(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエチレン系樹脂(a)を含むA層、ポリエチレン系樹脂(b)を含むB層および基材層をこの順で有し、下記(i)、(ii)および(iii)の要件を満たすことを特徴とする発泡性積層体。
(i)前記ポリエチレン系樹脂(a)の示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が、前記ポリエチレン系樹脂(b)の該融解ピーク温度(Tm)未満である。
(ii)前記ポリエチレン系樹脂(b)の試験温度23℃、JIS K7112:1999に準拠して測定した密度が0.930g/cm3以下である。
(iii)前記A層および前記B層の厚みが下記式を満たす。
A層の厚み>B層の厚み
前記ポリエチレン系樹脂(a)およびポリエチレン系樹脂(b)が、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン及びエチレン共重合体から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性積層体。
JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレートMFRが下記要件(iv)および(v)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の発泡性積層体。
(iv)前記ポリエチレン系樹脂(a)のMFRが7g/10分以上25g/10分未満である。
(v)前記ポリエチレン系樹脂(b)のMFRが4g/10分以上20g/10分以下である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)を生産性良く得ることができる発泡性積層体、その製造方法、発泡加工紙及び発泡性積層体を使用した断熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、ポリエチレン系樹脂(a)を含むA層、ポリエチレン系樹脂(b)を含むB層および基材層をこの順で積層し、前記ポリエチレン系樹脂(a)および前記ポリエチレン系樹脂(b)の特性と前記A層およびB層の厚みを特定化することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は以下の通りである。
1.ポリエチレン系樹脂(a)を含むA層、ポリエチレン系樹脂(b)を含むB層および基材層をこの順で有し、下記(i)、(ii)および(iii)の要件を満たすことを特徴とする発泡性積層体。
(i)前記ポリエチレン系樹脂(a)の示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が、前記ポリエチレン系樹脂(b)の該融解ピーク温度(Tm)未満である。
(ii)前記ポリエチレン系樹脂(b)の試験温度23℃、JIS K7112:1999に準拠して測定した密度が0.930g/cm
3以下である。
(iii)前記A層および前記B層の厚みが下記式を満たす。
A層の厚み>B層の厚み
2.前記ポリエチレン系樹脂(a)およびポリエチレン系樹脂(b)が、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン及びエチレン共重合体から選択された1種以上であることを特徴とする前記1に記載の発泡性積層体。
3.JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレートMFRが下記要件(iv)および(v)を満たすことを特徴とする前記1または2に記載の発泡性積層体。
(iv)前記ポリエチレン系樹脂(a)のMFRが7g/10分以上25g/10分未満である。
(v)前記ポリエチレン系樹脂(b)のMFRが4g/10分以上20g/10分以下である。
4.前記A層およびB層の合計の厚みが、30μm〜100μmであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1に記載の発泡性積層体。
5.前記1〜4のいずれか1に記載の発泡性積層体を製造する方法であって、
前記基材層上に、前記ポリエチレン系樹脂(b)を含む発泡体からなるB層および前記ポリエチレン系樹脂(a)を含む発泡体からなるA層をこの順で押出しラミネート加工する工程を有し、
前記押出しラミネート加工の加工速度が、55m/分以上であることを特徴とする発泡性積層体の製造方法。
6.前記1〜4のいずれか1に記載の発泡性積層体の、前記A層および前記B層が設けられる基材層の面とは別の面に、密度が0.930〜0.970g/cm
3のポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物からなるC層が設けられてなることを特徴とする発泡性積層体。
7.前記6に記載の発泡性積層体の前記A層及び前記B層が発泡した状態である発泡加工紙。
8.前記7に記載の発泡加工紙を用いてなる断熱容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発泡性積層体は、ポリエチレン系樹脂(a)を含むA層、ポリエチレン系樹脂(b)を含むB層および基材層をこの順で積層し、前記ポリエチレン系樹脂(a)および前記ポリエチレン系樹脂(b)のDSCによる融解ピーク温度(Tm)の関係、前記ポリエチレン系樹脂(b)の密度、さらに前記A層およびB層の厚みを特定化しているので、ラミネート成形時の加工速度を高速とした場合においても、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)を生産性良く得ることができ、良好な発泡外観を有する発泡積層体及びそれを使用した発泡加工紙ならびにカップなどの断熱容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の発泡性積層体、その製造方法、発泡加工紙及び断熱容器について、詳細に説明する。
