(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記錠止手段は、前記延長レールの固定レール側端部に第2係合部を備え、前記固定レールの延長レール側端部に第3被係合部を備え、前記ガイドレールの延長姿勢時に、前記第2係合部と前記第3被係合部を係合して錠止することを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
前記連結部材は、一端を、前記延長レールと前記移動散布器のアクチュエーターに連結されたハーネスの延長レールにおける連結部分よりも前記固定レール側に連結し、他端を、前記固定レールの延長レール側端部に連結したことを特徴とする請求項4に記載の苗移植機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先行技術文献2に記載の発明のように、苗載せ台を折り畳むために、薬剤供給装置自体を取り外す構成によれば、作業能率が低下する問題があった。
また、先行技術文献3に記載の発明のように、苗載せ台の左右に薬剤供給装置を配設する構成によれば、部品点数が増加し苗移植機全体の製造コストが増加する問題があった。
上記の問題を解決するため、本発明は、薬剤供給装置のガイドレールを折り畳めるように構成することで、薬剤供給装置を取り外すことなく苗載せ台を折り畳めるようにし、上記従来の問題点を解決するようにした苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、
請求項1の発明は、 走行車体の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付部を備え、
前記苗植付部は、左右方向で折り畳み可能に構成された苗載せ台と、前記苗載せ台上に薬剤を散布する薬剤供給装置とを備え、
前記薬剤供給装置は、前記苗載せ台の左右方向に沿って配設されるガイドレールと、前記ガイドレール上を往復移動する移動散布器を備える苗移植機であって、
前記ガイドレールは、水平姿勢で前記苗載せ台に固定される固定レールと、前記固定レールの長手方向に配設された延長レールと、前記固定レールに前記延長レールを回動可能に連結する回動リンク機構を備え、
前記回動リンク機構は、前記固定レールと前記延長レールが水平に並ぶ延長姿勢と、前記延長レールが前記固定レールの上方側に位置する折り畳み姿勢とに前記ガイドレールの姿勢を切り替える姿勢切替手段
と、
前記固定レールの長手方向にスライド可能に取り付けられるスライド部材と、一端が前記スライド部材に、他端が前記延長レールにそれぞれ回動自在に連結されたリンクアームとを備え、
前記姿勢切替手段は、前記延長姿勢時には、前記固定レールと前記延長レールの互いの端同士を接近させて前記延長レールを固定し、折り畳み姿勢への切り替え時には、前記延長レールを長手方向にスライドして互いの端同士を離間させて前記延長レールを回動可能と
し、
前記ガイドレールは、その姿勢を錠止により固定する錠止手段を備え、
前記錠止手段は、前記スライド部材に第1係合部を備え、前記リンクアームに第1被係合部及び第2被係合部を備え、前記ガイドレールの延長姿勢時は、前記第1係合部と前記第1被係合部を係合して錠止し、前記ガイドレールの折り畳み姿勢時においては、前記第1係合部と前記第2被係合部を係合して錠止することを特徴とする苗移植機を提供する。
【0007】
請求項
2の発明は、請求項
1に記載の発明において、
前記錠止手段は、前記延長レールの固定レール側端部に第2係合部を備え、前記固定レールの延長レール側端部に第3被係合部を備え、前記ガイドレールの延長姿勢時に、前記第2係合部と前記第3被係合部を係合して錠止することを特徴とする苗移植機を提供する。
【0008】
請求項
3の発明は、請求項1
または請求項2に記載の発明において、
前記ガイドレールは、前記移動散布器の移動を案内するガイドチェーンを備え、前記ガイドチェーンは、前記固定レールと前記延長レールの互いに対向する端部で分割されて前記ガイドレール上に敷設されるとともに、前記移動散布器の駆動用スプロケットと噛合するよう一定間隔で配設された連結ピンを備え、前記連結ピンは、前記ガイドレールの延長姿勢時において、前記固定レールに敷設された前記ガイドチェーンの延長レール側の最端部に位置する連結ピンと、前記延長レールに敷設された前記ガイドチェーンの固定レール側の最端部に位置する連結ピンとの間隔が、他の連結ピンと等間隔となるよう配設されたことを特徴とする苗移植機を提供する。
