特許第6562285号(P6562285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562285
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】蒸気タービン設備
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/10 20060101AFI20190808BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20190808BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F01D17/10 G
   F01D17/10 C
   F01D17/10 L
   F01D25/16 A
   F01D25/00 V
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-107714(P2018-107714)
(22)【出願日】2018年6月5日
(62)【分割の表示】特願2014-122866(P2014-122866)の分割
【原出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2018-150941(P2018-150941A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】高木 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 洋一朗
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−101303(JP,A)
【文献】 特開昭62−103402(JP,A)
【文献】 特開2013−137100(JP,A)
【文献】 特開昭51−014507(JP,A)
【文献】 特開昭62−168906(JP,A)
【文献】 特開昭61−268805(JP,A)
【文献】 米国特許第04604028(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 19/00
F01D 17/10、17/24
F01D 9/06
F01D 25/00、25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心として回転するロータ、及び前記ロータを回転可能に覆うケーシングを有する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンへの流入蒸気量を調節する蒸気弁と、
前記蒸気弁を制御する制御装置と、を備え、
前記ケーシングには、蒸気が流入するノズル室として、前記軸線を中心とした周方向に並ぶ4つのノズル室が形成され、
4つのノズル室のうち、第一ノズル室と第四ノズル室とが前記軸線よりも上側に配置され、第二ノズル室と第三ノズル室とが前記軸線よりも下側に配置され、且つ前記第一ノズル室と前記第二ノズル室とが前記軸線よりも前記軸線に垂直な横方向の一方側に配置され、前記第三ノズル室と前記第四ノズル室とが前記軸線よりも前記横方向の他方側に配置され、
前記蒸気弁として、前記第一ノズル室への流入蒸気量を調節する第一蒸気弁と、第二ノズル室への流入蒸気量を調節する第二蒸気弁と、前記第三ノズル室への流入蒸気量を調節する第三蒸気弁と、第四ノズル室への流入蒸気量を調節する第四蒸気弁と、を有し、
前記制御装置は、前記蒸気タービンの出力を定格出力未満の所定出力にする場合に、前記第三蒸気弁、及び前記第四蒸気弁に対して、弁開度を示す弁開度指令を出力し、前記第一蒸気弁、及び前記第二蒸気弁に対して、前記第三蒸気弁の弁開度及び前記第四蒸気弁の弁開度よりも大きな弁開度を示す弁開度指令を出力し、
前記ロータは、前記軸線よりも上側で、前記横方向の前記他方側に回転するよう構成されている、
蒸気タービン設備。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気タービン設備において、
前記第一蒸気弁及び前記第三蒸気弁は、前記軸線よりも前記横方向の前記一方側に配置され、
前記第二蒸気弁及び前記第四蒸気弁は、前記軸線よりも前記横方向の前記他方側に配置されている、
蒸気タービン設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸気タービン設備において、
前記蒸気タービンは、前記ロータを回転可能に支持する軸受装置を有し、
前記軸受装置は、前記軸線を中心とした周方向に並び且つ前記ロータの外周面に沿って配置されている複数の軸受パッドと、前記軸受パッドを前記軸線に対する径方向側から搖動可能に支持するパッドサポートと、を有する、
蒸気タービン設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンには、蒸気が流入するノズル室として、複数のノズル室が設けられているものがある。このような蒸気タービンには、複数のノズル室毎に、ノズル室への流入蒸気量を調節する蒸気加減弁が接続されている。
【0003】
以下の特許文献1には、複数のノズル室毎の蒸気加減弁の動作テストで、蒸気タービンのロータにかかる負荷を低減する方法が開示されている。
【0004】