【0013】
本発明の発泡性積層体は、ポリエチレン系樹脂(a)を含むA層、ポリエチレン系樹脂(b)を含むB層および基材層をこの順で有し、下記(i)、(ii)および(iii)の要件を満たすことを特徴とする。
(i)前記ポリエチレン系樹脂(a)の示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が、前記ポリエチレン系樹脂(b)の該融解ピーク温度(Tm)未満である。
(ii)前記ポリエチレン系樹脂(b)の試験温度23℃、JIS K7112:1999に準拠して測定した密度が0.930g/cm
3以下である。
(iii)前記A層および前記B層の厚みが下記式を満たす。
A層の厚み>B層の厚み
【0014】
A層に含まれるポリエチレン系樹脂(a)およびB層に含まれるポリエチレン系樹脂(b)(以下、樹脂(a)および(b)と略記することがある)としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、エチレン共重合体、及びそれらの混合物が例示される。
【0015】
樹脂(a)および(b)として好ましいのは、高圧ラジカル重合法により得られる低密度ポリエチレン(高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン)およびエチレン共重合体である。高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンは、酸素、有機過酸化物などのラジカル発生剤を用いて、1000〜4000atmの超高圧下、塊状または溶液重合によって製造される。更に、高圧ラジカル重合法により得られる低密度ポリエチレンには、オートクレーブ反応器により得られた低密度ポリエチレンと、チューブラー反応器により得られた低密度ポリエチレンが存在し、その反応形式の違いによって、分子量分布の異なる低密度ポリエチレンが得られる。
また、前記エチレン共重合体におけるエチレンと共重合するモノマーとしては、例えば、共役ジエン(例えばブタジエンやイソプレン)、非共役ジエン(例えば1,4−ペンタジエン)、アクリル酸、アクリル酸エステル(例えばアクリル酸メチルやアクリル酸エチル)、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸メチルやメタクリル酸エチル)及び酢酸ビニルエチレン等が例示される。
樹脂(a)および(b)は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。
【0016】
樹脂(a)および(b)は、例えば高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンにラジカル発生剤を添加しラジカル反応させたものを使用することもできる。
上記ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、ジヒドロ芳香族、ジクミル化合物等が挙げられる。その有機過酸化物としては、例えば、(i)t−ブチルハイドロパーオサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、(ii)メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、(iii)イソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、(iv)ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルヘキシン)−3、ジ−t−アミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、(v)2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール、(vi)t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、(vii)ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカルボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート類、(viii)3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等の環状有機過酸化物類などが挙げられる。中でも好ましいのは、環状有機過酸化物類である。
【0017】
ラジカル発生剤の配合量は、特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂(a)またはポリエチレン系樹脂(b)100質量部に対し、0.5質量部以下、特に0.1質量部以下であることが好ましい。ラジカル発生剤の配合量が0.5質量部を超えると、流動性が悪化する。
【0018】
本発明において、ポリエチレン系樹脂(a)は、示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が、ポリエチレン系樹脂(b)の該融解ピーク温度(Tm)未満である必要がある。この条件を満たさないと、ラミネート成形時の加工速度を高速とした場合に、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)が得られない。
