特許第6561905号(P6561905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561905
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20190808BHJP
   H01F 17/02 20060101ALI20190808BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F17/02
   H01F27/255
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-87407(P2016-87407)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-199733(P2017-199733A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 信雄
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 一輝
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−45995(JP,A)
【文献】 特開2012−234867(JP,A)
【文献】 特開2000−252126(JP,A)
【文献】 特開平6−69039(JP,A)
【文献】 特開平7−14717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/02
H01F 27/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤがコイル状巻回してある巻線部と、
磁性材と樹脂とを含有しており、前記巻線部の内部も含めて前記巻線部の全体を覆うコア部と、
前記巻線部の巻軸方向の一端に位置する前記コア部の実装側外面に装着してある端子電極と、を有するコイル装置であって、
前記実装側外面の少なくとも中央部分を含む前記コア部の第1領域に含まれる空孔の密度よりも、前記実装側外面と反対側に位置する前記コア部の反実装側外面の少なくとも中央部分を含む前記コア部の第2領域に含まれる空孔の密度が高いことを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記第2領域は、前記巻線部の内側と外側に連続して存在している請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記コア部の内部で、前記巻軸方向に沿って前記第1領域と第2領域との間には、前記第1領域とは異なると共に、第2領域とも異なる空孔の密度を持つ第3領域が存在する請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記第3領域は、前記巻線部の内側および外側に連続して存在している請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記第1領域は、前記巻線部の内側で、前記第2領域に向けて突出する凸部を有する請求項1〜4のいずれかに記載のコイル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ素子などとして用いられるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子・電気機器には、インダクタ素子などとして多くのコイル装置が搭載されている。たとえば、そのようなコイル装置の一例として、たとえば特許文献1に示すコイル装置が開発されている。この特許文献1に示すコイル装置では、コイルの断面形状を工夫することにより、コイルの中央内部に生じるおそれがあるクラックを防止している。
【0003】
しかしながら、従来では、コイルが内蔵してあるコア部の反実装側外面に生じるクラックを防止することができないなどの不都合を有している。特にスイッチング周波数が高い用途に用いられるコイル装置などの場合に、コイルの発熱により、コア部の実装側外面と反実装側外面との熱膨張差が生じ、反実装側外面にクラックが生じやすいという課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−89595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、クラックの発生を防止できるコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
