【実施例】
【0063】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。実施例中、特に断りの無い限り「部」とは「質量部」を意味する。
【0064】
なお、本発明のフタロシアニンの同定は、飛行時間型質量分析装置(autoflexIII(TOF−MS)、ブルカー・ダルトニクス社製)を用いて得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致、並びに、元素分析装置(2400CHN元素分析装置、パーキン・エルマー社製)を用いて得られる炭素、水素および窒素の比率と、理論値との一致により行った。
【0065】
顔料中のハロゲン原子の置換数の平均値は、顔料を酸素燃焼フラスコ法にて燃焼させ、該燃焼物を水に吸収させた液体を、イオンクロマトグラフ(ICS−2000イオンクロマトグラフィー、DIONEX社製)により分析してハロゲン量を定量し、ハロゲン原子の置換数の平均値に換算することで得た。
【0066】
顔料中のハロゲン分布幅は、飛行時間型質量分析装置(autoflexIII(TOF−MS)、ブルカー・ダルトニクス社製)を用いて得られたマススペクトラムにおいて、各成分に相当する分子イオンピークの信号強度(各ピーク値)と、各ピーク値を積算した値(全ピーク値)とを算出し、全ピーク値に対する各ピーク値の割合が1%以上のピークの数をカウントし、ハロゲン分布幅とした。
【0067】
本発明のフタロシアニン顔料および黄色着色剤の体積平均一次粒子径(MV)は、日立ハイテクノロジーズ社製透過型電子顕微鏡(TEM)「H−7650」と下記計算式によって求めた。まず、TEMによって着色剤粒子を撮影した。得られた画像にて、顔料または着色剤粒子の任意の100個を選び、その一次粒子の短軸径と長軸径の平均値を着色剤粒子の粒径(d)とし、次いで個々の顔料または着色剤を求めた粒径(d)を有する球とみなして、それぞれ粒子の体積(V)を求め、この作業を100個の顔料または着色剤粒子について行い、そこから下記式(1)を用いて算出した。
【0068】
式(1)
MV=Σ(V・d)/Σ(V)
【0069】
また、CuKα線によるX線回折パターンは、リガク社製卓上型X線回折装置を用いて、ブラック角2θ=3°〜35°の範囲を、X線サンプリング間隔0.02°で測定を行った。
【0070】
<フタロシアニン顔料の製造>
[実施例1]
(フタロシアニン顔料(P−1)の製造)
反応容器中で、n−アミルアルコール1250部にフタロジニトリル225部と塩化アルミニウム無水物78部を混合攪拌した。これに、DBU(1,8−Diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)266部を加え、昇温し、136℃で5時間還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、135部の下記化学式(5)で示されるクロロアルミニウムフタロシアニンを得た。得られたクロロアルミニウムフタロシアニンについて元素分析を行ったところ、計算値(C)66.85%、(H)2.80%、(N)19.49%に対して、実測値(C)66.7%、(H)3.0%、(N)19.2%であり、目的の化合物であることを同定した。
【0071】
【化6】
【0072】
次いで、反応容器中で、濃硫酸1500部に上記クロロアルミニウムフタロシアニン100部を氷浴下にて加えた。その後、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン199部を徐々に加え、25℃で6時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、165部のフタロシアニン顔料(P−1)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−1)について臭素置換数を算出したところ、平均8.4個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は8であった。得られたフタロシアニン顔料(P−1)の体積平均一次粒子径は43nmであった。
【0073】
[実施例2]
(フタロシアニン顔料(P−2)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−1)の製造において、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン199部をN−ブロモスクシンイミド186部に変更した以外は、実施例1と同様にして143部のフタロシアニン顔料(P−2)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−2)について臭素置換数を算出したところ、平均6.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は5であった。得られたフタロシアニン顔料(P−2)の体積平均一次粒子径は47nmであった。
【0074】
[実施例3]
