特許第6561849号(P6561849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561849
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6551 20140101AFI20190808BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20190808BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20190808BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20190808BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20190808BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20190808BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01M10/6551
   H01M10/625
   H01M10/647
   H01M10/651
   H01M10/653
   H01M10/6555
   H01M2/10 E
   H01M10/613
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-2693(P2016-2693)
(22)【出願日】2016年1月8日
(65)【公開番号】特開2017-123309(P2017-123309A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】前田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】 大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/019429(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/186501(WO,A1)
【文献】 特開2013−038439(JP,A)
【文献】 特開2014−110218(JP,A)
【文献】 特開2000−149893(JP,A)
【文献】 特開2015−230843(JP,A)
【文献】 特開2011−243524(JP,A)
【文献】 特開2015−125854(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145611(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6551
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/651
H01M 10/653
H01M 10/6555
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導部材を介して筐体に取り付けられる電池モジュールであって、
一方向に配列される複数の電池セルと、前記電池セルの前記一方向に交差する面である主面に接触するように配置されて前記一方向に配列される複数の伝熱プレートと、を有する配列体と、
前記配列体を前記一方向に加圧した状態で拘束する拘束部と、
前記配列体の一方の端部に配置される弾性部材と、を備え、
前記拘束部は、前記配列体と前記弾性部材とを前記一方向に加圧した状態で拘束し、
前記伝熱プレートは、
前記主面に接触する第一本体部と、
前記第一本体部の一端部から前記主面に交差する方向に折れ曲がり、前記熱伝導部材に接触する第二本体部と、を有し、
前記第二本体部における前記一端部とは反対側の他端部と、前記第一本体部から前記第二本体部が折れ曲がる方向に隣接して配置されている前記伝熱プレートとが、前記電池セルの膨張により前記伝熱プレートが移動する前の状態において、前記電池セルの膨張による前記伝熱プレートの前記一方向における移動量に応じた距離、かつ前記電池セルの膨張による前記伝熱プレートの最大移動量よりも長い距離離れており、
前記一方向における前記第二本体部の長さは、前記一方向において前記弾性部材から遠い位置に配置されている前記電池セルに接触する伝熱プレートほど長い、電池モジュール。
【請求項2】