この蒸気タービンのケーシングには、ロータの回転中心である軸線を中心として、周方向に並んだ4つのノズル室が形成されている。4つのノズル室のそれぞれには、蒸気管が接続され、この蒸気管に蒸気加減弁が設けられている。ここで、4つのノズル室のうち、一のノズル室を第一ノズル室とし、この第一ノズル室に周方向で隣接するノズル室を第二ノズル室とし、この第二ノズル室に周方向で隣接するノズル室を第三ノズル室とし、この第三ノズル室に周方向で隣接するノズル室を第四ノズル室とする。また、第一ノズル室への流入蒸気量を調節する蒸気加減弁を第一蒸気加減弁とし、第二ノズル室への流入蒸気量を調節する蒸気加減弁を第二蒸気加減弁とし、第三ノズル室への流入蒸気量を調節する蒸気加減弁を第三蒸気加減弁とし、第四ノズル室への流入蒸気量を調節する蒸気加減弁を第四蒸気加減弁とする。
【0005】
仮に、第一蒸気加減弁をテストする場合に、第三蒸気加減弁が閉まっていると、第一蒸気加減弁を閉じた際には、第二ノズル室及び第四ノズル室に蒸気が流入し、第一ノズル室及び第三ノズル室には蒸気が流入しないことになる。すなわち、軸線を基準にとして対向し合う2つのノズル室に蒸気が流入し、軸線を基準として対向し合う他の二つのノズル室に蒸気が流入しないことになる。この場合、ロータの動翼には、ロータが一回転する間に、蒸気から受ける力が大きいときと小さいときとが交互に2回ずつ発生する。このため、ロータは、一回転する間に、ショックを二回受けることになる、つまりダブルショックを受けることになる。ロータがダブルショックを受けると、一回目のショックを受けた後に、このショックが減衰しないうちに二回目のショックを受けることになり、ロータの疲労が進む。
【0006】
そこで、特許文献1では、第一蒸気加減弁と第一ノズル室とを接続する第一蒸気管と、第二蒸気加減弁と第二ノズル室とを接続する第二蒸気管とを連結管で接続すると共に、第三蒸気加減弁と第三ノズル室とを接続する第三蒸気管と、第四蒸気加減弁と第四ノズル室とを接続する第四蒸気管とを連結管で接続している。この結果、第一蒸気加減弁をテストする場合に、第三蒸気加減弁が閉まっていても、第四蒸気加減弁を通過した蒸気が連結管及び第三蒸気管を介して第三ノズル室に蒸気が流入するため、ダブルショックを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−168906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ロータを回転可能に支持する軸受装置にかかる荷重が偏荷重になることを抑える蒸気タービン設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様としての蒸気タービン設備は、
軸線を中心として回転するロータ、及び前記ロータを回転可能に覆うケーシングを有する蒸気タービンと、前記蒸気タービンへの流入蒸気量を調節する蒸気弁と、前記蒸気弁を制御する制御装置と、を備える。前記ケーシングには、蒸気が流入するノズル室として、前記軸線を中心とした周方向に並ぶ4つのノズル室が形成されている。4つのノズル室のうち、第一ノズル室と第四ノズル室とが前記軸線よりも上側に配置され、第二ノズル室と第三ノズル室とが前記軸線よりも下側に配置され、且つ前記第一ノズル室と前記第二ノズル室とが前記軸線よりも前記軸線に垂直な横方向の一方側に配置され、前記第三ノズル室と前記第四ノズル室とが前記軸線よりも前記横方向の他方側に配置されている。前記蒸気弁として、前記第一ノズル室への流入蒸気量を調節する第一蒸気弁と、第二ノズル室への流入蒸気量を調節する第二蒸気弁と、前記第三ノズル室への流入蒸気量を調節する第三蒸気弁と、第四ノズル室への流入蒸気量を調節する第四蒸気弁と、を有する。前記制御装置は、前記蒸気タービンの出力を定格出力未満の所定出力にする場合に、前記第三蒸気弁、及び前記第四蒸気弁に対して、弁開度を示す弁開度指令を出力し、前記第一蒸気弁、及び前記第二蒸気弁に対して、前記第三蒸気弁の弁開度及び前記第四蒸気弁の弁開度よりも大きな弁開度を示す弁開度指令を出力する。前記ロータは、前記軸線よりも上側で、前記横方向の前記他方側に回転するよう構成されている。
【0010】
当該蒸気タービン設備では、前記蒸気タービンの出力を定格出力未満の所定出力にする場合に、ロータを回転可能に支持する軸受装置にかかる荷重が偏荷重になることを抑えることができる。
【0011】
ここで、前記蒸気タービン設備において、前記第一蒸気弁及び前記第三蒸気弁は、前記軸線よりも前記横方向の前記一方側に配置され、前記第二蒸気弁及び前記第四蒸気弁は、前記軸線よりも前記横方向の前記他方側に配置されていてもよい。
【0012】
また、以上のいずれかの前記蒸気タービン設備において、前記蒸気タービンは、前記ロータを回転可能に支持する軸受装置を有し、前記軸受装置は、前記軸線を中心とした周方向に並び且つ前記ロータの外周面に沿って配置されている複数の軸受パッドと、前記軸受パッドを前記軸線に対する径方向側から搖動可能に支持するパッドサポートと、を有してもよい。
【0013】
当該蒸気タービン設備では、複数の軸受パッドが搖動可能に支持されているので、軸受装置におけるオイルホイップ現象の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に一態様によれば、ロータを回転可能に支持する軸受装置にかかる荷重が偏荷重になることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る一実施形態における蒸気タービン設備の構成を示す説明図である。
図2】本発明に係る一実施形態における蒸気タービンへの蒸気流入系統を示す説明図である。
図3】本発明に係る一実施形態における軸受装置の断面図である。
図4】本発明に係る一実施形態における、起動過程での各蒸気加減弁の弁開度変化を示すグラフである。
