特許第6562279号(P6562279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562279
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20190808BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190808BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20190808BHJP
   C09J 157/02 20060101ALI20190808BHJP
   C09J 193/00 20060101ALI20190808BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20190808BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20190808BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20190808BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190808BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J11/06
   C09J133/08
   C09J157/02
   C09J193/00
   C09J7/20
   C09J175/04
   B32B27/30 A
   B32B27/00 M
   C09J163/00
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-145027(P2017-145027)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-26684(P2019-26684A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2018年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直樹
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/047548(WO,A1)
【文献】 特開2016−079256(JP,A)
【文献】 特開2005−263917(JP,A)
【文献】 特開2006−104389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー、硬化剤(ただし、アジリジン系化合物を除く)、水添樹脂、および低極性溶剤を含み、
前記アクリル系ポリマーは、炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、および脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される1種以上の(メタ)アクリル酸エステル(A)、ならびに反応性官能基含有モノマー(B)を含むモノマー混合物の共重合体であり、
前記反応性官能基含有モノマー(B)は、カルボキシル基含有モノマー、およびアミド基含有モノマーの少なくともいずれかを含み、
前記水添樹脂は、水添石油樹脂および水添テルペン樹脂からなる群より選択される1種以上であり、かつ含有量がアクリル系ポリマー100質量部に対し、3〜30質量部であって、
前記低極性溶剤は、環構造を有さないSP値が8.5以下の溶剤および環構造を有するSP値が11以下の溶剤からなる群より選択される1種以上である、粘着剤。
【請求項2】
前記低極性溶剤をアクリル系ポリマー100質量部に対して5〜200質量部含む、請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記モノマー混合物100重量%中に、前記(メタ)アクリル酸エステル(A)を60〜99質量%、反応性官能基含有モノマー(B)を0.3〜12質量%含む、請求項1または2記載の粘着剤。
【請求項4】
前記水添樹脂の軟化点は、80〜130℃である、請求項1〜3いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項5】
前記硬化剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物および金属キレート化合物からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜4いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項6】
さらにロジンエステル樹脂、未水添テルペン樹脂および未水添石油樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1〜5いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項7】
前記アクリル系ポリマーの質量平均分子量が40万〜150万である、請求項1〜6いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項8】
基材、および請求項1〜7いずれか1項に記載の粘着剤の硬化物である粘着層を備えた、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤から形成した粘着層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることから、ラベルや接着用途として幅広い分野で使用されている。その中でもアクリル系粘着剤は、接着性、耐候性、耐久性、耐熱性等に優れていることから広く使用されている。粘着シートは、例えば、プラスチック等の容器のラベルとして使用することは一般的であるが、当該プラスチック容器がポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂である場合、ポリオレフィン樹脂は、極性が低いため粘着シートを貼り付けたときの粘着力が低くラベルが剥がれやすいという問題があった。また、化粧品容器など意匠性が高いプラスチック容器は、ラベルとして使用する粘着シートにも透明性が求められる。また、ラベルを食品容器や医薬品容器に使用する場合、低温保管時にも所望の粘着力が得られる低温適性が必要であった。
【0003】