前記一方向における前記第二本体部の長さは、前記一方向における前記第一本体部の厚みの1倍以上10倍以下である、請求項1記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電池ホルダに保持された状態の電池セルが複数配列されてなる電池モジュールが筐体等に取り付けられた電池パックが知られている。特許文献1には、電池ホルダに伝熱プレートを取り付け、当該伝熱プレートを熱伝導部材を介して筐体に接触させることにより放熱性を向上させることができる電池モジュールが開示されている。この電池モジュールは、複数配列された電池セルの配列方向端部に弾性部材が配置されており、複数の電池セル及び弾性部材は、配列方向に加圧された状態で一体的に拘束されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−156303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成の電池モジュールは、電池セルの膨張を一定の範囲で吸収する弾性部材が配置されることにより、電池セルに接触するように設けられた伝熱プレートは一定の範囲で移動する。また、このような構成の電池モジュールは、熱伝導部材を押し付けた状態で筐体に固定されるので、接触する伝熱プレートによって押し付け方向に変形する。このため、伝熱プレートの移動先の部分に該当する熱伝導部材に上記のような変形がある場合、伝熱プレートは熱伝導部材に接触しなくなり、放熱効率が低下する。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電池セルの膨張により電池セルの配列方向に伝熱プレートが移動した場合であっても、放熱効率の低下を抑制することができる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電池モジュールは、熱伝導部材を介して筐体に取り付けられる電池モジュールであって、一方向に配列される複数の電池セルと、電池セルの一方向に交差する面である主面に接触するように配置されて一方向に配列される複数の伝熱プレートと、を有する配列体と、配列体を一方向に加圧した状態で拘束する拘束部と、を備え、伝熱プレートは、主面に接触する第一本体部と、第一本体部の一端部から主面に交差する方向に折れ曲がり、熱伝導部材に接触する第二本体部と、を有し、第二本体部における一端部とは反対側の他端部と、第一本体部から第二本体部が折れ曲がる方向に隣接して配置されている伝熱プレートとが、電池セルの膨張により伝熱プレートが移動する前の状態において、電池セルの膨張による伝熱プレートの一方向における移動量に応じた距離離れている。
【0007】
この構成の電池モジュールでは、第二本体部における第一本体部とは反対側の端部と、第一本体部から第二本体部が折れ曲がる方向に隣接して配置されている伝熱プレートとが離間している。更に、離間距離は、電池セルの膨張による伝熱プレートの一方向における移動量に応じた距離となっている。上記離間距離を調整することは、電池セルの膨張により一の伝熱プレートが移動した場合の、当該一の伝熱プレートと、当該伝熱プレートの移動方向に隣接する他の伝熱プレートの押圧によって変形された熱伝導部材との移動方向における重なり部分の長さを調整することを意味する。当該重なり部分は、一の伝熱プレートが熱伝導部材と接触しなくなる部分となり得るので、当該重なり量(すなわち、離間距離)が適宜調整された伝熱プレートを有する電池モジュールでは、放熱効率の低下を抑制することができる。
【0008】
本発明の電池モジュールでは、一方向における第二本体部の長さを、一方向における第一本体部の厚みの1倍以上10倍以下としてもよい。
【0009】
本発明の電池モジュールでは、上記距離は、電池セルの膨張による伝熱プレートの最大移動量よりも長くてもよい。
【0010】
この構成の電池モジュールによれば、電池セルの膨張により伝熱プレートが移動した場合であっても、第二本体部の他端部が移動方向に隣接して配置されている伝熱プレートが配置されていた位置まで移動することはない。言い換えれば、電池セルの膨張により伝熱プレートが移動した場合であっても、移動方向に隣接して配置されていた伝熱プレートの押圧によって変形した熱伝導部材の位置にまで移動することはない。したがって、第二本体部の一部が熱伝導部材に接触しなくなることがなく、第二本体部の全てが熱伝導部材に接触する状態を維持することができる。この結果、放熱効率の低下をより一層抑制することができる。
【0011】
本発明の電池モジュールは、配列体の一方の端部に配置される弾性部材を更に備えており、拘束部は、配列体と弾性部材とを一方向に加圧した状態で拘束してもよい。
【0012】
この構成の電池モジュールでは、電池セルの膨張を一定の範囲で吸収することができる。
【0013】
本発明の電池モジュールでは、一方向における第二本体部の長さを、一方向において弾性部材から遠い位置に配置されている電池セルに接触する伝熱プレートほど長くしてもよい。
【0014】
