【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、高い屈折率を有する材料で作られる層が基板の表面エリアの少なくとも一部に適用され、続いて、その層の少なくとも一つの部分的領域が、アルカリ性溶液での処理により、基板から物理的に再び除去される、多層体の製造プロセスにより、達成される。
【0008】
以下では、高い屈折率を有する材料で作られる層を、HRI(High Refractive Index)層とも呼ぶ。
【0009】
そのようなアルカリ性溶液での処理は、除去する部分的な領域において、層を全体として分離させることが判明している。言い換えれば、屈折性の高い材料で作られる層は、アルカリ性溶液には化学的に溶解せず、ベースから物理的に剥離する。従って、このプロセスは、エッチングプロセスではない。この場合、例えば、塩酸による硫化亜鉛の溶解とは対照的に、例えば上の例では、硫化水素等の、有毒な副生成物が生じない。また、残存する、有毒な重金属溶液も存在しない。従って、このプロセスは、特に安全に実施可能であり、特別な安全の予防装置を必要とせず、また、環境的に無害である。また、部分的に層を除去するための既知の物理的プロセス、例えばレーザーアブレーションに比べて、設備費用もたいへん低く、達成可能なプロセス速度も、非常に速い。
【0010】
この目的は、また、多層体の製造プロセスであって、前記基板の少なくとも一つの第一の領域において、少なくとも一つの第一のレリーフ構造が該基板の第一の表面にモールドされ、続いて、高い屈折率を有する材料から作られる層が、少なくとも一つの前記第一の領域と、該第一のレリーフ構造が該基板の前記第一の表面にはモールドされない該基板の少なくとも一つの第二の領域とを、前記層が少なくとも部分的にカバーするように、該基板の前記第一の表面の表面エリアの少なくとも一部に適用され、続いて、少なくとも一つの前記第二の領域をカバーする前記部分的な領域において前記層が除去され、少なくとも一つの前記第一の領域をカバーする前記部分的な領域において前記層が該基板に残るように、前記層の部分的な領域が、液体での処理により、該基板から再び除去される、製造プロセスにより、達成される。
【0011】
基板へのHRI層の接着力は、滑らかな平面より、レリーフ構造の領域で非常に大きいことが判明している。このことは、HRI層の部分的な除去に利用することができる。このために、HRI層と滑らかな第二の領域における表面との境界接着力が、表面にHRI層を保持するにはもはや十分ではなく、第一の領域でのより大きな境界接着力が、HRI層を表面に結合し続ける条件が、設定される。このプロセスのバリエーションは、特に緩和な条件の場合、特に、アルカリ性溶液濃度が低い場合に、実施可能であり、その結果、感度の高い材料の組み合わせにも適している。また、液体として、十分な水を利用してもよい。
【0012】
このプロセスのバリエーションのさらなる利点は、残存するHRI層が、表面に形成されたレリ−フ構造と、正確な配置状態を維持することにある。従って、HRI層と対応する位置精度で配置されたレリ−フ構造との干渉から光学的効果が生じる、非常に繊細な構造及びパターンを作ることも可能である。
【0013】
この目的は、さらに、基板と、高い屈折率を有する材料で作られる層と、を有し、該基板の少なくとも一つの第一の領域において、少なくとも一つの第一のレリーフ構造が該基板の第一の表面にモールドされ、該層が、少なくとも一つの第二の領域をカバーする部分的な領域において除去され、少なくとも一つの第一の領域をカバーする部分的な領域において該基板に備えられるように、該層が該基板の前記第一の表面の表面エリアの一部に適用される、多層体、により達成される。
【0014】
このような多層体は、上述したプロセスにより、得ることができ、第一のレリーフ構造と、HRI層との間の特に良好な配置精度により、特徴付けされる。
【0015】
また、この目的は、高い屈折率を有する材料で作られ、少なくとも一つの部分的に形成されるさらなる機能層に対して正確な配置状態にある、多層体により、達成される。このような多層体も、上述したプロセスのバリエーションにより得ることができ、HRI層と部分的に形成された機能層との間の正確な配置状態の維持により、偽造に対して、特に安全である。
【0016】
