特許第6561722号(P6561722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561722
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】補助足場及び補助足場の取付方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   H02G1/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-185866(P2015-185866)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-60370(P2017-60370A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 善昭
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−107001(JP,U)
【文献】 特開2013−121265(JP,A)
【文献】 特開2002−152933(JP,A)
【文献】 特開2010−90667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間した2か所間に懸架される補助足場であって、
筒状部と、
前記筒状部の中を貫通するワイヤーと、
前記ワイヤーの両端に設けられ、前記ワイヤーを前記2か所のそれぞれに取り付ける取付部と、を備え、
前記ワイヤーの一端に設けられている取付部は、
先端に円環部材が取り付けられているフックと、
前記フックの基端から延びる紐部材と、前記紐部材の先端に取り付けられた外れ止めの付いた小フックとを有し、
前記ワイヤーの他端に設けられている取付部には、前記筒状部の高さを調節可能なようにベルト部材が取り付けられている、補助足場。
【請求項2】
前記筒状部は伸縮可能であること、
を特徴とする請求項1に記載の補助足場。
【請求項3】
前記取付部は、ワイヤーの端部を湾曲して形成したループで、
前記他端の前記ループには、U字状に成形された金具本体と、前記金具本体の両端に形成され、中心に円形状の開口が開設された円盤部と、前記開口に挿通されたボルトと、前記ボルトに螺合されたナットとを備えるUクレビスが取り付けられ、
前記ベルト部材は、前記ループに対して前記Uクレビスを介して取り付けられている、請求項1または2に記載の補助足場。
【請求項4】
互いに離間した前記2か所の間に位置する部分と、前記筒状部との間に架け渡される振止め部材を備えること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の補助足場。
【請求項5】
互いに離間した2か所間に懸架される補助足場であって、
筒状部と、
前記筒状部の中を貫通するワイヤーと、
前記ワイヤーの両端に設けられ、前記ワイヤーを前記2か所のそれぞれに取り付ける取付部と、を備え、
前記ワイヤーの一端に設けられている取付部は、先端に円環部材が取り付けられているフックと、前記フックの基端から延びる紐部材と、前記紐部材の先端に取り付けられた外れ止めの付いた小フックとを有し、
前記ワイヤーの他端に設けられている取付部には、前記筒状部の高さを調節可能なようにベルト部材が取り付けられている補助足場において、
前記筒状部を、前記ベルト部材側から前記フック側へ押して、最もフック寄りにし、
前記フックを、互いに離間した2か所間の一方側に延ばして前記一方側に取り付け、
前記ベルト部材の一端を、互いに離間した2か所間の他方側に、前記筒状部が所望の高さになるように、巻く回数を調整しつつ巻くことにより前記筒状部の高さを調節し、
前記ベルト部材と前記ワイヤーとを連結して前記ワイヤーの他端を前記他方側に保持することで、
前記補助足場を、前記互いに離間した2か所間に懸架させる、補助足場の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔側から電線側に乗り出す際などに使用される補助足場に関する。
【背景技術】
【0002】
電線のダンパ点検、クランプ点検、異物撤去、架線金具の簡易補修、調査などを行う際に、鉄塔の腕金から電線(架線)側に向かって、作業員が乗り出して作業を行う場合がある。