この構成の電池モジュールでは、電池セルの膨張により移動量が大きい伝熱プレートほど(すなわち、弾性部材に近い伝熱プレートほど)第二本体部の移動方向における長さが短くなっているのでいる。これにより、電池セルの膨張により伝熱プレートが移動した場合であっても、移動方向に隣接して配置されていた伝熱プレートの押圧によって変形した熱伝導部材の位置にまで移動する可能性を低くすることができる。この結果、放熱効率の低下をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池セルの膨張により電池セルの配列方向に伝熱プレートが移動した場合であっても、放熱効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態における電池モジュールを含む電池パックを示す斜視図である。
図2】一実施形態における電池モジュールを示す側面図である。
図3図2の電池セル、電池ホルダ及び伝熱プレートを示す分解斜視図である。
図4図2の電池セル、電池ホルダ及び伝熱プレートの配列状態を示す側面図である。
図5】(A)は一の電池セル、電池ホルダ及び伝熱プレートを示した側面図であり、(B)は伝熱プレートの曲線部を拡大して示した側面図である。
図6】熱伝導部材が配置された側壁に取り付けられる図2の電池モジュールを示した側面図である。
図7図2の電池モジュールが、熱伝導部材が配置された側壁に取り付けられた状態を示す側面図である。
図8】(A)は電池セルの膨張により伝熱プレートが移動する前の状態を示す側面図であり、(B)は電池セルの膨張により伝熱プレートが移動した後の状態を示す側面図である。
図9】(A)図2の電池モジュールに含まれる弾性部材近傍を拡大して示した側面図であり、(B)変形例に係る電池モジュールに含まれる弾性部材近傍を拡大して示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して一実施形態に係る電池モジュール21を含む電池パック10について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0018】
図1に示されるように、電池パック10は、筐体11を有している。筐体11には複数の電池モジュール21が収容されている。筐体11は、四角箱状をなしており、矩形平板状の底板12と、底板12の周縁から立設する矩形平板状の側壁13と、側壁13によって囲まれる開口部を閉塞する矩形平板状の天板14と、を有している。
【0019】
図2に示されるように、電池モジュール21は、複数の電池セル23(図1参照)と、一対のブラケット(拘束部)25,25と、弾性部材47と、ボルトB及びナットNと、伝熱プレート41と、を備えている。
【0020】
電池セル23は、例えば、リチウムイオン二次電池及びニッケル水素蓄電池などの二次電池である。電池セル23は、電池ホルダ22に保持された状態で一方向Dに並設されている。図3に示されるように、電池ホルダ22は、第一被覆部31と、第二被覆部32と、第三被覆部33と、第四被覆部34と、一対の脚部36,36と、を有している。
【0021】
第一被覆部31は、矩形平板状に形成され、電池セル23の底部24aを覆う部分である。第二被覆部32及び第三被覆部33は、第一被覆部31の長手方向両端から立設する部分である。第二被覆部32及び第三被覆部33は、矩形平板状に形成され、電池セル23の側面24bを覆う。第四被覆部34は、矩形平板状に形成され、電池セル23の一方の主面(厚み方向に直交する面)24cの一部を覆う部分である。第四被覆部34は、第二被覆部32の長手方向における第一端部32a(第一被覆部31が設けられる端部とは反対側の端部)と、第三被覆部33の長手方向における第一端部33a(第一被覆部31が設けられる端部とは反対側の端部)とに接続されている。第四被覆部34は、その厚み方向が電池セル23の並設方向と一致し、長手方向が第二被覆部32及び第三被覆部33の対向方向と一致するように配置されている。第一被覆部31、第二被覆部32、第三被覆部33に囲まれる領域は、電池セル23が収容される収容部Sとなる。
【0022】
第二被覆部32及び第三被覆部33の長手方向における第一端部32a,33aには、それぞれ第二被覆部32及び第三被覆部33と連設され、第二被覆部32及び第三被覆部33の長手方向に延びる矩形平板状の突出部35が設けられている。また、第二被覆部32及び第三被覆部33の長手方向における第二端部32c、33cには、それぞれ四角柱状の脚部36,36が設けられている。
【0023】
図1に示されるように、一対のブラケット25,25は、一方向Dに並設された電池セル23の並設方向両端に設けられている。ブラケット25は、挟持部25aと、固定部25bと、固定部25bに形成された挿通孔25cと、を有している。電池モジュール21は、ブラケット25の固定部25bが側壁13に固定されることによって、筐体11に固定される。具体的には、挿通孔25cに挿通されるボルト(図示せず)が側壁13にねじ込まれることにより、ブラケット25が筐体11に固定される。
【0024】
図2に示されるように、弾性部材47は、配列体28の一方の端部に配置されている。配列体28及び弾性部材47は、後段にて詳述するボルトB及びナットNによって、電池セル23の配列方向(一方向D)に加圧した状態で拘束される。弾性部材47は、例えばウレタン系ゴム等の弾性材料によって形成されている。弾性部材47は、電池セル23の膨張を一定の範囲で吸収する。
