特許第6561839号(P6561839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ケミコン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6561839-電子部品およびその製造方法 図000002
  • 特許6561839-電子部品およびその製造方法 図000003
  • 特許6561839-電子部品およびその製造方法 図000004
  • 特許6561839-電子部品およびその製造方法 図000005
  • 特許6561839-電子部品およびその製造方法 図000006
  • 特許6561839-電子部品およびその製造方法 図000007
  • 特許6561839-電子部品およびその製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561839
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 17/02 20060101AFI20190808BHJP
   H01C 7/112 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01C17/02
   H01C7/112
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-547640(P2015-547640)
(86)(22)【出願日】2014年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2014005679
(87)【国際公開番号】WO2015072138
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-235138(P2013-235138)
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】相澤 昭▲伍▼
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−192539(JP,A)
【文献】 特開2005−277100(JP,A)
【文献】 特開2013−145794(JP,A)
【文献】 特開平09−199308(JP,A)
【文献】 特開2013−199571(JP,A)
【文献】 特開2006−002029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/02
H01C 7/112
H01C 1/034
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂を含む外装材を用いた電子部品の製造方法であって、
60〔重量%〕以上70〔重量%〕未満の範囲に添加量を制御した水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウム、および無極性溶媒が添加されたシリコーン樹脂を含む外装材に素子をディップする工程と、
前記素子の表面に形成された前記外装材を、第1の温度により所定状態まで乾燥させるとともに、前記第1の温度よりも高温の第2の温度により乾燥させて、前記無極性溶媒を蒸発させ、かつ、前記第2の温度での熱処理によりシリコーン樹脂成分を前記外装材の表面に表出させる乾燥工程と、
前記第2の温度での熱処理により前記外装材を硬化させるとともに前記表面に表出したシリコーン樹脂成分を硬化させる硬化工程とを含み、前記乾燥工程および前記硬化工程において、前記第1の温度により所定状態まで乾燥した前記外装材に対して前記第2の温度で熱処理を行うことで、前記外装材の深さ方向における前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの外装材における濃度を前記素子から表面に向けて勾配させることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの添加量が60〔重量%〕以上65〔重量%〕以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの平均粒径が15〔μm〕以上50〔μm〕未満の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記無極性溶媒は、蒸気圧が0.5〜10〔kPa〕であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
