(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の技術は、少なくとも樹脂プレート、インナーガーニッシュ及びアウターガーニッシュが必要となり、部品点数が多くなるという問題がある。
【0009】
特許文献2記載の技術は、咬止部材を構成する板状部の上面に、側面視でL字状の爪部が複数設け、前方を向いている爪部と後方を向いている爪部とを、左右方向で交互に配置する必要がある。しかも、表皮の咬止部分の美観(余り皺の解消等)のために、複数の爪部を一直線上に揃える必要があり、工数が増大するおそれがある。
【0010】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、部品点数の低減化、工数の低減化を図りながらも、余り皺等の不具合がなく、簡素な構造で作業性も向上させることができる車両用シート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 本発明に係る車両用シート装置は、少なくともシートバックフレーム(パイプフ
レーム、パンフレーム)を有するシートバックと、前記シートバックの前面側を被覆する
前面表皮材と、前記シートバックの背面側を被覆する背面表皮材と、
前記シートバックフレームの背面側上部に幅方向に離間して固定された一対のブラケットと、一端が一方のブラケットに固定され、他端が他方のブラケットに固定され
るとともに、前記シートバックフレームに対して後方に離間して設けられた
第1のバーと、前記シートバックフレームの背面側上部に
、幅方向において一対の前記ブラケットの内側であって、上下方向において前記ブラケットと重なる位置に設けられた少なくとも1つの開口部と、前記前面表皮材の上端部に固定され、前記開口部の上部に係止される少なくとも1つの第1係止部材と、前記背面表皮材の上端部に固定され、前記開口部の下部に係止される少なくとも1つの第2係止部材とを有
し、前記シートバックフレームは、前記シートバックの外形に沿った逆U字状のパイプフレームと、該パイプフレームで囲まれた空間を一部閉塞するように固定されたパンフレームとを有し、前記開口部は、前記パンフレームのうち、後方に膨出した凸部に形成され、前記パンフレームの前記凸部に複数の前記開口部が形成され、前記パンフレームは、複数の前記開口部の間の位置に、前記パイプフレームに向かって変形した凹部を有することを特徴とする。これにより、一つの開口部で2方法の表皮を固定できて、外観確認できるので作業性向上する。
また、開口部付近の剛性が向上し、第1係止部材及び第2係止部材を確実に開口部に係止することができる。さらに、パンフレームの凹部をパイプフレームに溶接することができ、これにより、複数の開口部の周辺の剛性が向上し、第1係止部材及び第2係止部材を確実に開口部に係止することができる。
[2] 本発明において、前記前面表皮材の上端部に前面上部表皮材が縫製され、前記前面上部表皮材は、その端部にスリットが設けられ、前記前面上部表皮材の端部は、前記第1のバーの前側を通して、前記背面表皮材側に位置され、前記第2係止部材は、前記前面上部表皮材のスリットを通して、前記開口部に係止されてもよい。これにより、ヘッドレストを収納する部分の後壁面を簡素な構造で形成することができ、しかも、前面表皮材の上端部も前面上部表皮材を介して背面表皮材内に係止することができ、美観並びに作業性も向上する。
[3] 本発明に係る車両用シート装置は、少なくともシートバックフレーム(パイプフ
レーム、パンフレーム)を有するシートバックと、前記シートバックの前面側を被覆する
前面表皮材と、前記シートバックの背面側を被覆する背面表皮材と、前記シートバックフレームの背面側上部に幅方向に離間して固定された一対のブラケットと、一端が一方のブラケットに固定され、他端が他方のブラケットに固定されるとともに、前記シートバックフレームに対して後方に離間して設けられた第1のバーと、前記シートバックフレームの背面側上部に、幅方向において一対の前記ブラケットの内側であって、上下方向において前記ブラケットと重なる位置に設けられた少なくとも1つの開口部と、前記前面表皮材の上端部に固定され、前記開口部の上部に係止される少なくとも1つの第1係止部材と、前記背面表皮材の上端部に固定され、前記開口部の下部に係止される少なくとも1つの第2係止部材とを有し、前記前面表皮材の上端部に前面上部表皮材が縫製され、前記前面上部表皮材は、その端部にスリットが設けられ、前記前面上部表皮材の端部は、前記第1のバーの前側を通して、前記背面表皮材側に位置され、前記第2係止部材は、前記前面上部表皮材のスリットを通して、前記開口部に係止されていることを特徴とする。これにより、一つの開口部で2方法の表皮を固定できて、外観確認できるので作業性向上する。また、ヘッドレストを収納する部分の後壁面を簡素な構造で形成することができ、しかも、前面表皮材の上端部も前面上部表皮材を介して背面表皮材内に係止することができ、美観並びに作業性も向上する。