【0025】
図2に示されるように、ボルトB及びナットNは、一対のブラケット25,25同士を連結する。一対のブラケット25,25には、ボルトBが挿通されている。ボルトBは、一方のブラケット25から、他方のブラケット25に向けて挿通されると共に、他方のブラケット25を挿通した位置でナットNに螺合されている。一対のブラケット25,25は、一方向Dに配列される複数の電池セル23と、電池セル23の一方向D(配列の方向)に交差する面である主面24cに接触するように配置される複数の伝熱プレート41と、からなる配列体28及び弾性部材47を一方向Dに加圧した状態で拘束する。
【0026】
図3及び図4に示されるように、伝熱プレート41は、電池ホルダ22に収容された電池セル23の主面24cに接触して配置される板状の部材である。図5(A)に示されるように、伝熱プレート41は、例えば、アルミニウムの金属製の板材を屈曲させることで形成されており、矩形平板状の第一本体部42と、第一本体部42の長手方向における一端部43bから直角(90度)に屈曲する矩形平板状の第二本体部43とを有している。第一本体部42は、電池セル23の厚み方向において電池セル23と隣り合った状態で収容部Sに設けられる。第二本体部43は、第三被覆部33の一方の側面24b(第三被覆部33の厚み方向の面において収容部Sとは反対側の面)を覆っている。
【0027】
第二本体部43は、第一本体部42から90度曲げられている。言い換えれば、第一本体部42と第二本体部43とは、90度で交差している。第二本体部43は、第一本体部42から弾性部材47が配置された方向に折れ曲がっている。図4に示されるように、電池モジュール21は、第二本体部43における一端部43bとは反対側の他端部43aと、第一本体部42から第二本体部43が折れ曲がる方向に隣接して配置されている伝熱プレート41とが距離G離れている。本実施形態の距離Gは、電池セル23の膨張により一方向Dに移動する伝熱プレート41の移動量に応じた距離であり、電池セル23の膨張により移動する伝熱プレート41の最大移動量よりも長い。図5(B)に示されるように、一方向Dにおける第二本体部43の長さL2は、一方向Dにおける第一本体部42の厚みL1の1倍以上10倍以下(通常、5倍)である。
【0028】
具体的には、図4に示されるように、配列体28の一端側から電池セル23A、電池セル23B、電池セル23、電池セル23D、電池セル23E、電池セル23F、及び電池セル23Gの順番で配置されている。電池セル23Gの主面24cに接触する伝熱プレート41Gの第二本体部43における他端部43aと、第一本体部42から第二本体部43が折れ曲がる方向に隣接して配置されている伝熱プレート41Fとが距離G離れている。同様に、電池セル23Fの主面24cに接触する伝熱プレート41Fの第二本体部43における他端部43a及び伝熱プレート41Eの離間距離、電池セル23Eの主面24cに接触する伝熱プレート41Eの第二本体部43における他端部43a及び伝熱プレート41Dの離間距離、電池セル23Dの主面24cに接触する伝熱プレート41Dの第二本体部43における他端部43a及び伝熱プレート41Cの離間距離、電池セル23Cの主面24cに接触する伝熱プレート41Cの第二本体部43における他端部43a及び伝熱プレート41Bの離間距離、並びに電池セル23Bの主面24cに接触する伝熱プレート41Bの第二本体部43における他端部43a及び伝熱プレート41Aの離間距離は、全て距離Gである。
【0029】
図5(B)に示されるように、第二本体部43の第一本体部42側は、曲線部44が形成されている。曲線部44は、例えば、伝熱プレート41の厚みが3mmの場合、外側部分44aの曲線の半径を6mm、内側部分44bの曲線の半径を3mmとすることができる。曲線部44の一部は、後述する熱伝導部材51に接触する。なお、曲線部44における曲線の半径は極力小さくすることが好ましい。
【0030】
上述した構成の電池モジュール21が筐体11の側壁13に取り付けられて、図1に示されるような電池パック10となる。図6及び図7に示されるように、電池モジュール21が筐体11の側壁13に取り付けられる場合には、一対のブラケット25,25によって取り付けられる。また、配列体28と側壁13との間には、熱伝導部材51としてのTIM(Thermal Interface Material)が配置される。すなわち、伝熱プレート41の第二本体部43は、TIMを介して筐体11の側壁13に接触している。
【0031】