特許文献1には、アルキル基の炭素数が2〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびカルボキシル基含有モノマーの共重合体であるアクリル系ポリマー、重合ロジン、アジリジン系硬化剤含有する接着剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、水酸基含有マクロモノマー、(メタ)アクリル酸エステルおよびカルボキシル基含有モノマーの共重合体であるアクリル系ポリマー、非水添石油樹脂、硬化剤を含む粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−138544号公報
【特許文献2】特開平08−143847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の粘着剤は、重合ロジンに由来する着色が有り透明性が低かった。また、重合ロジンを配合すると25℃のポリオレフィンに対する粘着力は向上したが、低温では粘着力が大幅に低下する問題があった。また、アジリジン硬化剤を使用したため粘着層の架橋密度が非常に高く、低温では粘着層のポリオレフィンの対する粘着力が低く実用に耐えられないため、粘着層の厚さを65μmに増やして対応していた。
【0007】
また、特許文献2の粘着剤は、マクロモノマーを含むアクリル系ポリマーと非水添石油樹脂との相溶性が悪く、粘着層に着色は無かったが透明性は低かった。また、前記粘着剤は、ポリオレフィンへの粘着力自体が低い上、アジリジン硬化剤を使用したため粘着層の架橋密度が非常に高く、低温では粘着層のポリオレフィンの対する粘着力が低く実用に耐えられないため、粘着層の厚さを65μmに増やして対応していた。
【0008】
本発明は、着色を抑制し、透明性が良好で、低温雰囲気におけるポリオレフィンに対する粘着力の低下を抑制する粘着シートを作製できる粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粘着剤は、アクリル系ポリマー、硬化剤(ただし、アジリジン系化合物を除く)、水添樹脂、および低極性溶剤を含み、
前記アクリル系ポリマーは、炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、および脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される1種以上の(メタ)アクリル酸エステル(A)、ならびに反応性官能基含有モノマー(B)を含むモノマー混合物の共重合体であり、
前記水添樹脂は、水添石油樹脂および水添テルペン樹脂からなる群より選択される1種以上であり、
前記低極性溶剤は、環構造を有さないSP値が9以下の溶剤および環構造を有するSP値が11以下の溶剤からなる群より選択される1種以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、着色を抑制し、透明性が良好で、低温雰囲気におけるポリオレフィンに対する粘着力の低下を抑制する粘着シートを作製できる粘着剤、および粘着シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。まず、シート、フィルムおよびテープは、同義である。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を意味する。モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合含有単量体を意味する。被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手方を指す。アミド基は、アミド結合を含む。
【0012】
本発明の粘着剤は、
アクリル系ポリマー、硬化剤(ただし、アジリジン系化合物を除く)、水添樹脂、および低極性溶剤を含み、
前記アクリル系ポリマーは、炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、および脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される1種以上の(メタ)アクリル酸エステル(A)、ならびに反応性官能基含有モノマー(B)を含むモノマー混合物の共重合体であり、
前記水添樹脂は、水添石油樹脂および水添テルペン樹脂からなる群より選択される1種以上であり、
前記低極性溶剤は、環構造を有さないSP値が9以下の溶剤および環構造を有するSP値が11以下の溶剤からなる群より選択される1種以上である。
本発明の粘着剤は、塗工により粘着層を形成し、基材を備えた粘着シートとして使用することが好ましい。
【0013】
本発明の粘着剤は、水添樹脂を使用する一方、水添樹脂は、非水添樹脂と比較して極性が低く、アクリル系ポリマーとの相溶性が低下する傾向にある。そこで、本発明は、環構造を有さないSP値が9以下の溶剤および環構造を有するSP値が11以下の溶剤からなる群より選択される1種以上の低極性溶剤、および炭素数8〜12のアルキル基、または脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル(A)を使用したアクリル系ポリマーを使用し、かつ粘着層の架橋密度が過剰になりやすいアジリジン系化合物を使用しないことで、相溶性が向上し、透明性の向上に加え、低温雰囲気におけるポリオレフィンに対する粘着力の低下を抑制(以下、低温適性という)できる。
【0014】
<アクリル系ポリマー>
本発明で使用するアクリル系ポリマーは、炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、および脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される1種以上の(メタ)アクリル酸エステル(A)、ならびに反応性官能基含有モノマー(B)を含むモノマー混合物の共重合体である。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル(A)は、アクリル系ポリマーに粘着力、凝集力、および水添樹脂との相溶性向上のために用いる。(メタ)アクリル酸エステル(A)が炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである場合、粘着力がさらに向上する。また、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルである場合、凝集力がさらに向上する。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステル(A)は、モノマー混合物100質量%中に60〜99質量%を使用することが好ましく、70〜98質量%がより好ましい。60〜99質量%を使用すると粘着力と透明性の両立がより容易になる。
【0017】
炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとを併用すると粘着力がより向上する場合がある。係る場合、炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとの質量比は、粘着力と凝集力のバランスより100/0〜50/50が好ましく、100/0〜65/35がより好ましい。