(フタロシアニン顔料(P−3)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−1)の製造において、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン199部を1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン249部に変更した以外は、実施例1と同様にして187部のフタロシアニン顔料(P−3)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−3)について臭素置換数を算出したところ、平均10.3個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は7であった。得られたフタロシアニン顔料(P−3)の体積平均一次粒子径は40nmであった。
【0075】
[実施例4]
(フタロシアニン顔料(P−4)の製造)
臭化アルミニウム406部、臭化ナトリウム94部および臭化第二鉄10部を加温して溶融し、140℃で上記クロロアルミニウムフタロシアニン100部を加えた。160℃に昇温して臭素178部を滴下した。水5000部に上記反応液を注入し、濾過、温水洗浄、1%塩酸水溶液洗浄、温水洗浄、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、温水洗浄の順で処理をし、その後、乾燥して粗製臭素化アルミニウムフタロシアニン236部を得た。得られた粗製臭素化アルミニウムフタロシアニンを濃硫酸1900部に溶解し、50℃で3時間撹拌した。次いで、水12000部に撹拌しながら溶解液を注ぎ入れ、70℃に加熱して、濾過、温水洗浄、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、温水洗浄、乾燥して224部のフタロシアニン顔料(P−4)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−4)について臭素置換数を算出したところ、平均12.1個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は9であった。得られたフタロシアニン顔料(P−4)の体積平均一次粒子径は38nmであった。
【0076】
[実施例5]
(フタロシアニン顔料(P−5)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−4)の製造において、臭素178部を臭素208部に変更した以外は、実施例4と同様にして255部のフタロシアニン顔料(P−5)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−5)について臭素置換数を算出したところ、平均14.2個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は6であった。得られたフタロシアニン顔料(P−5)の体積平均一次粒子径は37nmであった。
【0077】
[実施例6]
(フタロシアニン顔料(P−6)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−1)の製造において、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン199部をトリクロロイソシアヌル酸108部に変更した以外は、実施例1と同様にして101部のフタロシアニン顔料(P−6)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−6)について塩素置換数を算出したところ、平均7.8個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は7であった。得られたフタロシアニン顔料(P−6)の体積平均一次粒子径は41nmであった。
【0078】
[実施例7]
(フタロシアニン顔料(P−7)の製造)
塩化アルミニウム406部、塩化ナトリウム94部および塩化第二鉄10部を加温して溶融し、140℃で上記クロロアルミニウムフタロシアニン100部を加えた。160℃に昇温して塩素158部を吹き込んだ。水5000部に上記反応液を注入し、濾過、温水洗浄、1%塩酸水溶液洗浄、温水洗浄、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、温水洗浄の順で処理をし、その後、乾燥して粗製塩素化アルミニウムフタロシアニン160部を得た。得られた粗製塩塩素化アルミニウムフタロシアニンを濃硫酸1200部に溶解し、50℃で3時間撹拌した。次いで、水7200部に撹拌しながら溶解液を注ぎ入れ、70℃に加熱して、濾過、温水洗浄、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、温水洗浄、乾燥して152部のフタロシアニン顔料(P−7)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−7)について塩素置換数を算出したところ、平均11.9個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は9であった。得られたフタロシアニン顔料(P−7)の体積平均一次粒子径は39nmであった。
【0079】
[実施例8]
