特許第6561740号(P6561740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561740
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】無停電計器取替装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 11/00 20060101AFI20190808BHJP
   G01R 11/04 20060101ALI20190808BHJP
   G01R 22/06 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   G01R11/00 H
   G01R11/04 B
   G01R22/06 130H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-195698(P2015-195698)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2017-67671(P2017-67671A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】河上 翔
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−75788(JP,A)
【文献】 特開2014−98562(JP,A)
【文献】 特開平6−141426(JP,A)
【文献】 特開2007−212318(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0168211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 11/00
G01R 11/04
G01R 22/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力量計に接続された複数の電線を挿入可能な複数の電線挿入部が櫛状に設けられ、前記各電線挿入部を仕切る各隔壁部を貫通して挿入孔が形成され、該挿入孔に棒状の受け部材を挿入して、該受け部材と前記電線挿入部との間に前記電線が位置した状態で、押し切り電極で前記電線の被覆を破って電気的に接続する無停電計器取替装置であって、
少なくとも側端に位置する前記隔壁部の前記挿入孔は、該隔壁部の側縁から開口された導入部を有し、該導入部から前記受け部材を挿入可能となっている、
ことを特徴とする無停電計器取替装置。
【請求項2】
前記受け部材に第1の係合部が設けられ、前記側端に位置する隔壁部に第2の係合部が設けられ、
前記挿入孔に前記受け部材を挿入した状態で、前記第1の係合部と前記第2の係合部とが係合可能となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の無停電計器取替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力量計を無停電で取り替えるための無停電計器取替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交換や修理、点検などのために電力量計を取り替える場合、電力量計から電線を取り外すと需要家宅に電力が供給されなくなり、電力量計の取り替えに際しては停電を余儀なくされていた。このような不都合を解決するために、無停電で電力量計を取り替えることを可能にする無停電工具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この無停電工具は、工具本体に各電線を挿入可能な複数の電線挿入部が設けられ、この電線挿入部の開口を塞ぐ棒状の受け部材を備え、各電線挿入部に挿入された各電線を各電線用押さえ部材の先端と受け部材とで挟んで固定する。この状態で、押し切り電極で各電線の被覆を破って電気的に接続する。ここで、工具本体には、電線用押さえ部材を挿入する押さえ部材挿入部の先端部に、一方の側面から他方の側面まで、側縁に沿って各電線挿入部を貫通するよう挿入孔が形成され、2つの受け部材をそれぞれ左右から挿入孔に挿入して全電線挿入部の開口を塞ぐものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−098562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工具本体の側面から電力量計の計器箱の側壁までの距離・空間が狭いため、受け部材を挿入孔に挿入する際に、計器箱の側壁が邪魔して受け部材を挿入し難い場合がある。特に、一方・右側の受け部材が長いため、挿入孔に挿入することが困難である。このため、挿入する際に、充電されている電力量計や電線を引き上げたりする必要があり、電線が緩んで電力量計から外れて感電するおそれや、電力量計が脱落して損傷するおそれがあった。
【0006】
一方、電力量計が計器箱に収納されていない場合(例えば、集合計器)であっても、電力量計とその周辺物との距離・空間が狭い場合がある。そのような場合には、周辺物が干渉して、受け部材を挿入孔に挿入することが困難な場合や、さらには、無停電工具を使用できない場合も生じ得る。
【0007】