ワイヤがコイル状巻回してある巻線部と、
磁性材と樹脂とを含有しており、前記巻線部の内部も含めて前記巻線部の全体を覆うコア部と、
前記巻線部の巻軸方向の一端に位置する前記コア部の実装側外面に装着してある端子電極と、を有するコイル装置であって、
前記実装側外面の少なくとも中央部分を含む前記コア部の第1領域に含まれる空孔の密度よりも、前記実装側外面と反対側に位置する前記コア部の反実装側外面の少なくとも中央部分を含む前記コア部の第2領域に含まれる空孔の密度が高いことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るコイル装置では、反実装側外面の少なくとも中央部分を含むコア部の第2領域の空孔の密度が、実装側外面に比較して高くなっている。このため、コア部の反実装側外面では、空孔リッチ層が形成され、その空孔リッチ層が、応力緩和層となると共に、クラックの連続を阻止するクラック拡大防止層となり、クラックの発生および拡大を抑制する。
【0008】
本発明では、特にスイッチング周波数が高い用途(たとえば携帯電話用)に用いられるコイル装置などの場合に、巻線部が発熱してコア部の実装側外面と反実装側外面との熱膨張差が生じたとしても、反実装側外面にクラックが生じ難くなる。なお、従来では、巻線部の自己発熱が大きい条件で使用されるコイル装置では、基板との熱膨張係数差などによる影響を受けて反実装側外面のコア部にクラックが発生しやすい。本発明では、巻線部の自己発熱が大きい条件で使用されて、基板との熱膨張係数差などによる影響を受けたとしても、コア部の反実装側外面では、空孔リッチ層が形成され、その空孔リッチ層が、応力緩和層およびクラック拡大防止層となり、クラックの発生および拡大を抑制する。
【0009】
前記第2領域は、前記巻線部の内側と外側に連続して存在していてもよい。
【0010】
前記コア部の内部で、前記巻軸方向に沿って前記第1領域と第2領域との間には、前記第1領域とは異なると共に、第2領域とも異なる空孔の密度を有する第3領域が存在してもよい。
【0011】
前記第3領域は、前記巻線部の内側および外側に連続して存在していてもよい。第3領域が、第2領域の空孔の密度よりも低い場合には、相対的に磁性材が多くなり、磁気特性が向上する。第3領域が、第1領域の空孔の密度よりも低い場合には、相対的に磁性材がさらに多くなり、磁気特性がさらに向上する。第3領域が、第1領域の空孔の密度よりも高い場合には、第3領域も第1領域に比較して空孔リッチ層となり、応力緩和特性が向上すると共に、クラック拡大防止特性も向上する。
【0012】
前記第1領域は、前記巻線部の内側で、前記第2領域に向けて突出する凸部を有してもよい。巻線部の内側に凸部を配置することで、巻線部の位置決めが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の一実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
図2A図2A図1に示すコイル装置の断面図である。
図2B図2Bは本発明の他の実施形態に係るコイル装置の断面図である。
図2C図2Cは本発明のさらに他の実施形態に係るコイル装置の断面図である。
図2D図2Dは本発明のさらに他の実施形態に係るコイル装置の断面図である。
図2E図2Eは本発明のさらに他の実施形態に係るコイル装置の断面図である。
図2F図2Fは本発明のさらに他の実施形態に係るコイル装置の断面図である。
図2G図2Gは本発明のさらに他の実施形態に係るコイル装置の断面図である。
図3図3(a)は図1に示すコイル装置の製造過程を表す断面図、図3(b)は図3(a)の続きの製造過程を表す断面図である。
図4A図4Aは第2領域において空孔の密度が高い状態を示すコア部の断面写真である。
図4B図4Bは第1領域において空孔の密度が低い状態を示すコア部の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1実施形態
