特許第6562152号(P6562152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562152空気入りタイヤ、空気入りタイヤの金型、二次元コードの刻印の検査方法、及び空気入りタイヤを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562152
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ、空気入りタイヤの金型、二次元コードの刻印の検査方法、及び空気入りタイヤを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20190808BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20190808BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20190808BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20190808BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B60C13/00 A
   B60C19/00 H
   B29D30/06
   B29C33/42
   B29C33/02
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-522150(P2018-522150)
(86)(22)【出願日】2018年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2018009990
(87)【国際公開番号】WO2018180497
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2018年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-62088(P2017-62088)
(32)【優先日】2017年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】波多野 敦也
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−516103(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2905125(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2977934(EP,A1)
【文献】 国際公開第2015/165862(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/165863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00、19/00
B29D 30/00−30/72
B29C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
路面と接触するトレッド部と、
前記トレッド部をタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられたサイドウォール部と、
前記サイドウォール部に接続され、前記サイドウォール部に対してタイヤ径方向内側に位置するビード部と、を備え、
前記サイドウォール部あるいは前記ビード部のタイヤ側面は、
前記表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンが形成された二次元コードと、
前記二次元コードの外縁を、タイヤ径方向及びタイヤ周方向の少なくとも一方の両側から挟むように、タイヤ径方向及びタイヤ周方向のうち第1の方向の同じ位置に設けられ、かつ、タイヤ径方向及びタイヤ周方向のうち第2の方向の異なる位置に互いに分離して設けられた少なくとも2つの凸形状あるいは凹形状のマークと、を備える、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記マークは、前記マークから、大きさと向きと前記側面上の位置とが特定される四角形枠を定める目印であり、
前記二次元コードの外縁は、前記四角形枠内に、前記四角形枠と接することなく設けられている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記外縁と前記四角形枠の間の前記表面の領域は、平滑面である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記二次元コードは、前記二次元コードの前記外縁で囲まれた前記二次元コードの配置領域を格子状に分割した同一サイズの矩形形状の複数の単位セル領域に対応して、前記側面の凹凸のうち凹部それぞれが前記濃淡要素の濃い1つの単位セル領域を形成するように、前記凹部が配置された構成を有し、
前記二次元コードは、QRコード(登録商標)であり、
前記配置領域と前記四角形枠の間の離間距離は、少なくとも前記単位セル領域のサイズの8倍以上に対応する距離である、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記二次元コードの前記外縁は矩形形状であり、前記二次元コードの前記外縁の少なくとも一辺は、前記四角形枠の一辺に平行になるように、前記二次元コードは設けられている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記マークは、2つであり、
前記マーク間の距離が、前記四角形枠の一辺の長さであり、
前記マークの配列方向が、前記四角形の一辺に平行である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記マークは、前記タイヤ径方向の同じ位置に設けられ、かつ、前記タイヤ周方向の異なる位置に設けられた一対のマークAと、前記一対のマークAの前記タイヤ径方向の位置と異なる位置であって、互いに前記タイヤ径方向の同じ位置に設けられ、かつ、前記タイヤ周方向の異なる位置に設けられた一対のマークBとを含み、
前記四角形枠の頂点は、前記一対のマークA及び前記一対のマークBの位置にある、請求項2〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
