【実施例】
【0022】
以下に、本実施形態に係る第1実施例について、
図1〜
図20を参照しながら具体的に説明する。
図1に示すYは、第1実施例に係る擁壁であり、まず、擁壁Yの構造について説明し、その後に、擁壁Yの構築工法について説明する。
【0023】
[第1実施例に係る擁壁の構造の説明]
擁壁Yは、
図1に示すように、背後地としての川岸K3の法面(護床)に沿って延設しており、擁壁延設方向に基礎部Bを敷設して、基礎部B上に鉄筋コンクリート製のブロックAを階段状に段積みするとともに、擁壁延設方向に敷設して壁体Cを立設し、段積みされたブロックAの上下境界部に跨がるように上下境界部用の滑動抵抗板である左右一対の境界用抵抗板30,30を配置して構築している。
【0024】
すなわち、擁壁Yは、河床K1の地盤中に基礎部Bを配設し、基礎部Bの上に最下段のブロックAを敷設し、この最下段のブロックAの上に複数段(第1実施例では五段)のブロックAを階段状に段積みして、もたれ式の壁体Cを立設することで構築している。また、第1実施例では、ブロックAの真上方位置に上段のブロックAを載置する工法、いわゆるイモ積み工法を採用している。26は、川岸K3の法面に張設した吸出防止シートである。
【0025】
(ブロックの構造の説明)
ブロックAは、
図5〜
図8に示すように、横長四角形板状の前壁10及び後壁11と、前壁10及び後壁11の左右側部間に介設した五角形板状の左側壁12及び右側壁13とにより、上面と下面が開口する四角形筒状に形成して、その内部に中込め空間Sを形成している。
【0026】
前壁10及び後壁11は、前低後高の傾斜状態(後傾状態)にて、前後方向に対向状態に平行させて配置している。後壁11の高さは、前壁10の高さの半分以下に低く形成している。第1実施例では、後壁11の高さを、前壁10の高さの40%に設定している。
【0027】
左側壁12及び右側壁13は、それらの高さを前壁10の高さと同一に形成している。左側壁12の後端面12d及び右側壁13の後端面13dは、下部を後壁11の後面と面一の傾斜面に形成するとともに、上部を後壁11の上端面11aの後端縁部から垂直に立ち上げた垂直面に形成している。このように、後端面12d,13dの上部を垂直面に形成することで、左側壁12及び右側壁13の後端上部が、可及的に施工時の作業者に支障とならないようしている。
【0028】
左側壁12及び右側壁13の各内面は、内方へ下り傾斜状のテーパー面12c,13cとなしている。つまり、両テーパー面12c,13c間に形成される左右方向の間隔は、上方から下方へ向けて漸次縮小されるように形成している。左側壁12及び右側壁13の外側面前部には、上下方向に垂直状に延伸する柱状の突条部14,15を突設している。左側壁12及び右側壁13の外側面後上部には、左右方向に貫通する円形状の開口部16,17を形成している。これらの開口部16,17は、ブロックAの製造時の脱型・反転用に設けた吊上げインサートの位置が、つまり、ブロックAにおける控え方向の重心位置が突条部14,15の端側にならないように、また、ブロックAのインサート18,19に後述する取付具61,61(
図12参照)を挿入して、ブロックAを段積する際に、ブロックAの水平が保てるように、重心を前側に移動させるために設けている。
【0029】
ブロックAの上端面は、すなわち、前壁10の上端面10aと、左側壁12の上端面12aと、右側壁13の上端面13aと、突条部14,15の上端面14a,15aは、面一の同一水平面に形成している。左・右側壁12,13の上端面12a,13aの後部には、嵌合凹部12e,13eを形成している。嵌合凹部12e,13eは、それぞれ上方と左右側方が開放されて、左右方向に整合状態に配置されている。そして、嵌合凹部12e,13eには、後述する横架材40の左・右側端部を上方から嵌合して、横架材40を着脱自在に横架可能としている。ここで、嵌合凹部12e,13eは、嵌入された横架材40の少なくとも前方向への動きを規制するようにしている。
【0030】
