(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の中空絶縁体の前記第1の端部に前記連結用中空体の一端が挿入されて嵌められており、前記隣接する2つの中空絶縁体のうちの他方の中空絶縁体の前記第2の端部に前記連結用中空体の他端が挿入され嵌められている、
請求項2に記載のアンテナ。
前記第1の中空絶縁体の前記第1の端部が前記連結用中空体の一端に挿入されて嵌められており、前記第2の中空絶縁体の前記第2の端部が前記連結用中空体の他端に挿入され嵌められている、
請求項2に記載のアンテナ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、真空容器内のアンテナ本体が、プラズマによってスパッタリングされないように、アンテナ本体を石英パイプ(中空絶縁体)で覆っている。しかし、その場合、例えば装置が大型化するとアンテナ本体の長さも長くなり、それに伴って石英パイプも長くなる。その結果、石英パイプを含むアンテナの取り扱いが困難になる。
【0005】
本発明の目的は、アンテナが長い場合でもその取扱いを容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るアンテナは、真空容器内に配置されており真空容器内に誘導結合型のプラズマを発生させるためのアンテナであって、一方向に延在しており一方向に直列に配置される複数の中空絶縁体と、複数の中空絶縁体のうち隣接する2つの中空絶縁体を連結する連結部と、導電性を有し、連結部で連結された複数の中空絶縁体内に空間を介して配置され、一方向に延在しているアンテナ本体と、を備える。
【0007】
上記のアンテナでは、連結部が複数の中空絶縁体を連結する。このため、アンテナ本体の長さが長くなる場合でも、それに応じた数の中空絶縁体を連結部によって連結すれば、アンテナ本体の長さに対応したアンテナを得ることができる。よって、各中空絶縁体を例えば組立や運搬等に便利な大きさ(長さ)としておくことで、アンテナが長い場合でもその取扱いが容易になる。
【0008】
上記アンテナでは、連結部は、絶縁性を有する連結用中空体と、連結用中空体に一端が固定され他端が真空容器の壁部に固定される支持部と、を有し、各中空絶縁体は、第1の端部と、中空絶縁体の延在方向において第1の端部と反対側の第2の端部と、を有し、隣接する2つの中空絶縁体のうちの第1の中空絶縁体の第1の端部と連結用中空体の一端とが嵌めあわされ、隣接する2つの中空絶縁体のうちの第2の中空絶縁体の第2の端部と連結用中空体の他端とが嵌めあわされていてもよい。このように隣接する2つの中空絶縁体と連結用中空体とを嵌めあわせることによって、各中空絶縁体を連結することができる。また、連結用中空体が支持部によって真空容器の壁部に固定されるので、各中空絶縁体を連結すると共に真空容器内に支持することができる。
【0009】
上記アンテナでは、第1の中空絶縁体の第1の端部に連結用中空体の一端が挿入されて嵌められており、隣接する2つの中空絶縁体のうちの他方の中空絶縁体の第2の端部に連結用中空体の他端が挿入され嵌められていてもよい。このようにしても隣接する2つの中空絶縁体を連結すると共に、真空容器内に支持することができる。
【0010】
或いは、第1の中空絶縁体の第1の端部が連結用中空体の一端に挿入されて嵌められており、第2の中空絶縁体の第2の端部が連結用中空体の他端に挿入され嵌められていてもよい。このようにしても隣接する2つの中空絶縁体を連結すると共に、真空容器内に支持することができる。
【0011】
上記構成においては、連結部は、アンテナ本体の延在方向における中央部に配置されており、アンテナ本体の中央部は、連結用中空体内に空間を介して配置されていてもよい。これにより、連結部おいて、プラズマ処理装置の真空容器内に導入されるガスとアンテナ本体との距離を比較的長くして、その付近で発生するプラズマの密度が高くなり過ぎないようにすることができる。その結果、プラズマ処理装置において、均一なプラズマ処理が行われ易くなる。
【0012】
