(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施の形態に係る1軸回転アクチュエーター100(以下、単に「アクチュエーター」と呼ぶ)の全体構成を示す斜視図であり、
図2はアクチュエーター100の分解斜視図である。アクチュエーター100は、回折格子1を1軸方向に回転駆動することにより、回折格子1を介してスリット(図示せず)に到達する光の波長を回折格子1の回転角度に応じて変化させるようになっている。因みに、
図1に示したアクチュエーター100の分光器への応用例については、
図19を用いて後述する。なお、以下の説明では、回折格子1の反射面の方向を表面方向とし、反射面と反対側の方向を裏面方向とする。
【0013】
図2から分かるように、アクチュエーター100は、固定アングル2と、ベース3と、磁石10と、固定部20と、板バネ30と、コイル40と、ホルダ50と、スペーサ60と、カバー70と、光学センサー80と、フレキシブルプリント基板90と、を有する。
【0014】
固定アングル2は、略L字状の断面形状でなり、前面にアクチュエーター100の各部品が取り付けられるとともに、下面が所定の固定面に固定されるようになっている。これにより、アクチュエーター100は固定アングル2を介して所定の面に取り付けられる。
【0015】
固定部20は、枠体21と、磁石10を保持するヨーク22と、から構成されている。枠体21には、ホルダ50の回転軸52を保持する凹み形状の軸受21aが形成されている。ヨーク22は、コ字状の断面形状でなり、磁石10を保持した状態で枠体21に嵌め合わされる。固定部20は、ベース3を介して固定アングル2に取り付けられる。
【0016】
磁石10は、ヨーク22の底面に所定の間隔をおいて取り付けられる2つの磁石11、12と、ヨーク22の側面に向かい合うように取り付けられる2つの磁石13、14とからなる。磁石10のヨーク22への取り付け状態を、
図3に示す。磁石11、12は、ヨーク22側にS極が向き、表面側にN極が向くようにヨーク22に取り付けられている。磁石13、14は、ヨーク側にN極が向き、表面側にS極が向くように、つまりS極同士が向かい合うようにヨーク22に取り付けられている。なお、
図3とはN極およびS極が全て逆になっていてもよい。つまり、磁石11、12は、ヨーク22側にN極が向き、表面側にS極が向くようにヨーク22に取り付けられ、磁石13、14は、ヨーク側にS極が向き、表面側にN極が向くように、つまりN極同士が向かい合うようにヨーク22に取り付けられていてもよい。
【0017】
枠体21は外形が略正方形状でなり、枠体21の縁部には板バネ30が取り付けられる。また、枠体21の中空部分には、ホルダ50およびホルダ50に固定されたコイル40が配置される。
【0018】
板バネ30は、
図4からも明らかなように、固定部20の枠体21に固定される外周部31と、ホルダ50に固定される内周部32と、外周部31と内周部32とを接続する弾性を有する腕部33と、から構成されている。
【0019】
ホルダ50は、外形が略正方形状でなるホルダ本体51と、ホルダ本体51から上下方向に突出した回転軸52と、回転軸52に取り付けられた反射板53と、を有する。ホルダ本体51の表面側には回折格子1を載置するための載置面が形成されており、回折格子1はこの載置面に接着により固定される。実際には、回折格子1は、スペーサ60の開口61に嵌め込まれることによって位置決めされた状態で、スペーサ60とともにホルダ本体51の載置面に接着される。反射板53は、主面がホルダ本体51の主面を延長した面に存在するように配置されている。
【0020】
枠体21に板バネ30およびホルダ50を取り付けた状態を、
図4に示す。図からも分かるように、枠体21の縁部には板バネ30の外周部31が固定される。ホルダ本体51は枠体21の中空部分に配置される。この状態で、回転軸52が枠体21の軸受21aによって軸支されることにより、ホルダ50は回転軸52を中心にして回転自在とされている。また、ホルダ50の突起54が板バネ30の内周部32に嵌合されている。これにより、ホルダ50は、回転軸52を回転中心として回転自在とされているとともに、板バネ30によって
図4に示すような中立位置に復帰するように付勢されている。
【0021】
ホルダ本体51の裏面側には、コイル40が取り付けられている。その状態を、
図5に示す。ホルダ本体51の裏面には、2つの空芯コイル41、42が所定の間隔をもって固定される。図中の矢印で示したように、各コイル41、42には互いに反対向きの電流が流れるようになっている。具体的には、
図5においては、コイル41には時計方向の電流が流れており、コイル42には反時計方向の電流が流れている。
【0022】
板バネ30は金属などの良導電性の材料からなり、コイル40への給電は板バネ30を介して行われる。具体的には、