【0009】
請求項
4の発明は、請求項1から
3のいずれか1項に記載の発明において、
前記ガイドレールは、前記延長レールと前記固定レールを連結する可撓性の連結部材を備えることを特徴とする苗移植機を提供する。
【0010】
請求項
5の発明は、請求項
4に記載の発明において、
前記連結部材は、一端を、前記延長レールと前記移動散布器のアクチュエーターに連結されたハーネスの延長レールにおける連結部分よりも前記固定レール側に連結し、他端を、前記固定レールの延長レール側端部に連結したことを特徴とする苗移植機を提供する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、回動リンク機構が、前記固定レールと前記延長レールとが水平に並ぶ延長姿勢と、前記延長レールが前記固定レールの上方側に位置する折り畳み姿勢とに前記ガイドレールの姿勢を切り替える姿勢切替手段を備えるため、ガイドレールを折り畳み姿勢に切り替えることにより薬剤供給装置の左右方向の幅が縮小される。これにより、苗載せ台を折り畳むために、薬剤供給装置自体を取り外す必要がない。その結果、作業能率が向上する。
更に、姿勢切替手段は、前記延長姿勢時には、前記固定レールと前記延長レールの互いの端同士を接近して前記延長レールを固定し、折り畳み姿勢への切り替え時には、前記延長レールを長手方向にスライドして互いの端同士を離間して前記延長レールを回動可能とする。この構成によれば、延長レールを長手方向にスライドする簡単な操作によって、迅速かつ容易に延長レールが固定された状態と回動可能な状態を切り替えることができるため、ガイドレールの姿勢の切り替え時における作業性が向上する。
【0012】
加えて、延長レールを固定状態とすることで、走行車体の振動によって意図せず延長レールが回動することを防止できる。これにより、移動散布器がガイドレール上をスムーズに移動できるため、薬剤の供給が安定する。
【0013】
さらに、請求項
1の発明によれば、ガイドレールは、その姿勢を錠止により固定する錠止手段を備える。この構成によれば、ガイドレールの延長姿勢及び折り畳み姿勢を錠止によって強固に維持することができる。これにより、足場の悪い圃場の走行によって、走行車体が激しく振動したとしても、延長レールの回動が防止されて、ガイドレールの延長姿勢及び折り畳み姿勢が維持される。その結果、走行車体の振動により意図しないガイドレールの姿勢変更が生じる事態が防止されて、利便性が高まる。更に、ガイドレールの延長姿勢時においては、姿勢が安定することにより移動散布器がガイドレール上をよりスムーズに移動できるため、薬剤の供給が安定する。
加えて、前記回動リンク機構は、固定レールの長手方向にスライド可能に取り付けられるスライド部材と、一端がスライド部材に、他端が延長レールにそれぞれ回動自在に連結されたリンクアームとを備え、
錠止手段は、前記スライド部材に第1係合部を備え、リンクアームに第1被係合部及び第2被係合部を備え、ガイドレールの延長姿勢時は、第1係合部と第1被係合部を係合して錠止し、ガイドレールの折り畳み姿勢時においては、第1係合部と第2被係合部を係合して錠止する。この構成によれば、スライド部材に設けた第1係合部に対して、ガイドレールの延長姿勢時には第1被係合部が、折り畳み姿勢時に第2被係合部が係合して錠止可能とするようにしたため、延長姿勢時と折り畳み姿勢時の錠止において共通して第1係合部を使用できる。これにより、部品点数の増加を抑え、製造コストを低減することができる。加えて、錠止に係る作業性も向上する。
【0014】
請求項
2の発明によれば、前記錠止手段は、前記延長レールの固定レール側端部に第2係合部を備え、前記固定レールの延長レール側端部に第3被係合部を備え、前記ガイドレールの延長姿勢時に、前記第2係合部と前記第3被係合部を係合して錠止する。この構成によれば、ガイドレールの延長姿勢時における第1係合部と第1被係合部の係合による錠止が外れることがあっても、第2係合部と第3被係合部の係合による錠止により、ガイドレールの延長姿勢が維持される。これにより、ガイドレールの延長姿勢を二重に錠止できるため、ガイドレールの延長姿勢の維持がより強固なものとなる。その結果、移動散布器による薬剤の供給が更に安定する。
また、延長レールは長手方向にスライド可能に構成されるため、走行車体の振動により、延長レールが意図せずスライドする事態が懸念される。そこで、固定レールの延長レール側端部に第2係合部を備え、延長レールの固定レール側端部に第3被係合部を備える構成によって、互いの端同士が錠止されて、延長姿勢時における延長レールの意図しないスライドを強固に防止できるため、利便性が向上する。