【0012】
[
4] 本発明において、前記シートバックフレームの背面側上部に設けられた複数の前記開口部を有し、複数の前記開口部は、左右方向に沿って並列に配置されてもよい。これにより、シートバックの左右方向でバランスよく、各開口部毎に、第1係止部材及び第2係止部材を固定することができ、より作業性が、向上する。
【0013】
[
5] 本発明において、前記第1係止部材及び前記第2係止部材は、それぞれ樹脂部品で形成されていることが好ましい。開口部に対して第1係止部材及び第2係止部材を容易に係止することができ、より作業性が、向上する。
【0014】
[
6] 本発明において、前記第1係止部材及び前記第2係止部材は、1つの前記開口部に対して、それぞれ対向する位置に係止されていてもよい。これにより、簡素な構造で、且つ、少ない部品で、バランスよく、開口部に第1係止部材及び第2係止部材を容易に係止することができ、より作業性が、向上する。
【0017】
[7] 本発明において、前記シートバックフレームの上部にヘッドレストを案内するヘッドレストガイドが設けられ、前記ヘッドレストガイドの後方上部に、前記
第1のバーとほぼ平行に
第2のバーが配置されてもよい。
【0018】
ヘッドレストガイドの後方上部に
第2のバーが配置されていることから、この
第2のバーがヘッドレストをシートバックフレームよりも後方に移動するのを防止することができる。これにより、ヘッドレストガイドとシートバックフレームとの間にクッション材を設ける必要がなくなり、シートバックフレームの上部にヘッドレストガイドを溶接等で直接固定することができる。これは、車両用シート装置の外観の向上、車両用シート装置の軽量化、組立の作業性の向上につながり、車両用シート装置としての商品性の向上を図ることができる。
【0019】
[8] 本発明において、前記
第1のバーの前方上部に、前記
第1のバーとほぼ平行に
第2のバーが配置されてもよい。これにより、ヘッドレストを収納する部分の後壁面を簡素な構造で形成することができる。
【0020】
[9] 本発明において、前記第1係止部材は、前記前面表皮材の上端部に固定された不織布に固定され、前記第1係止部材は、前記
第1のバーの前側を通して、前記開口部に係止されてもよい。これにより、第1係止部材を開口部に係止する際に、前面表皮材の前面側を皺なく簡素な構造で係止することができ、組付け作業性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る車両用シート装置によれば、部品点数の低減化、工数の低減化を図りながらも、余り皺等の不具合がなく、簡素な構造で作業性も向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る車両用シート装置の実施の形態例を
図1〜
図13を参照しながら説明する。
【0025】
本実施の形態に係る車両用シート装置(以下、シート装置10と記す)は、
図1に示すように、前脚12と、後脚14と、シートクッション16と、シートバック18と、アーム20と、ヘッドレスト21とを備えている。
【0026】
シート装置10は、
図2に示すように、シートクッション16が車両22のフロア24の上方に配置される「着座位置」と(
図2A参照)、後脚14が前方に回動され、シートクッション16がフロア24の上方に配置されると共に、シートクッション16の上にシートバック18が重ねられ、シートバック18の背面が上面となる「収納位置」(
図2B参照)との間で移動可能となっている。
【0027】
前脚12は、立設状態においてシートクッション16を下方から支持すると共に、第1軸部26a及び第2軸部26bをそれぞれ回転中心として前方に回動可能となっている。
【0028】
後脚14は、シートバック18に固定され、第3軸部26cを中心に前方に回動可能となっている。また、後脚14の下端はフロア24に固定されたフットブラケット30に取り付けられ、後脚14の上端はシートバック18に固定されている。なお、
図1では、フットブラケット30の図示を省略している。
【0029】
シートクッション16の前方の底面には、前脚12の上端が第2軸部26bを介して取り付けられ、シートクッション16の後端は、L字状のアーム20を介してシートバック18に取り付けられている。また、シートクッション16の後端は、アーム20を介してシートバック18の下端と回転自在に連結されている。
【0030】
シートバック18は、立設状態における下端が後脚14の上端に固定され、第3軸部26cを中心に前方に回動可能となっている。
【0031】
