(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に設けられた複数の送信アンテナから信号を送信する車載機と、該車載機から送信された信号を受信し、受信した信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する携帯機とを備え、前記車載機は該携帯機から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、前記携帯機が車室内にあるか否かを判定する車両用通信システムであって、
前記複数の送信アンテナは、
前記車両の幅方向中心部から、幅方向の一方へ偏倚して前記車室内に設けられた第1送信アンテナと、
前記車両の幅方向他方の側面寄りに設けられた第2送信アンテナと
を含み、
前記車載機は、
前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナからそれぞれ送信された信号の受信信号強度に基づいて、車室内空間を包含し、少なくとも前記車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有する領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する領域内外判定部と、
前記第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に1未満の重み係数を乗算し、重み付けされた受信信号強度を、前記第1送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に加算する加算部と
を備え、
前記領域内外判定部は、
前記加算部にて得られた値に基づいて前記領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する
車両用通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0017】
(1)本発明の一態様に係る車両用通信システムは、車両に設けられた複数の送信アンテナから信号を送信する車載機と、該車載機から送信された信号を受信し、受信した信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する携帯機とを備え、前記車載機は該携帯機から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、前記携帯機が車室内にあるか否かを判定する車両用通信システムであって、前記複数の送信アンテナは、前記車両の幅方向中心部から、幅方向の一方へ偏倚して前記車室内に設けられた第1送信アンテナと、前記車両の幅方向他方の側面寄りに設けられた第2送信アンテナとを含み、前記車載機は、前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナからそれぞれ送信された信号の受信信号強度に基づいて、車室内空間を包含し、少なくとも前記車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有する領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する領域内外判定部を備える。
【0018】
本態様にあっては、車載機は車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信する。該信号は、携帯機の位置を判定するための信号である。携帯機は、各アンテナから送信された信号を受信し、各信号の受信信号強度を測定し、測定して得た受信信号強度を含む応答信号を車載機へ送信する。各信号の受信信号強度は、車両に対する携帯機の位置によって変化する。
車載機は、携帯機から送信された応答信号を受信する。車載機の領域内外判定部は、応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、携帯機が車室内空間を包含する領域の内側にあるか否かを判定する。以下、領域内外判定部による前記判定を内外判定と言う。前記領域の境界面は、複数のアンテナからそれぞれ送信された信号の受信信号強度が所定の条件を充足する面として規定することができる。前記領域は、少なくとも車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有するため、前記幅方向一方の側面近傍において、携帯機が車室内にあるか否かを精度良く判定することができる。
【0019】
特に本態様にあっては、第1送信アンテナは車両の幅方向中心部から幅方向の一方へ偏倚している。つまり、第1送信アンテナは車室内の右寄り又は左寄りに設けられている。このため、前記車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有する領域を形成、つまり該側面にある携帯機が受信する各信号の受信信号強度が充足すべき条件を定めると、幅方向の他方の境界面が凹み、車室内空間を包含しなくなる。具体的には、第1送信アンテナが車室内の右寄りに設けられている場合、車両の右側面に倣う境界面を有する領域を形成しようとすると、車両の左側面側が凹み車室内空間を包含しなくなる(
図7及び
図8参照)。同様に、第1送信アンテナが車室内の左寄りに設けられている場合、車両の左側面に倣う境界面を有する領域を形成しようとすると、車両の右側面側が凹み車室内空間を包含しなくなる。
そこで、本態様においては、車両の幅方向他方の側面寄りに設けられた第2送信アンテナを利用する。例えば、第1送信アンテナが車室内の右寄りに設けられている場合、左側面寄りに設けられた第2送信アンテナを利用する。第1送信アンテナが車室内の左寄りに設けられている場合、右側面寄りに設けられた第2送信アンテナを利用する。このように位置する第1及び第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度を利用すると、前記車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有し、車室内空間を包含するような領域を形成することができる(
図4参照)。
【0020】
なお、本態様では第1及び第2送信アンテナを利用して内外判定を行っているが、他の送信アンテナも利用し、3つ以上の送信アンテナを利用して内外判定を行っても良い。