そこでこの発明は、受け部材を容易かつ確実に挿入することが可能な無停電計器取替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、電力量計に接続された複数の電線を挿入可能な複数の電線挿入部が櫛状に設けられ、前記各電線挿入部を仕切る各隔壁部を貫通して挿入孔が形成され、該挿入孔に棒状の受け部材を挿入して、該受け部材と前記電線挿入部との間に前記電線が位置した状態で、押し切り電極で前記電線の被覆を破って電気的に接続する無停電計器取替装置であって、少なくとも側端に位置する前記隔壁部の前記挿入孔は、該隔壁部の側縁から開口された導入部を有し、該導入部から前記受け部材を挿入可能となっている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無停電計器取替装置において、前記受け部材に第1の係合部が設けられ、前記側端に位置する隔壁部に第2の係合部が設けられ、前記挿入孔に前記受け部材を挿入した状態で、前記第1の係合部と前記第2の係合部とが係合可能となっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、側端に位置する隔壁部の挿入孔に対しては、隔壁部の側縁の導入部から受け部材を挿入する。つまり、棒状の受け部材を横から挿入孔に挿入することができ、受け部材を先端から挿入孔に挿入する必要がない。このため、計器箱の側壁などが接近していて作業空間が狭い場合でも、計器箱などが邪魔にならず、受け部材を容易、迅速かつ確実に挿入孔に挿入することが可能となる。
【0011】
この結果、電線などを引き上げたりする必要がなくなり、電線が外れて感電することや電力量計が脱落して損傷することなどが軽減され、安全性が向上する。また、作業環境に依らず受け部材を確実に挿入可能なため、無停電計器取替装置による電力量計の取替作業をより確実に実施することが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、挿入孔に受け部材を挿入した状態で、受け部材の第1の係合部と隔壁部の第2の係合部とを係合可能なため、受け部材が挿入孔の導入部から抜け出たりずれたりするのを防止して、受け部材の挿入状態を適正に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態に係る無停電計器取替装置を電力量計に配設した状態を示す斜視図である。
図2図1の無停電計器取替装置の受け部材を取り付ける前の状態を下側から見た図である。
図3図1の無停電計器取替装置の受け部材を取り付けた後の状態を下側から見た図である。
図4図1の無停電計器取替装置の受け部材を取り付ける前の状態を右側から見た図である。
図5図1の無停電計器取替装置の受け部材を取り付けた後の状態を右側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1図5は、この発明の実施の形態を示し、図1は、この実施の形態に係る無停電計器取替装置1を電力量計101に配設した状態を示す斜視図である。この無停電計器取替装置1は、電力量計101を無停電で取り替えるための装置であり、挿入孔23と係合部41、42を除いて、既知の無停電工具と同等の構成となっており、まず、その概略について説明する。
【0016】
装置本体2の先端部に、電力量計101に接続された複数の電線102を挿入可能な、複数の電線挿入部21が櫛状に設けられている。すなわち、図2に示すように、装置本体2の先端縁からU字状に開口した電線挿入部21が、横並びに連続的に形成され、隣接する電線挿入部21は隔壁部22で仕切られている。
【0017】
そして、各隔壁部22を貫通して挿入孔23が形成され、この挿入孔23に棒状の受け部材31、32を挿入可能となっている。この受け部材31、32は、電気絶縁製で、連結紐33を介して装置本体2に連結され、この実施の形態では、一方(図中右側)の第1の受け部材31が他方(図中左側)の第2の受け部材32よりも長くなっている。
【0018】
一方、装置本体2内には、各電線挿入部21に対向して電線用押さえ部材(図示せず)が、電線102を押圧可能に配設されている。そして、図3に示すように、挿入孔23に受け部材31、32を挿入して、受け部材31、32と電線挿入部21との間に電線102が位置した状態で、受け部材31、32と電線用押さえ部材とで電線102を挟むことで、無停電計器取替装置1が電力量計101に取り付けられる。このとき、装置本体2の先端部は、電力量計101の計器箱103の背面板103aに接する。
【0019】
さらに、装置本体2内には、各電線挿入部21に対向して押し切り電極(図示せず)が、電線102に対して進退自在に配設されている。そして、受け部材31、32と電線挿入部21との間に電線102が位置して、受け部材31、32と電線用押さえ部材とで電線102を挟んだ状態で、各押し切り電極を電線102側に進動させる。これにより、各押し切り電極が各電線102の被覆を破って、無停電計器取替装置1と各電線102とが電気的に接続されるものである。
【0020】
このような構成において、少なくとも側端に位置する隔壁部22の挿入孔23は、この隔壁部22の側縁から開口された導入部231を有し、この導入部231から受け部材31、32を挿入可能となっている。すなわち、この実施の形態では、短い第2の受け部材32は、計器箱103の側壁103bが邪魔にならず、第2の受け部材32の先端から挿入孔23に挿入することができるが、長い第1の受け部材31は、計器箱103の側壁103bが邪魔となり、第1の受け部材31の先端から挿入孔23に挿入することが困難である。このため、装置本体2の右側端に位置する隔壁部22の挿入孔23と、この隔壁部22に隣接する(右から2つ目の)隔壁部22の挿入孔23が、図4に示すように、カギ型(逆さL字状)となっている。