前記高い屈折率を有する材料が、硫化亜鉛、酸化チタン、五酸化ニオビムから成るグループから選択される場合が、特に有利である。
【0017】
また、前記アルカリ性溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムから成るグループから選択される場合が、特に有利である。
【0018】
前記アルカリ性溶液のpH値は、少なくとも10であることが好ましく、これは、pH値が低いと、基板からのHRI層の信頼性の高い分離が確実でなくなるからである。好ましくは、アルカリ性溶液のpH値は、10.5から14、より好ましくは11から13の範囲である。
【0019】
pH値と、導電率に関する仕様は、温度に依存する。前述した値と、以下の全てのpH値と、導電率に関する仕様とは、略18℃から22℃の室温に関連している。
【0020】
前記アルカリ性溶液での前記処理は、10℃から80℃の温度で行われることが好ましい。
【0021】
通常、反応速度は、アルカリ性溶液の濃度及び温度で、増加する。プロセスのパラメータの選択は、プロセスの再現性と、多層体の耐性とにより、影響される。アルカリ性溶液での処理における影響因子は、通常、アルカリ性溶液槽の構成、特に、アルカリ性溶液の濃度、アルカリ性溶液槽の温度、及び、アルカリ性溶液槽において処理されるFRI層の流れ条件である。
【0022】
さらに、アルカリ性溶液での処理は、結果を最適化するために、時間に基づく温度特性を有してもよい。従って、開始時には低い温度の処理が行われ、処理期間が増すに従って、より高い温度の処理が行われてもよい。アルカリ性溶液槽では、これは、空間的な温度勾配により実現され、多層体は、異なる温度ゾーンを有する細長いアルカリ性溶液槽を通じて取り出されることが好ましい。
【0023】
前記層の分離を支援するために、前記層の力学的な処理が、前記アルカリ性溶液での前記処理の間及び/または後に行われることが好ましい。
【0024】
基板からのHRI層の力学的な分離は、HRI層の細かい穴に侵入するアルカリ性溶液に基づき、HRI材料のヒドロキソ錯体が、任意で形成されてもよい。これは、HRI層において、力学的なストレスを高め、最終的に、破片の形で、層の剥離をもたらす。従って、さらなる力学的な処理は、剥離プロセスを促進し、制御されて行われる。
【0025】
前記力学的な処理が、ブラシがけ、及び/または、スポンジでのワイプ、及び/または、ワイプローラー、及び/または、超音波処理、及び/または、流れの利用、及び/または、前記層への噴霧液を含むことが好ましい。
【0026】
さらなる好ましい実施形態において、前記層の除去されない少なくとも一つの部分的な領域を保護するために、前記アルカリ性溶液での前記処理の前に、マスク層が、前記層に適用される。マスク層は、アルカリ性溶液と反応しない材料から成ることが好ましい。従って、アルカリ性溶液とHRI層との接触を防ぎ、その結果、マスク層でカバーされる部分的な領域では、アルカリ性溶液での処理の間に、HRI層が基板から分離できない。これは、HRI層において、所望のパターン及び構造の形成を可能とする。用いられるアプリケーションプロセスに応じて、0.05から0.2mmの構造解像度が、達成可能である。この大きさは、例えば、鮮明に実現可能なラインまたは格子点の最小幅を意味する。マスク層を適用するために用いられるプリントローラーの構造化は、大幅に微細化されてもよい。また、マスク層は、任意で、より細かく印刷されてもよい。構造解像度は、HRI層の構造化までの全プロセスを考慮し、プロセスの制御と、用いられる材料、例えば印刷ラッカーとに応じて、大きな差異が生じ得る。
【0027】
前記マスク層は、前記層への保護ラッカーの印刷により、特に、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、または、インクジェット印刷により、適用されることが好ましい。インクジェット印刷の場合は、特に、それぞれ個別に形成された多層体に、個別の識別情報、例えば、シルアル番号を提供することが可能であり、これにより、多層体の偽造に対するセキュリティと、認証能力とを改善する。
【0028】
この場合、前記保護ラッカーが、物理的に乾く、または、化学的に硬化する、あるいは放射線で硬化する、ラッカーであることが推奨される。
【0029】