また、車室内に携帯機があるか否かの最終的な判定は、携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定した上で、更に他の方法を用いて携帯機の位置を絞り込むことによって実現することができる。例えば、前記領域の境界面が倣う車両の側面近傍に携帯機が存在することを他の送信アンテナを用いて確認し、携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定することによって、携帯機が車室内にあるか否かを精度良く判定することができる(実施形態2参照)。また、本態様と同様にして、車室内空間を包含し、少なくとも前記車両の幅方向他方の側面に倣う境界面を有する領域の内側に前記携帯機があるか否かを更に判定することによって、携帯機の位置を絞り込み、携帯機が車室内にあるか否かを精度良く判定することもできる(実施形態1参照)。以下、携帯機が車室内にあるか否かの判定を車室内外判定と言う。
【0021】
(2)前記第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度を、前記第1送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に加算する加算部を備え、前記領域内外判定部は、前記加算部にて得られた値に基づいて前記領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する構成が好ましい。
【0022】
本態様にあっては、第1送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度を加算することによって、いわば第1送信アンテナに係る受信信号強度を補正する。
携帯機が車両の幅方向一方の側面側に位置している場合、携帯機と、第2送信アンテナとの距離は遠いため、第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度は比較的小さく、第1送信アンテナに係る受信信号強度に加算される受信信号強度の値は小さい。つまり、補正量は小さい。逆に、携帯機が車両の幅方向他方の側面側に位置している場合、携帯機と、第2送信アンテナとの距離は近いため、第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度は比較的大きく、第1送信アンテナに係る受信信号強度に加算される受信信号強度の値は大きい。つまり、補正量は大きい。このように、携帯機の位置によって補正量が変化するため、第2送信アンテナに係る受信信号強度を、第1送信アンテナに係る受信信号強度に加算することによって、車両の幅方向一方の側面に倣う領域の境界面を歪めること無く、車両の幅方向他方の側面の凹みを修正することができる。
また、領域内外判定部は、加算して得られた値に基づいて内外判定を行う構成であり、簡単な演算処理で携帯機の内外判定を行うことができる。
【0023】
(3)前記加算部は、前記第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に1未満の重み係数を乗算し、重み付けされた受信信号強度を、前記第1送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に加算する構成が好ましい。
【0024】
本態様にあっては、重み付け加算を行うことによって、より精度良く車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有し、車室内空間を包含する領域を形成し、内外判定を行うことができる。
【0025】
(4)前記複数の送信アンテナは、前記車室内に設けられた第3送信アンテナを含み、更に、前記第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度を、前記第1送信アンテナから送信された信号の受信信号強度及び前記第3送信アンテナから送信された信号の受信信号強度にそれぞれ加算する加算部を備え、前記領域内外判定部は、前記加算部にて得られた2つの値が所定の判定式を充足するか否かを判定する構成が好ましい。
【0026】
本態様にあっては、第1〜第3送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に基づいて内外判定を行うことによって、より精度良く車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有し、かつ車室内空間を包含する領域を形成し、携帯機の内外判定を行うことができる。
具体的には、車載機は、第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度を、第1送信アンテナから送信された信号の受信信号強度と、第3送信アンテナから送信された信号の受信信号強度とにそれぞれ加算し、加算して得られた2つの値が所定の判定式を充足するか否かを判定する。
単純に、第1〜第3送信アンテナから送信された信号に対する携帯機の応答によって、携帯機の位置を判定するシステムにおいては、車両の側面に倣う境界面を有し、かつ車室内空間を包含するように領域を拡げることができない。しかし、本態様のように第1〜第3送信アンテナから送信された信号の受信信号強度を用いる構成によれば、上述のように領域を形成することができ、携帯機を精度良く判定することができる。
【0027】
(5)前記加算部は、前記第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に1未満の第1の重み係数を乗算し、重み付けされた受信信号強度を、前記第1送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に加算する第1の重み付け加算部と、前記第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に1未満の第2の重み係数を乗算し、重み付けされた受信信号強度を、前記第3送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に加算する第2の重み付け加算部とを備える構成が好ましい。
【0028】
本態様にあっては、態様(3)と同様、重み付け加算を行うことによって、より精度良く車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有し、車室内空間を包含する領域を形成し、内外判定を行うことができる。
【0029】
(6)前記複数の送信アンテナは、前記車室内に設けられた第3送信アンテナを含み、更に、前記第1送信アンテナ、前記第2送信アンテナ及び前記第3送信アンテナからそれぞれ送信された信号の受信信号強度に基づいて、前記携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定するためのスカラーの判定値を算出する算出部を備え、前記領域内外判定部は、前記算出部にて算出された判定値と、所定の閾値とを比較する構成が好ましい。
【0030】