空気入りタイヤのサイドウォール部あるいはビード部のタイヤ側面に二次元コードを刻印する前の未刻印空気入りタイヤを製造する金型であって、
前記未刻印空気入りタイヤの前記タイヤ側面と接触する金型の内表面は、
前記二次元コードを刻印するための平滑面を有する二次元コードの配置予定領域に対応する平滑面の対応配置予定領域の外縁をタイヤ径方向に対応する金型径方向あるいはタイヤ周方向に対応する金型周方向の両側から挟むように、金型径方向及び金型周方向のうち第3の方向の同じ位置に設けられ、かつ、金型径方向及び金型周方向のうち第4の方向の異なる位置に互いに分離して設けられた少なくとも2つの凹形状孔あるいは凸形状突起を備える、ことを特徴とする空気入りタイヤの金型。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤのタイヤ側面に刻印された二次元コードの刻印を検査する検査方法であって、
前記マーク及び前記二次元コードの画像を取得するステップと、
取得した前記画像から、前記画像上の画素の単位で表した前記マーク間の画像ベース距離を求めるステップと、
前記タイヤ側面上の前記マーク間の距離と前記画像ベース距離との情報から求まる前記画像上の1画素に対応する単位距離を用いて、前記タイヤ側面上の前記二次元コードの大きさ、前記表面上の前記二次元コードの配置領域の、前記マークから定まる二次元コードの配置予定領域に対する位置ずれ量、及び、前記表面上の前記二次元コードの配置領域の、前記二次元コードの配置予定領域に対する傾斜量の少なくとも1つを求めるステップと、
前記二次元コードの大きさ、前記位置ずれ量、及び前記傾斜量の少なくとも1つを、対応する規格寸法と比較することにより、前記二次元コードの刻印位置の良否を判定するステップと、
を有する、ことを特徴とする二次元コードの刻印を検査する検査方法。
【請求項10】
前記規格寸法のうち、前記二次元コードの大きさは、前記表面の凹凸によって周囲の領域と識別可能に形成されたマーク、記号、あるいは数値によって表された、前記二次元コードの周囲に設けられた表示情報に含まれ、
前記表示情報の画像を取得して画像処理を行うことにより、前記二次元コードの大きさの情報を取得する、請求項9に記載の二次元コードの刻印を検査する検査方法。
【請求項11】
路面と接触するトレッド部と、前記トレッド部をタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられたサイドウォール部と、前記サイドウォール部に接続され、前記サイドウォール部に対してタイヤ径方向内側に位置にあるビード部と、を備えた空気入りタイヤのタイヤ側面に二次元コードを刻印して空気入りタイヤを製造する方法であって、
前記サイドウォール部あるいは前記ビード部のタイヤ側面は、前記二次元コードの配置予定領域の外縁をタイヤ径方向あるいはタイヤ周方向の両側から挟むように、タイヤ径方向及びタイヤ周方向のうち第1の方向の同じ位置に設けられ、かつ、タイヤ径方向及びタイヤ周方向のうち、第2の方向の異なる位置に互いに分離して設けられた少なくとも2つの凸形状あるいは凹形状のマークを備え、
前記タイヤ側面の画像から検出した前記画像上の前記マークの位置に基づいて、前記画像上の前記二次元コードの配置予定領域を決定するステップと、
決定した前記二次元コードの配置予定領域に基づいて前記タイヤ側面上の前記二次元コードの配置予定領域を特定し、特定した前記タイヤ側面上の前記二次元コードの配置予定領域に、レーザ光を照射することにより、前記タイヤ側面にドット孔を形成して前記二次元コードを刻印するステップと、を有することを特徴とする空気入りタイヤを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、空気入りタイヤの金型、二次元コードの刻印の検査方法、及びタイヤを製造する方法に関する。具体的には、本発明は、タイヤ側面に二次元コードを備える空気入りタイヤ、この空気入りタイヤを製造する空気入りタイヤの金型、空気入りタイヤの二次元コードの刻印位置を検査する方法、及び二次元コードを刻印して空気入りタイヤを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤのタイヤ側面に、二次元コードを設けることが提案されている。二次元コードは、一次元コードに較べて多くの情報を含ませることができるので、種々の情報を二次元コードに含ませて、タイヤを管理することができる。特に、タイヤ側面に、所定のドット孔のパターンで刻印することで、タイヤ側面に二次元コードを設けることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
タイヤ側面に、所定のドット孔のパターンで刻印することで形成した二次元コードは、タイヤ側面が摩耗しない限りは消滅しないので、タイヤの管理を有効に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/000714号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような空気入りタイヤにドット孔を設けて二次元コードを刻印する際、空気入りタイヤと刻印装置の間で相対的な位置ずれが生じる場合がある。この位置ずれが生じると、二次元コードの刻印位置が所定の位置に対して位置ずれするので、二次元コードの読み取り装置で自動的に読み取ることができない場合が生じる。また、二次元コードは、目視で視認できる、目立つサイド模様でもあるため、刻印した二次元コードがタイヤ側面上の適切な位置にない、あるいは、適切な向きに向いていないなどの外見上の不具合が生じる場合もある。例えば、タイヤのサイドウォール面に形成した別のサイド模様、文字、記号、あるいは標章に干渉して外観不良となる。
【0006】
また、空気入りタイヤのサイズやサイドウォール面のサイド模様によっては、二次元コードを刻印することができる領域は制限される場合がある。このため、二次元コードの刻印位置は、空気入りタイヤのサイズやサイドウォール面のサイド模様に応じて変える場合もある。しかし、サイドウォール面を含むタイヤ側面上の適切な位置に、適切な方向に向けて、二次元コードを刻印する技術は知られていない。また、刻印した二次元コードが、タイヤ側面上の適切な位置に、適切な方向に向いて設けられているか否かを検査する技術も知られていない。
また、超偏平サイズの空気入りタイヤのサイドウォール面等のタイヤ側面には二次元コードを刻印する領域が著しく少ないため、二次元コードの大きさに関する目標寸法を、タイヤのサイズや偏平率に応じて変えることが望ましい。このため、刻印した二次元コードの大きさがタイヤのサイズや偏平率に応じて定まった目標寸法になっているか否かを検査することは好ましい。しかし、刻印した二次元コードの大きさが、目標寸法になっているか否かを検査する技術は知られていない。