ブロックAの上端面は、すなわち、前壁10の上端面10aと、左側壁12の上端面12aと、右側壁13の上端面13aと、突条部14,15の上端面14a,15aは、面一の同一水平面に形成しており、後壁11の上端面11aは、これらの上端面と低位置にて平行する水平面に形成している。また、ブロックAの下端面は、すなわち、前壁10の下端面10bと、後壁11の下端面11bと、左側壁12の下端面12bと、右側壁13の下端面13bと、突条部14,15の下端面14b,15bは、面一の同一水平面に形成している。つまり、ブロックAの上・下端面は、平行水平面に形成することで、安定状態にて各ブロックAを階段状に段積可能に形成している。
【0031】
突条部14,15の上端部には、それぞれ吊上げ用金物一式60(
図12参照)を取り付けるためのインサート18,19を設けており、インサート18,19は、上下方向に直状に延伸させて形成するとともに、その上端を突条部14,15の上端面に開口させている。インサート18,19は、ブロックAの重心よりも2cm程度前方の位置に形成している。
【0032】
吊上げ用金物一式60は、
図12に示すように、バックホー等の作業機と吊上げ対象物との間に介設するためのものであり、インサート18,19に下端部を着脱自在に取り付け可能とした一対の取付具61,61と、各取付具61,61の上端部に下端部を連結した連結具62,62と、両連結具62,62の上端部間に架け渡したワイヤ63等を具備している。第1実施例では、ブロックAのインサート18,19に取付具61,61を着脱自在に取り付け可能として、バックホー等の作業機の昇降機能部にワイヤ63の中途部を着脱自在に取り付け可能としている。
【0033】
このようにブロックAを形成することで、インサート18,19に吊上げ用金物一式60の取付具61,61を取り付け、例えば、作業機としてのバックホーの昇降機能部の先端部に設けたバケットに、ワイヤ63,63の中途部を取り付けて、この昇降機能部によりブロックAを吊上げ・吊下げした際には、ブロックAが略水平姿勢に保持されることから敷設作業が容易になる。
【0034】
(境界用抵抗板の説明)
境界用抵抗板30は、
図9に示すように、扁平四角形板状に形成した抵抗板本片31に左右一対のリブ片32を設けて軽量化し、人力でブロックAの後壁に載置できるようにしている。重機を用いる場合には、2枚分を1枚にした大きさの扁平四角形板状に形成して、作業の効率を向上させることもできる。
【0035】
(横架材の説明)
横架材40は、
図10に示すように、左右方向に直状に延伸して、嵌合凹部12e,13eに左右側端部が嵌合可能な四角形棒状に形成している。こうした横架材40をブロックAの嵌合凹部12e,13eに嵌合させ、横架した横架材40の後面に、ブロックAの後壁11の上に起立状に配置した境界用抵抗板30,30の前面を当接させることで、ブロックA内・外へ充填材を投入した際に生じる境界用抵抗板30,30の前方への転倒が防止できるようにしている。つまり、横架材40により境界用抵抗板30,30の起立姿勢を堅実・簡単に維持することができる。なお、横架材40は、嵌合凹部12e,13eに嵌合させて横架することができれば、本実施例の形状に限られるものではなく、例えば、既存の断面L字状の部材(L型アングル)を適当な長さに切断して使用することもできる。
【0036】
(基礎部の構造の説明)
基礎部Bは、
図1〜
図4に示すように、河床K1の地盤中に擁壁延設方向に沿った凹条溝部Brを形成し、凹条溝部Br内の底部に、底部支持材を敷設するとともに転圧して底部層24を形成して、底部層24上に、基礎部用の滑動抵抗板である鉄筋コンクリート製の基礎用抵抗板20を配置するとともに、凹条溝部Br内に基礎部用充填材としての基礎用栗石(例えば、50mm〜150mmの栗石)D1を充填して充填層23を形成している。25は、埋め戻し部である。
【0037】
基礎用抵抗板20は、
図1〜
