(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者によれば、トレンチゲート構造を有する縦型トランジスタにおいて、トレンチ幅を微細化することによって単位面積あたりのチャネル領域を増大させたとしても、1つのトレンチを挟んで形成される2つのチャネル領域間の距離が縮まることによって、トレンチ底部の下方において電流が集中して流れにくくなり、その結果、かえってオン抵抗が増加する場合があるという結果を得た。そのため、トレンチゲート構造を有する縦型トランジスタにおいて、オン抵抗を低減できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決し、以下の形態として実現できる。
[形態1]トレンチゲート構造を有する縦型トランジスタであって、面方向に広がる基板と、前記基板より上に位置し、n型およびp型のうち一方の特性を有する第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上に位置し、n型およびp型のうち前記一方の特性とは異なる他方の特性を有する第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上に位置し、前記一方の特性を有する第3の半導体層と、前記第3の半導体層から前記第2の半導体層を貫通し前記第1の半導体層にまで落ち込んだトレンチと、前記トレンチの表面を覆う絶縁膜とを備え、同一形状を成す複数のセルが前記面方向へと規則的に並ぶ構造を有し、前記面方向に直交する厚さ方向に1つの前記セルにおける前記トレンチの底部を投影した第1の面積は、前記厚さ方向に1つの前記セルの全体を投影した第2の面積の25%以上80%以下であり、前記第1、第2および第3の半導体層の結晶構造は、六方晶であり、前記第1、第2および第3の半導体層は、窒化ガリウム(GaN)から主に成り、前記トレンチの前記面方向の幅は、3.0μm以上であ
り、電界効果トランジスタである、縦型トランジスタ。
【0008】
(1)本発明の一形態は、半導体装置を提供する。この半導体装置は、面方向に広がる基板と;前記基板より上に位置し、n型およびp型のうち一方の特性を有する第1の半導体層と;前記第1の半導体層の上に位置し、n型およびp型のうち前記一方の特性とは異なる他方の特性を有する第2の半導体層と;前記第2の半導体層の上に位置し、前記一方の特性を有する第3の半導体層と;前記第3の半導体層から前記第2の半導体層を貫通し前記第1の半導体層にまで落ち込んだトレンチと;前記トレンチの表面を覆う絶縁膜とを備え、同一形状を成す複数のセルが前記面方向へと規則的に並ぶ構造を有し、前記面方向に直交する厚さ方向に1つの前記セルにおける前記トレンチの底部を投影した第1の面積は、前記厚さ方向に1つの前記セルの全体を投影した第2の面積の25%以上80%以下である。この形態によれば、第3の半導体層の領域のうちトレンチの底部の下方に位置する領域において、第2の半導体層に形成されるチャネルから流れる電流を十分に分散させることができる。その結果、半導体装置においてオン抵抗を低減できる。
【0009】
(2)上述した半導体装置において、前記第1の面積は、前記第2の面積の33%以上80%以下であってもよい。この形態によれば、半導体装置においてオン抵抗をさらに低減できる。
【0010】
(3)上述した半導体装置において、前記第1の面積は、前記第2の面積の50%以上75%以下であってもよい。この形態によれば、半導体装置においてオン抵抗をいっそう低減できる。
【0011】
(4)上述した半導体装置において、前記厚さ方向から見た前記セルの形状は、長方形であってもよい。この形態によれば、長方形のセルを有する半導体装置においてオン抵抗を低減できる。
【0012】
(5)上述した半導体装置において、前記厚さ方向から見た前記セルの形状は、正六角形であってもよい。この形態によれば、正六角形のセルを有する半導体装置においてオン抵抗を低減できる。
【0013】
(6)上述した半導体装置において、前記半導体装置は、電界効果トランジスタであってもよい。この形態によれば、電界効果トランジスタにおいてオン抵抗を低減できる。
【0014】
(7)上述した半導体装置において、前記第1、第2および第3の半導体層の結晶構造は、六方晶であってもよい。この形態によれば、六方晶系の半導体層を備える半導体装置においてオン抵抗を低減できる。
【0015】
(8)上述した半導体装置において、前記第1、第2および第3の半導体層は、炭化ケイ素(SiC)および窒化ガリウム(GaN)の一方から主に成ってもよい。この形態によれば、これらの化合物から成る半導体層を備える半導体装置においてオン抵抗を低減できる。
【0016】
本発明は、半導体装置以外の種々の形態で実現でき、例えば、上記形態の半導体装置を備える電力変換装置、上記形態の半導体装置を製造する製造方法、ならびに、その製造方法を実施する製造装置などの形態で実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、第3の半導体層の領域のうちトレンチの底部の下方に位置する領域において、チャネル領域から流れる電流を十分に分散させることができる。その結果、半導体装置においてオン抵抗を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態