このような場合に、作業員の足場を確保するため、従来、架線梯子等が使用されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5348845号公報
【特許文献2】特開第2014−143871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、架線梯子は、一般的に20kg以上と重く、また約3mほどの長尺物であるので、山間部等への運搬は労力が必要となる。また、鉄塔の上に上げるには、通綱や金車等が必要である。さらに、地上作業員も必要となるため、多くの作業員が必要である。
また、架線梯子を運搬できない箇所では足場ロープが使用されている。足場ロープは、撚り合せたロープを、鉄塔と電線との間に懸架して簡易足場として利用するものである。しかし、足場ロープの使用は熟練が必要で、経験の浅い作業員では姿勢が安定せず、恐怖感を伴い、作業位置へ移動するまでに時間がかかる。
【0005】
本発明は、運搬が容易で、非熟練者にも利用が容易な足場を提供可能な補助足場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)互いに離間した2か所間に懸架される補助足場であって、筒状部と、前記筒状部の中を貫通するワイヤーと、前記ワイヤーの両端に設けられ、前記ワイヤーを前記2か所のそれぞれに取り付ける取付部と、を備える補助足場。
【0007】
(1)の補助足場は、筒状部と、前記筒状部の中を貫通するワイヤーと、前記ワイヤーの両端に設けられ、前記ワイヤーを前記2か所のそれぞれに取り付ける取付部と、を備える簡単な構造なので、製造が容易である。
(1)の補助足場は、筒状部を用いているので、懸架梯子と比べて小さく収納可能で、持ち運びが容易である。
(1)の補助足場は、筒状部の中にワイヤーを貫通させる構造であり、ワイヤーを溶着等して固定する場合と比べて丈夫であるので安全である。
(1)の補助足場を使用する際、作業者は、筒状部を足場として移動できるので、例えばワイヤーのみの場合(足場ロープ)と比べて安定して作業することができる。
(1)の補助足場は、筒状部が足場となるので、足場ロープの場合と比べて、互いに離間した2か所間の乗出しが不慣れな作業員でも、乗出し時に作業姿勢が安定する。したがって、乗り出しが容易となり、恐怖心が和らぎ、安全性も向上する。
【0008】
(2)前記筒状部は伸縮可能であることが好ましい。
筒状部が伸縮可能であると、補助足場の長さを調整可能となり、互いに離間した2か所間距離によらず、使用可能となる。
【0009】
(3)前記取付部は、フックを含むことが好ましい。
前記取付部がフックを含むと、取り付けが容易となり、短時間に作業用の足場を設置することができる。
【0010】
(4)前記取付部は、ベルト部材を含むことが好ましい。
取付部がベルト部材を含むと、取付個所にベルト部材を巻いて取り付けることができるので、鉄塔側の形状を問わず、どんな形状の部分にも取り付けることができる。
【0011】
(5)互いに離間した前記2か所の間に位置する部分と、前記筒状部との間に架け渡される振止め部材を備えることが好ましい。
振れ止め部材を備えると、補助足場を安定させることができる。
【発明の効果】
【0012】
運搬が容易で、非熟練者にも利用が容易な足場を提供可能な補助足場を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の本実施形態の補助足場を示す図である。
図2】本発明の補助足場の使用状態を示す図である。
図3】筒状部の長さを最短にした補助足場を示した図である。
図4】補助足場の電線への取付方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態の補助足場1を示す図である。
図2は補助足場1の使用状態を示す図である。図示するように、補助足場1は、筒状部11と、その筒状部11の中を貫通するワイヤー12と、を備える。
【0015】
ワイヤー12は複数の細い金属線を撚り合わせたもので、高い耐荷重性を有している。ワイヤー12の両端は湾曲してループ13a,13bが形成され、その端部はループ13a,13bの基端部に固定されている。
