(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561756
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6555 20140101AFI20190808BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20190808BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20190808BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20190808BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20190808BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20190808BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20190808BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20190808BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/615
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/6571
H01M10/658
H01M10/647
H01M10/6563
H01M2/10 E
H01M2/10 S
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-203753(P2015-203753)
(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-76541(P2017-76541A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】前田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 賢志
【審査官】
大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/151869(WO,A1)
【文献】
特開2015−049990(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/019429(WO,A1)
【文献】
特開2015−170454(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第2014−0143854(KR,A)
【文献】
国際公開第2015/151866(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/151884(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6555
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/617
H01M 10/647
H01M 10/6563
H01M 10/6571
H01M 10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルの配列体を有する電池モジュールを筐体内に収容してなる電池パックであって、
前記筐体は、
伝熱部材が設けられた第1の内壁面を有する第1の筐体部材と、
前記第1の内壁面と対向すると共に伝熱部材又は発熱部材が設けられた第2の内壁面を有する第2の筐体部材と、を有し、
前記電池モジュールの各電池セルには、伝熱プレートが設けられ、
前記伝熱プレートは、前記電池セルにおける配列方向の一側面に当接する当接部と、前記電池セルにおける前記一側面に交差する一対の他側面と対向する一対の対向部とを有し、
前記電池モジュールは、前記伝熱プレートの一方の対向部が前記第1の筐体部材の前記第1の内壁面に設けられた前記伝熱部材に当接し、かつ前記伝熱プレートの他方の対向部が前記第2の筐体部材の前記第2の内壁面に設けられた前記伝熱部材又は前記発熱部材に当接した状態で、前記第1の筐体部材と前記第2の筐体部材とで拘束されており、
前記第1の筐体部材は、ベース部と、前記ベース部に立設された板状の立設部とを有し、前記立設部の一側面及び他側面がそれぞれ前記第1の内壁面となっており、
前記第2の筐体部材は、前記立設部の前記一側面側と前記他側面側とに分割された第1の分割部材と第2の分割部材とを有し、前記第1の分割部材が前記立設部の前記一側面と対向する前記第2の内壁面を有し、前記第2の分割部材が前記立設部の前記他側面と対向する前記第2の内壁面を有している電池パック。
【請求項2】
前記第2の筐体部材の前記第2の内壁面に前記伝熱部材が設けられ、