図1および図2Aに示すように、本発明の一実施形態におけるコイル装置としてのインダクタ素子2は、圧縮成形体としてのコア部4と、コア部4の内部でコイル状にワイヤ6aが巻回してある巻線部6とを有する。ワイヤ6aは、たとえば、導線と、必要に応じて導線の外周を被覆してある絶縁被覆層とで構成してある。
【0015】
導線は、たとえばCu、Al、Fe、Ag、Au、リン青銅などで構成してある。絶縁被覆層は、たとえばポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル−イミド、ポリエステル−ナイロンなどで構成してある。ワイヤ6aの横断面形状は、特に限定されず、円形、平角形状などが例示される。
【0016】
コア部4は、磁性粉体およびバインダを含む顆粒を圧縮成形または射出成形して形成してある。磁性粉体としては、特に限定されないが、センダスト(Fe−Si−Al;鉄−シリコン−アルミニウム)、Fe−Si−Cr(鉄−シリコン−クロム)、パーマロイ(Fe−Ni)、カルボニル鉄系、カルボニルNi系、アモルファス粉、ナノクリスタル粉などの金属磁性体粉が好ましく用いられる。
【0017】
ただし、磁性粉体としては、Mn−Zn、Ni−Cu−Znなどのフェライト磁性体粉であってもよい。バインダ樹脂としては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、シリコン樹脂、これらを組み合わせたものなどが例示される。
【0018】
図2Aに示すように、巻線部6は、1本以上のワイヤ6aがコイル状に巻回してある部分であり、巻線部6からはワイヤ6aの両端である少なくとも一対のリード部6bが、コア部4の外部に引き出される。図示する実施形態では、巻線部6からは、Z軸方向に沿って一対のリード部6bがコア部4の実装側外面4Aから引き出され、その外面4Aに設けられた一対の端子電極8に、溶接または導電性接着剤の手段でそれぞれ接続してある。
【0019】
各端子電極8は、本実施形態では、コア部4の実装側外面4Aにのみ形成してあるが、コア部4の側面4Cにまで連続して形成してある電極側部8aを有していてもよい。端子電極8としては、特に限定されず、コア部4に接着された銅または銅合金などの金属端子であってもよく、あるいは銀あるいは銀合金などを含む焼付け電極、あるいはメッキなどにより形成された金属膜電極であってもよい。
【0020】
本実施形態では、コア部4の下面は、回路基板などに接続される実装側外面4Aであり、相互に垂直なX軸およびY軸を通る平面と略平行に形成してあり、巻線部6の巻軸が、X軸およびY軸を通る平面と垂直なZ軸に対して略平行になっている。本実施形態では、コア部4の上面は、その下面に対して略平行な反実装側外面4Bであり、4つの側面4Cは、これらの上面および下面に対して略垂直となっている。ただし、コア部4の形状は、特に限定されず、6面体に限らず、円柱形、楕円柱、多角柱などであっても良い。
【0021】
本実施形態のインダクタ素子2のサイズは、特に限定されないが、たとえばX軸方向幅X0が1.0〜20mm、Y軸方向幅Y0が1.0〜20mm、高さZ0が1.0〜10mmである。このインダクタ素子2は、たとえばパソコンや携帯型電子機器などに搭載されるDC/DCコンバータ等の回路素子、パソコンや携帯型電子機器などに搭載される電源ラインにおけるチョークコイル、パソコンや携帯型電子機器などに搭載されるデカップリング素子、パソコンや携帯型電子機器などに搭載されるインピーダンスマッチングのための素子、パソコンや携帯型電子機器などに搭載されるフィルタの構成素子、パソコンや携帯型電子機器などに搭載されるアンテナ素子などとして用いることができる。
【0022】
図2Aに示すように、本実施形態では、コア部4は、巻線部6の内周部と外周部と巻回軸両端部とを一体化して全体を覆うようになっている。コア部4は、実装側外面4Aの少なくとも中央部分を含む第1領域4aと、反実装側外面4Bの少なくとも中央部分を含む第2領域4bとから成る。本実施形態では、中央部分とは、巻線部6の内側部分を意味する。
【0023】