一方のループ13aには、吊り下げ用フック14が取り付けられ、他方のループ13bには、Uクレビス20を介してベルト部材21が取り付けられている。
【0016】
吊り下げ用フック14は、U字型に湾曲した金属の棒状部材である。吊り下げ用フック14の基端はループ13aの先端に取り付けられている。
図2に示すように、吊り下げ用フック14は、電線2に引っ掛けられる。吊り下げ用フック14の電線2と接触する部分にはビニールテープ18等が巻かれている。これにより、吊り下げ用フック14が電線2と接触したときに、電線2を傷付ける可能性が低減される。
【0017】
吊り下げ用フック14の先端には、円環部材15が取り付けられている。また、吊り下げ用フック14の基端からは紐部材16が延びている。紐部材16の先端には、外れ止めの付いた小フック17が取り付けられている。
吊り下げ用フック14を電線2に引っ掛けた後、小フック17を円環部材15に係合させることで、吊り下げ用フック14の電線2からの離脱が防止される。
【0018】
筒状部11は、鋼製である。筒状部11の形状は本実施形態では円筒形状であるが、角筒であってもよい。筒状部11は、互いに略同じ長さの大径筒状部11aと、中径筒状部11bと、小径筒状部11cとを備え、入れ子状に収納可能な伸縮構造を有している。
図1は、大径筒状部11aと中径筒状部11bとが一部重なった状態で、中径筒状部11bが大径筒状部11aから延び、中径筒状部11bと小径筒状部11cとが一部重なった状態で小径筒状部11cが中径筒状部11bから延びた状態である。この重なり部分の長さを調節することで、筒状部11の長さを調整することができる。
筒状部11における、大径筒状部11aの中径筒状部11b側と、中径筒状部11の小径筒状部11c側の端部には、孔が設けられている。その孔にはそれぞれ蝶ねじ等が挿入され、この蝶ねじによって、大径筒状部11と中径筒状部11とを互いに移動しないように固定し、また中径筒状部11と小径筒状部11とを互いに移動しないように固定する。
【0019】
ワイヤー12の他端のループ13bには、Uクレビス20が取り付けられている。Uクレビス20は、U字状に成形された金具本体20aと、この金具本体20aの両端に形成され、中心に円形状の開口が開設された円盤部20bと、その開口に挿通されたボルト13dと、このボルト13dに螺合されたナット13eとを備える。ナット13eを回転して緩めてボルト13dから外し、ボルト13dを円盤部20bの開口から取り外すことで、Uクレビス20はワイヤー12のループ13bに対して着脱可能となる。
【0020】
Uクレビス20には、耐荷重性の高い、例えばナイロン等で製造されたベルト部材21が取り付けられている。ベルト部材21の両端にはループ21aが形成され、それぞれのループ21aにはUクレビス20の金具本体20aが挿通されている。Uクレビス20をループ13bから取り外すことにより、ベルト部材21をワイヤー12(Uクレビス20)から取り外すことが可能となる。
【0021】
筒状部11には、振れ止め部材23が取り付けられている。振れ止め部材23は、筒状部11に対して軸部を中心として回転可能に取り付けられている。軸部は、筒状部11における大径筒状部11aの中径筒状部11b側に取り付けられている。振れ止め部材23も筒状部11と同様に、図1に点線で示すように、例えば、径の異なる筒状部23a、23bを組み合わせることによって伸縮可能となっている。振れ止め部材23の先端(筒状部11に取り付けられている側と反対側)には、U字状の鉤部23cが取り付けられている。
なお、振れ止め部材23は、ロープトウのような構造を有していてもよい。
【0022】
図3は筒状部11の長さを最短にした補助足場1を示した図である。小径筒状部11は中径筒状部11の中に収納され、中径筒状部11は大径筒状部11の中に収納されている。振れ止め部材23も最小長さに縮小されている。ワイヤー12は、柔軟なので曲げることができ、補助足場1は全体的に図1に示す状態と比べて小さくまとめることができる。
【0023】
作業者は、電線2に対して作業を行う場合、補助足場1を鉄塔の上まで運搬する必要がある。この際、本実施形態の補助足場1は、図3に示すようにコンパクトになるので、作業者が補助足場1を腰胴綱に付ける等して運搬することができる。