(フタロシアニン顔料(P−8)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−7)の製造において、塩素79部を塩素99部に変更した以外は、実施例7と同様にして168部のフタロシアニン顔料(P−8)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−8)について塩素置換数を算出したところ、平均15.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は4であった。得られたフタロシアニン顔料(P−8)の体積平均一次粒子径は37nmであった。
【0080】
[実施例9]
(フタロシアニン顔料(P−9)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−1)の製造において、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン199部を1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン198部に変更した以外は、実施例1と同様にして160部のフタロシアニン顔料(P−9)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−9)についてヨウ素置換数を算出したところ、平均6.2個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は5であった。得られたフタロシアニン顔料(P−9)の体積平均一次粒子径は49nmであった。
【0081】
[実施例10]
(フタロシアニン顔料(P−10)の製造)
反応容器中で、濃硫酸1500部にクロロアルミニウムフタロシアニン100部を氷浴下にて加えた。その後、トリクロロイソシアヌル酸45部を徐々に加え、25℃で3時間撹拌を行った。その後、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン210部を徐々に加え、25℃で5時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、166部のフタロシアニン顔料(P−10)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−10)について塩素、臭素の置換数を算出したところ、塩素平均2.1個、臭素平均7.9個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は8であった。得られたフタロシアニン顔料(P−10)の体積平均一次粒子径は40nmであった。
【0082】
[実施例11]
(フタロシアニン顔料(P−11)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−10)の製造において、トリクロロイソシアヌル酸45部をトリクロロイソシアヌル酸125部に、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン210部を1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン155部に変更した以外は、実施例10と同様にして157部のフタロシアニン顔料(P−11)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−11)について塩素、臭素の置換数を算出したところ、塩素平均5.9個、臭素平均6.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は8であった。得られたフタロシアニン顔料(P−11)の体積平均一次粒子径は42nmであった。
【0083】
[実施例12]
(フタロシアニン顔料(P−12)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−10)の製造において、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン210部を1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン205部に変更した以外は、実施例10と同様にして145部のフタロシアニン顔料(P−12)を製造した。得られたフタロシアニン顔料(P−12)について塩素、ヨウ素の置換数を算出したところ、塩素平均2.0個、ヨウ素平均6.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は8であった。得られたフタロシアニン顔料(P−12)の体積平均一次粒子径は45nmであった。
【0084】
[実施例13]
(フタロシアニン顔料(P−13)の製造)
反応容器に、1−メチル−2−ピロリジノン1000部、実施例1で得られたフタロシアニン顔料(P−1)100部、リン酸ジフェニル31部を加えた。85℃で、3時間反応させた後、水8000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水16000部で洗浄後、減圧下60℃にて一昼夜乾燥させて、121部の青色生成物を得た。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート600部に得られた青色生成物を加え、120℃で2時間加熱した。生成物をろ過し、減圧下にて60℃で一昼夜乾燥させて、115部のフタロシアニン顔料(P−13)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−13)について臭素置換数を算出したところ、平均8.3個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は8であった。得られたフタロシアニン顔料(P−13)の体積平均一次粒子径は32nmであった。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、
