特許第6561902号(P6561902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561902空芯コイル及びその製造方法、並びに、空芯コイルを用いたコイル部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561902
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】空芯コイル及びその製造方法、並びに、空芯コイルを用いたコイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20190808BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20190808BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20190808BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20190808BHJP
   H01F 17/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01F27/29 P
   H01F17/04 A
   H01F41/04 B
   H01F27/28 133
   H01F17/02
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-84135(P2016-84135)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-195262(P2017-195262A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 信雄
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 一輝
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−170488(JP,A)
【文献】 特開2007−227779(JP,A)
【文献】 特開平5−258941(JP,A)
【文献】 米国特許第3668588(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/02
H01F 17/04
H01F 27/28
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空芯状に巻回された巻回部と、前記巻回部の一端から導出された第1のリード部と、前記巻回部の他端から導出された第2のリード部とを含むコイル導体と、
前記巻回部を構成する前記コイル導体を相互に固定する第1の接着部材と、
前記巻回部と前記第1及び第2のリード部の境界部分を固定する、前記第1の接着部材とは異なる第2の接着部材と、を備えることを特徴とする空芯コイル。
【請求項2】
前記第1及び第2のリード部は前記巻回部から接線方向に導出されており、前記巻回部と前記第1及び第2のリード部の境界部分には前記第2の接着部材からなるフィレットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空芯コイル。
【請求項3】
前記第1の接着部材は、前記第2の接着部材よりも融点の低い熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の空芯コイル。
【請求項4】
前記第2の接着部材は、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の空芯コイル。
【請求項5】
前記コイル導体を複数備え、前記複数のコイル導体が同心円状に巻回されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の空芯コイル。
【請求項6】
磁性材料及び結合材を含む磁心と、前記磁心に埋め込まれた請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空芯コイルと、前記空芯コイルの前記第1のリード部に接続された第1の端子電極と、前記空芯コイルの前記第2のリード部に接続された第2の端子電極とを備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項7】
前記第1のリード部と前記第1の端子電極、並びに、前記第2のリード部と前記第2の端子電極は、いずれも前記磁心の内部で接続されていることを特徴とする請求項6に記載のコイル部品。
【請求項8】
コイル導体を巻回することによって、空芯状の巻回部と、前記巻回部の一端から導出された第1のリード部と、前記巻回部の他端から導出された第2のリード部を形成する第1の工程と、
前記巻回部を構成する前記コイル導体を第1の接着部材によって相互に固定する第2の工程と、
