、金属等の物体の移動状態を検出する移動物体検出装置に関し、例えば、車両の駆動部品の状態を検出する装置として適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 移動物体検出装置
2 磁気検出素子
21 リード部
3 磁石
4 基板
41 開口部
41a 隙間
42 電子部品
43 当接部
44 ランド部
45 凹部
5 リード端子
51 一端部
52 他端部
6 ケース
60 コネクタ部
61 底部
62 収納壁
63 収納部
64 載置部
64a 凸部
65 空間部
66 スリット部
67 突起部(係合部)
7 カバー
71 天板
72 周壁部
73
孔(保持部)
74 傾斜面
75 開口端部
8 接着剤
9 接着剤
81,91 余剰接着剤
10,11 溝
10a Oリング(パッキン)
11a Oリング