(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
[
参考例の第1例]
図1〜4は
、本発明の
参考例の第1例を示している。
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置は、ステアリングコラム6aと、変位ブラケット12aと、コラム側貫通孔である前後方向長孔19aと、ステアリングシャフト5aと、支持ブラケット13aと、1対の上下方向長孔21a、21aと、調節ロッド22aと、1対の押圧部24a、24bと、調節レバー23と、揺動摩擦板25とを備える。
このうちのステアリングコラム6aは、前側に配置されたインナコラム15aの後端部と後側に配置されたアウタコラム14aの前端部とを軸方向の相対変位を可能に嵌合して成るテレスコピックステアリングコラムで、全体を円筒状としている。又、前記変位ブラケット12aは、アルミニウム系合金等の軽合金をダイキャスト成形する事により、前記アウタコラム14aの前端部下面に、該アウタコラム14aと一体に構成している。前記変位ブラケット12aは、幅方向中央部に形成したスリット26により、全幅を弾性的に拡縮可能としている。但し、前記変位ブラケット12aは、前記アウタコラム14aの前端部上面に設ける事もできる。前記前後方向長孔19aは、前記変位ブラケット12aの一部で、前記スリット26を挟んで互いに整合する位置に、前記変位ブラケット12aを幅方向に貫通する状態で設けている。
【0020】
又、前記ステアリングシャフト5aは、後側に配置したアウタシャフト16aの前端部と前側に配置したインナシャフト17aの後端部とを、スプライン係合等により、トルクの伝達を可能に、且つ、伸縮可能に組み合わせて成る。この様なステアリングシャフト5aは、前記アウタシャフト16aの中間部後端寄り部分を前記アウタコラム14aの後端部に、前記インナシャフト17aの中間部前端寄り部分を前記インナコラム15aの前端部に、それぞれ単列深溝型の玉軸受の如く、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支障可能な転がり軸受により、回転自在に支持している。従って、前記ステアリングシャフト5aは、前記ステアリングコラム6aの伸縮と共に伸縮する。尚、前記アウタシャフト16aの後端部で前記アウタコラム14aの後端開口よりも後方に突出した部分には、ステアリングホイール1(
図19参照)を支持固定する。
【0021】
又、前記支持ブラケット13aは、鋼板等、必要とする強度及び剛性を確保できる金属板を曲げ形成して成るもので、車体に支持する為の取付板部27と、この取付板部27の下面から垂下された、互いに平行な1対の支持板部20a、20bとを備える。前記1対の支持板部20a、20bの内側面同士の間隔は、前記変位ブラケット12aの幅寸法と前記揺動摩擦板25の厚さとの和に、ほぼ一致する。又、前記1対の上下方向長孔21a、21aは、前記1対の支持板部20a、20bの互いに整合する部分に形成しており、前記ステアリングコラム6aの前端部を揺動変位可能に支持した枢軸11aを中心とする部分円弧状である。但し、前記1対の上下方向長孔21a、21aは、後方に向かう程上方に向かう方向に傾斜する直線状とする事もできる。この様な構成を有する前記支持ブラケット13aは、車体10(
図19参照)に対して、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への脱落を可能に、但し、通常時には前記ステアリングコラム6aを充分な剛性を確保できる状態で支持している。即ち、前記取付板部27の幅方向2箇所位置に係止切り欠き28、28を、前記取付板部27の後端縁に開口する状態で形成し、前記1対の係止切り欠き28、28を、車体10(
図19参照)に固定した係止カプセル29、29に、前方に向いた強い衝撃が加わった場合に前方への離脱を可能に係止している。この様な支持ブラケット13aを構成する金属板の板厚は、例えば、2.8〜4.5mm程度、好ましくは、3.2〜4.0mmとする。
【0022】
又、前記調節ロッド22aは、前記前後方向長孔19a及び前記1対の上下方向長孔21a、21aを幅方向に挿通する状態で設けている。そして、この様な調節ロッド22aの両端部で、前記1対の支持板部20a、20bの外側面から突出した部分に、前記1対の押圧部24a、24bを設け、前記調節レバー23により、前記1対の押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮可能としている。前記調節レバー23により前記1対の押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮する為の構造は特に問わない。例えば1対のカム部材のカム面同士の係合により軸方向寸法を拡縮可能としたカム装置や、調節ロッド22aの先端部に設けた雄ねじ部にナットを螺合する構造を採用する事ができる。何れの構造を採用した場合でも、前記調節レバー23は前記調節ロッド22aの一端部に設け、該調節ロッド22aを中心として回転する事により、前記1対の押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮する。
【0023】
又、前記揺動摩擦板25は、鋼板、ステンレス鋼板或いはアルミニウム系合金等の、必要とする強度及び剛性を確保でき、且つ、前記1対の支持板部20a、20bのうちの一方(
図2の左方)の支持板部20aの内側面(
図2の右側面)、及び、前記変位ブラケット12aの片側面(
図2の左側面)に対する摩擦係数を大きくできる金属板により、略扇形に形成している。この金属板の板厚は、例えば、0.5〜1.5mm程度、好ましくは、0.8〜1.2mmとする。この様な揺動摩擦板25は、該揺動摩擦板25の先半部(幅広部)を、前記一方の支持板部20aの内側面と、前記変位ブラケット12aの片側面との間に挟持した状態で、前記一方の支持板部20aに対し、前記ステアリングホイール1の上下位置調節に伴う揺動変位可能に支持している。この為に、前記揺動摩擦板25は、該揺動摩擦板25の基端部(扇の要に相当する部分)に、該揺動摩擦板25と一体に、幅方向外方に(前記一方の支持板部20aに向けて)突出する状態で設けられた円筒部30を、前記一方の支持板部20aに設けられた円孔31に