アーム20はシートクッション16に固定されていると共に、その上端が第4軸部26dを介してシートバック18の下端に取り付けられている。そして、シートバック18が第4軸部26dを中心に前方に回動可能となっている。
【0032】
図2Bに示す上述した「収納位置」の際には、前脚12が第1軸部26aを中心に前方に回動すると共に、後脚14が第3軸部26cを中心に前方に回動する。すなわち、前脚12とシートクッション16は、上述の回動に伴って折りたたみ可能な構成となっている。
【0033】
また、シートクッション16の後端は、アーム20を介してシートバック18に連結されているため、後脚14の回動に伴って前下方に移動する。シートバック18は、第1軸部26aを中心に前方に回動する。
【0034】
すなわち、シート装置10を上述した「収納位置」にする際には、シートクッション16がフロア24の凹部24aに向かって略平行に移動する。そして、シート装置10がフロア24の凹部24aに収納された状態では、シートバック18の前面とシートクッション16の上面とが相対する位置になると共に、シートバック18の背面が略水平となる。
【0035】
そして、図示しない車椅子を車室内に引き込む際には、例えばシート装置10の前側に設置された前部シート装置32の下部にある電動ウインチ34からベルト36を引き出して、ベルト36の先に取り付けられている図示しない鉤を車椅子の脚に引っ掛けた上で、電動ウインチ34を駆動する。
【0036】
ここで、シート装置10の構成、特に、シートバック18の構成について
図3〜
図6も参照しながら説明する。
【0037】
図3は、シート装置10のうち、シートバック18の前面表皮材(
図1参照)、背面表皮材(
図1参照)及びパッド(図示せず)を取り外した状態を示す斜視図である。
【0038】
シートバック18は、
図3に示すように、少なくともシートバックフレーム40を有する。シートバックフレーム40は、シートバック18の外形に沿った逆U字状のパイプフレーム42と、該パイプフレーム42で囲まれた空間を一部閉塞するように固定されたパンフレーム44とを有する。
【0039】
図4Aは、シートバックフレーム40の前面側上部を示す斜視図であり、
図4Bは、シートバックフレーム40の背面側上部を示す正面図である。
図5Aは、シートバックフレーム40の背面側上部を示す斜視図であり、
図5Bは、シートバックフレーム40の前面側上部を示す斜視図である。
図6は、シートバックフレーム40の前面側上部を上方から見て示す斜視図である。
【0040】
図4A、
図5B及び
図6に示すように、パイプフレーム42は、前面側上部の中央部分が平坦化され、平坦化された部分(平坦部42a)に、ヘッドレスト21のステー45(
図3参照)が挿入される一対のヘッドレストガイド46L、46Rが例えば溶接によって固定されている。
【0041】
また、
図4B、
図5A、
図5B及び
図6に示すように、パイプフレーム42の背面側上部に一対のブラケット48L、48Rが例えば溶接によって固定されている。
図4B及び
図5Aに示すようにパンフレーム44の上部のうち、一対のブラケット48L、48Rが位置する部分に一対の開口50L、50R(
図4B参照)が形成されている。これにより、一対のブラケット48L、48Rが対応する一対の開口50L、50Rを介してパンフレーム44の背面よりも後方に突出するようになっている。
【0042】
一対のブラケット48L、48Rには、1つのウインチ・バー52が例えば溶接によって固定されている。ウインチ・バー52は、その長手方向とパイプフレーム42の左右方向とがほぼ一致するように、一対のブラケット48L、48Rに固定されている。
【0043】
さらに、シートバックフレーム40を後方から見て左側のブラケット48Lの左側面と右側のブラケット48Rの右側面とを橋渡すように逆U字状のバー54が例えば溶接によって固定されている。すなわち、ヘッドレストガイド46L、46Rの後方上部であって、且つ、ウインチ・バー52の前方上部に、該ウインチ・バー52とほぼ平行にバー54が配置されている。また、上述したように、一対のブラケット48L、48Rが対応する一対の開口50L、50Rbを介してパンフレーム44の背面よりも後方に突出するようになっており、パンフレーム44とウインチ・バー52との間に空間が確保されるようになっている。
【0044】
図7Aに示すように、シートバック18の背面上部を覆う第1カバー部材56Aが例えばボルト等の締結部材によって固定される。第1カバー部材56Aは、
図7Bに示すように、左右方向に延びる細長の孔58が形成され、該孔58を通じてウインチ・バー52(
図7A参照)が露出するようになっている。すなわち、第1カバー部材56Aは、第1左側被覆部60Laと、第1右側被覆部60Raと、第1上部被覆部62Uと第1下部被覆部62Bとを有し、第1左側被覆部60La、第1右側被覆部60Ra、第1上部被覆部62U及び第1下部被覆部62Bによって、孔58が囲まれた形態となっている。この第1カバー部材56Aは、ウインチ・バー52が一対のブラケット48L、48Rに固定されている箇所を覆うと共に、ウインチ・バー52の左右方向(車幅方向)における移動を、所定範囲内に規制する。