【0007】
そこで、本発明は、二次元コードを、適切な位置にあるいは適切な方向に向けて刻印した空気入りタイヤを製造することができる空気入りタイヤの製造方法、空気入りタイヤに設けられた二次元コードの刻印を検査する検査方法、及び、適切な位置にあるいは適切な方向に設けられた二次元コードが刻印された空気入りタイヤ、この空気入りタイヤを製造するために用いる二次元コードが未刻印の空気入りタイヤの金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤは、
路面と接触するトレッド部と、
前記トレッド部をタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられたサイドウォール部と、
前記サイドウォール部に接続され、前記サイドウォール部に対してタイヤ径方向内側に位置するビード部と、を備える。
前記サイドウォール部あるいは前記ビード部のタイヤ側面部の表面は、
前記表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンが形成された二次元コードと、
前記二次元コードの外縁を、タイヤ径方向及びタイヤ周方向の少なくとも一方の両側から挟むように、タイヤ径方向及びタイヤ周方向のうち第1の方向の同じ位置に設けられ、かつ、タイヤ径方向及びタイヤ周方向のうち第2の方向の異なる位置に互いに分離して設けられた少なくとも2つの凸形状あるいは凹形状のマークと、を備える。
【0009】
前記マークは、前記マークから、大きさと向きと前記側面上の位置とが特定される四角形枠を定める目印であり、
前記二次元コードの外縁は、前記四角形枠内に、前記四角形枠と接することなく設けられている、ことが好ましい。
【0010】
前記外縁と前記四角形枠の間の前記表面の領域は、平滑面である、ことが好ましい。
【0011】
前記二次元コードは、前記二次元コードの前記外縁で囲まれた前記二次元コードの配置領域を格子状に分割した同一サイズの矩形形状の複数の単位セル領域に対応して、前記側面の凹凸のうち凹部それぞれが前記濃淡要素の濃い1つの単位セル領域を形成するように、前記凹部が配置された構成を有し、
前記二次元コードは、QRコード(登録商標)であり、
前記配置領域と前記四角形枠の間の離間距離は、少なくとも前記単位セル領域のサイズの8倍以上に対応する距離である、ことが好ましい。
【0012】
前記二次元コードの前記外縁は矩形形状であり、前記二次元コードの前記外縁の少なくとも一辺は、前記四角形枠の一辺に平行になるように、前記二次元コードは設けられている、ことが好ましい。
【0013】
前記マークは、2つであり、
前記マーク間の距離が、前記四角形枠の一辺の長さであり、
前記マークの配列方向が、前記四角形の一辺に平行である、ことが好ましい。
【0014】
前記マークは、前記タイヤ径方向の同じ位置に設けられ、かつ、前記タイヤ周方向の異なる位置に設けられた一対のマークAと、前記一対のマークAの前記タイヤ径方向の位置と異なる位置であって、互いに前記タイヤ径方向の同じ位置に設けられ、かつ、前記タイヤ周方向の異なる位置に設けられた一対のマークBとを含み、
前記四角形枠の頂点は、前記一対のマークA及び前記一対のマークBの位置にある、ことが好ましい。
【0015】
本発明の他の一態様は、空気入りタイヤのサイドウォール部あるいはビード部のタイヤ側面部の表面に二次元コードを刻印する前の未刻印空気入りタイヤを製造する金型である。
前記未刻印空気入りタイヤの前記タイヤ側面と接触する金型の内表面は、
前記二次元コードを刻印するための平滑面を有する二次元コードの配置予定領域に対応する平滑面の対応配置予定領域の外縁をタイヤ径方向に対応する金型径方向あるいはタイヤ周方向に対応する金型周方向の両側から挟むように、金型径方向及び金型周方向のうち第3の方向の同じ位置に設けられ、かつ、金型径方向及び金型周方向のうち第4の方向の異なる位置に互いに分離して設けられた少なくとも2つの凹形状孔あるいは凸形状突起を備える。
【0016】
本発明の他の一態様は、前記空気入りタイヤのタイヤ側面に刻印された二次元コードの刻印を検査する検査方法であって、
取得した前記画像から、前記画像上の画素の単位で表した前記マーク間の画像ベース距離を求めるステップと、
前記タイヤ側面上の前記マーク間の距離と前記画像ベース距離との情報から求まる前記画像上の1画素に対応する単位距離を用いて、前記タイヤ側面上の前記二次元コードの大きさ、前記表面上の前記二次元コードの配置領域の、前記マークから定まる二次元コードの配置予定領域に対する位置ずれ量、及び、前記表面上の前記二次元コードの配置領域の、前記二次元コードの配置予定領域に対する傾斜量の少なくとも1つを求めるステップと、
前記二次元コードの大きさ、前記位置ずれ量、及び前記傾斜量の少なくとも1つを、対応する規格寸法と比較することにより、前記二次元コードの刻印位置の良否を判定するステップと、を有する。
【0017】
前記規格寸法のうち、前記二次元コードの大きさは、前記表面の凹凸によって周囲の領域と識別可能に形成されたマーク、記号、あるいは数値によって表された、前記二次元コードの周囲に設けられた表示情報に含まれ、
前記表示情報の画像を取得して画像処理を行うことにより、前記二次元コードの大きさの情報を取得する、ことが好ましい。
【0018】
本発明のさらに他の一態様は、路面と接触するトレッド部と、前記トレッド部をタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられたサイドウォール部と、前記サイドウォール部に接続され、前記サイドウォール部に対してタイヤ径方向内側に位置にあるビード部と、を備えた空気入りタイヤのタイヤ側面に二次元コードを刻印して空気入りタイヤを製造する方法である。
前記サイドウォール部あるいは前記ビード部のタイヤ側面は、前記二次元コードの配置予定領域の外縁をタイヤ径方向あるいはタイヤ周方向の両側から挟むように、タイヤ径方向及びタイヤ周方向のうち第1の方向の同じ位置に設けられ、かつ、タイヤ径方向及びタイヤ周方向のうち、第2の方向の異なる位置に互いに分離して設けられた少なくとも2つの凸形状あるいは凹形状のマークを備える。
当該製造方法は、
前記タイヤ側面の画像から検出した前記画像上の前記マークの位置に基づいて、前記画像上の前記二次元コードの配置予定領域を決定するステップと、