前記伝熱プレートの前記一方の対向部と前記電池セルの一方の他側面とが離間し、前記伝熱プレートの前記他方の対向部と前記電池セルの他方の他側面とが離間している請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記第2の筐体部材の前記第2の内壁面に前記発熱部材が設けられ、
前記伝熱プレートの前記一方の対向部と前記電池セルの一方の他側面とが離間し、前記伝熱プレートの前記他方の対向部と前記電池セルの他方の他側面とが離間している請求項1記載の電池パック。
【請求項4】
前記発熱部材は、断熱部材を介して前記第2の内壁面に設けられている請求項3記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池パックとして、例えば特許文献1の電池パックがある。この従来の電池パックでは、筐体内に電池モジュールが収容されており、電池モジュールを構成する電池セルには伝熱部材が取り付けられている。伝熱プレートは、電池セルに当接する当接部と、当接部から筐体側に引き出されて当接部の主面の法線方向に延びる屈曲部とを有している。伝熱プレートは、筐体よりも熱膨張率が大きい金属材によって形成され、電池セルの温度変化に伴って筐体との接触状態が変化するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−49990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池セルに伝熱プレートを設ける場合、筐体の内面側に例えばTIM(Thermal Interface Material)といった伝熱部材を配置し、伝熱プレートの屈曲部と伝熱部材とを当接させることで、電池セルで発生した熱を筐体側に効率良く放熱させる構成が採用されることがある。また、寒冷地などで電池パックを使用する場合には、筐体の内面側にシートヒータ等の発熱部材を配置し、伝熱プレートの屈曲部と発熱部材とを当接させることで、発熱部材で発生した熱を電池セル側に伝熱させる構成が採用されることもある。
【0005】
しかしながら、伝熱プレートの屈曲部と筐体との間に伝熱部材や発熱部材を介在させる場合、これらの伝熱部材や発熱部材からの反力による電池モジュールの撓みが問題となる。電池モジュールにたわみが生じると、伝熱プレートの屈曲部が変位し、伝熱プレートと伝熱部材或いは発熱部材とが狙い通りに当接しなくなるおそれがある。伝熱プレートを介した伝熱効率の向上には、伝熱プレートと伝熱部材或いは発熱部材とをしっかりと当接させる構成が重要となる。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、伝熱プレートを介した伝熱効率を向上できる電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のため、本発明の一側面に係る伝熱プレートは、複数の電池セルの配列体を有する電池モジュールを筐体内に収容してなる電池パックであって、筐体は、伝熱部材が設けられた第1の内壁面を有する第1の筐体部材と、第1の内壁面と対向すると共に伝熱部材又は発熱部材が設けられた第2の内壁面を有する第2の筐体部材と、を有し、電池モジュールの各電池セルには、伝熱プレートが設けられ、伝熱プレートは、電池セルにおける配列方向の一側面に当接する当接部と、電池セルにおける一側面に交差する一対の他側面と対向する一対の対向部とを有し、電池モジュールは、伝熱プレートの一方の対向部が第1の筐体部材の第1の内壁面に設けられた伝熱部材に当接し、かつ伝熱プレートの他方の対向部が第2の筐体部材の第2の内壁面に設けられた伝熱部材又は発熱部材に当接した状態で、第1の筐体部材と第2の筐体部材とで拘束されている。
【0008】
この電池パックでは、伝熱プレートの一方の対向部が第1の筐体部材の第1の内壁面に設けられた伝熱部材に当接し、かつ伝熱プレートの他方の対向部が第2の筐体部材の第2の内壁面に設けられた伝熱部材又は発熱部材に当接した状態で、電池モジュールが第1の筐体部材と筐体部材とで拘束されている。電池モジュールが第1の筐体部材と第2の筐体部材とで拘束されることで、伝熱部材や発熱部材からの反力による電池モジュールの撓みの発生が抑制されるので、伝熱プレートと伝熱部材或いは発熱部材とをしっかりと当接させることができる。したがって、伝熱プレートを介した伝熱効率を向上できる。
【0009】
また、第2の筐体部材の第2の内壁面に伝熱部材が設けられ、伝熱プレートの一方の対向部と電池セルの一方の他側面とが離間し、伝熱プレートの他方の対向部と電池セルの他方の他側面とが離間していてもよい。この場合、電池セルで発生した熱を伝熱プレートを介して第1の筐体部材側と第2の筐体部材側との双方に放熱させることができる。これにより、電池セルの放熱効率が高められる。また、第1の筐体部材側及び第2の筐体部材側のいずれか一方に放熱する場合と比べて、電池セル内の温度分布を均一化できる。伝熱プレートの対向部と電池セルとの間の空間は、冷却媒体或いは加熱媒体の流路として用いることができる。
【0010】
