特許第6561667号(P6561667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561667
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   B60N2/08
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-156505(P2015-156505)
(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-35912(P2017-35912A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 考司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊之
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−107792(JP,A)
【文献】 特開2014−034329(JP,A)
【文献】 特開2006−082724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延設され、幅方向に並設された一対の第1側壁部及びそれら両第1側壁部の先端から互いに近付く幅方向内側にそれぞれ張り出して更に該第1側壁部の基端側に折り返された一対の第1フランジを有する第1レールと、
前記第1レールに対し車両の前後方向に移動可能に連結され、前記両第1フランジ間で幅方向に並設された一対の第2側壁部、前記第1レールから離隔する前記両第2側壁部の基端同士を幅方向に接続する接続壁部、並びに前記両第2側壁部の先端から互いに離隔する幅方向外側にそれぞれ張り出して更に前記第1側壁部及び前記第1フランジに包囲されるように折り返された一対の第2フランジを有する第2レールと、
前記第2レール内で幅方向に延びる軸線の周りに該第2レールに回動自在に連結され、前記第1レール及び前記第2レールの相対移動を規制可能な係止部材とを備え、
前記両第2側壁部の各々には、前側孔、該前側孔の車両の後方に間隔をあけて配置された後側孔、並びにそれら前側孔及び後側孔の前記接続壁部から離間する先端同士を車両の前後方向に連通する連通孔を有する孔が幅方向に開口するように形成され、
前記連通孔側が自由端となるように前記孔によって前記両第2側壁部に画成される一対の延出片の位置で前記両第2側壁部との離間距離が最小となるように前記係止部材に幅方向両外側に突設された一対の突部を備えた、車両用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、
前記係止部材は、回動に伴い後端部に設けられた係止部が前記第1レールと係合・離脱することで前記第1レール及び前記第2レールの相対移動を規制・解除するように構成されており、
前記両突部は、前記係止部材の回動の軸線よりも車両の後方であって、前記係止部の車両の前方に隣接配置された、車両用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートスライド装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この車両用シートスライド装置は、車両の前後方向に延在する第1レールとしてのロアレールと、該ロアレールに対し移動可能に連結された第2レールとしてのアッパレールと、該アッパレールの当該移動を規制可能な係止部材とを備えて構成される。
【0003】
すなわち、図7に示すように、ロアレール110は、幅方向に並設された一対の第1側壁部111と、アッパレール120から離隔する両第1側壁部111の基端(下端)同士を幅方向に接続する第1接続壁部112とを有する。また、ロアレール110は、両第1側壁部111の先端(上端)から互いに近付く幅方向内側にそれぞれ張り出して更に該第1側壁部111の基端側に折り返された一対の第1フランジ113を有する。
【0004】
アッパレール120は、両第1フランジ113間で幅方向に並設された一対の第2側壁部121と、ロアレール110から離隔する両第2側壁部121の基端(上端)同士を幅方向に接続する第2接続壁部122とを有する。また、アッパレール120は、両第2側壁部121の先端(下端)から互いに離隔する幅方向外側にそれぞれ張り出して更に第1側壁部111及び第1フランジ113に包囲されるように折り返された一対の第2フランジ123を有する。
【0005】
つまり、ロアレール110及びアッパレール120は、それらの幅方向で共に対称(左右対称)となるレール断面をそれぞれ有しており、主として第1フランジ113及び第2フランジ123の係合によって上下方向に抜け止めされている。
【0006】