特に、顔料、及び/または、染料、及び/または、紫外線活性化可能な顔料、及び/または、ナノ粒子、及び/または、アップコンバーター剤、及び/または、サーモクロミック染料、及び/または、フォトクロミック染料を含む、保護ラッカーを用いてもよい。このような保護ラッカーも、アルカリ性溶液での処理後に、多層体上に残り、多層体の光学的外観に貢献し得る。保護ラッカーは、アルカリ性溶液での処理の間、HRI層を分離から保護するため、残存するHRI層は、保護ラッカー層に対して、正確な位置状態で、配置される。
【0030】
しかしながら、前記保護ラッカーを、前記アルカリ性溶液での前記処理後に、少なくとも部分的に、再び除去することもできる。この場合も、特に、保護ラッカーの残存する部分的な領域が、HRI層に対して正確な配置状態で配置されるため、保護ラッカーの正確な部分的除去は、同様に、多層体の全体的な光学的効果に寄与する。
【0031】
前記マスク層が、ポジ型のフォトレジストの全表面エリアへの適用と、前記層の除去される前記部分的な領域の露光と、露光された前記フォトレジストの除去と、により形成される場合が、さらに有利である。ポジ型のフォトレジストの場合、フォトレジストの露光された部分的な領域は、アルカリ性溶液であってもよい適切な現像剤での処理により、溶解する。露光されない部分的な領域では、フォトレジストはHRI層上に残り、アルカリ性溶液での処理中に、アルカリ性溶液の作用に対してHRI層を保護する。
【0032】
また、前記マスク層が、ネガ型のフォトレジストの全表面エリアへの適用と、前記層の除去されない前記部分的な領域の露光と、露光されない前記フォトレジストの除去と、により形成されてもよい。ネガ型のフォトレジストは、層の現像中に、露光されない領域において溶解する。従って、フォトレジストは、HRI層の露光された部分的な領域において残り、アルカリ性溶液の作用に対して層を保護する。さらなるバリエーションでは、フォトレジストは、例えば印刷プロセスにより、部分的な領域に適用され、続いて、露光により構造化されてもよい。
【0033】
複雑なパターンを作るために、ネガ型とポシ型のフォトレジストの組み合わせを用いることもできる。用いられるフォトレジストの型に関わりなく、露光により、0.01 mmまでの解像度が達成可能である。印刷されるマスク層に関連して既に述べたように、露光によりフォトレジストで達成可能な(準マイクロメーター範囲にまで達し得る)解像度と、HRI層の構造化に関連する、さらなるプロセスに関連する解像度、または、最小形状サイズとを、区別する必要がある。
【0034】
染料、及び/または、顔料、及び/または、紫外線活性化可能な顔料、及び/または、ナノ粒子、及び/または、アップコンバーター剤、及び/または、サーモクロミック染料、及び/または、フォトクロミック染料を含む、フォトレジストが用いられる場合が、さらに有利である。このようなフォトレジストは、多層体に残ることができ、同様に、所望の光学的効果に寄与する。印刷される保護ラッカーの利用の場合と同様に、フォトレジストは、残存するHRI層に対して正しい配置状態で配置される。
【0035】
しかしながら、前記フォトレジストは、前記アルカリ性溶液での前記処理後に、少なくとも部分的に除去されてもよい。ここでも、フォトレジストの除去、特に部分的な除去は、光学的外観に寄与し得る。
【0036】
前記露光は、レーザーにより、全表面エリアに亘って、及び/または、表面エリアの一部に亘って、行われることが好ましい。部分的な表面エリアの露光の場合は、それぞれ個別の多層体に、個別の識別情報、例えばシリアル番号を提供することができ、これにより、多層体の偽造に対するセキュリティと、認証能力とを改善する。この効果は、調整可能な、または、修正可能な、マスクにより、達成されてもよい。
【0037】
前記アルカリ性溶液が、前記層の除去される前記部分的な領域に印刷される場合が、さらに有利である。アルカリ性溶液が直接印刷されるため、HRI層は、アルカリ性溶液に接する箇所でのみ侵食され、その結果、こうして構造化されるHRI層を、マスク等を必要とせず、特に容易に作ることができる。従って、このようなプロセスは、特に容易かつ迅速に実行することができる。印刷された領域において、HRI層が分離された後、続いて、アルカリ性溶液のみが、洗い流される必要がある。プロセスのこのバリエーションの場合、アルカリ性溶液は、分離されるHRI層の領域と接触するだけであり、多層体が、アルカリ性溶液に対して良好な耐性を持たず、アルカリ性溶液槽において侵食される可能性のある構成物質を有する場合でも、このプロセスを適用することができる。