図1に示すようにブラック角2θ=9.3°、14.5°、15.7°、18.3°、23.5°および24.1°にピークを有していた。
【0085】
[実施例14]
(フタロシアニン顔料(P−14)の製造)
反応容器に、1−ペンタノール1000部、実施例2で得られたフタロシアニン顔料(P−2)100部、リン酸ジフェニル29部を加え、5℃まで冷却し、4時間反応させた。続いて、反応液を120℃に昇温し、2時間加熱撹拌を行った。室温まで冷却後、生成物をろ過し、メタノール1000部で洗浄後、減圧下にて40℃で一昼夜乾燥させて、110部のフタロシアニン顔料(P−14)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−14)について臭素置換数を算出したところ、平均6.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は5であった。得られたフタロシアニン顔料(P−14)の体積平均一次粒子径は40nmであった。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、
図1に示すようにブラック角2θ=9.2°、14.5°、15.7°、18.2°、23.6°、および24.1°にピークを有していた。
【0086】
[実施例15]
(フタロシアニン顔料(P−15)の製造)
反応容器に、1−メチル−2−ピロリジノン1000部、実施例3で得られたフタロシアニン顔料(P−3)100部、リン酸ジフェニル28部を加えた。85℃で、3時間反応させた後、水8000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水16000部で洗浄後、減圧下60℃にて一昼夜乾燥させて、105部の青色生成物を得た。次いで、1−ブタノール1000部に得られた青色生成物を加え、110℃で2時間加熱した。生成物をろ過し、減圧下にて60℃で一昼夜乾燥させて、100部のフタロシアニン顔料(P−15)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−15)について臭素置換数を算出したところ、平均10.1個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は7であった。得られたフタロシアニン顔料(P−15)の体積平均一次粒子径は31nmであった。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、
図2に示すようにブラック角2θ=14.0°、23.9°、および27.1°にピークを有していた。
【0087】
[実施例16]
(フタロシアニン顔料(P−16)の製造)
反応容器に、1−ヘキサノール1000部、実施例4で得られたフタロシアニン顔料(P−4)100部、リン酸ジフェニル20部を加え、5℃まで冷却し、4時間反応させた。続いて、反応液を145℃に昇温し、2時間加熱撹拌を行った。室温まで冷却後、生成物をろ過し、メタノール1000部で洗浄後、減圧下にて40℃で一昼夜乾燥させて、104部のフタロシアニン顔料(P−16)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−16)について臭素置換数を算出したところ、平均12.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は9であった。得られたフタロシアニン顔料(P−16)の体積平均一次粒子径は38nmであった。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、
図2に示すようにブラック角2θ=14.0°、23.9°、および26.9°にピークを有していた。
【0088】
[実施例17]
(フタロシアニン顔料(P−17)の製造)
反応容器に、ジメチルスルホキシド2000部、実施例6で得られたフタロシアニン顔料(P−5)100部、リン酸ジフェニル18部を加えた。85℃で、3時間反応させた後、水12000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水24000部で洗浄後、減圧下60℃にて一昼夜乾燥させて、102部の青色生成物を得た。次いで、乳酸エチル1000部に得られた青色生成物を加え、140℃で2時間加熱した。生成物をろ過し、メタノール1000部で洗浄後、減圧下にて40℃で一昼夜乾燥させて、97部のフタロシアニン顔料(P−17)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−17)について臭素置換数を算出したところ、平均14.1個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は6であった。得られたフタロシアニン顔料(P−17)の体積平均一次粒子径は33nmであった。また、CuKα線によるX線回折パターンを測定したところ、