【0019】
融解ピーク温度(Tm)は次のように測定される。
ペレットを熱プレスでシートとし、パンチで打ち抜いてサンプルとする。測定は、JIS K7121−1987の方法に従う。下記の条件で、第一昇温、降温、第二昇温の手順で実施し、第二昇温の最高ピーク高さの温度をTmとする。
装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社社製のDSC(DSC7020)
昇降温条件
第一昇温:30℃から200℃までを10℃/分
降温:200℃から20℃までを10℃/分
第二昇温:20℃から200℃までを10℃/分
温度保持時間:第一昇温後5分間、降温後5分間
サンプル量:5mg
温度の校正:インジウム
リファレンス:アルミニウム
【0020】
本発明において、ポリエチレン系樹脂(a)の示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)は、例えば98〜108℃であり、100〜108℃が好ましい。ポリエチレン系樹脂(b)の示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)は、例えば107〜118℃であり、109〜118℃が好ましい。
ポリエチレン系樹脂(a)のTmとポリエチレン系樹脂(b)のTmとの差は、例えば1〜20℃であり、1〜10℃が好ましい。上記範囲であることで、ポリエチレン系樹脂(a)を含むA層の発泡開始時間をコントロールし、良好な発泡外観となるという点で有利となる。
【0021】
また本発明に使用するポリエチレン系樹脂(b)の試験温度23℃、JIS K7112:1999に準拠して測定した密度は、0.930g/cm
3以下であることが必要である。この条件を満たさない場合は、ラミネート成形時の加工速度を高速とした場合に、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)が得られない。ポリエチレン系樹脂(b)の密度は、0.919〜0.930g/cm
3が好ましく、0.921〜0.930g/cm
3さらに好ましい。
なお、本発明に使用するポリエチレン系樹脂(a)の密度は、0.900〜0.921g/cm
3が好ましく、0.910〜0.921g/cm
3さらに好ましい。
【0022】
また、ポリエチレン系樹脂(a)のJIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレートMFRは、7g/10分以上25g/10分未満であることが好ましく、9g/10分以上22g/10分未満がさらに好ましい。このようにポリエチレン系樹脂(a)のMFRを設定することにより、良好な発泡外観及び、充分な発泡高さが得られるという点で有利となる。
【0023】
また、ポリエチレン系樹脂(b)のJIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレートMFRは、4g/10分以上20g/10分以下であることが好ましく、5g/10分以上18g/10分以下がさらに好ましい。このようにポリエチレン系樹脂(b)のMFRを設定することにより、ポリエチレン系樹脂(a)を含むA層の発泡開始時間をコントロールし、良好な発泡外観となるという点で有利となる。
【0024】
また本発明の発泡性積層体は、前記A層および前記B層の厚みが下記式を満たす必要がある。この条件を満たさないと、ラミネート成形時の加工速度を高速とした場合に、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)が得られない。
A層の厚み>B層の厚み
A層の厚みは、例えば20μm〜70μmであり、20μm〜60μmが好ましい。
B層の厚みは、例えば10μm〜40μmであり、10μm〜30μmが好ましい。
A層とB層の厚み差は、例えば10μm〜60μmであり、10μm〜50μmが好ましい。
また、特に本発明の効果がさらに高まるという観点から、A層およびB層の合計の厚みは30μm〜100μmであるのが好ましく、50μm〜90μmであるのがさらに好ましい。
【0025】
なお、A層およびB層は必要に応じて、樹脂(a)および(b)の特性を損ねない範囲で、例えば、酸化防止剤、金属石鹸等の中和剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、顔料、染料等の着色剤、防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤などの添加剤を含有してもよい。
また、A層およびB層は必要に応じて、樹脂(a)および(b)の特性を損ねない範囲で、他の熱可塑性樹脂を配合しても構わない。熱可塑性樹脂としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂などを挙げることができる。また、A層およびB層は必要に応じて、印刷等を施してもよい。印刷は、部分的に着色インキで印刷しても、全面的に印刷してもよい。印刷の位置、印刷面積の大小、印刷の方法、使用されるインキなどは、従来公知の技術を適宜選択すればよい。
A層およびB層は、例えば、基材層に含まれた蒸気、揮発分によって発泡する。
【0026】
本発明の発泡性積層体における基材層は、紙を主体とする基材層が挙げられる。