【0018】
炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルは、粘着力と透明性を高いレベルで両立できる。
【0019】
脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸シクロヘキシルは、粘着力と透明性をより高いレベルで両立できる。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル(A)は、単独または2種以上を使用できる。
【0021】
反応性官能基含有モノマー(B)は、硬化剤との架橋反応の架橋点として機能する。
反応性官能基含有モノマー(B)は、モノマー混合物100質量%中に0.3〜12量%を使用することが好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。0.3〜12質量%を使用することで、所望の架橋密度が得やすく、粘着力と凝集力を調整しやすい。
【0022】
反応性官能基含有モノマー(B)は、例えば、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、およびアミノ基含有モノマーが挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマーが好ましく、カルボキシル基含有モノマーがより好ましい。
【0023】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、p−カルボキシベンジルアクリル酸エステル、エチレンオキサイド変性(エチレンオキサイド付加モル数が2〜18)フタル酸アクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β−カルボキシエチル、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0024】
カルボキシル基含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中に0.1〜10質量%を含むことが好ましく、1〜8質量%がより好ましい。カルボキシル基含有モノマーを適量使用することで粘着力と凝集力をより高度に両立できる。
【0025】
水酸基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。
【0026】
水酸基含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中に0.01〜7質量%を含むことが好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。水酸基含有モノマーを適量使用することで粘着力と凝集力をより高度に両立できる。
【0027】
アミド基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物等の複素環含有化合物等が挙げられる。
【0028】
アミド基含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中に0.1〜10質量%を含むことが好ましく、1〜8質量%がより好ましい。アミド基含有モノマーを適量使用することで粘着力と凝集力をより高度に両立できる。
【0029】
エポキシ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、および(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0030】
アミノ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、および(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0031】
エポキシ基含有モノマーおよびアミノ基含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中、それぞれ0.1〜1質量部を含むことが好ましい。
【0032】
反応性官能基含有モノマー(B)は、単独または2種以上を使用できる。
【0033】
本発明では(メタ)アクリル酸エステル(A)、および反応性官能基含有モノマー(B)以外に、その他モノマーを使用できる。その他モノマーは、粘着剤の粘着力や凝集力を損なわないモノマーであれば良い。その他モノマーは、例えば、炭素数1〜7または13以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、芳香環含有モノマー、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマー、およびその他ビニルモノマー等が挙げられる。
【0034】
アルキル基の炭素数1〜7または13以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、および(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数1〜7のアクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましく、中でも(メタ)アクリル酸ブチルが粘着力と低温性をより高度に両立できるため好ましい。
【0035】
アルキル基の炭素数1〜7または13以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、モノマー混合物100質量%中に0.1〜20質量%を使用することが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。適量使用することで、粘着物性と低温性を高いレベルで両立できる。
【0036】
芳香環含有モノマーは、例えばアクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、および(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール等が挙げられる。
【0037】
芳香環含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中、0.1〜10質量部を含むことが好ましい。
【0038】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、例えばアクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、およびフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0039】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中、0.1〜10質量部を含むことが好ましい。
