(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について説明する。なお、以下では、本実施形態に係る乗物用シートとして、車両用シートを例に挙げて説明する。ただし、本発明の乗物用シートは、車両用シートのみに限定されず、車両以外の乗物に搭載されるシート、例えば、船舶や航空機に搭載されるシートであってもよい。また、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0022】
また、以下の説明において、「前後方向」とは、着座者から見たときの前後方向であり、車両の走行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向であり、着座者から見たときの左右方向に相当する。また、「上下方向」とは、車両用シートが車両内に搭載された状態での上下方向であり、換言すると、シート高さ方向である。
【0023】
先ず、本実施形態に係る車両用シート1の基本構成について
図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る車両用シート1は、
図1に示すように、シートクッション2と、シートバック3と、ヘッドレスト4とを備えている。また、本実施形態に係る車両用シート1は、シート下部に設置されたスライドレール機構5によって前後方向(車両の走行方向)に移動可能である。
【0024】
ここで、シートクッション2の構成について説明すると、シートクッション2は、フレームとしてのシートクッションフレーム6の上にウレタン等からなるパッド材7を載置し、パッド材7の表面を表皮材8で覆うことによって構成されている。また、シートクッション2内には後述する調整装置9が配置されている。この調整装置9によってシートクッション2の前端位置を前後方向に移動させることが可能である。このようにシートクッション2の前端位置を移動させることで、シートクッション2の前後方向における長さ(以下、単に「シートクッション2の長さ」という)を調整することが可能である。
【0025】
以上の調整機能により、本実施形態に係る車両用シート1では、シートクッション2の長さを着座者の体格に応じて変更し、例えば、
図1において破線にて示した位置までシートクッション2を拡張させることが可能である。
【0026】
次に、調整装置9の構成について説明する。調整装置9は、前述したように、シートクッション2の前端を移動させてシートクッション2の長さを調整するものであり、シートクッション2の前端部の内部に配置されている。そして、本実施形態に係る調整装置9は、
図2等に図示のローラ部10、
図7等に図示の支持部20、
図4等に図示の保持部30、駆動部40及び
図2に図示のカバー部材50によって構成されている。以下、調整装置9の各構成機器について
図2乃至7を参照しながら説明する。なお、説明の都合上、
図2乃至7には調整装置9の構成機器を主として図示しており、その周辺機器等(例えば、シートクッションフレームに取り付けられた他の機器等)については図示を省略している。また、
図7は、ローラ部10の外周部11を外した状態の図となっている。
【0027】
ローラ部10は、
図2に示すように、シートクッションフレーム6の前端よりも前側に配置されている。そして、ローラ部10は、
図5及び6に示すように、その外周部11にシートクッション2の前端部におけるパッド材7及び表皮材8を巻き付けている。また、ローラ部10は、芯材をなす回転軸12を有している。この回転軸12は、シート幅方向に延びており、支持部20によって回転可能な状態で支持されている。そして、回転軸12が回転すると、ローラ部10の外周部11が一体的に回転する。そして、外周部11が回転すると、外周部11におけるパッド材7及び表皮材8の巻き付け量が変化する。なお、本実施形態において、外周部11は軟質材、より具体的にはウレタン等の樹脂発泡体によって形成されている。
【0028】
また、回転軸12には、外周部11に巻き付けられた表皮材8の端末部分8aを固定するための表皮固定部13が取り付けられている。この表皮固定部13は、
図7に図示した略U字状に折り曲げられたワイヤによって構成されている。このワイヤは、回転軸12よりも下側に配置されている。より具体的に説明すると、表皮固定部13を構成するワイヤは、その延出方向両端部にて回転軸12に溶接されている。また、上記のワイヤは、回転軸12に溶接された部分の脇位置で屈曲し、外周部11内に形成された切り込みを通って外周部11の外側に至る位置まで延びている。さらに、上記のワイヤのうち、外周部11の外側に存する部分は、シート幅方向に沿って延出している。このシート幅方向に沿って延びている部分に表皮材8の端末部分8aが固定され、具体的には、