【0038】
前記アルカリ性溶液は、フレキソ印刷またはグラビア印刷により印刷されることが好ましい。用いられる印刷法に応じて、0.1から0.2 mmの解像度を有する構造が、従って、HRI層に形成可能である。
【0039】
粘着性を増すための少なくとも一つの添加剤、及び/または、少なくとも一つの湿潤剤を含む、アルカリ性溶液が用いられることが好ましい。このことは、印刷されたアルカリ性溶液が流れ落ちず、その結果、HRI層において、所望の構造が、信頼性高く得られることを保証する。同時に、湿潤剤の添加は、アルカリ性溶液とHRI層の表面との間の良好な接触と、層の穴へのアルカリ性溶液の容易な侵入とを保証する。
【0040】
この場合、添加剤として、炭酸カルシウムが用いられることが好ましい。炭酸カルシウムに加えて、例えば、カオリン、二酸化チタン、アエロジルまたは二酸化ケイ素を用いることもできる。この場合、基準は、アルカリ性溶液に対して、ほぼ不活性であり、細かい粒子サイズで得ることができ、従って、アルカリ性溶液に十分良好に分散可能な材料である。こうして添加材が備えられたアルカリ性溶液の印刷は、これにより、改善可能である。
【0041】
高い屈折率の材料から作られる前記層の適用前に、少なくとも一つのレリーフ構造が、前記基板の少なくとも部分的な領域にモールドされる場合が、さらに有利である。このようなレリーフ構造は、特に反射性のHRI層と一緒の作用により、全体的な光学的インプレッションと、多層体の偽造に対するセキュリティとに寄与する、さらなる光学的効果を可能とする。
【0042】
すでに説明したように、基板の表面におけるレリーフ構造は、基板のこの表面におけるHRI層の接着力に影響することが判明している。このことは、HRI層の部分的な除去に利用することができる。このために、HRI層と第二の領域における表面との境界接着力が、表面にHRI層を保持するにはもはや十分ではなく、第一の領域でのより大きな境界接着力が、HRI層を表面に結合し続ける条件が、設定される。このプロセスのバリエーションは、特に緩和な条件の場合、特に、アルカリ性溶液濃度が低い場合に、実施されてもよく、その結果、感度の高い材料の組み合わせにも適している。また、液体として、十分な水を利用してもよい。
【0043】
このプロセスのバリエーションのさらなる利点は、残存するHRI層が、表面に形成されたレリ−フ構造と、完全に正確な配置状態を維持することにある。従って、HRI層とレリ−フ構造との干渉から光学的効果が生じる、非常に繊細な構造及びパターンを作ることも可能である。この場合、部分的なHRI層で達成可能な構造の解像度は、略0.015mmである。
【0044】
レリーフ構造は、通常、いわゆる複製層に形成される。複製層は、一般に、表面のレリーフ構造が形成可能である層を意味するものと理解されたい。これは、例えば、プラスティックまたはラッカー層等の有機層、または、無機プラスティック(例えばシリコン)、半導体層、金属層等の無機層、または、それらの組み合わせをも含む。これらの層の大部分は、略1.5前後の平均屈折率を有する。
【0045】
プラスティックまたはラッカー層として実現される、特に熱可塑性プラスティックまたは紫外線照射下で硬化するラッカーで作られる複製層では、レリーフ構造は、特に、ツール、特に金型またはローラーにより、表面にスタンプされる。射出成型により、または、フォトリソグラフのプロセスを用いても、表面のレリーフ構造を形成することができる。用いられる製造プロセス、及び、形成される多層体の目的の後続アプリケーションに応じて、透過型または非透過型の複製層、特に、人間の眼に透明なまたは不透明な複製層、が用いられてもよい。
【0046】
0.1以上、特に0.15以上、好ましくは0.2以上の深度−幅比を有する個別の構造エレメントを備える、前記第一のレリーフ構造が、実現される場合が、有利である。このような深度−幅比を有するレリーフ構造は、基板とHRI層の界面接着力の増強に特に効果的であることが判明している。これは、特に、拡大された表面と、レリーフ構造の領域における凹凸において、良好に実証される。また、レリーフ構造は、HRI層において、層の剥離を生じる、クラックの伝搬を防ぐ。