また、第2の筐体部材の第2の内壁面に発熱部材が設けられ、伝熱プレートの一方の対向部と電池セルの一方の他側面とが離間し、伝熱プレートの他方の対向部と電池セルの他方の他側面とが離間していてもよい。この場合、電池セルで発生した熱を伝熱プレートを介して第1の筐体部材側に放熱させることができる一方、発熱部材で発生した熱を伝熱プレートを介して電池セルに伝熱させることができる。伝熱プレートの対向部と電池セルとの間の空間は、冷却媒体或いは加熱媒体の流路として用いることができる。
【0011】
また、発熱部材は、断熱部材を介して第2の内壁面に設けられていてもよい。これにより、発熱部材で発生した熱をより確実に電池セル側に伝熱させることができる。
【0012】
また、第1の筐体部材は、ベース部と、ベース部に立設された板状の立設部とを有し、立設部の一側面及び他側面がそれぞれ第1の内壁面となっており、第2の筐体部材は、立設部の一側面側と他側面側とに分割された第1の分割部材と第2の分割部材とを有し、第1の分割部材が立設部の一側面と対向する第2の内壁面を有し、第2の分割部材が立設部の他側面と対向する第2の内壁面を有していてもよい。この場合、簡単な構成で筐体内に多数の電池モジュールを収容でき、かつ各電池モジュールにおいて伝熱プレートを介した伝熱効率を向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面に係る伝熱プレートによれば、伝熱プレートを介した伝熱効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電池パックを示す断面図である。
【
図2】筐体内に収容された電池モジュールの構成を示す概略図である。
【
図3】電池モジュールを構成する電池セルの構成を示す断面図である。
【
図5】筐体に対する電池モジュールの固定状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る電池パックにおいて、筐体に対する電池モジュールの固定状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る電池パックの好適な実施形態について詳細に説明する。
[第1実施形態]
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池パックを示す断面図である。同図に示すように、電池パック1は、筐体2内に複数の電池モジュール3を収容して構成されている。電池モジュール3の収容数は、電池パック1の仕様に応じて適宜決定される。また、図示しないが、筐体2内には、電池モジュール3と共にECUといった制御装置等も収容されている。
【0017】
筐体2は、例えば鉄などの金属材料によって形成され、略直方体形状の箱型をなしている。筐体2は、本体部(第1の筐体部材)4と、蓋部(第2の筐体部材)5とを備えている。本体部4は、板状のベース部6と、ベース部6の一面6a側の略中央部分に立設された板状の立設部7とを有している。
【0018】
ベース部6は、筐体2の底部をなす部分である。ベース部6は、他の部分よりも肉厚となっている。立設部7は、電池モジュール3が固定される部分である。本実施形態では、立設部7の一側面(第1の内壁面)7aと他側面(第1の内壁面)7bとがそれぞれ電池モジュール3の固定面となっており、立設部7を挟んで電池モジュール3が複数段(本実施形態では3段)に固定されている。
【0019】
立設部7の一側面7a及び他側面7bには、電池モジュール3の固定位置に対応して伝熱部材43が設けられている。伝熱部材43としては、例えばシート状のTIM(Thermal Interface Material)が用いられる。TIMは、例えばシリコンゴムなどの弾性材料に、熱伝導性を有する粉状のセラミックフィラーを含有させたものである。伝熱部材43の面積は、例えば電池モジュール3において各電池セル11に設けられた伝熱プレート15の対向部42(
図5参照)を合わせた面積と同程度となっている。
【0020】
蓋部5は、第1の分割部材8と、第2の分割部材9とを備えている。第1の分割部材8と第2の分割部材9とは、立設部7の一側面7a側と他側面7b側とに分割されている。第1の分割部材8は、立設部7と対向する側壁8Aと、ベース部6と対向する側壁8Bと、
図1の奥行方向において互いに対向する一対の側壁(不図示)とを有している。また、第2の分割部材9は、立設部7と対向する側壁9Aと、ベース部6と対向する側壁9Bと、
図1の奥行方向において互いに対向する一対の側壁(不図示)とを有している。
【0021】
第1の分割部材8と第2の分割部材9とは、立設部7の厚さ方向の中心を通る面に沿って互いに接合されており、ベース部6側が開口する箱型の蓋部5を構成している。蓋部5におけるベース部6側の開口端部をベース部6の一面6a側の縁部に接合することにより、電池モジュール3の気密な収容空間を有する筐体2が形成されている。本実施形態では、立設部7の一側面7a側に収容空間S(S1)が形成され、立設部7の他側面7b側に収容空間S(S2)が形成されている。
【0022】
第1の分割部材8の側壁8Aの内面は、立設部7の一側面7aと対向する側面(第2の内壁面)8aとなっている。側面8aには、立設部7の一側面7aに設けられた伝熱部材43と対向する位置に、例えばシート状のTIMからなる伝熱部材43が設けられている。また、第2の分割部材9の側壁9Aの内面は、立設部7の他側面7bと対向する側面(第2の内壁面)9aとなっている。側面9aには、立設部7の他側面7bに設けられた伝熱部材43と対向する位置に、例えばシート状のTIMからなる伝熱部材43が設けられている。