図6に図示したように端末部分8aに締結されたトリムコード8bが係止されている。
【0029】
支持部20は、ローラ部10(厳密には、ローラ部10の回転軸12)を支持するものである。この支持部20は、シートクッションフレーム6に対して前後方向に移動可能な状態で取り付けられている。つまり、支持部20は、前後方向に移動する移動部に該当する。また、支持部20は、
図3に図示した左右一対の進退部材21と、進退部材21間を連絡する連絡部材22と、
図7に図示した回転軸支持ブラケット23と、によって構成されている。進退部材21は、金属製又は樹脂製の棒体からなり、シート幅方向において互いに離間した位置に一対設けられている。各進退部材21は、
図3に示すように、前後方向に沿って長く延びた本体部分21aと、本体部分21aの前端部に隣接すると共にシート幅方向外側に向かって延出した水平部分21bと、シート幅方向における水平部分21bの外側端部に隣接すると共に
上方に向かって延出した鉛直部分21cと、を有する。
【0030】
連絡部材22は、左側の進退部材21の水平部分21bと右側の進退部材21の水平部分21bとを連絡するためにシート幅方向に延在したものであり、例えば、ワイヤによって構成されている。回転軸支持ブラケット23は、各進退部材21の鉛直部分21cの上端部に溶着されており、ローラ部10の回転軸12の軸方向端部を回転可能な状態で支持する。
【0031】
保持部30は、シートクッションフレーム6に固定された状態で支持部20を移動可能な状態で保持するものである。この保持部30は、
図4に示すように、シートクッションフレーム6の前端部の下部に固定されている。また、保持部30は、
図3及び4に示すように左右一対のガイド部材31を備えている。このガイド部材31は、前後方向に沿って長い略筒型の部材であり、その内部には進退部材21が前後方向に沿って進退可能な状態で挿入されている。また、ガイド部材31は、シート幅方向において進退部材21が備えられた位置にそれぞれ配置されている。つまり、本実施形態では、ガイド部材31と進退部材21とのセットがシート幅方向において互いに離間した位置に2組設けられている。
【0032】
なお、ガイド部材31及び進退部材21の構造については、進退部材21の前後方向の進退動作を許容し、それ以外の移動を適切に規制するような構造を採用している。より具体的に説明すると、ガイド部材31及び進退部材21の構造としては、例えば、一般的なヘッドレストのピラー部分及び当該ピラー部分が挿入されるピラーガイド部材を模した構造が利用可能である。
【0033】
ちなみに、本実施形態では、
図4に示すように、一対のガイド部材31が配置されているシートクッションフレーム6の下部において、ガイド部材31間に若干のスペースが形成されている。かかるスペースを利用することでシートクッション2内に内蔵される機器を配置することができ、
図4に示すケースでは、シートクッション2内に送風する送風装置や送風経路を形成する部材が配置されている。
【0034】
また、保持部30は、
図3に図示の連結部材32を備えている。この連結部材32は、折り曲げ加工された金属薄板からなり、シート幅方向に延在することで左右一対のガイド部材31同士を連結している。そして、保持部30は、連結部材32を介してシートクッションフレーム6の下部に固定されている。つまり、本実施形態では、左右一対のガイド部材31を1個ずつシートクッションフレーム6に固定するのではなく、連結部材32に組み付けてユニット化された状態で固定されるのである。このため、保持部30(具体的には、ガイド部材31)をシートクッションフレーム6に固定する際には、効率よく当該固定作業が行われることになる。
【0035】
なお、連結部材32のうち、ガイド部材31が固定されている部分(ガイド部材固定部33)には、
図3に示すように補強部材34が重ね合されており、ガイド部材固定部33の補強がなされている。連結部材32や補強部材34等を含め、ガイド部材31をシートクッションフレーム6に固定するための構造については、後に詳述する。
【0036】
駆動部40は、ローラ部10を支持した支持部20を前後方向に移動させるために動作するものである。この駆動部40は、