熱伝導部材51は、両面が粘着性を有するシート状の材料からなる部材である。また、この熱伝導部材51は、絶縁性を有している。このような絶縁性を有する熱伝導部材として、金属フィラーを含まない熱伝導シートを用いることができる。また、このような熱伝導部材51には、シリコーン系の熱伝導シートと、アクリル系の熱伝導シートとがある。シリコーン系の熱伝導シートを用いる場合には、耐寒性及び耐熱性に優れているため使用温度の範囲を広くすることができる。また、金属フィラーを使用していないシリコーン系の熱伝導シートは、温度及び周波数による電気特性の変化が小さいため絶縁材料に適する。一方、アクリル系のシートは、シロキサンガスの発生がないため、密閉空間における機械接点の接点障害、及び磨耗が発生しない。また、アクリル系のシートは、一般的にシリコーンより安価である。
【0032】
次に、上記実施形態の電池モジュール21の作用効果について説明する。上記実施形態の電池モジュール21では、図4に示されるように、第二本体部43における他端部43aと、第一本体部42から第二本体部43が折れ曲がる方向に隣接して配置されている伝熱プレート41とが離間している。例えば、図8(A)に示されるように、伝熱プレート41Gの第二本体部43における他端部43aと、伝熱プレート41Gの第一本体部42から第二本体部43が折れ曲がる方向に隣接して配置されている伝熱プレート41Fとが離間している。また、伝熱プレート41Fの第二本体部43における他端部43aと、伝熱プレート41Fの第一本体部42から第二本体部43が折れ曲がる方向に隣接して配置されている伝熱プレート41Eとが離間している。
【0033】
更に、離間距離は、電池セルの膨張による伝熱プレートの一方向における移動量に応じた距離となっている。上記離間距離Gを調整することは、電池セル23の膨張により一の伝熱プレート41(例えば、伝熱プレート41G)が移動した場合の、当該一の伝熱プレート41と、当該伝熱プレート41の一方向(移動方向)Dに隣接する他の伝熱プレート41(例えば、伝熱プレート41F)の押圧によって変形された熱伝導部材51との一方向Dにおける重なり部分の長さを調整することを意味する。当該重なり部分は、一の伝熱プレートが熱伝導部材と接触しなくなる部分となり得るので、当該重なり量(すなわち、離間距離G)が適宜調整された伝熱プレート41を有する電池モジュール21では、放熱効率の低下を抑制することができる。
【0034】
図8(B)に示されるように、上記実施形態の電池モジュール21では、離間距離Gは、電池セル23の膨張による伝熱プレート41の最大移動量Mよりも長い。この構成の電池モジュール21によれば、電池セル23の膨張により、図8(A)に示されるような位置から図8(B)に示されるように位置に伝熱プレート41が移動した場合であっても、第二本体部43の他端部43aが移動方向に隣接して配置されている伝熱プレート41が配置されていた位置H1,H2まで移動することはない。
【0035】
具体的には、電池セル23の膨張により伝熱プレート41Gが移動した場合であっても、移動方向に隣接して配置されていた伝熱プレート41Fの押圧によって変形した熱伝導部材51の位置H1にまで移動することはない。すなわち、伝熱プレート41Gの第二本体部43と熱伝導部材51との接触した状態が維持される。同様に、電池セル23の膨張により伝熱プレート41Fが移動した場合であっても、移動方向に隣接して配置されていた伝熱プレート41Eの押圧によって変形した熱伝導部材51の位置H2にまで移動することはない。したがって、第二本体部43の一部が熱伝導部材51に接触しなくなることがない。この結果、放熱効率の低下をより一層抑制することができる。
【0036】
上記実施形態の電池モジュール21は、配列体28の一方の端部に配置される弾性部材47を更に備えており、一対のブラケット25,25は、配列体28と弾性部材47とを一方向Dに加圧した状態で拘束している。この構成の電池モジュール21では、電池セル23の膨張を一定の範囲で吸収することができる。
【0037】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
上記実施形態では、第一本体部42の一端部43bから直角(90度)に屈曲する矩形平板状の第二本体部43を有している伝熱プレート41を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、伝熱プレート41は、例えば、60度〜90度に屈曲する第二本体部43を有していてもよい。なお、上記屈曲の角度は、第二本体部の長さL2の倍数に合せて選択することができる。また、電池モジュール21は、第一本体部42の一端部43bから直角(90度)に屈曲する矩形平板状の第二本体部43を有する伝熱プレート41と、第一本体部42の一端部43bから60度以上90度未満に屈曲する矩形平板状の第二本体部43を有する伝熱プレートと、が混在していてもよい。
【0039】