シリコーン樹脂を含む外装材を用いた電子部品であって、
前記シリコーン樹脂に無極性溶媒と、水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウムとが添加され、該水酸化アルミニウムもしくは該水酸化マグネシウムの添加量が60〔重量%〕以上70〔重量%〕未満の範囲であり、前記無極性溶媒が第1の温度による所定状態までの乾燥とともに、前記第1の温度よりも高温の第2の温度の熱処理により前記外装材の表面に表出して蒸発し、前記第2の温度の熱処理により前記シリコーン樹脂が前記外装材の表面に表出して硬化し、前記第1の温度により所定状態まで乾燥した前記外装材に対して前記第2の温度で熱処理を行うことで、前記シリコーン樹脂が前記外装材の深さ方向における前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの外装材における濃度を素子から表面に向けて勾配させていることを特徴とする電子部品。
【請求項6】
前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの平均粒径が15〔μm〕以上50〔μm〕未満の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記外装材は、該外装材表面から深さ方向の30〔%〕以内で、84ないし100〔%〕の濃度勾配を持つ水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウムを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、電圧非直線性抵抗器などの電子部品に関し、素子を覆う外装材の難燃化ないし不燃化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、電気機器などの各種機器では、軽量化のため、筐体などにプラスチックなど可燃材料が使用され、しかも、電子部品は機器の小型化要請などのため、実装の高密度化が図られ、電子部品の焼損が隣接する電子部品や機器全体を損傷させる原因になる。
【0003】
このような不都合から電子部品や機器を防護する電子部品として、バリスタ(電圧非直線性抵抗器)が用いられる。バリスタは、印加電圧の上昇に対応して急激に抵抗を減少する電圧非直線抵抗特性を有するので、サージ吸収素子として使用されている。
【0004】
バリスタでは一例として、酸化亜鉛の粉末に微量の酸化ビスマス粉末などを混合し、金型を用いて円板状に成型した後、1000〔℃〕以上で焼結して得られた焼結体の両面に、焼結体よりも径小の円板状の電極を焼き付け、この電極のそれぞれの外面にリード線を半田によって接続して素子が形成され、この素子をエポキシ樹脂などで被覆し、外装が形成されている。この外装は、バリスタの機械的強度や耐熱性を高める機能を果たしている。
【0005】
バリスタは一般に外来または内来サージより電子部品や機器を保護するために使用されるが、バリスタが吸収エネルギの限界を超えるサージを吸収した場合に破損して短絡状態となり、その外装材が燃焼するおそれがある。バリスタの外装材は一般的には無機フィラー成分およびエポキシ樹脂成分により形成されており、外装材の燃焼はエポキシ樹脂成分の燃焼による。
【0006】
このため、外装材には難燃性材料が使用される。この難燃性材料には、たとえば難燃化剤であるブロムまたはアンチモンを含むエポキシ樹脂が使用されている。しかし、エポキシ樹脂は難燃性ではあるが、バリスタが発熱しその発熱が継続すると燃焼するおそれがある。一旦燃焼すると、外装材中の可燃性成分が消失するまで、その燃焼が継続するおそれがある。
【0007】
この外装材の不燃化には、ブロム、アンチモンの難燃化剤を添加することが知られている。この難燃化剤を増加させると、樹脂自体の加熱流れ率(流動性)が低下し、外装膜の形成が困難になる。粉体樹脂塗装では樹脂量30〔wt%〕以下になると、外装膜の形成が困難になる。外装材中の可燃成分を燃焼限界量以下に減少させれば、外装材を不燃化することができる。
【0008】
ブロム系の難燃剤は、ガス化によって樹脂成分の燃焼を抑制する機能を有する。ガス化したブロム成分は、オゾン層の破壊など、環境に対する負荷が大きく、その使用が制限される傾向にある。