図4に図示の駆動モータ41及びスピンドル42を備えると共に、
図5及び6に図示のリンク機構43を備えている。駆動モータ41は、駆動部40の動力源をなし、シートクッションフレーム6の前端部に固定されている。このように本実施形態に係る駆動部40は、駆動モータ41の動力を利用して支持部20を前後移動させるものである。ただし、これに限定されるものではなく、駆動モータ41が無く支持部20を手動にて移動させる構成、例えば、シート着座者が操作レバー等を操作して当該レバーの動きによって支持部20が前後移動する構成であってもよい。
【0037】
スピンドル42は、駆動モータ41の駆動力を受けて前後方向に移動可能な部材であり、本実施形態ではスクリューネジ型の長尺棒体からなる。このスピンドル42は、シートクッションフレーム6の前端部において前後方向に移動可能な状態で支持されている。また、スピンドル42の一端部は、シートクッションフレーム6の所定部位に固定され、他端部は、支持部20の所定部位、例えば、一方の進退部材21に固定されている。したがって、スピンドル42が前後移動すると、左右一対の進退部材21が前後方向に移動するようになる。
【0038】
リンク機構43は、支持部20の前後移動に連動してローラ部10を回転させるものである。より詳しく説明すると、リンク機構43は、複数のリンクからなり、各リンクが支持部20の前後移動に付随して動作する。このとき、リンク機構43中の一つのリンクは、ローラ部10の回転軸12に接続された状態で当該回転軸12を回転させるように動作(回動動作)する。これにより、ローラ部10は、支持部20の前後移動に連動して回転軸12と一体的に回転(厳密には回動)するようになる。
【0039】
ここで、本実施形態に係るリンク機構43の構成について具体的に説明すると、
図5及び6に示すように、第一リンク44、第二リンク45及び中間リンク46、47がリンク機構43を構成している。第一リンク44は、ローラ部10の回転軸12に接続されたレバー状のリンクであり、回転軸12とともに揺動する。第二リンク45は、シートクッションフレーム6の下部に設けられた軸に揺動自在な状態で支持されたアーム状のリンクである。中間リンク46、47は、第一リンク44と第二リンク45との間に介在する略V字形のリンクであり、第二リンク45の動きに連動して動作することにより、第一リンク44を動作(揺動)させる。換言すると、第二リンク45は、中間リンク46、47を介して第一リンク44を動作させることになる。
【0040】
リンク機構43の動きについて
図5及び6を参照しながら説明すると、進退部材21の進退動作によって支持部20が前後移動すると、回転軸12を含むローラ部10と第一リンク44とが一体的に前後移動するようになる。また、第一リンク44が前後移動すると、これに伴って、中間リンク46、47及び第二リンク45が動作するようになる。このとき、中間リンク46、47及び第二リンク45は、それぞれ、第一リンク44(厳密には、中間リンク46に接続されている側の端部)が前後に揺動するように動作する。これにより、第一リンク44が、ローラ部10の回転軸12を回転させるように動作(揺動)するようになる。
【0041】
なお、本実施形態において、リンク機構43を構成する各リンクは、シート幅方向においてローラ部10よりも外側に配置されており、より厳密には、シート幅方向の一端側でローラ部10と隣り合う位置に配置されている。また、リンク機構43中、ローラ部10の回転軸12に接続されている第一リンク44は、ローラ部10の上端よりも下側に配置されており、より厳密には、回転軸12の上端よりも下側に配置されている。このような位置関係を採用することで、本実施形態では、第一リンク44が着座者に当たって着座感を損ねてしまうのを適切に抑えている。
【0042】
また、本実施形態では、リンク機構43を構成する各リンクの動作量が一定値以上となるのを規制する目的から、
図5に図示のストッパ部48をシートクッションフレーム6に設けている。このストッパ部48は、シートクッションフレーム6中の所定部位からシート幅方向外側に向かって張り出している。そして、ストッパ部48は、第二リンク45がその可動域の一端位置に至ったときに、第二リンク45の長手方向端部に形成された係止部45aが上記のストッパ部48によって係止されるようになる。これにより、第二リンク45の更なる後方揺動が規制される。この結果、回転軸12を含むローラ部10について、
図5に図示の状態から更にパッド材7や表皮材8を巻き取る向きへの回転が規制されるようになる。