本態様にあっては、第1〜第3送信アンテナから送信された信号の受信信号強度に基づいて内外判定を行うことによって、より精度良く車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有し、かつ車室内空間を包含する領域を形成し、内外判定を行うことができる。
具体的には、車載機は、第1〜第3送信アンテナからそれぞれ送信された信号の受信信号強度に基づいて、携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定するためのスカラーの判定値を算出する。例えば、各受信信号強度を加算し、又は重み付け加算することによって、スカラーの判定値を算出する。そして、車載機は、算出された判定値と、所定の閾値とを比較することよって、携帯機の内外判定を行う。
本態様によれば、スカラーの判定値と、閾値とを比較する簡単な演算処理で携帯機の内外判定を行うことができる。
【0031】
(7)前記領域は、車室内空間の全体及び車室外の一部を含み、前記車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有する構成が好ましい。
【0032】
本態様にあっては、携帯機の車室内外判定を行うための領域は、車室内空間の全体及び車室外の一部を含むため、車室内にある携帯機が車室外にあると誤判定される可能性を大幅に低減することができる。
一方、前記領域は、前記車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有するため、当該境界面に関して、携帯機が車室内にあるか車室外にあるかを精度良く判定することができる。
【0033】
(8)本発明の一態様に係る車載機は、車両に設けられた複数の送信アンテナから携帯機へ信号を送信し、該携帯機が受信した信号の受信信号強度に基づいて、前記携帯機が車室内にあるか否かを判定する車載機であって、前記複数の送信アンテナは、前記車両の幅方向中心部から、幅方向の一方へ偏倚して前記車室内に設けられた第1送信アンテナと、前記車両の幅方向他方の側面寄りに設けられた第2送信アンテナとを含み、前記車載機は、前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナからそれぞれ送信された信号の受信信号強度に基づいて、車室内空間を包含し、少なくとも前記車両の幅方向一方の側面に倣う境界面を有する領域の内側に前記携帯機があるか否かを判定する領域内外判定部を備える。
【0034】
本態様にあっては、態様(1)と同様、車室内の第1送信アンテナが車両の幅方向中心部から幅方向一方へ偏倚している場合であっても、精度良く携帯機の内外判定を行うことができる。
【0035】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る車両用通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用通信システムの一構成例を示すブロック図である。
図1中、2点鎖線は車両Cの幅方向の中心線を示している。本実施形態1に係る車両用通信システムは、車両Cに設けられた複数の送信アンテナ(3)及び受信アンテナ4を用いて各種信号を送受信する車載機1と、該車載機1との間で信号を送受信する携帯機2とを備える。
複数の送信アンテナ(3)は、例えば、車両Cの後部であって、車両Cの幅方向中心部から、右側へ偏倚して設けられた第1送信アンテナ31、助手席側のドアミラーに設けられた第2送信アンテナ32、車両Cの前部であって、車両Cの幅方向中心部に設けられた第3送信アンテナ33、運転席側のドアミラーに設けられた第4送信アンテナ34を含む。受信アンテナ4は車両Cの適宜箇所に設けられている。このように、第1送信アンテナ31は、車両Cの幅方向中心部から、幅方向の一方へ偏倚して車室内に設けられており、第2送信アンテナ32は、C車両の幅方向他方の側面寄りに設けられている。なお、本実施形態1においては車両Cの進行方向右側が運転席側、進行方向左側が助手席側である。
車載機1は、携帯機2の位置を判定するための信号を複数の送信アンテナ(3)から無線信号を用いて順次送信する。携帯機2は、各送信アンテナ(3)から送信された信号を受信し、受信した各信号の受信信号強度を測定する。携帯機2は、測定された受信信号強度を含む応答信号を無線信号を用いて車載機1へ送信する。車載機1は携帯機2から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、携帯機2の車室内外判定を行い、判定結果に応じた所定処理を実行する。例えば、車載機1は、エンジン始動、車両ドアの施錠又は解錠等の処理を実行する。
【0037】
図2は、車載機1の一構成例を示すブロック図である。車載機1は、該車載機1の各構成部の動作を制御する制御部11を備える。制御部11には、車載受信部12、車載送信部13、切替器13a、記憶部14が設けられている。
【0038】
制御部11は、例えば一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース、タイマ等を有するマイコンである。制御部11のCPUは入出力インタフェースを介して車載受信部12、車載送信部13及び記憶部14に接続している。制御部11は記憶部14に記憶されている後述のコンピュータプログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、携帯機2の車室内外判定、車室内外判定に応じた所定処理を実行する。
【0039】
記憶部14は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部14は、制御部11が車載機1の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の車室内外判定を実行するためのコンピュータプログラムを記憶している。また、記憶部14は携帯機2の車室内外判定を行うための各種判定式を記憶している。判定式の詳細は後述する。なお、
図2では制御部11及び記憶部14を別体の構成部として図示しているが、制御部11の内部に記憶部14を備えても良い。
【0040】
車載受信部12には、受信アンテナ4が接続されている。車載受信部12は、携帯機2から無線により送信される応答信号等を、受信アンテナ4を通じて受信する。車載受信部12は、受信した応答信号等から搬送波の成分を除去して受信信号を抽出し、抽出された受信信号を制御部11へ出力する回路である。搬送波としては300MHz〜3GHzのUHF(Ultra HighFrequency)帯を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0041】
車載送信部13は、搬送波を用いて、制御部11から出力された信号を無線信号に変調し、当該無線信号を制御部11と切替器13aによって選択された一の送信アンテナ(3)から携帯機2へ送信する回路である。搬送波としては30kHz〜300kHzのLF(Low Frequency)帯を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0042】