【0045】
また、
図8Aに示すように、シートバック18の背面下部には逆U字状の第2カバー部材56Bが例えばボルト等の締結部材によって固定される。この第2カバー部材56Bは、
図8Bに示すように、左側後脚14Lの背面を被覆する第2左側被覆部64Lと、右側後脚14Rの背面を被覆する第2右側被覆部64Rと、第2左側被覆部64Lと第2右側被覆部64Rとの間に設けられた第2上部被覆部66とを有する。特に、第2上部被覆部66の下部は、面取り加工(R加工)が施されている。
【0046】
これにより、
図9に示すように、車椅子を車室内に引き込む際に、電動ウインチ34から引き出されたベルト68(二点鎖線で示す)は、第1カバー部材56Aの孔58から露出するウインチ・バー52上を摺動し、第2カバー部材56Bの第2上部被覆部66上を摺動することとなる。
【0047】
さらに、本実施の形態においては、以下に示す構成を有する。すなわち、
図4B及び
図5Aに示すように、パンフレーム44の前面側上部に設けられた2つの開口部70L、70Rを有する。2つの開口部70L、70Rは、シートバックフレーム40を背面から見て左側に設けられた開口部(左側開口部70L)と、右側に設けられた開口部(右側開口部70R)である。左側開口部70L及び右側開口部70Rの開口形状は、いずれも四角形状で角が湾曲に加工された形状を有する。すなわち、パイプフレーム42の左右方向に沿って延びる2つの直線成分72L及び72Rが互いに対向した形状を有する。もちろん、左側開口部70L及び右側開口部70Rの開口形状は、円形、楕円形、あるいはトラック形状等を採用することもできる。
【0048】
左側開口部70L及び右側開口部70Rは、パンフレーム44の背面側上部において、後方に膨出した左側凸部74L及び右側凸部74Rに形成されている。すなわち、パンフレーム44の背面側上部の左側凸部74Lに左側開口部70Lが形成され、同じく右側凸部74Rに右側開口部70Rが形成されている。この場合、左側開口部70L及び右側開口部70Rと重なる位置にヘッドレストガイド46L、46Rが配置されている。
【0049】
また、
図10に示すように、左側開口部70L及び右側開口部70Rの開口端部(上部側開口端部76L及び下部側開口端部76R)は、いずれもシートバック18の内側(パイプフレーム42の平坦部42a側)に折れ曲がって、前方を向くようにフランジ状に形成されている。なお、
図10において、一点鎖線で示すLaは、ヘッドレストガイド46L、46Rに対するヘッドレスト21のステー45(
図3参照)の挿入方向を示す。
【0050】
さらに、
図4B及び
図6に示すように、左側開口部70Lと右側開口部70Rとの間の位置に、パンフレーム44に向かって変形した凹部78を有する。パンフレーム44のうち、凹部78に対応した前面部分とパイプフレーム42の平坦部42aとが例えば溶接にて接合されている。
【0051】
また、
図10及び
図11Aに示すように、シートバック18は、シートバック18の前面側を被覆する前面表皮材80と、シートバック18の背面側を被覆する背面表皮材82と、前面表皮材80の上端部80aに固定され、左側開口部70L及び右側開口部70Rの各上部側開口端部76aに係止される第1左側係止部材84L及び第1右側係止部材84R(
図11A参照)と、背面表皮材82の上端部82aに固定され、左側開口部70L及び右側開口部70Rの各下部に係止される第2左側係止部材86L及び第2右側係止部材86R(
図11A参照)とを有する。
【0052】
第1左側係止部材84L及び第1右側係止部材84Rは、いずれも先端部がU字状とされた鉤状に形成され、左右方向を長手方向とする第1帯状部88a(
図11A参照)に一体に樹脂部品にて形成されている。第2左側係止部材86L及び第2右側係止部材86Rも同様に、いずれも先端部がU字状とされた鉤状に形成され、左右方向を長手方向とする第2帯状部88b(
図11A参照)に一体に樹脂部品にて形成されている。
【0053】
第1左側係止部材84L及び第1右側係止部材84Rは、第1帯状部88a(
図11A参照)を前面表皮材80の端部に縫製することで、前面表皮材80に固定される。詳細には、前面表皮材80の上端部80aの前面に例えば縫製によって不織布90が固定される。そして、第1帯状部88aが不織布90の端部の前面に縫製によって固定される。第1左側係止部材84L及び第1右側係止部材84Rを左側開口部70L及び右側開口部70Rの各上部に係止する際には、第1左側係止部材84L及び第1右側係止部材84Rを、ウインチ・バー52の前側、すなわち、ウインチ・バー52とパンフレーム44の上部との間を通して、左側開口部70L及び右側開口部70Rの各上部に係止する。
