(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562211
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 5/00 20060101AFI20190808BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C19/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-239139(P2015-239139)
(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-105270(P2017-105270A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 一泰
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋介
(72)【発明者】
【氏名】堀川 省吾
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−049749(JP,A)
【文献】
特開平03−188165(JP,A)
【文献】
国際公開第00/078562(WO,A1)
【文献】
特開平05−240299(JP,A)
【文献】
特開平06−256672(JP,A)
【文献】
特開2005−262920(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0205183(US,A1)
【文献】
特開平10−305715(JP,A)
【文献】
特開2011−190410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00、19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料と導電材料とが混合された高分子材料により形成され、厚みが0.1〜5mm(ただし、0.1mmを除く)の制振層がタイヤ内表面に配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記制振層の幅は、タイヤ接地幅の50〜120%であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記制振層は、タイヤ周方向又はタイヤ幅方向に分割されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記制振層は、タイヤ内周面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞共鳴音を低減し得る空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が荒れた路面を走行したり、路面の継ぎ目を乗り越えたりすると、車内にロードノイズと呼ばれる騒音が発生することがある。ロードノイズは、タイヤが関係する騒音の一つであり、路面の凹凸が入力となってタイヤが加振されると、その振動によってタイヤ内部での空洞共鳴音が励起され、車内での騒音を引き起こす。
【0003】
下記の特許文献1には、ロードノイズを低減する目的で、リムと空気入りタイヤとで囲まれるタイヤ内腔にスポンジ材からなる制音材を配した空気入りタイヤが記載されている。しかしながら、このようなスポンジ材をタイヤ全周に亘って配置すると、スポンジ材とタイヤ内表面との間に熱がこもり、耐久性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、タイヤ内表面にスポンジ材があると、タイヤがパンクした際にパンク修理剤を使用することが困難である。
【0004】
下記の特許文献2には、互いに電気的に接続された二つの圧電素子を含む少なくとも一つの圧電素子ユニットを備え、各圧電素子はトレッド部のタイヤ周方向に異なる位置に埋設され、トレッド部の変形により一方の圧電素子が変形して電圧を発生すると、当該電圧が他方の圧電素子に与えられ、当該他方の圧電素子が変形する静音タイヤが記載されている。特許文献2のタイヤによれば、当該他方の圧電素子周辺でタイヤ内部の断面積が変化することになるので、トレッド部の変形により発生する圧力波の共鳴を抑制して、空洞共鳴音を低減することができる。しかしながら、特許文献2のタイヤは、トレッド部に圧電素子が埋設されているため、耐久性が悪化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4330550号公報
【特許文献2】特開2006−240423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、耐久性を低下させることなく、空洞共鳴音を低減できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の空気入りタイヤは、圧電材料と導電材料とが混合された高分子材料により形成された制振層がタイヤ内表面に配置されているものである。
【0008】