【0009】
このようなバリスタの外装不燃化に関し、ブロム系の難燃剤に代え、保護コートに難燃性の優れたコーティング材料として、シリコーン樹脂を用いたバリスタが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0010】
シリコーン樹脂の燃焼抑制化に関し、シリコーン樹脂またはシリコーンエラストマに難燃化剤として水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムの添加により、外装材の難燃性を高め、シリコーン樹脂またはシリコーンエラストマのゴム弾性により、セラミック内容物や外装材自体の飛散を抑制したバリスタが知られている(たとえば、特許文献2)。
【0011】
また、液状のシリコーン主剤に、硬化剤を添加し、この2剤に対して水酸化アルミニウムを添加したシリコーンゴムを外装材として用いて被覆したバリスタが知られている(たとえば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−215910号公報
【特許文献2】特開2005−277100号公報
【特許文献3】特開2006−286986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、バリスタを含む電子部品では、従前の過電圧特性を維持しつつ、より高い過電圧が求められている。斯かる電子部品において、シリコーン系樹脂材料は不可欠である反面、高価である。
【0014】
そこで、本発明の目的は、不燃性および絶縁耐圧特性を維持しつつ、シリコーン樹脂を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本開示の技術の一側面によれば、シリコーン樹脂を含む外装材を用いた電子部品の製造方法であって、60〔重量%〕以上70〔重量%〕未満の範囲に添加量を制御した水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウム、および無極性溶媒が添加されたシリコーン樹脂を含む外装材に素子をディップする工程と、前記素子の表面に形成された前記外装材を、第1の温度により所定状態まで乾燥させるとともに、前記第1の温度よりも高温の第2の温度により乾燥させて、前記無極性溶媒を蒸発させ、かつ、前記第2の温度での熱処理によりシリコーン樹脂成分を前記外装材の表面に表出させる乾燥工程と、前記第2の温度での熱処理により前記外装材を硬化させるとともに前記表面に表出したシリコーン樹脂成分を硬化させる硬化工程とを含み、前記乾燥工程および前記硬化工程において、前記第1の温度により所定状態まで乾燥した前記外装材に対して前記第2の温度で熱処理を行うことで、前記外装材の深さ方向における前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの外装材における濃度を前記素子から表面に向けて勾配させる。
【0016】
上記電子部品の製造方法において、前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの添加量が60〔重量%〕以上65〔重量%〕以下の範囲であってもよい。
【0017】
上記電子部品の製造方法において、前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの平均粒径が15〔μm〕以上50〔μm〕未満の範囲であってもよい。
【0018】
上記電子部品の製造方法において、前記無極性溶媒は、蒸気圧が0.5〜10〔kPa〕であってもよい。
【0019】
上記目的を達成するため、本開示の技術の一側面によれば、シリコーン樹脂を含む外装材を用いた電子部品であって、前記シリコーン樹脂に無極性溶媒と、水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウムとが添加され、該水酸化アルミニウムもしくは該水酸化マグネシウムの添加量が60〔重量%〕以上70〔重量%〕未満の範囲であり、前記無極性溶媒が第1の温度による所定状態までの乾燥とともに、前記第1の温度よりも高温の第2の温度の熱処理により前記外装材の表面に表出して蒸発し、前記第2の温度の熱処理により前記シリコーン樹脂が前記外装材の表面に表出して硬化し、前記第1の温度により所定状態まで乾燥した前記外装材に対して前記第2の温度で熱処理を行うことで、前記シリコーン樹脂が前記外装材の深さ方向における前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの外装材における濃度を素子から表面に向けて勾配させている。