図1は、半導体装置100の構成を模式的に示す断面図である。
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸のうち、X軸は、
図1の紙面左から紙面右に向かう軸である。+X軸方向は、紙面右に向かう方向であり、−X軸方向は、紙面左に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Y軸は、
図1の紙面手前から紙面奥に向かう軸である。+Y軸方向は、紙面奥に向かう方向であり、−Y軸方向は、紙面手前に向かう方向である。
図1のXYZ軸のうち、Z軸は、
図1の紙面下から紙面上に向かう軸である。+Z軸方向は、紙面上に向かう方向であり、−Z軸方向は、紙面下に向かう方向である。
図1のXYZ軸は、他の図のXYZ軸に対応する。
【0020】
半導体装置100は、トレンチゲート構造を有する縦型トランジスタである。本実施形態では、半導体装置100は、電界効果トランジスタ(FET)の1つである縦型トレンチMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。本実施形態では、半導体装置100は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。本実施形態では、半導体装置100は、化合物半導体の1つである窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。
【0021】
半導体装置100は、基板110と、n型半導体層120と、p型半導体層130と、n型半導体層140とを備える。半導体装置100は、各半導体層に形成された構造として、トレンチ152およびリセス
156を有する。半導体装置100は、更に、絶縁膜160と、制御電極であるゲート電極172と、第1の電極であるソース電極174と、第2の電極であるpボディ電極176と、第3の電極であるドレイン電極178とを備える。
【0022】
半導体装置100の基板110は、面方向(X軸方向およびY軸方向)に広がる板状を成す半導体である。本実施形態では、基板110は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本明細書の説明において、「窒化ガリウム(GaN)から主に成る」とは、モル分率において窒化ガリウム(GaN)を90%以上含有することを意味する。本実施形態では、基板110の結晶構造は、六方晶である。本実施形態では、基板110は、n型の特性を有するn型半導体である。本実施形態では、基板110は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有する。本実施形態では、基板110に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、約1.0×10
18cm
-3である。基板110の厚さ(Z軸方向の長さ)は、100μm以上500μm以下が好ましく、本実施形態では、約300μmである。
【0023】
半導体装置100のn型半導体層120は、n型の特性を有する半導体である。n型半導体層120は、基板110より上に位置する。本実施形態では、n型半導体層120は、基板110の+Z軸方向側に位置する。本実施形態では、n型半導体層120は、面方向(X軸方向およびY軸方向)に広がる。本実施形態では、n型半導体層120は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、n型半導体層120の結晶構造は、六方晶である。本実施形態では、n型半導体層120は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有する。本実施形態では、n型半導体層120に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、約8.0×10
15cm
-3である。本実施形態では、n型半導体層120の厚さ(Z軸方向の長さ)は、約12μmである。本実施形態では、n型半導体層120は、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いたエピタキシャル成長によって基板110の上に形成された半導体である。
【0024】
半導体装置100のp型半導体層130は、p型の特性を有する半導体である。p型半導体層130は、n型半導体層120の上に位置する。本実施形態では、p型半導体層130は、n型半導体層120の+Z軸方向側に位置する。本実施形態では、p型半導体層130は、面方向(X軸方向およびY軸方向)に広がる。本実施形態では、p型半導体層130は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、p型半導体層130の結晶構造は、六方晶である。本実施形態では、p型半導体層130は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有する。本実施形態では、p型半導体層130に含まれるマグネシウム(Mg)濃度の平均値は、約4.0×10
18cm