本実施形態では、第1領域4aは、巻線部6のZ軸方向下端よりもさらに下に位置して実装側外面4Aの全面を含むベース部4a1と、ベース部4a1の中央部から連続して反実装側外面4Bの方向にZ軸方向に沿って山形に突出する凸部4a2とを有する。ベース部4a1は、実装側外面4Aと、コア部4の4つの側面4Cの下部とを構成している。
【0024】
第2領域4bは、巻線部6のZ軸方向上端よりもさらに上に位置して反実装側外面4Bの全面を含むベース部4b1と、ベース部4b1の中央部から連続して実装側外面4Aの方向にZ軸方向に沿って突出する凸部4b2とを有する。凸部4b2は、山形に突出する凸部4a2と巻線部6の内周面との隙間を埋めるような形状を有している。第2領域4bは、ベース部4b1から巻線部6の外周部で連続して実装側外面4Aの方向にZ軸方向に沿って突出する外周部4b3とを有する。外周部4b3は、コア部4の4つの側面4Cの上部を構成している。第2領域4bを構成する磁性粉体とバインダ樹脂との混合物は、巻線部6を構成するワイヤ6a間の隙間にも充填されている。
【0025】
第1領域4aのベース部4a1のZ軸方向の厚みZ1は、好ましくは、コア部4の高さZ0の10〜40%であり、第2領域4bのベース部4b1のZ軸方向の厚みZ2と同程度であるが、必ずしも同一である必要はない。凸部4a2の高さZ1aは、巻線部6のZ軸方向の高さZ3より低くても高くてもよく、高さZ3の20〜120%の高さが好ましく、さらに好ましくは50〜100%%の高さである。また、凸部4a2は、裁頭錐体形状であることが好ましい。凸部4a2の形成が容易であると共に、空芯コイルとしての巻線部6の内部に凸部4a2を入り込ませやすく、しかも位置決め効果があるからである。
【0026】
本実施形態では、コア部4を構成する第1領域4aおよび第2領域4bは、所定の界面で直接に接触しており、双方共に、磁性粉末とバインダ樹脂とを含むが、空隙の密度が異なる。すなわち、第1領域4aにおける空隙の密度よりも、第2領域4bにおける空隙の密度が高い。本実施形態において、空隙とは、コア部4を任意の断面で切断した場合に、内径が3〜30μmの断面空間が観察された部分を意味する。空隙の形状は、たとえば図4Aに示すように、円形に近いことが好ましいが、必ずしも円形ではなく、楕円形、多角形でもよい。空隙の内径は、観察された断面空間の形状の外接円で判断する。なお、図4Bは、空隙の密度が低い断面写真である。
【0027】
本実施形態において、空隙の密度は、コア部4を任意の断面で切断した場合の断面写真において、90μm×120μmの四角形の面積内に観察される空隙の数で定義される。また、空隙の密度が高いとは、比較される断面における空隙の密度に対して、好ましくは150%以上、さらに好ましくは300%以上に密度が高いことを意味する。
【0028】
第1領域4aに対して第2領域4bの空隙の密度を高くするための方法の一例としては、たとえば第2領域4bを形成するための材料に含まれる溶剤の量を、第2領域4bを形成するための材料に含まれる溶剤の量よりも多くすることが挙げられる。溶剤の量を多くすることで、コア部4を成形するための乾燥工程、加熱工程、あるいは圧縮工程において、第2領域4bでは、溶剤が蒸発して空隙となる割合が多くなり、第2領域4bの空隙の密度を高くすることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、第1領域4aは、単純な形状を有しており、巻回されているワイヤ6aの間の隙間に入り込ませる必要がないため、第1領域4aを形成するための材料には、溶剤は、ほとんど含ませなくてもよい。逆に、第2領域4bは、巻回されているワイヤ6aの間の隙間に入り込ませる必要があるため、第2領域4bを形成するための材料には、溶剤が多く含まれていることが好ましい。
【0030】
第1領域4aに対して第2領域4bの空隙の密度を高くするための方法の別の例としては、以下の方法も考えられる。たとえば第1領域4aを予め成形した後に、第2領域4bを形成するための磁性体ペーストに、成形後の第1領域4aの凸部4a2側を巻線部6と共に浸漬させ、磁性体ペーストを硬化させる際に、磁性体ペーストから溶剤成分が抜け難くするようにしてもよい。たとえば溶剤が抜けにくいパレットに磁性体ペーストを入れ、そこに、成形後の第1領域4aの凸部4a2側を巻線部6と共に浸漬させ、溶剤が外部に抜けにくい状態で磁性体ペーストを硬化させてもよい。このような方法によっても、第2領域4bにおける空隙の密度を、第1領域4aよりも高めることができる。