【0020】
上記電子部品において、前記水酸化アルミニウムもしくは前記水酸化マグネシウムの平均粒径が15〔μm〕以上50〔μm〕未満の範囲であってもよい。
【0021】
上記電子部品において、前記外装材は、該外装材表面から深さ方向の30〔%〕以内で、84ないし100〔%〕の濃度勾配を持つ水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウムを含んでもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0023】
(1) 外装材の不燃性および絶縁耐圧特性を維持しつつ、シリコーン樹脂を削減できる。
【0024】
(2) 定格電圧を越える過電圧の印加により、バリスタが瞬時に破壊する場合でも、外装樹脂の飛散を抑制できる。
【0025】
(3) シリコーン樹脂の使用量を削減でき、製造コストを低減できる。
【0026】
そして、本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面および各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施の形態に係るバリスタを示す断面図である。
図2】バリスタの製造方法の処理工程および外装樹脂を示す図である。
図3】外装樹脂層のディップ処理を示す図である。
図4】外装樹脂層およびガラス層の状態を示す断面図である。
図5】不燃性の実験結果を示す図である。
図6】絶縁耐圧の実験結果を示す図である。
図7】外装樹脂層の表面状態の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、バリスタの断面を示している。
【0029】
このバリスタ2は、電圧非直線性抵抗器であり、本開示の電子部品の一例である。
【0030】
このバリスタ2では、電圧非直線性抵抗素子(以下単に「素子」と称する。)4の表面が外装材6で覆われている。素子4は、バリスタ素子の一例である。
【0031】
素子4にはセラミック素体8が用いられている。このセラミック素体8はたとえば、酸化亜鉛を主成分とし、酸化マグネシウム、酸化ビスマス、酸化コバルトなどを加えた焼結体である。この焼結体はたとえば、直径10〔mm〕程度の柱体である。
【0032】
このセラミック素体8の表面には電極10−1、10−2が設置されている。電極10−1にはリード線12−1が半田により接続され、電極10−2にはリード線12−2が半田により接続されている。
【0033】
外装材6には一例として外装樹脂層6−1およびガラス層6−2が含まれる。外装樹脂層6−1は第1の被覆層、ガラス層6−2は第2の被覆層の一例である。
【0034】
図2のAは、バリスタ2の製造方法を工程順に示している。
【0035】
このバリスタ2の製造方法には素子の形成工程S1、ディップ工程S2、乾燥工程S3、硬化工程S4およびコーティング工程S5が含まれる。
【0036】
素子の形成工程S1では、素子4が形成される。素子4のセラミック素体8は一例として、主成分である酸化亜鉛に酸化マグネシウム、酸化ビスマス、酸化コバルトなどを加え、これを焼結する。この焼結により得られる焼結体はたとえば、直径10〔mm〕程度の柱体である。このセラミック素体8の一面側に電極10−1、その他面側に電極10−2を印刷し、焼成する。
【0037】
電極10−1には既述のリード線12−1を半田付けにより接続し、電極10−2はリード線12−2を半田付けにより接続する。
【0038】
この素子4の形成工程S1の後、ディップ工程S2に移行する。このディップ工程S2では、素子の形成工程S1で得られた素子4に外装材6のうち、外装樹脂層6−1を形成する。この外装樹脂層6−1には一例として外装樹脂14が用いられる。この外装樹脂14には図2のBに示すように、シリコーン樹脂16に水酸化アルミニウム18および溶剤20が添加されている。
【0039】
水酸化アルミニウム18は、主剤であるシリコーン樹脂16に、70〔重量%=wt%〕未満の範囲で添加する。この添加量の範囲はより好ましくは60〔重量%〕以上65〔重量%〕以下である。