図4に示すように、板バネ30の外周部31にフレキシブルプリント基板90の給電部(図示せず)が接続されるとともに、板バネ30の内周部32にコイル41、42の端子40a、40bが接続される。実際には、内周部32と端子40a、40bは半田付けされる。これにより、フレキシブルプリント基板90から板バネ30を介して、可動部であるコイル40に対して給電を行うことができる。このように、板バネ30が給電機能も兼ね備えることにより、給電系統を簡素化でき、装置の小型化を促進できる。
【0023】
図6は、回折格子1の中心を通る線で切った、
図1および
図2(組立時)のA−A’断面である。
図6からも分かるように、直方形状の磁石11の上方には空芯コイル41が配置されるとともに、直方形状の磁石12の上方には空芯コイル42が配置される。また、コイル41の側方には磁石13が配置されるとともに、コイル42の側方には磁石14が配置される。ここで、後述する
図9からも分かるように、ホルダ50が回転すると、磁石11、12は交互に空芯コイル41、42の空芯部分に入り込むようになる。このとき、磁石11、12とコイル41、42がぶつからないようにするために、
図6に示す回転角0°の状態において、各磁石11、12は空芯コイル41、42の空芯部分の中央から若干回転軸側にシフトして配置されている。
【0024】
図7は、アクチュエーター100で発生する、磁力M0の向き、電流の向き、ローレンツ力L0の向き、回転モーメントM1を示すものである。ヨーク22底面の磁石11からヨーク22側面の磁石13に向かって磁力M0が発生するとともに、ヨーク22底面の磁石12からヨーク22側面の磁石14に向かって磁力M0が発生する。また、各磁石11、12からヨーク22の中央方向に向かって磁力M0が発生する。これらの磁力M0とコイル41、42に流れる電流の向きに応じて、コイル41、42にはローレンツ力L0が発生する。具体的には、各コイル41、42に図に示した向きの電流を流すと、コイル41には上向きのローレンツ力L0が発生し、コイル42には下向きのローレンツ力L0が発生する。この結果、ホルダ本体51には矢印で示す回転モーメントM1が付与され、ホルダ50およびそれに固定された回折格子1が回転する。なお、各コイル41、42に図に示した向きと逆の電流を流すと、コイル41には下向きのローレンツ力L0が発生し、コイル42には上向きのローレンツ力L0が発生する。この結果、ホルダ本体51には矢印と逆向きの回転モーメントM1が付与され、ホルダ50およびそれに固定された回折格子1が矢印と逆向きに回転する。
【0025】
ここで、ヨーク22側面に磁石13、14を設けたことにより、コイル41、42に磁束を集中させることができ、この結果、トルクの向上および消費電力の低減を実現できる。また、ヨーク22側面に磁石13、14を設けたことにより、特に回転軸から遠い位置で強い磁力を発生させることができ、これにより、コイル41、42は回転軸から遠い位置で強いローレンツ力L0を得ることができる。この結果、効率的に大きな回転モーメントM1を得ることができるようになる。ただし、磁石13、14を設けない構成を採用してもよい。このようにすると、磁石13、14を設けた場合と比較して、トルクが下がり消費電力が大きくなるというデメリットがあるが、サイズが小さくなるので小型化できるというメリットがある。
【0026】
図8は、各コイル41、42に流す電流値と、ホルダ50(回折格子1)の回転角との関係を示す。ホルダ50(回折格子1)は、コイル41、42に流れる電流値に応じた回転モーメントと、板バネ30の付勢力とがつり合う位置まで回転する。そして、ある回転角になると(
図8の例では6.5°)、ホルダ50の突起55がカバー70の裏面に突き当たってホルダ50の回転が停止する。このように、カバー70によってホルダ50の回転を規制するようにしたことにより、電気的な回転制御だけでなく機械的にも回転を規制することができるので、所定範囲を超えるような回転を確実に防止でき。また、回転軸52がカバー70によって覆われているので(
図1)、ホルダ50の脱輪なども防止できる。
【0027】
図9は、ホルダ50(回折格子1)の回転状態を示す図である。
図9Aは、コイル41、42に電流を流さない状態を示すものであり、ホルダ50(回折格子1)は板バネ30の付勢力によって中立(すなわち回転角度0°)の状態とされる。
図9Bは、各コイル41、42に
図7に示した方向の電流を流した状態を示すものであり、ホルダ50(回折格子1)は図の時計方向に回転された状態とされる。
図9Cは、各コイル41、42に
図7に示した方向と逆方向の電流を流した状態を示すものであり、ホルダ50(回折格子1)は図の反時計方向に回転された状態とされる。このように、ホルダ50(回折格子1)は、コイル41、42の供給する電流の向きを変えることにより、