上記目的を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、タイヤ内表面の振動を抑えることで、タイヤ内の空気振動を抑制し、空洞共鳴音を効果的に低減することが可能であることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、制振層をタイヤ内表面に配置することで、タイヤ内表面の振動を直接的に抑え、タイヤ内の空気振動を抑制して空洞共鳴音を低減することができる。本発明の制振層は、圧電材料と導電材料とが混合された高分子材料により形成されているため、タイヤ内表面の振動エネルギーを圧電材料によって電気エネルギーに変換し、次いで、電気エネルギーを導電材料によって熱エネルギーに変換することにより、タイヤ内表面の振動を減衰させる。また、タイヤ内表面を構成するインナーライナーゴムと相性のよい高分子材料を用いることで、制振層とタイヤ内表面との間に熱がこもって耐久性が悪化するのを防止できる。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記制振層の幅は、タイヤ接地幅の50〜120%であることが好ましい。
【0010】
制振層の幅がこの範囲であれば、制振層によりタイヤ内表面の振動を効果的に抑えつつ、制振層によるタイヤ重量の増加を抑制できる。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記制振層は、タイヤ周方向又はタイヤ幅方向に分割されていることが好ましい。
【0012】
制振層をタイヤ周方向又はタイヤ幅方向に分割することで、タイヤの変形に追従しやすくなるため、制振層がタイヤ内表面から剥離するのを防止できる。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記制振層は、タイヤ内周面に貼り付けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、加硫成形後のタイヤに容易に制振層を適用して空洞共鳴音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
【
図3A】他の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図
【
図3B】他の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図
【
図3C】他の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図
【
図3D】他の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図
【
図3E】他の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図である。なお、
図1では、空気入りタイヤの内表面も示されている。
【0017】
空気入りタイヤ1は、
図1及び
図2に示されるように、一対の環状のビード部11と、そのビード部11の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部12と、そのサイドウォール部12の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部13とを備えている。
【0018】
空気入りタイヤ1は、タイヤ内表面1aにシート状の制振層2が配置されている。より具体的には、制振層2は、インナーライナーゴムの表面に隣接して配置されている。インナーライナーゴムは、不図示のカーカスプライの内周側に設けられてタイヤ内表面1aを構成する。インナーライナーゴムは、空気圧を保持するために設けられ、気体の透過を阻止する機能に優れたゴムで形成されている。
【0019】
制振層2は、圧電材料と導電材料とが混合された高分子材料により形成されている。制振層2は、タイヤ内表面1aの振動エネルギーを圧電材料の圧電効果によって電気エネルギーに変換し、次いで、電気エネルギーを導電材料によって熱エネルギーに変換することにより、タイヤ内表面1aの振動を減衰させることができる。その結果、タイヤ内の空気振動を抑制し、空洞共鳴音を低減することができる。本発明の制振層2は、空洞共鳴音の原因となる150〜300Hz、特に190〜250Hzの周波数の振動に対して制振作用を発揮するように圧電材料、導電材料、及び高分子材料の配合が調整されている。
【0020】
圧電材料としては、圧電効果を示す従来公知の圧電材料を適宜用いることができる。圧電材料としては、ペロブスカイト型結晶構造やタングステン−青銅構造を持つセラミックス、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、ニオブ酸ナトリウムカリウム、ビスマスフェライト、ニオブ酸ナトリウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ビスマスナトリウム、ポリフッ化ビニリデン、窒化アルミニウム、リン酸ガリウム、ガリウム砒素が例示される。
【0021】
導電材料としては、電気抵抗が比較的大きく、電流を流したときにジュール熱を発生するものであれば、従来公知の導電材料を適宜用いることができる。導電材料としては、金属系の銅、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、金属酸化物系の酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、金属被覆系の導電性フィラー、カーボン系のカーボンブラック等が例示される。
【0022】
高分子材料としては、ゴム、樹脂が例示される。ただし、高分子材料としては、タイヤ内表面1aを構成するインナーライナーゴムと相性のよいゴムを用いることが好ましい。
【0023】
制振層2は、タイヤ内表面1aに貼り付けられていることが好ましい。加硫成形後のタイヤ内表面1aに制振層2を貼り付ける場合には、貼り付ける領域に塗布されている離型剤を除去する必要がある。離型剤を除去する方法としては、界面活性剤や有機溶剤(トルエン等)を用いた拭き取り、バフ処理、レーザ処理、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。また、制振層2の貼り付けには、接着剤又は粘着テープが用いられる。