【0043】
カバー部材50は、ローラ部10への異物の付着等を抑制するためにローラ部10の少なくとも一部を覆う部材である。このカバー部材50は、上方から見たときに略U字状の外形形状をなしており、
図3に示すように前壁部51及び左右一対の側壁部52を有する。側壁部52は、ローラ部10の側端面を側方から覆っている。
【0044】
前壁部51は、ローラ部10の外周部11に巻き付けられたパッド材7の前方に位置し、パッド材7を覆っている。なお、前壁部51は、上下方向においてローラ部10の回転軸12よりも若干下方に配置されている。このため、ローラ部10の上方部分及び当該上方部分に巻き付けられているパッド材7については、前壁部51よりも上方に位置して露出している。
【0045】
なお、本実施形態において、カバー部材50は、樹脂材料にて成形されており、前壁部51及び側壁部52が一体的に成形されている。また、カバー部材50は、
図2に示す位置にて支持部20に締結されている。具体的には、左右一対の側壁部52が、それぞれ支持部20の回転軸支持ブラケット23にビスにて固定されている。これにより、支持部20が前後移動する際には、カバー部材50が支持部20と一体的に移動することになる。このようにカバー部材50が支持部20と一体的に移動することで、支持部20と干渉することなくローラ部10を覆うことが可能となる。また、カバー部材50の側壁部52にてローラ部10の外周部11の側端面を覆うことで、パッド材7が巻き付けられた外周部11の側端面を覆い隠し、以てローラ部10周りの外観を良化することが可能となる。
【0046】
次に、前述した保持部30の構成、具体的には、ガイド部材31をシートクッションフレーム6に固定するための構造について
図8を参照しながら詳しく説明する。
図8は、保持部の構成を示す模式断面図であり、より厳密には、ガイド部材31の長手方向中途位置にて切断したときの断面を示す図である。
【0047】
ガイド部材31は、前述したように、シート幅方向において各進退部材21が備えられた位置にそれぞれ配置されている。より具体的に説明すると、進退部材21は、シート幅方向において互いに離れた位置に一対備えられている。これに併せて、ガイド部材31についても進退部材21と同じ数だけ設けられており、各ガイド部材31は、シート幅方向において、対応する進退部材21が位置する位置に配置されている。
【0048】
一方、ガイド部材31同士は、シート幅方向に沿って延びた連結部材32によって連結されている。具体的に説明すると、
図3に示すように、連結部材32は、その延出方向両端部にガイド部材固定部33を備えている。このガイド部材固定部33は、連結部材32中、ガイド部材31が固定されている部分であり、本実施形態ではガイド部材31毎に設けられており、具体的には、シート幅方向において互いに離間した位置に1個ずつ設けられている。
【0049】
ここで、各ガイド部材固定部33について説明すると、各ガイド部材固定部33は、
図8に示すように正面視で略ハット型(逆さU字状)の形状をなしている。より厳密に説明すると、それぞれのガイド部材固定部33は、
図8に示すように複数の部分からなり、具体的には、同図に図示の第一部分33a、第二部分33b及び第三部分33cを有する。第一部分33aは、シート幅方向においてガイド部材固定部33の両端部に位置し、水平方向に延びた部分である。第二部分33bは、シート幅方向において第一部分33aの間に挟まれており第一部分33aよりも下方に位置し、水平方向に延びた部分である。第三部分33cは、第一部分33aと第二部分33bとの段差部分をなし、鉛直方向に延びた部分である。そして、
図8に示すように、各ガイド部材固定部33のうち、第二部分33bにガイド部材31が固定されている。
【0050】
一方で、各ガイド部材固定部33には、
図8に示すように補強部材34が重ね合わせられている。この
補強部材34は、金属板片からなり、ガイド部材固定部33と当接してガイド部材固定部33を補強するものである。なお、本実施形態では、補強部材34がガイド部材固定部33毎に設けられている。また、各補強部材34は、
図8に示すように、ガイド部材固定部33と同様、正面視で略ハット型(逆さU字状)の形状をなしている。より厳密に説明すると、補強部材34は、