【0054】
第2左側係止部材86L及び第2右側係止部材86Rは、第2帯状部88b(
図11A参照)を背面表皮材82の上端部82aの前面に縫製することで、背面表皮材82に固定される。そして、第2左側係止部材86L及び第2右側係止部材86Rを左側開口部70L及び右側開口部70Rの各下部に係止する。
【0055】
さらに、
図10及び
図11Bに示すように、前面表皮材80の上端部80aに前面上部表皮材92を縫製によって固定する。前面上部表皮材92は、その端部に左側スリット94Lと右側スリット94Rが設けられている。そして、
図10及び
図12に示すように、前面上部表皮材92の端部を、ウインチ・バー52の前側、すなわち、ウインチ・バー52とパンフレーム44の上部との間を通して、背面表皮材82の上部に位置させ、第2左側係止部材86L及び第2右側係止部材86Rを、前面上部表皮材92の左側スリット94L及び右側スリット94Rを通して、左側開口部70L及び右側開口部70Rの各下部に係止する。
【0056】
また、本実施の形態では、
図13に示すように、前面表皮材80(
図12参照)と背面表皮材82の上部両端部Zaは縫製によって固定されているが、上部中央部は縫製されていない。また、前面表皮材80と背面表皮材82の側面部分Zbには、それぞれファスナー96が縫製され、ファスナー96によって容易に前面表皮材80と背面表皮材82の側面部分を開け閉めできるようになっている。
【0057】
従って、シートバックフレーム40にバッドを設置した後、前面表皮材80と背面表皮材82を、パッドが設置されたシートバックフレーム40に被せて、上述した前面表皮材80と背面表皮材82の上端部の係止処理(各開口部に対する各係止部材の係止処理等)を行った後に、側面のファスナー96を閉めることで、簡単にシートバック18を作製することができる。
【0058】
もちろん、前面表皮材80と背面表皮材82をシートバックフレーム40に被せて、上述した前面表皮材80と背面表皮材82の係止処理を行った後に、シートバックフレーム40にバッドを設置し、その後、側面のファスナー96を閉めることで、簡単にシートバック18を作製することができる。
【0059】
このように、本実施の形態に係るシート装置10は、少なくともシートバックフレーム40(パイプフレーム42、パンフレーム44)を有するシートバック18と、該シートバック18の前面側を被覆する前面表皮材80と、シートバック18の背面側を被覆する背面表皮材82と、シートバックフレーム40の背面側上部に固定されたウインチ・バー52と、シートバックフレーム40の前面側上部に設けられた一対の開口部(左側開口部70L及び右側開口部70R)と、前面表皮材80の上端部80aに固定され、一対の開口部の各上部に係止される一対の第1係止部材(第1左側係止部材84L及び第1右側係止部材84R)と、背面表皮材82の上端部82aに固定され、一対の開口部の各下部に係止される一対の第2係止部材(第2左側係止部材86L及び第2右側係止部材86R)とを有する。
【0060】
これにより、シートバックフレーム40の背面側上部に設けた一対の開口部に前面表皮材80の上部と背面表皮材82の上部をそれぞれ固定でき、しかも、上方から固定箇所を目視にて容易に確認できるため、シート装置10の組み立て作業性が向上する。
【0061】
本実施の形態において、一対の開口部を、左右方向に沿って並列に配置している。これにより、シートバック18の左右方向並びに上下方向でバランスよく、開口部毎に、一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材を固定することができ、さらに、作業性が向上する。
【0062】
本実施の形態において、一対の第1係止部材(第1左側係止部材84L及び第1右側係止部材84R)及び一対の第2係止部材(第2左側係止部材86L及び第2右側係止部材86R)を、それぞれ樹脂部品で形成している。これにより、一対の開口部に対して一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材を容易に係止することができ、より作業性が向上する。
【0063】
本実施の形態において、一対の第1係止部材及び一致の第2係止部材を、一対の開口部に対して、それぞれ対向する位置に係止している。これにより、簡素な構造で、且つ、少ない部品で、バランスよく、一対の開口部に一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材を容易に係止することができ、より作業性が向上する。
【0064】