図9Aの中立位置を回転中心として時計方向および反時計方向に回転駆動できるようになっている。
【0028】
ホルダ50(回折格子1)の回転位置は、固定アングル2に取り付けられた光学センサー80によって検知され、検知結果がフレキシブルプリント基板90を介して制御部(図示せず)に送出される。制御部は、検知結果に応じた電流値をフレキシブルプリント基板90を介してコイル41、42に供給することにより、ホルダ50(回折格子1)の回転を制御する。
【0029】
実際には、
図10A、
図10B、
図10Cに示すように、光学センサー80は、反射板53に向けて光を照射し、反射光の光量を検出することにより、回転位置を検知するようになっている。つまり、光学センサー80から反射板53までの距離が近いほど、反射光の光量が大きくなるので、その光量に基づいて回転位置を求めることができる。
【0030】
図11Aは、光学センサー80の構成例を示す。光学センサー80は、発光ダイオード81によって光を出射し、フォトトランジスタ82によって反射板からの反射光を受光して反射光量に応じた出力電流を得るようになっている。
図11Bは、光学センサー80から反射板53までの距離と出力電流比(最大光量が得られたときの出力電流を100%としたもの)との関係を示すグラフである。
【0031】
なお、実施の形態では、1つの光学センサー80によって回転位置を検出しているが、
図12A、
図12B、
図12Cに示すように、回転軸52を中心とした左右両側の位置に光学センサー80、180を設けてもよい。そして、
図13に示すように、これらの光学センサー80、180によって得られたセンサー出力L80、L180の差分をとることにより、線形なセンサー出力L1を得ることができるようになる。
【0032】
図14は、本実施の形態のアクチュエーター100によって発生するトルクを示したグラフである。
図14は、特に
図7に示したような向きの電流を供給した場合に発生するトルクを示している。磁石11から離れる方に回転するコイル41のトルクは、回転角が大きくなるほど減少していく一方で、磁石12に近づく方に回転するコイル42のトルクは回転角が大きくなるほど大きくなる。よって、磁石11から離れる方に回転するコイル41のトルクの減少分は、磁石12に近づく方に回転するコイル42のトルクの増加によって補われる。この結果、合計トルクは、回転角が大きくなっても極端に減少せず、ほぼフラットなものとなる。特に、本実施の形態のアクチュエーター100では、ホルダ50(回折格子1)の回転可能範囲は−6.5°〜+6.5°とされており、この回転可能範囲においてはほぼフラットなトルクを発生させることができる。勿論、回転可能範囲はこれに限らず、±6.5°以上回転する構成としてもよい。例えばホルダ50の突起55を低くすると、より大きく回転するようになる。
【0033】
図15は、白色光を、格子ピッチが1.5μmの回折格子1を回転させて分光した場合のスペクトルを示す。
図15から、回折格子1を10.3°以上回転させることができれば、可視光域全てを回折することが可能であることが分かる。本実施の形態のアクチュエーター100は、回折格子1を、−6.5°〜+6.5°の範囲すなわち13°回転させることが可能となっているので、可視光域全てを回折することが可能である。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、回折格子1が取り付けられる載置面と回転軸52とを有するホルダ50と、ホルダ50の回転軸52を保持する軸受21aを有する固定部20と、固定部20に固定される外周部31とホルダ50に固定される内周部32と外周部31と内周部32とを接続する弾性を有する腕部33とからなる弾性部材(板バネ30)と、ホルダ50に設けられるコイル40と固定部20に設けられる磁石10とを有する駆動部と、を設けたことにより、回折格子1などの光学素子を1軸方向に回転駆動するのに適した、小型で高精度の1軸回転アクチュエーター100を実現できる。
【0035】
また、回折格子1を任意の角度で停止させることができるので、入射光の中の任意の波長成分を取り出すことができる。つまり、入射光が白色ならば、回折格子1を停止させる角度に応じて、青、緑、赤などの成分を取り出すことができるので、波長可変光源としても使用できる。
【0036】
また、ホルダ50の裏面に収まるように空芯2連コイル41、42を配置し、さらにコイル41、42の空芯部分に磁石11、12が入り込む構成としたので、磁気効率が高くかつXYサイズが小さい1軸回転アクチュエーター100を実現できる。
【0037】
また、回折格子1の取り付けは、ホルダ50の載置面に取り付けるだけで行うことができるので、種々の形状の回折格子1を容易に適用できる。実際には、回折格子1の形状に応じた開口61が形成されたスペーサ60を用いることによって、様々なサイズおよび形状の回折格子1に容易に対応できる。