決定した前記二次元コードの配置予定領域に基づいて前記タイヤ側面上の前記二次元コードの配置予定領域を特定し、特定した前記タイヤ側面上の前記二次元コードの配置予定領域に、レーザ光を照射することにより、前記タイヤ側面にドット孔を形成して前記二次元コードを刻印するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
上述の空気入りタイヤの金型及び空気入りタイヤを製造する方法によれば、二次元コードを、空気入りタイヤの適切な位置にあるいは適切な方向に刻印することができる空気入りタイヤを提供することができる。上述の空気入りタイヤによれば、空気入りタイヤは、適切な位置にあるいは適切な方向に向いて設けられた、目標寸法の大きさを有する二次元コードを備えることができる。また、上述の二次元コードの刻印を検査する検査方法によれば、空気入りタイヤに設けられた二次元コードの刻印の位置あるいは二次元コードの向きを検査することができ、さらに二次元コードの大きさが目標寸法になっているか否かを検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態の空気入りタイヤの構成の一例を示す図である。
図2】一実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール部あるいはビード部のタイヤ側面の一部である、標章と二次元コードを含む領域の例を示す図である。
図3】一実施形態のマークによって定まる四角形枠の位置と向きを説明する図である。
図4】一実施形態の二次元コードの構成の一例を説明する図である。
図5】(a)〜(g)は、本実施形態のマークの他の形態の例を示す図である。
図6】一実施形態で用いる金型の内表面の一例を説明する図である。
図7】一実施形態のタイヤの製造方法において、未刻印タイヤのタイヤ側面に二次元コードを刻印する刻印装置を説明する図である。
図8】一実施形態のタイヤの二次元コードの刻印の検査を行う検査装置の例を説明する図である。
図9】(a),(b)は、二次元コードの位置ずれ及び傾斜の例を説明する図である。
図10】(a),(b)は、一実施形態で用いる表示情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態の空気入りタイヤ、空気入りタイヤの金型、二次元コードの刻印を検査する検査方法、及び空気入りタイヤを製造する方法について詳細に説明する。
【0022】
(定義)
本明細書において、タイヤ幅方向は、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向である。タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を表すタイヤセンターラインCL(図1参照)から離れる側である。また、タイヤ幅方向内側は、タイヤ幅方向において、タイヤセンターラインCLに近づく側である。タイヤ周方向は、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。タイヤ径方向は、空気入りタイヤの回転軸に直交する方向である。タイヤ径方向外側は、前記回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ径方向内側は、前記回転軸に近づく側をいう。
【0023】
本明細書で言う二次元コードは、横方向にしか情報を持たない一次元コード(バーコードに対し、二方向に情報を持つマトリックス表示方式のコードである。二次元コードとして、例えば、QRコード(登録商標)、データマトリクス(登録商標)、Maxicode、PDF−417(登録商標)、16Kコード(登録商標)、49コード(登録商標)、Aztecコード(登録商標)、SPコード(登録商標)、ベリコード(登録商標)、及び、CPコード(登録商標)を含む。
【0024】
(空気入りタイヤ)
図1は、一実施形態の空気入りタイヤ10(以降、単にタイヤ10という)の構成の一例を示す図である。図2は、タイヤ10のサイドウォール部あるいはビード部のタイヤ側面の、標章50と二次元コード52を含む領域の例を示す図である。
【0025】
タイヤ10は、トレッドパターンを有するトレッド部10Tと、一対のビード部10Bと、トレッド部10Tの両側に設けられ、一対のビード部10Bとトレッド部10Tに接続される一対のサイドウォール部10Sと、を備える。トレッド部10Tは路面と接触する部分である。サイドウォール部10Sは、トレッド部10Tをタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられた部分である。ビード部10Bは、サイドウォール部10Sに接続され、サイドウォール部10Sに対してタイヤ径方向内側に位置する部分である。
【0026】
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ12と、ベルト14と、ビードコア16と、を有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
【0027】
カーカスプライ12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材で構成されている。カーカスプライ12は、ビードコア16の周りに巻きまわされてタイヤ径方向外側に延びている。カーカスプライ12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるベルト14が設けられている。ベルト14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材で構成され、下層のベルト材14aのタイヤ幅方向の幅は上層のベルト材14bのタイヤ幅方向の幅に比べて長い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードの傾斜方向は互いに逆方向である。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ12の膨張を抑制する。
【0028】
ベルト14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム部材18が設けられ、トレッドゴム部材18の両端部には、サイドゴム部材20が接続されてサイドウォール部10Sを形成している。サイドゴム部材20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわした後のカーカスプライ12の部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム部材26が設けられている。