前記巻回部と前記第1及び第2のリード部の境界部分に第2の接着部材を選択的に供給することによって前記境界部分を固定する第3の工程と、を備えることを特徴とする空芯コイルの製造方法。
【請求項9】
前記コイル導体は、前記第1の接着部材を構成する融着層が被覆されており、
前記第2の工程は、前記巻回部を加熱することによって前記融着層を融解させることによって行うことを特徴とする請求項8に記載の空芯コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空芯コイル及びその製造方法に関し、特に、接着部材によって巻回部が自己保持された空芯コイル及びその製造方法に関する。また、本発明は、このような空芯コイルを用いたコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
複合磁性材料からなる磁心に空芯コイルが埋め込まれたコイル部品としては、特許文献1に記載されたものが知られている。空芯コイルは巻芯が存在しないことから、巻芯を有する一般的なコイルに比べて形状が安定せず、特に、リード部の姿勢が不安定となることがあった。このため、リード部の姿勢を安定させるための種々の工夫が施されることがあり、特許文献2においては、リード部を直角に折り曲げ加工することによってリード部のスプリングバックを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−170488号公報
【特許文献2】特開2007−227779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2のようにリード部を強く折り曲げ加工すると、芯材を被覆する絶縁膜が損傷する危険性があるため、コイル部品の信頼性を低下させるおそれがあった。
【0005】
したがって、本発明は、信頼性を低下させることなく、リード部の姿勢を安定させることが可能な空芯コイル及びその製造方法、並びに、このような空芯コイルを用いたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による空芯コイルは、空芯状に巻回された巻回部と、前記巻回部の一端から導出された第1のリード部と、前記巻回部の他端から導出された第2のリード部とを含むコイル導体と、前記巻回部を構成する前記コイル導体を相互に固定する第1の接着部材と、前記巻回部と前記第1及び第2のリード部の境界部分を固定する、前記第1の接着部材とは異なる第2の接着部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、巻回部を自己保持するための第1の接着部材とは別に、巻回部と第1及び第2のリード部の境界部分を固定する第2の接着部材を用いていることから、リード部を強く折り曲げ加工することなく、リード部の姿勢を安定させることが可能となる。
【0008】
本発明において、前記第1及び第2のリード部は前記巻回部から接線方向に導出されており、前記巻回部と前記第1及び第2のリード部の境界部分には前記第2の接着部材からなるフィレットが形成されていることが好ましい。これによれば、第1及び第2のリード部の根元が強固に固定されることから、リード部の姿勢をより安定させることが可能となる。
【0009】
本発明において、前記第1の接着部材は、前記第2の接着部材よりも融点の低い熱可塑性樹脂からなることが好ましい。これによれば、第1の接着部材を構成する融着層が被覆されたコイル導体を用いることができ、この場合、巻回部を加熱するだけで巻回部を自己保持することが可能となる。
【0010】
本発明において、前記第2の接着部材は、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂からなることが好ましい。これによれば、第1及び第2のリード部の根元を強固に固定することが可能となる。
【0011】
本発明による空芯コイルは、前記コイル導体を複数備え、前記複数のコイル導体が同心円状に巻回されていても構わない。これによれば、4端子以上のコイル部品に使用することが可能となる。
【0012】
本発明によるコイル部品は、磁性材料及び結合材を含む磁心と、前記磁心に埋め込まれた上記の空芯コイルと、前記空芯コイルの前記第1のリード部に接続された第1の端子電極と、前記空芯コイルの前記第2のリード部に接続された第2の端子電極とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、電源用コイルとして好適な表面実装型のコイル部品を提供することが可能となる。
【0014】
本発明において、前記第1のリード部と前記第1の端子電極、並びに、前記第2のリード部と前記第2の端子電極は、いずれも前記磁心の内部で接続されていることが好ましい。このような構造を有するコイル部品においては、リード部が磁心の外部に導出されないことから、リード部を磁心の外部で保持することができず、リード部の姿勢の安定が特に重要となるからである。
【0015】