図5】本発明に係る一実施形態における、各蒸気加減弁の弁テストを行う過程での各蒸気加減弁の状態を示す説明図である。
図6】本発明に係る一実施形態における各蒸気加減弁の弁テストを行う過程での各ノズル室への流入蒸気量を示す説明図である。
図7】同図(a)は、比較例における、低出力時の各ノズル室への流入蒸気量を示す説明図であり、同図(b)は、比較例における、低出力時の軸受装置にかかる荷重を示す説明図である。
図8】同図(a)は、本発明に係る一実施形態における、低出力時の各ノズル室への流入蒸気量を示す説明図であり、同図(b)は、本発明に係る一実施形態における、低出力時の軸受装置にかかる荷重を示す説明図である。
図9】他の比較例における蒸気タービンへの蒸気流入系統を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る蒸気タービン設備の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本実施形態の蒸気タービン設備は、図1に示すように、蒸気タービン10と、蒸気タービン10に供給する蒸気が流れる蒸気管40と、蒸気止め弁46と、蒸気加減弁47と、蒸気止め弁46及び蒸気加減弁47の動作を制御する制御装置50と、を備えている。
【0018】
蒸気タービン10は、軸線Arを中心として回転するロータ11と、ロータ11を回転可能に覆うケーシング21と、を有している。なお、以下の説明の都合上、軸線Arが延びている方向を軸方向Da、軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向を横方向Dh(図2参照)とし、軸線Arを基準とした径方向を単に径方向Dr、軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとする。また、軸方向Daの一方側を上流側、軸方向Daの他方側を下流側とする。
【0019】
ロータ11は、軸線Arを中心として軸方向Daに延在しているロータ軸12と、ロータ軸12の外周に取り付けられている複数の動翼段13とを有している。複数の動翼段13は、軸方向Daに並んでいる。1つの動翼段13は、周方向Dcに並ぶ複数の動翼14を有している。
【0020】
ケーシング21には、外部からの蒸気が流入するノズル室22と、ノズル室22からの蒸気が流れる蒸気主流路室23と、蒸気主流路室23から流れた蒸気を排出する排気室24と、が形成されている。ノズル室22は、複数の動翼段13のうちで最も上流側の動翼段13aよりも上流側に形成されている。蒸気主流路室23は、ロータ軸12の外周側であって軸方向Daで複数の動翼段13が存在する領域に形成されている環状の空間である。排気室24は、蒸気主流路室23よりも下流側、言い換えると、複数の動翼段13のうちで最も下流側の動翼段13dよりも下流側に形成されている。
【0021】
ノズル室22内であって蒸気主流路室23との境界部分には、調速段ノズル25aが設けられている。調速段ノズル25aは、周方向Dcに並ぶ複数の調速静翼26aを有している(図2参照)。複数の動翼段13のうち、最も上流側の動翼段13は、軸方向Daで調速段ノズル25aと対向する調速動翼段13aを成している。複数の動翼段13のうち、調速動翼段13aよりも下流側に隣接している動翼段13が第一動翼段13bを成し、第一動翼段13bの下流側に隣接している動翼段13が第二動翼段13cを成し、最も下流側の動翼段13が最終動翼段13dを成す。
【0022】
蒸気主流路室23内であって、第一動翼段13bから最終動翼段13dまでの各動翼段13の上流側には、静翼段25が配置されている。複数の静翼段25は、いずれもケーシング21の内周側に取り付けられている。1つの静翼段25は、周方向Dcに並ぶ複数の静翼26を有している。
【0023】
ケーシング21の軸方向Daの端には、ケーシング21の内周側とロータ軸12の外周側との間をシールするシール装置29が設けられている。ロータ11の軸方向Daの両端部は、軸受装置30により支持されている。
【0024】
軸受装置30は、図3に示すように、ロータ軸12の外周側に周方向Dcに並んでいる4つの軸受パッド31と、軸受パッド31を支持するパッドサポート32と、軸受パッド31及びパッドサポート32を覆う軸受ケース33と、を有する。軸受パッド31は、円弧状を成している。この軸受パッド31の内周面31iの半径は、ロータ軸12中で軸受パッド31が配置されている位置におけるロータ軸12の半径よりも大きい。軸受パッド31の外周面31oであって、軸受パッド31の周方向Dcの中間部は、パッドサポート32に接している。パッドサポート32は、円筒状の軸受ケース33の内周面に固定されている。軸受パッド31は、以上のようにパッドサポート32に支持されることで、軸線Arに対して垂直な仮想平面内において、パッドサポート32との接触位置を中心として搖動できる。さらに、軸受パッド31は、パッドサポート32との接触位置及び軸線Arを含む仮想平面内で、パッドサポート32との接触位置を中心として搖動できる。
【0025】
ロータ11を回転させる際には、各軸受パッド31の内周面31iとロータ軸12の外周面との間に油を存在させる。滑り軸受では、オイルホイップ現象が問題となることがある。このオイルホイップ現象とは、回転軸の質量のアンバランス、回転軸に対する軸受装置の組み立て公差等に起因して、油に発生する不安定振動のとこである。本実施形態では、搖動する軸受パッド31を有する軸受装置30、つまりティルティング軸受装置を用いることで、このオイルホイップ現象の発生を抑えている。