【0047】
さらに、構造が、以下のレリーフ形状:矩形、三角形、ステップ型、正弦型、の一つを有する場合、または、例えば、マット構造の場合に生じるような、不規則で、特にランダムな、隆起および陥没のレリーフ形状を有する場合が、特に有利である。
【0048】
非次元の深度−幅比は、例えば、正弦二乗曲線を有する、好ましくは周期的構造の表面の拡大に対する、特徴的な特性である。ここで、深度は、この構造での最高及び最低の連続点間の距離、すなわち、“山”と“谷”の間の距離として指定される。幅は、二つの隣り合う最高点間、すなわち、二つの“谷”の間の距離として指定される。そして、深度−幅比が高いほど、険しい“山の斜面”が実現され、“山の斜面”に配置されるより薄いHRI層が実現される。これは、滑らか表面に配置される場合よりも、異なる微結晶構造を有するHRI層をもたらし、同様に、層の接着力を改善する。しかしながら、構造は、このモデルが適用できないものであってもよい。例えば、構造は、“谷”としてのみ実現される、離散的に配置された、直線的な領域であってもよく、二つの“谷”の間の距離が、“谷”の深度よりも、数倍大きくてもよい。上述した定義の形式的な適用においては、算出される深度−幅比は、略ゼロであり、特徴的な物理的作用を反映しない。このために、実質的に一つの“谷”のみから成る離散的に配置された構造の場合、“谷”の深度は、“谷”の幅に比例する必要がある。
【0049】
さらなる好ましい実施形態では、少なくとも一つの前記第二の領域において、レリーフ構造が前記基板にモールドされず、または、前記第一のレリーフ構造とは異なる少なくとも一つの第二のレリーフ構造が、前記基板にモールドされる。こうして、HRI層が維持される場所を正確に制御することができる。また、異なるレリーフ構造の利用は、多層体の光学的外観のより複雑な構成を提供し、これにより、偽造に対するセキュリティに寄与する。
【0050】
前記第一のレリーフ構造及び前記第二のレリーフ構造が、前記レリーフ構造により、前記基板への前記HRI層の接着力が、少なくとも一つの前記第二の領域におけるよりも少なくとも一つの前記第一の領域における方が強く、特に、前記第一のレリーフ構造の空間周波数が、前記第二のレリーフ構造の空間周波数よりも大きく、前記第一のレリーフ構造の構造エレメントの深度−幅比が、前記第二のレリーフ構造の構造エレメントの深度−幅比よりも大きく、及び/または、前記第一のレリーフ構造の構造エレメントの空間周波数と深度−幅比との積が、前記第二のレリーフ構造のものより大きいように、実現される場合が、特に有利である。こうして、第二のレリーフ構造の領域におけるよりも、第一のレリーフ構造の領域において、基板に対するHRI層のより強い接着力と、さらに、第一及び第二の領域での、光学的に変化し得る異なる外観を達成する。
【0051】
少なくとも一つの前記第一のレリーフ構造及び/または第二のレリーフ構造が、特に、一次元または二次元回折格子構造として実現され、特に、500 lines/mm以上、好ましくは1000 lines/mm以上の空間周波数を有する場合が、特に有利である。
【0052】
前記第二のレリーフ構造の前記回折格子構造が、3μm未満の周期で、または、0.1未満の低アスペクト比で実現されることが好ましい。
【0053】
少なくとも一つの前記第一のレリーフ構造及び/または第二のレリーフ構造が、光回折性、及び/または、光屈折性、及び/または、光散乱性、及び/または、集光性のマイクロ構造またはナノ構造として、等方性または異方性のマット構造として、バイナリフレネルレンズまたは連続フレネルレンズとして、マイクロプリズム構造として、ブレーズ格子として、マクロ構造として、または、これらの組み合わせ構造として、実現されることが好ましい。これにより、多数の光学的効果が、実現可能である。
【0054】
高い屈折率の層の適用前及び/または後に、少なくとも一つのさらなる機能層が、特に部分的に、適用される場合が、さらに有利である。ここで、機能層とは、視覚的に知覚可能なカラーまたは輝度のインプレッション、または、電気的、磁気的、または化学的に検知可能な存在を示すものを意味するものと理解されたい。例えば、機能層は、着色された顔料または染料等の着色手段を含み、通常の昼光で、着色され、特に多色着色される層である。しかしながら、機能層は、フォトクロミックまたはサーモクロミック物質、蛍光物質、干渉顔料、液晶、光源依存性顔料等の光学的可変効果を生じる物質、反応染料、色の反転または非反転変化を伴う他の物質と反応する指示染料、異なる波長の放射線による励起で異なる色発光を示す色変化顔料、磁気物質、導電性物質、電界または磁界において色変化を示す物質、いわゆるE-インク(登録商標)等の、特有の着色手段を含む層であってもよい。
