特許第6561727号(P6561727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561727騒音低減装置及びそれを備えた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561727
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】騒音低減装置及びそれを備えた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   B60C5/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-189649(P2015-189649)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-65292(P2017-65292A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 雅公
(72)【発明者】
【氏名】丹野 篤
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−089683(JP,A)
【文献】 特開2006−224928(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/038656(WO,A1)
【文献】 特開2005−053319(JP,A)
【文献】 特開2006−306285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00− 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面に沿うように環状に成形された熱可塑性樹脂からなるバンド部材と、該バンド部材の内周面に対して接合された多孔質材料からなる吸音材とを有し、前記バンド部材の弾性復元力に基づいて前記吸音材をタイヤ内面に装着するようにした騒音低減装置において、前記吸音材と前記バンド部材との間であって少なくとも前記吸音材の周方向端部に対応する領域に配置された補強層を備え、該補強層の幅Wrと前記バンド部材の幅Wbと前記吸音材の幅Wuが1.1×Wb≦Wr≦0.8×Wuの関係を満足することを特徴とする騒音低減装置。
【請求項2】
前記補強層は引張弾性率が0.3GPa〜3.5GPaの範囲にある樹脂から構成され、前記補強層の厚さTrと幅Wrが0.008mm4≦WrTr3/12≦2.1mm4の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の騒音低減装置。
【請求項3】
前記吸音材の前記バンド部材に対する接合部が周方向に沿って不連続に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の騒音低減装置。
【請求項4】
前記補強層が前記バンド部材と同種の材料から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の騒音低減装置。
【請求項5】
前記補強層が前記吸音材に対して溶着された状態にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の騒音低減装置。
【請求項6】
前記補強層が前記バンド部材に対して溶着された状態にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の騒音低減装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の騒音低減装置を空洞部内に備えたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ内面に沿うように環状に成形された熱可塑性樹脂からなるバンド部材と、該バンド部材の内周面に対して接合された多孔質材料からなる吸音材とを有する騒音低減装置及びそれを備えた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、高速走行時における吸音材とバンド部材との擦れを抑制し、高速耐久性を改善することを可能にした騒音低減装置及びそれを備えた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいて、騒音を発生させる原因の一つにタイヤ内部に充填された空気の振動による空洞共鳴音がある。この空洞共鳴音は、タイヤを転動させたときにトレッド部が路面の凹凸によって振動し、トレッド部の振動がタイヤ内部の空気を振動させることによって生じるものである。
【0003】
このような空洞共鳴現象による騒音を低減する手法として、タイヤとホイールのリムとの間に形成される空洞部内に吸音材を配設することが提案されている。より具体的には、タイヤ内面に沿うように環状に形成された熱可塑性樹脂からなるバンド部材の内周面に対して多孔質材料からなる吸音材を接合した騒音低減装置を構成し、そのバンド部材の弾性復元力を利用してタイヤ内面のトレッド部に対応する領域に吸音材を設置することが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