【0026】
本実施形態のケーシング21には、図2に示すように、4つのノズル室22が形成されている。4つのノズル室22は、軸線Arを中心として、周方向Dcに並んでいる。ここで、4つのノズル室22のうちの1つのノズル室22を第一ノズル室22Aとし、この第一ノズル室22Aに対して、周方向Dcでロータ11の回転方向Rと逆方向の側である回転反対側Rcに隣接しているノズル室22を第二ノズル室22Bとする。さらに、この第二ノズル室22Bに対して、周方向Dcの回転反対側Rcに隣接しているノズル室22を第三ノズル室22Cとし、第三ノズル室22Cに対して、周方向Dcの回転反対側Rcに隣接しているノズル室22を第四ノズル室22Dとする。すなわち、本実施形態において、4つのノズル室22は、周方向Dcの回転反対側Rcに向かって、第一ノズル室22A、第二ノズル室22B、第三ノズル室22C、第四ノズル室22Dの順で並んでいる。
【0027】
第一ノズル室22A及び第四ノズル室22Dは軸線Arよりも上側に配置され、第二ノズル室22B及び第三ノズル室22Cは軸線Arよりも下側に配置されている。また、第一ノズル室22A及び第二ノズル室22Bは、軸線Arよりも横方向Dhの一方側に配置され、第三ノズル室22C及び第四ノズル室22Dは軸線Arよりも横方向Dhの他方側に配置されている。
【0028】
蒸気管40は、ボイラー等の蒸気供給源からの蒸気が流れる蒸気主管41と、蒸気主管41に接続されている2本の蒸気分岐管42a,42bと、蒸気分岐管42a,42bに接続されている4本のノズル室蒸気管43a,43b,43c,43dと、を有する。すなわち、本実施形態の蒸気管40は、蒸気主管41が2つに分岐して、一方が第一蒸気分岐管42aを成し、他方が第二蒸気分岐管42bを成す。さらに、第一蒸気分岐管42aが2つに分岐して、一方が第一ノズル室蒸気管43aを成し、他方が第三ノズル室蒸気管43cを成し、第二蒸気分岐管42bが2つに分岐して、一方が第二ノズル室蒸気管43bを成し、他方が第四ノズル室分岐管42dを成す。
【0029】
4本のノズル室蒸気管43a,43b,43c,43dのうち、第一ノズル室蒸気管43aは、第一ノズル室22Aに接続されている。第二ノズル室蒸気管43bは第二ノズル室22Bに接続され、第三ノズル室蒸気管43cは第三ノズル室22Cに接続され、第四ノズル室蒸気管43dは第四ノズル室22Dに接続されている。
【0030】
4本のノズル室蒸気管43a,43b,43c,43dのそれぞれには、蒸気止め弁46及び蒸気加減弁47が設けられている。
【0031】
第一ノズル室蒸気管43aに設けられている第一蒸気止め弁46A及び第一蒸気加減弁47Aは、第一ノズル室22Aと同様に、軸線Arを基準として、横方向Dhの一方側に配置されている。第二ノズル室蒸気管43bに設けられている第二蒸気止め弁46B及び第二蒸気加減弁47Bは、第二ノズル室22Bと異なり、軸線Arを基準として横方向Dhの他方側に配置されている。第三ノズル室蒸気管43cに設けられている第三蒸気止め弁46C及び第三蒸気加減弁47Cは、第三ノズル室22Cと異なり、軸線Arを基準として横方向Dhの一方側に配置されている。第四ノズル室蒸気管43dに設けられている第四蒸気止め弁46D及び第四蒸気加減弁47Dは、第四ノズル室22Dと同様に、軸線Arを基準として横方向Dhの他方側に配置されている。
【0032】
各蒸気止め弁46及び各蒸気加減弁47は、いずれも制御装置50からの指令により動作する。この制御装置50は、各種指示や各種検知データ等を受け付ける受付部51と、受付部51が受け付けた各種指示や各種検知データ等に基づいて、各蒸気止め弁46及び各蒸気加減弁47に対して弁開度指令を出力する指令出力部52と、を有する。
【0033】
次に、以上で説明した蒸気タービン設備の動作、及び各弁のテスト方法について説明する。
【0034】
制御装置50の受付部51は、上位装置等から蒸気タービン起動の指示を受け付けると、例えば、予め定められた起動時開度パターンに従った弁開度を示す弁開度指令を、各蒸気止め弁46及び各蒸気加減弁47に出力する。なお、起動時における各蒸気止め弁46及び各蒸気加減弁47の開度は、例えば、蒸気主管41内を通る蒸気の温度に応じて定めてもよい。
【0035】
図4に、各蒸気加減弁47の起動時開度パターンを示す。なお、図4中の横軸は蒸気タービン出力(%)で、縦軸は弁開度(%)である。蒸気タービン出力(%)は、この蒸気タービン10の定格出力(MW)に対するそのときの蒸気タービン10の実際の出力(MW)の割合である。各蒸気止め弁46は、対応する蒸気加減弁47が開き始める前に開状態にされる。
【0036】
制御装置50の指令出力部52は、受付部51が蒸気タービン起動の指示を受け付けると、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bに対して、弁開度を徐々に開ける旨を示す弁開度指令を出力する。制御装置50の指令出力部52は、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bの弁開度がほぼ50%になると、第三蒸気加減弁47Cに対しても、弁開度を徐々に開ける旨を示す弁開度指令を出力する。
【0037】
制御装置50の指令出力部52は、第一蒸気加減弁47A、第二蒸気加減弁47B、第三蒸気加減弁47Cに対して、弁開度を徐々に開ける旨を示す弁開度指令を出力している過程で、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bの弁開度がほぼ75%になり、且つ第三蒸気加減弁47Cの弁開度がほぼ25%になると、第四蒸気加減弁47Dに対しても、弁開度を徐々に開ける旨を示す弁開度指令を出力する。