係止部材130は、基本的にアッパレール120内に配置されており、幅方向に延びる軸線の周りにアッパレール120に回動自在に連結されている。係止部材130は、回動に伴いその後端部が下降することで前述の移動を規制し、あるいは後端部が上昇することで当該規制を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−107792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば車両の前方衝突などでアッパレール120の支持するシート側(例えばシートベルト)から上方に向かう著しい荷重が入力されると、図8(a)、(b)に示すように、アッパレール120が上方に引っ張られてロアレール110と噛み合うことでアッパレール120の開口端側が幅方向内側に閉じるように変形する。このとき、変形に伴って第2側壁部121に当接(圧接)する係止部材130は、第2側壁部121の傾斜に案内されて上方に移動しようとし、あるいは幅方向で高低差が生じるように傾動し、本来の姿勢を保持できなくなる可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、係止部材の姿勢をより安定化することができる車両用シートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、車両の前後方向に延設され、幅方向に並設された一対の第1側壁部及びそれら両第1側壁部の先端から互いに近付く幅方向内側にそれぞれ張り出して更に該第1側壁部の基端側に折り返された一対の第1フランジを有する第1レールと、前記第1レールに対し車両の前後方向に移動可能に連結され、前記両第1フランジ間で幅方向に並設された一対の第2側壁部、前記第1レールから離隔する前記両第2側壁部の基端同士を幅方向に接続する接続壁部、並びに前記両第2側壁部の先端から互いに離隔する幅方向外側にそれぞれ張り出して更に前記第1側壁部及び前記第1フランジに包囲されるように折り返された一対の第2フランジを有する第2レールと、前記第2レール内で幅方向に延びる軸線の周りに該第2レールに回動自在に連結され、前記第1レール及び前記第2レールの相対移動を規制可能な係止部材とを備え、前記両第2側壁部の各々には、前側孔、該前側孔の車両の後方に間隔をあけて配置された後側孔、並びにそれら前側孔及び後側孔の前記接続壁部から離間する先端同士を車両の前後方向に連通する連通孔を有する孔が幅方向に開口するように形成され、前記連通孔側が自由端となるように前記孔によって前記両第2側壁部に画成される一対の延出片の位置で前記両第2側壁部との離間距離が最小となるように前記係止部材に幅方向両外側に突設された一対の突部を備える。
【0011】
この構成によれば、例えば車両の前方衝突などで前記第1レール及び前記第2レールを離間させる側の上下方向に向かう荷重が入力されると、前記第2レールが当該方向に引っ張られてその開口端側が幅方向内側に閉じるように変形する。このとき、前記第2レール及び前記係止部材は、基本的に前記離間距離が最小となる前記両延出片及び前記両突部において当接(圧接)する。変形に伴って前記両延出片が前記両突部に当接(圧接)すると、前記両延出片がそれらの固定端(上下方向で連通孔の反対側の基端)を起点に相対的に曲げ変形することで、前述の変形(閉じ変形)に追随する前記両延出片のそれ以上の変形が抑制される。このように、前記第2レールの変形(閉じ変形)に関わらず、前記両延出片が前述の曲げ変形をしつつ実質的に前記両突部との当接(圧接)姿勢を維持することで、前記係止部材の姿勢をより安定化することができる。
【0012】
上記車両用シートスライド装置について、前記係止部材は、回動に伴い後端部に設けられた係止部が前記第1レールと係合・離脱することで前記第1レール及び前記第2レールの相対移動を規制・解除するように構成されており、前記両突部は、前記係止部材の回動の軸線よりも車両の後方であって、前記係止部の車両の前方に隣接配置されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、前記両突部は、前記第1レールとの係合・離脱に係る前記係止部の車両の前方に隣接配置されることで、即ち前記係止部材の作動を阻害しない範囲でその回動の軸線から車両の後方に最も離間する位置に配置されることで、前記係止部材の姿勢をより効率的に安定化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、係止部材の姿勢をより安定化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両用シートスライド装置の一実施形態が適用される車両用シートを示す側面図。
図2図4の2−2線に沿った断面図。
図3】同実施形態の車両用シートスライド装置についてその構造を示す分解斜視図。
図4】(a)は、同実施形態の車両用シートスライド装置についてその構造を一部破断して示す側面図であり、(b)は(a)の4B−4B線に沿った断面図。
図5】同実施形態の車両用シートスライド装置についてその作用を一部破断して示す斜視図。
図6】同実施形態の車両用シートスライド装置についてその作用を示す断面図。
図7】従来形態の車両用シートスライド装置についてその構造を示す断面図。