紙を主体とする基材層としては、例えば、上質紙、クラフト紙、アート紙等が挙げられる。紙を主体とする基材層を採用した場合は、基材層に水分を含ませ、加熱により生じる蒸気によって樹脂層(a)および(b)を発泡させることができる。また、紙を主体とする基材層に加熱により揮発性ガスを発生する物質をコーティングしたり、加熱により揮発性ガスを発生する物質を配合したりすることにより、樹脂層(a)および(b)を発泡させることもできる。基材層に使用する紙は、坪量が100〜400g/m
2、特に150〜350g/m
2が好ましい。紙の含水率は4〜10%、好ましくは5〜8%程度のものが例示される。また、紙基材には印刷が施されていてもよい。
【0027】
本発明の発泡性積層体の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、溶融樹脂をダイレクトに積層する押出ラミネート加工、事前にフィルムとしたものを積層するサンドラミネート加工、ドライラミネート加工する方法等が挙げられる。
【0028】
押出ラミネート加工は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。この場合、本発明の発泡性積層体は、基材層上に、ポリエチレン系樹脂(b)を含む発泡体からなるB層、およびポリエチレン系樹脂(a)を含む発泡体からなるA層をこの順で押出しラミネート又は、共押出しラミネート加工することにより得られる。押出ラミネート加工は、加工速度55m/分以上の速度で行うことが好ましく、加工速度65m/分以上の速度で行うことが生産性の観点からさらに好ましい。
【0029】
また本発明の発泡性積層体の別の実施形態としては、基材層の他方の面(A層およびB層が設けられる面とは別の面)に、前記A層およびB層に用いられる樹脂よりも高い融点(融解ピーク温度:Tm)を有する樹脂組成物からなるC層が設けられてなるものである。このC層は、基材から放出される蒸気等を保持する役割を担い、均一で十分な発泡高さとなる発泡層を得るために設けることが好ましい。
【0030】
C層に用いられる樹脂としては、例えば、高・中・低密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリ−4−メチル−ペンテン−1樹脂等の炭素数2〜10のα−オレフィン単独重合体、またはそれらの相互共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはこれらとの混合物等が挙げられる。これらの中でも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。更に具体的には、線状ポリエチレン及び高圧法低密度ポリエチレンの混合物からなる中密度ポリエチレンが好ましく挙げられる。
C層に用いられる樹脂として、ポリエチレン系樹脂を採用する場合、密度は例えば0.930〜0.970g/cm
3、好ましくは0.930〜0.965g/cm
3、より好ましくは、0.930〜0.960g/cm
3である。密度が0.930g/cm
3未満であるとラミネート成形樹脂のすべりが悪く、ハンドリングが悪くなり、0.970g/cm
3を超えるとは押出ラミネート加工性が不安定となる懸念があるため好ましくない。
【0031】
また、C層に用いられる樹脂として、ポリエチレン系樹脂を採用する場合、MFRは2.0〜15g/10分、好ましくは3.0〜14g/10分、より好ましくは4.0〜13g/10分である。MFRが2.0g/10分未満であると押出ラミネート加工時の高速加工性が悪化し、15g/10分を超えると押出ラミネート加工性が不安定となる懸念があるため好ましくない。
また、C層に用いられる樹脂の融点(溶解ピーク温度:Tm)は、例えば100〜140℃、好ましくは110〜140℃、より好ましくは115〜140℃である。
C層には必要に応じて、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、金属石鹸等の中和剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、顔料、染料等の着色剤、防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤などの添加剤を配合してもよい。
C層の厚みは、例えば10μm〜70μmであり、20μm〜50μmが好ましい。
【0032】
本発明の発泡性積層体においては、本発明の効果を損なわない範囲において、該層間、あるいはその内層および/または外層等に他の層を設けてもよく、例えば、一層または複数層のフィルム層、装飾層、補強層、接着剤層、バリア層等を設けてもよい。
【0033】
上記装飾層としては、例えば、印刷された紙、フィルム、不織布、織布等が挙げられる。
また、補強層とは、基材層に積層されたA層、B層が加熱によって発泡されるときに発泡層が破裂しないように、これらの外層にポリエチレン樹脂フィルムなどを積層して発泡層の過度の発泡による破裂防止や、不ぞろいの発泡セルを均一に矯正する、あるいはフィルム、不織布等を積層して、機械的強度を持たせるなどの役割を果たすものである。樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等でよい。
また、接着剤層とは、該層を形成する樹脂として、例えば、エチレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸等をグラフトした変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等ホットメルト、通常の接着剤等が挙げられる。