【0040】
溶剤20には、シリコーン樹脂16との相性がよいたとえば、無極性溶媒の溶剤種を用いればよい。シリコーン樹脂16との相性が悪い場合にはシリコーン樹脂16をはじくため、乾燥時にピンホールの発生や外装樹脂層6−1内部に気泡が残留するので、シリコーン樹脂16との相性は重要である。無極性溶媒にはたとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどのいずれを用いてもよい。
【0041】
溶剤20を添加することにより、外装樹脂14を低粘度化でき、外装樹脂14に対する水酸化アルミニウム18の配合量を多くでき、外装樹脂14の形成性が高められる。しかも、水酸化アルミニウム18の均一分散化が可能となるので、外装樹脂層6−1の平面方向における水酸化アルミニウム18の偏在による絶縁耐圧の低下を防止できる。
【0042】
このバリスタ2では外装樹脂層6−1が1層構造であるため、2層構造と異なり、外装樹脂層6−1にピンホールが発生しても、2層目で覆うことはできない。つまり、バリスタ2の外装樹脂層6−1は、難燃性を向上させるために水酸化アルミニウム18の配合比を多くしつつ、水酸化アルミニウム18の偏在とピンホールを防止しなければならない。そのため、水酸化アルミニウム18と相性がよい無極性溶媒の溶剤20をシリコーン樹脂16に入れている。斯かる構成では、外装樹脂14にピンホールを発生させず、低粘度化し、水酸化アルミニウム18の偏在を防いで、絶縁耐圧の向上と外表面の形成性の維持の双方を実現させる必要がある。なお、無極性溶媒は、蒸気圧(=揮発性)が0.5〜10〔kPa〕程度が好ましい。蒸気圧が高い場合には、ピンホールが発生し、外装樹脂層6−1の表面状態が好ましくない。一方、蒸気圧が低い場合には、外装樹脂層6−1の表面状態は良好であるが、乾燥工程における溶剤20の蒸発に時間がかかる。
【0043】
図3は、セラミック素体8の外装樹脂14へのディップ処理を示している。
【0044】
ディップ処理槽22には図3のAに示すように、低粘度化された外装樹脂14が充填されている。この外装樹脂14内に素子4を浸漬し、引き上げれば、図3のBに示すように、素子4の表面が外装樹脂14で覆われ、素子4の表面に既述の外装樹脂層6−1が形成される。
【0045】
このディップ処理の後、乾燥工程S3に移行する。この乾燥工程S3では、素子4の外装樹脂層6−1を形成している外装樹脂14から溶剤20の大部分を揮発させる。この工程では、外装樹脂14は、完全には硬化しない。
【0046】
なお、この乾燥工程S3は、常温(20〜30〔℃〕)で処理することが好ましい。
【0047】
この乾燥工程S3を経て硬化工程S4に移行する。この硬化工程S4では、外装樹脂層6−1を熱処理し、硬化させる。この硬化により、外装樹脂層6−1は成形される。硬化工程S4において、乾燥工程S3終了後に残留していた溶剤20を熱処理によって蒸発させるとともに、シリコーン樹脂成分を外装樹脂層6−1の表面に表出させる。つまり、熱処理を施すことにより、外装樹脂14内に残留していた溶剤20は、外装樹脂層6−1の表面に移動し、表面に表出し、蒸発する。このとき、外装樹脂層6−1の表面に移動する溶剤20とともにシリコーン樹脂成分も外装樹脂層6−1の表面に表出する。その後、更なる熱処理によって、外装樹脂層6−1の表面に表出したシリコーン樹脂成分が硬化し、光沢を出す。なお、硬化工程の条件は適宜設定すればよく、温度はたとえば、150〔℃〕、硬化時間はたとえば、1時間とすればよい。
【0048】
このような処理には、図4のAに示す第一案と、図4のBに示す第二案が含まれる。第一案では、図4のAに示すように素子4の表面に第1領域611、第2領域612が形成される。領域611は薄皮層であり、樹脂厚の全体に対したとえば30〔%〕程度の厚さである。この領域611の厚さは、外装材6の表面からの深さの一例である。領域611では、薄皮層の表面から深さ方向30〔%〕まで、水酸化アルミニウム18はたとえば樹脂配合比の約84〜100〔%〕の濃度である。また、領域612では、薄皮層の表面から深さ方向30〔%〕以上で、水酸化アルミニウム18はたとえば樹脂配合比の約100〜109〔%〕の濃度である。
【0049】
