特許第6561701号(P6561701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561701
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】車両用整流装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20190808BHJP
   B62D 35/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B62D37/02 B
   B62D35/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-176483(P2015-176483)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-52338(P2017-52338A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川上 達基
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−69396(JP,A)
【文献】 特開2009−107617(JP,A)
【文献】 特開昭62−131846(JP,A)
【文献】 実開昭56−30642(JP,U)
【文献】 特開2010−132208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
B62D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の前方に配置されて車体に回動可能に軸支され、車体下方側に垂下した垂下位置と車体側に収納した収納位置との間で回動可能な整流部材と、
前記整流部材に形成されると共に入口から出口に向けて断面積が漸減し、前輪整流部材が前記収納位置に回動したとき、前記入口が車体前方へ向く増速路と、
前記整流部材を前記垂下位置と前記収納位置との間を回動させる駆動部と、
前記前輪のブレーキ部の温度を検出する温度センサと、
前記整流部材の下流でフロントサスペンションアームの上面に設けられ、前記整流部材によって導かれ前記車体の後方へ向かう気流を前記前輪のブレーキ部に向けて偏向させるためのガイド部材と、
を備え、
前記温度センサの検出値に応じて前記整流部材を前記収納位置へ回動させ、前記増速路を通って増速した気流を前記ガイド部材で前記前輪の前記ブレーキ部に向けて偏向させるようにしたことを特徴とする車両用整流装置。
【請求項2】
前記温度センサの検出値が閾値以上に上昇したとき、前記駆動部によって前記整流部材を前記垂下位置から車体後方へ回動させ、前記増速路を通って増速した気流を前記ガイド部材で前記前輪の前記ブレーキ部に向けて偏向させ、前記温度センサの検出値が閾値未満に下降したとき、前記駆動部によって前記整流部材を再び前記垂下位置へ回動させるための制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用整流装置。
【請求項3】
前記整流部材は、
車幅方向で前記前輪の少なくとも車幅方向内側部位及び前記フロントサスペンションアームの少なくとも車幅方向外側部位に重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用整流装置。
【請求項4】
前記温度センサは、
ホイールハウスの内部に取り付けられた非接触式温度センサであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用整流装置。
【請求項5】
前記フロントサスペンションアームはロアアームであり、
前記ガイド部材は前記ロアアームの上面に設けられることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用整流装置。
【請求項6】
前記ガイド部材によって、前記増速路を通った増速気流を前記前輪に設けられたナックルに向けて偏向させることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用整流装置。
【請求項7】
前記整流部材は、
重ねて配置された2枚の整流板で構成され、