【0031】
本実施形態では、第1領域4aおよび第2領域4bに含まれるバインダ樹脂の含有量は、磁性粉末100質量部に対して、1〜11であることが好ましい。第1領域4aおよび第2領域4bに含まれるバインダ樹脂の含有量は、同じでもよいが、異ならせても良い。第2領域4bにおいて、空隙の密度を上げる観点からは、第2領域4bに含まれるバインダ樹脂の含有量は、第1領域4aに含まれるバインダ樹脂の含有量よりも多いことが好ましい。たとえば第2領域4bに含まれるバインダ樹脂の含有量は、第1領域4aに含まれるバインダ樹脂の含有量の110〜200%であることが好ましい。
【0032】
第1領域4aおよび第2領域4bから成るコア体4には、磁性材としての磁性粉末が、コア体4の全体の質量に対して、90〜99質量%で含まれていることが好ましい。また、磁性粉末およびバインダ樹脂以外には、溶剤、可塑剤、滑材、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤などがコア体4の内部に含まれていても良い。
【0033】
次に、図1および図2Aに示すインダクタ素子2の製造方法について説明する。まず、たとえば金型のキャビティ内に、図3(a)に示す第1領域4aを形成する。第1領域4aには、山形の凸部4a2が形成してある。第1領域4aは、磁性粉末とバインダ樹脂とを少なくとも含んでいる。第1領域4aの形状は比較的に単純な形状なので、第1領域4aを形成するための材料には、溶剤はほとんど含ませなくても良い。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、凸部4a2が空芯コイルとしての巻線部6の内部に入り込むように、巻線部6をベース部4a1の上に設置する。その際に、凸部4a2とベース部4a1との鈍角状の境界部に、巻線部6の下端内周部が自己整合的に位置合わせされる。凸部4a2は、裁頭錐体形状を有するために、巻線部6を第1領域4aのベース部4a1上の中央部に位置決めして設置しやすい。
【0035】
その後に、図2Aに示す第2領域4bを構成する磁性粉末とバインダ樹脂とを含む混合物(第1領域4aよりも溶剤を多く含む)をキャビティ内に充填し、全体を加熱圧縮することで、図1および図2Aに示すインダクタ素子2が得られる。加熱圧縮時の加熱温度は、好ましくは50〜300°Cであり、圧縮圧力は、好ましくは1〜400Paである。圧縮成形するための方法としては、金型を用いてもよいし、油圧や水圧を利用してもよい。巻線部6からのリード部6bの図示は、図3では省略してあるが、成形後には、リード部6bは成形体と共に取り出される。その後にコア体4の実装側外面4Aに端子電極8がリード部6bに接続されるように、メッキまたは導電ペーストなどを用いて形成される。
【0036】
本実施形態では、磁性粉体は、金属磁性粒子であり、その粒子外周は、絶縁被膜してあることが好ましい。絶縁被膜としては、金属酸化物被膜、樹脂被膜などが例示される。磁性粉体の粒径は、好ましくは0.5〜50μmである。
【0037】
本実施形態に係るインダクタ素子2では、反実装側外面4Bの少なくとも中央部分を含むコア部4の第2領域4bにおける空隙の密度が、実装側外面4Aに比較して多くなっている。このため、コア部4の反実装側外面4Bでは、ベース部4b1、凸部4b2および外周部4b3から成る空孔リッチ層が形成され、その空孔リッチ層が、応力緩和層およびクラック拡大防止層となり、クラックの発生を抑制すると共に、クラックの拡大を抑制する。
【0038】
本実施形態に係るインダクタ素子2は、特にスイッチング周波数が高い用途(たとえば携帯電話用)に用いられる場合に、巻線部6が発熱してコア部4の実装側外面4Aと反実装側外面4Bとの間で熱膨張差が生じたとしても、反実装側外面4Bにクラックが生じ難くなる。また、第2領域4bにおいては、空隙により、クラックが連続して拡大することが抑制される。なお、従来では、巻線部6の自己発熱が大きい条件で使用されるコイル装置では、基板との熱膨張係数差などによる影響を受けて反実装側外面のコア部に、反実装側外面から巻線部6の内側内部に向けて広がるクラック10(図2A参照)が発生しやすい。また、クラック10が連結して拡大しやすい。本実施形態では、巻線部6の自己発熱が大きい条件で使用されて、基板との熱膨張係数差などによる影響を受けたとしても、コア部4の反実装側外面4Bでは、空孔リッチ層が形成され、その空孔リッチ層が、応力緩和層およびクラック拡大防止層となり、クラック10の発生を抑制すると共に、クラック10の拡大を抑制する。