-3である。本実施形態では、p型半導体層130の厚さ(Z軸方向の長さ)は、約0.5μmである。本実施形態では、p型半導体層130は、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いたエピタキシャル成長によってn型半導体層120の上に形成された半導体である。
【0025】
半導体装置100のn型半導体層140は、n型の特性を有する半導体である。n型半導体層140は、p型半導体層130の上に位置する。本実施形態では、n型半導体層140は、p型半導体層130の+Z軸方向側に位置する。本実施形態では、n型半導体層140は、面方向(X軸方向およびY軸方向)に広がる。本実施形態では、n型半導体層140は、窒化ガリウム(GaN)から主に成る。本実施形態では、n型半導体層140の結晶構造は、六方晶である。本実施形態では、n型半導体層140は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有する。本実施形態では、n型半導体層140に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、約1.0×10
18cm
-3である。本実施形態では、n型半導体層140の厚さ(Z軸方向の長さ)は、約0.2μmである。本実施形態では、n型半導体層140は、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いたエピタキシャル成長によってp型半導体層130の上に形成された半導体である。
【0026】
半導体装置100のトレンチ152は、n型半導体層140からp型半導体層130を貫通しn型半導体層120にまで落ち込んだ溝部である。本実施形態では、トレンチ152の深さ(Z軸方向の長さ)は、約0.9μmである。本実施形態では、トレンチ152は、各半導体層に対するドライエッチングによって形成された構造である。
【0027】
半導体装置100のリセス156は、n型半導体層140を貫通しp型半導体層130にまで達する凹部である。本実施形態では、リセス156は、各半導体層に対するドライエッチングによって形成された構造である。
【0028】
半導体装置100の絶縁膜160は、電気絶縁性を有する膜である。絶縁膜160は、トレンチ152の表面を覆う。本実施形態では、絶縁膜160は、トレンチ152の内側から外側にわたって形成されている。本実施形態では、絶縁膜160は、二酸化ケイ素(SiO
2)から主に成る。本実施形態では、絶縁膜160の膜厚は、約0.05μmである。
【0029】
半導体装置100のゲート電極172は、絶縁膜160を介してトレンチ152の内側に形成された制御電極である。本実施形態では、ゲート電極172は、トレンチ152の内側に加え、トレンチ152の外側にわたって形成されている。本実施形態では、ゲート電極172は、アルミニウム(Al)から主に成る。ゲート電極172に電圧が印加された場合、p型半導体層130に反転層が形成され、この反転層がチャネルとして機能することによって、ソース電極174とドレイン電極178との間に導通経路が形成される。
【0030】
半導体装置100のソース電極174は、n型半導体層140にオーミック接触する第1の電極である。本実施形態では、ソース電極174は、pボディ電極176の上からn型半導体層140の上にわたって形成されている。本実施形態では、ソース電極174は、n型半導体層140側から順に、チタン(Ti)から主に成る層と、アルミニウム(Al)から主に成る層と、パラジウム(Pd)から主に成る層とを積層した積層電極である。
【0031】
半導体装置100のpボディ電極176は、p型半導体層130にオーミック接触する第2の電極である。本実施形態では、pボディ電極176は、リセス156の内側に形成されている。本実施形態では、pボディ電極176は、パラジウム(Pd)から主に成る。
【0032】
半導体装置100のドレイン電極178は、基板110の−Z軸方向側の表面にオーミック接触する第3の電極である。本実施形態では、ドレイン電極178は、基板110側から順に、チタン(Ti)から主に成る層と、アルミニウム(Al)から主に成る層とを積層した積層電極である。
【0033】
半導体装置100は、同一形状を成す複数のセルCLが面方向(X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方)へと規則的に並ぶ構造を有する。本実施形態では、半導体装置100は、Y軸方向へと直線状に延びた長方形を成す複数のセルCLがX軸方向へと規則的に並ぶ構造を有する。本実施形態では、セルCLの基準点同士の間隔であるセルピッチPcは、約12μmである。
【0034】
半導体装置100においてオン抵抗を低減する観点から、1つのセルCLにおけるトレンチ152の底部をZ軸方向に投影した面積A1は、1つのセルCLの全体をZ軸方向に投影した面積A2の25%以上80%以下であることが好ましく、33%以上80%以下であることがさらに好ましく、50%以上75%以下であることがいっそう好ましい。すなわち、面積比A1/A2は、0.25以上0.80以下であることが好ましく、0.33以上0.80以下であることがさらに好ましく、0.50以上0.75以下であることがいっそう好ましい。
【0035】
本実施形態では、面積A1は、X軸方向におけるトレンチ152の底部のトレンチ幅Ltにセル長さLyを乗算したLt×Lyとなる。本実施形態では、面積A2は、Y軸方向におけるセルCLのセル長さLyにセルピッチPcを乗算したPc×Lyとなる。本実施形態では、面積比A1/A2は、セルピッチPcに対するトレンチ幅Ltの比Lt/Pcに等しい。