この他に、ベルト材14bとトレッドゴム部材18との間には、ベルト14のタイヤ径方向外側からベルト14を覆う、有機繊維をゴムで被覆した2層のベルトカバー30を備える。
【0029】
(タイヤ側面)
図2は、タイヤ10のサイドウォール部10Sあるいはビード部10Bのタイヤ側面11の一部である、標章50と二次元コード60を含む領域の例を示す図である。標章50は、“Y”を変形した文字あるいは符号と“YOKOHAMA”の文字を組み合わせた登録商標である。標章50は、タイヤ10の製造メーカとして見る者に容易に視認できるように設けられている。標章50のタイヤ周方向Cの横に、二次元コード60が設けられている。二次元コード60の四隅の外側には、マーク52が設けられている。マーク52は、その周囲のタイヤ側面11に対して、タイヤ側面11の法線方向に突出した凸形状を成している。マーク52は、凸形状であるが、一実施形態によれば、周囲のタイヤ側面11に対して、タイヤ側面11の法線方向に凹んだ凹形状である。このような凸形状あるいは凹形状のマーク52は、見る者に対して視認可能であり、タイヤ側面11を撮像した画像においても、画像処理によりマーク52の位置及び形状を抽出できる程度に寸法(マーク52の大きさ、突出高さあるいは凹み深さ)を有する。マーク52の大きさは、例えば、0.25mm〜100.0mmの面積の円形状、矩形形状、あるいは、特定の形状を成している。マーク52bの突出高さあるいは凹み深さは、例えば0.3mm〜5.0mmである。
【0030】
マーク52の少なくとも2つは、二次元コード60の外縁を、タイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cの両側から挟むように、タイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cのうち第1の方向の同じ位置に設けられ、かつ、タイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cのうち第2の方向の異なる位置に互いに分離して設けられている。一実施形態によれば、4つのマーク52の中心位置を直線で結ぶ形状は四角形形状であり、矩形形状あるいは略矩形形状であることが好ましく、この四角形形状の中に二次元コード60が設けられている。以降、矩形形状あるいは略矩形形状を纏めて矩形形状という。すなわち、この矩形形状は、マーク52から、大きさと向きとタイヤ側面11の表面上の位置とが特定される、後述する矩形枠(四角形枠)54である。
4つのマーク52は、例えば、タイヤ径方向Rの同じ位置に設けられ、かつ、タイヤ周方向Cの異なる位置に設けられた一対のマーク(マークA)と、この一対のマークのタイヤ径方向Rの位置とは異なる位置で、互いにタイヤ径方向Rの同じ位置に設けられ、かつ、タイヤ周方向Cの異なる位置に設けられた一対のマーク(マークB)とを含む。
このようなマーク52は、二次元コード60を、未刻印のタイヤのタイヤ側面11に刻印する際、適切な位置に、適切な向きに向けて刻印するための位置合わせのための目印とすることができる。
また、マーク52は、タイヤ10に刻印された二次元コード60が適切な位置に、適切な向きに向けて刻印されているか、さらには、二次元コード60の大きさが目標寸法になっているか否かを検査する際の目印として用いることができる。二次元コードの検査及び刻印については、後述する。
【0031】
一実施形態によれば、マーク52は、マーク52から、大きさと向きとタイヤ側面11の表面上の位置とが特定される矩形枠(四角形枠)54(図3参照)を定める目印であり、二次元コード60の外縁は、矩形枠54内に、矩形枠54と接することなく設けられていることが好ましい。すなわち、二次元コード60は、矩形枠54の内部に設けられることが好ましい。また、言い換えると、マーク52の中心位置を直線で結んで作られる形状が四角形形状、例えば矩形形状あるいは略矩形形状であって、この四角形形状の枠の内側に二次元コード60が設けられるように、マーク52間の距離と位置が定められていることが好ましい。二次元コード60の刻印を検査する場合や二次元コード60を読み取る場合、この矩形枠54の内部を探せば確実に二次元コード60を抽出することができる。図3は、矩形枠54の位置と向きを説明する図である。
特に、二次元コード60の外縁と矩形枠54の間のタイヤ側面11の表面の領域は、リッジや表面凹凸のない平滑面56であることが好ましい。矩形枠54の外側に、サイド模様や標章の表示のためのリッジ状の凹凸があっても、二次元コード60の表面凹凸を計測して二次元コード60の情報を読み取る場合において、サイド模様を構成するリッジが矩形枠54に接する程度に近接して設けられても、平滑面56によってリッジと二次元コード60の表面凹凸との区別が容易につくので、二次元コード60を特定して読み取ることが容易にできる。この平滑面56における表面粗さ(算術平均粗さRa:JIS B0601 2001)は、25μm以下であり、好ましくは2〜10μmである。この表面粗さ(算術平均粗さRa)は、矩形枠54の周りにある平滑面の表面粗さに比べて小さいことが好ましい。
【0032】
一実施形態によれば、タイヤ側面11に刻印される二次元コード60は、二次元コード60の単位セルCellのうち濃領域(図4参照)の単位セル領域Cellを表すドットに1つのドット孔(凹部)が設けられて構成されている。二次元コード60は、図4に示すように、二次元コード60の外縁で囲まれた二次元コード60の配置領域を格子状に分割した同一サイズの矩形形状の複数の単位セル領域Cellに対応して、表面の凹凸のうちドット孔(凹部)それぞれが濃淡要素の濃い1つの単位セル領域Cell(濃領域)を形成するように、ドット孔(凹部)が配置された構成を有する。例えば、1つの濃領域に1つのドット孔が形成される。図4は、二次元コード60の構成の一例を説明する図である。図4中、濃領域は、黒く塗りつぶされた領域で示されている。
この場合、一実施形態によれば、二次元コード60の配置領域と矩形枠54との間の離間距離L1〜L4(L1〜L4は、矩形枠54と二次元コード60の配置領域の外縁の対向する辺の最大の離間距離)は、少なくとも単位セル領域CellのサイズSize(図4参照)の8倍以上に対応する距離であることが好ましい。ここで、単位セル領域CellのサイズSizeとは、単位セル領域Cellが正方形形状である場合は、正方形形状の一辺の長さであり、長方形形状である場合は、長方形形状の長辺の長さである。離間距離L1〜L4は、サイズSize(図4参照)の20倍以下に対応する距離であることが好ましい。離間距離L1〜L4を上述のように規定することにより、二次元コード60の配置領域(矩形形状)の頂点の位置が、配置予定領域の頂点の位置に対してずれていても、矩形枠54からはずれることがなく、二次元コード60の表面凹凸を計測して二次元コード60の情報を読み取る場合においても確実に、矩形枠54の周囲に設けられたリッジの凹凸と区別して二次元コード60を特定して容易に読み取ることができる。