上記アンテナでは、連結部は、絶縁性を有する連結用中空体、を有し、各中空絶縁体は、第1の端部と、中空絶縁体の延在方向において第1の端部と反対側の第2の端部と、を有し、隣接する2つの中空絶縁体のうちの第1の中空絶縁体の第1の端部が連結用中空体の一端に挿入されて嵌められており、隣接する2つの中空絶縁体のうちの第2の中空絶縁体の第2の端部が連結用中空体の他端に挿入され嵌められており、アンテナ本体と、第1及び第2の中空絶縁体のうち連結用中空体に挿入されている部分との間にスペーサが設けられていてもよい。これにより、スペーサがアンテナ本体を起点として、中空絶縁体を内側から連結用中空体に押し付けて固定する。よって、例えばアンテナ本体の両端が固定されていれば、連結部が上述の支持部を有さなくとも、隣接する2つの中空絶縁体が連結されると共に、真空容器内に支持される。
【0013】
本発明の他の側面に係るプラズマ処理装置は、プラズマを用いて被処理物を処理するプラズマ処理装置であって、真空容器と、真空容器内に配置され被処理物が載置されるホルダと、真空容器においてホルダに対向して配置される、前述した本発明に係るアンテナと、アンテナが有するアンテナ本体にプラズマ生成用の電力を供給する電源と、を備える。
【0014】
このプラズマ処理装置によれば、先に説明したアンテナを備えているので、アンテナが長い場合でもその取扱いが容易になる。
【0015】
上記プラズマ処理装置では、被処理物の処理が被処理物上に膜を形成する処理であり、中空絶縁体の外表面上には、被処理物に形成する膜の成分と同じ成分を含む保護膜が設けられていてもよい。これにより、例えば、被処理物上に膜を形成する際(成膜の際)にプラズマによって中空絶縁体の外表面上に設けられた保護膜がスパッタされても、成膜に影響を与える(例えば被処理物上に形成される膜に不純物が混ざる等の)可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アンテナが長い場合でもその取扱いを容易にすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。各図面における寸法、形状は、実際のものとは必ずしも同一ではない。
【0019】
図1は、プラズマ処理装置の概略構成を示す図である。
図1に示したように、プラズマ処理装置1は、真空容器10と、アンテナ60とを含む。プラズマ処理装置1は、真空容器10に誘導結合型のプラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)36を用いて、被処理物(例えば後述の基板20)に対してプラズマ処理を行う。
【0020】
真空容器10は、例えば金属製の容器であり、電気的に接地されている。真空容器10内には、被処理物としての基板20が、基板ホルダ22によって保持されている。基板ホルダ22は、基板20が載置される載置面22aを有し、当該載置面22aで基板20の裏面を支持することによって基板20を真空容器10内に保持する。基板ホルダ22には、真空容器10の外部に設けられたバイアス電源26からのバイアス電圧が印加されてもよい。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のパルス電圧等であるが、これらに限定されるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマ36中の正イオンが基板20に入射するときのエネルギを制御して、基板20に対するプラズマ処理の制御をすることができる。例えば、後述するように基板20に膜を形成する処理の場合には、基板20の表面に形成される膜の結晶化度を制御することができる。なお、基板ホルダ22は、真空容器10を加熱するために、ヒータ24を含んでもよい。
【0021】
基板20は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等であるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
真空容器10内は、真空排気装置30によって真空排気される。また、真空容器10内には、ガス導入管32を経由して、ガス34が導入される。ガス34の種類は、基板20に施す処理内容に応じて適宜選択され得る。基板20に施される処理は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等による膜形成(成膜)、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。例えば、プラズマCVDによって基板20に膜形成を行う場合、ガス34は、原料ガスを希ガス(例えばH
2)で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH
4の場合はSi膜を、SiH
4+NH