本発明による空芯コイルの製造方法は、コイル導体を巻回することによって、空芯状の巻回部と、前記巻回部の一端から導出された第1のリード部と、前記巻回部の他端から導出された第2のリード部を形成する第1の工程と、前記巻回部を構成する前記コイル導体を第1の接着部材によって相互に固定する第2の工程と、前記巻回部と前記第1及び第2のリード部の境界部分に第2の接着部材を選択的に供給することによって前記境界部分を固定する第3の工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、リード部を強く折り曲げ加工することなく、リード部の姿勢を安定させることが可能となる。しかも、第2の接着部材を選択的に供給していることから、第2の接着部材が過剰となることもない。
【0017】
本発明において、前記コイル導体は、前記第1の接着部材を構成する融着層が被覆されており、前記第2の工程は、前記巻回部を加熱することによって前記融着層を融解させることによって行うことが好ましい。これによれば、巻回部に第1の接着部材を別途供給する必要が無く、工程を単純化することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、信頼性を低下させることなく、リード部の姿勢を安定させることが可能な空芯コイル及びその製造方法、並びに、このような空芯コイルを用いたコイル部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、コイル部品10の断面図である。
図3図3は、第1の端子電極41の形状を説明するための略斜視図である。
図4図4は、コイル部品10の内部構造を説明するための略斜視図である。
図5図5は、空芯コイル30の構造を説明するための略外観図である。
図6図6は、空芯コイル30の拡大図である。
図7図7は、コイル導体50の断面図である。
図8図8は、空芯コイル30の製造方法を説明するための模式図である。
図9図9は、空芯コイル30の製造方法を説明するための模式図である。
図10図10は、変形例による空芯コイル31の構造を説明するための略外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す略斜視図である。また、図2は、コイル部品10の断面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態によるコイル部品10は、略直方体形状を有する磁心20と、磁心20に埋め込まれた空芯コイル30と、磁心20の実装面23に設けられ、空芯コイル30に接続された2つの端子電極41,42とを備えている。特に限定されるものではないが、本実施形態によるコイル部品10は、電源用コイルとして好適な表面実装型のコイル部品である。
【0023】
磁心20は、磁性材料及び結合材を含む複合磁性材料からなり、下部磁心21と上部磁心22によって構成される。複合磁性材料に含まれる磁性材料としては、透磁率が高い軟磁性金属粉を用いることが特に好ましい。具体例としては、Ni−Zn系、Mn−Zn、Ni−Cu−Zn系などのフェライト、パーマロイ(Fe−Ni合金)、スーパーパーマロイ(Fe−Ni−Mo合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Cr−Si合金、Fe、アモルファス(Fe基系)、ナノ結晶(ナノクリスタル)等を挙げることができる。また、結合材としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂材料を用いることができる。
【0024】
下部磁心21は、平板部21aと凸部21bを有しており、凸部21bが空芯コイル30の内径部に挿入されるよう、平板部21aに空芯コイル30が載置される。また、上部磁心22は、下部磁心21に載置された空芯コイル30を埋め込む部分である。特に限定されるものではないが、本実施形態においては凸部21bがテーパー形状を有しており、これにより、金型を用いて下部磁心21を成形する際に、金型から凸部21bが抜けやすくなっている。
【0025】
空芯コイル30は、銅などの芯材に絶縁被覆が施された被覆導線によって構成される。詳細については後述するが、本実施形態よる空芯コイル30は、コイル導体50と第1及び第2の接着部材51,52によって構成される(図5参照)。コイル導体50の一端である第1のリード部61は第1の端子電極41に接続され、コイル導体50の他端である第2のリード部62は第2の端子電極42に接続されている(図4参照)。
【0026】
図3に示すように、第1の端子電極41は、磁心20の実装面23に位置する実装部43と、第1のリード部61に接続される接続部44を有しており、接続部44は下部磁心21の平板部21aを貫通している。第2の端子電極42についても同様の構造有している。そして、図4に示すように、下部磁心21に空芯コイル30を載置した後、端子電極41,42の接続部44に空芯コイル30のリード部61,62を溶接し、最後に、上部磁心22によって空芯コイル30を埋め込めば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。
【0027】
図5は、空芯コイル30の構造を説明するための略外観図である。
【0028】