【0015】
請求項
3の発明によれば、
移動散布器の駆動用スプロケットと噛合する連結ピンが、前記ガイドレールの延長姿勢時において、前記固定レールに敷設された前記ガイドチェーンの延長レール側の最端部に位置する連結ピンと、前記延長レールに敷設された前記ガイドチェーンの固定レール側の最端部に位置する連結ピンとの間隔が、他の連結ピンと等間隔となるよう配設される。
この構成によれば、延長レールを回動するため前記固定レールと前記延長レールの互いに対向する端部で分割されて前記ガイドレール上に敷設した場合において、ガイドチェーンが分割された部分においても連結ピンが等間隔に配設されるから、移動散布器の駆動用スプロケットがスムーズに噛合して移動できる。これにより、移動散布器による薬剤の供給が安定する。
【0016】
請求項
4の発明によれば、延長レールと固定レールを可撓性の連結部材で連結したことを特徴とする。すると、メンテナンス等により延長レールを取り外しても、連結部材により、固定レールと延長レールが連結されているため、落下による破損や紛失を防止できる。また、連結部材を可撓性のものとすることで、必要時に延長レールを取り外し易く、作業性が向上する。
【0017】
請求項
5の発明によれば、前記連結部材の、一端を、前記延長レールと前記移動散布器のアクチュエーターに連結されたハーネスの延長レールにおける連結部分よりも前記固定レール側に連結し、他端を、前記固定レールの延長レール側端部に連結する。この構成によれば、延長レールを固定レールから取り外した際に、移動散布器に電源供給するガイドレール上に配策されたハーネスが張り状態となりにくいように連結部材の長さを定めることが容易となる。これにより、連結部材がハーネスの引っ張りによる断線を防止しやすくなり、その結果、ハーネスの断線による薬剤供給装置の故障が防止される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明における実施の形態の苗移植機100の左側面図である。走行車体101を備える乗用型の8条植えの苗移植機100の側面視における状態が図示されている。なお、
図1においては、薬剤供給装置500が省略的に図示されている。
【0020】
本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席102からみて、走行車体101の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
【0021】
苗移植機100は、走行車体101の後側に昇降リンク機構103を介して苗植付部104が装着される。
【0022】
走行車体101は、駆動輪である左右一対の前輪105及び左右一対の後輪106を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース107が配置される。
そのミッションケース107の左右側方に前輪ファイナルケース108が設けられ、該左右前輪ファイナルケース108の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪105が各々取り付けられている。
【0023】
ミッションケース107の背面部にメインフレーム109の前端部が固着される。
そのメインフレーム109の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース110がローリング自在に支持される。
その後輪ギヤケース110から外向きに突出する後輪車軸に後輪106が取り付けられている。
【0024】
エンジン111は、メインフレーム109の上に搭載される。エンジン111の回転動力が、ベルト伝動装置112及びHST113を介してミッションケース107に伝達される。
【0025】
ミッションケース107に伝達された回転動力は、ミッションケース107内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース108に伝達されて前輪105を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース110に伝達されて後輪106を駆動する。
【0026】