【0023】
電池モジュール3は、
図2に示すように、複数の電池セル11の配列体12と、配列体12に対して電池セル11の配列方向に拘束荷重を付加する拘束部材13と、配列体12と拘束部材13との間に介在する弾性体14とを備えている。
【0024】
配列体12では、例えば伝熱プレート15を介し、複数(本実施形態では7体)の電池セル11が配列されている。電池セル11は、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。弾性体14は、例えばウレタン製のゴムスポンジによって矩形の板状に形成されている。弾性体14の面積は、例えば電池セル11のケース22における配列方向の一側面22aの面積よりも一回り小さくなっており、配列体12における電池セル11の配列方向の一端側に配置されている。
【0025】
弾性体14の形成材料としては、例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、シリコンゴムなどが挙げられる。また、弾性体14は、ゴムに限られず、バネ材などであってもよい。弾性体14は、拘束荷重による電池セル11の破損を防止する目的で用いられる部材であり、電池セル11の配列方向の両端に配置されていてもよく、電池セル11,11間に配置されていてもよい。
【0026】
拘束部材13は、例えば一対のエンドプレート16,16と、エンドプレート16,16同士を締結する締結部材17とを備えている。エンドプレート16は、例えば電池セル11を配列方向から見た場合の面積よりも大きい面積を有する略矩形の板状をなしており、エンドプレート16の外縁部分が電池セル11の外縁部分よりも外側に張り出した状態で、配列体12及び弾性体14の配列方向の両端にそれぞれ配置されている。
【0027】
締結部材17は、例えば長尺のボルト18と、ボルト18に螺合されるナット19とによって構成されている。ボルト18は、例えばエンドプレート16の外縁部分において、配列体12の四隅に対応する位置でエンドプレート16に挿通されている。各ボルト18の両端にエンドプレート16の外側からナット19が螺合されることで、電池セル11、弾性体14、及び伝熱プレート15が挟持されてユニット化されると共に拘束荷重が付加される。
【0028】
電池セル11は、例えば
図3及び
図4に示すように、例えば略直方体形状をなす中空のケース22と、ケース22内に収容された電極組立体23とを備えている。ケース22は、例えばアルミニウム等の金属によって形成され、ケース22の内部には、例えば有機溶媒系又は非水系の電解液が注入されている。ケース22の頂面には、
図3に示すように、正極端子25と負極端子26とが互いに離間して配置されている。正極端子25は、絶縁部材27を介してケース22の頂面における幅方向の一方側に固定され、負極端子26は、絶縁部材28を介してケース22の頂面における幅方向の他方側に固定されている。
【0029】
電極組立体23は、
図4に示すように、例えば正極31と、負極32と、正極31と負極32との間に配置された袋状のセパレータ33とによって構成されている。電極組立体23では、セパレータ33内に正極31が収容されており、この状態で正極31と負極32とがセパレータ33を介して交互に積層された状態となっている。
【0030】
正極31は、例えばアルミニウム箔からなる金属箔33aと、金属箔33aの両面に形成された正極活物質層33bとを有している。正極活物質層33bは、正極活物質とバインダとを含んで形成されている。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。また、正極31の上縁部には、正極端子25の位置に対応してタブ31cが形成されている。タブ31cは、正極31の上縁部から上方に延び、導電部材34を介して正極端子25に接続されている。
【0031】
一方、負極32は、例えば銅箔からなる金属箔32aと、金属箔32aの両面に形成された負極活物質層32bとを有している。負極活物質層32bは、負極活物質とバインダとを含んで形成されている。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。また、負極32の上縁部には、負極端子26の位置に対応してタブ32cが形成されている。タブ32cは、負極32の上縁部から上方に延び、導電部材35を介して負極端子26に接続されている。
【0032】
セパレータ33は、例えば袋状に形成され、内部に正極31のみを収容している。セパレータ33の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。なお、セパレータ33は、袋状に限られず、シート状のものを用いてもよい。
【0033】
続いて、筐体2に対する電池モジュール3の固定構造について更に詳細に説明する。
【0034】
図5は、筐体に対する電池モジュールの固定状態を示す断面図である。同図では、筐体2の収容空間S1側を図示しているが、収容空間S2側も左右対称に同様の構成となっている。