【0039】
第2実施形態
図2Bに示すように、本実施形態に係るインダクタ素子2aは、第1領域4aが、平板状のベース部4a1のみで構成してあり、凸部を有さない以外は、第1実施形態のインダクタ素子2と同様であり、重複する説明は省略する。本実施形態では、巻線部6の内側は、第2領域4bの内周部4b2のみで充填されている。本実施形態のインダクタ素子2Aは、第1実施形態のインダクタ素子2のコア部4における凸部4a2を有さない以外は、インダクタ素子2と同様な作用効果を奏する。
【0040】
第3実施形態
図2Cに示すように、本実施形態に係るインダクタ素子2bは、第1領域4aに形成してある凸部4a2の形状と高さが異なる以外は、第1実施形態のインダクタ素子2と同様であり、重複する説明は省略する。本実施形態では、凸部4a2は、裁頭錐体形状ではなく、柱形状を有し、その高さは、インダクタ素子2の凸部4a2に比較して低く設定してある。たとえば本実施形態では、凸部4a2の高さZ1aは、巻線部6の高さZ3の0〜40%の高さであることが好ましい。
【0041】
本実施形態のインダクタ素子2bは、第1実施形態のインダクタ素子2のコア部4における凸部4a2と形状と高さが異なる凸部4a2を有する以外は、インダクタ素子2と同様な作用効果を奏する。
【0042】
第4実施形態
図2Dに示すように、本実施形態に係るインダクタ素子2cは、第1領域4aにも、ベース部4a1からZ軸方向に沿って反実装側表面4Bに向けて突出する外周部4a3が形成してある以外は、第1実施形態のインダクタ素子2と同様であり、重複する説明は省略する。本実施形態では、第1領域4aの外周部4a3が、4つの側面4Cの一部を構成し、その内側に、第2領域4bの外周部4b3が位置する。外周部4a3のZ軸方向の高さは、凸部4a2のZ軸方向の高さと同程度であるが、異なっていても良い。本実施形態のインダクタ素子2cは、コア部4における第1領域4aに外周部4a3が一体的に形成してある以外は、インダクタ素子2と同様な作用効果を奏する。
【0043】
第5実施形態
図2Eに示すように、本実施形態に係るインダクタ素子2dは、第1領域4aと第2領域4bとの間に、第3領域4cが形成してある以外は、第1実施形態のインダクタ素子2と同様であり、重複する説明は省略する。本実施形態では、第2領域4bは、平板状のベース部4b1のみで構成してあり、この第2領域4bと第1領域4aとの間が、第3領域4cで充填されている。
【0044】
第3領域4cは、巻線部6の内側で、第1領域4aと巻線部6との間の隙間を埋めると共に、第1領域4aと第2領域4bとの間の隙間を埋める内周部4c2と、巻線部6の半径方向の外側に位置する外周部4c3とを有し、ワイヤ6a間の隙間にも充填してあり、巻線部6の内側および外側に連続して存在している。第3領域4cが、第2領域4bの空隙密度よりも低い空隙密度の場合には、相対的に磁性粉末が多くなり、磁気特性が向上する。第3領域4cは、巻線部6を構成するワイヤ6aの相互間にも充填される部分なので、ワイヤ6aの相互間に入り込み易い材料組成であることが好ましい。第3領域4cが、第1領域4aの空隙密度よりも高い空隙密度を有する場合には、第3領域4cも第1領域4aに比較して空孔リッチ層となり、応力緩和特性が向上する。また、空孔リッチ層は、クラック拡大防止層となり、クラック10の拡大を抑制する。
【0045】
第6実施形態
図2Fに示すように、本実施形態に係るインダクタ素子2eは、第1領域4aと第2領域4bとの間に、第3領域4cが形成してある以外は、図2Bに示す第2実施形態のインダクタ素子2aと同様であり、重複する説明は省略する。本実施形態では、第2領域4bは、平板状のベース部4b1のみで構成してあり、この第2領域4bと第1領域4aとの間が、第3領域4cで充填されている。
【0046】