図4に示すように、擁壁延設方向(第1実施例では左右方向)に横長の四角形板状に形成して、擁壁延設方向と直交する方向(第1実施例では前後方向)に長手状の前面が指向するように起立させて底部層24上に配置している。基礎用抵抗板20は、その長手幅をブロックAの左側壁12及び右側壁13のテーパー面12c,13c同士の間隔よりも幅狭に形成するとともに、その縦幅をブロックAの前壁10の高さ(縦幅)よりも幅狭に、かつ、境界用抵抗板30の縦幅よりも幅広に形成している。第1実施例では、基礎用抵抗板20の縦幅を、ブロックAの前壁10の縦幅の85%に設定している。基礎用抵抗板20の前後幅(肉厚)は、後壁11の上端面の前後幅と略同一幅に形成している。基礎用抵抗板20の下部(略下半部)は、充填された基礎用栗石D1によって形成される充填層23中に埋没状に配置される。基礎用抵抗板20の上部(略上半部)は、充填層23の上面から上方へ突出状に配置される。そして、この突出した基礎用抵抗板20の上部を取り囲むように、最下段のブロックAが充填層23の上面に載置される。
【0038】
(壁体の構造の説明)
壁体Cは、
図1〜
図4に示すように、基礎部B上にブロックAを階段状に段積みするとともに、擁壁延設方向に敷設して起立状に構築している。最下段のブロックAの中込め空間S内には、段積みされたブロックAの上下境界部に跨がるよう鉄筋コンクリート製の境界用抵抗板30を配置するとともに、中詰め材としての中詰め用栗石(例えば、50mm〜150mmの栗石)D2を充填している。ブロックAの外側空間Ss内にも、中詰め用栗石D2を充填している。ブロックAの背後空間Sb内には、裏込め材としての裏込め用栗石(例えば、50mm〜150mmの栗石)D3を充填している。ここで、外側空間Ssとは、ブロックAの左側外方及び右側外方に形成される空間である。背後空間Sbとは、ブロックAと川岸K3の法面との間に形成される空間(裏込め空間)である。
【0039】
境界用抵抗板30は、
図1〜
図4に示すように、ブロックAの後壁11の上端面11a上に、左右一対の2個を起立状に配置するとともに、両境界用抵抗板30,30は、前壁10と対面状態に並行させて配置している。これらの境界用抵抗板30,30は、2個分の左右幅を基礎用抵抗板20の左右幅よりも幅狭に形成するとともに、その縦幅を基礎用抵抗板20の高さ(縦幅)よりも高く形成している。この実施例では、境界用抵抗板30の縦幅を、ブロックAの前壁10の縦幅の95%に設定している。境界用抵抗板30の前後幅(肉厚)は、後壁11の上端面の前後幅よりも幅狭に形成している。なお、境界用抵抗板30は、壁体Cの下段位よりも背面土圧が小さい壁体Cの上段位に載置されたブロックA,A間には、配置しない場合もある。
【0040】
そして、ブロックAの後壁11の上端面上に起立状に配置した境界用抵抗板30,30は、それらの下部(第1実施例では下半部)がブロックA内に配置されるとともに、それらの上部(第1実施例では上半部)が、直上段に段積されたブロックAの中込め空間S内に下方から嵌入された状態で配置されるようにしている。
【0041】
ブロックAの内・外の下部の空間には、後壁11の上端面近傍まで充填材が充填されている。後壁11の上には、境界用抵抗板30,30が起立状に配置されている。ブロックAの内・外の残余の上部の空間には、境界用抵抗板30,30を起立状に配置したまま充填材が充填されている。
【0042】
このように、ブロックAの内・外の下部の空間に、後壁11の上端面近傍まで充填材を充填し、その後に、境界用抵抗板30,30を、ブロックAの後壁11の上に載置することにより、境界用抵抗板30,30の位置および高さが自動的に決まり、境界用抵抗板30,30の配置作業が格段に向上する。
【0043】