また、車載機1の制御部11には、図示しない車両ドアリクエストスイッチの操作状態に応じたリクエスト信号が入力される。制御部11は入力されたリクエスト信号に基づいて、車両ドアリクエストスイッチの操作状態を認識することができる。車両ドアリクエストスイッチは、例えば、運手席側又は助手席側の車両ドアを施錠又は解錠するためのスイッチであり、運転席外側又は助手席外側のドアハンドルに設けられている。なお、押しボタンに代えて、ドアハンドルに対する使用者の手の接触を検出する接触センサを設けても良い。また、制御部11は、車両ドアリクエストスイッチの操作に対応したリクエスト信号を直接取得しても良いし、ドアECU(Electronic Control Unit)、その他のECU等を介して取得しても良い。
制御部11は、車両ドアリクエストスイッチの操作状態、携帯機2が車室内にあるか否かと言った状況に応じて、車両ドアの解錠又は施錠を制御するための車両ドア制御指令を、図示しないドアECUへ出力する。ドアECUは、制御部11からの車両ドア制御指令に従って、車両ドアを施錠し又は解錠する。また、制御部11は、前記状況に応じて、必要があれば、警告指令を図示しない警告装置へ出力する。例えば、携帯機2が車室内にある状態で車両ドアリクエストスイッチが操作されたような場合、制御部11は警告指令を警告装置へ出力する。警告装置は、警告指令に従って、音又は光等を用いて車両Cの使用者に対して所定の警告を行う。
【0043】
更に、車載機1の制御部11には、図示しないエンジンスタートスイッチの操作状態に応じたエンジンスタート信号が入力される。制御部11は入力されるエンジンスタート信号に基づいて、エンジンスタートスイッチの操作状態を認識することができる。制御部11は、エンジンスタートスイッチの操作状態、携帯機2が車室内にあるか否かと言った状況に応じて、エンジンを始動又は停止させるためのエンジン制御指令を、図示しないエンジンECUへ出力する。エンジンECUは、制御部11からのエンジン制御指令に従って、エンジンを始動し又は停止する。
【0044】
図3は、携帯機2の一構成例を示すブロック図である。携帯機2は、該携帯機2の各構成部の動作を制御する制御部21を備える。制御部21には、送信部22、受信部23、信号強度測定部23b、切替器23c及び記憶部24が設けられている。
【0045】
制御部21は、例えば一又は複数のCPU、マルチコアCPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、タイマ等を有するマイコンである。制御部21のCPUは入出力インタフェースを介して送信部22、受信部23及び信号強度測定部23bに接続されている。制御部21は記憶部24に記憶されている制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、携帯機2の車室内外判定に必要な情報を車載機1へ送信する各種処理を実行する。
【0046】
記憶部24は、記憶部14と同様の不揮発性メモリである。記憶部24は、制御部21が携帯機2の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の車室内外判定を行うための制御プログラムを記憶している。制御プログラムによって制御部21は、車室内外判定に必要な情報を含む応答信号等を車載機1へ送信する処理を実行する。また、記憶部24は、携帯機2を識別するための携帯機識別子を記憶している。
図3では制御部21及び記憶部24を別体の構成部として図示しているが、制御部21の内部に記憶部24を備えても良い。
【0047】
受信部23には、3つのコイルを互いに直交する方向に向けて配置した3軸アンテナ23aが切替器23cを介して接続されている。受信部23は、車載機1から送信される無線信号を、3軸アンテナ23a及び切替器23cを通じて受信する。3軸アンテナ23にて受信した3つの無線信号は切替器23cに入力される。切替器23cは、制御部21の制御に従って、一つの無線信号を選択する。受信部23は、切替器23cによって選択された無線信号から搬送波の成分を除去して受信信号を抽出し、抽出された受信信号を制御部21へ出力する回路である。搬送波としては30kHz〜300kHzのLF帯を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0048】
また携帯機2は車載機1から送信される無線信号を、3軸アンテナ23aを通じて受信し、切替器23cにより選択した無線信号の受信信号強度を測定し、測定された受信信号強度を制御部21へ出力する信号強度測定部23bを備える。
制御部21は車載機1から信号強度測定用の無線信号が送信されるタイミングに合わせて、3軸アンテナ23aからの3つの無線信号をそれぞれ選択し、選択された無線信号の受信信号強度を信号強度測定部23bによって測定する。つまり、制御部21は、車載機1から送信される無線信号の振幅方向における受信信号強度ではなく、3軸アンテナ23aの直交する3つの方向における該受信信号強度の成分を測定する。制御部21は、測定された受信信号強度の成分からベクトル計算を行い、車載機1から送信される無線信号の振幅方向における受信信号強度を算出する。従って、制御部21は、車両Cに対する携帯機2の向き又は姿勢に拘わらず一定の受信信号強度を得ることが可能となる。以下では、特に断らない限り、ベクトル計算によって算出された受信信号強度を、受信信号強度と呼ぶ。
なお、ここでは制御部21が受信信号強度を算出する例を説明したが、3軸アンテナ23aを通じて受信した各信号の受信信号強度を携帯機2から車載機1へ送信し、車載機1の制御部11が受信信号強度の算出を行っても良い。
【0049】
送信部22は、制御部21により入力された応答信号等を、搬送波を用いて変調し、送信アンテナ22aを通じて無線信号を送信する回路である。搬送波としては300MHz〜3GHzのUHF帯を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0050】
次に車載機1の記憶部14が記憶している判定式について説明する。記憶部14は車室内空間を包含する相異なる複数の領域を規定する判定式を記憶する。本実施形態1では、2つの領域として記憶部14は、携帯機2が第1領域61及び第2領域62の内側にあるか否かを判定するための判定式を記憶している。
【0051】
図4は、第1領域61を示す概念図である。
図4Aは第1領域61の平面図、
図4Bは第1領域61の立面図である。第1領域61は3次元の空間であり、