しかしながら、上述した騒音低減装置においては、バンド部材の外周面と吸音材の外周面とがタイヤ径方向に段差を形成するため、高速走行時の遠心力により吸音材がタイヤ径方向外側に向かって撓むことにより、バンド部材のエッジ部においてバンド部材と吸音材とが互いに擦れることになる。このような擦れを吸音材が長期間にわたって反復的に受けることにより、吸音材が損傷し、場合によっては破断に至るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4175479号公報
【特許文献2】国際公開第2005/012007号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高速走行時における吸音材とバンド部材との擦れを抑制し、高速耐久性を改善することを可能にした騒音低減装置及びそれを備えた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するための本発明の騒音低減装置は、タイヤ内面に沿うように環状に成形された熱可塑性樹脂からなるバンド部材と、該バンド部材の内周面に対して接合された多孔質材料からなる吸音材とを有し、前記バンド部材の弾性復元力に基づいて前記吸音材をタイヤ内面に装着するようにした騒音低減装置において、前記吸音材と前記バンド部材との間であって少なくとも前記吸音材の周方向端部に対応する領域に配置された補強層を備え、該補強層の幅Wrと前記バンド部材の幅Wbと前記吸音材の幅Wuが1.1×Wb≦Wr≦0.8×Wuの関係を満足することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の空気入りタイヤは、上述した騒音低減装置を空洞部内に備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、タイヤ内面に沿うように環状に成形された熱可塑性樹脂からなるバンド部材と、該バンド部材の内周面に対して接合された多孔質材料からなる吸音材とを有し、バンド部材の弾性復元力に基づいて吸音材をタイヤ内面に装着するようにした騒音低減装置において、吸音材とバンド部材との間であって少なくとも吸音材の周方向端部に対応する領域に補強層を配設し、該補強層の幅Wrとバンド部材の幅Wbと吸音材の幅Wuが1.1×Wb≦Wr≦0.8×Wuの関係を満足するようにしたので、高速走行時の遠心力により吸音材がタイヤ径方向外側に向かって撓もうとする際に、少なくとも吸音材の周方向端部に対応する領域においてバンド部材と吸音材とが互いに擦れることを抑制し、吸音材に損傷や破断が生じることを長期間にわたって防止することができる。これにより、騒音低減装置の高速耐久性を改善することができる。また、補強層の幅Wrをバンド部材の幅Wbよりも大きくするものの吸音材の幅Wuよりも小さくするので、補強層がタイヤ内面に接触することによるタイヤ内面の損傷を回避することができる。
【0010】
本発明において、補強層は引張弾性率が0.3GPa〜3.5GPaの範囲にある樹脂から構成され、補強層の厚さTrと幅Wrが0.008mm4≦WrTr3/12≦2.1mm4の関係を満足することが好ましい。補強層の引張弾性率及び断面二次モーメント(WrTr3/12)を上記範囲に設定することにより、補強層が柔軟に変形しながら吸音材を支持するため、吸音材の損傷や破断を効果的に防止することができる。
【0011】
吸音材のバンド部材に対する接合部が周方向に沿って不連続に形成されていることが好ましい。吸音材のバンド部材に対する接合部が周方向に連続していて吸音材がバンド部材に対して一体化されていると、高速走行時にバンド部材に生じる遠心力が吸音材にも作用するため、遠心力による吸音材の撓みが助長されることになる。これに対して、吸音材のバンド部材に対する接合部を周方向に沿って不連続とした場合、遠心力による吸音材の撓みを抑制し、高速耐久性を更に改善することができる。
【0012】
補強層はバンド部材と同種の材料から構成されることが好ましい。これにより、補強層にバンド部材と同様の物性を付与し、反復的な撓みによる補強層の破断を抑制することができる。
【0013】
補強層は吸音材に対して溶着された状態にあることが好ましい。これにより、多孔質材料からなる吸音材と補強層との一体性が十分に確保されるので、吸音材の撓みを効果的に抑制し、高速耐久性を更に改善することができる。
【0014】
また、補強層はバンド部材に対して溶着された状態にあることが好ましい。これにより、補強層とバンド部材との一体性が十分に確保されるので、高速耐久性を更に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態からなる騒音低減装置を備えた空気入りタイヤを示す斜視断面図である。
図2】本発明の実施形態からなる騒音低減装置を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態からなる騒音低減装置におけるバンド部材、吸音材及び補強層を示す平面図である。
図4】バンド部材に対する吸音材及び補強層の接合方法を示し、(a)〜(c)は各工程の断面図である。