回動可能に内嵌する(隙間嵌で内嵌する)と共に、前記揺動摩擦板25の先半部に設けられたガイド長孔32に前記調節ロッド22aを挿通している。前記円筒部30は、前記揺動摩擦板25を構成する金属板にバーリング加工を施す事により、該揺動摩擦板25と一体に形成されている。又、前記円孔31の形成位置は、前記一方の支持板部20aのうち、該一方の支持板部20aに設けられた上下方向長孔21aの中心線α{
図4の(A)参照}の延長線(前記枢軸11aを中心とする部分円弧)上(後述する角度θを、前記調節ロッド22aの上下位置に拘わらずほぼ一定にできる限りに於いて、その近傍を含む)で、前記上下方向長孔21aよりも上方としている。
本参考例の場合、前記揺動摩擦板25の円筒部30を前記一方の支持板部20aの円孔31に挿通した状態で、前記円筒部30のうち、前記一方の支持板部20aの外側面(
図2の左側面)から突出した部分を径方向外方に塑性変形させる事により、当該部分にかしめ部33を形成している。そして、前記かしめ部33により前記揺動摩擦板25の円筒部30が前記円孔31から抜け出る(前記揺動摩擦板25が脱落する)のを防止している。但し、この様なかしめ部33により、前記揺動摩擦板25が前記一方の支持板部20aに対し押え付けられる事がない様にしている。これにより、前記ステアリングホイール1の位置を調節可能とすべく、前記1対の押圧部24a、24b同士の間隔を拡げた状態で、該揺動摩擦板25を円滑に揺動させられる様にしている。又、前記ガイド長孔32は、揺動方向片端部である後端部(
図1、4の時計方向後側の端部)から、揺動方向他端部である前端部(同図の時計方向前側の端部)まで、少しずつでも、前記揺動摩擦板25の揺動中心である前記円筒部30との間の距離が長くなる方向に、滑らかな曲線となる様に形成している。具体的には、前記ガイド長孔32を、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の中央部に位置する状態{
図4の(B)に示す状態}で、前記中心線αよりも前方で、且つ、前記円孔31(前記円筒部30)よりも上方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、前記ガイド長孔32のうちで前記調節ロッド22aが係合している部分の接線と、前記円筒部30の中心軸を中心とし、前記調節ロッド22aと前記円筒部30との間の距離Lを半径とする仮想円弧の接線(前記揺動摩擦板25の揺動方向)との成す角度θが、前記調節ロッド22aの上下位置に拘わらず、ほぼ一定となる様にしている。尚、この様な角度θは、10度〜35度とする事が好ましく、より好ましくは20度〜30度とする。そして、前記調節ロッド22aが、前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの上端部に位置する場合に、前記調節ロッド22aと前記ガイド長孔32の後端部とが係合し、前記調節ロッド22aが、前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの下端部に位置する場合に、前記調節ロッド22aと前記ガイド長孔32の前端部とが係合する様に、前記揺動摩擦板25の円筒部30を前記一方の支持板部20aの円孔31に、該円孔31を中心とする
回動を可能に内嵌支持している。
【0024】
本参考例の場合、前記ステアリングホイール1の上下位置又は前後位置を調節する際には、前記調節レバー23を所定方向(通常は下方)に揺動させる事により、前記1対の押圧部24a、24b同士の間隔を拡げる。この結果、前記変位ブラケット12aのスリット26の存在に基づき、前記アウタコラム14aの前端部の内径が弾性的に拡がって、該アウタコラム14aの前端部内周面と前記インナコラム15aの後端部外周面との嵌合部の面圧が、低下乃至は喪失する。同時に、前記揺動摩擦板25の両側面と、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面との当接部の面圧、並びに、前記1対の支持板部20a、20bの外側面と前記1対の押圧部24a、24bの内側面、及び、他方(
図2の右方)の支持板部20bの内側面と前記変位ブラケット12aの他側面(
図2の右側面)との当接部の面圧が、それぞれ低下乃至は喪失する。この状態で、前記調節ロッド22aが、前記前後方向長孔19a及び前記1対の上下方向長孔21a、21a内で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の位置を調節する。
【0025】
上述の様な
本参考例に於いて、前記ステアリングホイール1の上下位置を調節すべく、該ステアリングホイール1(ステアリングコラム6a)を上下方向に変位させた場合の、前記揺動摩擦板25の動きに就いて次に説明する。
図4の(A)は、前記ステアリングホイール1を調節可能な上端位置まで移動させた状態を示している。この状態では、前記調節ロッド22aと、前記上下方向長孔21aの上端部及び前記ガイド長孔32の後端部とが係合している。この状態から前記ステアリングホイール1を下方に変位させ、前記調節ロッド22aを下降させると、該調節ロッド22a及び前記円筒部30の中心軸同士の間の距離Lが長くなる為、
図4の(A)→(B)→(C)に示す様に、前記揺動摩擦板25が前記円筒部30を中心として、
図4の反時計方向に揺動する。そして、前記ステアリングホイール1を調節可能な下端位置まで移動させた状態では、前記