図4に示すように車両Cの右側面に倣う境界面を有し、車室内空間を包含する形状である。従って、車室を構成する左側壁も第1領域61に包含されている。第1領域61は、車室内空間の全体及び車室外の一部を含むようにすると良い。
図4中、ハッチングを付した部分が車室内空間である。前記車室内空間は、例えば車室内に居る使用者によって、携帯機2を配置させることが可能な空間である。
第1領域61の境界面と、車室の内側面とは完全には一致していないため、第1領域61における携帯機2の内外判定を行っても、携帯機2の車室内外判定を正確に行うことができない。しかし、少なくとも第1領域61の境界面の一部は、車室の右内側面と略一致しているため、携帯機2が車両Cの右側面近傍にある場合に限れば、携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0052】
このような第1領域61は、
図4中星印で示すように、第1送信アンテナ31、第2送信アンテナ32及び第3送信アンテナ33からそれぞれ送信された信号の受信信号強度が所定の条件を充足する領域として規定することができる。具体的には、第1領域61は、下記式(1)及び(2)で表される2つの値(X1,Y1)が所定の判定式を充足する領域である。当該判定式は、例えば、X1及びY1の2次多項式で表される。
X1=RSSI_1+RSSI_2×k1・・・(1)
Y1=RSSI_3+RSSI_2×k2・・・(2)
但し、
RSSI_1:第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度
RSSI_2:第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度
RSSI_3:第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度
k1:所定の第1の重み係数
k2:所定の第2の重み係数
【0053】
第1領域61を規定する判定式は、車両用通信システムの製造工程において算出され、記憶部14は算出された判定式を記憶する。第1領域61の判定式を構成する各種係数は、携帯機2を車両Cの右側面内外の複数箇所に配置して受信信号強度を測定することによって得られる標本値X1及びY1に基づいて算出される。なお、受信信号強度の標本値を測定する装置は必ずしも携帯機2である必要は無く、携帯機2によって測定される受信信号強度に対応する信号の強度を測定できる測定機器であれば、特に限定されることは無い。
重み係数k1及びk2も判定式と同様、第1領域61の判定式を作成する製造工程において決定されるものであり、記憶部14は決定された重み係数k1及びk2を予め記憶する。なお、第3送信アンテナ33は車両Cの幅方向略中心部に設けられている場合、重み係数k2は重み係数k1より小さい構成が好ましい。第3送信アンテナ33は車両Cの幅方向略中心部に設けられているため、第3送信アンテナ33に係る受信信号強度の補正量は比較的小さくて済むためである。
【0054】
図5は、第2領域62を示す概念図である。
図5Aは第2領域62の平面図、
図5Bは第2領域62の立面図である。第2領域62は3次元の空間であり、
図5に示すように車両Cの左側面に倣う境界面を有し、車室内空間を包含する形状である。従って、車室を構成する右側壁も第2領域62に包含されている。第2領域62は、車室内空間の全体及び車室外の一部を含むようにすると良い。
図5中、ハッチングを付した部分が車室内空間である。
【0055】
第2領域62は、
図5中星印で示すように、第1送信アンテナ31、第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度が所定の条件を充足する領域として規定することができる。具体的には、第2領域62は、下記式(3)及び(4)で表される2つの値(X2,Y2)が所定の判定式を充足する面である。当該判定式は、例えば、X2及びY2の2次多項式で表される。
X2=RSSI_1+RSSI_4×k3・・・(3)
Y2=RSSI_3+RSSI_4×k4・・・(4)
但し、
RSSI_1:第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度
RSSI_3:第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度
RSSI_4:第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度
k3:所定の第3の重み係数
k4:所定の第4の重み係数
【0056】
第2領域62の判定式及び重み係数k3,k4も、第1領域61と同様にして、第1領域61の判定式を作成する製造工程において決定され、記憶部14は算出された判定式及び重み係数k3,k4を記憶する。第2領域62の判定式を構成する各種係数は、携帯機2を車両Cの左側面内外の複数箇所に配置して受信信号強度を測定することによって得られる標本値X2及びY2に基づいて算出される。
【0057】
図6は、車室内空間に対応する領域を示す概念図である。
図6中、ハッチングで示した範囲が車室内空間に対応する領域である。第1領域61及び第2領域62は車室内空間を包含しており、第1領域61及び第2領域62の境界面はそれぞれ車両Cの右側面及び左側面に倣っているため、第1領域61及び第2領域62の全ての内側にある空間は車室内空間と略一致する。
【0058】
ここで、携帯機2が第1領域61の内側にあるか否かを判定する際、車室内の第1及び第3送信アンテナ31、33からそれぞれ送信された信号の受信信号強度のみならず、車室外の第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を利用する理由を説明する。
【0059】
図7は、第1及び第3送信アンテナ31、33の信号のみを用いた場合の第1領域161を示す概念図、
図8は、凹んだ車室内空間を示す概念図である。第1及び第3送信アンテナ31、33から送信された信号の受信信号強度を用いて、車両Cの右側面に倣う境界面を有する第1領域161を規定しようとすると、
図7に示すように、車両Cの左後部が凹んでしまい、車室内空間を包含できない。車室内空間を包含するように第1領域161の境界面を規定しようとすると、第1領域161の右側の境界面が歪み、車両Cの右内側面に倣う境界面を形成でき無い。
第1領域161の左後部が凹み、車室内空間を包含できなくなると、
図8に示すように、第1領域161及び第2領域62それぞれの内側にある領域も歪んでしまい、携帯機2の車室内外判定を行うことができ無い。
そこで、本実施形態1では、車両Cの助手席側(左側)のドアミラーに設けられた第2送信アンテナ32の受信信号強度も利用し、
図4に示すような第1領域61を形成してある。
【0060】