また、二次元コード60の外縁は矩形形状であり、二次元コード60の外縁の辺は、矩形枠54の辺に平行になるように、二次元コード60は設けられることが好ましい。
【0033】
マーク52の代わりに、矩形枠54のように二次元コード60を一周囲む形態の場合、タイヤのサイド模様として矩形枠が目立ち、サイドデザインの点で好ましくない他、矩形枠の凹凸から矩形枠の各辺の幅の中心を見出し難いため、二次元コード60の位置ずれの量や向きの傾斜量を正確に求めることは難い。このため、4つのマーク52は、二次元コード60の配置領域をタイヤ周方向C及びタイヤ径方向Rの両側から挟むように、タイヤ周方向Cあるいはタイヤ径方向Rに離間したマークとなっている。
【0034】
図5(a)〜(g)は、マーク52の別の形態の例を示す図である。これらのマーク52によって、大きさと向きと位置とが特定される矩形枠54を定めることができる。
各マーク52の形状は、矩形形状、円形状、それ以外の形状であってもよい。
図5(a),(b)に示すように、マーク52は2つであってもよく、2つのマーク52の中心位置を結んだ線分を一辺とする正方形形状の矩形枠54を定めることができる。タイヤ周方向Cの同じ位置にマーク52がある場合、マーク52に対して、タイヤ周方向の一方の側(図5(a)に示す例では、右側)に矩形枠54が設定され、タイヤ径方向Rの同じ位置にマーク52がある場合、マーク52に対して、タイヤ径方向の一方の側(図5(b)に示す例では、上側)に矩形枠54が設定されるように予め決めておく。
また、図5(c),(d)に示すように、4つまたは2つのマーク52の中心位置のそれぞれが一辺の中心点となる、正方形形状の矩形枠54を定めることができる。図5(d)に示す2つのマーク52の場合、マーク52の中心位置が、対向する二辺それぞれの中心点となる、正方形形状の矩形枠54を定めることができる。
矩形枠54が、4辺全て同じ長さである正方形形状である場合、2つのマーク52間の距離により、正方形形状の矩形枠54を一義的に定めることはできるが、矩形枠54が長方形状の場合、2つのマーク52により、直方形状の矩形枠54を一義的に定めることはできない。このため、以下のような取り決めを予め設けておくことが好ましい。例えば、2つのマーク52間の線分は、定めようとする矩形枠54の長方形状の長辺(あるいは短辺)に平行であり、長辺(あるいは短辺)の長さがこの線分の長さに対応し、一方、短辺(あるいは長辺)の長さは、長辺(あるいは短辺)の長さに一定の倍率を掛け算した長さに対応するといった取り決めを設けることが好ましい。これにより、2つのマーク52により長方形状の矩形枠54も定めることができる。
さらに、各マーク52の形状は、図5(e)に示すL型に屈曲した屈曲形状(マーク52の屈曲部の屈曲点に矩形枠54の1つの頂点がくるように定める)、図5(f)に示す三角形状(マーク52の三角形状の1つの頂点に矩形枠54の1つの頂点がくるように定める)、あるいは、図5(g)に示す星型形状(マーク52の中心位置に矩形枠54の1つの頂点がくるように定める)としてもよい。
【0035】
このように、マーク52が2つの場合、一実施形態によれば、マーク52間の距離が、矩形枠54の一辺の長さであり、マーク52の配列方向が、矩形枠54の一辺に平行であることが好ましい。
また、マーク52は、一対のマーク52を2対含む、すなわち、4つである場合、一実施形態によれば、矩形枠54の頂点は、マーク52の位置、例えば中心位置にあることが好ましい。
【0036】
本実施形態でタイヤ側面11に刻印される二次元コード60は、二次元コード60の単位セル領域Cellのうち濃領域の単位セル領域Cellを表すドットに1つの凹部(ドット孔)が設けられて構成されている。
【0037】
(金型)
このようなタイヤ10は、未刻印タイヤを加硫によって作製した後、二次元コード60を所定の位置に適正な向きに向いた二次元コード60を刻印する。
このような未刻印タイヤを製造するタイヤ金型の一実施形態を、図6に示す。図6は、一実施形態の金型の内表面の一例を説明する図である。
図6に示すように、未刻印タイヤのタイヤ側面と接触する金型の内表面111は、標章50に対応した対応標章領域150と、4つの凹形状孔の対応マーク領域152と、を備える。さらに、内表面111は、二次元コード60を刻印するための平滑面56を有する二次元コードの配置予定領域に対応する平滑面の対応配置予定領域156を備える。対応マーク領域152は、対応配置予定領域156の外縁を、金型径方向MRあるいは金型周方向MCの両側から挟むように、金型径方向MR及び金型周方向MCのうち第3の方向の同じ位置に設けられ、かつ、金型径方向MR及び金型周方向MCのうち第4の方向の異なる位置に互いに分離して設けられる。金型径方向MRはタイヤ径方向Rに対応する方向であり、金型周方向MCは、タイヤ周方向Cに対応する方向である。
他の一実施形態によれば、内表面111は、4つの対応マーク領域152の代わりに、2つの凸形状の対応マーク領域152を備えることも好ましい。
他の一実施形態によれば、内表面111は、2つあるいは4つの凹形状孔である対応マーク領域152の代わりに、2つあるいは4つの凸形状突起の対応マーク領域を備えることも好ましい。
このような金型を用いて、二次元コード60の配置予定領域が平滑面となっている、二次元コード60が未刻印の未刻印タイヤを加硫によって作製することができる。
【0038】
(二次元コードの刻印)
図7は、未刻印タイヤ110のタイヤ側面112に二次元コード60を刻印する刻印装置70を模式的に説明する図である。
刻印装置70は、レーザ照射ユニット72と、刻印制御ユニット74と、を備える。刻印装置70は、レーザ光の照射のオン/オフを行って、刻印しようとする二次元コード60のドットパターンの単位セル領域Cellの濃領域に対応する部分に1つのドット孔を形成することにより、所望のドットパターンのドット孔を形成させる装置である。したがって、レーザ光の照射によってタイヤ側面11のゴムが熔融し揮発する程度に高エネルギ密度のレーザ光がタイヤ側面11に点状に照射される。レーザ光によるドット孔の形成は、レーザ照射ユニット72から照射するレーザ光のタイヤ側面11上の照射位置をタイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cにタイヤ10に対して相対的に移動させながら行う。