前記2枚の整流板の少なくとも一方を曲げ加工して前記2枚の整流板の間に前記増速路を形成してなることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両用整流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気抵抗の低減とブレーキ部の冷却を可能にした車両用整流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費低減要求が高まってきており、これを可能とする一つのファクタとして空気抵抗の低減による燃費低減策が注目されている。前輪の前方に設けられるエアダムは、空気抵抗の低減手段として有効であることが知られている。しかし、エアダムを設けることで、前輪に設けられるブレーキへの空気の流れが悪くなり、ブレーキの冷却性能が低下することが課題となっている。
ブレーキ温度が上昇すると、フェードやベーパーロック現象が発生するおそれがある。
【0003】
特許文献1には、空気抵抗の低減手段として、前輪の前方に、車体内の格納位置とこの格納位置から車体の下方に露呈した整流位置との間で進退可能な可動式整流部材を設ける構成が開示されている。
特許文献2には、車両走行時に車両に当たる空気の流れを整流するためのエアバランス部材を空気整流作動位置と空気整流非作動位置とに移動可能にした構成が開示されている。
特許文献3には、前輪の前方に、整流機能発揮状態となる位置と、非整流機能発揮状態となる位置との間で移動可能な可動スパッツを備える構成が開示されている。特許文献3には、上記可動スパッツを備えることで、車両の高速走行時に前輪に当たる気流を排除して前輪前方の圧力増加を抑制し、車両に対する空気抵抗と揚力を低減できると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−216937号公報
【特許文献2】特開2007−022149号公報
【特許文献3】特開2009−143396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に開示された空気抵抗の低減手段は、整流部材が非作動位置にあるときはブレーキの温度上昇は起こりにくいと考えられる。しかし、整流部材が作動位置にあるときは前輪に設けられるブレーキへの空気の流れが悪くなり、ブレーキの温度上昇が起るおそれがあり、この解決手段は、特許文献1〜3のいずれにも記載されていない。
【0006】
そこで、これら技術的課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、車両の空気抵抗を低減するとともに、前輪に設けられたブレーキ部の温度上昇を抑制してフェードやベーパーロック現象の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両用整流装置は、前輪の前方に配置されて車体に回動可能に軸支され、車体下方側に垂下した垂下位置と車体側に収納した収納位置との間で回動可能な整流部材と、前記整流部材に形成されると共に入口から出口に向けて断面積が漸減し、前輪整流部材が前記収納位置に回動したとき、前記入口が車体前方へ向く増速路と、前記整流部材を前記垂下位置と前記収納位置との間を回動させる駆動部と、前記前輪のブレーキ部の温度を検出する温度センサと、前記整流部材の下流でフロントサスペンションアームの上面に設けられ、前記整流部材によって導かれ前記車体の後方へ向かう気流を前記前輪のブレーキ部に向けて偏向させるためのガイド部材と、を備え、前記温度センサの検出値に応じて前記整流部材を車体後方へ回動させ、前記増速路を通って増速した気流を前記ガイド部材で前記前輪の前記ブレーキ部に向けて偏向させるようにする。
上記構成(1)によれば、上記整流部材によって前輪に対する空気抵抗を低減できると共に、前輪のブレーキ部が昇温したとき、上記増速気流をブレーキ部に吹き付けることで、ブレーキ部の昇温を抑制でき、フェードやベーパーロック現象の発生を未然に防止できる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、前記構成(1)において、前記温度センサの検出値が閾値以上に上昇したとき、前記駆動部によって前記整流部材を前記垂下位置から車体後方へ回動させ、前記増速路を通って増速した気流を前記ガイド部材で前記前輪の前記ブレーキ部に向けて偏向させ、前記温度センサの検出値が閾値未満に下降したとき、前記駆動部によって前記整流部材を再び前記垂下位置へ回動させるための制御部をさらに備えている。
上記構成(2)によれば、運転者の監視や操作等を必要とせず、ブレーキ部の温度が閾値に達したら、上記制御部によって自動的にブレーキ部を冷却できる。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、前記構成(2)又は(3)において、前記整流部材は、