図8】(a)、(b)は、従来形態の車両用シートスライド装置についてその変形の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車両用シートスライド装置の一実施形態について説明する。なお、以下では、車両の前後方向を「前後方向」という。
図1に示すように、車両フロア1には、第1レールとしてのロアレール2が前後方向に延在する状態で固定されるとともに、該ロアレール2には、第2レールとしてのアッパレール3がロアレール2に対し前後方向に移動可能に連結されている。つまり、本実施形態では、ロアレール2及びアッパレール3の長手方向(相対移動方向)は前後方向に一致している。
【0017】
なお、ロアレール2及びアッパレール3は、共に幅方向(図1において紙面に直交する方向)で対をなして配設されており、ここでは前方に向かって左側に配置されたものを示している。そして、両アッパレール3には、乗員の着座部を形成するシート5が固定・支持されている。ロアレール2及びアッパレール3の相対移動は基本的に規制状態にあって、該規制状態を解除するための解除ハンドル6が設けられている。
【0018】
図2に示すように、ロアレール2は、板材からなり、幅方向両側で上下方向に延びる一対の第1側壁部11及びそれら両第1側壁部11の基端(下端)同士を幅方向に接続する底壁部12を有する。そして、各第1側壁部11の先端(上端)には、幅方向内側に張り出して更に第1側壁部11の基端側に折り返された第1フランジ13が連続形成されている。
【0019】
なお、図3に示すように、ロアレール2の各第1フランジ13の基端部(上端部)には、長手方向に所定の間隔をあけて複数の四角形のロック孔13aが形成されている。これらロック孔13aの各々は、上方を開放するとともに下方を閉塞する。
【0020】
図2に示すように、アッパレール3は、板材からなり、ロアレール2の両第1フランジ13間で上下方向に延びる一対の第2側壁部14及びそれら両第2側壁部14のロアレール2から離隔する基端(上端)同士を幅方向に接続する接続壁部としての蓋壁部15を有する。そして、各第2側壁部14の底壁部12側の先端(下端)には、幅方向外側に張り出して更に第1側壁部11及び第1フランジ13に包囲されるように折り返された第2フランジ16が連続形成されている。
【0021】
つまり、ロアレール2及びアッパレール3は、開口側が互いに突き合わされたU字状のレール断面をそれぞれ有しており、主として第1フランジ13及び第2フランジ16との係合によって上下方向に抜け止めされている。
【0022】
図3に示すように、アッパレール3の幅方向各側の長手方向中間部には、当該長手方向に並設された複数(3個)のロック爪用孔3a,3b,3cが形成されている。各ロック爪用孔3a〜3cの間隔は、前記各ロック孔13aの間隔と略同一である。ロック爪用孔3a〜3cは、各第2側壁部14から蓋壁部15の一部に及ぶ範囲に亘って上下方向に延びるように形成されており、幅方向に開口する。
【0023】
また、各第2フランジ16の先端(上端)には、長手方向に並設された複数(3個)の嵌入溝16aが各ロック爪用孔3a〜3cに対応する位置に形成されている。これら嵌入溝16aは、上方に開口している。これら嵌入溝16a及びロック爪用孔3a〜3cは、ロアレール2の隣り合う複数(3個)のロック孔13aと合致可能な位置に配置されている。
【0024】
さらに、各第2側壁部14には、ロック爪用孔3a〜3cよりも車両の前方で軸収容孔14aが形成されている。この軸収容孔14aは、上方の拡開された略等脚台形に形成されており、幅方向に開口する。
【0025】
また、各第2側壁部14には、ロック爪用孔3aの車両の前方に隣接して、幅方向に開口する孔17が形成されている。図4(a)に示すように、この孔17は、上下方向に延びる線状の前側孔17a、該前側孔17aの車両の後方に間隔をあけて配置された上下方向に延びる線状の後側孔17b、並びにそれら前側孔17a及び後側孔17bの蓋壁部15から離間する先端、即ちアッパレール3の開口端側の先端(下端)同士を前後方向に連通する略円弧状の連通孔17cを有して略U字形状を呈する。そして、各第2側壁部14には、孔17によって略アーム状の延出片18が画成されている。この延出片18は、下端(連通孔17c側)を自由端とし上端を固定端する片持ち構造になっている。延出片18の形状(上下方向及び幅方向の寸法等)は、大荷重の入力時に撓むように設定されている。
【0026】
なお、図3に示すように、各第2フランジ16及びこれに対向する第1側壁部11間には、前後一対の転動部材19が介設される。アッパレール3は、ロアレール2との間で転動部材19を転動させる状態で、ロアレール2に対し前後方向に摺動自在に支持されている。
【0027】
図4(b)に併せ示すように、アッパレール3内には、板材からなる係止部材20がアッパレール3の長手方向に沿うように配置されている。この係止部材20は、基本的に両第2側壁部14の幅方向内側に配置されており、アッパレール3に回動自在に連結されている。
