(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561737
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】チャック
(51)【国際特許分類】
B23B 31/175 20060101AFI20190808BHJP
B23B 31/16 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
B23B31/175
B23B31/16 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-194291(P2015-194291)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-64856(P2017-64856A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】永翁 博
【審査官】
津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭51−118181(JP,A)
【文献】
特開2002−066855(JP,A)
【文献】
特開昭52−135567(JP,A)
【文献】
米国特許第03370859(US,A)
【文献】
特開平07−223103(JP,A)
【文献】
特開2009−285780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/175
B23B 31/16
B23B 31/12
B23B 31/00
B23B 5/22
B23Q 3/06
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心にドロー部材を進退動可能に設けたチャック本体と、
前記チャック本体にレバーピンを介してそれぞれ揺動可能に支持され、前記チャック本体内の基端が前記ドロー部材に係止し、前記チャック本体から突出する先端にチャック爪が取り付けられ、前記ドロー部材の進退動に応じて同調して揺動する複数の爪開閉部材と、を含んでなるチャックであって、
前記爪開閉部材における前記レバーピンより前記基端側で、且つ前記チャック本体の半径方向で前記レバーピンよりも外側と内側との少なくとも2箇所には、前記レバーピンと平行な2つの調整孔がそれぞれ貫通形成されると共に、前記外側の調整孔が前記内側の調整孔よりも大径に形成されて、各前記調整孔に、前記爪開閉部材より比重の高いウエイトが選択的に埋設可能であることを特徴とするチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械にワークを把持するために設けられるチャック、特に、ワークの把持をクランクレバー等の爪開閉部材によって行う揺動式のチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に設けられるチャックには、チャック本体の軸心に、駆動機構によって進退動するドロー部材を備えると共に、ドロー部材の外周側に、チャック本体との同心円の接線方向に設けられたレバーピンによって揺動可能に支持されるクランクレバーを配置して、クランクレバーに設けたレバー受動部をドロー部材に係止する一方、クランクレバーの前端にチャック爪を取り付けてなる構造が知られている(特許文献1参照)。この揺動式チャックでは、ドロー部材の進退動によってクランクレバーを同調して揺動させることで、チャック爪によるワークのクランプ及びアンクランプが可能となっている。
このような揺動式チャックにおいては、高速回転によりチャック爪に生じる遠心力でクランクレバーの把持力が低下する懸念がある。そこで、特許文献1には、クランクレバーにおけるレバーピンの後方部位に、錘部を形成することで、レバーピン回りに発生する把持(クランプ)方向のモーメントを増加させて、アンクランプ方向に発生するモーメントと釣り合うようにして把持力の低下を防止する工夫がなされている。また、ここには、加工するワークに対応したチャック爪への交換によるレバーピン回りに作用するモーメントの釣合の変化に対応するために、別体の錘部をボルトによって着脱可能に設けて、錘部の交換を可能とした構造も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−277910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように別体の錘部を用いれば、クランクレバーの汎用性を維持しつつレバーピン回りの釣合をとることができる。しかし、加工するワークの種類が多数あると、各ワークに対応した錘部を用意しなければならない。また、クランクレバーにおけるレバーピンの後方部位を、質量の大きな錘部に形成するためにチャック本体の全長を長くしたり外径を大きくしたりする必要があり、チャックが大型化してコストアップを招く上、このチャックを設ける工作機械の大きさに影響を与えるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、加工するワークに対応したチャック爪ごとに生じる遠心力による把持力の増減はウエイト調整によって対応できるのは勿論、チャック本体の全長や外径を最小限にできるチャックを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、軸心にドロー部材を進退動可能に設けたチャック本体と、チャック本体にレバーピンを介してそれぞれ揺動可能に支持され、チャック本体内の基端がドロー部材に係止し、チャック本体から突出する先端にチャック爪が取り付けられ、ドロー部材の進退動に応じて同調して揺動する複数の爪開閉部材と、を含んでなるチャックであって、
爪開閉部材におけるレバーピンより前記基端側
で、且つチャック本体の半径方向でレバーピンよりも外側と内側との少なくとも2箇所には、レバーピンと平行な2つの調整孔がそれぞれ貫通形成されると共に、外側の調整孔が内側の調整孔よりも大径に形成されて、各調整孔に、爪開閉部材より比重の高いウエイトが選択的に
埋設可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、爪開閉部材の調整部に取り付けるウエイトの選択により、爪開閉部材の後端側がチャック半径方向へ移動する力を発生させることができるので、加工するワークに対応したチャック爪ごとに生じる遠心力による把持力の増減に対応可能となり、ワークを適正な把持力でクランプすることができる。また、チャック本体の全長や外径を最小限にすることができる。