図9は、操作要求に対する処理の手順を示すフローチャートである。外部から操作要求があった場合、車載機1及び携帯機2は以下の処理を実行する。操作要求とは、例えばエンジンスタートスイッチの操作によるエンジンの始動又は停止の要求、車両ドアリクエストスイッチの操作による車両ドアの施錠又は解錠の要求等である。例えば、車両ドアリクエストスイッチの操作に応じたリクエスト信号が車載機1に入力された場合、エンジンスタートスイッチの操作に応じたエンジンスタート信号が携帯機21に入力された場合、車載機1は処理を開始する。
【0061】
車載機1の制御部11は、車載送信部13によって、送信アンテナ(3)からウェイクアップ信号を送信させる(ステップS101)。
【0062】
ウェイクアップ信号を受信部23にて受信した携帯機2の制御部21は、スリープ状態からアクティブ状態へ起動し、自身の携帯機識別子を送信部22にて車載機1へ送信する(ステップS102)。
【0063】
車載機1の制御部11は、携帯機2から送信された携帯機識別子を車載受信部12にて受信する。そして、制御部11は、受信した携帯機識別子を用いて認証用のデータを作成し、該データを含むチャレンジ信号を車載送信部13によって、送信アンテナ(3)から送信させる(ステップS103)。
【0064】
制御部21は、チャレンジ信号を受信部23にて受信し、受信したチャレンジ信号に含まれるデータを用いて車載機1の正当性を確認し、車載機1が正当であると確認された場合、車載機1が携帯機2を認証するためのデータを作成し、該データを含む応答信号を送信部22にて車載機1へ送信する(ステップS104)。
【0065】
車載機1の制御部11は、携帯機2から送信された応答信号を車載受信部12にて受信し、受信した応答信号に含まれるデータを用いて携帯機2の認証を行う(ステップS105)。認証に成功したと判定した場合(ステップS105:YES)、制御部11は、携帯機2の車室内外判定処理のサブルーチンを実行する(ステップS106)。つまり、制御部11は、携帯機2が車室内にあるか、車室外にあるかの判定を行う。車室内外判定の結果は数値で表される。例えば携帯機2が車室内にある場合、車室内外判定結果の数値は1、車室外にある場合、車室内外判定結果の数値は0であるものとする。
【0066】
次いで、制御部11は、車室内外判定の結果と、操作要求の内容によって予め定められている期待値とが整合しているか否かを判定する(ステップS107)。例えば、エンジンスタートの操作に対する期待値は1であり、車両ドアリクエストスイッチの操作によって車両ドアを解錠する操作に対する期待値は0である。
【0067】
車室内外判定の結果と、期待値とが整合していると判定した場合(ステップS107:YES)、制御部11は、操作要求を受領し、操作要求に応じた処理を実行する(ステップS108)。例えば、エンジンスタートスイッチの操作が行われた場合、エンジンを始動又は停止させるためのエンジン制御指令をエンジンECUへ出力する処理を実行する。また、車両ドアリクエストスイッチの操作が行われた場合、車両ドアの施錠又は解錠を指示する車両ドア制御信号をドアECUへ出力する処理を実行する。
【0068】
車室内外判定の結果と、期待値とが整合していないと判定した場合(ステップS107:NO)、又は携帯機2の認証に失敗したと判定した場合(ステップS105:NO)、制御部11は、操作要求を棄却し、要求棄却に係る処理を実行し(ステップS109)、処理を終える。要求棄却に係る処理は、例えばエンジンスタートスイッチ操作が行われた場合であって、携帯機2が車室内に無い場合に警告音を発する等の処理である。なお、要求棄却に係る処理は必須では無い。
【0069】
図10は、実施形態1における車室内外判定サブルーチンの処理手順を示すフローチャート、
図11は、実施形態1における重み付け加算の方法を示す概念図である。特に、
図10は、エンジンスタートスイッチの操作が行われた場合の車室内外判定に好適な処理手順を示している。車載機1の制御部11は、車載送信部13によって、複数の各送信アンテナ(3)から車室内外判定のための受信信号強度測定用の信号を順次送信させる(ステップS111)。
【0070】
携帯機2の制御部21は、各送信アンテナ(3)から送信された信号を受信部23にて受信し、信号強度測定部23bが測定した各信号の受信信号強度を取得する。そして、制御部21は、測定した受信信号強度を含む応答信号を送信部22にて車載機1へ送信する。
【0071】
車載機1の制御部11は、携帯機2から送信された応答信号を車載受信部12にて受信する(ステップS112)。次に制御部11は、車載受信部12が受信した応答信号に含まれる受信信号強度の内、特に
図11A中星印で示すように、第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を重み付け加算する(ステップS113)。
図11A中、破線の楕円で囲まれた2つの星印が加算対象になる信号の送信元の送信アンテナ(3)を示している。また、制御部11は、
図11A中星印で示すように、第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を重み付け加算する(ステップS114)。ステップS113及びステップS114にて行う重み付け加算によって得られる2つの値X1及びY1は、上記式(1)及び(2)で表される。
【0072】
次いで、制御部11は第1領域61の判定式を記憶部14から読み出し、ステップS113及びステップS114にて重み付け加算された値X1及びY1が判定式を充足するか否かを判定する(ステップS115)。第1領域61に係る判定式を充足しないと判定した場合(ステップS115:NO)、制御部11は、携帯機2が車室外にあると判定し(ステップS116)、処理を終える。
【0073】
第1領域61に係る判定式を充足すると判定した場合(ステップS115:YES)、制御部11は、車載受信部12が受信した応答信号に含まれる受信信号強度の内、特に
図11Bに示すように、第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度に、第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度を重み付け加算する(ステップS117)。また、制御部11は、
図11Bに示すように、第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度に、第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度を重み付け加算する(ステップS118)。ステップS117及びステップS118にて行う重み付け加算によって得られる2つの値X2及びY2は、上記式(3)及び(4)で表される。
【0074】