第3領域4cは、巻線部6の内側の隙間を埋める内周部4c2と、巻線部6の半径方向の外側に位置する外周部4c3とを有し、ワイヤ6a間の隙間にも充填してあり、巻線部6の内側および外側に連続して存在している。第3領域4cが、第2領域4bの空隙密度よりも低い空隙密度の場合には、相対的に磁性粉末が多くなり、磁気特性が向上する。第3領域4cは、巻線部6を構成するワイヤ6aの相互間にも充填される部分なので、ワイヤ6aの相互間に入り込み易い材料組成であることが好ましい。第3領域4cが、第1領域4aの空隙密度よりも高い空隙密度を有する場合には、第3領域4cも第1領域4aに比較して空孔リッチ層となり、応力緩和特性が向上する。また、空孔リッチ層は、クラック拡大防止層となり、クラック10の拡大を抑制する。
【0047】
第7実施形態
図2Gに示すように、本実施形態に係るインダクタ素子2fは、第1領域4aと第2領域4bとの間に、第3領域4cが形成してある以外は、図2Cに示す第3実施形態のインダクタ素子2bと同様であり、重複する説明は省略する。本実施形態では、第2領域4bは、平板状のベース部4b1のみで構成してあり、この第2領域4bと第1領域4aとの間が、第3領域4cで充填されている。
【0048】
第3領域4cは、巻線部6の内側の隙間を埋める内周部4c2と、巻線部6の半径方向の外側に位置する外周部4c3とを有し、ワイヤ6a間の隙間にも充填してあり、巻線部6の内側および外側に連続して存在している。第3領域4cが、第2領域4bの空隙密度よりも低い空隙密度の場合には、相対的に磁性粉末が多くなり、磁気特性が向上する。第3領域4cは、巻線部6を構成するワイヤ6aの相互間にも充填される部分なので、ワイヤ6aの相互間に入り込み易い材料組成であることが好ましい。第3領域4cが、第1領域4aの空隙密度よりも高い空隙密度を有する場合には、第3領域4cも第1領域4aに比較して空孔リッチ層となり、応力緩和特性が向上する。また、空孔リッチ層は、クラック拡大防止層となり、クラック10の拡大を抑制する。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0050】
たとえば、上述した実施形態では、コア部4は、第1領域4aと第2領域4bとで構成されるか、それらの間に第3領域4cが配置してある。しかしながら、コア部4の第3領域4cは、単一の領域である必要はなく、空孔密度が異なる複数の領域に分割されていてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、第1領域4aを充填して形成した後に、巻線部6を取り付け、第2領域4bを充填して形成してあるが、その逆でもよい。すなわち、Z軸方向に上下を逆にして、第2領域4bを充填して形成した後に、巻線部6を取り付け、第1領域4aを充填して形成してもよい。その場合には、第2領域4bには、第1領域4aの中央部に形成してある凸部4a2と同様な凸部を形成し、巻線部6を位置決めするようにしてもよい。
【0052】
さらに、上述した実施形態では、巻線部6のリード部6bを実装側外面4Aに向けて直接に引き出しているが、それに限らず、側面4Cに向けてコア部4の外側に引き出して電極側部8aに接続しても良い。あるいは、リード部6bは、側面4Cに向けてコア部4の外側に引き出した後に、実装側外面4Aにまで引き延ばし、端子電極8に接続してもよい。
【0053】
さらにまた、上述した実施形態では、巻線部6の内径および外径が、巻軸方向であるZ軸方向に沿って均一な巻線部6を用いているが、巻線部6の具体的な形状は、特に限定されない。たとえば図2Aに示す山形の凸部4a2の外周面に沿って、Z軸方向の上部に行くほど内径および外径が小さくなるような裁頭推体状の巻線部6であってもよく、その他の形状でもよい。
【符号の説明】
【0054】
2,2a〜2f… インダクタ素子(コイル装置)
4… コア部
4a… 第1領域
4a1… ベース部
4a2… 凸部
4a3… 外周部
4b… 第2領域
4b1… ベース部
4b2… 内周部
4b3… 外周部
4c… 第3領域
4c2… 内周部
4c3… 外周部
4A… 実装側外面
4B… 反実装側外面
4C… 側面
6… 巻線部
6a… ワイヤ
6b… リード部
8… 端子電極
8a… 電極側部
10… クラック

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B