【0055】
少なくとも一つのさらなる前記機能層が、ラッカー層またはポリマー層として実現されることが好ましい。
【0056】
また、少なくとも一つのさらなる前記機能層が、一つ以上の、着色された、特に多色の、機能層の材料の添加で、実現されてもよい。また、さらにまたは代わって、少なくとも一つの部分的に形成された機能層を、疎水性または親水性の層として実現することもできる。
【0057】
少なくとも一つのさらなる前記機能層を、観察角度に応じて異なる光学的効果を有する光学的可変層として、及び/または、金属反射層として、及び/または、誘電体反射層として、実現することができる。
【0058】
前記光学的可変層が、観察角度に応じて異なる光学的効果を有する少なくとも一つの物質を含み、及び/または、観察角度に応じて異なる光学的効果を有する少なくとも一つの液晶層により形成され、及び/または、観察角度に応じた干渉カラー効果を有する薄膜層のスタックにより形成されるように、実現される場合が、特に好ましい。
【0059】
さらなる好ましい実施形態では、高い屈折率の層の前記部分的な領域の除去後に、高い屈折率を有する材料で作られるさらなる層が適用される。続いて、前記層の少なくとも一つの部分的な領域が、アルカリ性溶液での処理により、前記基板から物理的に再び除去可能であり、特に、一つ以上の前述したプロセスが、二回以上適用される。こうして、異なる層厚のHRI層の部分的な領域が、作られる。層厚は、HRI層の光学的特性、特に、異なる波長に関する反射作用に影響するため、このことは、様々な光学的効果を作るために利用することもできる。任意で、さらなる層の適用後、部分的な領域における層の除去が省略されてもよく、その結果、局所的に異なる層厚を有する全表面エリアのコーティングがもたらされる。
【0060】
特に、高い屈折率の層の除去された前記部分的な領域及びさらなる高い屈折率の層の除去された前記部分的な領域が、重ならず、または、部分的にのみ重なる場合が、有利である。部分的な領域が部分的に重なる場合、ステップ状の層厚の勾配が生じてもよい。
【0061】
前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された前記機能層、及び/または、少なくとも一つの部分的に形成された高い屈折率を有する材料で作られる層が、回折性のレリーフ構造と重ねて配置され、ホログラフィックまたはキネグラフィックな光学的可変効果を示す場合が、有利である。
【0062】
前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された、前記機能層、及び、少なくとも一つの部分的に形成された前記HRI層が、互いに補完的に、装飾的な、及び/または、情報を与える、幾何学的な、英数字の、絵で表した、図形の、または、造形的な、表示を形成する場合が、さらに有利である。このことは、機能層が、HRI層に対して、正確な配置状態で配置される必要があるため、多層体の偽造に対するセキュリティに、特に寄与する。そうでない場合は、所望の表示が実現されない。一方、偽造の試みの場合、正確な配置状態の必要な精度が困難であり、または不可能である。
【0063】
前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された、前記機能層、及び/または、少なくとも一つの部分的に形成された前記HRI層が、100 μm未満の範囲、特に5から50 μmの範囲の、ライン幅を有する、少なくとも一つのラインとして、及び/または、100 μm未満の範囲、特に5から50 μmの範囲のピクセル径を有する、少なくとも一つのピクセルとして、実現されることが、好ましい。
【0064】