【0040】
その他ビニルモノマーは、炭素数1〜7または13以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、芳香環含有モノマー、およびアルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマー以外のモノマーであり、例えば、酢酸ビニル、およびアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0041】
その他ビニルモノマーは、モノマー混合物100質量%中、0.1〜10質量部を含むことが好ましい。
【0042】
その他モノマーは、単独または2種以上を使用できる。
【0043】
<アクリル系ポリマーの合成>
アクリル系ポリマーは、溶液重合、塊状重合、乳化重合等のラジカル重合で合成できる。これらの中でも溶液重合は、アクリル系ポリマーの重量平均分子量および分子量分散度の調整が容易である点から好ましい。
ラジカル重合は、重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤は、アゾ系化合物および有機過酸化物が一般的である。
【0044】
アゾ系化合物は、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、および2,2'−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)等が挙げられる。
【0045】
有機過酸化物は、例えば過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0046】
重合開始剤は、単独または2種以上を使用できる。
【0047】
前記溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびイソプロパノール等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0048】
溶剤は単独また2種類以上を併用できる。
【0049】
前記溶液重合は、モノマー混合物100質量部に対して重合開始剤を0.001〜1質量部程度加えて重合を行うことが好ましい。通常、重合は、窒素雰囲気下で、50℃〜90℃程度の温度で6時間〜20時間行うことが好ましい。また、重合の際、連鎖移動剤を使用してアクリル系ポリマーの重量平均分子量を適宜調整することができる。
【0050】
連鎖移動剤は、例えばn−ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、グリシジルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、およびハイドロキノン等が挙げられる。
【0051】
連鎖移動剤は、モノマー混合物100質量部に対して0.01〜1質量部程度を使用できる。
【0052】
本発明においてアクリル系ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwともいう)は、40万〜150万が好ましく、60万〜130万がさらに好ましい。Mwを40万〜150万の範囲にすると粘着物性と塗工性の両立がより容易になる。なお、本発明でMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0053】
本発明においてアクリル系ポリマーの分子量分散度は、Mwを数平均分子量(以下、Mnともいう)で除した値(Mw/Mn)であり、5〜10が好ましい。分子量分散度を5〜10にすると粘着力と凝集力の両立がより容易になる。なお、本発明でMnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0054】
<硬化剤>
本発明の粘着剤は、硬化剤を使用して、アクリル系ポリマーの反応性官能基と架橋反応させる。硬化剤は、2個以上の反応性官能基を有するアジリジン化合物以外の化合物である。硬化剤は、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アミン化合物等が好ましい。これらの中でもイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレートを使用することで適度な架橋密度が得易い。
【0055】
イソシアネート化合物は、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに前記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリイソプレンポリオール等のうちのいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;
トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0056】
イソシアネート化合物は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.5〜10質量部を含むことが好ましく、1〜5質量部がより好ましい。0.5〜10質量部を含むと凝集力と粘着力を高度に両立できる。
【0057】
エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0058】
エポキシ化合物は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01〜1質量部を含むことが好ましい。0.01〜1質量部を含むと凝集力と粘着力を高度に両立できる。
【0059】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0060】
金属キレートは、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1〜5質量部を含むことが好ましい。0.1〜5質量部を含むと凝集力と粘着力を高度に両立できる。
【0061】
アミン化合物は、例えばヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂、およびメチレン樹脂等が挙げられる。
【0062】
アミン化合物は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01〜1質量部を含むことが好ましい。0.01〜1質量部を含むと凝集力と粘着力を高度に両立できる。
【0063】
硬化剤は単独または2種以上を使用できる。
【0064】
<水添樹脂>