【0028】
すなわち、係止部材20は、本体部21と、一対のロック爪22a,22b,22cと、一対の略矩形状の回転軸部23と、一対の略湾状の突部24と、入力部28とを有する。
【0029】
本体部21は、前後方向に延在する略長方形板状に形成されており、その幅方向の寸法は、アッパレール3の両第2側壁部14間の幅方向の距離よりも小さく設定されている。そして、本体部21の前後方向中間部には、両回転軸部23が幅方向両外側に突設されている。係止部材20は、両回転軸部23がアッパレール3の両軸収容孔14aに挿入されることで、幅方向に延びる軸線(両回転軸部23)の周りにアッパレール3に対して上下方向に回動自在に連結されている。
【0030】
なお、各ロック爪22a〜22cは、本体部21の後端部21aに配置されている。すなわち、両ロック爪22a〜22cは、後端部21aの幅方向両外側に突設されている。各側のロック爪22a〜22cは、長手方向に沿ってロアレール2のロック孔13aと同一の間隔で配置されている。一対のロック爪22a〜22cは、後端部21aと共に係止部25を構成する。
【0031】
そして、両ロック爪22a〜22cの各々は、ロック爪用孔3a〜3cを貫通して3つの嵌入溝16aに嵌入する。そして、係止部25が下降するように係止部材20が両回転軸部23周りに回動するとき、両ロック爪22a〜22cの各々が隣り合う3つのロック孔13aに嵌入可能となっている。両ロック爪22a〜22cの各々がロック孔13aに嵌入するとき(図4(b)に示す状態に相当)、ロアレール2及びアッパレール3の相対移動が規制される。一方、係止部25が上昇するように係止部材20が両回転軸部23周りに回動するとき、両ロック爪22a〜22cの各々がロック孔13aから離脱可能となっている。両ロック爪22a〜22cの各々がロック孔13aから離脱するとき、ロアレール2及びアッパレール3の相対移動の規制が解除される。
【0032】
また、両突部24は、係止部25の車両の前方に隣接して本体部21に幅方向両外側に突設されている。それら両突部24の頂点(最突出部)における係止部材20の幅方向の寸法WMは、両第2側壁部14の幅方向の離間距離よりも若干小さく設定されている。この幅方向の寸法WMは、係止部25を除いた係止部材20の幅方向の寸法の最大値となっている。また、両突部24の前後方向の位置は、両延出片18の前後方向の位置に一致する。つまり、係止部材20は、両延出片18の前後方向の位置に一致する両突部24において、両第2側壁部14との離間距離が最小となっている。
【0033】
さらに、入力部28は、本体部21における後端部21aとは反対側の端部(前端部)に形成されている。
図3に示すように、アッパレール3内には、1本の線材からなるロックスプリング50が配置される。このロックスプリング50は、前後方向に延在する略環状に成形されており、その長手方向中間部においてアッパレール3に保持される。そして、ロックスプリング50は、後端部において係止部材20の上面に当接することで、係止部25が下降する側、即ち両ロック爪22a〜22cの各々がロック孔13aに嵌入する側の回動方向に係止部材20を付勢する。
【0034】
解除ハンドル6の幅方向各側の先端部61は、車両の後方に延びてアッパレール3内に挿入されている。このとき、先端部61の後端は、入力部28の上方に位置する。そして、解除ハンドル6を持ち上げるように操作すると、先端部61がロックスプリング50の付勢力に抗して係止部25が上昇する側、即ち両ロック爪22a〜22cの各々がロック孔13aから外れる側の回動方向に係止部材20の入力部28を押圧する。
【0035】
ここで、解除ハンドル6の操作力が解放されているものとする。このとき、ロックスプリング50の付勢力により、係止部材20が両回転軸部23周りに係止部25が下降する側、即ち両ロック爪22a〜22cの各々がロック孔13aに嵌入する側の回動方向に回動することで、前述のようにロアレール2及びアッパレール3の相対移動が規制される。そして、アッパレール3に支持されるシート5の前後方向の位置が保持される。
【0036】
その後、解除ハンドル6を持ち上げるように操作すると、その先端部61が係止部材20の入力部28を下方に押圧する。このとき、ロックスプリング50の付勢力に抗して、係止部材20が両回転軸部23周りに係止部25が上昇する側、即ち両ロック爪22a〜22cの各々がロック孔13aから離脱する側に回動することで、前述のようにロアレール2及びアッパレール3の相対移動の規制が解除される。そして、アッパレール3に支持されるシート5の前後方向の位置調整が可能になる。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5及び図6に示すように、例えば車両の前方衝突などでロアレール2及びアッパレール3を離間させる側の上下方向に向かう荷重が入力されると、アッパレール3が当該方向に引っ張られてその開口端側が幅方向内側に閉じるように変形する。