図4の(C)に示す様に、前記調節ロッド22aは、前記上下方向長孔21aの下端部及び前記ガイド長孔32の前端部と係合している。これに対し、前記ステアリングホイール1を、下端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、上述した下方に変位させる場合とは逆に、
図4の(C)→(B)→(A)の順に、前記揺動摩擦板25が揺動する。
【0026】
上述の様に構成する
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、ステアリングホイール1(
図19参照)を調節後の位置に保持する力を大きくできて、しかも、該ステアリングホイール1の上下位置の調節を円滑に行える。即ち、
本参考例の場合、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持すべく、前記1対の押圧部24a、24b同士の間隔を縮めた状態では、前記揺動摩擦板25が、前記一方の支持板部20aの内側面と、前記変位ブラケット12aの片側面との間で強く挟持された状態となる。この状態から前記ステアリングホイール1の上下位置を動かそうとすると、前記揺動摩擦板25の両側面と、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面とが強く擦れ合う事となる。要するに、前記ステアリングホイール1を所望の位置に保持した状態から、このステアリングホイール1を動かそうとした場合、前記揺動摩擦板25の両側面を、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面に対して滑らせつつ、前記揺動摩擦板25を揺動させる必要がある。この為、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を強くできる。この結果、二次衝突時に、前記ステアリングホイール1に加わる前方に向いた衝撃荷重に基づき、前記調節ロッド22aが前記1対の支持板部20a、20bに設けられた上下方向長孔21a、21aに沿って上方に変位する事により、前記ステアリングホイール1が舞い上がるのを防止できて、運転者の身体の保護充実を図れる。
【0027】
又、
本参考例の場合には、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を強くできる構造を、前述した特許文献1に記載の構造の様に、複数枚の摩擦板を重ね合わせる事なく、一枚の揺動摩擦板25のみで実現できる。従って、前記ステアリングホイールの位置調節装置の左右方向寸法、部品点数及び重量が、前記特許文献1に記載の構造の様に増大するのを抑える事ができ、前記ステアリングホイールの位置調節装置の小型・軽量化を図れる。更に、
本参考例の場合には、前記揺動摩擦板25の基端部に、該揺動摩擦板25と一体に設けられた円筒部30を、前記一方の支持板部20aに設けられた円孔31に内嵌する事で、前記揺動摩擦板25を前記一方の支持板部20aに対し、揺動可能に支持している。従って、前記揺動摩擦板25を設ける事に伴い、部品点数が徒に増大するのを防止できる。具体的には、例えば、揺動摩擦板に、該揺動摩擦板と別体に設けられた円柱状部材を溶接等により支持固定する事で、支持板部の円孔に内嵌支持する為の揺動支持軸を設ける等する必要がない。この為、前記揺動摩擦板25を設ける事に伴って、製造コストが徒に増大するのを抑える事ができる。特に
本参考例の様に、前記円筒部30を、前記揺動摩擦板25を構成する金属板にバーリング加工を施す事により形成すれば、前記ステアリングホイールの位置調節装置を、工業的に能率良く生産する事ができる。
【0028】
又、
本参考例の場合、前記ステアリングホイール1の位置調節を可能とした状態で、前記揺動摩擦板25の両側面と、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面との間に隙間を確保し易くできる。即ち、前記ステアリングホイール1の位置調節を可能とすべく、前記調節レバー23を所定方向に揺動させ、1対の押圧部24a、24b同士の間隔を拡げ、該1対の押圧部24a、24bにより前記1対の支持板部20a、20bを抑え付けている力を小さく(解放)すれば、該1対の支持板部20a、20b同士の間隔が弾性的に拡がる。更に、これに伴い、前記1対の支持板部20a、20bにより前記変位ブラケット12aを抑え付けている力が小さくなると(解放されると)、該変位ブラケット12aの幅方向中央部に形成されたスリット26の存在に基づいて、前記変位ブラケット12aの全幅が弾性的に拡がる。そこで、前記調節レバー23の操作に伴う、前記1対の支持板部20a、20bの弾性変形量を前記変位ブラケット12aの弾性変形量よりも大きくすれば、前記調節レバー23を所定方向に揺動させ、前記1対の押圧部24a、24b同士の間隔を拡げた状態で、前記揺動摩擦板25の両側面と、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面との間に隙間を介在させられる。この結果、前記揺動摩擦板25の両側面と、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面とが強く擦れ合う事を防止できて、前記ステアリングホイール1の上下位置の調節を円滑に行わせる事ができる。
【0029】
更に、
本参考例の場合、前記揺動摩擦板25の円筒部30を、前記一方の支持板部20aのうち、該一方の支持板部20aに形成された上下方向長孔21aの中心線αの延長線上で、該上下方向長孔21aよりも上方に設けられた円孔31に
回動可能に外嵌している。この為、前記ステアリングホイール1の上下位置を調節する際に、前記調節ロッド22aと、前記上下方向長孔21a及び前記揺動摩擦板25の先半部に設けられたガイド長孔32との係合部に作用する摩擦力を低減できる。この理由に就いて、
図5を参照しつつ説明する。
【0030】
図5の(A)は、揺動摩擦板25aの円筒部30aを
回動可能に内嵌支持する為の円孔を、上下方向長孔21aの後方(或いは前方)に設けた構造を示している。この