第二案では第1領域621、第2領域622、第3領域623が形成される。領域621は薄皮層であり、この薄皮層の表面から深さ方向30〔%〕まで、水酸化アルミニウム18はたとえば樹脂配合比の約84〜100〔%〕の濃度である。領域622は、薄皮層表面から深さ方向50〔%〕まで、水酸化アルミニウム18は、樹脂配合比の約90〜100〔%〕の濃度である。また、領域623は、薄皮層の表面から深さ方向50〔%〕以上で、水酸化アルミニウム18はたとえば、樹脂配合比約100〜119〔%〕の濃度である。この濃度は、硬化時の樹脂成分の移動による濃度勾配を示しており、この値は樹脂配合比率に対する最大の推定値である。この水酸化アルミニウム18は上層から下層に供給されるため、下層に移動した分を引いた上層の濃度が濃度範囲となる。この濃度範囲は、その領域の平均値であり、局所的には下限値を下回る濃度部分が存在すると考えられる。そこで、この処理において、領域の範囲は、領域611、621の平均の最小値で16〔%〕減、領域612、622は平均の最大値の9〔%〕増としてもよい。
【0050】
なお、水酸化アルミニウム18の濃度は、エネルギ分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectrometry)によって測定した数値である。
【0051】
この硬化工程S4の後、コーティング工程S5に移行する。このコーティング工程S5では、外装樹脂層6−1の表面にガラスコーティングを行う。このガラスコーティングでは、外装樹脂層6−1で覆われた素子4を、一例としてシリカゾルに浸漬してガラスコートを行う。このガラスコートに熱処理を施し、硬化させてガラス層6−2が形成される。これにより、図1に示すバリスタ2が得られる。
【0052】
<上記実施の形態の効果>
【0053】
(1) シリコーン樹脂16を主剤とし、水酸化アルミニウム18は70〔重量%〕未満を添加し、より好ましくは60〜65〔重量%〕を添加したので、その分だけシリコーン樹脂16を削減できる。これにより、材料費などのコストを低減できる。
【0054】
(2) 外装樹脂14に溶剤20を添加し、水酸化アルミニウム18による高粘度化を抑制することができる。つまり、溶剤20の添加による外装樹脂14の低粘度化により、多くの水酸化アルミニウム18を配合でき、外装樹脂14による外装樹脂層6−1の成形性を高めることができる。
【0055】
(3) 溶剤20の添加による外装樹脂14の低粘度化により、外装樹脂14に対する水酸化アルミニウム18の偏在を防止できる。これにより、外装樹脂層6−1内の水酸化アルミニウム18の偏在によるバリスタ2の絶縁耐圧の低下を防止できる。つまり、優れた過電圧特性が得られる。
【0056】
(4) 硬化工程における溶剤20の蒸発に伴い、シリコーン樹脂16を外装樹脂層6−1の表面に表出させることができるので、バリスタ2の表面に光沢を出すことができる。
【0057】
(5) シリコーン樹脂16は柔軟性を有するので、定格電圧を越える過電圧の印加により、バリスタが瞬時に破壊する場合でも、外装樹脂層6−1の飛散を抑制できる。
【0058】
(6) 外装樹脂層6−1の表面が光沢を呈した状態となり、外装樹脂層6−1の表面にバリスタの定格などをレーザに印字した場合の視認性が向上する。
【0059】
(7) また、外装樹脂層6−1の表面にシリコーン樹脂16を表出させることで、表面への傷が形成されることを防止し、耐スクラッチ性が向上する。
【0060】
(8) 溶剤20に無極性溶媒を使用するので、シリコーン樹脂16との相性がよく、外装樹脂層6−1にピンホールが発生するのを防止できる。これによっても、バリスタ2の絶縁耐圧の低下を防止できる。
【0061】
(9) 外装樹脂層6−1の素子4に近いほど、水酸化アルミニウム18の濃度が高いので、素子4の燃焼を抑制する効果がより向上する。
【0062】
<実験結果>
【0063】
(1) 不燃性の評価
【0064】
この不燃性の評価はバリスタ2の発炎特性に関する。この評価実験では、課電率85〔%〕(バリスタ電圧V1〔mA〕×0.85)のAC電圧を印加した場合、外装材6の外装樹脂層6−1について、水酸化アルミニウム18の粒径〔μm〕をパラメータとして、配合比〔wt%〕毎の発炎時間を測定した。図5のAはその測定値、図5のBはグラフを示している。図5のBにおいて、aは平均粒径=10〔μm〕、bは平均粒径=15〔μm〕、cは平均粒径=30〔μm〕、dは平均粒径=50〔μm〕である。
【0065】
この不燃性の評価では、過電圧破壊による不燃性の判断基準として、発炎時間1〔秒〕未満を不燃性の効果ありとした。