図5に示すように、本実施形態による空芯コイル30は、空芯状に巻回された巻回部60と、巻回部60の一端から導出された第1のリード部61と、巻回部60の他端から導出された第2のリード部62とを含むコイル導体50を有する。コイル導体50は、銅などの芯材に絶縁被覆が施された被覆導線である。リード部61,62は巻回部60から接線方向に導出されており、コイル導体50のうち巻回されない部分である。図5に示す例では、コイル導体50が単線構造であるが、ペア線のように複数の被覆導線が一体化された構造を有するコイル導体を用いても構わない。この場合、複数の被覆導線は撚り線構造を有していても構わない。
【0029】
巻回部60を構成するコイル導体50は、第1の接着部材51によって相互に固定されて、これにより自己保持されている。第1の接着部材51の種類については特に限定されないが、ポリエステルなど融点の低い熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。第1の接着部材51は、空芯コイル30を磁心20に埋め込む工程において、コイル導体50を一体的に保持するための仮留めの役割を果たす。したがって、第1の接着部材51は巻回部60を自己保持できる特性及び量であれば足り、接着力が過度に強力である必要はなく、使用量も最小限で構わない。むしろ、第1の接着部材51の使用量が多すぎると、磁心20に埋め込まれる非磁性材料の割合が増加し、磁気特性が低下することから好ましくない。
【0030】
また、巻回部60とリード部61,62の境界部分は、第1の接着部材51とは異なる第2の接着部材52によって固定されている。第2の接着部材52の種類については特に限定されないが、第1の接着部材51よりも融点が高い熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。第2の接着部材52は、リード部61,62のスプリングバックを防止する役割を果たすことから、第1の接着部材51よりも接着力が強い部材を用いることが好ましい。また、第2の接着部材52は、巻回部60の全体ではなく、巻回部60とリード部61,62の境界部分に選択的に設けられている。これにより、磁心20に埋め込まれる非磁性材料の増加を最小限に抑えつつ、リード部61,62の姿勢を安定させることが可能となる。
【0031】
特に、境界部分の拡大図である図6に示すように、巻回部60とリード部61,62の境界部分には、第2の接着部材52からなるフィレットが形成されていることが好ましい。これによれば、リード部61,62が巻回部60に強固に支持されることから、リード部61,62の姿勢をより確実に安定させることが可能となる。
【0032】
次に、空芯コイル30の製造方法について説明する。
【0033】
まず、コイル導体50を用意し、これを巻回することによって巻回部60を形成する。コイル導体50は、図7に示すように、芯材71、被覆膜72及び融着層73からなる3層構造の被覆導線である。芯材71は銅(Cu)などの良導体からなり、その表面が被覆膜72で覆われている。被覆膜72は、イミド変性ポリウレタンなどからなる絶縁材料からなり、その表面が薄い融着層73で覆われている。融着層73は、第1の接着部材51の材料であり、ポリエステルなどの絶縁性樹脂材料からなる。融着層73の融点は、被覆膜72よりも十分に低いことが好ましく、一例として、イミド変性ポリウレタンの融点は約260℃であるのに対し、ポリエステルの融点は約70℃である。
【0034】
次に、図8に示すように、回転軸80及び案内軸81,82を有する巻回治具にコイル導体50をセットし、一方の案内軸82側のコイル導体50を固定した状態で回転軸80を回転させる。これにより、案内軸81側からコイル導体50が送り出され、回転軸80の周囲にコイル導体50が巻回される。そして、必要なターン数を巻回したタイミングで回転軸80の回転を停止させれば、回転軸80の周囲に巻回部60が形成される。巻回部60から接線方向に延びるコイル導体50は、リード部61,62となる。
【0035】
次に、巻回部60を加熱することにより、融着層73を融解させる。巻回部60の加熱は、エアヒーターなどを用いて行うことができる。これにより、巻回部60におけるコイル導体50間は第1の接着部材51によって満たされるので、室温まで冷却すると、巻回部60を構成するコイル導体50が第1の接着部材51によって相互に固定されることになる。
【0036】
次に、図9に示すように、ノズル90を用いて、巻回部60とリード部61,62の境界部分に第2の接着部材52を局所的に供給する。上述の通り、第2の接着部材52としては熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。そして、第2の接着部材52を熱硬化または紫外線硬化させれば、リード部61,62の根元部分が巻回部60に強固に固定されることになる。
【0037】