図5の(A)に示した比較例の構造の場合も、調節ロッド22aとの係合部に於ける前記揺動摩擦板25aの先半部に設けられたガイド長孔32aの長さ方向(該ガイド長孔32aの接線方向)と、前記調節ロッド22aと前記円筒部30aとの間の距離L
aを半径とする仮想円弧の接線(前記揺動摩擦板25aの揺動方向)との成す角度θ
aは、前記調節ロッド22aの上下位置に拘わらず、ほぼ一定(好ましくは10度〜35度、より好ましくは20度〜30度)となる様にしている。この様な比較例の構造の場合、前記調節ロッド22aとの係合部に於ける前記上下方向長孔21aの長さ方向(該上下方向長孔21aの接線方向)と、前記調節ロッド22aとの係合部に於ける前記ガイド長孔32aの長さ方向(該ガイド長孔32aの接線方向)との成す角度φ
aは、ステアリングホイール1の上下位置に拘わらず、比較的小さくなる(20度〜30度程度になる)。この為、前記ステアリングホイール1の上下位置の調節時に、前記調節ロッド22aの外周面と、前記上下方向長孔21aの内周縁及び前記ガイド長孔32aの内周縁との係合部(摺接部)にくさび効果が発生し、該係合部に作用する摩擦力が大きくなる。即ち、前記ステアリングホイール1を上方に変位させる事に基づいて、前記調節ロッド22aに加わる力をFとした場合、該調節ロッド22aの外周面と前記上下方向長孔21aの内周縁との係合部に加わる押し付け力(法線力)Fc
1aと、前記調節ロッド22aの外周面と前記ガイド長孔32aの内周縁との係合部に加わる押し付け力Fc
2aとは互いに等しく、次の(1)式で表す事ができる。
【数1】
【0031】
又、前記調節ロッド22aの外周面と、前記上下方向長孔21aの内周縁及び前記ガイド長孔32aの内周縁との係合部の摩擦係数をμとした場合、前記調節ロッド22aの外周面と前記上下方向長孔21aの内周縁との係合部に作用する摩擦力Fs
1aと、前記調節ロッド22aの外周面と前記ガイド長孔32aの内周縁との係合部に作用する摩擦力Fs
2aとに就いても互いに等しくなり、次の(2)式で表される。
【数2】
従って、前記比較例の構造に於いて、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内を上方に変位する事に対する摩擦抵抗(前記摩擦力Fs
1aと、前記摩擦力Fs
2aのうち上下方向長孔21aの長さ方向成分との和)Fs
aは、次の(3)式により算出できる。
【数3】
【0032】
これに対し、
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置の場合には、
図5の(B)に示す様に、前記円孔31を、前記上下方向長孔21aの中心線αの延長線上で、該上下方向長孔21aよりも上方に設けている。この為、前記調節ロッド22aとの係合部に於ける前記上下方向長孔21aの長さ方向(該上下方向長孔21aの接線方向)と、前記調節ロッド22aとの係合部に於ける前記ガイド長孔32の長さ方向(該ガイド長孔32の接線方向)との成す角度φ(=90度−θ)は、前記比較例の構造の様に、揺動摩擦板25の円筒部30aを内嵌支持する円孔を上下方向長孔21aの後方(或いは前方)に設けた場合と比較して、大きくできる。この為、前記ステアリングホイール1の上下位置の調節時に、前記調節ロッド22aの外周面と、前記上下方向長孔21aの内周縁及び前記ガイド長孔32aの内周縁との係合部にくさび効果が発生するのを抑えられる。この結果、前記ステアリングホイール1を上方に変位させる事に基づいて、前記調節ロッド22aに加わる力をFとした場合、該調節ロッド22aの外周面と前記上下方向長孔21aの内周縁との係合部に加わる押し付け力(法線力)Fc
1、及び同じく前記ガイド長孔32の内周縁との係合部に加わる押し付け力Fc
2は、それぞれ次の(4)〜(5)式の様になる。
【数4】
【数5】
【0033】
又、前記調節ロッド22aの外周面と、前記上下方向長孔21aの内周縁及び前記ガイド長孔32aの内周縁との係合部の摩擦係数をμとすると、前記調節ロッド22aの外周面と前記上下方向長孔21aの内周縁との係合部に作用する摩擦力Fs
1、及び、前記調節ロッド22aの外周面と前記ガイド長孔32の内周縁との係合部に作用する摩擦力Fs
2は、それぞれ次の(6)〜(7)式で表される。
【数6】
【数7】
従って、
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置に於いて、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内を上方に変位する事に対する摩擦抵抗Fsは、次の(8)式により算出できる。
【数8】
【0034】
ここで、
本参考例の構造の場合、前記上下方向長孔21aの長さ方向と前記ガイド長孔32の長さ方向との成す角度φは55度〜80度であり、前記比較例の構造では、前記上下方向長孔21aの長さ方向と前記ガイド長孔32aの長さ方向との成す角度φ
aは20度〜30度である。従って、前記(3)式及び前記(8)式から明らかな通り、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内を上方に変位する事に対する
本参考例の構造の摩擦抵抗Fsを、同じく
図5の(A)に示した比較例の構造の摩擦抵抗Fs
aよりも小さく抑えられる(Fs<Fs
a)。即ち、
本参考例の場合に於いて、例えば前記摩擦係数μを0.15とし、前記角度φを65度(θを25度)とすると、前記(8)式から前記摩擦抵抗Fsは、0.1F程度になる。これに対し、前記比較例の場合に、前記角度φ
aを25度とすると、前記(3)式から前記摩擦抵抗Fs
aは、0.7F程度になる。
要するに、
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、前記ステアリングホイール1の上下位置の調節時に、前記調節ロッド22aが上下方向に変位する事に対する摩擦抵抗Fsを、前記比較例の構造の場合よりも小さく抑えられ、前記ステアリングホイール1の上下位置の調節作業を円滑に行える。但し、前記円筒部30を、前記一方の支持板部20aの側面のうち、該一方の支持板部20aに設けられた上下方向長孔21aの中心線αの延長線上で、該上下方向長孔21aよりも下方に設ける事もできる。