【0066】
この評価実験によれば、平均粒径を30〔μm〕以上とすれば、配合比が55〔wt%〕以上あれば、発炎時間1〔秒〕未満となり、不燃性が認められる。
【0067】
平均粒径を30〔μm〕未満としても、配合比が60〔wt%〕以上あれば、発炎時間1〔秒〕未満となり、不燃性が認められる。
【0068】
平均粒径が10〔μm〕〜50〔μm〕であっても、配合比が65〔wt%〕以上あれば、発炎時間は0.5〔秒〕以下となり、良好な不燃性が認められる。
【0069】
このように、主剤であるシリコーン樹脂16に、70〔wt%〕未満の範囲で水酸化アルミニウム18を添加すれば、発炎時間1.0〔秒〕未満の不燃性が認められ、水酸化アルミニウム18の添加量の範囲を60〔wt%〕以上65〔wt%〕以下とすれば、より好ましく不燃性が得られる。したがって、シリコーン樹脂16を削減しつつ、バリスタ2の不燃性を高めることができる。
【0070】
(2) 絶縁耐圧の評価
【0071】
この絶縁耐圧の評価実験では、水酸化アルミニウム18の粒径〔μm〕をパラメータとして、配合比〔wt%〕の絶縁破壊を測定した。図6のAはその測定値、図6のBはグラフを示している。図6のBにおいて、bは平均粒径=15〔μm〕、cは平均粒径=30〔μm〕、dは平均粒径=50〔μm〕である。
【0072】
この絶縁耐圧の評価では、耐圧〔kV/mm〕について、10〔kV/mm〕以上を絶縁耐圧効果ありと判定している。
【0073】
この評価実験によれば、平均粒径は15〔μm〕、30〔μm〕、50〔μm〕に関係なく、配合比が65〔wt%〕以下であれば、10〔kV/mm〕以上の絶縁耐圧効果が得られている。
【0074】
したがって、主剤であるシリコーン樹脂16に、70〔wt%〕未満の範囲で水酸化アルミニウム18を添加した場合、好ましくは60〔wt%〕〜65〔wt%〕にすれば、10〔kV/mm〕以上の絶縁耐圧効果が得られ、バリスタ2の過電圧特性を維持することができる。また、配合比が60〔wt%〕〜65〔wt%〕については、平均粒径が30〔μm〕のものが最も好ましい。
【0075】
(3) 表面状態の評価
【0076】
この表面状態の評価実験は素子4に形成されている外装樹脂層6−1の表面性状を目視観察している。図7は、その評価結果を示している。
【0077】
この評価では、外装樹脂層6−1の表面の光沢で判断し、光沢がある場合を○、光沢が後退している場合を△、光沢が消失した場合を×とした。
【0078】
この光沢の評価では、粒径に関係なく、水酸化アルミニウム18の配合比を70〔wt%〕とすると、表面の光沢が消失している。
【0079】
外装樹脂層6−1の表面の光沢は、バリスタ2の機能に直接影響するものではないが、外観上の美観を損ねるために外装樹脂層6−1の表面には光沢があることが好ましい。また、外装樹脂層6−1の表面にバリスタの定格などをレーザ印字することがある。このとき、光沢を有した外装樹脂層6−1の表面にレーザで印字した場合、表面状態が凹凸状態に比べ、視認性が向上する。光沢層の形成は、水酸化アルミニウム18の高配合による表面状態の粗さを緩和し、外観上の美観効果と梱包状態での製品同士の擦れによるキズ防止に効果がある。
【0080】
〔他の実施の形態〕
【0081】
(1) 上記実施の形態では、硬化工程S4の後、コーティング工程S5を施し、外装樹脂層6−1の表面にガラスコーティングを行ない、ガラス層6−2を形成したが、ガラス層6−2を設けなくてもよい。
【0082】
(2) 上記実施の形態では、外装樹脂層6−1を形成する外装樹脂14が、シリコーン樹脂16に水酸化アルミニウム18および溶剤20が添加される場合を示したがこれに限られない。シリコーン樹脂16には、たとえば溶剤20とともに難燃化剤として水酸化マグネシウムを添加してもよい。
【0083】
水酸化マグネシウムは、たとえば主剤であるシリコーン樹脂16に、70〔重量%=wt%〕未満の範囲で添加される。この添加量の範囲はより好ましくは60〔重量%〕以上65〔重量%〕以下に設定される。水酸化マグネシウムは、密度が2.36〔g/cm3〕であり、水酸化アルミニウムの密度2.42〔g/cm3〕と略同等である。そのため、水酸化マグネシウムの添加量は、例えばシリコーン樹脂16に対する重量比率を基準にして、既述の水酸化アルミニウム18を添加する場合と同等の条件を設定すればよい。
【0084】