次いで、制御部11は第2領域62の判定式を記憶部14から読み出し、ステップS117及びステップS118にて重み付け加算された値X2及びY2が判定式を充足するか否かを判定する(ステップS119)。第2領域62に係る判定式を充足しないと判定した場合(ステップS119:NO)、制御部11は、携帯機2が車室外にあると判定し(ステップS116)、処理を終える。第2領域62に係る判定式を充足すると判定した場合(ステップS119:YES)、制御部11は、携帯機2が車室内にあると判定し(ステップS120)、処理を終える。
【0075】
以上の通り、本実施形態1に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、車室内の第1送信アンテナ31が車両Cの幅方向右側へ偏倚している場合であっても、精度良く携帯機2の位置判定を行うことができる。
具体的には、第2送信アンテナ32に係る受信信号強度を、第1及び第3送信アンテナ31、33に係る受信信号強度に重み付け加算することによって、
図4に示すように、車両Cの右側面に倣う境界面を有し、かつ車室内空間を包含する第1領域61の内側に携帯機2があるか否かを判定することができる。つまり、車両Cの右側面において携帯機2が車室内にあるか否かを精度良く判定することができる。
同様にして、第4送信アンテナ34に係る受信信号強度を、第1及び第3送信アンテナ31、33に係る受信信号強度に重み付け加算することによって、
図5に示すように、車両Cの左側面に倣う境界面を有し、かつ車室内空間を包含する第2領域62の内側に携帯機2があるか否かを判定することができる。つまり、車両Cの左側面において携帯機2が車室内にあるか否かを精度良く判定することができる。
そして、携帯機2が第1領域61及び第2領域62の双方の内側にあるか否かを判定することにより、携帯機2が
図6に示すような車室内空間の内側にあるか否かを精度良く判定することができる。
特に、本実施形態1によれば、車両ドアリクエストスイッチの操作等の補助入力が無くとも、精度良く携帯機2の位置判定を行うことができる。例えば、エンジンを始動するプッシュスタートシステムにおいて、エンジンスタートスイッチの操作が行われた場合に、携帯機2が車室内にあるか否かを精度良く判定し、エンジンを始動又は停止させることができる。
【0076】
また、第1送信アンテナ31及び第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を加算する簡単な演算処理によって、第1領域61の凹みを補正し、携帯機2の位置判定を行うことができる。
【0077】
更に、第1送信アンテナ31及び第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を重み付け加算することによって、より精度良く車両Cの幅方向一方の側面に倣う境界面を有し、車室内空間を包含する第1領域61を形成し、携帯機2の位置判定を行うことができる。
【0078】
更にまた、本実施形態1に係る車両用通信システムは、ステップS113及びステップS114にて重み付け加算された値X1及びY1が判定式を充足するか否かを判定する構成であるため、車室内空間の全体及び車室外の一部を含み、かつ車両Cの右側面及び左側面に倣う境界面を有する第1領域61又は第2領域62を用いた車室内外判定が可能になる。言い換えると、車室内にある携帯機2が車室外にあると誤判定されないように、第1領域61及び第2領域62を拡げることができ、携帯機2が車室内にあるか否かを精度良く判定することができる。
【0079】
更にまた、第1領域61及び第2領域62は、車室内空間の全体及び車室外の一部を含むため、車室内にある携帯機2が車室外にあると誤判定される可能性を大幅に低減することができる。その一方で、第1領域61及び第2領域62は、車両Cの右側面及び左側面に倣う境界面を有するため、当該境界面に関して、携帯機2が車室内にあるか車室外にあるかを精度良く判定することができる。
【0080】
なお、本実施形態1では、第1送信アンテナ31が車両Cの幅方向中央部から右側へ偏倚している例を説明したが、車両Cの左側へ偏倚している場合も、同様にして本発明を適用することができる。
また、本実施形態1では第1送信アンテナ31及び第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を重み付け加算する例を説明したが、所望の第1領域61及び第2領域62を形成できれば、重み付け加算を行う必要は無い。つまり、単純に、第1送信アンテナ31及び第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を加算するように構成しても良い。
更に、本実施形態1では、車室内の2本の送信アンテナ(3)、つまり第1送信アンテナ31及び第3送信アンテナ33を利用する例を説明したが、所望の第1領域61及び第2領域62を形成できれば、第3送信アンテナ33を利用しない構成であっても良い。つまり、第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナから送信された信号の受信信号強度を加算することによって得られる値と、閾値とを比較することによって、携帯機2が第1領域61の内側にあるか否かを判定するように構成しても良い。
【0081】
(実施形態2)
本実施形態2に係る車両用通信システムは、車室内外判定の処理手順が実施形態1と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0082】
図12は、実施形態2における車室内外判定サブルーチンの処理手順を示すフローチャート、
図13は、実施形態2における車室内外判定の方法を示す概念図である。特に、
図12は、運転席側のリクエストスイッチの操作が行われた場合の車室内外判定に好適な処理手順を示している。車載機1の制御部11は、車載送信部13によって、複数の各送信アンテナ(3)から車室内外判定のための受信信号強度測定用の信号を順次送信させ(ステップS211)、携帯機2から送信された応答信号を車載受信部12にて受信する(ステップS212)。次に制御部11は、車載受信部12が受信した応答信号に含まれる受信信号強度の内、特に
図13A中星印で示すように、第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を重み付け加算する(ステップS213)。また、制御部11は、
図13A中星印で示すように、第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度に、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を重み付け加算する(ステップS214)。
【0083】
次いで、制御部11は、第1領域61の判定式を記憶部14から読み出し、ステップS213及びステップS214にて重み付け加算された値が判定式を充足するか否かを判定する(ステップS215)。第1領域61に係る判定式を充足すると判定した場合(ステップS215:YES)、つまり、車室内にあると判定した場合、制御部11は、処理を終える。