図5】本発明の実施形態からなる騒音低減装置をタイヤ内面に設置した状態を示す断面図である。
図6】本発明の他の実施形態からなる騒音低減装置をタイヤ内面に設置した状態を示す断面図である。
図7】本発明の更に他の実施形態からなる騒音低減装置を示し、(a)〜(d)は各騒音低減装置におけるバンド部材、吸音材及び補強層を示す平面図である。
図8】本発明の更に他の実施形態からなる騒音低減装置を示し、(a)〜(c)は各騒音低減装置におけるバンド部材、吸音材及び補強層を示す平面図である。
図9】本発明で使用される吸音材と補強層との接合構造を示す断面図である。
図10】従来の騒音低減装置をタイヤ内面に設置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、図2は本発明の実施形態からなる騒音低減装置を示し、図3は本発明の実施形態からなる騒音低減装置におけるバンド部材、吸音材及び補強層を示すものである。
【0017】
図1において、空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。そして、トレッド部1とサイドウォール部2とビード部3とで囲まれた空洞部4には図2に示すリング状の騒音低減装置10が装着されている。この騒音低減装置10はタイヤ内面5のトレッド部1に対応する領域に配置されている。
【0018】
騒音低減装置10は、熱可塑性樹脂からなるバンド部材11と、多孔質材料からなる複数個の吸音材12とを備えている。バンド部材11はタイヤ内面5に沿うように環状に成形され、吸音材12はバンド部材11の周方向に沿って互いに間隔をおいて該バンド部材11の内周面に対して接合されている。これら吸音材12は多数の内部セルを有し、その多孔質構造に基づく所定の吸音特性を有している。吸音材12の多孔質材料としては発泡ポリウレタンを用いると良い。バンド部材11は弾性復元力に基づいて吸音材12をタイヤ内面5に保持する。このように構成される騒音低減装置10は、通常の空気入りタイヤに対して着脱自在であり、その着脱作業が容易である。
【0019】
上記騒音低減装置10において、吸音材12とバンド部材11との間には熱可塑性樹脂からなるシート状の補強層13が挿入されている。補強層13は、少なくとも吸音材12の周方向端部に対応する領域に配置されている。また、図3に示すように、補強層13の幅Wrとバンド部材11の幅Wbと吸音材12の幅Wuは1.1×Wb≦Wr≦0.8×Wuの関係を満足するように設定されている。
【0020】
上記騒音低減装置10において、バンド部材11と吸音材12と補強層13の接合手段としては、熱可塑性樹脂製の係止部材14を用いた熱融着が採用されている。即ち、吸音材12及び補強層13は熱可塑性樹脂製のバンド部材11と熱可塑性樹脂製の係止部材14との間に配置され、係止部材14が吸音材12を通してバンド部材11及び補強層13に対して熱融着されている。バンド部材11の構成材料、補強層13の構成材料及び係止部材14の構成材料には、同種の熱可塑性樹脂、例えば、ポリプロピレンを用いると良い。これにより、上記熱融着による接合を容易に行うことができる。
【0021】
図4(a)〜(c)はバンド部材11に対する吸音材12及び補強層13の接合方法を示すものである。先ず、図4(a)に示すように、吸音材12及び補強層13をバンド部材11と板状の係止部材14との間に配置する。次に、図4(b)に示すように、超音波溶着機の加振ホーン20を係止部材14に押し付け、係止部材14を折り曲げた状態にし、その折り曲げられた部分を局部的に加熱する。これにより、図4(c)に示すように、吸音材12を通して係止部材14をバンド部材11及び補強材13を熱融着し、複数の係止部材14により各吸音材12をバンド部材11に対して接合する。係止部材14がバンド部材11に対して溶着した部位には接合部15が形成されている。バンド部材11と吸音材12と補強層13の接合方法としては、上述のような熱融着を用いることが好ましいが、その接合方法は特に限定されるものではなく、例えば、接着剤や両面テープや機械的係合手段を使用することも可能である。
【0022】
上述のようにバンド部材11の弾性復元力に基づいて吸音材12をタイヤ内面5に装着するようにした騒音低減装置10において、吸音材12とバンド部材11との間であって少なくとも吸音材12の周方向端部に対応する領域に補強層13を配設し、該補強層13の幅Wrとバンド部材11の幅Wbと吸音材12の幅Wuが1.1×Wb≦Wr≦0.8×Wuの関係を満足するようにしたので、高速走行時の遠心力により吸音材12がタイヤ径方向外側に向かって撓もうとする際に、図5に示すように、少なくとも吸音材12の周方向端部に対応する領域においてバンド部材11と吸音材12とが互いに擦れることを抑制することができる。特に、吸音材12は周方向端部を起点にして破断が生じる傾向があるが、このような部位に補強層13を配置することにより、吸音材12に損傷や破断が生じることを長期間にわたって防止することができる。これにより、騒音低減装置10の高速耐久性を改善することができる。なお、補強層13は吸音材12の周方向端辺から少なくとも接合部15を含む領域に配置することが望ましい。