3の場合はSiN膜を、SiH
4+O
2の場合はSiO
2膜を、それぞれ基板20の表面に形成することができる。
【0023】
アンテナ60は、基板ホルダ22に対向して配置される。具体的に、アンテナ60は、真空容器10内の上部付近(基板ホルダ22の上方)に基板ホルダ22の載置面22aと実質的に平行に配置されている。プラズマ処理装置1は、
図2に示すように、アンテナ60の延在方向(後述の方向A)に直交する方向において、複数のアンテナ60を有してもよい。
図2は、
図1のII―II線に沿ったプラズマ処理装置1の断面図である。複数のアンテナ60は、同じ高さに平行に配置されている。各アンテナ60は、アンテナ60が延在する方向(
図1の方向A)と直交する方向において、等間隔に並んで配置されている。
図2では、4本のアンテナ60を例示しているが、アンテナ60の数は、例えば基板20の大きさ(面積)に応じて適宜設定し得る。なお、各図において、アンテナ60の部分が強調して図示されている。先に説明したように、図面における寸法、形状は、実際のものとは必ずしも同一ではない。
【0024】
アンテナ60は、後述の高周波電流IRが流れることによって、真空容器10内に誘導結合型のプラズマを発生させる。アンテナ60は、複数の絶縁パイプ62と、複数の連結部64と、アンテナ本体66とを含む。
【0025】
複数の絶縁パイプ62は、一方向(
図1に示される矢印Aの方向であり、以下、「方向A」と称する)に延在しており、方向A(つまり延在方向)に直列に配置される中空絶縁体である。複数の絶縁パイプ62は、それらの中心軸線が実質的に同一直線上に位置するように配置されている。絶縁パイプ62の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等であるが、これらに限定されるものではない。なお、
図1に示した例では、アンテナ60は3つの絶縁パイプ62を含むが、絶縁パイプ62の数はこれに限定されるものではない。
【0026】
複数の連結部64は、複数の絶縁パイプ62のうち隣接する2つの絶縁パイプ62を連結する。このため、連結部64の数は、絶縁パイプ62の数より一つ少ない。
図1に示した例では3つの絶縁パイプ62があるので、連結部64の数は、それよりも1つ少ない、2つとされる。複数の連結部64の構成は特に断らない限り、同じである。連結部64の詳細については、後述する。
【0027】
アンテナ本体66は、導電性を有し、連結部64で連結された複数の絶縁パイプ62内に空間を介して配置されている。つまり、アンテナ本体66の外径は絶縁パイプ62の内径よりも小さく、それによって、アンテナ本体66は、絶縁パイプ62の中空部分に、絶縁パイプ62の内表面から離間するように配置されている。アンテナ本体66は、中空体であってよく、その場合、例えば金属パイプとされ得る。金属パイプの材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等であるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
金属パイプとしてのアンテナ本体66の内部には、冷却水68が供給されてもよい。後述の高周波電流IRがアンテナ本体66に流されると、ジュール熱によってアンテナ本体66が発熱することから、アンテナ本体66を冷却するためである。冷却水68は、電気絶縁の観点から、高抵抗の水、例えば純水又はそれに近い水が好ましい。
【0029】
アンテナ本体66の端部66aは、いずれも、真空容器10を貫通して、真空容器10の外部に露出している。貫通部分において、端部66aと、真空容器10とは、絶縁部40によって絶縁されている。絶縁部40は、アンテナ本体66の端部66aを、真空容器10から絶縁すると共に支持する部分である。絶縁部40の材質は、例えば絶縁パイプ62の材質と同じであってよい。真空容器10において端部66aが貫通している部分(貫通部)は、例えばパッキン42によって真空シールされてもよい。各絶縁部40と真空容器10との間も、例えばパッキン44によって真空シールされてもよい。
【0030】
絶縁部40における真空容器10の内側の端部には凹部が形成されており、その凹部に、対応する絶縁パイプ62の端部が挿入されて固定されている。これにより、絶縁パイプ62がアンテナ本体66と共に、基板ホルダ22の上方に固定して配置されることとなる。
【0031】
