(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的な実施形態について、半導体発光装置の製造方法および蛍光体シートの製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、本明細書の技術は実施形態に限定されるものではない。また、後述する半導体発光装置の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってももちろん構わない。そして、それぞれの図における各層の厚みは、概念的に示したものであり、実際の厚みを示しているわけではない。
【0017】
(第1の実施形態)
1.半導体発光装置
図1は、本実施形態の発光装置100の概略構成を示す図である。発光装置100は、半導体発光素子110を有する半導体発光装置である。
図1に示すように、発光装置100は、半導体発光素子110と、支持基板120と、接合層130と、接着剤141と、蛍光体含有シリコーン樹脂142と、蛍光体シート150と、を有する。半導体発光素子110は、接合層130により支持基板120に接合されている。
【0018】
半導体発光素子110は、サファイア基板111と、半導体層112と、第1の電極113と、を有する。サファイア基板111は、半導体層112を成長させるための成長基板である。半導体層112は、n型半導体層と発光層とp型半導体層とを有する。発光層は、正孔と電子とが再結合して発光する層である。第1の電極113は、n電極とp電極とを有する。n電極は、n型半導体層に電気的に接続されている。p電極は、p型半導体層に電気的に接続されている。
【0019】
支持基板120は、絶縁基板121と、第2の電極122と、を有する。絶縁基板121は、発光装置100の各部を支持するための基板である。第2の電極122は、第1の電極113に電気的に接続されるn側電極およびp側電極を有する。また、第2の電極122は、絶縁基板121の上に形成された回路を有していてもよい。第2の電極122のn側電極は、接合層130を介して第1の電極113のn電極に電気的に接続されている。第2の電極122のp側電極は、接合層130を介して第1の電極113のp電極に電気的に接続されている。
【0020】
接合層130は、半導体発光素子110と支持基板120とを接合するための層である。前述したように、接合層130は、半導体発光素子110の第1の電極113と、支持基板120の第2の電極122と、を電気的に接続するためのものである。接合層130は、例えば、Au−Sn合金、銀もしくは銅のナノペースト、金バンプ、のいずれかである。または、接合層130は、上記以外のものであってもよい。ただし、接合層130は、導電性の材料であり、かつ、接合の可能な材料である。
【0021】
接着剤141は、サファイア基板111と蛍光体シート150とを接着するためのものである。接着剤141は、例えば、シリコーン樹脂である。または、透明な接着剤であれば他の材質であってもよい。
【0022】
蛍光体含有シリコーン樹脂142は、蛍光体を含有するシリコーン樹脂である。蛍光体含有シリコーン樹脂142は、支持基板120の上の隙間を充填している。蛍光体含有シリコーン樹脂142の蛍光体は、例えば、YAGである。または、YAG:Ceである。もちろん、その他の蛍光体を用いてもよい。蛍光体の材料については、後述する。
【0023】
蛍光体シート150は、蛍光体を含有するシートである。蛍光体シート150が含有する蛍光体は、蛍光体含有シリコーン樹脂142が含有するものと同じでよい。蛍光体シート150は、後述するように、熱処理を受けているため、通常のシリコーンを材料とするシートに比べて十分に硬い。
【0024】
2.蛍光体シートの原材料
2−1.シリコーン樹脂
蛍光体シート150の原材料は、例えば、シリコーン樹脂である。シリコーン樹脂として、例えば、下記の(A)−(D)の組成を含む架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応された架橋物を用いることが好ましい。
【0025】
(A)平均単位式:
( R
1 2 SiO
2/
2)
a ( R
1 SiO
3/
2)
b ( R
2 O
1/
2)
c
(式中、R
1 はフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基であり、ただし、R
1 の65〜75モル%はフェニルであり、R
1 の10〜20モル%はアルケニル基であり、R
2 は水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、a、b、cは、0.5≦a≦0. 6、0. 4≦b≦0. 5、0≦c≦0. 1、かつa+b=1を満たす数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)一般式:
R
3 3 Si O( R
3 2 Si O)
m Si R
3 3
(式中、R