【0038】
本実施形態では、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bの弁開度が100%になり、第三蒸気加減弁47Cの弁開度が50%になり、且つ第四蒸気加減弁47Dの弁開度が10%になると、蒸気タービン出力が100%になる、言い換えると、定格出力になる。
【0039】
蒸気タービン出力が定格出力になった以降、本実施形態では、基本的に、例えば、第三蒸気加減弁47Cの弁開度のみを変更して、負荷変動等に対応する。このため、本実施形態では、蒸気タービン出力が定格出力より低い場合、基本的に、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開になっている。
【0040】
ところで、図7に示すように、比較例における4つのノズル室28が、周方向Dcでロータの回転方向の側であるロータ回転側Rrに向かって、第一ノズル室28A、第二ノズル室28B、第四ノズル室28D、第三ノズル室28C、の順で並んでいるとする。さらに、第一ノズル室28A及び第二ノズル室28Bが軸線Arよりも下側に配され、第三ノズル室28C及び第四ノズル室28Dが軸線Arよりも上側に配置されているとする。また、第二ノズル室28B及び第四ノズル室28Dが軸線Arよりも横方向Dhの一方側に配置され、第一ノズル室28A及び第三ノズル室28Cが軸線Arよりも横方向Dhの他方側に配置されているとする。
【0041】
この比較例で、蒸気タービンの起動時を含め、蒸気タービン出力が定格出力より低く、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開又は全閉になっている場合、軸線Arよりも下側に配置されている第一ノズル室28A及び第二ノズル室28Bには、多くの流量の蒸気が供給され、軸線Arよりも上側に配置されている第三ノズル室28C及び第四ノズル室28Dには、ほとんど蒸気が供給されない。
【0042】
このように、実質的に下半のノズル室28A,28Bのみからの蒸気により、ロータ11が回転する場合、ロータ11には、軸線Arの真下の位置で、ロータ回転側Rrに向かう蒸気力Fcが、ロータ11を回転させる力として作用する。このロータ11には、この蒸気力Fcの他に、重力Wが鉛直下方に作用する。よって、ロータ11には、蒸気力Fcと重力Wとの合力として、下方に向かいつつ横方向Dhの一方側に向かう斜め下方向の力Cがかかる。
【0043】
よって、比較例では、蒸気タービン出力が定格出力より低い場合、このロータ11を回転可能に支持する軸受装置30の4つの軸受パッド31のうち、軸線Arを基準にして斜め下方向に位置する軸受パッド31aが、ロータ11にかかる力Cのほとんどを受けることになる。つまり、軸受装置30に偏荷重がかかる。この結果、4つの軸受パッド31のうちの一の軸受パッド31aのメタル温度のみが高まり、この軸受パッド31aが他の軸受パッド31よりも早く摩耗する。また、4つの軸受パッド31のうちの一の軸受パッド31aが他の軸受パッド31よりも早く摩耗すると、ロータ11の振動にもつながる。
【0044】
一方、本実施形態では、蒸気タービン10の起動時を含め、蒸気タービン出力が定格出力より低く、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開又は全閉になっている場合、軸線Arよりも横方向Dhの一方側に配置されている第一ノズル室22A及び第二ノズル室22Bには、多くの流量の蒸気が供給され、軸線Arよりも横方向Dhの他方側に配置されている第三ノズル室22C及び第四ノズル室22Dには、ほとんど蒸気が供給されない。
【0045】
このように、実質的に横半のノズル室22A,22Bのみからの蒸気により、ロータ11が回転する場合、ロータ11には、軸線Arの真横の位置で、ロータ回転側Rrに向かう蒸気力Fが、ロータ11を回転させる力として作用する。このロータ11には、この蒸気力Fの他に、重力Wが鉛直下方に作用する。よって、ロータ11には、蒸気力Fと重力Wとが互いに打ち消し合って、これらの合力として、蒸気力や重力よりも小さい力Cが鉛直方向に作用する。
【0046】
よって、本実施形態では、4つの軸受パッド31のうち、特定の軸受パッド31に対して多大な荷重がかかるのを抑えることができる。つまり、本実施形態では、軸受装置30にかかる荷重が偏荷重になることを抑えることができる。この結果、各軸受パッド31の寿命が平均化して、各軸受パッド31の寿命を長くすることができる上に、軸受装置30の偏摩耗によるロータ11の振動も抑えることができる。
【0047】
また、別の比較例について考察する。この比較例では、図9に示すように、第一ノズル室22A及び第一蒸気加減弁47Aが、共に軸線Arを基準として横方向Dhの一方側に配置され、且つ第二ノズル室22B及び第二蒸気加減弁47Bも、共に軸線Arを基準として横方向Dhの一方側に配置されている。
【0048】
この比較例では、蒸気タービン出力が定格出力より低く、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開又は全閉になっている場合、蒸気主管41に接続されている2本の蒸気分岐管42a,42bのうち、横方向Dhの一方側に配置されて、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bに蒸気を供給する第一蒸気分岐管42aには多くの蒸気が流れ、横方向Dhの他方側に配置されて、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dに蒸気を供給する第二蒸気分岐管42bにはほとんど蒸気が流れない。