又、外部取出動力は、走行車体101の後部に設けた植付クラッチケース114に伝達され、それから植付伝動軸によって苗植付部104へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置115へ伝動される。
【0027】
施肥装置115は、肥料タンク116に貯留されている粒状の肥料を繰出部117によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース118でセンターフロート119及びサイドフロート120の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込む構成となっている。
【0028】
エンジン111の上部はエンジンカバー121で覆われており、その上に運転席102が設置されている。
運転席102の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー122があり、その上方に前輪105を操向操作する操縦ハンドル123が設けられている。エンジンカバー121及びフロントカバー122の下端左右両側は水平状のフロアステップ124になっている。
【0029】
昇降リンク機構103は平行リンク構成であって、1本の上リンクと左右一対の下リンクを備えている。上リンク及び下リンクは、それらの基部側がメインフレーム109の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレームに回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンクが連結されている。
そして、縦リンクの下端部に、苗植付部104に回転自在に支承された連結軸が挿入連結され、連結軸を中心として苗植付部104がローリング自在に連結されている。
【0030】
苗植付部104は、8条植えの構成で、フレームを兼ねる植付伝動ケース125、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口に供給すると苗送りベルト126により苗を下方に移送する苗載せ台200、苗取出口に供給された苗を苗植付具127によって圃場に植え付ける苗植付装置132等を備えている。
【0031】
植付伝動ケース125の後部は、4つに分岐しており、分岐したそれぞれの後端部に植付駆動軸が回転自在に支承される。この植付駆動軸の左右突出部にロータリーケース128の中央部が一体回転する構成で固定して取り付けられている。
【0032】
更にロータリーケース128の両端部に植付回動軸を回転自在に支承し、これらの2つの植付回動軸のそれぞれに苗植付具127が取り付けられる。
【0033】
苗植付部104の下部には中央にセンターフロート119、その左右両側にサイドフロート120がそれぞれ設けられている。これらを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装部104により苗が植え付けられる。
【0034】
また、苗載せ台200は、苗植付部104の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体129の支持ローラ130を利用してレール上を左右方向にスライドする構成である。また、走行車体101の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗枠131が設けられている。
【0035】
次に、
図2を参照しながら、薬剤供給装置500の構成および動作について具体的に説明する。
図2は本発明における実施の形態の苗移植機100の苗載せ台200近傍の背面図である。苗載せ台200は、左右両端の幅wで示した2条分が折り畳み可能に構成されている。苗載せ台200の上方に配設される薬剤供給装置500は、薬剤を散布する移動式の移動散布器201と、移動散布器移動機構202と、移動散布器201を支持するとともに移動を案内する薬剤供給装置支持部203とからなる。薬剤供給装置支持部203は、移動散布器201の移動を案内する長尺のガイドレール300と、ガイドレール300及び苗載せ台200に連結されて、ガイドレール300を苗載せ台200上で固定するステー205とからなる。
【0036】
移動散布器201は、移動散布器移動機構202によって、苗載せ台200に取付けられた薬剤供給装置支持部203の上で左右に往復移動しながら、苗載せ台200上の苗に薬剤を供給する。
【0037】