特に、チャック本体の半径方向でレバーピンよりも外側と内側との少なくとも2箇所に、レバーピンと平行な2つの調整孔をそれぞれ貫通形成されると共に、外側の調整孔を内側の調整孔よりも大径に形成しているので、ウエイトの選択の幅が広がり、爪開閉部材の後端側を移動させる力の調整が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】クランプレバーの変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、チャックの一例を示す正面図、
図2はそのA−A断面図である。このチャック1は、工作機械として例示する旋盤等の図示しない主軸に組み付けられる正面視円形状のチャック本体2を有している。チャック本体2の軸心には、軸孔3が前後方向(
図2の右側を前方とする。)に形成されて、軸孔3内に、ドロー部材としてのドロースリーブ4が設けられている。このドロースリーブ4は、主軸に設けた駆動機構によって進退動する図示しない入力部材に固定されて、入力部材と一体に進退動するもので、ドロースリーブ4の前方には、ワークWの端面を押し当てて位置決めするワークロケータ5が取り付けられている。
【0010】
また、軸孔3の外側でチャック本体2内には、チャック本体2との同心円の接線方向に沿った3つのレバーピン6,6・・が、チャック本体2の周方向に等間隔で設けられ、各レバーピン6に、中間部が貫通された爪開閉部材としてのクランプレバー7が、レバーピン6を中心に揺動可能に支持されている。このクランクレバー7の後方側の基端内側には、ドロースリーブ4の外周に設けた係止溝8に係止する係止部9が突設される一方、クランクレバー7の前端には、ボルト10で固定されるスイングベースジョー11を介してチャック爪としてのインサートジョー11aが固定されている。
【0011】
そして、クランクレバー7におけるレバーピン6よりも基端側には、レバーピン6と平行な調整部としての2つの調整孔12,13が貫通形成されている。この調整孔12,13は、チャック本体2の半径方向に沿って平行に並べられ、外側の調整孔12がチャック本体2の半径方向でレバーピン6よりも外側に位置し、内側の調整孔13が当該半径方向でレバーピン6よりも内側に位置して、調整孔12の方が調整孔13よりも大径となっている。
この調整孔12,13には、クランクレバー7よりも比重の高い材質(例えばタングステン等)からなるウエイト14,15が、軽圧入することで埋設できるようになっている。
【0012】
以上の如く構成されたチャック1は、ドロースリーブ4が後退すると、係止部9が係止する各クランクレバー7がレバーピン6を中心に
図2での時計回り方向に揺動し、インサートジョー11aをチャック本体2の軸心側へ移動させる。よって、当該軸心でのワークWのクランプが可能となる。逆に、ドロースリーブ4が前進すると、各クランプレバー7がレバーピン6を中心に
図2での反時計回り方向に揺動し、インサートジョー11aをチャック本体2の放射方向へ移動させる。よって、ワークWがアンクランプされる。
【0013】
そして、ワークWを把持したチャック1が回転すると、発生する遠心力によってクランクレバー7の把持力が低下する懸念があるが、ここでは各クランプレバー7の調整孔12,13に、予めウエイト14,15の一方又は両方を埋設しておけば、遠心力によってクランクレバー7の後端側をチャック半径方向へ移動させる力が生じる。すなわち、レバーピン6回りに発生する把持(クランプ)方向のモーメントを増加させて、アンクランプ方向に発生するモーメントと釣り合わせることができる。よって、遠心力による把持力の低下が防止される。
また、加工するワークが変わり、それに対応したインサートジョー11aに交換してモーメントのバランスが変化する際には、調整孔12,13に差し込むウエイト14,15の一方又は両方を抜き取ったり、比重が異なるものと交換したりすることで、バランスの変化に対応して調整することができる。
【0014】
このように、上記形態のチャック1によれば、クランクレバー7におけるレバーピン6より基端側に、調整孔12,13を形成して、調整孔12,13に、クランクレバー7より比重の高いウエイト14,15を選択的に埋設可能としているので、クランクレバー7の調整孔12,13に埋設するウエイト14,15の選択により、クランクレバー7の後端側がチャック半径方向へ移動する力を発生させることができる。よって、加工するワークWに対応したインサートジョー11aごとに生じる遠心力による把持力の増減に対応可能となり、ワークWを適正な把持力でクランプすることができる。また、チャック本体2の全長や外径を最小限にすることができる。
特にここでは、互いに異径の調整孔12,13を複数形成しているので、ウエイト14,15の選択の幅が広がり、クランクレバー7の後端側を移動させる力の調整が容易に行える。
【0015】
なお、調整孔の径や数は上記形態に限らず、互いに異径の調整孔を3つ以上形成することもできる。逆に調整孔を1つとしてもよい。また、調整部は貫通形成する調整孔に限定せず、ウエイトの抜き差しが可能であれば有底孔としてもよい。
一方、ウエイトも、必要な質量によっては中空のスリーブとしたり、当該スリーブの芯にさらに棒状やスリーブ状のウエイトを差込収容したり、軸方向に短いウエイトを採用したりすることも考えられる。
その他、チャックの他の構造も適宜変更可能で、爪開閉部材として球面でガイドされるスイングロックチャックを備えたスイングロックチャック等にも本発明は適用可能である。爪開閉部材の数も増減して差し支えない。
【0016】
そして、上記形態では、クランプレバーに直接調整孔を設けてウエイトを埋設するようにしているが、これに限らず、例えば
図3に示すように、クランプレバー7の後面に、レバーピン6と平行な調整孔17,17を有した別体のブロック16を、ボルト18等の固定手段によって取り付けるようにしてもよい。この場合もインサートジョー11aの交換等によってモーメントのバランスが変化する際には、調整孔17,17に差し込むウエイト19,19の交換で対応可能となる。また、ブロック16をチャック本体2の軸線方向に長く形成する必要がないので、無垢のウエイトでクランクレバー7の後端側をチャック半径方向へ移動させる場合と比較してチャック本体2の全長を短く収めることができる。さらに、既存のクランプレバーに対してもブロック16の後付けによってクランクレバー7の後端側を移動させる力の調整が簡単に可能となる上、調整孔の径や数が異なる複数のブロックを用意しておけば、より精度の高い調整が可能となる。勿論この変更例においても調整孔の径や数、ウエイトの構造は適宜変更可能であるし、固定手段もボルト以外に、例えばブロックをクランクレバーに直接ねじ込む構造等が考えられる。
【符号の説明】
【0017】
1・・チャック、2・・チャック本体、3・・軸孔、4・・ドロースリーブ、6・・レバーピン、7・・クランクレバー、9・・係止部、11・・スイングベースジョー、11a・・インサートジョー、12,13,17・・調整孔、14,15,19・・ウエイト、16・・ブロック、18・・ボルト。