【0049】
このように、蒸気がほとんど流れず、蒸気が滞留してしまう蒸気管42bが存在すると、この蒸気管42bにドレンが溜まり、この蒸気管42bに多くの蒸気を流したときに、蒸気管42b中のドレンが蒸気タービン10に流れ込み、動翼や静翼等の損傷原因となる。
【0050】
そこで、本実施形態では、図2を用いて前述したように、第一ノズル室22A及び第一蒸気加減弁47Aが、共に軸線Arを基準として横方向Dhの一方側に配置され、第二ノズル室22Bが、軸線Arを基準にして横方向Dhの一方側に配置されているものの、第二蒸気加減弁47Bが、軸線Arを基準にして横方向Dhの他方側に配置されている。
【0051】
このため、本実施形態では、蒸気タービン出力が定格出力より低く、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開(開度100%)で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dが微開又は全閉になっている場合でも、蒸気主管41に接続されている2本の蒸気分岐管42a,42bのうち、横方向Dhに一方側に配置されて、第一蒸気加減弁47Aに蒸気を供給する第一蒸気分岐管42aと、横方向Dhの他方側に配置されて、第二蒸気加減弁47Bに蒸気を供給する第二蒸気分岐管42bとの双方に、比較的多くの流量の蒸気が流れる。よって、本実施形態では、2本の蒸気分岐管42a,42bのいずれか一方に、蒸気のドレンが溜まることを抑えることができる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、軸受装置30の寿命延長、ロータ11の振動低減、及び蒸気管40中のドレン抑制の観点から、4つのノズル室22、4つの蒸気加減弁47、4つの蒸気止め弁46の配置を図2に示す配置にしている。
【0053】
しかしながら、4つのノズル室22、4つの蒸気加減弁47、4つの蒸気止め弁46の配置を図2に示す配置にした結果、本実施形態では、弁テスト時のダブルショックを抑えるために、第一ノズル室蒸気管43aと第二ノズル室蒸気管43bとを連結管で接続することが困難になっている。
【0054】
そこで、本実施形態では、連結管を設けなくても、弁テスト時のダブルショックを抑えるための弁操作を行う。
【0055】
本実施形態の弁テストでは、例えば、蒸気タービン10が定格出力のときに、第一蒸気加減弁47A、第二蒸気加減弁47B、第三蒸気加減弁47C、第四蒸気加減弁47Dの順で、これら弁をテストする。この弁テストでは、制御装置50からテスト対象の弁に対して、全閉を示す弁開度指令が出力された後に、このテスト対象の弁が実際に全閉状態になったか否かを確認する。
【0056】
蒸気タービン10が定格出力のとき、図4を用いて前述したように、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bの全開(弁開度100%)で、第三蒸気加減弁47Cの弁開度が50%で、第四蒸気加減弁47Dの弁開度が10%である。ここで、図5及び図6に示すように、蒸気タービン10が定格出力のときの4つの蒸気加減弁47の状態を第0状態とする。なお、図6において、ノズル室22中の白色領域の面積がそのノズル室22に流入する蒸気流量を示している。
【0057】
第一蒸気加減弁47Aをテストする場合、第一蒸気加減弁47A及び第二蒸気加減弁47Bが全開の状態である。一方で、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を25%にする(第1状態)。第0状態から第1状態への移行過程では、制御装置50の指令出力部52が第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dに対して弁開度揃え指令を出力し、第三蒸気加減弁47Cの弁開度と第四蒸気加減弁47Dの弁開度とを揃える開度揃え工程を実行する。この開度揃え工程の実行の前後で、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実質的に変わらないように、第三蒸気加減弁47Cが僅かに閉じられて、第三蒸気加減弁47Cの弁開度が50%から25%になり、第四蒸気加減弁47Dが僅かに開けられて、第四蒸気加減弁47Dの弁開度が10%から25%になる。なお、本実施形態では、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実質的に変わらないとは、蒸気流量の変動が10%以内であることである。
【0058】
次に、第二蒸気加減弁47Bを全開状態のままで、テスト対象である第一蒸気加減弁47Aを全閉にする対象弁全閉工程を実行する。この際、制御装置50の指令出力部52は、この第一蒸気加減弁47Aに対して全閉を示すテスト開度指令を出力する。さらに、制御装置50の指令出力部52は、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dに対して対象外弁開度変更指令を出力し、対象弁全閉工程に同期させて、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を75%にする開度同期変更工程を実行する。
【0059】