レーザ照射ユニット72は、さらに、タイヤ側面11の画像を撮像するセンサを含む。撮像した画像は、刻印制御ユニット74で画像処理が施されるように構成される。刻印制御ユニット74は、さらに、撮像した画像から、この画像中のマーク52の位置を特定し、このマーク52の位置に基づいて、二次元コード60を刻印する二次元コード60の配置予定領域を、平滑面56上に決定する。二次元コード60の配置予定領域は、マーク52から定まる矩形枠54の4つの頂点の位置から所定の距離離れた4つの位置を、矩形形状の4つの頂点の位置とするように、決定される。マーク52の位置を特定する方法は、タイヤ側面11の撮像画像を画像処理して行う方法に限定されない。一実施形態によれば、タイヤ側面11の表面凹凸を計測し、この表面凹凸のデータを画像化した表面凹凸画像から、刻印制御ユニット74が凸形状あるいは凹形状のマーク52の位置を特定することも好ましい。あるいは、作業者がモニターで確認できる画像中のマーク52の位置に基づいて、二次元コード60を刻印する二次元コード60の配置予定領域を、平滑面56上に決定しても構わない。
【0039】
このため、二次元コード60を刻印してタイヤ10を製造する際、
(1)刻印制御ユニット74は、マーク52を含むタイヤ側面11の画像から検出した画像上のマーク52の位置に基づいて、画像上の二次元コード60の配置予定領域を決定する。
(2)次に、刻印制御ユニット74は、決定した画像上の二次元コード60の配置予定領域に基づいてタイヤ側面11の表面上の二次元コード60の配置予定領域を特定し、特定したタイヤ側面11の表面上の二次元コード60の配置予定領域に、レーザ照射ユニット72からレーザ光を照射させることにより、タイヤ側面11の表面にドット孔を形成して二次元コード60を刻印する。タイヤ側面11の表面上の二次元コード60の配置予定領域を特定する場合、マーク52を目印として配置予定領域を特定することができる。
【0040】
レーザ光を用いてタイヤ側面11のタイヤ径方向Rの異なる位置にドット孔を形成するとき、レーザ光を傾斜させてタイヤ側面11上を移動させる。しかも、タイヤ側面11は、タイヤ幅方向外側に凸状に湾曲した湾曲形状であるため、上記レーザ光の傾斜と、タイヤ側面11の湾曲形状が相乗的に作用して、ドット孔のサイズが異なり、二次元コード50のタイヤ径方向Rに沿った単位セル領域Cellの長さが変化する。すなわち、刻印した二次元コード60ではタイヤ径方向Rに歪みが生じ易い。このような歪は二次元コード60の読み取りの際に、誤った読み取り結果を引き起こし易い。したがって、誤った読み取りを抑制するために上記歪を小さくすることが好ましい。したがって、タイヤ10のサイズや偏平率によってタイヤ側面11の湾曲形状の湾曲の程度は異なるため、歪の少ない二次コード60を実現する配置予定領域は予め定められる。このような配置予定領域に二次元マーク60が設けられるように、マーク52の位置は定められる。このため、二次元コード60は、マーク52に基づいて定まる配置予定領域に精度良く刻印される
ことが好ましい。
刻印制御ユニット74が、マーク52に基づいて定まる配置予定領域に、湾曲形状の影響を抑えるように補正しながら二次元コード60を刻印したとしても、タイヤ10は弾性体であるのでタイヤ10のサイド部の湾曲形状が変化し、あるいはタイヤ10をハンドリングする位置決め装置などの誤差によって、刻印制御ユニット74が実際に刻印した位置は配置予定領域からずれ易い。
このため、二次元コード60が刻印されたタイヤ10において、二次元コード60の刻印を検査することが望まれる。
【0041】
(二次元コードの検査)
図8は、タイヤ10のタイヤ側面11に刻印された二次元コード60の刻印を検査する検査装置80の例を模式的に説明する図である。
検査装置80は、計測ユニット82と検査制御ユニット84とを備える。計測ユニット82は、二次元コード60及びマーク52を撮像する撮像素子を備え、撮像した画像を検査制御ユニット84に送る。検査制御ユニット84は、撮像した画像を画像処理し、刻印された二次元コード60の位置及び向きを求め、さらに、マーク52の中心の位置を求める。これらの情報を用いて、検査制御ユニット84は、二次元コード60の大きさ、マーク52に対する位置ずれ量、及びマーク52に対する傾斜量を求めることにより、二次元コード60の刻印の良否を判定する。
【0042】
なお、検査装置80は、二次元コード60及びマーク52の計測を撮像することにより行う形態であるが、これに限定されない。一実施形態によれば、撮像素子を用いた二次元コード60及びマーク52の撮像の代わりに、二次元コード60及びマーク52の表面凹凸の形状計測を行うことも好ましい。この場合、検査制御部84は、形状計測によって得られる形状計測データから、二次元コード60及びマーク52の凹凸を画素値で表した画像を用いて、二次元コード60の大きさ、マーク52に対する位置ずれ量、及びマーク52に対する傾斜量を求める。
【0043】
このような検査装置80を用いて、二次元コード60の刻印を検査する際、
(1)計測ユニット82が、マーク52及び二次元コード60の画像を取得する。
(2)検査制御ユニット84は、取得した画像から、画像上の画素の単位で表したマーク52間の画像ベース距離(図3に示すP1〜P4)を求める。
(3)さらに、検査制御ユニット84は、タイヤ側面11上のマーク52間の既知の距離と画像ベース距離との情報から画像上の1画素に対応する単位距離を求める。検査制御ユニット84は、この単位距離を用いて、画像上の二次元コード60の寸法(画素単位の寸法)から、タイヤ側面11上の二次元コード60の大きさ、タイヤ側面11の表面上の二次元コード60の配置領域の、マーク52から定まる二次元コード60の配置予定領域に対する位置ずれ量、及び、タイヤ側面11の表面上の二次元コード60の配置領域の、二次元コード60の配置予定領域に対する傾斜量を求める。
(4)検査制御ユニット84は、二次元コード60の大きさ、位置ずれ量、及び傾斜量を、対応する規格寸法と比較することにより、二次元マコード60の刻印位置の良否を判定する。
【0044】
図9(a),(b)は、二次元コード60の位置ずれ及び傾斜の例を説明する図である。