アンテナ本体66の一方の端部66aには、真空容器10の外部に設けられた高周波電源50からの高周波電流IRが供給され、これにより、アンテナ本体66には、高周波電流IRが流される。具体的に、一方の端部66aの給電端52には、整合回路56を介して高周波電源50が接続されている。整合回路56の構成は特に限定されるものではないが、例えば複数の容量性素子(コンデンサ等)を含んで構成され得る。容量性素子は容量値が可変のものであってもよい。高周波電源50は、アンテナ本体66にプラズマ36を生成するための電力(プラズマ生成用の電力)を供給する電源である。他方の端部66aは終端54とされ、戻り導体58を経由して接地点59で接地されている。なお、戻り導体58においてコンデンサCが直列接続されていてもよく、その場合には、コンデンサCの容量性リアクタンスによって、高周波電流IRの閉ループ全体のインピーダンスの虚数部を小さくし、当該インピーダンスを小さくすることができる。したがって、アンテナ本体66に高周波電流IRを流しやすくなる。コンデンサCの静電容量は、例えば、その容量性リアクタンスが、戻り導体58に存在する誘導性リアクタンスを打ち消すことができる程度の大きさにすればよい。
【0032】
次に、連結部64の詳細について
図1及び
図2を参照して説明する。
図2では、前述したように、4本のアンテナ60を例示している。連結パイプ642は絶縁パイプ62と同様に、絶縁性を有している。連結パイプ642の材質の例は、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。
【0033】
図1及び
図2に示したように、連結部64は、連結パイプ642と、支持部644とを有する。連結パイプ642および支持部644は、例えば一体に形成されていてもよい。
【0034】
連結パイプ642は、隣接する2つの絶縁パイプ62を接続するための連結用中空体である。連結パイプ642の外径は、絶縁パイプ62の内径とほぼ等しい。連結パイプ642の一端部642a及び他端部642bと、連結パイプ642の両側の絶縁パイプ62とは、それぞれ嵌合する。また、連結パイプ642の内径はアンテナ本体66の外径より大きく、それによって、アンテナ本体66は、連結パイプ642内に空間を介して配置されている。
【0035】
具体的に、
図1に示した連結部64を介して直列に配置された2つの絶縁パイプ62のうち、方向Aに沿って、連結部64の左側に位置する絶縁パイプ62を第1の絶縁パイプ62Aと称し、右側に位置する絶縁パイプ62を第2の絶縁パイプ62Bと称して説明する。第1の絶縁パイプ62Aの第1の端部62aに、連結部64の連結パイプ642の一端部642aが挿入されて嵌められている。両者の嵌合部分において、連結パイプ642の外面と第1の絶縁パイプ62Aの内面とが接触している。また、第2の絶縁パイプ62Bの第2の端部62bに連結部64の連結パイプ642の他端部642bが挿入されて嵌められている。両者の嵌合部分において、連結パイプ642の外面と第2の絶縁パイプ62Bの内面とが接触している。
【0036】
連結パイプ642の外面には外側に突出した突出部642cが形成されていてもよい。この場合、突出部642cが形成されている部分での連結パイプ642の外径は、絶縁パイプ62の内径より大きくなる。連結パイプ642の方向Aにおける突出部642cの幅は、連結パイプ642の長さより短い。突出部642cの突出長さは、例えば、金属パイプとしての絶縁パイプ62の周壁の厚さと同程度であってもよいし、それよりも長く、或いは短くてもよい。突出部642cは、連結パイプ642の周方向に沿って連続的に形成されていてもよいし、周方向に複数の突出部642cが離散的に形成されていてもよい。第1の絶縁パイプ62Aの第1の端部62aおよび第2の絶縁パイプ62Bの第2の端部62bは、突出部642cに当たることによって位置決めされ得る。
【0037】
支持部644は、複数の絶縁パイプ62の連結部において絶縁パイプ62を真空容器10内に支持するための部分である。支持部644は、一端部644aと、一端部644aとは反対側に位置する他端部644bとを有する。支持部644の一端部644aは、連結パイプ642の外周方向の一部に固定されている。連結パイプ642に突出部642cが形成されている形態では、支持部644は、突出部642cに接続されていればよい。支持部644の材質の例は石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。なお、連結パイプ642と支持部644は、いずれも石英からなる場合、それらは溶接で取り付けてもよい。支持部644の他端部644bは、上方(基板ホルダ22側とは反対側)に設けられたバー14に接続されている。バー14は真空容器10の天壁部12に固定されている。よって、支持部644の他端部644bは、バー14を介して天壁部12に固定されることとなる。この固定の手法は特に限定されるものではないが、例えばボルトなどの締結部材を用いて実現され得る。