車幅方向で前記前輪の少なくとも車幅方向内側部位及び前記フロントサスペンションアームの少なくとも車幅方向外側部位に重なる位置に配置される。
上記構成(3)によれば、上記整流部材を前輪の少なくとも車幅方向内側部位に重なる位置に配置することで、前輪の空気抵抗を確実に低減できると共に、車体に対する揚力の発生を抑制できる。
また、上記整流部材を上記フロントサスペンションアームの少なくとも車幅方向外側部位に重なる位置に配置することで、整流部材に形成される増速路から出た増速気流をフロントサスペンションアーム上のガイド部材に確実に当てることができ、これによって、偏向流をブレーキ部に確実に当てることができる。
【0010】
(4)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(3)の何れかにおいて、前記温度センサは、ホイールハウスの内部に取り付けられた非接触式温度センサである。
上記構成(4)によれば、ブレーキ部の温度を検出する温度センサとして非接触式温度センサとすることで、ホイールハウスの任意の位置に設置でき、設置場所の自由度を広げることができる。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(4)の何れかにおいて、前記フロントサスペンションアームはロアアームであり、
前記ガイド部材は前記ロアアームの上面に設けられる。
上記構成(5)によれば、上記ガイド部材をロアアームの上面に設けることで、ガイド部材を増速路で発生した増速気流をブレーキ部の中心に当てるのに適した位置に配置できる。
【0012】
(6)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(5)の何れかにおいて、前記ガイド部材によって、前記増速路を通った増速気流を前記前輪に設けられたナックルに向けて偏向させるようにする。
上記構成(6)によれば、上記ナックルは前輪の中心に位置するため、増速気流をナックルに向けて偏向させることで、増速気流をブレーキ部の中心に当てることができ、これによって、ブレーキ部の冷却効果を向上できる。
【0013】
(7)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(6)の何れかにおいて、前記整流部材は、重ねて配置された2枚の整流板で構成され、前記2枚の整流板の少なくとも一方を曲げ加工して前記2枚の整流板の間に前記増速路を形成してなる。
上記構成(7)によれば、上記整流部材を簡易かつ低コストで製造できると共に、曲げ加工の仕方によって増速路の大きさ及び形状を自由に選択できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、車両の空気抵抗を低減するとともに、前輪に設けられたブレーキ部の温度上昇を抑制してフェードやベーパーロック現象の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る車両用整流装置の正面図である。
図2】一実施形態に係る車両用整流装置の側面図である。
図3】一実施形態に係る車両用整流装置の平面図である。
図4】一実施形態に係る整流部材の斜視図である。
図5】一実施形態に係る整流部材の断面図である。
図6】一実施形態に係る温度センサの取付け位置を示す車体の側面図である。
図7】一実施形態に係る整流部材の挙動を示す説明図であり、(A)は垂下位置にある状態を示し、(B)は車体後方へ回動した状態を示す。
図8】一実施形態に係るガイド部材の平面図である。
図9】一実施形態に係るガイド部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0017】
本発明の少なくとも一実施形態に係る車両用整流装置50は、図1図3に示すように、前輪12の前方に配置されて車体10に回動可能に軸支された整流部材52と、整流部材52を回動するためのアクチュエータ(駆動部)54とを備えている。整流部材52は、アクチュエータ54によって車体下方へ垂下した垂下位置と車体側に収納した収納位置との間で回動される。アクチュエータ54は、例えば、エアシリンダ、電動シリンダ等を用いることができる。車体10は左右対称な構成であり、図1図3は右側部分を示している。
整流部材52は、図4に示すように、入口開口70aから出口開口70bに向けて断面積が漸減する増速路70が形成されている。
また、整流装置50は、前輪12のブレーキ部14の温度を検出する温度センサ56(図6参照)と、整流部材52の下流でフロントサスペンションアーム16の上面に設けられ、増速路70を通った増速気流Bを前輪12のブレーキ部14に向けて偏向させるガイド部材58(図8及び図9参照)とを備えている。