図5に示すように、電池モジュール3を筐体2に対して固定するにあたり、各電池モジュール3に取り付けられた伝熱プレート15は、伝熱性を有する材料(例えば金属)によって板状に形成され、電池セル11における配列方向の一側面22aに当接する当接部41と、電池セル11における配列方向の一側面22aに交差する一対の他側面22b,12bと対向する一対の対向部42,42とを有している。
【0035】
当接部41は、例えば電池セル11の配列方向の一側面22aよりも幅寸法が大きい矩形状に形成されている。当接部41は、両面テープ(不図示)などを用いて電池セル11の配列方向の一側面22aに対して固定されている。両面テープとしては、電気絶縁性及び伝熱性を確保する観点から、例えばポリプロピレンなどの基材を有するテープを用いることが好適である。
【0036】
対向部42は、電池セルの他側面22bと略同寸法の矩形状に形成されている。対向部42は、当接部41の幅方向(電池セル11の幅方向)の両端部において、当接部41に対して略直角に設けられている。当接部41が電池セル11の配列方向の一側面22aに対して固定された状態において、一方の対向部42と電池セル11の一方の他側面22bとが離間した状態で互いに対向し、他方の対向部42と電池セル11の他方の他側面22bとが離間した状態で互いに対向している。
【0037】
一方の対向部42の先端部分は、隣接する電池セル11に設けられた伝熱プレート15の一方の対向部42の基端部分に向かって延びている。電池モジュール3の全体で見た場合、各伝熱プレート15の一方の対向部群42Aは、略面一の板状をなしている。同様に、他方の対向部42の先端部分は、隣接する電池セル11に設けられた伝熱プレート15の他方の対向部42の基端部分に向かって延びている。電池モジュール3の全体で見た場合、各伝熱プレート15の他方の対向部群42Bは、略面一の板状をなしている。
【0038】
なお、一方の対向部42の先端部分と、隣接する電池セル11に設けられた伝熱プレート15の一方の対向部42の基端部分とは、接触していてもよく、僅かに離間していてもよい。また、他方の対向部42の先端部分と、隣接する電池セル11に設けられた伝熱プレート15の他方の対向部42の基端部分とは、接触していてもよく、僅かに離間していてもよい。
【0039】
電池モジュール3は、立設部7側に設けられた伝熱部材43に一方の対向部群42Aが当接し、かつ蓋部5側に設けられた伝熱部材43に他方の対向部群42Bが当接した状態で、不図示のブラケットを介して立設部7に対して固定されている。収容空間S内の電池モジュール3は、本体部4の立設部7と蓋部5の側壁8A又は側壁9Aとによって電池セル11の配列方向に交差する方向に拘束されている。より具体的には、本体部4の立設7と電池モジュール3との間、及び、蓋部5の側壁8A又は側壁9Aと電池モジュール3との間に伝熱部材43を挟み、本体部4と蓋部5との間で電池モジュール3を拘束しつつ放熱させる。
【0040】
以上説明したように、電池パック1では、伝熱プレート15の一方の対向部42が本体部4における立設部7の一側面7a及び他側面7bに設けられた伝熱部材43に当接し、かつ伝熱プレート15の他方の対向部42が蓋部5の側面8a及び側面9aに設けられた伝熱部材43に当接した状態で、収容空間S内の電池モジュール3が本体部4と蓋部5とで拘束されている。このように、電池モジュール3が本体部4と蓋部5とで拘束されることで、伝熱部材43からの反力による電池モジュール3の撓みの発生が抑制されるので、伝熱プレート15と伝熱部材43とをしっかりと当接させることができる。したがって、伝熱プレート15を介した伝熱効率を向上できる。
【0041】
本実施形態の電池パック1では、立設部7の一側面7a及び他側面7bに伝熱部材43が設けられ、蓋部5の側面8a及び側面9aに伝熱部材43が設けられている。これにより、電池セル11で発生した熱を伝熱プレート15を介して本体部4側と蓋部5側との双方に放熱させることができ、電池セル11の放熱効率が高められる。また、本体部4側及び蓋部5側のいずれか一方に放熱する場合と比べて、電池セル11内の温度分布を均一化できる。さらに、電池パック1では、伝熱プレート15の一方の対向部42と電池セル11の一方の他側面22bとが離間し、伝熱プレート15の他方の対向部42と電池セル11の他方の他側面22bとが離間している。このような構成により、伝熱プレート15の対向部42と電池セル11との間の空間を冷却媒体の流路として用いることができる。
【0042】
また、電池パック1では、筐体2の本体部4がベース部6とベース部6に立設された板状の立設部7とを有し、立設部7の一側面7a及び他側面7bが、それぞれ伝熱部材43が設けられる第1の内壁面となっている。また、筐体2の蓋部5は、立設部7の一側面7a側と他側面7b側とに分割された第1の分割部材8と第2の分割部材9とを有している。そして、第1の分割部材8において立設部7の一側面7aと対向する側面8aが、伝熱部材43が設けられる第2の内壁面となっており、第2の分割部材9において立設部7の他側面7bと対向する側面9aが、伝熱部材43が設けられる第2の内壁面となっている。これにより、簡単な構成で筐体2内に多数の電池モジュール3を収容でき、かつ各電池モジュール3において伝熱プレート15を介した伝熱効率を向上できる。