【0038】
次に、アンテナ60の組立て方について説明する。ここでは、
図1に示したように、アンテナ60が3つの絶縁パイプ62とそれに対応する2つ(絶縁パイプ62の数よりも一つ少ない数)の連結部64を有する場合について具体的に説明する。
【0039】
具体的に、
図1に示したアンテナ60を得る場合には、3つの絶縁パイプ62とそれに対応する2つ(絶縁パイプ62の数よりも一つ少ない数)の連結部64を準備する。
【0040】
まず、2つの連結部64の間に位置する絶縁パイプ62の第1の端部62a及び第2の端部62bに、対応する連結部64の連結パイプ642の他端部642b及び一端部642aをそれぞれ挿入して嵌め合わせる。そして、2つの連結部64の支持部644の他端部644bを、バー14を介して真空容器10の天壁部12に固定する。これにより、2つの連結部64の間に位置する絶縁パイプ62が、真空容器10内に支持されることとなる。
【0041】
次に、残りの絶縁パイプ62のうちの左側の絶縁パイプ62、つまり
図1において最も左側に位置する絶縁パイプ62の第1の端部62aに、対応する連結部64の連結パイプ642の一端部642aを挿入して嵌め合わせる。そして、絶縁パイプ62の第2の端部62bを、対応する絶縁部40の凹部に挿入して固定する。同様に、最後の残った絶縁パイプ62、つまり
図1において最も右側に位置する絶縁パイプ62の第2の端部62bに、対応する連結部64の他端部642bを挿入して嵌め合わせる。そして、絶縁パイプ62の第1の端部62aを、対応する絶縁部40の凹部に挿入して固定する。これにより、残りの絶縁パイプ62も、真空容器10に支持されることとなる。
【0042】
例えば以上のようにして複数の絶縁パイプ62を方向Aに直列に配置して絶縁パイプを組み立てることができる。その後、各絶縁パイプ62にアンテナ本体66を挿入すると共に、アンテナ本体66の端部66aを絶縁部40で支持することによって、アンテナ60を得る。
【0043】
次に、アンテナ60の作用効果について説明する。上述のとおり、アンテナ60では、連結部64が複数の絶縁パイプ62を連結している。よって、アンテナ本体66が長い場合でも、それに応じた数の絶縁パイプ62を連結部64によって連結すれば、アンテナ本体66の長さに対応したアンテナ60を得ることができる。したがって、各絶縁パイプ62を例えば組立や運搬等に便利な長さとしておくことで、アンテナ60が長く、プラズマ処理装置1が大型化する場合でもその取扱いを容易とすることができる。例えば、基板として、G6サイズ(1500mm×1850mm)のガラス基板をプラズマ処理するためのプラズマ処理装置1に対して好適に適用できる。
【0044】
また、アンテナ本体66が長い場合に、それを一つの絶縁パイプで覆うと撓みが生じる可能性がある。これに対し、アンテナ60によれば、各絶縁パイプ62の長さを短くでき、そのような撓みを生じにくくすることができる。また、隣接する絶縁パイプ62は、連結パイプ642に嵌められており、連結パイプ642は、支持部644で支持されている。そのため、アンテナ本体66が長くても上記撓みがより一層生じにくい。
【0045】
以上説明したアンテナ60において、複数の絶縁パイプ62を連結する連結部は、上述の連結部64に限られない。例えば、連結部64に代えて、次に説明する種々の構成の連結部を採用してもよい。
【0046】
図3は、連結部の他の例の構成を示す図である。
図4は、
図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図3及び
図4に示した連結部74は、連結パイプ742と、支持部744とを有する。
【0047】