このように構成した擁壁Yでは、基礎部Bとその上に載設された最下段のブロックAとの間に基礎用抵抗板20を配設することで、最下段のブロックAの滑動抵抗力が強化される。更に、最下段のブロックAと、最下段のブロックAの上に段積みされた二段目のブロックAとの間に境界用抵抗板30,30を配設することで、二段目のブロックAの滑動抵抗力が強化される。これらと同様にして、上下方向に隣接して段積みされた各段のブロックA,A同士の間に境界用抵抗板30,30を配設することで、各段のブロックAの滑動抵抗力が強化される。なお、基礎用抵抗板20及び各境界用抵抗板30,30が有するブロックAの滑動抵抗力を強化する機能は、特許第5309295号公報に開示されている滑動抵抗体の機能と同様である。
【0044】
第1実施例の擁壁Yは、基礎用栗石D1を充填して形成した充填層23内に、基礎用抵抗板20を配設するとともに、各ブロックAの内部に中詰め栗石D2及び裏込め用栗石D3を充填して形成する層内に、境界用抵抗板30,30を配設した空積みブロック擁壁である。
【0045】
[第1実施例に係る擁壁の構築工法の説明]
次に、
図11〜
図18を参照しながら、第1実施例に係る擁壁Yの構築工法について説明する。第1実施例に係る擁壁Yの構築工法は、第一工程〜第六工程を含む工法であり、具体的には、以下の通りである。
【0046】
(第一工程:基礎部の施工工程)
第一工程は、
図11に示すように、基礎部Bを施工する工程である。第一工程では、河床K1の地盤中に擁壁延設方向に沿った凹条溝部Brを形成し、凹条溝部Br内の底部に底部層24を形成して、底部層24上に基礎用抵抗板20を配置するとともに、凹条溝部Br内に基礎用栗石D1を充填して充填層23を形成することで、擁壁Yを構築する基礎部Bを施工する。
【0047】
(第二工程:1段目ブロックの敷設工程)
第二工程は、
図12に示すように、基礎部Bの上に、1段目の複数のブロックAを擁壁延設方向に沿って敷設する工程である。第二工程では、例えば、作業機としてのバックホーの昇降機能部の先端部に設けたバケットに、吊上げ用金物一式60のワイヤ63の中途部を取り付けるとともに、ブロックAのインサート18,19に吊上げ用金物一式60の取付具61,61を取り付けて、昇降機能部により吊上げ用金物一式60を介してブロックAを吊上げ・吊下げして、第一工程で配置された充填層23の上にブロックAを配設する。この際、1段目のブロックAは、
図13に示すように、充填層23から突出している基礎用抵抗板20の上部を取り囲むように配置される。
【0048】
(第三工程:後壁の高さまでの栗石の充填工程)
第三工程は、
図14に示すように、ブロックAの後壁11の上端面11aの高さまで中詰め用栗石D2・裏込め材D3を充填する工程である。
【0049】
ここでは、バックホーに設けたバケットによりブロックAの中込め空間S内に中詰め用栗石D2及び背後空間Sb内に裏込め用栗石D3を投入して、ブロックAの後壁11の上端面11aの高さまで敷き並べる。この際、投入された栗石D2・D3を、ブロックAの外側方空間Ss内にも約半分の高さまで敷き並べる。
【0050】
(第四工程:後壁上への境界用抵抗板の載置及び抵抗板下部への栗石の当接工程)
第四工程は、
図15に示すように、ブロックAの後壁11の上端面11aに境界用抵抗板30,30を載置し、境界用抵抗板30,30の前・後面下部には、中詰め用栗石D2と裏込め用栗石D3を数個当接させて、境界用抵抗板30,30の起立状態を支持する。
【0051】
(第五工程:横架材による境界用抵抗板の前方への転倒防止工程)
第五工程は、
図10及び
図16に示すように、第四工程で起立状態に支持した境界用抵抗板30の前面側において、ブロックAの左・右側壁12,13の嵌合凹部12e,13e間に横架材40を横架し、境界用抵抗板30の前面に当接させて境界用抵抗板30,30の前方へ転倒を防止する工程である。
【0052】
(第六工程:残余(上部)空間への栗石充填と横架材の解除工程)
第六工程は、
図17及び
図18に示すように、横架材40により境界用抵抗板30,30の前方への転倒を防止した後に、ブロックAの残余(上部)の中込め空間S内及びその外側方空間Ss内に中詰め用栗石D2を、ブロックAの背後空間Sb内に裏込め用栗石D3を、充填する工程である。この工程では、横架材40により前方への転倒を防止された境界用抵抗板30,30が、反対方向である後方に転倒しないように、背後空間Sbの裏込め用栗石D3から先に投入し、その後に、中詰め用栗石D2を中込め空間S内に投入し、これらの投入された栗石D2・D3を、空間S,Ss,Sb内の上端面まで敷き並べる。こうした充填作業の途中において、嵌合凹部12e,13eに嵌合された状態で横架された横架材40を、上方へ引き上げて外す。