図8に示すように複数の部分からなり、具体的には、同図に図示の第一補強部分34a、第二補強部分34b及び第三補強部分34cを有する。第一補強部分34aは、シート幅方向において補強部材34の両端部に位置し、水平方向に延びた部分である。第二補強部分34bは、シート幅方向において第一補強部分34aの間に挟まれており第一補強部分34aよりも下方に位置し、水平方向に延びた部分である。第三補強部分34cは、第一補強部分34aと第二補強部分34bとの段差部分をなし、鉛直方向に延びた部分である。
【0051】
以上のような補強部材34が、
図8に示すように第一部分33aと第一補強部分34aとが重なり合い、かつ、第三部分33cと第三補強部分34cとが重なり合った状態で、対応するガイド部材固定部33と当接している。このように補強部材34が当接することで各ガイド部材固定部33の強度の向上が図られている。この結果、各ガイド部材固定部33におけるガイド部材31の固定状態を安定させることが可能となる。そして、本実施形態では、各ガイド部材固定部33に、対応するガイド部材31が補強部材34を介して固定されている。具体的には、第二補強部分34bにガイド部材31が溶接された状態の補強部材34がガイド部材固定部33に組み付けられることによって、対応するガイド部材31が各ガイド部材固定部33に固定されている。
【0052】
ところで、本実施形態では、連結部材32がシートクッションフレーム6に固定されることで、連結部材32に固定されたガイド部材31をはじめ、保持部30全体がシートクッションフレーム6に固定されている。また、
図8に示すように、連結部材32及び補強部材34の双方は、当該双方共にシートクッションフレーム6に対して固定されている。すなわち、本実施形態において、連結部材32及び補強部材34の双方は、ネジやビス等、当該双方を貫通する締結具35によって共締めされている。より具体的に説明すると、連結部材32及び補強部材34の双方の各々には締結具35が挿入される穴32h、34hが設けられている。そして、連結部材32及び補強部材34の双方に形成された穴32h、34hが重なり合った状態で各穴32h、34hに挿入された締結具35によって、連結部材32及び補強部材34がシートクッションフレーム6の所定部位に固定されている。
【0053】
なお、本実施形態において、上記の穴32h、34hは、シート幅方向においてガイド部材31の両脇位置に形成されている。より厳密に説明すると、連結部材32では、各ガイド部材固定部33の両端部に設けられた第一部分33aのそれぞれに穴32hが形成されている。他方、補強部材34では、その両端部に設けられた第一補強部分34aのそれぞれに穴34hが形成されている。このように穴32h、34hがシート幅方向においてガイド部材31の両脇位置に形成されているので、連結部材32及び補強部材34は、ガイド部材31の両脇位置にてシートクッションフレーム6に固定(締結)されることになる。これにより、連結部材32中、各ガイド部材31周辺に位置する部分の剛性を向上させることが可能となる。この結果、連結部材32のガイド部材固定部33におけるガイド部材31の取付剛性を確保し、以て、ガイド部材31の固定状態をより一層安定させることが可能となる。
【0054】
さらに、本実施形態では、連結部材32及び補強部材34のうちの一方(
図8では、補強部材34)に設けられた穴34hのサイズが、他方(
図8では、連結部材32)に設けられた穴32hのサイズよりも大きくなっており、ルーズホールになっている。このような構成となっていれば、連結部材32及び補強部材34に形成された穴32h、34h同士を合わせることが容易になる。これにより、シートクッションフレーム6に対して連結部材32及び補強部材34を固定する作業がより容易に行われるようになる。
【0055】
以上までに説明してきたように、本実施形態では、連結部材32を介して保持部30の構成部品、具体的には左右一対のガイド部材31がシートクッションフレーム6に固定されている。これにより、左右一対のガイド部材31を一斉にシートクッションフレーム6に固定することが可能となるため、各ガイド部材31を1個ずつ固定する場合に比べて、ガイド部材31の固定作業を効率よく行うことが可能となる。同様に、保持部30の交換等のために各ガイド部材31を取り外す際には、連結部材32を取り外すことにより左右一対のガイド部材31を一斉に取り外すことが可能となる。
【0056】