連結パイプ742は、後述の突出部742cが設けられた部分を除いて、連結パイプ742の内径は、絶縁パイプ62の外径とほぼ等しい。連結パイプ742は、隣接する2つの絶縁パイプ62を接続する。2つの絶縁パイプ62のうちの第1の絶縁パイプ62Aの第1の端部62aは、連結パイプ742の一端部742aに挿入されて嵌められている。両者の嵌合部分において、連結パイプ742の内面と第1の絶縁パイプ62Aの外面とが接触している。また、第2の絶縁パイプ62Bの第2の端部62bは、連結パイプ742の他端部742bに挿入されて嵌められている。両者の嵌合部分において、連結パイプ742の内面と第2の絶縁パイプ62Bの外面とが接触している。
【0048】
連結パイプ742の内面には内側に突出した突出部742cが形成されていてもよい。連結パイプ742の方向Aにおける突出部742cの幅は、連結パイプ742の長さより短い。突出部742cの突出長さは、突出部742cの先端がアンテナ本体66の外表面に至らない長さであり、例えば、絶縁パイプ62の周壁の厚さと同程度であってよいし、それよりも長く、或いは短くてもよい。突出部742cは、連結パイプ742の周方向に沿って連続的に形成されていてもよいし、周方向に複数の突出部742cが離散的に形成されていてもよい。第1の絶縁パイプ62Aの第1の端部62aおよび第2の絶縁パイプ62Bの第2の端部62bは、突出部742cに当たることによって位置決めされ得る。
【0049】
支持部744は、支持部644と同様に、複数の絶縁パイプ62の連結部において絶縁パイプ62を真空容器10内に支持するための部分である。支持部744の材質等の例は、支持部644と同様とし得る。支持部744は、一端部744aと、一端部744aとは反対側に位置する他端部744bとを有する。支持部744の一端部744aは、連結パイプ742の外周部分であって、突出部742cとは反対側の位置に接続されており、それによって連結パイプ742に固定されている。支持部744の他端部744bは、バー14を介して天壁部12に固定されている。この固定の手法は、先に説明した支持部644の他端部644bと天壁部12とを固定するための手法と同様であってよい。
【0050】
以上説明した連結部74によっても、先に説明した連結部64と同様にして複数の絶縁パイプ62を連結することができる。このため、連結部74によっても、連結部64と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、アンテナ60が長い場合でもその取扱いを容易とすることができる。また、アンテナ本体66が長くても絶縁パイプの撓みがより一層生じにくくなるようにすることができる。
【0051】
図5は、連結部の更に他の例の構成を示す図である。
図6は、
図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【0052】
図5及び
図6に示した連結部84は、連結パイプ86と、一対の支持部88とを有する。連結部84を、
図1に示したプラズマ処理装置1に適用する場合、連結部84は、アンテナ本体66の延在方向において実質的に中央部に配置される。なお、
図5に示したように、この連結部84は、隣接する2つの絶縁パイプ62を接続する。この図では、2つの絶縁パイプ62が1つの連結部84によって連結された形態が示される。
【0053】
連結パイプ86は、パイプ本体部862と、一対の取付け部864とを有する。
【0054】
パイプ本体部862は、方向Aに延在しており、隣接する2つの絶縁パイプ62の間に位置する。パイプ本体部862の材質は、絶縁パイプ62と同様のものであってよい。パイプ本体部862の長さは、例えば、絶縁パイプ62と同様の長さとし得る。
【0055】
パイプ本体部862の内径は、絶縁パイプ62の外径とほぼ等しい。隣接する2つの絶縁パイプ62のうちの第1の絶縁パイプ62Aの第1の端部62aは、パイプ本体部862の一端部862aに挿入されて嵌められている。両者の嵌合部分において、パイプ本体部862の内面と第1の絶縁パイプ62Aの外面とが接触している。また、第2の絶縁パイプ62Bの第2の端部62bは、パイプ本体部862の他端部862bに挿入されて嵌められている。両者の嵌合部分において、パイプ本体部862の内面と第2の絶縁パイプ62Bの外面とが接触している。また、パイプ本体部862の内径はアンテナ本体66の外径より大きく、それによって、アンテナ本体66は、パイプ本体部862内に空間を介して配置されている。
【0056】