【0036】
図2は、面積比A1/A2と電流比との関係を評価したシミュレーション結果を示す表である。本発明者は、トレンチ幅Ltが異なる複数の半導体装置に対して、ドレイン電圧0.5Vおよびゲートバイアス電圧25Vを印加した場合にソース電極174とドレイン電極178との間に流れる電流を、シミュレーションによって確認した。各シミュレーションモデルの仕様は、トレンチ幅Ltが異なる点を除き、上述した実施形態と同様である。各シミュレーションモデルのセルピッチPcは、12μmである。
図2の電流比は、面積比A1/A2が0.17であるシミュレーションモデルで確認された電流を基準とした各シミュレーションモデルにおける電流の比である。
【0037】
図3は、面積比A1/A2と電流比との関係を評価した結果を示すグラフである。
図3の横軸は、面積比A1/A2を示す。
図3の縦軸は、電流比を示す。
図3の電流比は、
図2と同様である。
図3における黒丸は、
図2のシミュレーション結果を示す。
【0038】
図3における白丸は、実際に作製した試料に対して行った実験結果を示す。本発明者は、トレンチ幅Ltが異なる複数の試料に対して、ドレイン電圧0.5Vおよびゲートバイアス電圧25Vを印加した場合にソース電極174とドレイン電極178との間に流れる電流を測定した。各試料の仕様は、トレンチ幅Ltがそれぞれ2.0μm、3.0μm、4.0μmおよび6.0μmである点を除き、上述した実施形態と同様である。各試料のセルピッチPcは、12μmである。実際に作製した試料についての電流比は、面積比A1/A2が0.17である試料(トレンチ幅Ltが2.0μmである試料)で確認された電流を基準とした各試料における電流の比である。
【0039】
図4は、面積比A1/A2が0.17である半導体装置100aにおける電流密度のシミュレーション結果を示す説明図である。
図5は、面積比A1/A2が0.33である半導体装置100bにおける電流密度のシミュレーション結果を示す説明図である。
図6は、面積比A1/A2が0.50である半導体装置100cにおける電流密度のシミュレーション結果を示す説明図である。
図7は、面積比A1/A2が0.67である半導体装置100dにおける電流密度のシミュレーション結果を示す説明図である。
図4から
図7までの各図には、n型半導体層120の領域のうちトレンチ152の下方に位置する領域における電流密度が等高線を用いて示されている。
【0040】
面積比A1/A2が0.17である半導体装置100aでは、トレンチ152の下方に電流が集中している様子が分かる(
図4)。面積比A1/A2が0.33、0.50、0.67へと大きくなるに従って、トレンチ152の下方における電流の集中が緩和する様子が分かる(
図5,
図6および
図7)。
【0041】
図2から
図7までの評価結果によれば、面積比A1/A2を0.25以上にすることによって、面積比A1/A2が0.17となるまでトレンチ152を微細化した場合と比較して、電流比を向上させることができる。言い換えると、面積比A1/A2を0.25以上にすることによって、より多くの電流を流すことができる。
【0042】
また、面積比A1/A2が0.25以上0.54以下である範囲では、面積比A1/A2の増加に従って電流比が増加し、面積比A1/A2が0.54を超える範囲では、面積比A1/A2の増加に従って電流比が低下する。その原因は、面積比A1/A2が0.50を超えることによって、隣接するセルCLから電流が流れ込むようになり、面積比A1/A2が0.54を超えた場合に、隣接するセルCLからの電流の影響が、トレンチ幅Ltを広げることによって電流の集中を緩和する効果を打ち消す程度に大きくなるためであると考えられる。
【0043】
したがって、面積比A1/A2は、0.25以上0.80以下であることが好ましく、0.33以上0.80以下であることがさらに好ましく、0.50以上0.75以下であることがいっそう好ましい。
【0044】
以上説明した第1実施形態によれば、Z軸方向に1つのセルCLにおけるトレンチ152の底部を投影した面積A1は、Z軸方向に1つのセルCLの全体を投影した面積A2の25%以上80%以下であるため、n型半導体層120の領域のうちトレンチ152の底部の下方に位置する領域において、p型半導体層130に形成されるチャネルから流れる電流を十分に分散させることができる。その結果、半導体装置100においてオン抵抗を低減できる。
【0045】
B.第2実施形態
図8は、第2実施形態における半導体装置100Bを示す説明図である。第2実施形態の半導体装置100Bは、+Z軸方向から見て正六角形を成す複数のセルCLがX軸方向およびY軸方向へと規則的に並ぶ構造を有する点を除き、第1実施形態の半導体装置100と同様である。
図8には、Z軸方向から見た半導体装置100BにおけるセルCLおよびトレンチ152の形状が示されている。
図8の矢視F1−F1で切断した半導体装置100Bの断面形状は、
図1における半導体装置100の断面形状と同様である。
【0046】