図2に示すようにブラック角2θ=13.9°、23.8°、および27.1°にピークを有していた。
【0089】
[実施例18〜37]
(フタロシアニン顔料(P−18〜37)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P−13)の製造において、原料となるフタロシアニン顔料と酸性化合物を表1に記載した条件にそれぞれ変更した以外は、実施例13と同様な操作を行い、それぞれフタロシアニン顔料(P−18〜37)を得た。収量、Xで表されるハロゲン原子の置換数の平均値、ハロゲン分布幅、体積平均一次粒子径については表2の通りであり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【化7】
【0093】
【化8】
【0094】
【化9】
【0095】
【化10】
【0096】
【化11】
【0097】
<参考例>
以下に、本発明のフタロシアニン顔料を産業的に使用する例として、カラーフィルタ用着色組成物における使用を参考例として説明するが、本発明のフタロシアニン顔料を産業的に使用する形態はこれによって限定されるものではない。なお、例中、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」をそれぞれ表す。また、「PGMAC」とはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。
【0098】
(樹脂の重合平均分子量(Mw))
樹脂の重合平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0099】
(樹脂の酸価)
樹脂溶液0.5〜1.0部に、アセトン80mlおよび水10mlを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(「COM−555」平沼産業製)を用いて滴定し、樹脂溶液の酸価を測定した。そして、樹脂溶液の酸価と樹脂溶液の固形分濃度から、樹脂の固形分あたりの酸価を算出した。
【0100】
<バインダー樹脂の製造方法>
(アクリル樹脂溶液1の調整)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加してアクリル樹脂溶液1を調製した。
【0101】
<比較フタロシアニン顔料の製造方法>
本発明の参考例では、実施例1〜37で製造したフタロシアニン顔料に加え、比較例として、以下の製造方法により製造したフタロシアニン顔料を使用した。
【0102】
[比較例1]
フタロシアニン顔料(P−13)の製造において、原料となるフタロシアニン顔料を上記クロロアルミニウムフタロシアニンに、リン酸ジフェニル31部をリン酸ジフェニル52部に変更したした以外は、実施例13と同様な操作を行い、フタロシアニン顔料(P−38)123部を得た。得られたフタロシアニン顔料の体積平均一次粒子径は37nmであった。
【0103】
[比較例2]
反応容器に、4−ブロモフタルイミド100部、尿素132部、モリブデン酸アンモニウム2.4部、硫酸ナトリウム0.8部、1−クロロナフタレン200部を加え撹拌した。150℃まで加熱後、塩化アルミニウム16.6部、尿素21.2部を加え、250℃、7時間、反応させた。これを室温まで冷却後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄後、乾燥させた。次いで三角フラスコに、98%硫酸1000部を加えた。そこへ乾燥させた生成物を加え溶解させ、1時間室温で撹拌した。その後、3℃の氷水6000部に硫酸溶注入し、析出した固体をろ取、水洗、乾燥して、臭素原子の置換数の平均値が4、ハロゲン分布幅が1であるフタロシアニン顔料70.4部を得た。次いで、反応容器に、得られたフタロシアニン顔料と1−メチル−2−ピロリジノン1000部、リン酸ジフェニル24部を加えた。85℃で、3時間反応させた後、水8000部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水16000部で洗浄後、減圧下60℃にて一昼夜乾燥させて、79部のフタロシアニン顔料(P−39)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−39)について臭素置換数を算出したところ、平均4.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。また、ハロゲン分布幅は1であった。得られたフタロシアニン顔料(P−39)の体積平均一次粒子径は53nmであった。
【0104】
[比較例3]
4−ブロモフタルイミドの代わりに4,5−ジブロモフタル酸100部、リン酸ジフェニル24部の代わりにリン酸ジフェニル15部を使用した以外は、比較例2と同様にして、臭素原子の置換数の平均値が8、ハロゲン分布幅が1であるフタロシアニン顔料(P−40)62部を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−40)の体積平均一次粒子径は51nmであった。
【0105】
[比較例4]