一対の取付け部864は、パイプ本体部862の外面にパイプ本体部862と一体に形成されている。一対の取付け部864は板状体であり、板厚方向が方向Aと直交する方向に配置されている。一対の取付け部864の間隔は、一対の支持部88の間隔に実質的に等しく、一対の取付け部864は、パイプ本体部862を支持部88に取り付けるために用いられる。一対の取付け部864は、例えば、パイプ本体部862の両端部、つまり一端部862aおよび他端部862bにそれぞれ設けられている。一対の取付け部864のそれぞれには、取付け部864の厚さ方向に貫通する貫通孔864aが形成されている。取付け部864の材質の例は石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。なお、取付け部864と支持部88は、いずれも石英からなる場合、それらは溶接で取り付けてもよい。
【0057】
一対の支持部88は、支持部644,744と同様に、複数の絶縁パイプ62の連結部において絶縁パイプ62を真空容器10内に支持するための部分である。一対の支持部88は、方向Aにおける連結パイプ86の両端側、つまりパイプ本体部862の一端部862a及び他端部862bのそれぞれに対して設けられている。支持部88は、一端部882と、一端部882とは反対側に位置する他端部884とを有し、L字形状をなしている。支持部88の一端部882は、連結パイプ86の取付け部864に形成された貫通孔864aに挿入されており、それによって連結パイプ86に固定されている。一端部882の断面形状は、貫通孔864aの断面形状に合わせた形状とされる。
図5及び
図6に示した例では、貫通孔864a及び一端部882はいずれも円形の断面形状を有しているが、貫通孔864a及び一端部882の断面形状はこれに限定されるものではない。支持部88の他端部884は、バー14を介して天壁部12に固定されている。この固定の手法は、先に説明した支持部644,744の他端部644b,744bと天壁部12とを固定するための手法と同様であってよい。
【0058】
以上説明した連結部84によっても、先に説明した連結部64及び連結部74と同様にして複数の絶縁パイプ62を連結することができる。このため、連結部84によっても、連結部64と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、アンテナ60が長い場合でもその取扱いを容易とすることができる。また、アンテナ本体66が長くても絶縁パイプの撓みがより一層生じにくくなるようにすることができる。特に、
図5に示した形態では、一対の支持部88で連結パイプ86を支持しているので、連結パイプ86が絶縁パイプ62と同じ長さを有していても、上記撓みが生じ難い構成となっている。
【0059】
また、連結パイプ86のパイプ本体部862は、絶縁パイプ62の径よりも大きい径を有し得るので、アンテナ本体66の外表面からパイプ本体部862の外表面までの距離は、アンテナ本体66の外表面から絶縁パイプ62の外表面までの距離よりも長くなり得る。その結果、次に説明するような効果が得られる。
【0060】
プラズマ処理装置1(
図1)においては、方向Aにおけるアンテナ60の中央部分の方が、アンテナ60の両端部分よりもプラズマ36の密度(プラズマ密度)が大きくなる傾向がある。その理由を簡単に説明すると、中央部分には左右両側からプラズマが拡散して来るのに対して、両端部分は片側からしかプラズマが拡散して来ないからである。
【0061】
ここで、プラズマ密度は、アンテナ60のアンテナ本体66の外表面から、真空容器10内のガス34までの距離に依存し得る。この距離が短いほど、真空容器10内のガス34に供給される電力が大きくなるので、プラズマ密度は大きくなる。逆に、その距離が長いほど、真空容器10内のガス34に供給される電力が小さくなるので、プラズマ密度は小さくなる。
【0062】
すなわち、
図5に示した例では、連結パイプ86のパイプ本体部862においては、アンテナ本体66の外表面から真空容器10内のガス34まで(つまり絶縁パイプ62の外表面まで)の距離が、両側の絶縁パイプ62における距離よりも長いので、その分、プラズマ密度が抑制される。よって、第1の絶縁パイプ62A及び第2の絶縁パイプ62Bとの間に位置する、すなわち、方向Aにおけるアンテナ60の中央部分に位置する連結パイプ86のパイプ本体部862の径の大きさを適切に設定することで、方向Aにおけるプラズマ密度を均一に近づけることができる。連結パイプ86のパイプ本体部862の方向Aにおける長さは、方向Aにおけるプラズマ密度が均一に近づくような長さに設定され得る。
【0063】
図7は、プラズマ密度の分布を模式的に示す図である。
図7に示したグラフの縦軸はプラズマ密度を示す。