[第2実施形態]
【0043】
図6は、本発明の第2実施形態に係る電池パックにおいて、筐体に対する電池モジュールの固定状態を示す断面図である。同図に示すように、第2実施形態に係る電池パック51は、伝熱プレート15の他方の対向部群42Bが発熱部材52に当接している点で、伝熱プレート15の他方の対向部群42Bが伝熱部材43に当接している第1実施形態と相違している。
【0044】
より具体的には、発熱部材52としては、例えばシートヒータが用いられる。発熱部材52は、例えば伝熱プレート15の他方の対向部群42Bと同等の面積を有し、断熱部材53を介して第1の分割部材8の側面8a及び第2の分割部材9の側面9aにそれぞれ設けられている。そして、電池モジュール3は、立設部7側に設けられた伝熱部材43に一方の対向部群42Aが当接し、かつ蓋部5側に設けられた発熱部材52に他方の対向部群42Bが当接した状態で、不図示のブラケットを介して立設部7に対して固定されている。収容空間S内の電池モジュール3は、本体部4の立設部7と蓋部5の側壁8A又は側壁9Aとによって電池セル11の配列方向に交差する方向に拘束されている。断熱部材53は、例えば、グラスウール、ウレタンフォーム、発泡スチロール、又は、発泡ゴム等からなる。
【0045】
以上のような電池パック51においても、伝熱プレート15の一方の対向部42が本体部4における立設部7の一側面7a及び他側面7bに設けられた伝熱部材43に当接し、かつ伝熱プレート15の他方の対向部42が蓋部5の側面8a及び側面9aに設けられた発熱部材52に当接した状態で、収容空間S内の電池モジュール3が本体部4と蓋部5とで拘束されている。このように、電池モジュール3が本体部4と蓋部5とで拘束されることで、伝熱部材43及び発熱部材52からの反力による電池モジュール3の撓みの発生が抑制されるので、伝熱プレート15と伝熱部材43及び発熱部材52とをしっかりと当接させることができる。したがって、伝熱プレート15を介した伝熱効率を向上できる。
【0046】
本実施形態の電池パック51では、立設部7の一側面7a及び他側面7bに伝熱部材43が設けられ、蓋部5の側面8a及び側面9aに発熱部材52が設けられている。これにより、電池セル11で発生した熱を伝熱プレート15を介して本体部4側に放熱させることができる一方で、発熱部材52で発生した熱を伝熱プレート15を介して電池セル11に伝熱させることができる。このような構成は、例えば寒冷地で電池パック51が使用される場合などに特に有用である。さらに、電池パック51では、伝熱プレート15の一方の対向部42と電池セル11の一方の他側面22bとが離間し、伝熱プレート15の他方の対向部42と電池セル11の他方の他側面22bとが離間している。このような構成により、伝熱プレート15の対向部42と電池セル11との間の空間を冷却媒体又は加熱媒体の流路として用いることができる。
【0047】
また、電池パック51では、発熱部材52が断熱部材53を介して第1の分割部材8の側面9a及び第2の分割部材9の側面9aにそれぞれ設けられている。これにより、発熱部材52で発生した熱をより確実に電池セル11側に伝熱させることができる。なお、発熱部材52で発生した熱を電池セル11に効率良く伝熱させる観点からは、伝熱プレート15の一方の対向部42と伝熱部材43との間の熱抵抗が、伝熱プレート15の当接部41と電池セル11の配列方向の一側面22aとの間の熱抵抗よりも大きくなっていることが好ましい。そのような熱抵抗の調整の手法として、例えば、伝熱プレート15の一方の対向部42と筐体2(立設部7)との間の伝熱部材43の材質、厚さ、面積等を調整したり、電池セル11と伝熱プレート15(当接部41)との間のテープの材質、厚さ、面積等を調整したりすることができる。
【0048】
また、電池パック51においても、筐体2が第1実施形態と同様の構成を有している。したがって、簡単な構成で筐体2内に多数の電池モジュール3を収容でき、かつ各電池モジュール3において伝熱プレート15を介した伝熱効率を向上できる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記各実施形態では、ベース部6及び立設部7を有する本体部4に、第1の分割部材8及び第2の分割部材9からなる蓋部5を接合して筐体2を構成しているが、筐体2の構成はこれに限られない。例えば
図7に示すように、一面側が開口した本体部64の開口部分に平板状の蓋部65を接合して筐体62を構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,51…電池パック、2…筐体、4…本体部(第1の筐体部材)、5…蓋部(第2の筐体部材)、6…ベース部、7…立設部、7a…一側面(第1の内壁面)、7b…他側面(第1の内壁面)、8…第1の分割部材、8a…側面(第2の内壁面)、9…第2の分割部材、9a…側面(第2の内壁面)、11…電池セル、12…配列体、22a…一側面、22b…他側面、41…当接部、42…対向部、43…伝熱部材、52…発熱部材、53…断熱部材。