【0053】
以上、第1実施例としての擁壁Yの構築工法は、上記のように基礎部Bの上に1段目のブロックAを敷設し、中詰め用栗石D2及び裏込め用栗石D3を適宜締め固めた1段目の各ブロックAの上に、2段目以降の各ブロックAを所要段数まで上記第二工程〜第六工程を順次繰り返すことで、所望の高さの擁壁Yを背後地の法面に沿わせて構築する工法である。なお、ここで説明した横架材40に替えて、後述する第2実施例で使用する横架材40Aを使用することもできる。
【0054】
[第2実施例に係る擁壁の構築工法の説明]
次に、充填材に砕石やクラッシャーラン(以下、「砕石等」と言う。)を使用する第2実施例に係る擁壁の構築工法の説明について説明する。この場合には、
図19に示すように、ブロックAの内・外の各空間S,Ss,Sb内に、後壁11の上端面11aの上方近傍まで中詰め用及び裏込め用の下部砕石等D5を充填するとともに、この下部砕石等D5をランマー(図示せず)等により締め固める(転圧する)。締め固めた下部砕石等D5の上には、後壁11の上端面11aの上方近傍に位置させて境界用抵抗板30,30を載置する。この際、左・右側壁12,13の嵌合凹部12e,13eを介して後述する他実施例としての横架材40Aを横架して境界用抵抗板30,30を支持し、境界用抵抗板30,30の転倒を防止して、ブロックAの内・外の残余の各空間S,Ss,Sb内に、中詰め用砕石等D6及び裏込め用砕石等D7をブロックAの上端面の高さまで充填する。
【0055】
この横架材40Aは、後述する嵌合片42,42の機能によって、境界用抵抗板30,30の転倒を前方向だけでなく後方向にも防止でき、境界用抵抗板30,30の起立姿勢を維持することができる。そのため、中詰め用砕石等D6と裏込め用砕石等D7を、上方から同時に投入することが可能になる。その後、左・右側壁12,13間から横架材40Aを取り外して、ブロックAの上端面のレベルまで充填された中詰め用砕石等D6及び裏込め用砕石等D7を締め固める。D4は、基礎用砕石等である。
【0056】
横架材40Aの構成ついて具体的に説明すると、
図20に示すように、横架材40Aは、前記横架材40と同様に形成した横架材本片41と、横架材本片41に立設した嵌合片42,42とを具備している。
【0057】
横架材本片41は、左右方向に直状に延伸する四角形棒状に形成している。横架材本片41の左右幅は、左・右側壁12,13の上部間に横架状に介在させることが可能な長さに形成している。横架材本片41の上面左右側部には、左右一対の嵌合片42,42を立設している。
【0058】
嵌合片42は、横架材本片41の上面から上方へ立ち上げて形成した支持片43と、支持片43の上端部に取り付けた嵌合本片44とから形成している。支持片43は、四角柱状に形成している。嵌合本片44は、支持片43の前面上部に連結した連結片45と、連結片45の上端縁部から後方へ向けて水平に延出させた上部片46と、上部片46の後端縁部から下方へ向けて垂下状に延出させた後部片47と、から側面視門型に形成している。つまり、嵌合片42は、支持片43と上部片と後部片47とにより左右側方と下方が開口するフック状に形成し、境界用抵抗板30の上部に上方から嵌合・離脱自在として、境界用抵抗板30の前後方向の動きを規制可能としている。なお、嵌合片42の形状や個数等は、嵌合させることで境界用抵抗板30の前後方向の動きが規制できれば、本実施例に限られるものではない。
【0059】