3 はフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基であり、ただし、R
3 の40〜70モル%はフェニルであり、R
3 の少なくとも1個はアルケニル基であり、mは5〜50の整数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン{(A)成分100重量部に対して5〜15重量部}
(C)一般式:
( HR
4 2 SiO)
2 SiR
4 2
(式中、R
4 はフェニル基、または炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基であり、ただし、R
4 の30〜70モル%はフェニルである。)
で表されるオルガノトリシロキサン{(A)成分中と(B)成分中のアルケニル基の合計に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0. 5〜2となる量}、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒{(A)成分と(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するに十分な量}
を少なくとも有する架橋性シリコーン組成物が好ましく用いられる。
【0026】
2−2.蛍光体
緑色に発光する蛍光体として、例えば、SrAl
2 O
4 :Eu、Y
2 SiO
5 :Ce,Tb、MgAl
11O
19:Ce,Tb、Sr
7 Al
12O
25:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Ga
2 S
4 :Euが挙げられる。
【0027】
青色に発光する蛍光体として、例えば、Sr
5 (PO
4 )
3 Cl:Eu、(SrCaBa)
5 (PO
4 )
3 Cl:Eu、(BaCa)
5 (PO
4 )
3 Cl:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)
2 B
5 O
9 Cl:Eu,Mn、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)(PO
4 )
6 Cl
2 :Eu,Mnが挙げられる。
【0028】
緑色から黄色に発光する蛍光体として、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦括されたイットリウム・ガドリニウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット酸化物蛍光体、および、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・ガリウム・アルミニウム酸化物蛍光体が挙げられる(いわゆるYAG系蛍光体)。具体的には、Ln
3 M
5 O
12:R(Lnは、Y、Gd、Laから選ばれる少なくとも1以上である。Mは、Al、Caの少なくともいずれか一方を含む。Rは、ランタノイド系である。)、(Y
1-x Ga
x )
3 (Al
1-y Ga
y )
5 O
12:R(Rは、Ce、Tb、Pr、Sm、Eu、Dy、Hoから選ばれる少なくとも1以上である。0<x<0.5、0<y<0.5である。)を使用することができる。
【0029】
赤色に発光する蛍光体として、例えば、Y
2 O
2 S:Eu、La
2 O
2 S:Eu、Y
2 O
3 :Eu、Gd
2 O
2 S:Euが挙げられる。
【0030】
また、青色LEDに対応して発光する蛍光体としては、Y
3 (Al,Ga)
5 O
12:Ce,(Y, Gd)
3 Al
5 O
12:Ce,Lu
3 Al
5 O
12:Ce,Y
3 Al
5 O
12:CeなどのYAG系蛍光体、Tb
3 Al
5 O
12:CeなどのTAG系蛍光体、(Ba,Sr)
2 SiO
4 :Eu系蛍光体やCa
3 Sc
2 Si
3 O
12:Ce系蛍光体、(Sr,Ba,Mg)
2 SiO
4 :Euなどのシリケート系蛍光体、(Ca,Sr)
2 Si
5 N
8 :Eu、(Ca,Sr)AlSiN
3 :Eu、CaSiAlN
3 :Eu等のナイトライド系蛍光体、Cax(Si,Al)
12(O,N)
16:Euなどのオキシナイトライド系蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si
2 O
2 N
2 :Eu系蛍光体、Ca
8 MgSi
4 O
16Cl
2 :Eu系蛍光体、SrAl
2 O
4 :Eu,Sr
4 Al
14O
25:Eu等が挙げられる。
【0031】
3.蛍光体シートの製造方法
ここで、蛍光体シートの製造方法について説明する。本実施形態の蛍光体シート製造工程は、シリコーン樹脂に蛍光体を混合する混練工程と、蛍光体を含有するシリコーン樹脂を第1の温度で熱処理することにより硬化してシリコーンシートに成形する第1の熱処理工程と、シリコーンシートを第1の温度より高い第2の温度で熱処理することによりさらに硬化して蛍光体シートに成形する第2の熱処理工程と、を有する。