【0024】
作業者は、鉄塔上で、補助足場1の筒状部11を図3の状態から所望長さに伸長させる。そして、蝶ねじによって大径筒状部11aと中径筒状部11b、中径筒状部11bと小径筒状部11cとを固定する。
【0025】
図4は、補助足場1の電線2への取付方法を示す図である。作業者は、補助足場1の筒状部11を、他端側(ベルト部材21側)から一端側(吊り下げ用フック14側)へ押して、最も吊り下げ用フック14寄りにする。この状態で、補助足場1の吊り下げ用フック14を電線2のほうに延ばして電線2に取り付ける。この際、筒状部11は鋼製であるので、撓むことなく、吊り下げ用フック14を電線2に容易に取り付けることができる。
図4の点線は、筒状部11がなく、ワイヤーのみの場合の比較形態を示した図である。図示するように、比較形態の場合、ワイヤーが撓むので、電線への取り付けが容易ではない。
【0026】
次いで、補助足場1の他端側のUクレビス20のナット20eをボルト20dから外して、ベルト部材21の一端のループ状部分をUクレビス20の金具本体20aから取り外す。そして、そのベルト部材21の一端を鉄塔の柱3に巻く。
このとき、補助足場1の筒状部11が、図2で示すような作業し易い所望の高さになるように、ベルト部材21における鉄塔の柱3の部分に巻く回数を調整する(図2においては2回巻いた形態を示す)。
そして、ベルト部材21の一端のループ状の部分に、再度、Uクレビス20の金具本体20aに通す。Uクレビス20を介してワイヤー12のループ13bとベルト部材21とを連結することで、補助足場1のワイヤー12の他端が鉄塔の柱3に保持される。
この状態で補助足場1は、鉄塔の柱3と、電線2との間に懸架された状態となる。
【0027】
次いで、図2に示すように、作業者は、筒状部11の上を渡って振れ止め部材23が設けられている部分まで移動する。振れ止め部材23を筒状部11に対して回転させて伸長させ、先端の鉤部23cを電線2に引っ掛ける。これによって、補助足場1が安定する。
【0028】
作業者は、さらに、吊り下げ用フック14の他端に設けられた円環部材15に、紐部材16の先端に取り付けられた小フック17を係合させる。これにより、吊り下げ用フック14の電線2からの離脱が防止される。
この状態で、作業者は、筒状部11に乗って移動し、電線2において所定の作業を行う。
【0029】
本実施形態によると、このように、容易且つ短時間に作業用の足場を設置することができる。
作業者は、状部11に乗って移動し、電線2において所定の作業を行うことができる。その際、鋼製の筒状部11を足場として移動できるので、例えばワイヤーのみの場合(足場ロープ)と比べて安定して作業することができる。
また、鋼製の筒状部11が足場であるので、足場ロープの場合と比べて、電線2への鉄塔からの乗出しが不慣れな作業員でも、乗出し時に作業姿勢が安定する。したがって、乗り出しが容易となり、恐怖心が和らぎ、安全性も向上する。
【0030】
補助足場1は、筒状部11の中をワイヤーを貫通させる構造なので、製造が容易である。
また、筒状部11の両端にワイヤーを溶着等してワイヤーを筒状部に固定する場合と比べて、丈夫であって安全である。
【0031】
鉄塔の柱3には、ベルト部材21を巻いて取り付けるので、鉄塔側の形状を問わず、どんな形状の部分にも取り付けることができる。
本実施形態において足場となる筒状部11は長さを調整可能なので、電線2と鉄塔の柱3との間に設けられている碍子の数によらず、種々の長さに対応可能である。
本実施形態の補助足場1は、振れ止め部材23が備えられているため、補助足場1が安定する。
【符号の説明】
【0032】
1 補助足場
2 電線
3 柱
11 筒状部
11a 大径筒状部
11b 中径筒状部
11c 小径筒状部
13 ワイヤー
13a ループ
13b ループ
13d ボルト
13e ナット
14 用フック
18 ビニールテープ
15 円環部材
16 紐部材
17 小フック
20 クレビス
20a 金具本体
20b 円盤部
20d ボルト
20e ナット
21 ベルト部材
21a ループ
23 振れ止め部材
23a 筒状部
23b 筒状部
23c 鉤部
図1
図2
図3
図4