図9(a)に示すように、検査制御ユニット84は、二次元コード60の外縁に接する4つの直線Line1〜4を画像処理によって求める。さらに、検査制御ユニット84は、この4つの直線Line1〜4の交点を計算し、交点C1〜C4の画像上の座標を求める。図示される例では、交点C1の座標は(x1,y1)であり、交点C2の座標は(x2,y2)であり、交点C3の座標は(x3,y3)であり、交点C4の座標は(x4,y4)である。一方、検査制御ユニット84は、画像上のマーク52それぞれの中心の位置座標を求め、この座標を用いて、画像上の矩形枠54の4つの辺を表す4つの直線を求める。したがって、図9(b)に示すように、交点C1〜C4の、矩形枠54の各辺からの距離dx1〜dx4,dy1〜dy4を求めることができる。
【0045】
検査制御ユニット84は、距離dx1〜dx4,dy1〜dy4のそれぞれに、上述した画像上の1画素に対応する単位距離を乗算し、乗算した結果から予め定めた値αを減算した量を、タイヤ側面11上の二次元コード60の配置領域の、二次元コード60の配置予定領域に対する位置ずれ量として求める。予め定めた値αとは、二次元コード60の矩形形状の配置領域が、二次元コード60の配置予定領域に対して位置ずれがないときの理想的な配置状態における、矩形枠54の頂点と二次元コード60の配置領域の対応する頂点との間の2方向の距離である。配置領域の頂点のそれぞれに対して位置ずれ量が求められるが、位置ずれ量のうち最大位置ずれ量を位置ずれ量として扱う。したがって、タイヤ側面11上の配置予定領域とは、マーク52から定まる矩形枠52の4つの頂点の位置座標から予め定めた値αを差し引いた位置座標を持つ4つの位置を頂点とする矩形形状の領域が、二次元コード60の配置予定領域となる。検査制御ユニット84は、二次元コード60の位置ずれ量と、対応する規格寸法とを比較して、位置ずれ量の良否を判定する。
また、検査制御ユニット84は、距離dx1と距離dx2の差分、距離dx1と距離dx3の差分、距離dx2と距離dx4の差分、あるいは距離dx3と距離dx4の差分に、上述した画像上の1画素に対応する単位距離を乗算した積を、タイヤ側面11上における二次元コード60の傾斜量として求める。検査制御ユニット84は、この傾斜量と対応する規格寸法とを比較して、傾斜量の良否を判定する。さらに、画像上の交点C1と交点C2の間の距離、交点C1と交点C3の間の距離、交点C2と交点C4の間の距離、あるいは交点C3と交点C4の間の距離に上述した画像上の1画素に対応する単位距離を乗算した積を、タイヤ側面11上における二次元コード60の大きさとして求める。検査制御ユニット84は、この大きさと、対応する規格寸法とを比較して、二次元コード60の大きさの良否を判定する。
【0046】
検査制御ユニット84は、二次元コード60の大きさ、位置ずれ量、及び傾斜量のいずれも、対応する規格寸法に対して許容範囲内で一致すると判定した場合、二次元コード60の刻印は合格と判定する。
なお、上述の実施形態では、二次元コード60の大きさ、位置ずれ量、及び傾斜量を検査するが、一実施形態によれば、二次元コード60の大きさ、位置ずれ量、及び傾斜量の少なくとも1つを検査対象とすることも好ましい。
【0047】
一実施形態によれば、二次元コード60の大きさの情報は、タイヤ側面11の凹凸によって周囲の領域と識別可能に形成されたマーク、記号、あるいは数値によって表された表示情報に含まれてもよい。この表示情報は、二次元コード60の周囲に設けられることが好ましい。計測ユニット82は、表示情報を、二次元コード60及びマーク52を計測するときに同時に計測し、検査制御ユニット84が計測によって得た表示情報の画像を画像処理することにより、二次元コード60の大きさの情報を取得してもよい。この情報は、大きさに関する規格寸法となる。
図10(a),(b)には、上記表示情報58の例を示す図である。図10(a)に示すように、大きさを表す数字を直接表示してもよい。図10(a)中の表示情報58である“168”は、大きさ16.8mmを意味する。また図10(b)に示すように、表示情報58は1次元コードで表示されてもよい。1次元コードは、一実施形態によれば、二次元コード60と同様に、刻印により設けられることが好ましい。
【0048】
上述の実施形態では、未刻印のタイヤのタイヤ側面11に、凹形状あるいは凸形状のマーク52が設けられる。このマーク52は、二次元コード60の配置予定領域の外縁を、タイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cの少なくとも一方の両側から挟むように、タイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cのうち第1の方向の同じ位置に設けられ、かつ、タイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cのうち第2の方向の異なる位置に互いに分離して設けられている。このため、二次元コード60を適切な位置に、あるいは適切な方向に向けて刻印することが容易にできる。すなわち、上述の実施形態は、適切な位置にあるいは適切な方向に刻印された二次元コードを備える空気入りタイヤを提供することができる。
さらに、タイヤ10には、タイヤ側面11に二次元コード60と上記マーク52が設けられるので、二次元コード60が適切な位置にあるか、適切な方向に向けて刻印されているか、さらに二次元コード60の大きさは目標寸法になっているか否かを検査することが容易にできる。
【0049】
以上、本発明の空気入りタイヤ、空気入りタイヤの金型、二次元コードの刻印を検査する検査方法、及び空気入りタイヤを製造する方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更してもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
10 空気入りタイヤ
11,112 タイヤ側面
12 カーカスプライ
14 ベルト
14a,14b ベルト材
16 ビードコア
18 トレッドゴム部材
20 サイドゴム部材
22 ビードフィラーゴム部材
24 リムクッションゴム部材
26 インナーライナゴム部材
30 ベルトカバー
50 標章
52 マーク
54 矩形枠
56 平滑面
58 表示情報
60 二次元コード
70 刻印装置
72 レーザ照射ユニット
74 刻印制御ユニット
80 検査装置
82 計測ユニット
84 検査制御ユニット
110 未刻印タイヤ
111 内表面
150 対応標章領域
152 対応マーク領域
156 対応配置予定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10