薬剤供給装置支持部203の左右中央位置Cは、移動散布器201の左右方向における移動幅の左右中央位置である。左右方向における移動散布器202の移動量は、図示しない薬剤供給装置移動センサーによって検出される。薬剤供給装置移動センサーは、例えば、移動散布器201を移動させるアクチュエーター505のモーター作動時間を検出するタイマー、またはアクチュエーター505のモーター回転数を検出する回転センサーである。移動散布器201の左右方向における移動距離は、苗載せ台200の左右方向における幅D程度である。
【0038】
本実施の形態においては、移動散布器移動機構202は、薬剤供給装置移動センサーによって検出した移動散布器201の移動量を基に、薬剤供給装置支持部203の左端部203Lから右端部203Rの間の位置まで、移動散布器201が左右に往復移動するように薬剤供給装置500のアクチュエーター505を駆動制御する。これにより、移動散布器201は薬剤供給装置支持部203の上を移動する。
【0039】
ここで、
図3を参照し、薬剤供給装置支持部203が備えているガイドレール300の構成について、詳述する。苗載せ台200の左右両側にガイドレール300を支持するためのステー205が設けられる。固定レール301は、その両端がステー205に固定され、苗載せ台200の上方に水平姿勢で支持される。固定レール301の両端には、延長レール302が、回動リンク機構303を介して、固定レール301の長手方向に水平かつ一直線上に並ぶように連結される。
【0040】
回動リンク機構303は、固定レール301に延長レール302を回動可能に連結し、ガイドレール300の姿勢を切り替える後述する姿勢切替手段304を備えている。なお、姿勢切替手段304は、延長レール302を水平に保ちながら、延長レール302の長手方向へのスライド及び上方への回動を可能とするものである。これにより、ガイドレール300は、固定レール301と延長レール302が互いの端同士を密着して水平に並ぶ延長姿勢と、延長レール302を固定レール301の上方に回動した折り畳み姿勢とに、切替え可能に構成される。
図3はガイドレール300の延長姿勢を、
図4は折り畳み姿勢を示している。
【0041】
姿勢切替手段304により、薬剤供給装置500の使用時においては、固定レール301に延長レール302を水平に並べるようにしてガイドレール300を延長姿勢とすることで、薬剤供給装置500の左右方向の幅を延長して移動散布器201の可動領域を広げることができる。そして、薬剤供給装置500の不使用時においては、固定レール301の上方に延長レール302を回動することでガイドレール300を折り畳み姿勢として、薬剤供給装置500の左右方向の幅を縮小できる。これにより、薬剤供給装置500を取り外すことなく苗載せ台200の折り畳みが可能となる。その結果、作業性が向上する。
【0042】
固定レール301と延長レール302を連結する回動リンク機構303及び姿勢切替手段304について、以下説明する。回動リンク機構303は、固定レール301の長手方向にスライド可能に取り付けられるスライド部材305と、スライド部材305に連結され、延長レール302を回動可能に支持するリンクアーム306を備えている。
【0043】
スライド部材305は、略方形状のプレートであり、プレート上端の取付け部分にスライド方向を案内するための、固定レール301の長手方向に横長のスリット孔308が設けてあり、スリット孔308にボルト等を挿通して固定レール301の両端の下部に取付ける。この構成により、スライド部材305は、固定レール301の長手方向へスライド可能となるため、スライド部材305とリンクアーム306を介して連結された延長レール302も同様に固定レール301の長手方向へスライド可能となる。このように、延長レール302をスライド可能とした構成によって、固定レール301と延長レール302の端同士が接近して密着した状態と、離間した状態を切換えることができる。これにより、固定レール301と延長レール302の端同士を接近すれば、延長レール302の回動を規制して固定することができる。更に、端同士を密着すれば固定状態を維持しやすく好適である。そして、固定レール301と延長レール302の端同士を離間すれば、延長レール302と固定レール301の端同士が干渉せずに回動できるようになり、延長レール302の回動の規制状態が解除され、延長レール302が回動可能となる。この構成により、作業者は、姿勢切替手段304により延長レール302をスライドすることで、延長レール302の回動可能な状態と、回動を規制した固定状態とを容易に切り替えることできるため、利便性が高い。