半導体装置100Bにおいてオン抵抗を低減する観点から、1つのセルCLにおけるトレンチ152の底部をZ軸方向に投影した面積A1は、1つのセルCLの全体をZ軸方向に投影した面積A2の25%以上80%以下であることが好ましく、33%以上80%以下であることがさらに好ましく、50%以上75%以下であることがいっそう好ましい。すなわち、面積比A1/A2は、0.25以上0.80以下であることが好ましく、0.33以上0.80以下であることがさらに好ましく、0.50以上0.75以下であることがいっそう好ましい。
【0047】
本実施形態では、面積比A1/A2が0.50である場合、セルCLの中心からトレンチ152までの距離aと、トレンチ幅Ltの半分に相当する距離bとは、a:b=1:(√2−1)を満たす。
【0048】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、n型半導体層120の領域のうちトレンチ152の底部の下方に位置する領域において、p型半導体層130に形成されるチャネルから流れる電流を十分に分散させることができる。その結果、半導体装置100Bにおいてオン抵抗を低減できる。
【0049】
C.第3実施形態
図9は、電力変換装置10の構成を示す説明図である。電力変換装置10は、交流電源Eから負荷Rに供給される電力を変換する装置である。電力変換装置10は、交流電源Eの力率を改善する力率改善回路の構成部品として、制御回路20と、トランジスタTRと、4つのダイオードD1と、コイルLと、ダイオードD2と、キャパシタCとを備える。本実施形態では、トランジスタTRは、第1実施形態の半導体装置100と同様である。他の実施形態では、トランジスタTRは、第2実施形態の半導体装置100Bと同様であってもよい。
【0050】
電力変換装置10のダイオードD1,D2は、ショットキーバリアダイオードである。電力変換装置10において、4つのダイオードD1は、交流電源Eの交流電圧を整流するダイオードブリッジDBを構成する。ダイオードブリッジDBは、直流側の端子として、正極出力端Tpと、負極出力端Tnとを有する。コイルLは、ダイオードブリッジDBの正極出力端Tpに接続されている。ダイオードD2のアノード側は、コイルLを介して正極出力端Tpに接続されている。ダイオードD2のカソード側は、キャパシタCを介して負極出力端Tnに接続されている。負荷Rは、キャパシタCと並列に接続されている。
【0051】
電力変換装置10のトランジスタTRは、FET(Field-Effect Transistor)である。トランジスタTRのソース側は、負極出力端Tnに接続されている。トランジスタTRのドレイン側は、コイルLを介して正極出力端Tpに接続されている。トランジスタTRのゲート側は、制御回路20に接続されている。電力変換装置10の制御回路20は、交流電源Eの力率が改善されるように、負荷Rに出力される電圧、および、ダイオードブリッジDBにおける電流に基づいて、トランジスタTRのソース−ドレイン間の電流を制御する。
【0052】
以上説明した第3実施形態によれば、トランジスタTRのデバイス特性を向上させることができる。その結果、電力変換装置10による電力変換効率を向上させることができる。
【0053】
D.他の実施形態
本発明は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせを行うことが可能である。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除することが可能である。
【0054】
本発明が適用される半導体装置は、トレンチゲート構造を有する縦型トランジスタであればよく、上述した縦型トレンチMOSFETに限られず、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。
【0055】
上述の実施形態において、基板の材質は、上述した窒化ガリウム(GaN)に限らず、ケイ素(Si)、サファイア(Al
2O
3)および炭化ケイ素(SiC)などのいずれであってもよい。
【0056】
上述の実施形態において、各半導体層の材質は、化合物半導体であればよく、上述した窒化ガリウム(GaN)に限らず、他のIII族窒化物(例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)など)であってもよいし、炭化ケイ素(SiC)であってもよい。
【0057】
上述の実施形態において、n型半導体層に含まれるドナー元素は、ケイ素(Si)に限らず、ゲルマニウム(Ge)および酸素(O)などであってもよい。
【0058】
上述の実施形態において、p型半導体層に含まれるアクセプタ元素は、マグネシウム(Mg)に限らず、亜鉛(Zn)および炭素(C)などであってもよい。
【0059】
上述の実施形態において、基板および各半導体層におけるn型とp型との関係が入れ替わってもよい。
【0060】
上述の実施形態において、絶縁膜の材質は、電気絶縁性を有する材質であればよく、二酸化ケイ素(SiO
2)の他、窒化ケイ素(SiNx)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸窒化ジルコニウム(ZrON)、酸窒化ハフニウム(HfON)などの少なくとも1つであってもよい。絶縁膜は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0061】
上述の実施形態において、各電極の材質は、上述の実施形態の材質に限らず、他の材質であってもよい。