4−ブロモフタルイミドの代わりに4,5−ジクロロフタル酸100部、リン酸ジフェニル24部の代わりにリン酸ジフェニル22部を使用した以外は、比較例2と同様にして、塩素原子の置換数の平均値が8、塩素分布幅が1であるフタロシアニン顔料(P−41)66部を得た。得られたフタロシアニン顔料(P−41)の体積平均一次粒子径は56nmであった。
【0106】
【化12】
【0107】
<顔料分散体の製造>
上記で作成した顔料について、着色組成物の一態様である顔料分散体を製造した。
(樹脂型分散剤溶液の調製)
市販の樹脂型分散剤であるBASF社製EFKA4300と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを混合して不揮発分40質量%溶液に調製し、樹脂型分散剤溶液1を得た。
【0108】
[参考例1]
(フタロシアニン・顔料分散体(GP−1))
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で3時間分散した後、孔径5.0μmのフィルタで濾過し、不揮発成分が20質量%の顔料分散体(GP−1)を作製した。
フタロシアニン顔料(P−1) : 11.0部
アクリル樹脂溶液1 : 17.5部
PGMAC : 66.5部
樹脂型分散剤溶液1 : 5.0部
【0109】
[参考例2〜37、比較例1〜4]
(フタロシアニン・顔料分散体(GP−2〜41))
フタロシアニン顔料(P−1)を、フタロシアニン顔料(P−2)〜(P−41)にそれぞれ変更した以外は、参考例1と同様の方法でフタロシアニン・顔料分散体(GP−2〜41)をそれぞれ作製した。
【0110】
<その他顔料分散体の製造方法>
[PY138・顔料分散体(YP−1)の製造]
キノフタロン系黄色顔料C.I.ピグメント イエロー138(BASF社製「Paliotol Yellow L 0962HD」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化黄色顔料(PY138−1)を得た。
フタロシアニン顔料(P−1)を(PY138−1)に変更した以外は、参考例1と同様の方法でPY138・顔料分散体(YP−1)を作製した。
【0111】
<顔料分散体の評価>
(塗膜のコントラスト比(CR)評価)
液晶ディスプレー用バックライトユニットから出た光は、偏光板を通過して偏光され、ガラス基板上に塗布された着色組成物の塗膜を通過し、もう一方の偏光板に到達する。この際、偏光板と偏光板の偏光面が並行であれば、光は偏光板を透過するが、偏光面が直交している場合には光は偏光板により遮断される。しかし、偏光板によって偏光された光が着色組成物の塗膜を通過する際に、着色剤粒子によって散乱等が起こり、偏光面の一部にずれが生じると、偏光板が並行のときは透過する光量が減り、偏光板が直交のときは一部光が透過する。この透過光を偏光板上の輝度として測定し、偏光板が並行の際の輝度と、直交の際の輝度との比を、コントラスト比として算出した。
(コントラスト比)=(並行のときの輝度)/(直交のときの輝度)
従って、塗膜中の着色剤により散乱が起こると、並行のときの輝度が低下し、かつ直交のときの輝度が増加するため、コントラスト比が低くなる。
【0112】
なお、輝度計としては色彩輝度計(トプコン社製「BM−5A」)、偏光板としては偏光板(日東電工社製「NPF−G1220DUN」)を用いた。測定に際しては、測定部分に1cm角の孔を開けた黒色マスクを介して測定した。
【0113】
フタロシアニン・顔料分散体(GP−1〜41)をそれぞれ、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃で20分乾燥し、ついで230℃で60分間加熱、放冷することで塗膜基板を作製した。得られた塗布基板のコントラスト比(CR)を測定した。作製した塗膜基板は、230℃での熱処理後で、膜厚が1.5μmとなるよう調整した。
コントラスト比は、下記基準に従って判定した。結果を表3に示す。
◎:9000以上:極めて良好
○:6000以上〜9000未満:良好
△:3000以上〜6000未満:実用可能
×:3000未満:不良
【0114】
(塗膜の耐熱性評価)
フタロシアニン・顔料分散体(GP−1〜41)をそれぞれ、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃で20分乾燥し、ついで230℃で60分間加熱、放冷することで塗膜基板を作製した。作製した塗膜基板は、230℃での熱処理後で、膜厚が1.5μmとなるよう調整した。得られた塗膜の色度を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用い、[L*(1)、a*(1)、b*(1)]を測定した。さらに250℃で60分間熱処理を行った後の色度[L*(2)、a*(2)、b*(2)]を測定し、下記式(2)により、色差ΔE*ab
を求めた。
式(2)
ΔE*ab=[[L*(2)−L*(1)]
2+[a*(2)−a*(1)]
2+[b*(2)−b*(1)]
2]
1/2
【0115】
耐熱性は、下記基準に従って判定した。結果を表3に示す。
◎:ΔE*ab=1以下:極めて良好
○:ΔE*ab=1〜3:良好
△:ΔE*ab=3〜5:実用可能
×:ΔE*ab=5以上:不良
【0116】
(塗膜の耐光性評価)