【0044】
延長レール302を回動可能とするリンクアーム306の構成について、以下詳述する。
リンクアーム306は、一端がスライド部材305に、他端が延長レール302に、それぞれ回動自在に連結される。詳細には、リンクアーム306は平行リンクである2本のリンクアーム306a、306bによって構成される。そして、スライド部材305に、平行リンクである第1リンクアーム306aと第2リンクアーム306bの一端を連結する。このように、リンクアーム306を平行リンクの構成とすることで、延長レール302を水平に保ちながら安定して回動できる。更に、第1リンクアーム306aと第2リンクアーム306bのスライド部材との連結位置は、上下にずらして設ける。具体的には、第2リンクアーム306bの連結位置を第1リンクアーム306aの連結位置よりやや上方かつ右側に設ける。このように、上下左右にずらして設けることで、ガイドレール300の姿勢切り替えにおいて、第1リンクアーム306aと第2リンクアーム306bが干渉し合うことなく延長レール302を水平に保ちながら安定した回動が実現できる。その結果、作業性が向上する。更に、延長レール302を水平姿勢に保ちやすいことから移動散布器201が安定して薬剤を供給できる。
【0045】
更に、延長レール302の下端には、上下方向に長さの異なる第1連結プレート309aと第2連結プレート309bを設けて連結部分の高さ調節をする。詳細には、第1連結プレート309aと第1リンクアーム306aを、第1連結プレート309aよりやや短く設けた第2連結プレート309bと第2リンクアーム306bをそれぞれ回動自在に連結する。このとき、第1連結プレート309aと第2連結プレート309bは、ガイドレール300の延長姿勢時において、第1リンクアーム306aと第2リンクアーム306bが水平となるように上下方向に長さに差異を設ける。このように構成すれば、ガイドレール300の延長姿勢時において、第1リンクアーム306aと第2リンクアーム306bを水平にでき、後述する錠止手段311によってリンクアーム306を錠止するのに好適である。その結果、ガイドレール300の強度及び作業性が向上する。
【0046】
次に、ガイドレール300の延長姿勢と折り畳み姿勢の切り替え手順について具体的に説明する。ガイドレール300の延長姿勢においては、固定レール301と延長レール302は、水平かつ同一直線上に位置しており、固定レール301と延長レール302の端同士は密着して延長レール302の回動が規制され、延長レール302は固定されている状態である。
図3は、ガイドレール300の延長姿勢を示しており、延長姿勢から折り畳み姿勢への切り替えにおいては、まず、スライド部材305を、ガイドレール300の長手方向にスライドして、固定レール301と延長レール302を離間する。これにより、延長レール302が回動できるようになるため、延長レール302を固定レール301の上方に回動する。なお、延長レール302が回動する距離は、リンクアーム306の長さによって調節することが可能である。
【0047】
上記の構成に加え、更に好適な実施形態として、スライド部材305には、固定レール302の上方の位置で第2リンクアーム306bを係止して延長レール301を固定するリンクアーム係止片310をスライド部材305に設ける。これにより、
図4で示されるように、ガイドレール300の折り畳み姿勢時において、延長レール302は、リンクアーム係止片310によって、固定レール301の上方で係止される。これにより、ガイドレール300の折り畳み姿勢を容易に維持できる。加えて、延長レール302の係止位置が定まることによって、延長レール302の回動時に固定レール301との衝突を防止でき、利便性が高まる。更に、リンクアーム306が係止されることにより、後述する錠止手段311により、リンクアーム306を錠止しやすい。
【0048】
以上の構成により、ガイドレール300の左右方向の幅の縮小が可能となる。これにより、薬剤供給装置500の左右方向の幅が縮小可能となる。その結果、薬剤供給装置500を取り外さずとも、苗載せ台200を折り畳むことができる。その結果、例えば、
図2においては、苗載せ台200は、幅wで示した2条分を折り畳むことが可能となる。
【0049】