開度同期変更工程では、テスト対象である第一蒸気加減弁47Aが閉動作を開始するタイミングに合わせて、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの開動作が開始し、第一蒸気加減弁47Aが全閉になるタイミングに合わせて、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの開動作が終了する。さらに、この開度同期変更工程では、第三蒸気加減弁47Cの弁開度と第四蒸気加減弁47Dの弁開度とが揃っている状態を維持して、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を変更する。また、対象弁全閉工程及び開度同期変更工程の実行の前後で、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実施的に変わらないように、第一蒸気加減弁47Aの弁開度を100%から0%にするにあたって、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を25%から75%に変更する。
【0060】
対象弁全閉工程及び開度同期変更工程の実行で、4つの蒸気加減弁47は、第2状態になる。この第2状態で、テスト対象の第一蒸気加減弁47Aが実際に全閉状態になったか否かを確認する。
【0061】
以上のように、本実施形態の弁テストでは、テスト対象の第一蒸気加減弁47Aが全閉状態になった時点で、第一蒸気加減弁47Aを除く他の全ての蒸気加減弁47、つまり第二〜第四蒸気加減弁47B,47C,47Dが開状態になっている。このため、弁テスト時には、4つのノズル室22のうち、1つのノズル室22Aには蒸気が供給されてないものの、他の三つのノズル室22B,22C,22Dの全てに蒸気が供給されるので、弁テスト時のダブルショックの発生を抑えることができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、対象弁全閉工程に同期して実行される開度同期変更工程では、第三蒸気加減弁47Cの弁開度と第四蒸気加減弁47Dの弁開度とが揃っている状態を維持しつつ、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を変更するので、この工程中における第三ノズル室22Cに流入する蒸気流量と第四ノズル室22Dに流入する蒸気流量とが同じになる。このため、本実施形態では、ロータ11が一回転する間に、ロータ11の動翼14が第三ノズル室22Cから流出した蒸気から受ける力と、第四ノズル室22Dから流出した蒸気から受ける力とが同じになり、第1状態から第2状態への移行過程、及び第2状態でのロータ11にかかるショックを低減することができる。
【0063】
なお、以上において、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dに対して実行する開度揃え工程及び開度同期変更工程が、対象外弁開工程となる。
【0064】
次に、第三蒸気加減弁47C及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を75%に維持して、第二蒸気加減弁47Bを全開から全閉に変更する(対象弁全閉工程)。この対象弁全閉工程に同期させて第一蒸気加減弁47Aを全閉から全開に変更する(開度同期変更工程、対象外弁開工程)。
【0065】
これら対象弁全閉工程及び開度同期変更工程の実行で、4つの蒸気加減弁47は、第2状態から第3状態になる。この第3状態で、テスト対象の第二蒸気加減弁47Bが実際に全閉状態になったか否かを確認する。
【0066】
以上のように、本実施形態の弁テストでは、テスト対象の第二蒸気加減弁47Bが全閉状態になった時点で、第二蒸気加減弁47Bを除く他の全ての蒸気加減弁47が開状態になっている。このため、第二蒸気加減弁47Bの弁テスト時においても、ダブルショックの発生を抑えることができる。
【0067】
さらに、本実施形態の弁テストでは、第2状態から第3状態への移行過程、及び第3状態で、第三ノズル室22Cに流入する蒸気流量と第四ノズル室22Dに流入する蒸気流量とが同じになる。よって、第2状態から第3状態への移行過程、及び第3状態でも、ロータ11にかかるショックを低減することができる。
【0068】
次に、4つの蒸気加減弁47を第4状態にした後に、第5状態にして、第三蒸気加減弁47Cが実際に全閉状態になったか否かを確認する。
【0069】
4つの蒸気加減弁47を第3状態から第4状態にする際には、第一蒸気加減弁47Aを全開に、第三蒸気加減弁47Cの弁開度を75%に維持して、第二蒸気加減弁47B及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を38%にする(開度揃え工程)。この開度揃え工程でも、開度揃え工程の実行の前後で、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実質的に変わらないように、第二蒸気加減弁47B及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を変更する。
【0070】
4つの蒸気加減弁47を第4状態から第5状態にする際、第一蒸気加減弁47Aが全開の状態である。この状態で、弁開度が75%の第三蒸気加減弁47Cを全閉にすると共に(対象弁全閉工程)、この対象弁全閉工程に同期させて、第二蒸気加減弁47B及び第四蒸気加減弁47Dの弁開度を75%にする(開度同期変更工程)。
【0071】