【0038】
また、重量の重い磁石10は回転せず、重量の軽いコイル41、42が回転する、いわゆるムービングコイル方式を採用したことにより、小さいトルクで応答性の良い回転動作を行うことができる。さらに、回転軸52の樹脂材料と、その軸受21aの樹脂材料とを異なる材料とすれば、摺動性を改善できるので、より小さいトルクで応答性の良い回転動作を行うことができるようになる。
【0039】
また、光学センサー80と反射板53とを用いて回転角を検知したことにより、ロータリーエンコーダなどを用いる場合と比較して、装置を小型化できる。ただし、角度を検出するための構成は、これに限らない。例えばロータリーエンコーダを用いてもよく、ホール素子を用いてもよく、駆動電流をシャント抵抗で検出することで角度を検出してもよい。さらにコイル41、42のインダクタンスを測ることで角度を検出してもよい。つまり、回転角度が変化するとコイル41、42を貫く磁束が変化してインダクタンスが変動するので、このインダクタンスを測定することで角度を検出することができる。さらに、駆動用コイルの他に検出用コイルを設け、この検出用コイルに発生する誘導起電力を測定することで回転角度を検出してもよい。さらに、光学センサーはアクチュエーターの内部に格納して配置してもよい。
【0040】
なお上述の実施の形態では、例えば
図3に示したように、ヨーク22を断面がコ字状の形状とした場合について述べたが、ヨークの形状はこれに限らない。ヨークの形状は、例えば
図16に示すようなものであってもよい。つまり、ヨーク122は、中央部に凸部を有する形状としてもよい。これにより、凸部付近の磁束を強くできるので、より大きな回転トルクを発生させることができるようになる。
【0041】
またコイル、ヨークおよび磁石の構成は、上述の実施の形態の構成に限らず、例えば
図17に示すような構成でもよい。
図17の構成においては、ホルダ50の裏面側に1つの空芯コイル140が設けられており、この空芯コイル140を挟むように第1および第2のヨーク222−1、222−2が設けられている。第1および第2のヨーク222−1、222−2にはそれぞれ磁石13、14が設けられている。これにより、コイル140に電流を流すことでホルダ50(回折格子1)を回転させることができる。
【0042】
なお、ホルダ50に取り付けられる回折格子1の格子溝の形状は、矩形形状、鋸歯形状、正弦波形状などであり得る。また、ホルダ50に取り付けられる回折格子1は、反射面が凹面形状のものであってもよい。このような回折格子を用いることにより、集光レンズ系を設けなくても、回折格子によって回折された光をスリットに入射させることができるようになる。
【0043】
さらに、回折格子1として透過型のものを用いてもよい。この場合には、ホルダ50やヨーク22に、回折格子1を透過した光が通過するための開口や切欠きを形成すればよい。
【0044】
また上述の実施の形態では、ホルダ50の回転軸52を、固定部20の凹み形状の軸受21aに保持させることで1軸の回転を実現した場合について述べたが、軸受の構成はこれに限らず、例えば
図18に示すように、ホルダ50の回転軸となる位置の下側(裏面側)に支点部材152を設け、この支点部材152によってホルダ50を板バネ30の付勢力に抗して持ち上げるように保持するようにしてもよい。このようにすれば、ホルダ50を支点部材152を回転軸として回転させることができるようになる。
【0045】
図19は、上述の実施の形態のアクチュエーター100を用いた分光器200の構成を示す平面図である。図示しない光学ユニットから出射された光L1は、反射ミラー201を介してアクチュエーター100に取り付けられた回折格子1に入射する。回折格子1によって回折された光は、反射ミラー202を介して、図示しないスリットが設けられたスリット部203へと向けられる。そして、スリットを通過することで分光された光が、光出口204から出射される。この分光された光は、例えば尿中成分や血液成分などの生体情報を測定するための光として利用することができる。実験によれば、上述の実施の形態のアクチュエーター100は、70〜80Hzにおいて共振することなく回折格子1を回転駆動することができるので、尿中成分や血液成分などの生体情報を短時間で測定するのに適した分光性能を実現できる。
【0046】
さらに、ホルダ50に取り付けられる光学素子は回折格子1に限らず、例えばミラーなどを取り付けてもよい。そして、上述の実施の形態のアクチュエーター100は、分光器のアクチュエーターに限らず、例えば自動車用ヘッドライトの配光を変化させるための回転機構などのアクチュエーターとして用いることもできる。
【0047】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。