次に、ガイドレール300を錠止する錠止手段311について説明する。苗移植機100が圃場を走行するとき、走行車体101の振動によりガイドレール300も振動する。したがって、ガイドレール300の延長姿勢時及び折り畳み姿勢時は、振動によって延長レール302が意図せず回動することのないよう錠止すれば、ガイドレール300の強度が増し、利便性が高まる。そこで、回動リンク機構303に、リンクアーム306を錠止によって固定する錠止手段311を設けることで、延長レール302が意図せず回動することを防止でき、移動散布器201の安定した薬剤供給が実現できる。錠止手段311の具体的な構成は以下のようである。
【0050】
錠止手段311は、スライド部材305に設けた第1係合部307aと、前記リンクアーム306に設けた第1被係合部307b
1または第2被係合部307b
2とが係合して錠止する。このとき、ガイドレール302の延長姿勢時には、
図3に示されるように、第1係合部307aと第1被係合部307b
1が、折り畳み姿勢時には、
図4に示されるように、第1係合部307aと第2被係合部307b
2とが係合して錠止する構成とする。これにより、延長姿勢時と折り畳み姿勢時の錠止において、共通して第1係合部307aを使用するため、部品点数の増加を抑えることができ、製造コストを低減できる。更に、錠止に係る作業性も向上する。
【0051】
第1係合部307aは、
図3に示されるように、スライド部材305と第1リンクアーム306aの連結位置の右隣に設け、かつ、ガイドレール300の延長姿勢において、水平となった第2リンクアーム306bの下方に設ける構成が錠止しやすく好適である。
図3のように、第1被係合部307b
1は第2リンクアーム306bに、第2被係合部307b
2は第1リンクアーム306aに設ける。
【0052】
ガイドレール300の折り畳み姿勢を示す
図4では、リンクアーム306がリンクアーム係止片310により係止され、延長レール302が固定レール301の上方で固定されている。このとき、リンクアーム306がリンクアーム係止片310で係止される位置で、第1係合部307aと第2被係合部307b
2が係合するよう、第1リンクアーム上306a上の第2被係合部307b
2の位置を決定すれば、係合時の位置調節が容易となり、作業性がさらに向上する。
【0053】
このようにして、錠止手段311により、ガイドレール300の延長姿勢時及び折り畳み姿勢時において、リンクアーム306の錠止によって、延長レール301を強固に固定して回動を防止することにより、ガイドレール300の強度が増す。これにより、走行車体101が振動しても、ガイドレール300の延長姿勢及び折り畳み姿勢が強固に維持されるため、利便性が良く、移動散布器201による薬剤の供給が安定する。そして、2つの係合部である第1被係合部307b
1または第2被係合部307b
2に対し、1つの第1係合部307aで錠止可能であるため、部品点数の増加を抑えることができる。よって、製造コスト面で優れる。
【0054】
ここで、ガイドレール300の延長姿勢時においては、ガイドレール300上を移動散布器201が往復移動することから、固定レール301と延長レール302の間に隙間が生じると、移動散布器201のスムーズな移動が妨げられる。また、スライド部材305がスライド可能に構成されているため、走行車体101が左右方向に振動すると、固定レール301と延長レール302の間に隙間が生じやすい。そこで、錠止手段311は、延長レール302の固定レール301側端部に第2係合部312aを設け、前記固定レール301の延長レール302側端部に第3被係合部312bを設け、前記ガイドレールの延長姿勢時に、前記第2係合部312aと前記第3被係合部312bを係合して錠止する構成とする。これにより、ガイドレール300の延長姿勢時において、固定レール301と延長レール302の端同士を密着した状態で錠止することで、端同士の隙間が生じることを防止できる。その結果、移動散布器201がガイドレール300上をよりスムーズかつ安定して移動できる。
【0055】
次に、
図5を参照し、移動散布器201の構成について説明する。
移動散布器201は、アクチュエーター505の駆動によって回転する駆動スプロケット502を備えている。また、ガイドレール300上には、ガイドチェーン501が敷設されている。駆動スプロケット502は、スプロケットギヤ504と同軸であり、ケース状のガイドレール300の上に敷設されているガイドチェーン501と噛み合っている。アクチュエーターギヤ503は、スプロケットギヤ504と噛み合っており、コード状のアクチュエーター配線ハーネス206からの電源供給を利用して駆動するアクチュエーター505によって回転する構成である。これにより、アクチュエーター505が駆動すると、駆動スプロケット502が回転し、移動散布器201が、ガイドチェーン501上を移動する。