【0023】
これに対して、従来の騒音低減装置(図10参照)のようにバンド部材11と吸音材12との間に補強層13を備えていない場合、高速走行時の遠心力により吸音材12がタイヤ径方向外側に向かって反復的に撓むことにより、バンド部材11と吸音材12とが互いに擦れ、その結果、バンド部材11のエッジ部において吸音材12に損傷や破断が生じることになる。
【0024】
また、本発明の実施形態からなる騒音低減装置10では、補強層13の幅Wrをバンド部材11の幅Wbよりも大きくするものの吸音材12の幅Wuよりも小さくするので、補強層13がタイヤ内面5に接触することによるタイヤ内面5の損傷を回避することができる。ここで、補強層の幅Wrがバンド部材の幅Wbの1.1倍よりも小さいと高速耐久性の改善効果が得られず、逆に吸音材の幅Wuの0.8倍よりも大きいと補強層13がタイヤ内面5に接触し易くなるためタイヤ内面5に損傷を生じ易くなる。なお、補強層13の幅Wr、バンド部材11の幅Wb及び吸音材12の幅Wuはいずれも最大幅である。
【0025】
騒音低減装置10において、補強層13は引張弾性率が0.3GPa〜3.5GPaの範囲にある樹脂から構成され、補強層13の厚さTrと幅Wrが0.008mm4≦WrTr3/12≦2.1mm4の関係を満足すると良い。補強層13の引張弾性率及び断面二次モーメント(WrTr3/12)を上記範囲に設定することにより、補強層13が柔軟に変形しながら吸音材12を支持するため、吸音材12の損傷や破断を効果的に防止することができる。ここで、補強層13の引張弾性率が0.3GPaよりも小さいと補強層13の撓みが大きくなるためタイヤ内面5を損傷し易くなり、逆に3.5GPaよりも大きいと補強層13が撓み難くなるため吸音材12に対する遠心力により補強層13にクラックを生じ易くなる。引張弾性率はASTM D638に準拠して測定されるものである。このような引張弾性率を有する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリアミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を挙げることができる。
【0026】
また、補強層13の断面二次モーメント(WrTr3/12)が0.008mm4よりも小さいと補強層13の撓みが大きくなるためタイヤ内面5を損傷し易くなり、逆に2.1mm4よりも大きいと補強層13が撓み難くなるため吸音材12に対する遠心力により補強層13にクラックを生じ易くなる。また、補強層13の厚さTrは0.5mm以下かつバンド部材11の厚さの50%以下であると良く、特に0.20mm〜0.50mmの範囲にあると良い。更に、補強層13の曲げ剛性は2.4N・mm2〜7350N・mm2の範囲にあると良い。
【0027】
騒音低減装置10において、図3に示すように、吸音材12はバンド部材11の周方向に離間した複数の接合部15においてバンド部材11に対して接合されている。このように吸音材12のバンド部材11に対する接合部15は周方向に沿って不連続に形成されていると良い。吸音材12のバンド部材11に対する接合部15が周方向に連続していて吸音材12がバンド部材11に対して一体化されていると、高速走行時にバンド部材11に生じる遠心力が吸音材12にも作用するため、遠心力による吸音材12の撓みが助長されることになる。これに対して、吸音材12のバンド部材11に対する接合部15を周方向に沿って不連続とした場合、遠心力による吸音材12の撓みを抑制し、高速耐久性を更に改善することができる。
【0028】
騒音低減装置10において、補強層13はバンド部材11と同種の材料から構成されていると良い。これにより、補強層13にバンド部材11と同様の物性を付与し、反復的な撓みによる補強層13の破断を抑制することができる。
【0029】
また、騒音低減装置10において、補強層13はバンド部材11に対して熱融着により接合されているが、このように補強層13はバンド部材11に対して溶着された状態にあると良い。これにより、補強層13とバンド部材11との一体性が十分に確保されるので、高速耐久性を更に改善することができる。
【0030】
図6は本発明の他の実施形態からなる騒音低減装置をタイヤ内面に設置した状態を示すものである。図6において、吸音材12とバンド部材11との間には2層の補強層13が挿入されている。特に、バンド部材11側の補強層13よりも吸音材12側の補強層13の方が幅広になっている。これにより、高速走行時の遠心力に対して吸音材12をしっかりと支持することができる。なお、補強層13の積層数や幅は必要に応じて変更することが可能である。
【0031】
図7(a)〜(d)はそれぞれ本発明の更に他の実施形態からなる騒音低減装置を示すものである。上述した図3の実施形態では、補強層13を吸音材12の周方向端部に対応する領域だけに配置した場合について説明したが、図7(a),(b),(d)においては、補強層13が吸音材12の周方向端部に対応する領域を含む全長にわたって配置されている。また、図7(c)では、補強層13が吸音材12の周方向端部に対応する領域だけに配置されているが、その平面視形状が円形になっている。図7(b),(c)に示すように、補強層13が吸音材12からはみ出していても良い。