上記実施形態又は変形例では、第一本体部42の一端部43bから直角(90度)に屈曲する矩形平板状の第二本体部43を有している伝熱プレート41を例に挙げて説明したが、第一本体部42の一端部43bから折れ曲がらない形状の伝熱プレートとしてもよい。言い換えれば、第二本体部43を有さない伝熱プレートとしてもよい。また、電池モジュール21は、上記実施形態又は変形例において説明した互いに異なる伝熱プレート(第一本体部42の一端部43bから直角(90度)に屈曲する矩形平板状の第二本体部43を有する伝熱プレート41、第二本体部43を有さない伝熱プレート、第一本体部42の一端部43bから60度以上90度未満に屈曲する矩形平板状の第二本体部43を有する伝熱プレート等)が任意に組み合わされた構成としてもよい。
【0040】
上記実施形態又は変形例では、図4に示されるように、全ての伝熱プレート41において、第二本体部43の長さL2が全て同じ(言い換えれば、距離Gが全て同じ)である例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一方向Dにおける第二本体部43の長さL2は、一方向Dにおいて弾性部材47から遠くなるにつれて徐々に又は段階的に長くなる構成の電池モジュールとしてもよい。言い換えれば、一方向Dにおいて弾性部材47から遠くなるにつれて上記距離Gが徐々に又は段階的に短くなる構成の電池モジュールとしてもよい。
【0041】
この変形例に係る電池モジュールでは、電池セル23の膨張により伝熱プレート41が移動した場合であっても、移動方向に隣接して配置されていた伝熱プレート41の押圧によって変形した熱伝導部材51の位置にまで移動する可能性を低くすることができる。この結果、放熱効率の低下をより一層抑制することができる。
【0042】
上記実施形態又は変形例では、伝熱プレート41における第二本体部43は、第一本体部42から弾性部材47が配置された方向に折れ曲がっている例を挙げて説明したが、全ての伝熱プレート41における一部又は全ての第二本体部43が第一本体部42から弾性部材47が配置された方向とは反対側に折れ曲がっていてもよい。
【0043】
上記実施形態又は変形例では、上記実施形態の電池モジュール21は、第一本体部42と第二本体部43との間には、第一本体部42と第二本体部43とを滑らかに接続する曲線部44が配置された伝熱プレート41を備える例を挙げて説明したが、第一本体部42と第二本体部43とが連続する(曲線部44がない)伝熱プレート41を備えていてもよい。また、第二本体部43は、上記実施形態又は変形例のようにフラットではなく、例えば、上方(熱伝導部材51から遠ざかる方向)に曲がる形状としたり、先端の厚みが薄くなるように形成したりしてもよい。これにより、伝熱プレート41の熱伝導部材51への引っ掛かりを低減し、熱伝導部材51の損傷を低減させることができる。
【0044】
上記実施形態又は変形例では、一対のブラケット25,25によって配列体28を一方向Dに加圧した状態で拘束する例を挙げて説明したが、筐体11への取り付け機能を有さない一対のエンドプレートによって配列体28を一方向Dに加圧した状態で拘束してもよい。
【0045】
上記実施形態又は変形例では、弾性部材47は、図9(A)に示されるように、配列体28の一方の端部に一つだけ配置される例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、弾性部材47は、配列体28の両方の端部に配置されてもよいし、電池セル23の間に配置されてもよい。また、弾性部材47は、図9(B)に示されるように、全て又は一部の電池セル23間に配置されてもよい。
【0046】
上記実施形態又は変形例では、ウレタン系ゴム等の弾性材料によって形成されている弾性部材47を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、バネ等の弾性部材であってもよい。
【0047】
上記実施形態又は変形例では、電池ホルダ22に保持された状態の電池セル23が並設された電池モジュール21を例に挙げて説明したが、電池ホルダ22には保持されず、電池セル23のみからなる電池モジュール21を用いてもよい。
【0048】
上記実施形態又は変形例では、被固定部材の例として電池パック10における筐体11の側壁13を例に挙げて説明したが、産業車両に搭載されるカウンタウェイトなどを用いてもよい。
【0049】
以上説明した種々の実施形態及び変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々、組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…電池パック、11…筐体、13…側壁、21…電池モジュール、22…電池ホルダ、23(23A〜23G)…電池セル、24c…主面、25…ブラケット(拘束部)、28…配列体、41(41A〜41G)…伝熱プレート、42…第一本体部、43…第二本体部、43a…他端部、43b…一端部、47…弾性部材、51…熱伝導部材、B…ボルト(拘束部)、N…ナット(拘束部)、D…一方向、G…離間距離、M…最大移動量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9