また、バリア層としては、該層を形成する樹脂として、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着等の金属蒸着フィルム、金属箔等が挙げられる。
【0034】
本発明の発泡加工紙は、上記の発泡性積層体を加熱し、前記A層及び前記B層を発泡させて得られるものである。発泡加工紙の発泡セルの高さは、好ましくは200μm以上であり、250μm以上とすることがより好ましい。発泡セルの高さが200μm未満であると、十分な断熱性が得られない。
【0035】
加熱方法としては特に制限はないが、例えば、熱風、マイクロ波、高周波、赤外線、遠
赤外線等により加熱する方法が挙げられる。加熱温度には特に制限はないが、例えば紙中の水分を蒸発させる場合は、例えば、100〜200℃が好ましい。加熱時間は10秒間〜10分間が好ましい。上記範囲であれば、充分な発泡セル高さが得られやすい。
上記発泡加工紙は、下記のカップ等断熱容器用の断熱・保温材料としてはもちろんのこと、緩衝材料、遮音材料、発泡紙等としても用いられ、スリーブ材、紙皿、トレー、滑り止め材、果物の包装材、発泡紙等の農業用、産業用、生活用資材等として活用される。
【0036】
本発明の断熱容器は、上記発泡性積層体を用いて容器を形成した後、該容器を加熱し、前記A層及び前記B層を発泡させて得られたものである。すなわち、上記発泡加工紙を用いてなるものである。
断熱容器でも、上記発泡加工紙と同様に、発泡セルの高さは、好ましくは200μm以上、より好ましくは250μm以上である。発泡セルの高さが200μm以上あると、十分な断熱性が得られやすい。
これにより得られた断熱容器は、トレー及びカップなどとして使用される。用途としては、ホット飲料、カップスープ、カップ味.汁、カップラーメン、納豆容器、電子レンジ対応容器等が例示できる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本例の物性、及び得られた発泡性積層体等の試験方法は、以下の通りである。
【0038】
(1)MFR:JISK7210(1999年)に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定した。
【0039】
(2)密度:ペレットを熱プレスして2mm厚のプレスシートを作成し、該シートを1000ml容量のビーカーに入れ蒸留水を満たし、時計皿で蓋をしてマントルヒーターで加熱した。蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、ビーカーを木製台の上に置き放冷した。この時60分煮沸後の沸騰蒸留水は500mlとし室温になるまでの時間は60分以下にならないように調整した。また、試験シートは、ビーカー及び水面に接しないように水中のほぼ中央部に浸漬した。シートを23℃、湿度50%の条件において16時間以上24時間以内でアニーリングを行った後、タテ×ヨコ2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃でJIS K7112(1999年)に準拠して測定した。
【0040】
(3)融解ピーク温度(Tm):ペレットを熱プレスでシートとし、パンチで打ち抜いてサンプルとした。測定は、JIS K7121−1987の方法に従った。下記の条件で、第一昇温、降温、第二昇温の手順で実施し、第二昇温の最高ピーク高さの温度をTmとする。
装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社社製のDSC(DSC7020)
昇降温条件
第一昇温:30℃から200℃までを10℃/分
降温:200℃から20℃までを10℃/分
第二昇温:20℃から200℃までを10℃/分
温度保持時間:第一昇温後5分間、降温後5分間
サンプル量:5mg
温度の校正:インジウム
リファレンス:アルミニウム
【0041】
(4)発泡後の外観評価
実施例または比較例により得られた積層体を10cm×10cmに切り出し、120℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH−102型エスペック製)中で360秒間静置し発泡させた後、取り出して空気中で室温まで冷却した。
上記発泡させたセルサイズをデジタルマイクロスコープ(スカラ社製HDM−2100)で、下部より灯影させて1.3cm×1.3cm四方の各発泡セル全ての面積を測定後、その平均を算出し、平均値が0.8mm
2以上のものを外観不良(×)、0.8mm
2未満のものを外観良好(○)と評価した。
【0042】
(5)発泡高さ
実施例または比較例により得られた積層体を10cm×10cmに切り出し、120℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH−102型エスペック製)中で360秒間静置した後、取り出して空気中で室温まで冷却した。発泡後の積層体の発泡層断面をデジタルマイクロスコープにて断面写真を撮影し、断面写真から発泡層のみの高さを10箇所測定し、平均の発泡層厚みをA層およびB層の発泡後の層高さとした。
発泡後の層高さが1.1mm以上のものを(○)、1.1mm未満のものを(×)と評価した。
【0043】
実施例または比較例で使用したポリエチレン系樹脂は以下の通りである。
A−1:MFR14g/10分、密度0.918g/cm
3、Tm106℃の高圧法低密度ポリエチレン
A−2:MFR15g/10分、密度0.918g/cm
3、Tm106℃、酸化防止剤を300ppm添加した高圧法低密度ポリエチレン
A−3:MFR10g/10分、密度0.936g/cm
3、Tm129℃の線状ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンの混合物