【0035】
尚、
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置を実施する場合、前記揺動摩擦板25の両側面に、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面との間の摩擦係数を大きくする為の表面処理を施しても良い。この様な表面処理として、例えば粗面加工(ショットブラスト、ローレット加工等)を施して前記揺動摩擦板25の両側面の表面粗さを大きくしたり、或いは、これら両側面に摩擦剤を被覆する事ができる。この摩擦剤は、これら両側面の摩擦係数を大きくするものであれば、特に限定されず、例えばエポキシ樹脂、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等の高分子材料や、粘着性接着剤、セラミックコーティング等を使用する事ができる。
【0036】
[
参考例の第2例]
図6の(A)は
、本発明の
参考例の第2例を示している。
本参考例の場合、金属板製で略扇形の揺動摩擦板25aの先半部(幅広部)を、支持ブラケット13aを構成する1対の支持板部20a、20bのうちの一方(
図6の左方)の支持板部20aの外側面と、1対の押圧部24a、24b(
図2参照)のうちの一方の押圧部24aの内側面との間に挟持している。
本参考例の場合、前記一方の支持板部20aのうち、該一方の支持板部20aに設けられた上下方向長孔21の中心線α{
図4の(A)参照}の延長線上で、該上下方向長孔21aよりも上方部分に面押し加工を施す事により、前記一方の支持板部20aの内側面に、幅方向外方に凹んだ凹部39を設けている。そして、前記凹部39の中央部に円孔31を設けている。尚、
図6の(B)に示す様に、前記円孔31を、前記一方の支持板部20aのうちで、下半部よりも幅方向外方にオフセットさせた上半部に形成する事もできる。又、前記揺動摩擦板25aの基半部を先半部よりも幅方向外方にオフセットさせる事により、該揺動摩擦板25aの基半部にオフセット部40を設けている。そして、前記オフセット部40の中央部にバーリング加工を施す事により、当該部分に、幅方向内方に突出する円筒部30bを設け、該円筒部30bに前記円孔31に
回動可能に内嵌している。前記円筒部30bのうち、前記揺動摩擦板25aの他側面{
図6の(A)の右側面}から突出した部分を径方向外方に塑性変形させる事により、当該部分に、かしめ部33を形成している。これにより、前記円筒部30bの先端部に設けられたかしめ部33が、ステアリングホイール1(
図19参照)の上下位置にかかわらず、ステアリングコラム6a(
図1、2参照)の外周面と干渉しない様にしている。
その他の部分の構成及び作用は、
参考例の第1例と同様である。
【0037】
[
参考例の第3例]
図7〜10は
、本発明の
参考例の第3例を示している。
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置は、1対の揺動摩擦板25b、25cを、先半部同士を互いに重ね合わせた状態で、該1対の揺動摩擦板25b、25cの先半部を、支持ブラケット13aを構成する1対の支持板部20a、20bのうちの一方(
図7の左方)の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12a(
図2参照)の片側面との間に挟持している。前記1対の揺動摩擦板25b、25cのうちの一方(幅方向外側、
図7の左方)の揺動摩擦板25bは、基端部に設けられた円筒部30を、前記一方の支持板部20aのうち、該一方の支持板部20aに設けた上下方向長孔21aの中心線α{
図10の(A)参照}の延長線上で、該上下方向長孔21aよりも上方に設けられた(上側の)円孔31aに
回動可能に内嵌している。これに対し、前記1対の揺動摩擦板25b、25cのうちの他方(幅方向内側、
図7の右方)の揺動摩擦板25cは、基端部に設けた円筒部30cを、前記一方の支持板部20aのうち、前記中心線αの延長線上で、前記一方の支持板部20aに設けられた上下方向長孔21aよりも下方に設けられた(下側の)円孔31bに
回動可能に内嵌している。この為に、前記一方の揺動摩擦板25bの片側面からの円筒部30の突出量よりも、前記他方の揺動摩擦板25cの片側面からの円筒部30cの突出量を、前記一方の揺動摩擦板25bの厚さ分以上大きくしている。
【0038】
又、前記1対の揺動摩擦板25b、25cは、該1対の揺動摩擦板25b、25cの先半部に設けられたガイド長孔32a、32bに調節ロッド22a(
図2参照)を挿通している。このうち、前記一方の揺動摩擦板25bに形成された一方のガイド長孔32aは、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の中央部に位置する状態{
図10の(B)に示す状態}で、前記中心線αよりも前方で、且つ、前記上側の円孔31aよりも上方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの上端部に位置する場合に、該調節ロッド22aと前記一方のガイド長孔32aの後端部とが係合し、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの下端部に位置する場合に、前記調節ロッド22aと前記一方のガイド長孔32aの前端部とが係合する様に、前記一方の揺動摩擦板25bの円筒部30を前記上側の円孔31aに、
回動可能に内嵌している。これに対し、前記1対の揺動摩擦板25b、25cのうちの他方の揺動摩擦板25cに形成された他方のガイド長孔32bは、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の中央部に位置する状態{