【0024】
制振層2は、そのボリュームが大きいほど制振効果が高くなる。制振層2の厚みは、0.1〜5mmが好ましく、1〜2mmがより好ましい。制振層2の厚みを0.1mmよりも薄くすると、制振層2による空洞共鳴音の低減効果が小さくなる。一方、制振層2の厚みを5mmよりも厚くすると、タイヤ重量の増加により燃費性能が悪化する傾向にある。また、制振層2は、全体の厚みを大きくするために2枚以上を重ねて配置されてもよい。
【0025】
制振層2は、空洞共鳴音を最大限低減する観点からは、タイヤ内表面1aの全面に配置されてもよい。ただし、制振層2のタイヤ幅方向の幅w2は、タイヤ接地幅w1の50〜120%であることが好ましく、80〜100%であることがより好ましい。制振層2の幅w2をタイヤ接地幅w1の50%より狭くすると、制振層2による空洞共鳴音の低減効果が小さくなる。一方、制振層2の幅w2をタイヤ接地幅w1の120%より広くすると、制振層2がサイドウォール部12に達するため、接地の際に変形が大きいサイドウォール部12の内表面から制振層2が剥離するおそれがある。また、制振層2の幅w2をタイヤ接地幅w1の120%より広くすると、タイヤ重量やコストの増加に繋がる。
【0026】
本実施形態の制振層2は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に連続しているが、制振層2は、タイヤ周方向又はタイヤ幅方向に分割されていることが好ましい。制振層2をタイヤ周方向又はタイヤ幅方向に分割することで、タイヤの変形に追従しやすくなるため、制振層2がタイヤ内表面から剥離するのを防止できる。
【0027】
図3Aは、制振層2がタイヤ周方向に分割されている例を示す。
図3Bは、制振層2がタイヤ幅方向に分割されている例を示す。
図3Cは、制振層2がタイヤ周方向及びタイヤ幅方向に分割されている例を示す。
【0028】
また、空洞共鳴音を最大限低減する観点から、分割された制振層2は隙間なく配置されるほうが好ましい。
図3Dは、タイヤ周方向に分割された制振層2が隙間なく並べられている例を示す。
図3Eは、タイヤ幅方向に分割された制振層2が隙間なく並べられている例を示す。なお、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に分割された制振層2を隙間なく並べてもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0030】
ノイズ計測
タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤを、凹凸路面を備えたドラムで60km/hにて走行させた際の音圧レベル(dB)を計測した。評価は、比較例1を100としたときの指数で示し、数値が小さいほど空洞共鳴音が小さいことを示す。評価結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
タイヤ内表面に何も設けないものを比較例1とした。
【0032】
比較例2
タイヤ内表面にシート状のゴムを配置したものを比較例2とした。比較例2のシート状ゴムは、圧電材料及び導電材料を含まず、またタイヤ周方向及びタイヤ幅方向に分割されていない。また、シート状ゴムの厚みは2mmとした。
【0033】
実施例1
タイヤ内表面に本発明の制振層を配置したものを実施例1とした。実施例1の制振層は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に分割されていない(
図1参照)。また、制振層の厚みは1mmとした。このとき、制振層の体積は、比較例2のゴム層の体積を100とすると50であった。
【0034】
実施例2
タイヤ内表面に本発明の制振層を配置したものを実施例2とした。実施例2の制振層は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に分割されていない(
図1参照)。また、制振層の厚みは2mmとした。このとき、制振層の体積は、比較例2のゴム層の体積を100とすると100であった。
【0035】
実施例3
タイヤ内表面に本発明の制振層を配置したものを実施例3とした。実施例3の制振層は、タイヤ周方向に分割されている(
図3A参照)。また、制振層の厚みは2mmとした。このとき、制振層の体積は、比較例2のゴム層の体積を100とすると94であった。
【0036】
実施例4
タイヤ内表面に本発明の制振層を配置したものを実施例4とした。実施例4の制振層は、タイヤ幅方向に分割されている(
図3B参照)。また、制振層の厚みは2mmとした。このとき、制振層の体積は、比較例2のゴム層の体積を100とすると87であった。
【0037】
実施例5
タイヤ内表面に本発明の制振層を配置したものを実施例5とした。実施例5の制振層は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に分割されている(
図3C参照)。また、制振層の厚みは2mmとした。このとき、制振層の体積は、比較例2のゴム層の体積を100とすると76であった。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果から以下のことが分かる。実施例1〜5の空気入りタイヤは、比較例1と比べて、空洞共鳴音を低減できた。なお、比較例2の空気入りタイヤは、ゴムに圧電材料及び導電材料が含まれないため、空洞共鳴音がほとんど低減しなかった。
【符号の説明】
【0040】
1 空気入りタイヤ
1a タイヤ内表面
2 制振層
w1 タイヤ接地幅
w2 制振層の幅