また水酸化マグネシウムの平均粒径は、たとえば15〔μm〕以上、50〔μm〕未満の範囲に設定すればよい。そのほか、外装樹脂14に水酸化マグネシウムを添加する場合のバリスタ2の外装樹脂層6−1の形成処理では、上記実施の形態に示す水酸化アルミニウム18を添加する場合と同様の添加条件および外装樹脂層6−1の形成条件が設定されればよく、また処理手順も同様に行えばよい。
【0085】
(a) 斯かる構成によれば、水酸化マグネシウムを添加した外装樹脂14は、水酸化アルミニウム18を添加した場合に対し、脱水開始温度を高く設定することができる。すなわち外装樹脂14は、水酸化アルミニウムを添加した場合の脱水開始温度が約200〔℃〕であり、水酸化マグネシウムを添加した場合の脱水開始温度が約300〔℃〕である。バリスタ2は、サージ印加に伴って局部発熱すると、外装材6が「脱水」→「気化」→「膨れ」→「樹脂の剥離」→「スパーク」→「故障モード」となる。バリスタ2は、外装樹脂14の脱水開始温度が高なることで、高い発熱温度下になっても機能させることができ、より大きなサージ電圧が印加される可能性がある電子機器への利用が可能となる。
【0086】
(b) シリコーン樹脂16を主剤とし、水酸化マグネシウムを70〔重量%〕未満、より好ましくは60〜65〔重量%〕で添加したので、その分だけシリコーン樹脂16を削減できる。これにより、材料費などのコストを低減できる。
【0087】
(c) 外装樹脂14に溶剤20を添加し、水酸化マグネシウムによる高粘度化を抑制することができる。つまり、溶剤20の添加による外装樹脂14の低粘度化により、多くの水酸化マグネシウムを配合でき、外装樹脂14による外装樹脂層6−1の成形性を高めることができる。
【0088】
(d) 溶剤20の添加による外装樹脂14の低粘度化により、外装樹脂14に対する水酸化マグネシウムの偏在を防止できる。これにより、外装樹脂層6−1内の水酸化マグネシウムの偏在によるバリスタ2の絶縁耐圧の低下を防止できる。つまり、優れた過電圧特性が得られる。
【0089】
(e) 硬化工程における溶剤20の蒸発に伴い、シリコーン樹脂16を外装樹脂層6−1の表面に表出させることができるので、バリスタ2の表面に光沢を出すことができる。
【0090】
(f) シリコーン樹脂16は柔軟性を有するので、定格電圧を越える過電圧の印加により、バリスタが瞬時に破壊する場合でも、外装樹脂層6−1の飛散を抑制できる。
【0091】
(g) 外装樹脂層6−1の表面が光沢を呈した状態となり、外装樹脂層6−1の表面にバリスタの定格などをレーザに印字した場合の視認性が向上する。
【0092】
(h) また、外装樹脂層6−1の表面にシリコーン樹脂16を表出させることで、表面への傷が形成されることを防止し、耐スクラッチ性が向上する。
【0093】
(i) 溶剤20に無極性溶媒を使用するので、シリコーン樹脂16との相性がよく、外装樹脂層6−1にピンホールが発生するのを防止できる。これによっても、バリスタ2の絶縁耐圧の低下を防止できる。
【0094】
(j) 外装樹脂層6−1の素子4に近いほど、水酸化マグネシウムの濃度が高いので、素子4の燃焼を抑制する効果がより向上する。
【0095】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態などについて説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではなく、請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示の技術は、バリスタの外装材に含まれるシリコーン樹脂に水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウムを添加し、その添加量に応じてシリコーン樹脂が備える不燃特性を維持しつつ、その使用量を削減して製造コストを低減できるなど、有用性が高い。
【符号の説明】
【0097】
2 バリスタ
4 電圧非直線性抵抗素子
6 外装材
6−1 外装樹脂層
6−2 ガラス層
8 セラミック素体
10−1、10−2 電極
12−1、12−2 リード線
14 外装樹脂
16 シリコーン樹脂
18 水酸化アルミニウム
20 溶剤
22 ディップ処理槽
611、621 第1領域
612、622 第2領域
623 第3領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7