【0032】
3−1.混練工程
まず、液状もしくはスラリー状のシリコーン樹脂に蛍光体を混合する。そして、シリコーン樹脂の内部に蛍光体を拡散させる。この混練により、蛍光体を含有するシリコーン樹脂の混合物が製造される。
【0033】
3−2.第1の熱処理工程(シリコーンシート成形工程)
次に、シリコーン樹脂の混合物を熱硬化プレスにより成形する。具体的には、液状もしくはスラリー状のシリコーン樹脂を金型の凹部に流し込む。次に、金型の凹部に蓋で挟むとともに金型および蓋を加熱する。熱処理温度は、120℃以上150℃以下である。熱処理時間は、30分以上3時間以下である。これらの数値範囲は例示であり、これら以外の数値範囲を用いてもよい。これにより、シリコーン樹脂は固化してシリコーンシートS1となる(
図2参照)。この段階では、シリコーンシートS1は、ゴム状である。そのため、人の力を加えることにより、容易に変形する。そして、シリコーンシートS1は、弾性の部材である。
【0034】
3−3.第2の熱処理工程(事後硬化工程)
図2に示すシリコーンシートS1を板部材1100で両面の側から挟む。
図3に示すように、板部材1100は、板状の部材である。板部材1100の材質は、例えば、ステンレス、真鍮、アルミ合金、ガラスのいずれかである。板部材1100の材質は、熱処理により酸化しにくい材質であればその他の材質であってもよい。
【0035】
図3に示すように、シリコーンシートS1を第1の板部材(1100)および第2の板部材(1100)で挟んだ状態でシリコーンシートS1を熱処理する。この加熱により、板部材1100が反ることはない。そのため、シリコーンシートS1も、反らない。熱処理温度は、170℃以上250℃以下である。熱処理時間は、10時間以上10000時間以下である。これらの数値範囲は例示であり、これら以外の数値範囲を用いてもよい。これにより、シリコーンシートS1は、さらに硬化して蛍光体シート150となる。第2の熱処理工程を経た蛍光体シート150は、後述するように十分に硬い。
【0036】
このように、第2の熱処理工程では、シリコーンシートS1は事後硬化する。本明細書で事後硬化とは、液状もしくはスラリー状のシリコーン樹脂を固化して固体としたときの硬度に比べて、より高い硬度とすることをいう。この事後硬化は、第1の熱処理工程よりも高い温度で第2の熱処理工程を実施することにより生じる。
【0037】
そして、後述するように、第2の熱処理工程では、シリコーンシートS1の質量に対する蛍光体シート150の質量の減少率を2.5%以上7.5%以下の範囲内とする。
【0038】
4.蛍光体シートの特性
4−1.蛍光体シートの硬度
通常のシリコーン樹脂は、液状のシリコーン樹脂を固化したものである。ただし、通常のシリコーン樹脂は、ゴム状であり、容易に弾性変形する。そのため、人の力で容易に変形する。
【0039】
これに対して、蛍光体シート150は、通常のシリコーン樹脂に比べて十分に硬い。本実施形態の蛍光体シート150は、ゴム状のシリコーンシートS1にさらに熱処理を加えたものである。この熱処理により、シリコーン樹脂は、ゴム状からガラス状に変化する。そのため、蛍光体シート150は、ゴムの硬度とガラスの硬度との中間程度の硬度を備える。蛍光体シート150は、人の力でわずかに変形する。
【0040】
4−2.蛍光体シートの線膨張係数
したがって、このガラス状に近い蛍光体シート150の線膨張係数は、基板材料の線膨張係数に近い。しかし、基板材料の線膨張係数の測定方法と、シリコーン樹脂の線膨張係数の測定方法との間で、規格は異なっている。したがって、一概に、数値を比べることは困難である。
【0041】
4−3.蛍光体シートの質量変化率
第2の熱処理工程(事後硬化工程)により、シリコーンシートS1は、硬化する。そして、第2の熱処理工程において、シリコーンシートS1の質量は変化する。具体的には、シリコーンシートS1は、第2の熱処理工程を施されることによりある程度軽くなる。これは、シリコーン樹脂からアルキル基もしくはアルケニル基がある程度離脱するためであると考えられる。このように、アルキル基もしくはアルケニル基が離脱するため、シリコーンシートS1は、SiO
2 、すなわちガラスに近くなると考えられる。このように、蛍光体シート150は、ゴムの硬度とガラスの硬度との中間程度の硬度を備えている。
【0042】
このように、蛍光体シート150は、元の材料に比べて小さい質量を有している。蛍光体シート150の質量変化率(シリコーンシートS1の質量に対する蛍光体シート150の質量の減少率)は、2.5%以上7.5%以下の範囲内である。
【0043】
5.半導体発光装置の製造方法
5−1.半導体発光素子準備工程
半導体発光素子110を準備する。そのために、市販の半導体発光素子を購入してもよいし、半導体発光素子を製造してもよい。半導体発光素子110を製造するには、サファイア基板111に、半導体層112と、第1の電極113と、を形成する。
【0044】