図10の(B)に示す状態}で、前記中心線αよりも前方で、且つ、前記下側の円孔31bよりも下方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの上端部に位置する場合に、前記調節ロッド22aと前記他方のガイド長孔32bの前端部とが係合し、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの下端部に位置する場合に、前記調節ロッド22aと前記他方のガイド長孔32bの後端部とが係合する様に、前記他方の揺動摩擦板25cの円筒部30cを前記下側の円孔31bに、
回動可能に外嵌している。
【0039】
上述の様な
本参考例の場合、ステアリングホイール1(
図19参照)の上下位置の調節に伴って、前記一方の揺動摩擦板25bが前記上側の円孔31aに内嵌した円筒部30bを中心に揺動し、前記他方の揺動摩擦板25cが前記下側の円孔31bに内嵌した円筒部30cを中心に揺動する。即ち、前記ステアリングホイール1を調節可能な上端位置まで移動させた状態では、前記調節ロッド22aは、
図10の(A)に示す様に、前記上下方向長孔21aの上端部、並びに前記一方のガイド長孔32aの後端部及び前記他方のガイド長孔32bの前端部と係合している。この状態から前記ステアリングホイール1を下方に変位させると、
図10の(A)→(B)→(C)に示す様に、前記一方の揺動摩擦板25bが前記上側の円孔31aに内嵌した円筒部30bを中心として
図10の反時計方向に揺動し、前記他方の揺動摩擦板25cが前記下側の円孔31bに内嵌した円筒部30cを中心として
図10の反時計方向に揺動する。そして、前記ステアリングホイール1を調節可能な下端位置まで移動させた状態では、前記調節ロッド22aは、
図10の(C)に示す様に、前記上下方向長孔21aの下端部、並びに前記一方のガイド長孔32aの前端部及び前記他方のガイド長孔32bの後端部と係合している。これに対し、前記ステアリングホイール1を、下端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、上述した下方に変位させる場合とは逆に、
図10の(C)→(B)→(A)の順に、前記1対の揺動摩擦板25b、25cが揺動する。
【0040】
この様な
本参考例によれば、前記一方の支持板部20aと前記変位ブラケット12aの片側面との間に、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持するのに寄与する摺動摩擦部の数を、上述した
参考例の第1〜2例の構造と比較して更に増やす事ができる。具体的には、前記摺動摩擦部が、これら
参考例の第1〜2例の構造では、2箇所であるのに対し、
本参考例の場合には、3箇所とする事ができる。この結果、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力をより大きくする事ができる。
その他の部分の構成及び作用は、前記
参考例の第1〜2例と同様である。
【0041】
[実施の形態の第
1例]
図11〜12は
、本発明の実施の形態の第
1例を示している。本例のステアリングホイールの位置調節装置は、上述した
参考例の第3例と同様に、1対の揺動摩擦板25b、25dを、先半部同士を互いに重ね合わせた状態で、該1対の揺動摩擦板25b、25dの先半部を、支持ブラケット13aを構成する1対の支持板部20a、20bのうちの一方(
図11の左方)の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12a(
図2参照)の片側面との間に挟持している。本例の場合、前記1対の揺動摩擦板25b、25dのうちの一方(
図11の左方)の揺動摩擦板25bは、基端部に設けられた円筒部30を、前記一方の支持板部20aのうち、該一方の支持板部20aに設けた上下方向長孔21aの中心線α{
図10の(A)参照}の延長線上で、該上下方向長孔21aよりも上方に設けられた(上側の)円孔31aに
回動可能に内嵌している。そして、前記円筒部30のうち、前記一方の支持板部20aの外側面から突出した部分を径方向外方に塑性変形させる事により、当該部分にかしめ部33を形成している。
【0042】
又、前記一方の支持板部20aのうち、前記中心線αの延長線上で、前記上下方向長孔21aよりも下方部分に円孔31cを設けている。又、本例の場合には、前記1対の揺動摩擦板25b、25dのうちの他方の(幅方向内側で、
図11の右方の)揺動摩擦板25dの基端部に面押し加工を施す事により、該基端部に、幅方向外方に張り出した摩擦板側凸部34を設けている。この摩擦板側凸部34の張り出し量hは、前記一方の揺動摩擦板25bの板厚と同じか僅かに小さい程度としている。尚、図示の例の場合、前記摩擦板側凸部34を幅方向から見た形状を円形としているが、多角形等の任意の形状とする事ができる。この様な摩擦板側凸部34の中央部にバーリング加工を施す事により、当該部分に、幅方向外方に突出する円筒部30dを設けている。そして、前記他方の揺動摩擦板25dの円筒部30dを前記円孔31cに、
回動可能に内嵌している。そして、前記円筒部30dのうち、前記一方の支持板部20aの外側面から突出した部分を径方向外方に塑性変形させる事により、当該部分にかしめ部33を形成している。
【0043】
上述の様な本例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、前記一方の支持板部20aの内側面と、前記変位ブラケット12aの片側面との間に、1対の揺動摩擦板25b、25dを挟持する場合でも、該1対の揺動摩擦板25b、25dのうち、幅方向
内側の(他方の)揺動摩擦板25dの円筒部30dの強度を十分に確保する事ができる。即ち、揺動摩擦板の円筒部をバーリング加工により形成する場合、該円筒部の突出量を大きくすると、該円筒部の肉厚が小さくなり、該円筒部の強度が低下する可能性がある。そして、前記円筒部の強度が十分確保できないと、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、該円筒部が変形する可能性がある。