フタロシアニン・顔料分散体(GP−1〜41)をそれぞれ、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃で20分乾燥し、ついで230℃で60分間加熱、放冷することで塗膜基板を作製した。作製した塗膜基板は、230℃での熱処理後で、膜厚が1.5μmとなるよう調整した。その基板上に紫外線カットフィルター(ホヤ社製「COLORED OPTICAL GLASS
L38」)を貼り、470W/m
2のキセノンランプを用いて紫外光を150時間照射した前後の色を測定し、上記式(1)により、色差ΔE*abを求めた。判断基準は、耐熱性評価の時と同様である。結果を表3に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
比較例1のように、フタロシアニン環上にハロゲンが置換されていないものはコントラスト比、堅牢性ともに低い結果であった。また、臭素置換数が4、ハロゲン分布幅が1である比較例2では、コントラスト比、耐熱性ともに低く、比較例3、4のようにハロゲン置換数が8であるが、ハロゲン分布幅が1であるものは、コントラスト比が低い傾向であった。本発明の参考例1〜37のハロゲン置換数の平均値が6〜15、ハロゲン分布幅が4以上のフタロシアニン顔料を含む着色組成物では、高コントラスト比かつ堅牢性(耐熱性、耐光性)に優れる結果となった。この結果より、コントラスト比と堅牢性の両立には、ハロゲン置換数が6以上かつ、ハロゲン分布幅が4以上の組み合わせが良好であることがわかる。
【0119】
<感光性着色組成物の作成と評価>
上記顔料分散体を用いて、感光性着色組成物の作成と評価を行った。
【0120】
[参考例38]
(緑色感光性着色組成物(GR−1))
下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合した後、孔径1μmのフィルタで濾過して、緑色感光性着色組成物(GR−1)を作製した。
フタロシアニン・顔料分散体(GP−1) : 22.2部
PY138・顔料分散体(YP−1) : 27.8部
アクリル樹脂溶液1 : 7.5部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM−402」) : 2.0部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアー907」) : 1.2部
増感剤(保土谷化学工業社製「EAB−F」) : 0.3部
シクロヘキサノン : 39.0部
【0121】
[参考例39〜74、比較例5〜8]
顔料分散体の合計の50部の内訳を、表4に示す種類・質量部にそれぞれ変更した以外は、参考例38と同様にして、それぞれ緑色感光性着色組成物(GR−2〜41)を得た。
【0122】
(明度の評価)
緑色感光性着色組成物(GR−1〜41)を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、70℃で20分乾燥後、さらに230℃で60分加熱して得られた基板の色度が、C光源においてx=0.297、y=0.570になるような塗布基板を得た。得られた基板の明度(Y)を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP200」)で測定した。評価基準は下記のとおりである。結果を表4に示す。
◎:66.5以上 : 極めて良好
○:65.9以上66.5未満 : 良好
△:65.3以上65.9未満 : 実用可能
×:65.3未満 : 不良
【0123】
(耐溶剤性の評価)
緑色感光性着色組成物(GR−1〜41)をスピンコート法により、予めブラックマトリックスが形成されているガラス基板に塗工した後、クリーンオーブン中で、70℃で20分乾燥させた。次いで、この基板を室温に冷却した後、超高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して紫外光を露光した。
その後、この基板を23℃の0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液にて30秒間スプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。さらに、クリーンオーブン中で、230℃で30分加熱処理を行い、基板上にストライプ状の着色画素層を形成した。
得られたストライプ状の緑画素について、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびメタノール(MeOH)に15分間浸漬し、浸漬前後での緑色画素部分の色差を測定した。色差の測定方法・算出方法・評価基準は、耐熱性・耐光性評価と同様とした。結果を表4に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
比較例5のように、ハロゲンが置換されていないものは明度、耐溶剤性ともに低い結果であった。また、臭素置換数が4、ハロゲン分布幅が1である比較例6では、明度とNMPへの溶剤耐性が低く、比較例7、8のようにハロゲン置換数が8であるが、ハロゲン分布幅が1であるものは、明度が低い傾向であった。本発明の参考例38〜74のハロゲン置換数の平均値が6〜15、ハロゲン分布幅が4以上のフタロシアニン顔料を含む着色組成物では、比較例5〜8に比べ明度が高く、かつ耐溶剤性に優れる結果となった。この結果より、明度と耐溶剤性の両立には、ハロゲン置換数が6以上かつ、ハロゲン分布幅が4以上の組み合わせが良好であることがわかる。