図7に示したグラフの横軸は、方向Aにおける位置を示しており、横軸における「中心」は、方向Aにおけるアンテナ60の中心の位置を示している。
【0064】
仮に、アンテナ本体66の外表面から真空容器10内のガス34までの距離が方向Aで一定であれば、
図7において破線で示したように、プラズマ密度は、方向Aにおいて両端から中央に向かうにつれて高くなり、中央部分においてピークを示す傾向がある。これに対し、
図5及び
図6に示した構成によれば、
図7において実線で示したように、中央部分のプラズマ密度が抑制されるので、プラズマ密度が均一な領域を大きくすることができる。その結果、方向Aにおいて、プラズマ密度を均一に近づけることができる。
【0065】
図8は、連結部の更に他の例の構成を示す図である。
図8に示した連結部74Aは、先に説明した連結部74(
図3及び
図4)と比較して、支持部744を有さない点において相違する。この場合でも、連結部74Aは、連結パイプ742を有しているので、方向Aにおいて隣接する絶縁パイプ62を連結することができる。
【0066】
ここで、連結部74Aは、複数の絶縁パイプ62の連結部分において絶縁パイプ62を真空容器10内に支持するための支持部744を有さないので、支持部744と同様の機能を実現するために、連結部74Aを採用する場合には、次に説明するスペーサ90が用いられてもよい。
【0067】
図8に示したように、スペーサ90は、アンテナ本体66と、第1の絶縁パイプ62A及び第2の絶縁パイプ62Bのうち連結パイプ742に挿入されている部分との間に設けられる。スペーサ90は絶縁性を有する絶縁スペーサであり、その材質は、例えば絶縁パイプ62の材質と同じであってもよい。スペーサ90は弾性を有するように作られていてもよい。
図8に示した例では、連結パイプ742の一端部742aとアンテナ本体66との間、及び、連結パイプ742の他端部742bとアンテナ本体66との間に、リング状のスペーサ90がそれぞれ設けられている。
【0068】
図8に示した構成によれば、スペーサ90がアンテナ本体66を起点として絶縁パイプ62を内側から連結パイプ742に押し付けて固定する。このように連結部74Aの連結パイプ742及びスペーサ90が絶縁パイプ62を挟み込むことによって、複数の絶縁パイプ62の連結部において絶縁パイプ62を真空容器10内に支持することができる。よって、アンテナ本体66が長くても絶縁パイプの撓みがより一層生じにくくなるようにすることができる。さらに、スペーサ90によって、絶縁パイプ62とアンテナ本体66との距離が一定に保たれるので、その距離がばらつくことによるプラズマ36の密度(プラズマ密度)のばらつきを抑制することもできる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、プラズマ処理装置が、基板20上に膜を形成する形態では、
図9に示すように、絶縁パイプ62の外周面上には、保護膜92が設けられていてもよい。保護膜92は、基板20に形成する膜の成分と同じ成分を含むことが好ましい。例えば、基板20にSi膜を形成する場合には、絶縁パイプ62の外表面上をSiでコーティングすることによって保護膜92を設けるとよい。
【0071】
図1に示したプラズマ処理装置1においては、基板20に膜を形成する際(成膜の際)に、プラズマ36によって絶縁パイプ62がスパッタされる可能性がある。絶縁パイプ62がスパッタされると、絶縁パイプ62に含まれる種々の成分が不純物として基板20に形成される膜に混入するおそれがある。これに対し、上述したように絶縁パイプ62に保護膜92を設けておけば、絶縁パイプ62に含まれる種々の成分が不純物として基板20に形成される膜に混入することを防ぐことができる。また、本実施形態に係るアンテナ60によれば、各絶縁パイプ62の長さが短いので、コーティングを容易に行うことができる。なお、連結部64についても、プラズマ36に晒される可能性のある部分については、絶縁パイプ62と同様に、その外表面上に保護膜を設けてもよい。
【0072】
更に、連結部を構成する連結パイプと絶縁パイプとの嵌めあわせ部分には、パッキンなどが設けられていてもよい。また、
図5に示した連結部84を採用する形態では、中央部の他の部分については、他の実施形態で説明した連結部を利用してもよい。なお、
図5では、一対の支持部88で連結パイプ86を支持する形態を例示して説明したが、一つの支持部88が連結パイプ86を支持する形態であってもよい。