【0021】
具体的には、電力量計101を垂直に配置した状態で、隔壁部22の下端縁(側縁)22aから開口され垂直上方に延びる導入部231と、この導入部231と連通して奥側(装置本体2の先端側)に水平に延びる装着部232とを備えている。そして、導入部231から第1の受け部材31を挿入して、第1の受け部材31を装着部232に収容可能となっている。また、他の隔壁部22の挿入孔23は、開口を有さない閉じた孔(丸孔)で、これらの挿入孔23と装着部232とが同位置(同軸)に形成されている。
【0022】
従って、第1の受け部材31を各挿入孔23に挿入する際には、まず、図2に示すように、右側端とその隣の隔壁部22の挿入孔23に対して、第1の受け部材31を横(先端側の側面)から導入部231に挿入する。次に、第1の受け部材31の先端側を装着部232に収容し、図3に示すように、第1の受け部材31を左側に移動させて、右側端から3つ目以降の隔壁部22の挿入孔23に挿入する。
【0023】
ここで、右側端とその隣の隔壁部22の挿入孔23をカギ型としているのは、第1の受け部材31の長さと作業空間(装置本体2の側面から計器箱103の側壁103bまでの距離・空間)を考慮して、この2つの挿入孔23のみをカギ型にすれば、側壁103bが邪魔にならずに第1の受け部材31を導入部231に挿入できるためである。
【0024】
一方、第2の受け部材32を各挿入孔23に挿入する際には、第2の受け部材32の先端を左側端の隔壁部22の挿入孔23に対向させ、第2の受け部材32を右側に移動させて順次挿入孔23に挿入する。
【0025】
また、第1の受け部材31に第1の係合部41が設けられ、右側端に位置する隔壁部22に第2の係合部42が設けられ、各挿入孔23に第1の受け部材31を挿入した状態で、第1の係合部41と第2の係合部42とが係合可能となっている。
【0026】
すなわち、図2図5に示すように、第1の受け部材31の基端面(反先端側の端面)に、連結紐33の一端部に取り付けられた端子4がネジ止めされている。この端子4は、ネジ止めする先端部が円環状の圧着端子で構成され、連結紐33が圧着・連結された筒状の圧着部が第1の係合部41となっている。一方、第2の係合部42は、図4図5に示すように、四角いブロック状の小片で、右側端に位置する隔壁部22の導入部231の奥側(装置本体2の先端側)に、隔壁部22から外側に突出して設けられている。
【0027】
そして、上記のようにして、各挿入孔23に第1の受け部材31を挿入して、第1の受け部材31の基端側を装着部232に収容した状態で、第1の係合部41を第2の係合部42の奥側に位置させる。これにより、第1の係合部41と第2の係合部42とが係合して、第1の受け部材31が装着部232から抜けにくくなる。
【0028】
以上のように、本無停電計器取替装置1によれば、右側端とその隣の隔壁部22の挿入孔23に対しては、隔壁部22の下端縁(側縁)22aの導入部231から第1の受け部材31を挿入する。つまり、棒状の第1の受け部材31を横(側面)から挿入孔23に挿入することができ、第1の受け部材31を先端から挿入孔23に挿入する必要がない。このため、計器箱103の側壁103bなどが接近していて作業空間が狭い場合でも、計器箱103などが邪魔にならず、第1の受け部材31を容易、迅速かつ確実に挿入孔23に挿入することが可能となる。
【0029】
この結果、電線102などを引き上げたりする必要がなくなり、電線102が外れて感電することや電力量計101が脱落して損傷することなどが軽減され、安全性が向上する。また、作業環境に依らず受け部材31、32を確実に挿入可能なため、無停電計器取替装置1による電力量計101の取替作業をより確実に実施することが可能となる。
【0030】
また、右側端とその隣の隔壁部22の挿入孔23がカギ型(逆さL字状)となっているため、第1の受け部材31が挿入孔23から外れにくい。しかも、挿入孔23に第1の受け部材31を挿入した状態で、第1の受け部材31の第1の係合部41と隔壁部22の第2の係合部42とを係合することで、第1の受け部材31が挿入孔23の導入部231から抜け出たりずれたりするのが防止される。この結果、第1の受け部材31の挿入状態を適正に維持することが可能となる。
【0031】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、装置本体2の右側端とその隣の隔壁部22の挿入孔23のみに導入部231を設けているが、受け部材31、32の長さや作業空間などに応じて、左側端の隔壁部22の挿入孔23やその他の挿入孔23に導入部231を設けてもよい。
【0032】
また、2つの受け部材31、32を備える場合について説明したが、電線102の数や計器箱103の大きさなどによっては、受け部材を1つのみ備えてもよい。さらに、第1の係合部41と第2の係合部42を連結して、第1の受け部材31を固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 無停電計器取替装置
2 装置本体
21 電線挿入部
22 隔壁部
23 挿入孔
231 導入部
232 装着部
31、32 受け部材
4 端子
41 第1の係合部
42 第2の係合部
101 電力量計
102 電線
103 計器箱
図1
図2
図3
図4
図5