【0018】
図示した実施形態では、整流部材52は全体として正面視で略長方形をなし、例えば樹脂製である。また、整流部材52の上下方向高さは、図1に示すように、垂下位置で、車体前方視でフロントサスペンションアーム(例えばロアアーム)16に重なる高さを有する。これによって、前輪12の空気抵抗低減効果を確保できる。
【0019】
かかる構成において、整流部材52は、図7(A)に示す垂下位置(垂直方向に垂れ下がった位置)にあるとき、前輪12に当たる気流を排除して前輪前方の圧力増加を抑制し、車両に対する空気抵抗と揚力を低減できる。
また、温度センサ56の検出値に応じて、即ち、温度センサ56の検出値が上昇すると、例えば、運転者はアクチュエータ54を稼動させ、整流部材52を車体後方へ回動させる。整流部材52を車体後方へ回動させ、図7(B)に示す収納位置にあるとき、増速路70の入口開口70aが車体前方へ向くので、車体前方から車体後方へ流れる走行気流Aは入口開口70aから増速路70に流入し、増速路70で増速され、出口開口70bから流出する。増速気流Bはガイド部材58に向かい、ガイド部材58によってブレーキ部14に向けて偏向され、ブレーキ部14を冷却する。ガイド部材58は増速気流Bが当たる位置に設置される。
【0020】
例示的な実施形態では、整流部材52は、図4に示すように、2枚の整流板52a及び52bを有する。整流板52a及び52bは重ねて配置され、整流板52a及び52bのうち少なくとも一方の整流板が曲げ加工され、これら整流板間に増速路70を形成している。
図示した実施形態では、図4及び図5に示すように、整流部材52は取付け板62を有する。取付け板62はヒンジ部64を介して回動可能に整流部材52aに取り付けられ、取付け板62が車体10の例えばバンパ下端18に取り付けられる。ヒンジ部64は車幅方向に沿って配置される。
整流部材52は、アクチュエータ54によって、図7(A)に示す垂下位置から、図7(B)に示すように、車体後方へ回動しバンパ下端18に沿う方向までの範囲で回動可能になっている。
【0021】
例示的な実施形態では、図5に示すように、制御部60を備えている。制御部60は、温度センサ56の検出値が閾値に達したとき、アクチュエータ54によって整流部材52を車体後方へ回動させる。整流部材52を車体後方へ回動させることで、増速路70の入口開口70aが車体前方へ向けられるため、図7(B)に示すように、車両の走行によって車体後方へ流れる走行気流Aが入口開口70aから増速路70に流入する。増速路70を通って増速した気流Bはガイド部材58で前輪12のブレーキ部14に向けて偏向される。
なお、増速路70から出た増速気流Bがガイド部材58に当たって偏向されるように、整流部材52の回動角度が制御部60によって調整される。
【0022】
例示的な実施形態では、図6に示すように、温度センサ56はホイールハウス20の内部に取り付けられた非接触式温度センサ(例えば、赤外線放射温度計)である。この非接触式温度センサ56によってブレーキロータなどのブレーキ部14の温度をモニタできる。
非接触式温度センサ56の検出値が閾値以上に上昇すると、運転者の操作によって、又は制御部60によって自動的に整流部材52を車体後方へ回動させ、走行気流Aを増速路70に流入させ、増速路70で増速した気流Bをガイド部材58で偏向してブレーキ部14に当て、ブレーキ部14を冷却する。そして、非接触式温度センサ56の検出値が閾値未満に下降し、ブレーキ部14の冷却が終了すると、運転者の操作によって、又は制御部60によって自動的に整流部材52を垂下位置に再び回動する。
【0023】
例示的な実施形態では、図1図3に示すように、整流部材52は、車幅方向で前輪12の中心線Cより少なくとも車幅方向内側部位及び車体前方から視た正面視でフロントサスペンションアーム16に重なる位置に配置される。
例示的な実施形態では、フロントサスペンションアーム16はロアアームであり、ガイド部材58をロアアーム16の上面に取り付ける。
さらに、例示的な実施形態では、ガイド部材58は、増速路70を通って増速した気流Bを前輪12に設けられたナックル22に向けて偏向させるように構成される。
【0024】
図示した実施形態では、図1に示すように、整流部材52は車幅方向で前輪12の中心線Cから、前輪12と車幅方向中央に位置するラジエータ24との間に形成される内側空間Dに重なる位置に配置される。