このように構成した横架材40Aでは、後壁11の上に起立状に載置された境界用抵抗板30の直前方位置において、左・右側壁12,13の嵌合凹部12e,13eに、横架材本片41の左右側部を上方から嵌合させるとともに、嵌合片42を境界用抵抗板30の上端中途部に上方から嵌合させることで、境界用抵抗板30の前後方向の動きを規制して、転倒を防止することができる。なお、ここで説明した横架材40Aに替えて、第1実施例で使用した横架材40を使用することもできる。
【0060】
[第3実施例に係る擁壁の構築工法の説明]
次に、
図13、
図21〜
図23を参照しながら、第3実施例に係る擁壁Yの構築工法について説明する。第3実施例に係る擁壁Yの構築工法は、第一工程〜第五工程を含む工法であり、具体的には、以下の通りである。
【0061】
第一工程と第二工程は、第1実施例の第一工程と第二工程と同様である。第三工程は、
図21に示すように、前記した第1・第2実施例とは異なり、充填材を投入する前に、ブロックAの後壁11の上端面11aに境界用抵抗板30,30を載置する工程である。第四工程は、
図20及び
図22に示すように、第三工程で後壁11の上端面11aに起立状態に載置した境界用抵抗板30の前面側において、ブロックAの左・右側壁12,13の嵌合凹部12e,13e間に横架材40Aの横架材本片41を横架し、境界用抵抗板30の前面に当接させるとともに、境界用抵抗板30,30の上部に嵌合片42,42を嵌合させて、境界用抵抗板30,30の前後方向への転倒を防止する工程である。第五工程は、
図23に示すように、横架材40Aにより境界用抵抗板30,30の前後方向への転倒を防止した状態において、ブロックAの中込め空間S内及びその外側方空間Ss内に中詰め用栗石D2を、また、ブロックAの背後空間Sb内に裏込め用栗石D3を、それぞれ同時に充填する工程である。嵌合凹部12e,13eに嵌合された状態で横架された横架材40Aは、充填作業の途中(ないしは最後)において、上方へ引き上げて外す。
【0062】
以上、第3実施例としての擁壁Yの構築工法は、上記のように基礎部Bの上に1段目のブロックAを敷設し、中詰め用栗石D2及び裏込め用栗石D3を適宜締め固めた1段目の各ブロックAの上に、2段目以降の各ブロックAを所要段数まで上記第二工程〜第五工程を順次繰り返すことで、所望の高さの擁壁Yを背後地の法面に沿わせて構築する工法である。
【0063】
また、第3実施例としての擁壁Yの構築工法では、充填材に砕石等を使用することもできる。この場合には、ブロックAの上端面まで砕石等を充填した後には、砕石等を転圧して締め固めておく。
【0064】
[横架材の他実施例に係る横架法の説明]
次に、他実施例に係る横架材40A又は横架材40の横架法について説明する。横架材40Aの横架法は、
図24及び
図25に示すように、内方へ下り傾斜状のテーパー面12c,13cとなした左側壁12及び右側壁13の内面間に、横架材40Aの横架材本片41を上方から押し込んで横架状に介在させ、くさびの原理により、テーパー面12c,13cに横架材本片41の両端面を圧接させることで、横架材本片41を固定化するものである。そして、境界用抵抗板30の前面に横架材本片41を当接させることで、境界用抵抗板30の転倒防止機能が発揮される。同様に、横架材40の横架法も、テーパー面12c,13c間に横架状に固定化するものである。なお、横架材40A又は横架材40は、下方から押し上げることで取り外すことができる。
【0065】
上記のように構成した横架法は、第1〜第3実施例で用いた横架材40(
図10参照)や横架材40A(
図20参照)の横架材本片41を、左・右側壁12,13の嵌合凹部12e,13eを介して嵌合状態に横架する第1〜第3実施例の横架法とは異なっており、次のメリットを有する。
【0066】
すなわち、嵌合凹部12e,13eがなくても横架材40A(40)を横架状に固定化できる。換言すると、嵌合凹部12e,13eの形成位置に制限されることなく、テーパー面12c,13c間の任意の位置に、横架材40A(40)を横架状に固定化できる。
【0067】
なお、テーパー面12c,13c間に横架する横架法は、前記した嵌合凹部12e,13e間に横架する横架法と適宜併用することもできる。