本実施の形態において、シートバックフレーム40は、シートバック18の外形に沿った逆U字状のパイプフレーム42と、該パイプフレーム42で囲まれた空間を一部閉塞するように固定されたパンフレーム44とを有し、一対の開口部は、パンフレーム44のうち、後方に膨出した凸部(左側凸部74L及び右側凸部74R)に形成されている。これにより、一対の開口部付近の剛性が向上し、一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材を確実に一対の開口部に係止することができる。
【0065】
本実施の形態において、パンフレーム44の凸部に一対の開口部が形成され、パンフレーム44は、一対の開口部の間の位置に、パイプフレーム42に向かって変形した凹部78をする。これにより、パンフレーム44の凹部78をパイプフレーム42に溶接することができ、これにより、一対の開口部の周辺の剛性が向上し、一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材を確実に一対の開口部に係止することができる。
【0066】
本実施の形態において、シートバックフレーム40の上部にヘッドレスト21を案内するヘッドレストガイド46L、46Rが設けられ、ヘッドレストガイド46L、46Rの後方上部に、ウインチ・バー52とほぼ平行にバー54が配置されている。
【0067】
ヘッドレストガイド46L、46Rの後方上部にバー54が配置されていることから、このバー54がヘッドレスト21をシートバックフレーム40よりも後方に移動するのを防止することができる。これにより、ヘッドレストガイド46L、46Rとシートバックフレーム40との間にクッション材を設ける必要がなくなり、シートバックフレーム40の上部にヘッドレストガイド46L、46Rを溶接等で直接固定することができる。これは、シート装置10の外観の向上、シート装置10の軽量化、組立の作業性の向上につながり、シート装置10としての商品性の向上を図ることができる。
【0068】
本実施の形態において、ウインチ・バー52の前方上部に、ウインチ・バー52とほぼ平行にバー54が配置されている。これにより、ヘッドレスト21を収納する部分の後壁面を簡素な構造で形成することができる。
【0069】
本実施の形態において、一対の第1係止部材は、前面表皮材80の上端部80aに固定された不織布90に固定され、一対の第1係止部材は、ウインチ・バー52の前側(ウインチ・バー52とパイプフレーム42との間)を通して、一対の開口部に係止されている。これにより、一対の第1係止部材を一対の開口部に係止する際に、前面表皮材80の前面側を皺なく簡素な構造で係止することができ、組付け作業性が向上する。
【0070】
本実施の形態において、前面表皮材80の上端部80aに前面上部表皮材92が縫製され、前面上部表皮材92は、その端部にスリット94L、94Rが設けられ、前面上部表皮材92の端部は、ウインチ・バー52の前側(ウインチ・バー52とパイプフレーム42との間)を通して、背面表皮材82側に位置され、一対の第2係止部材は、前面上部表皮材92のスリット94L、94Rを通して、一対の開口部に係止されている。
【0071】
これにより、ヘッドレスト21を収納する部分の後壁面を簡素な構造で形成することができ、しかも、前面表皮材80の上端部80aも前面上部表皮材92を介して背面表皮材82内に係止することができ、美観並びに作業性も向上する。
【0072】
さらに、本実施の形態において、一対の開口部(左側開口部70L及び右側開口部70R)の開口端部(上部側開口端部76a及び下部側開口端部76b)は、前方を向くようにフランジ状に形成されている。これにより、一対の開口部の剛性が向上し、確実に、一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材を一対の開口部に係止することができる。
【0073】
本実施の形態において、一対の開口部とパイプフレーム42の平坦部42aとが対向している。これにより、一対の開口部に係止された一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材の脱落を防止することができる。
【0074】
本実施の形態において、一対の開口部と、該一対の開口部に係止された一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材を隠し、保護する第1カバー部材56Aを設置している。これにより、省スペースで一対の第1係止部材及び一対の第2係止部材を保護することができ、一対の開口部からの脱落を防止することができる。
【0075】
なお、本発明に係る車両用シート装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば2つの開口部を並列配置した例を示したが、その他、3つ以上の開口部を並列配置してもよい。もちろん、1つの横長の開口部を配置してもよい。