このとき、アッパレール3及び係止部材20は、基本的に前記離間距離が最小となる両延出片18及び両突部24において当接(圧接)する。変形に伴って両延出片18が両突部24に当接(圧接)すると、両延出片18がそれらの固定端(上下方向で連通孔17cの反対側の基端)を起点に相対的に曲げ変形することで、前述の変形(閉じ変形)に追随する両延出片18のそれ以上の変形が抑制される。このように、アッパレール3の変形(閉じ変形)に関わらず、両延出片18が前述の曲げ変形をしつつ実質的に両突部24との当接(圧接)姿勢を維持することで、係止部材20の姿勢をより安定化することができる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、例えば車両の前方衝突の際、係止部材20の姿勢をより安定化することができる。
【0039】
(2)本実施形態では、両突部24は、両回転軸部23(係止部材20の回動の軸線)よりも車両の後方であって、係止部25の車両の前方に隣接配置されている。つまり、両突部24は、係止部材20の作動を阻害しない範囲でその回動の軸線から車両の後方に最も離間する位置に配置されることで、係止部材20の姿勢をより効率的に安定化することができる。
【0040】
また、通常、車両の前方衝突の際、基本的にアッパレール3の閉じ変形はその後方から前方に向かって進行していくことになることから、当該変形の進行のより早期の段階で係止部材20の姿勢を安定化することができる。
【0041】
(3)本実施形態では、両延出片18の前後方向の位置を除いたアッパレール3の閉じ変形(いわゆる剥離変形)は従来どおりであることで、例えば設計時に想定した理想的な閉じ変形からの逸脱を抑えることができる。
【0042】
(4)本実施形態では、両延出片18は、係止部材20の静止状態や通常作動の状態では両突部24に非接触であることで、係止部材20に影響を及ぼすことがない。一方、例えば係止部材20が幅方向にがたつくと、両突部24が両延出片18に当接する。この場合、両延出片18は、撓むことなく両突部24を通じて係止部材20のがたつきを抑えることができる。なお、両突部24が両延出片18に当接する際、両延出片18は、弾性変形の範囲であれば、撓みながらであっても両突部24を通じて係止部材20のがたつきを抑えることができる。
【0043】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態においては、略U字形状の孔17を採用したが、例えば略矩形状や略台形状の孔(17)であってもよい。例えば前側孔17a及び後側孔17bを上下方向に延びる線状としたが、それらの少なくとも一方は上下方向に対して傾斜する線状であってもよい。あるいは、前側孔17a及び後側孔17bの少なくとも一方は略三角形状であってもよい。また、連通孔17cを下向きに凸となる略円弧状としたが、前後方向に延びる線状であってもよい。そして、こうした孔(17)によって第2側壁部14に画成される延出片(18)は、前後方向の寸法が一定で上下方向に延びていてもよいし、前後方向の寸法が徐変されつつ上下方向に延びていてもよい。
【0044】
・前記実施形態においては、孔17(前側孔17a、後側孔17b)は、第2側壁部14から蓋壁部15の一部に及ぶ範囲に亘って上下方向に延びていてもよい。つまり、延出片18の固定端が蓋壁部15に位置していてもよい。
【0045】
・前記実施形態において、係止部材20の両突部24(及びアッパレール3の両延出片18等)の前後方向の位置は任意である。例えば両突部24は、回転軸部23よりも車両の後方に位置するのであれば、係止部25の車両の前方に隣接配置されていなくてもよい。あるいは、両突部24は、回転軸部23よりも車両の前方に位置していてもよい。
【0046】
・前記実施形態において、ロアレール2及びアッパレール3と、車両フロア1及びシート5の固定関係(即ち上下の配置関係)は逆であってもよい。この場合、車両フロア1側(第2レール)に設置される係止部材20の解除操作は、例えばケーブルなどを通じて適宜の操作部材から行ってもよい。
【0047】
・前記実施形態において、ロアレール2及びアッパレール3(車両用シートスライド装置)は、シート5に対し各1本ずつ配設される構成であってもよいし、各3本以上ずつ配設される構成であってもよい。
【0048】
・前記実施形態において、アッパレール3に支持されるシート5は、車両の後方に向いていてもよい。つまり、アッパレール3等の前後方向は、車両の前後方向に一致していればシート5の前後方向と必ずしも一致しなくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
2…ロアレール(第1レール)、11…第1側壁部、12…底壁部、13…第1フランジ、14…第2側壁部、15…蓋壁部(接続壁部)、16…第2フランジ、17…孔、17a…前側孔、17b…後側孔、17c…連通孔、18…延出片、20…係止部材、21a…後端部、24…突部、25…係止部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8