本参考例の場合には、前記円筒部30dを、前記揺動摩擦板25dに幅方向外方に張り出した状態で設けられた摩擦板側凸部34の中央部にバーリング加工を施す事により設けている。この為、前記他方の揺動摩擦板25dの円筒部30dの突出量(幅方向に関する寸法)を、前記一方の揺動摩擦板25bの円筒部30bの突出量とほぼ同じにする事ができる。従って、前記他方の揺動摩擦板25dの円筒部30dの強度を十分に確保する事ができ、前記二次衝突時に加わる衝撃荷重によって該円筒部30dが変形するのを防止できる。
その他の部分の構成及び作用は、前記
参考例の第3例と同様である。
【0044】
[実施の形態の第
2例]
図13〜14は
、本発明の実施の形態の第
2例を示している。本例のステアリングホイールの位置調節装置は、1対の揺動摩擦板25b、25eを、先半部同士を互いに重ね合わせた状態で、該1対の揺動摩擦板25b、25eの先半部を、支持ブラケット13aを構成する1対の支持板部20a、20bのうちの一方(
図13の左方)の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12a(
図2参照)の片側面との間に挟持している。前記一方の支持板部20aのうち、該一方の支持板部20aに設けられた上下方向長孔21aの中心線α{
図10の(A)参照}の延長線上で、該上下方向長孔21aよりも上方部分に円孔31aを設けている。そして、前記円孔31aに、前記1対の揺動摩擦板25b、25eのうちの一方の揺動摩擦板25bの基端部に、該一方の揺動摩擦板25bと一体に設けられた円筒部30を、
回動可能に内嵌している。
【0045】
又、前記一方の支持板部20aのうち、前記中心線αの延長線上で、前記上下方向長孔21aよりも下方部分に面押し加工を施す事により、当該部分に、凸部35を設け、該凸部35の中央部に円孔31dを設けている。そして、前記1対の揺動摩擦板25b、25eのうちの他方の(幅方向内側の)揺動摩擦板25eの基端部に、該揺動摩擦板25eと一体に設けられた円筒部30dを前記円孔31dに、
回動可能に内嵌している。
【0046】
この様な本例によれば、前記円筒部30dの突出量が大きくなるのを防止する事ができて、該円筒部30dの強度を十分確保する事ができる。この結果、二次衝突時に加わる衝撃荷重にかかわらず、該円筒部30dが変形するのを防止する事ができる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した
参考例の第3例及び実施の形態の第
1例と同様である。
【0047】
[
参考例の第
4例]
図15は
、本発明の
参考例の第
4例を示している。
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置は、1対の揺動摩擦板25a、25fのうちの一方(
図15の左方)の揺動摩擦板25aの先半部を、支持ブラケット13aを構成する1対の支持板部20a、20bのうちの一方の支持板部20aの外側面と、1対の押圧部24a、24b(
図2参照)のうちの一方の押圧部24aの内側面との間に挟持している。そして、前記一方の揺動摩擦板25aは、該一方の揺動摩擦板25aの基端部に、該一方の揺動摩擦板25aと一体に設けられた円筒部30bを、前記一方の支持板部20aのうち、該一方の支持板部20aに設けられた上下方向長孔21aの中心軸α{
図10の(A)参照}の延長線上で、該上下方向長孔21aよりも上方に設けられた円孔31に
回動可能に内嵌している。これに対し、前記1対の揺動摩擦板25a、25fのうちの他方の揺動摩擦板25fの先半部を、前記一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12a(
図2参照)の片側面との間に挟持している。そして、前記他方の揺動摩擦板25fは、該他方の揺動摩擦板25fの基端部に、該他方の揺動摩擦板25fと一体に設けられた円筒部30fを、前記一方の支持板部20aのうち、前記中心軸αの延長線上で、前記上下方向長孔21aよりも下方に設けられた円孔31eに
回動可能に外嵌している。
その他の部分の構成及び作用は、前述した
参考例の第1〜3例と同様である。
【0048】
[
参考例の第
5例]
図16〜18は
、本発明の
参考例の第
5例を示している。
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置は、1対の揺動摩擦板25b、25cを、先半部同士を互いに重ね合わせると共に、該1対の揺動摩擦板25b、25cのうち、幅方向内側の揺動摩擦板25cと、ステアリングホイール1(
図19参照)の前後位置調節に伴い揺動変位するテレスコ用揺動摩擦板36とを互いに重ね合わせている。この状態で、前記1対の揺動摩擦板25b、25cの先半部及び前記テレスコ用揺動摩擦板36を、支持ブラケット13aを構成する1対の支持板部20a、20bのうちの一方(
図17の左方)の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面(
図17の左側面)との間に挟持している。そして、前記1対の揺動摩擦板25b、25cの基端部に、該1対の揺動摩擦板25b、25cと一体に設けられた円筒部30、30cを、前記一方の支持板部20aに設けられた円孔31a、31bに、それぞれ
回動可能に外嵌している。即ち、ステアリングホイール1(
図19参照)を上端位置から下端位置まで下方に変位させる場合には、前述した
図10の(A)→(B)→(C)の順に、同じく下端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、前記
図10の(C)→(B)→(A)の順に、それぞれ前記1対の揺動摩擦板25b、25cが揺動する。
【0049】