5−2.支持基板準備工程
支持基板120を準備する。そのために、市販の支持基板を購入してもよいし、支持基板を製造してもよい。支持基板120を製造するには、絶縁基板121に、第2の電極122を形成する。
【0045】
5−3.接合工程
ここで、半導体発光素子110を支持基板120に接合する。その際に、半導体発光素子110の第1の電極113と、支持基板120の第2の電極122とが電気的に接続されるようにこれらを接合する。この接合に際して、Au−Sn系の半田を用いて半田接合することができる。また、銀ペースト、銅ペースト、金バンプ等を用いてもよい。これにより、第1の電極113と第2の電極122とは導通する。
【0046】
5−4.シリコーン樹脂充填工程
次に、半導体発光素子110を接合された支持基板120に、蛍光体含有シリコーン樹脂142を充填する。そして、蛍光体含有シリコーン樹脂142に熱処理を施す。これにより、蛍光体含有シリコーン樹脂142は、固化する。
【0047】
5−5.蛍光体シート製造工程
前述のように、蛍光体シート製造工程では、混練工程と、第1の熱処理工程と、第2の熱処理工程と、を実施する。
【0048】
5−6.蛍光体シート貼付工程
次に、半導体発光素子110のサファイア基板111の裏面に接着剤141を塗布する。そして、蛍光体シート150をサファイア基板111の裏面に接着剤141を介して貼り付ける。
【0049】
5−7.その他の工程
上記の他、熱処理工程、蛍光体シート150を切り出して多数の半導体発光装置100とする工程、等を実施してもよい。また、半導体発光素子準備工程、支持基板準備工程、蛍光体シート製造工程は、それぞれ独立した工程である。そのため、これらの順序は入れ替えてもよい。以上により、半導体発光装置100が製造される。
【0050】
6.実験
ここでは、第2の熱処理工程(事後硬化工程)について行った実験について説明する。そのために、第1の熱処理工程(シリコーンシート成形工程)において、130℃で1時間熱処理したシリコーン樹脂を用いた。そして、得られたシリコーンシートについて、条件を変えて第2の熱処理工程(事後硬化工程)を実施した。
【0051】
図4は、シリコーン樹脂の種類を変えた場合におけるシリコーンシートの熱処理時間と質量減少率との関係を示すグラフである。ここでは、シリコーン樹脂に蛍光体を添加していない。熱処理温度は200℃であった。
図4の横軸は熱処理時間である。
図4の縦軸は質量減少率である。
図4に示すように、熱処理時間の増加にともなって、シリコーンシートの質量は徐々に減少している。これは、前述したように、シリコーン樹脂からアルキル基もしくはアルケニル基が徐々に離脱するためであると考えられる。この傾向は、シリコーンAからシリコーンDまでで共通である。そして、熱処理時間を大きくするほど、シリコーン樹脂は固くなるという傾向も見られた。
【0052】
ここで、シリコーンシートの質量減少率が2.5%以上7.5%以下の場合に、得られたシリコーンシートは、好適な線膨張係数を備えていると考えられる。質量減少率が2.5%以上7.5%以下のシリコーンシートは、ゴム状からガラス状の間の状態にある。つまり、人がシリコーンシートに力を加えた際に、シリコーンシートはやや変形する。または、シリコーンシートはわずかに変形する。シリコーンシートの質量減少率が2.5%以上7.5%以下の場合には、シリコーンシートの線膨張係数は、サファイア基板111の線膨張係数に非常に近いと考えられる。
【0053】
なお、シリコーンシートの質量減少率が2.5%以上7.5%以下となるのは、熱処理時間がおよそ10時間以上10000時間以下の場合である。また、シリコーンシートの質量減少率が3%以上6%以下であるとなおよい。より好ましくは、シリコーンシートの質量減少率が3.5%以上5.5%以下である。
【0054】
図5は、シリコーン樹脂に混入する蛍光体の種類を変えた場合におけるシリコーンシートの熱処理時間と質量減少率との関係を示すグラフである。用いたシリコーンの種類は、シリコーンAである。熱処理温度は200℃であった。
図5の横軸は熱処理時間である。
図5の縦軸は質量減少率である。
図5に示すように、蛍光体の有無により質量減少率はわずかに変化する。しかし、蛍光体を有する場合の傾向は、蛍光体を有さない場合の傾向とほぼ同じである。また、蛍光体の種類により若干の差はあるものの、質量減少率の傾向は蛍光体の種類によってそれほど変わらない。なお、
図4および
図5では、質量減少率は負の値としてプロットされている。本明細書では、質量減少率は正の値として定義されている。
【0055】
7.変形例
7−1.成長基板
半導体発光装置100は、サファイア基板111を有する。しかし、半導体発光素子110の成長基板は、サファイア基板111以外の基板であってもよい。例えば、Si、SiC、GaN、AlN基板であってもよい。
【0056】
7−2.半導体層
半導体層112は、例えば、III 族窒化物半導体層である。しかし、GaAs系等、他のIII-V 族半導体層であってもよい。また、その他のSi系半導体層であってもよい。もちろん、その他の半導体層であってもよい。