次に、本実施形態に係る調整装置9の動作例について説明する。なお、以下では、シートクッション2の長さがその調整範囲において最も短くなる時点、すなわち、シートクッション2の前端がその移動範囲において最も後側に位置している時点を、以下では「通常時」と呼ぶこととする。反対に、シートクッション2の長さがその調整範囲において最も長くなる時点、すなわち、シートクッション2の前端がその移動範囲において最も前側に位置している時点を、以下では「拡張時」と呼ぶこととする。
【0057】
ローラ部10、支持部20及びカバー部材50は、通常時にその移動範囲内で最も後側に位置している。かかる状態で駆動モータ41が作動してスピンドル42が前方に移動すると、支持部20が前方に向かって移動する。これに連動して、駆動部40のリンク機構43がローラ部10の回転軸12を
図5中、矢印f1の方向に回転(厳密には回動)させる。これにより、ローラ部10が同方向に回転する結果、ローラ部10の外周部11に巻き付けられているパッド材7及び表皮材8の巻き付け量が変化する。具体的には、
図6に示すように外周部11からパッド材7及び表皮材8が繰り出されるようになり、この結果、巻き付け量が減少する。これにより、シートクッション2の前端が前側に移動し、シートクッション2の着座面が前方に拡張する(つまり、シートクッション2の長さが増加する)ことになる。
【0058】
一方で、ローラ部10、支持部20及びカバー部材50は、拡張時にその移動範囲内で最も前側に位置している。かかる状態で駆動モータ41が作動してスピンドル42が後方に移動すると、支持部20が後方に向かって移動する。これに連動して、駆動部40のリンク機構43がローラ部10の回転軸12を
図5中、矢印f2の方向に回転(厳密には回動)させる。これにより、ローラ部10が同方向に回転する結果、ローラ部10の外周部11におけるパッド材7及び表皮材8の巻き付け量が変化する。具体的には、
図6に示すように外周部11にパッド材7及び表皮材8が巻き取られるようになり、この結果、巻き付け量が増える。これにより、シートクッション2の前端が後側に移動し、シートクッション2の着座面が後方に縮小する(つまり、シートクッション2の長さが減少する)ことになる。
【0059】
以上までに説明してきたように、本実施形態に係る車両用シート1では、シートクッション2の前端部におけるパッド材7及び表皮材8をローラ部10の外周部11に巻き付けている。また、クッション前端位置を移動させる際には、ローラ部10を回転させることで外周部11におけるパッド材7及び表皮材8の巻き付け量を変化させる。そして、本実施形態では外周部11が軟質材、具体的にはウレタン等の樹脂発泡体によって形成されている。これにより、巻き付け量を変化させる(厳密には、巻き付け量を増やす)場合には、外周部11とパッド材7との間に生じる摩擦力によってパッド材7を良好に巻き取ることが可能となる。この結果、パッド材7が巻き付けられた状態のローラ部10の外観が良好なものとなる。
【0060】
また、シートクッション2の前端部には通常、着座者の下腿部が載せられるが、本実施形態では、前述したように、シートクッション2の前端部の内部に配置されたローラ部10の外周部11が軟質材によって形成されている。このため、シートクッション2の前端部に着座者の下腿部を載せられると、シートクッション2の前端部が柔らかな当接力に着座者の下腿部に押し当たるようになる。この結果、着座者は、良好な着座感を感じるようになる。
【0061】
以上までに調整装置9の構成について一例を挙げて説明したが、上記の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態も考えられる。例えば、ローラ部10の外周部11に巻き付けられているパッド材7や表皮材8に対して適切なテンションを付与する目的から、
図9に図示した付勢部材60を調整装置9中に更に設けてもよい。
図9は、付勢部材60が設けられた構成を示す図であり、厳密には、付勢部材60周辺の構造を示す図である。なお、
図9では、付勢部材60を図示する都合上、付勢部材60周辺の一部のみを示すこととし、ローラ部10の外周部11を省略している。
【0062】
上記の付勢部材60は、渦巻きばねからなり、その一端が回転軸支持ブラケット23に留められており、他端がローラ部10の回転軸12に留められている。かかる状態でセットされた付勢部材60は、ローラ部10の回転方向においてパッド材7や表皮材8の巻き付け量が増える向き(
図5中、矢印f2の方向)にローラ部10を付勢する。このようにローラ部10が付勢されることで、その外周部11に巻き付けられているパッド材7や表皮材8が適度に張られるようになり、シートクッション2の前端部が良好な外観を呈するようになる。