本発明の粘着剤は、水添石油樹脂および水添テルペン樹脂からなる群より選択される1種以上の水添樹脂を含むとポリオレフィンに対する粘着力がより向上し、さらに低温雰囲気でのポリオレフィンに対する粘着力の低下を抑制できる。水添樹脂は、粘着付与樹脂中に存在する不飽和二重結合に対して、水素原子を付加させた樹脂である。水添樹脂は、着色が非常に少なく透明性が高いため、粘着層の透明性の低下を抑制できる。
【0065】
水添樹脂の軟化点は、80〜140℃が好ましく、90〜130℃がより好ましい。軟化点を80〜140℃にすると粘着力および低温性をより向上できる。
【0066】
水添樹脂は、水添石油樹脂および水添テルペン樹脂から適宜選択することが好ましい。
水添石油樹脂は、例えば、C5系水添石油樹脂、C9系水添石油樹脂が挙げられる。C5系水添石油樹脂は、石油ナフサから得られたC5留分を分離精製した脂肪族樹脂を、上記の通り樹脂中の不飽和二重結合に水素原子を付加したものである。また、C9系水添石油樹脂は、石油から得られたC9留分を分離精製した芳香族樹脂を、上記の通り樹脂中の不飽和二重結合に水素原子を付加したものである。C5系原料とC9系原料とを共重合させたC5/C9系石油樹脂も挙げられる。C5/C9系水添石油樹脂は、例えば、ジシクロペンタジエン/芳香族共重合系水添石油樹脂が挙げられる。なお、水添樹脂は、水添石油樹脂がより好ましい。
【0067】
水添テルペン樹脂は、例えば、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等の総称であり、これらの樹脂中の不飽和二重結合には水素原子が付加されている。
【0068】
C5系水添石油樹脂の市販品は、例えば、イーストタックC115W(イーストマンケミカル社製)などが挙げられる。C9系水添石油樹脂の市販品は、例えば、アルコンP−90、アルコンP−100、アルコンP−125、アルコンP−140、アルコンM−90、アルコンM−115、アルコンM−135(荒川化学社製)などが挙げられる。C5/C9系水添石油樹脂の市販品は、ジシクロペンタジエン/芳香族共重合系水添石油樹脂の、例えば、アイマーブS−100、アイマーブS−110、アイマーブP−100、アイマーブP−140(出光興産社製)などが挙げられる。
水添テルペン樹脂の市販品は、例えば、クリアロンP−105、クリアロンP−125、クリアロンM−105、クリアロンM−115、クリアロンK−100、クリアロンK−4100(ヤスハラケミカル社製)などが挙げられる。
【0069】
水添樹脂は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、3〜30質量部配合することが好ましく、5〜25質量部がより好ましい。
【0070】
水添樹脂は、単独または2種以上を使用できる。
【0071】
本発明の粘着剤は、課題を解決できる範囲内であれば、水添樹脂以外のその他粘着付与樹脂を配合できる。その他粘着付与樹脂は、ロジンエステル樹脂、未水添テルペン樹脂、未水添石油樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂である。これらの中でもロジンエステル樹脂が好ましい。これらの樹脂は、水添石油樹脂や水添テルペン樹脂と比較して極性が高いため、例えば、ステンレスのような高極性被着体に対する密着性を向上する効果を有する。そのため、水添石油樹脂や水添テルペン樹脂とこれらの樹脂を併用することで、極性の低い被着体から極性の高い被着体に対して幅広く密着性を向上できる場合がある。これらの樹脂は、単独または2種以上を併用でき、粘着剤がその他粘着付与樹脂を含むと粘着力がより向上する。
【0072】
ロジンエステル樹脂は、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したロジンエステル;未変性ロジンを変性した不均化ロジン;水添ロジンなどの変性ロジン;これらの変性ロジンをさらにアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジンエステル;未変性ロジンにフェノールを付加したロジンフェノール等が挙げられる。これらの中でも相溶性と透明性の点からロジンエステル、不均化ロジンエステルが好ましい。
【0073】
未水添テルペン樹脂は、水添していないテルペン樹脂であり、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。
【0074】
その他粘着付与樹脂を配合する場合、アクリル系ポリマー100質量部に対して、5〜30質量部配合することが好ましい。
【0075】
その他粘着付与樹脂の軟化点は、70〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。軟化点を70〜120℃にすると粘着力と低温性のバランスをとることが容易となる。
【0076】
その他粘着付与樹脂は、単独または2種以上を使用できる。
【0077】
本発明の粘着剤は、その他の粘着付与樹脂を含むこともできる。例えば、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(油性フェノール樹脂)等が好ましい。
【0078】
<低極性溶剤>
本発明の粘着剤は、環構造を有さないSP値が9以下の溶剤および環構造を有するSP値が11以下の溶剤からなる群より選択される1種以上低極性溶剤を使用する。低極性溶剤は、環構造を有さない場合はSP値が9以下好ましくはSP値が8.5以下、または環構造を有する場合はSP値が11以下好ましくはSP値が10以下であるため、極性が低い水添樹脂に容易に溶解し、アクリル系ポリマーとの相溶性が向上する。これにより水添樹脂によるポリオレフィンに対する密着性および粘着層の透明性がより向上する。
【0079】
環構造を有さないSP値が9以下の溶剤は、例えば、n−ペンタン(SP値:7.0)、n−ヘキサン(SP値:7.4)、n−ヘプタン(SP値:7.4)、オクタン(SP値:7.6)、ドデカン(SP値:7.9)などの直鎖構造の炭化水素系溶剤;ラウリルアルコール(SP値:8.1)等の直鎖構造の長鎖アルコール;メチルイソブチルケトン(SP値:8.4)等のケトン系溶剤;酢酸ブチル(SP値:8.5)等のエステル系溶剤が挙げられる。
【0080】
環構造を有するSP値が11以下の溶剤は、例えば、シクロヘキサン(SP値:8.2)、メチルシクロヘキサン(SP値:7.8)等の脂環構造の炭化水素系溶剤;キシレン(SP値:8.8)、トルエン(SP値:8.9)等の芳香族系溶剤;シクロヘキサノン(SP値:9.9)、シクロペンタノン(SP値:10.4)等の環状ケトン系溶剤が挙げられる。なお、SP値の値は、ポリマーハンドブック(1975年発行、セカンドエディション)に記載の値を用い、単位は[cal/cm1/2とする。
【0081】