【0057】
8.本実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、半導体発光装置100は、半導体発光素子110と支持基板120とを有する。そして、半導体発光素子110の基板の裏面には、接着剤141を介して蛍光体シート150が接着されている。ここで、蛍光体シート150は、適度な硬度を備えている。つまり、蛍光体シート150の線膨張係数は、サファイア基板111の線膨張係数とほぼ等しい。
【0058】
なお、以上に説明した実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。半導体層112の積層構造については、本実施形態で説明した構造に限らない。
【0059】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0060】
1.半導体発光装置
図6は、本実施形態の発光装置200の概略構成を示す図である。発光装置200は、半導体発光素子110を有する半導体発光装置である。
図6に示すように、発光装置200は、半導体発光素子110と、支持基板120と、接合層130と、蛍光体含有シリコーン樹脂241と、蛍光体シート150と、を有する。半導体発光素子110は、接合層130により支持基板120に接合されている。
【0061】
蛍光体含有シリコーン樹脂241は、蛍光体を含有するとともに蛍光体シート150を半導体発光素子110のサファイア基板111に接着する接着剤の役割も兼ねている。
【0062】
2.半導体発光装置の製造方法
本実施形態では、シリコーン樹脂充填工程および蛍光体シート貼付工程が一体の工程である。そのため、この蛍光体シート貼付工程のみについて説明する。この蛍光体シート貼付工程は、接合工程および蛍光体シート製造工程の後に実施される。
【0063】
2−1.蛍光体シート貼付工程
半導体発光素子110を接合された支持基板120に、蛍光体含有シリコーン樹脂241を充填する。そして、サファイア基板111の裏面に蛍光体シート150を貼り付ける。この後、蛍光体含有シリコーン樹脂241に熱処理を施す。この工程により、蛍光体含有シリコーン樹脂241が充填されるとともに、蛍光体シート150がサファイア基板111に貼り付けられる。
【0064】
3.変形例
第2の実施形態の技術に、第1の実施形態の変形例を適用してもよい。
【0065】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第2の熱処理工程に用いられる板部材が第1の実施形態と異なっている。そのため、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0066】
1.板部材
図7は、板部材1200を示す図である。
図8は、
図7のVIII-VIII 断面を示す断面図である。
図8に示すように、板部材1200は、多数の凹部1201を有している。板部材1200の材質は、第1の実施形態の板部材1100と同様である。
【0067】
2.蛍光体シートの製造方法
第1の熱処理工程までは、第1の実施形態と同じである。なお、第1の熱処理工程を実施した後のシリコーンシートS1は、弾性の材料である。
【0068】
2−1.第2の熱処理工程(事後硬化工程)
第2の熱処理工程では、シリコーンシートS1を板部材1200で挟む。そして、第1の実施形態の第2の熱処理工程と同様の条件で熱処理を実施する。この第2の熱処理工程を実施することにより、蛍光体シート150は、多数の凸部が配列された形状を有することとなる。
【0069】
3.変形例
3−1.板部材の形状
図9は、第1の変形例における板部材1300を示す図である。
図9に示すように、板部材1300は、凹凸部1301、1302を有している。凹凸部1301、1302は、円錐形状もしくは角錐形状の凹凸を有している。そのため、蛍光体シート150は、両面に凹凸を有することとなる。
【0070】
図10は、第2の変形例における板部材1400を示す図である。
図10に示すように、板部材1400は、凸部1401、1402を有している。凸部1401、1402は、半球状に近い形状の凸部を有している。そのため、蛍光体シート150は、両面に凹部を有することとなる。
【0071】
図11は、第3の変形例における板部材1500を示す図である。
図11に示すように、板部材1500は、その両面に凹部1501、1502を有している。凹部1501、1502は、半球状に近い形状の凹部を有している。そのため、蛍光体シート150は、両面に凸部を有することとなる。
【0072】
このように、第2の熱処理工程では、シリコーンシートS1を挟む第1の板部材および第2の板部材の少なくとも一方として、凹凸の形成されたものを用いる。これにより、発光装置からの光取り出し効率は向上する。
【0073】
3−2.その他の変形例
第3の実施形態および変形例の技術に、第1の実施形態の変形例を適用してもよい。