また、図2及び図3に示すように、車体10に車体前後方向に設けられるシャシー26の下方で、かつ前輪12の中央部内側にロアアーム16が設けられている。ロアアーム16と前輪12のハブとを連結するナックル22とが設けられ、ロアアーム16はボールジョイント28を介してナックル22に連結されている。また、車体10の両側に設けられた前輪12間に接続されるスタビライザ30が設けられ、前輪12の車体後方側にクロスメンバ32が設けられている。
ブレーキ部14はブレーキディスク14aとブレーキディスク14aの両側に設けられた制動パッド14bとを有する。
【0025】
図示した実施形態では、図3に示すように、増速路70の出口開口70bは車幅方向で内側空間Dと一致するように配置されている。他方、整流部材52は前輪12の車幅方向内側部位(例えば中心線Cから車幅方向内側部分)に重なる位置に配置する必要がある。従って、増速路70は車幅方向で整流部材52に左右対称に形成される必要はなく、上記ニーズに応じて左右非対称に形成される。
【0026】
図示した実施形態では、図8及び図9に示すように、ガイド部材58はロアアーム16の上面であって、車幅方向でショックアブソーバ34の取付け部34aとボールジョイント28との間の領域に取り付けられる。また、ガイド部材58の高さは上方に設けられるドライブシャフト36まで延設される高さとする。
また、ガイド部材58は円弧状に形成されたガイドベーンで構成され、該ガイドベーンの円弧の下流側方向はボールジョイント28に連結されたナックル22に向けられる。
【0027】
幾つかの実施形態によれば、整流部材52によって前輪12に対する空気抵抗を低減できると共に、ブレーキ部14が昇温しブレーキ部14の温度が閾値以上に上昇すると、運転者の操作によって、あるいは制御部60による自動操作で増速気流Bをブレーキ部14に当てることで、ブレーキ部14を冷却できる。そのため、フェードやベーパーロック現象を未然に防止できる。
例示的な実施形態によれば、制御部60を設けることで、ブレーキ部14の冷却を自動的に行うことができる。
例示的な実施形態によれば、整流部材52を前輪12の少なくとも車幅方向内側部位に重ねる位置に配置することで、前輪12に対する空気抵抗を確実に低減できる。また、整流部材52を前輪12の車幅方向内側空間Dに重なるように配置することで、車体10に対する揚力の発生を抑制できる。また、整流部材52に形成される増速路70から出た増速気流Bをフロントサスペンションアーム16上に設けられたガイド部材58に確実に当てることができ、これによって、ガイド部材58で偏向した偏向流をブレーキ部14に確実に当てることができる。
【0028】
例示的な実施形態によれば、ブレーキ部14の温度を検出するためにホイールハウス20の内部に非接触式温度センサ56を設けたことで、温度センサの設置場所の自由度を広げることができる。
例示的な実施形態によれば、ガイド部材58をロアアーム16の上面に設けることで、増速路70で発生した増速気流Bをブレーキ部14の中心に当てることができ、これによって、ブレーキ部14の冷却効果を向上できる。
例示的な実施形態によれば、ガイド部材58によって増速気流Bをナックル22に向けて偏向させることで、偏向した増速気流Bをブレーキ部14の中心に確実に当てることができる。
【0029】
例示的な実施形態によれば、整流部材52を2枚の整流板52a及び52bで構成すると共に、整流板52a及び52bの少なくとも一方を曲げ加工して増速路70を形成することで、整流部材52を簡易かつ低コストで製造できると共に、曲げ加工の仕方によって増速路70の大きさ及び形状を自由に選択できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、車両の空気抵抗を低減するとともに、前輪に設けられたブレーキ部の温度上昇を抑制してフェードやベーパーロック現象の発生を防止できる。
【符号の説明】
【0031】
10 車体
12 前輪
14 ブレーキ部
14a ブレーキディスク
14b 制動パッド
16 ロアアーム(フロントサスペンションアーム)
18 バンパ下端
20 ホイールハウス
22 ナックル
24 ラジエータ
26 シャシー
28 ボールジョイント
30 スタビライザ
32 クロスメンバ
34 ショックアブソーバ
36 ドライブシャフト
50 車両用整流装置
52 整流部材
52a、52b 整流板
54 アクチュエータ(駆動部)
56 非接触式温度センサ
58 ガイド部材
60 制御部
62 取付け板
64 ヒンジ部
70 増速路
70a 入口開口
70b 出口開口
A 走行気流
B 増速気流
C 中心線
D 内側空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9