又、前記テレスコ用揺動摩擦板36は、鋼板、ステンレス鋼板等の、必要とする強度及び剛性を確保でき、且つ、相手面である、前記変位ブラケット12aの片側面及び前記幅方向内側の揺動摩擦板25cの他側面との係合部の摩擦係数を大きくできる金属板により、略扇形に形成している。前記テレスコ用揺動摩擦板36の基端部(扇の要に相当する部分)を揺動可能に支持する為に、前記ステアリングホイール1の前後位置調節の際に、調節ロッド22aに対し相対変位する部分である、前記変位ブラケット12aの片側面(
図17の左側面)にテレスコ用揺動支持軸37を、前記調節ロッド22aと平行に設けている。前記テレスコ用揺動支持軸37は、前記変位ブラケット12aの片側面のうち、該変位ブラケット12aに設けた前後方向長孔19aの前後方向に関する中央位置を通り、ステアリングコラム6aの軸方向(この前後方向長孔19aの長さ方向)に直交する方向の仮想直線β上で、この前後方向長孔19aよりも上方に設置している。但し、前記テレスコ用揺動支持軸37は、前記変位ブラケット12aの片側面のうち、前記仮想直線β上であれば、前記前後方向長孔19aよりも下方に設置する事もできる。何れにしても、前記テレスコ用揺動支持軸37を前記仮想直線β上に設置する事により、該テレスコ用揺動支持軸37の中心軸と、前記ステアリングホイール1を前端位置とした場合に於ける前記調節ロッド22aの中心軸との間の距離L
Fと、前記ステアリングホイール1を後端位置とした場合に於けるこの調節ロッド22aの中心軸との間の距離L
Bとを、互いに同じにしている(L
F=L
B)。
【0050】
前記テレスコ用揺動摩擦板36は、該テレスコ用揺動摩擦板36の基端部である上端寄り部分に設けられた円孔31bを、前記テレスコ用揺動支持軸37に、該テレスコ用揺動支持軸37を中心とする
回動を可能に外嵌すると共に、前記テレスコ用揺動摩擦板36の先半部(下半部)に設けられたテレスコ用ガイド長孔38に前記調節ロッド22aを挿通している。前記テレスコ用ガイド長孔38は、前端部から後端部まで、少しずつでも、前記テレスコ用揺動支持軸37との間の距離が長くなる方向に、滑らかな曲線となる様に形成している。具体的には、前記テレスコ用ガイド長孔38を、前記調節ロッド22aが前記前後方向長孔19a内の中央部に位置する状態{
図18の(B)に示す状態}で、前記仮想直線βよりも前方で、且つ、前記テレスコ用揺動支持軸37よりも上方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、前記テレスコ用ガイド長孔38のうちで前記調節ロッド22aが係合している部分の接線と、前記テレスコ用揺動支持軸37の中心軸を中心とし、前記調節ロッド22aと前記テレスコ用揺動支持軸37との間の距離を半径とする仮想円弧の接線(該テレスコ用揺動摩擦板36の揺動方向)との成す角度ψが、前記調節ロッド22aの前後方向位置に拘わらず、一定となる様にしている。尚、この様な角度ψは、10度〜35度とする事が好ましい。そして、前記ステアリングホイール1の前後方向位置を調節可能な範囲の中央位置とした時に、前記調節ロッド22aと前記テレスコ用ガイド長孔38の前端部とが係合し、前記ステアリングホイール1の前後方向位置を調節可能な範囲の後端位置及び前端位置とした時に、前記調節ロッド22aと前記テレスコ用ガイド長孔38の後端部とが係合する様にしている。即ち、
本参考例の場合、前記ステアリングホイール1の前後方向の位置調節に伴い、前記調節ロッド22aが前記テレスコ用ガイド長孔38に沿って変位する過程で、前記調節ロッド22aと前記テレスコ用揺動支持軸37との間の距離が変化する方向(伸長する方向か短縮する方向か)が、前記ステアリングホイール1の位置調節可能な範囲の前後方向中央位置を境に互いに反対方向となる。
【0051】
上述の様な
本参考例に於いて、前記ステアリングホイール1の前後位置を調節すべく、該ステアリングホイール1の前後方向に変位させた場合の、前記テレスコ用揺動摩擦板36の動きに就いて次に説明する。
図18の(A)は、前記ステアリングホイール1を調節可能な前端位置まで移動させた状態を示している。この状態では、前記調節ロッド22aと、前記前後方向長孔19aの後端部及び前記テレスコ用ガイド長孔38の後端部とが係合している。従って、この状態から前記ステアリングホイール1を後方に変位させる事により、前記調節ロッド22aを前記前後方向長孔19a内で前方に変位させると、この調節ロッド22a及び前記テレスコ用揺動支持軸37との中心軸同士の間の距離が短くなる為、
図18の(A)→(B)に示す様に、前記テレスコ用揺動摩擦板36が前記テレスコ用揺動支持軸37を中心として、
図18の反時計方向に揺動する。
図18の(B)に示す中立位置状態では、前記調節ロッド22は、前記前後方向長孔19aの前後方向中央部及び前記テレスコ用ガイド長孔38の前端部と係合している。この為、前記
図18の(B)に示した状態から、更に前記ステアリングホイール1を後方に変位させて後端位置まで移動させると、前記調節ロッド22a及び前記テレスコ用揺動支持軸37との中心軸同士の間の距離が長くなり、
図18の(B)→(C)に示す様に、前記テレスコ用揺動摩擦板36が前記テレスコ用揺動支持軸37を中心として、
図18の時計方向に揺動する。これに対し、前記ステアリングホイール1を、後端位置から前端位置まで前方に変位させる場合には、上述した前方に変位させる場合とは逆に、
図18の(C)→(B)→(A)の順に、前記テレスコ用揺動摩擦板36が揺動する。
【0052】
上述の様な
本参考例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、前記ステアリングホイール1の上下方向位置を保持する力に加え、前後方向に就いても、調節後の位置に保持する力を大きくできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した
参考例の第3例と同様であるから、重複する説明は省略する。