そして、移動散布器201がガイドレール300の端まで到達すると、移動散布器移動機構202は、移動散布器201の移動方向を折り返して駆動するようにアクチュエーター505を制御する。このようにして、移動散布器201は、左右に往復移動する。同時に、薬剤落下経路506から薬剤貯留ホッパー507中の薬剤を苗載せ台200上の苗に散布する。
【0056】
次に、
図6を参照し、ガイドチェーン501の構成について以下詳述する。
ガイドチェーン501は、延長レール302の回動を妨げないよう、固定レール301と延長レール302の互いに対向する端部X上で分割されてガイドレール上に敷設される。ガイドチェーン501には、駆動スプロケット502が噛合する連結ピン508が一定間隔で配設されている。連結ピン508が一定間隔に設けられていることにより、回転する駆動スプロケット502との噛合がスムーズとなり、移動散布器201の移動が安定する。
【0057】
ガイドチェーン501を端部X上で分割すると、分割した部分に隙間が生じて、駆動用スプロケット502とガイドチェーン501の連結ピン508がスムーズに噛合せず、移動散布装置201のスムーズな移動が妨げられる。そこで、固定レール301に敷設されたガイドチェーン501の延長レール302側の最端部に位置する連結ピン508aと、延長レール302に敷設されたガイドチェーン501の固定レール301側の最端部に位置する連結ピン508bとの間隔が、ガイドレール300の延長姿勢時において他の連結ピン508と等間隔となるようガイドチェーン501を敷設する。
【0058】
この構成によれば、ガイドチェーン501を分割した端部Xの部分においても、連結ピン508同士の間隔が、他の連結ピン508と等間隔となるため、移動散布器201の駆動用スプロケット502の歯が連結ピン508とスムーズに噛合して、ガイドレール300上全体を移動散布器201がスムーズに移動できる。これにより、ガイドレール300を折り畳み可能としつつ、安定した薬剤供給が実現できる。
【0059】
また、固定レール301と延長レール302を可撓性の連結部材313で連結しておけば、延長レール302で取り外した際に、延長レール302を誤って落下しても、連結部材313によって、地面への衝突が防止される。また、取り外した延長レール302の紛失も防止される。連結部材313は、例えば、金属製の鎖等である。また、連結部材313を可撓性のものとすることにより、延長レール302の回動や、作業時の取り扱いを妨げにくく好適である。
【0060】
また、ガイドレール300上には、アクチュエーター505に駆動電力を供給するハーネス206が配策されるため、連結部材313の長さは、固定レール301から延長レール302を取り外した際に、ハーネス206の引っ張りが防止される長さとすることが望ましい。これにより、ハーネス206の引っ張りによる断線を防止することで、ハーネス206の断線による薬剤供給装置500の故障を防止しやすいためである。
【0061】
そこで、連結部材313は、一端を、延長レール302と移動散布器201のアクチュエーター505に連結されたハーネス206の延長レール302における連結部分より前記固定レール301側に連結し、他端を、前記固定レール301の延長レール302側端部に連結する。この構成により、移動散布器201に電源供給するガイドレール300上に配策されたハーネス206が張り状態とならないように連結部材313の長さを定めやすい。詳細には、連結部材313の一端を、延長レール302と移動散布器201のアクチュエーター505に連結されたハーネス206の延長レール302における連結部分より固定レール301側に連結することにより、延長レール302側において連結部材313をハーネス206より短く構成することが容易となる。更に、連結部材313の他端が、固定レール301の延長レール302側端部に連結されることにより、固定レール301側において、延長レール302が回動する距離に合わせて、連結部材313の長さを定めやすい。このようにして、連結部材313の両端の連結位置を定めることで、ガイドレール300上に配策されたハーネス206が張り状態とならないように連結部材313の長さを定めることが容易となる。このようにして、連結部材313の長さを定めることで、ハーネス206が張り状態とならないようにし、ハーネス206の引っ張りによる断線を防止できる。