低極性溶剤は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、5〜200質量部配合することが好ましく、5〜100質量部がより好ましい。また、水添樹脂と低極性溶剤の質量比は、50/50〜10/90が好ましい。
【0082】
低極性溶剤の沸点は、60〜130℃であることが好ましい。沸点が60〜130℃であることで塗工性と乾燥性が良好となる。
【0083】
低極性溶剤は、アクリル系ポリマーを合成する際の溶剤として使用できる。
【0084】
本発明の粘着剤は、課題が解決ができる範囲であれば、任意成分として各種樹脂、硬化触媒、シランカップリング剤、可塑剤、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、充填剤、老化防止剤および帯電防止剤等を配合できる。
【0085】
本発明の粘着剤は、被着体をポリオレフィンとする粘着剤(ポリオレフィン用粘着剤)として好適であるほか、例えば、養生テープ、マスキングフィルム、防水テープ、ラミネートフィルム、自動車部材用両面テープ、光学フィルムなど各種粘着シートとして使用できる。
【0086】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、基材、および本発明の粘着剤から形成した粘着層を備えていることが好ましい。また別の態様として、芯材(基材)の両面に粘着層を有する両面粘着シート、または基材および芯材を有さず粘着層のみで構成されたキャスト粘着シートも好ましい。前記粘着層は、粘着剤を基材上に塗工し、乾燥することで形成できる。または、粘着剤を剥離性シート上に塗工し、乾燥して粘着層を形成した後、基材を貼り合わせることで形成できる。粘着層の基材と接しない面は、通常、使用する直前まで剥離シートを貼付する。
【0087】
粘着剤を塗工する際に、前述した溶液重合で使用する溶剤や低極性溶剤、およびクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶剤や、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤などを添加して粘度を調整することができる。
【0088】
基材は、例えばセロハン、金属箔、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、不織布、樹脂含浸布、ガラス、および木材等が好ましい。基材の形状は、板状およびフィルム状を選択できるが、取り扱いが容易であるフィルム状が好ましい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
【0089】
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイドム、ポリスチレン、ポリアミド、およびポリイミド等が挙げられる。
【0090】
粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、およびスピンコーター等が挙げられる。塗工に際して乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥装置は、特に制限は無く、例えば熱風乾燥機、赤外線ヒーターおよび減圧法等がが挙げられる。乾燥温度は、通常60〜160℃程度である。
【0091】
粘着層の厚さは、1〜300μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。1〜300μmの範囲にあることで粘着物性を適切な範囲に調整し易い。
【0092】
本発明の粘着シートは、ポリオレフィンを始めとするプラスチック、ガラス、ダンボールおよび金属といった極性の低い被着体から極性の高い被着体までを選ばずに様々な用途で使用できる。
【実施例】
【0093】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。
【0094】
[アクリル系ポリマーの合成]
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、「反応容器」という。)に窒素雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル99.7部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル0.3部、酢酸エチル50部、アセトン30部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という。)0.1部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.02部を反応溶液に添加し2時間反応を行った。さらにAIBN 0.02部を反応溶液に添加し4時間反応を継続した。その後、反応容器に酢酸エチル40部を加え冷却することで不揮発分45%、重量平均分子量67万のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0095】
(合成例2〜13)
モノマーの種類及び配合量を表1の記載に従った以外は、合成例1と同様に行うことでそれぞれ合成例2〜13のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0096】
得られたアクリル系ポリマー溶液について、Mw、分子量分散度(Mw/Mn)、溶液外観を以下の方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
【0097】
<MwおよびMw/Mnの測定>
Mw、分子量分散度(Mw/Mn)の測定はGPCを用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、Mw、Mw/Mnの決定はポリスチレン換算で行った。
装置名 : 島津製作所製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー社製GMHXL 4本、東ソー(株)製HXL-H 1本を直列に連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0098】
<溶液外観>
得られたアクリル系ポリマー溶液の外観を目視で評価した。
【0099】
表1の略号を以下に記載する。
<炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル>
2EHA : アクリル酸2−エチルヘキシル
DA : アクリル酸ドデシル
【0100】
<脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル>
CHA : アクリル酸シクロヘキシル
【0101】
<その他モノマー>
BA : アクリル酸ブチル
【0102】
<反応性官能基含有モノマー>
HBA : アクリル酸4−ヒドロキシブチル
AA : アクリル酸
AAm : アクリルアミド