以上のように、本実施形態の弁テストでは、テスト対象の第三蒸気加減弁47Cが全閉状態になった時点で、第三蒸気加減弁47Cを除く他の全ての蒸気加減弁47が開状態になっている。このため、第三蒸気加減弁47Cの弁テスト時においても、ダブルショックの発生を抑えることができる。
【0072】
さらに、本実施形態の弁テストでは、第4状態から第5状態への移行過程、及び第5状態で、第二ノズル室22Bに流入する蒸気流量と第四ノズル室22Dに流入する蒸気流量とが同じになる。よって、第4状態から第5状態への移行過程、及び第5状態でも、ロータ11にかかるショックを低減することができる。
【0073】
次に、4つの蒸気加減弁47を第6状態にした後に、第7状態にして、第四蒸気加減弁47Dが実際に全閉状態になったか否かを確認する。
【0074】
4つの蒸気加減弁47を第5状態から第6状態にする際には、第一蒸気加減弁47Aを全開に、第四蒸気加減弁47Dの弁開度を75%に維持して、第二蒸気加減弁47B及び第三蒸気加減弁47Cの弁開度を38%にする(開度揃え工程)。この開度揃え工程でも、開度揃え工程の実行の前後で、蒸気タービン10に流入する蒸気流量が実質的に変わらないように、第二蒸気加減弁47B及び第三蒸気加減弁47Cの弁開度を変更する。
【0075】
4つの蒸気加減弁47を第6状態から第7状態にする際、第一蒸気加減弁47Aが全開の状態である。この状態で、弁開度が75%の第四蒸気加減弁47Dを全閉にすると共に(対象弁全閉工程)、この対象弁全閉工程に同期させて、第二蒸気加減弁47B及び第三蒸気加減弁47Cの弁開度を75%にする(開度同期変更工程)。
【0076】
以上のように、本実施形態の弁テストでは、テスト対象の第四蒸気加減弁47Dが全閉状態になった時点で、第四蒸気加減弁47Dを除く他の全ての蒸気加減弁47が開状態になっている。このため、第四蒸気加減弁47Dの弁テスト時においても、ダブルショックの発生を抑えることができる。
【0077】
さらに、本実施形態の弁テストでは、第6状態から第7状態への移行過程、及び第7状態で、第二ノズル室22Bに流入する蒸気流量と第三ノズル室22Cに流入する蒸気流量とが同じになる。よって、第6状態から第7状態への移行過程、及び第7状態でも、ロータ11にかかるショックを低減することができる。
【0078】
以上で、4つの蒸気加減弁47全てのテストが終了する。なお、以上では、蒸気加減弁47の動作のみを説明したが、蒸気止め弁46は、対応する蒸気加減弁47が全閉になった直後に全閉になり、対応する蒸気加減弁47が開き始める前に全開になる。
【0079】
以上、本実施形態の弁テストでは、連結管を設けなくても、テスト対象の蒸気加減弁47が全閉状態になった時点で、テスト対象の蒸気加減弁47を除く他の全ての蒸気加減弁47を開状態にしているので、連結管を設けなくても、弁テスト時のダブルショックの発生を抑えることができる。従って、弁テスト時のダブルショックの発生を抑えつつも、設備コストの増加を抑えることができる。
【0080】
なお、以上では、第一蒸気加減弁47A、第二蒸気加減弁47B、第三蒸気加減弁47C、第四蒸気加減弁47Dの順で弁テストする例について説明したが、この順は適宜変更可能である。
【0081】
また、本実施形態における蒸気タービン設備では、4つのノズル室22と、各ノズル室22に流入する蒸気流量を調節する蒸気加減弁47とを備えている。しかしながら、ノズル室22の数量が4つでない、例えば、8つの場合でも、以上で説明したテスト方法を実行することで、弁テスト時のダブルショックの発生を抑えつつも、設備コストの増加を抑えることができる。
【0082】
また、蒸気タービン10の出力が定格出力より小さい場合では、軸受装置30にかかる荷重が偏荷重になることを抑えることができる。このため、軸受装置30の寿命を長くすることができる上に、軸受装置30の偏摩耗によるロータ11の振動も抑えることができる。
【0083】
なお、本実施形態の軸受装置30は、複数の軸受パッド31が搖動するティルティング軸受装置である。しかしながら、軸受パッドが搖動しないタイプの軸受装置であっても、4つのノズル室及び4つの蒸気止め弁の配置を図2に示すように配置することで、蒸気タービンの出力が定格出力より小さい場合に、軸受装置にかかる荷重が偏荷重になることを抑えることができる。
【符号の説明】
【0084】
10:蒸気タービン、11:ロータ、12:ロータ軸、13:動翼段、13a:調速動翼段、14:動翼、21:ケーシング、22:ノズル室、22A:第一ノズル室、22B:第二ノズル室、22C:第三ノズル室、22D:第四ノズル室、23:蒸気主流路室、24:排気室、25:静翼段、25a:調速段ノズル、26:静翼、26a:調速静翼、29:シール室、30:軸受装置、31:軸受パッド、32:パッドサポート、33:軸受ケース、40:蒸気管、41:蒸気主管、41a:第一蒸気分岐管(蒸気分岐管)、41b:第二蒸気分岐管(蒸気分岐管)、43a:第一ノズル室蒸気管(ノズル室蒸気管)、43b:第二ノズル室蒸気管(ノズル室蒸気管)、43c:第三ノズル室蒸気管(ノズル室蒸気管)、43d:第四ノズル室蒸気管(ノズル室蒸気管)、46A:第一蒸気止め弁(蒸気止め弁)、46B:第二蒸気止め弁(蒸気止め弁)、46C:第三蒸気止め弁(蒸気止め弁)、46D:第四蒸気止め弁(蒸気止め弁)、47A:第一蒸気加減弁(蒸気弁、蒸気加減弁)、47B:第二蒸気加減弁(蒸気弁、蒸気加減弁)、47C:第三蒸気加減弁(蒸気弁、蒸気加減弁)、47D:第四蒸気加減弁(蒸気弁、蒸気加減弁)、50:制御装置、51:受付部、52:指令出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9