B−1:MFR9g/10分、密度0.922g/cm
3、Tm110℃の高圧法低密度ポリエチレン
B−2:MFR14g/10分、密度0.922g/cm
3、Tm109℃の高圧法低密度ポリエチレン
B−3:MFR4g/10分、密度0.923g/cm
3、Tm111℃の高圧法低密度ポリエチレン
【0044】
(実施例1)
C層に使用する樹脂として、MFRが6g/10分、密度が0.942g/cm
3、Tmが130℃の中密度ポリエチレンを使用した。
坪量320g/m
2、含水率7%の紙基材の片面にコロナ処理(30W・min/m
2)を施し、90mmφ押出機(住友重機械モダン株式会社製)、エアギャップ110mm、ダイス有効幅560mmの押出ラミネーターを用い、樹脂温度320℃、加工速度50m/min、40μm厚にて押出ラミネート加工し、ポリエチレン系樹脂層からなるC層と紙基材との積層体を得た。
次に、上記積層体のC層と反対面の紙基材面にコロナ処理(30W・min/m
2)を施し、ポリエチレン系樹脂(A−1)を直径90mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン株式会社製)に供給し、更にポリエチレン系樹脂(B−1)を直径65mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン株式会社製)へと供給、樹脂温度320℃、130mmのエアギャップ長さで、A層の厚みが55μm、B層の厚みが15μmとなるように共押出ラミネートで、引取り速度を55m/minまたは65m/minとし、A層、B層、紙基材、C層の順に積層されてなる積層体を得た。
また、濡れ性向上のため、A層およびB層の表面には、コロナ処理(10W・min/m
2)を施した。
得られた積層体の評価結果を表1に示す。加工速度55m/min、65m/minともに発泡外観及び発泡高さが良好な結果となった。
【0045】
(実施例2)
A層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(A−2)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体の評価結果を表1に示す。加工速度55m/min、65m/minともに発泡外観及び発泡高さが良好な結果となった。
【0046】
(実施例3)
A層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(A−2)を用い、B層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(B−2)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体の評価結果を表1に示す。加工速度55m/min、65m/minともに発泡外観及び発泡高さが良好な結果となった。
【0047】
(実施例4)
B層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(B−3)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体の評価結果を表1に示す。加工速度55m/min、65m/minともに発泡外観及び発泡高さが良好な結果となった。
【0048】
(比較例1)
A層及びB層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(A−1)のみを用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体の評価結果を表2に示す。加工速度55m/minでは、発泡外観が良好な結果となったが、加工速度が65m/minでは発泡外観不良となった。また発泡高さも不良な結果となった。
【0049】
(比較例2)
A層及びB層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(A−3)のみを用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体の評価結果を表2に示す。加工速度55m/min、65m/minともに発泡不足となり発泡外観及び発泡高さが不良な結果となった。
【0050】
(比較例3)
A層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(A−1)、B層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(A−3)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体の評価結果を表2に示す。加工速度55m/min、65m/minともに発泡不足となり、発泡外観及び発泡高さが不良な結果となった。
【0051】
(比較例4)
A層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(A−1)、B層に使用する樹脂として、ポリエチレン系樹脂(B−3)を用い、A層の厚みが20μm、B層の厚みが50μmとなるように共押出ラミネートした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体の評価結果を表2に示す。加工速度55m/min、65m/minともに発泡不足となり、発泡外観及び発泡高さが不良な結果となった。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】