【0103】
【表1】
【0104】
(実施例1)
合成例1で得られたポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100部(不揮発分)に対して、イソシアネート硬化剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体を1.5部(不揮発分換算)、水添樹脂としてアルコンP−90を10部、低極性溶剤としてトルエンを10部配合し、更に希釈溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を35%に調整して粘着剤を得た。前記粘着剤を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着層を形成した。次いで、この粘着層に、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製基材(以下、PETシートという))を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0105】
(実施例2〜29、比較例1〜4)
材料を表2、3および4の配合に従って変更した以外は、実施例1と同様に行うことで、実施例2〜29および比較例1〜4の粘着剤および粘着シートをそれぞれ得た。
ただし、実施例1、2、4、7および15は参考例である。
【0106】
表2〜表4中の略号を以下に記載する。
<イソシアネート化合物>
XDI/TMP : キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
TDI/TMP : トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
【0107】
<エポキシ化合物>
TETRAD X : N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)
【0108】
<金属キレート化合物>
アルミキレートA : アルミニウムトリスアセチルアセトネート(川研ファインケミカル社製)
【0109】
<水添樹脂>
P−90 : アルコンP−90(C9系水添石油樹脂、軟化点90℃、荒川化学工業社製)
P−100 : アイマーブP−100(ジシクロペンタジエン/芳香族共重合系水添石油樹脂、軟化点100℃、出光興産社製)
M−125 : クリアロンM−125(水添テルペン樹脂、軟化点125℃、ヤスハラケミカル社製)
M−135 : アルコンM−135(C9系水添石油樹脂、軟化点135℃、荒川化学工業社製)
【0110】
<ロジンエステル樹脂、未水添テルペン樹脂および未水添石油樹脂>
A−75 : スーパーエステルA−75(不均化ロジンエステル、軟化点75℃、荒川化学工業社製)
T−100 : YSポリスターT−100(テルペンフェノール樹脂、軟化点100℃、ヤスハラケミカル社製)
FTR−6100 : FTR−6100(非水添石油樹脂、軟化点95℃、三井化学社製)
【0111】
得られた粘着シートを以下の方法で評価した。結果を表2〜表4に示す。
【0112】
(1)粘着力(SUS)
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、準備した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着層をステンレス(SUS)板に貼り付け、2kgロールにより1往復させて試料を作製した。。次いで圧着24時間後の試料を引張試験機を用いて粘着力を測定した。なお、粘着力測定は、JIS Z0237:2000に準拠し、300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験を行った。評価基準は、下記の通りである。
◎:「粘着力が15N/25mm以上であり、非常に良好。」
○:「粘着力が10N/25mm以上15N/25mm未満であり、良好。」
△:「粘着力が5N/25mm以上10N/25mm未満であり、実用可能。」
×:「粘着力が5N/25mm未満であり、実用不可。」
【0113】
(2)粘着力(PP)
被着体をSUS板からポリプロピレン(PP)板に変更した以外は、上記同様に行い粘着力を評価した。
【0114】
(3)保持力
JIS Z0237:2000に準拠して保持力を試験した。得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに準備した。準備した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着層を、研磨した幅30mm、長さ150mmのSUS板の下端部幅25mm、長さ25mmの部分に貼着し、2kgロールで1往復させて圧着後、40℃雰囲気で粘着シートの下端部に1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シートが落下した場合は、落下した秒数を記載した。また7万秒後に粘着シートがSUS貼付面から下にずれた場合は、当初の貼付面からずれた長さを測定した。評価基準は以下の通りである。
○:「ずれた長さが0.5mm未満、良好。」
△:「ずれた長さが0.5mm以上2.0mm未満、実用可能。」
×:「ずれた長さが2.0mm以上、実用不可。」
【0115】
(4)透明性
得られた粘着シートの粘着層の透明性を目視で評価した。粘着層の外観に関して下記の評価基準に基づいて評価を行った。
○:「粘着層は透明であった。良好。」
×:「粘着層が白化(白濁)していた。実用不可。」
【0116】
(5)低温性
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着層をPP板に貼り付け、2kgロールにより1往復させて圧着後、0℃雰囲気下に24時間放置した試料を作製した。この試料を0℃雰囲気下で引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験によって粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
○:「粘着力が10N/25mm以上であり、良好。」
△:「粘着力が5N/25mm以上10N/25mm未満であり、実用可能。」
×:「粘着力が5N/25mm未満であり、実用不可。」
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
表2、3および4の実施例1〜29に示すように本発明の粘着剤は、ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂を被着体に用いた場合にも粘着力、保持力、透明性、低温性に優れていることが分かる。これに対し、表4の比較例1〜4では、いずれかの項目が不良となっており、実用不可であることがわかる。