ここで、第2の接着部材52を塗布する方法として、第2の接着部材52で満たされた容器中に空芯コイル30を浸すという方法も考えられる。しかしながら、この方法では、第2の接着部材52がコイル導体50に多量に付着するため、コイル部品10の磁気特性が低下するおそれがある。また、第2の接着部材52の粘度等によっては、巻回部60の内径部に第2の接着部材52が膜を張ってしまうおそれもある。これに対し、上述のように、巻回部60とリード部61,62の境界部分に第2の接着部材52を選択的に供給すれば、このような問題が生じることはない。
【0038】
その後、コイル導体50の不要部分を切断すれば、図5に示した空芯コイル30が完成する。
【0039】
このようにして作成された空芯コイル30は、巻回部60を構成するコイル導体50間が第1の接着部材51によって接着されているため、巻回部60が自己保持され、形状が安定する。しかも、巻回部60とリード部61,62の境界部分が第2の接着部材52によって固定されていることから、リード部61,62の姿勢が安定する。例えば、スプリングバックによってリード部61,62が開いて巻回部60から離れるようなことがない。
【0040】
このような空芯コイル30を用いてコイル部品10を作成する場合、図4に示すように、下部磁心21に空芯コイル30を載置した状態で、端子電極41,42の接続部44に空芯コイル30のリード部61,62を溶接する。この時、従来の空芯コイルではリード部61,62の姿勢が安定せず、端子電極41,42への溶接が困難となるケースがあったが、本実施形態においてはリード部61,62の姿勢が安定していることから、端子電極41,42への溶接を容易に行うことができる。その後、上部磁心22によって空芯コイル30を埋め込めば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。
【0041】
ここで、特許文献1のように、リード部を磁心の外部に導出した状態で空芯コイルを埋め込むタイプのコイル部品であれば、磁心の外部に導出されたリード部を何らかの治具で保持することができるため、リード部の姿勢が特に安定していなくても作業に大きな支障は生じない。しかしながら、本実施形態によるコイル部品10のように、リード部61,62と端子電極41,42を磁心20の内部で接続するタイプの製品においては、このような治具を使用することができないため、作業性を高めるためにはリード部61,62の姿勢が安定していることが非常に重要である。そして、本実施形態においては、第2の接着部材52を用いることによってリード部61,62の姿勢を大幅に安定させていることから、リード部61,62と端子電極41,42を磁心20の内部で接続するタイプのコイル部品10を作業性よく作製することが可能となる。
【0042】
図10は、変形例による空芯コイル31の構造を説明するための略外観図である。
【0043】
図10に示す空芯コイル31は、2本のコイル導体50,53が同心円状に巻回されている点において、図5に示した空芯コイル30と相違している。これら2本のコイル導体50,53は、いずれも空芯状に巻回された巻回部60を構成するとともに、一方のコイル導体50は、巻回部60から導出された第1及び第2のリード部61,62を備え、他方のコイル導体53は、巻回部60から導出された第3及び第4のリード部63,64を備えている。
【0044】
巻回部60を構成するコイル導体50,53は、第1の接着部材51によって相互に固定され、自己保持されている。また、巻回部60とリード部61,62の境界部分、並びに、巻回部60とリード部63,64の境界部分は、いずれも第2の接着部材52によって固定されている。これにより、リード部61〜64の姿勢を安定させることが可能となる。
【0045】
図10に示す例では、リード部61,62の根元部分が第2の接着部材52で固定されるとともに、リード部63,64の根元部分が第2の接着部材52で固定されているが、第2の接着剤52によって固定するリード部の組み合わせは任意である。例えば、リード部61,63の根元部分を第2の接着部材52で固定するとともに、リード部62,64の根元部分を第2の接着部材52で固定しても構わない。或いは、リード部61〜64を第2の接着剤52を用いてそれぞれ異なる位置で固定しても構わない。
【0046】
このような構成を有する空芯コイル31は、4端子構成を有するコイル部品に使用することができる。
【0047】
このように、本発明における空芯コイルは、複数のコイル導体を同心円状に巻回したものであっても構わない。この場合、コイル導体の本数は2本に限定されず、3本以上であっても構わない。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
10 コイル部品
20 磁心
21 下部磁心
21a 平板部
21b 凸部
22 上部磁心
23 実装面
30,31 空芯コイル
41,42 端子電極
43 実装部
44 接続部
50,53 コイル導体
51 第1の接着部材
52 第2の接着部材
60 巻回部
61〜64 リード部
71 芯材
72 被覆膜
73 融着層
80 回転軸
81,82 案内軸
90 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10