【0084】
第1領域61に係る判定式を充足しないと判定した場合(ステップS215:NO)、制御部11は、
図13Bに示すように、第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度が所定強度以上であるか否かを判定する(ステップS216)。
図13B中、星印を囲む2点鎖線は、第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度が所定強度にある位置を示している。第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度が所定強度以上で無いと判定した場合(ステップS216:NO)、制御部11は、処理を終える。第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度が所定強度以上であると判定した場合(ステップS216:YES)、制御部11は、携帯機2が車室外にあると判定し(ステップS217)、処理を終える。つまり、携帯機2は、運転席側の車室外にあると判定される。
【0085】
実施形態2に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、携帯機2が第1領域61の内側にあるか否かを判定する処理と、携帯機2が車両Cの右側面近傍にあるか否かを判定する処理とを組み合わせることによって、携帯機2の位置判定を行う。携帯機2が車両Cの右側面近傍にあるか否かは、第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度と、所定強度とを比較する簡単な処理を実行できる。従って、実施形態1に比べ、より簡単な処理で携帯機2が車室内にあるか否かを判定することができる。
【0086】
なお、実施形態2では運転席側のリクエストスイッチが操作された場合の車室内外判定を説明したが、助手席側(左側)のリクエストスイッチが操作された場合も同様にして車室内外判定を行うことができる。例えば、携帯機2が第2領域62内にあるか否かを判定し、第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度が所定強度以上であるか否かを判定すれば良い。携帯機2が第2領域62の外側にあり、前記信号の受信信号強度が所定強度以上である場合、携帯機2が車室外にあると判定される。
【0087】
(実施形態3)
本実施形態3に係る車両用通信システムは、車室内外判定の処理手順が実施形態2と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0088】
図14は、実施形態3における車室内外判定サブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。特に、
図14は、運転席側のリクエストスイッチの操作が行われた場合の車室内外判定に好適な処理手順を示している。車載機1の制御部11は、車載送信部13によって、複数の各送信アンテナ(3)から車室内外判定のための受信信号強度測定用の信号を順次送信させ(ステップS311)、携帯機2から送信された応答信号を車載受信部12にて受信する(ステップS312)。次に制御部11は、第1送信アンテナ31、第2送信アンテナ32、第3送信アンテナ33からそれぞれ送信された信号の受信信号強度に基づいて、携帯機2が第1領域61の内側にあるか否かを判定するためのスカラーの判定値を算出する(ステップS313)。
【0089】
判定値は、例えば、下記式(5)で表される。
判定値=RSSI_1+RSSI_3+RSSI_2×k・・・(5)
但し、
RSSI_1:第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度
RSSI_2:第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度
RSSI_3:第3送信アンテナ33から送信された信号の受信信号強度
k:所定の重み係数
【0090】
次いで、制御部11は、ステップS313にて算出された判定値が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS314)。閾値以上であると判定した場合(ステップS314:YES)、つまり、携帯機2が車室内にあると判定した場合、制御部11は、処理を終える。閾値未満であると判定した場合(ステップS314:NO)、制御部11は、第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度が所定強度以上であるか否かを判定する(ステップS315)。第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度が所定強度以上で無いと判定した場合(ステップS315:NO)、制御部11は、処理を終える。第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度が所定強度以上であると判定した場合(ステップS315:YES)、制御部11は、携帯機2が車室外にあると判定し(ステップS316)、処理を終える。つまり、携帯機2は、運転席側の車室外にあると判定される。
【0091】
本実施形態3に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、複数の送信アンテナ(3)に係る受信信号強度の加算処理によってスカラーの判定値を算出し、該判定値と、閾値とを比較する簡単な演算処理で携帯機2の位置判定を行うことができる。
【0092】
実施形態3では、実施形態2における第1領域の内外判定を、上記式(5)で表される判定値と、閾値との比較によって行う例を説明したが、言うまでもなく、実施形態1における第1領域の内外判定を、判定値を利用して行っても良い。また、第2領域の内外判定を、判定値を利用して行っても良い。携帯機2が第2領域62の内側にあるか否かを判定するためのスカラーの判定値は、例えば、下記式(6)で表される。
判定値=RSSI_1+RSS3_+RSSI_4×k・・・(6)
但し、
RSSI_1:第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度
RSSI_2:第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度
RSSI_4:第4送信アンテナ34から送信された信号の受信信号強度
k:所定の重み係数
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。