前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された、前記機能層が、一つ以上の以下の層:金属層、特に、不透明な金属層、液晶を含む層、観察角度に応じた干渉カラー効果を有する薄膜反射層のスタック、着色されたラッカー層、誘電体反射層、蛍光性または放射線励起性の顔料または染料を含む層、を含む場合が、さらに有利である。このことは、同様に、魅力的な光学的効果と、例えば特定のスペクトル範囲でのみ知覚可能であり、または活性化され得る、多層体へのさらなるセキュリティ特性の統合とを可能にする。
【0065】
さらなる好ましい実施形態では、前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された前記機能層、及び、前記HRI層が、特定の観察角度で、または、特定のタイプの放射線で、少なくとも観察される場合、補色で実現される。
【0066】
さらなる好ましい実施形態では、前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された前記機能層、及び、前記HRI層が、ラインが横方向のずれなく互いに統合されるように、ライン形状でそれぞれ実現される。この場合も、多層体の製造において、正しい配置状態の特に良好な精度が達成される必要があるため、これもまた、偽造に対するセキュリティに寄与する。
【0067】
この場合、前記ラインは、連続的なカラー勾配を伴って、互いに統合されることが好ましい。
【0068】
さらなる好ましい実施形態では、前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された前記機能層、及び/または、高い屈折率を有する材料で作られる層が、人間の眼では個々に解像できない、ピクセル、イメージ点、またはラインから成る、格子イメージを、少なくとも部分的に形成する。このことは、魅力的な光学的効果に利用可能である。
【0069】
最初の層の格子化も可能であり、反射層に重ね合わされ−可能であれば異なる−回折構造を有する格子エレメントに加えて、反射層のない透明な領域を表す隣り合う格子エレメントが備えられてもよい。格子として、振幅変調される、または、面積変調される格子が選択されてもよい。このような反射性/屈折性の領域、及び、非反射性で、透明な−可能であれば回折性でもある−領域の組み合わせにより、興味深い光学的効果を達成することができる。このような格子が、例えば、有価ドキュメントの窓に配置される場合、透明な格子イメージを透過光で見ることができる。反射光では、この格子イメージは、反射表面エリアにおいて光が回折/反射されない、特定の角度範囲のみで見える。さらに、このようなエレメントを透明な窓で用いるだけではなく、着色されたインプリントに適用することもできる。さらに、適切に選択された格子により、反射効果が低減する、多数の滲んだ反射領域を実現することもできる。
【0070】
前記多層体は、高い屈折率の材料で作られる、少なくとも一つの部分的に形成されたさらなる層を有することが好ましい。
【0071】
さらなる好ましい実施形態では、第一の透明なスペーサー層が、前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された前記機能層と、部分的に形成された前記層またはさらなる層との間に実現される。
【0072】
前記多層体の、少なくとも一つの、または、部分的に形成された前記機能層、及び、前記HRI層が、可能であれば観察角度に応じる、少なくとも一つの光学的な重複効果が、示されるように、実現される場合が、さらに好ましい。
【0073】
前記多層体は、フィルムエレメントとして、特に、転写フィルム、ホットスタンプフィルム、またはラミネートフィルムとして、実現されることが好ましい。これは、セキュリティペーパーまたはカードに挿入または適用される、セキュリティスレッドであってもよい。この場合、前記フィルムエレメントは、少なくとも片側に接着層を有することが好ましい。
【0074】
しかしながら、多層体は、フィルムエレメントだけではなく、剛体であってもよい。
【0075】
さらに、多層体は、特に、例えば、紙幣またはIDドキュメント等のセキュリティエレメントを保護するための、加飾エレメントまたはセキュリティエレメントを構成することが好ましい。身分証明書、センサーエレメント、半導体チップのベースプレート、または、例えば携帯電話のケース等の電子デバイスの表面等の、剛体に、上述したタイプの多層体が備えられる場合が、有利である。