【0032】
図8(a)〜(c)はそれぞれ本発明の更に他の実施形態からなる騒音低減装置を示すものである。図8(a)〜(c)において、補強層13はバンド部材11上で隣り合う一対の吸音材12に跨るように配置されている。この場合、遠心力による吸音材12の撓みを効果的に抑制することができる。
【0033】
図9は本発明で使用される吸音材と補強層との接合構造を示すものである。図9において、補強層13は吸音材12に対して溶着された状態になっている。つまり、補強層13はフレームラミネート処理に代表される熱ラミネート処理により表層が溶けた状態で吸音材12に対して積層されて接合されている。このような接合形態は多孔質材料からなる吸音材12と補強層13との一体性を高める上で有効である。
【0034】
なお、吸音材12に対する補強層13の接合形態は上記のような溶着に限定されるものではなく、接着剤や両面テープや機械的係合手段を用いることができる。また、スキン層を有する発泡ポリウレタンの場合、スキン層を補強層13とし、発泡ポリウレタンのスキン層以外の部分を吸音材12とすることも可能である。
【実施例】
【0035】
タイヤ内面に沿うように環状に成形された熱可塑性樹脂からなるバンド部材と、該バンド部材に対して接合された多孔質材料からなる吸音材とを有し、バンド部材の弾性復元力に基づいて吸音材をタイヤ内面に装着するようにした騒音低減装置において、吸音材とバンド部材との間であって少なくとも吸音材の周方向端部に対応する領域に補強層を配置し、該補強層の構成を種々異ならせた比較例1,2及び実施例1〜3の騒音低減装置を製作した。また、吸音材とバンド部材との間に補強層を備えていない従来例の騒音低減装置を用意した。これら騒音低減装置はタイヤサイズ245/50R18の空気入りタイヤに適合するものである。
【0036】
比較例1,2及び実施例1〜3において、バンド部材の幅Wbを30mmとし、吸音材の幅Wuを200mmとし、補強層の厚さTrを0.3mmとし、補強層の幅Wrを表1のように設定した。補強層の構成材料としては、引張弾性率が1.2GPaであるポリプロピレンを用いた。
【0037】
上述した従来例、比較例1,2及び実施例1〜3の騒音低減装置について、下記の評価方法により、高速耐久性、タイヤ内面の状態、補強層の状態を評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0038】
高速耐久性:
各騒音低減装置をタイヤサイズ245/50R18の空気入りタイヤの空洞部内に装着し、その空気入りタイヤをリムサイズ18×8Jのホイールに組み付け、室内ドラム試験機を用いて、空気圧200kPa、荷重6kN、速度180km/hの条件下で走行試験を実施し、吸音材に破断が生じるまでの走行距離を計測した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど高速耐久性が優れていることを意味する。
【0039】
タイヤ内面の状態:
上記高速耐久性試験を行った後、タイヤ内面の状態を調べた。評価結果は、タイヤ内面に損傷がない場合を「A」で示し、タイヤ内面に補強層の接触による損傷がある場合を「B」で示した。
【0040】
補強層の状態:
上記高速耐久性試験を行った後、補強層の状態を調べた。評価結果は、補強層に損傷がない場合を「A」で示し、補強層にクラック等の損傷がある場合を「B」で示した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、実施例1〜3の騒音低減装置は、従来例との対比において、高速耐久性が優れており、しかもタイヤ内面や補強層には損傷が認められなかった。これに対して、比較例1では、補強層の幅Wrが小さ過ぎるため高速耐久性の改善効果が不十分であった。比較例2では、補強層の幅Wrが大き過ぎるためタイヤ内面に損傷が認められた。
【0043】
次に、実施例1〜3と同様に、吸音材とバンド部材との間であって少なくとも吸音材の周方向端部に対応する領域に補強層を配置し、該補強層の構成を種々異ならせた実施例4〜8の騒音低減装置を製作した。実施例4〜8において、バンド部材の幅Wbを30mmとし、吸音材の幅Wuを200mmとし、補強層の厚さTrと幅Wrを変化させることで補強層の断面二次モーメント(WrTr3/12)を表2のように設定した。但し、補強層の幅Wrは1.1×Wb≦Wr≦0.8×Wuの関係を満足するものとした。
【0044】
これら実施例4〜8の騒音低減装置について、上述の評価方法により、高速耐久性、タイヤ内面の状態、補強層の状態を評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示すように、実施例4〜8の騒音低減装置は、従来例との対比において、高速耐久性が優れており、しかもタイヤ内面や補強層には損傷が認められなかった。
【符号の説明】
【0047】
1 トレッド部
2 ビード部
3 サイドウォール部
4 空洞部
5 タイヤ内面
10 騒音低減装置
11 バンド部材
12 吸音材
13 補強層
14 係止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10