(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562296
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ピストンの往復運動機構、ポンプ、コンプレッサー、及び真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 9/04 20060101AFI20190808BHJP
F04B 35/01 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
F04B9/04 C
F04B35/01 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-127950(P2015-127950)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-8894(P2017-8894A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】501202451
【氏名又は名称】株式会社郷田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】郷田 元宏
【審査官】
原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/035091(WO,A2)
【文献】
特開昭49−063877(JP,A)
【文献】
特表2009−538801(JP,A)
【文献】
実開昭59−027162(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 9/04
F04B 35/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に配置されたピストンの移動方向を表す直線上に軸心を持つように配置したロータの回転運動を前記直線上の往復運動に変換して前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動させるピストンの往復運動機構であって、
前記ロータの側面に配置されたローラと、
前記ピストンの前記ロータ側に形成され前記ロータを収容する収容部と、
前記収容部の前記ロータに対向する内周面において前記直線方向に振幅しつつ周回する波型形状を有するように形成されるとともに前記ローラが収容され、前記ロータの回転に伴って前記ローラが転接するとともに前記波型形状に倣って前記ローラから力を受けて振幅することにより前記ピストンを前記直線上で往復運動させるカム溝と、
を有し、
前記内周面には、前記収容部の開口部から前記収容部の深さ方向に延びて前記カム溝に連通するとともに、前記ローラを前記開口部側から収容可能な導入溝が配置され、
前記導入溝は、前記シリンダ内のエアを圧縮させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分に連通していることを特徴とするピストンの往復運動機構。
【請求項2】
前記ローラは、ベアリング構造を有することを特徴とする請求項1に記載のピストンの往復運動機構。
【請求項3】
前記ローラは、
前記ロータの回転軸を挟むように一対で取り付けられ、
前記カム溝は、前記内周面の半周あたり1周期振幅していることを特徴とする請求項1又は2項に記載のピストンの往復運動機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のピストンの往復運動機構の前記シリンダに吸入弁と吐出弁が取り付けられてなることを特徴とするポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のピストンの往復運動機構の前記シリンダに吸入弁と吐出弁が取り付けられてなるコンプレッサーであって、前記シリンダ内のエアを吐出させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分の傾きが、前記シリンダ内にエアを吸引させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分の傾きよりも緩やかになっていることを特徴とするコンプレッサー。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のピストンの往復運動機構の前記シリンダに吸入弁と吐出弁が取り付けられてなる真空ポンプであって、前記シリンダ内にエアを吸引させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分の傾きが、前記シリンダ内のエアを吐出させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分の傾きよりも緩やかになっていることを特徴とする真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンの往復運動機構、およびこれを用いたポンプ、コンプレッサー、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年発達してきた自立型のロボット、自立型搬送機器、ウェラブル機器などに搭載されるポンプ、コンプレッサー等はバッテリーで駆動する。このため、限られたエネルギーを使って最大の機能を発揮するためには、可能な限り軽量、低消費電力、コンパクトである必要がある。そこで、モータの回転運動を往復運動に変換するとともに、クランク及びカウンターウエイトを使用しないピストンの往復運動機構が提案されている。
【0003】
特許文献1は、シリンダ内を移動するピストンの外周にシリンダの往復方向に振幅する波型形状を有するカム溝を形成し、シリンダの内壁にカム溝が入り込む凸部を設け、ピストンに係合したロータを回転させ、波型形状に倣ってカム溝が凸部に印加する力の反作用を利用して、ピストンにシリンダ内を往復運動させる流体吸入吐出装置を開示しており、特許文献2も同様の技術を開示している。しかし、特許文献1,2では、ピストンを回転させる必要があるので、その分ロータを回転させるモータにも負荷がかかりモータの省電力化及び小型化が困難である。また、ピストンが往復運動のみならず回転運動も行うため、その分シリンダとの間の摩擦による摩耗が促進され、シリンダ内の気密性が破壊されやすくなる。
【0004】
特許文献3は、シリンダ内に配置されたピストンを貫通するロータの外周に複合円筒溝カムを形成し、ピストンの内周に複合円筒溝カムに係合する従動片を取り付け、ロータの回転により従動片が複合円筒溝カムから力を受けることにより、ピストンを往復運動させる構成を開示している。
【0005】
特許文献4は、シリンダ内に配置されたピストンの移動方向に平行に配置された固定レールと、ピストンに接続されるとともに前記固定レールに沿ってスライドするローラ軸と、ピストンの移動方向に同軸に配置されピストンの移動方向に振幅する波型形状を有しローラ軸の両端にあるローラが転接する内肛溝カムと、を有し、内肛溝カムの回転により、内肛門カムの回転に伴う力をローラが受けることにより、ピストン及びローラ軸が固定レールのスライド方向において往復運動するパワー伝達機構を開示している。
【0006】
特許文献3,4の構成であれば、ピストンが回転することはないので、その分モータに対する負荷が軽減され、モータの省電力化及び小型化がある程度可能である。またピストンが回転しないので、特許文献1,2の場合のようなピストンの摩耗の促進はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−52540号公報
【特許文献2】特開平8−144948号公報
【特許文献3】特開2000−170655号公報
【特許文献4】特表2008−520878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3の構成では、ピストンに従動片を取り付ける必要があるためピストンの軽量化には限界があり、これに伴いピストンからの負荷を受けるモータの省電力化及び小型化にも限界がある。また、特許文献4の構成では、ピストンの外部にピストンを往復運動させる機構が配置されているため、機構そのものの小型化及び軽量化が困難となる。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に着目し、ピストンを往復運動させる機構を小型化及び軽量化させるとともに、ピストンからの負荷を低下させることにより機構に取り付けるモータの省電力化及び小型化が可能なピストンの往復運動機構、およびこれを用いたポンプ、コンプレッサー、真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本実施形態のピストンの往復運動機構は、第1には、シリンダ内に配置されたピストンの移動方向を表す直線上に軸心を持つように配置したロータの回転運動を前記直線上の往復運動に変換して前記ピストンを前記シリンダ内で往復運動させるピストンの往復運動機構であって、
前記ロータの側面に配置されたローラと、
前記ピストンの前記ロータ側に形成され前記ロータを収容する収容部と、
前記収容部の前記ロータに対向する内周面において前記直線方向に振幅しつつ周回する波型形状を有するように形成されるとともに前記ローラが収容され、前記ロータの回転に伴って前記ローラが転接するとともに前記波型形状に倣って前記ローラから力を受けて振幅することにより前記ピストンを前記直線上で往復運動させるカム溝と、
を有
し、
前記内周面には、前記収容部の開口部から前記収容部の深さ方向に延びて前記カム溝に連通するとともに、前記ローラを前記開口部側から収容可能な導入溝が配置され、
前記導入溝は、前記シリンダ内のエアを圧縮させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分に連通していることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、ピストンを往復運動させる機構がピストン内部に配置されるので、機構全体を小型化及び軽量化することができる。また、ピストンは、回転運動はせず往復運動を行うのみであるとともに、ピストンは収容部とカム溝により軽量化されるので、ロータを回転させるモータに対する負荷を軽減することができる。また、ローラはカム溝に転接するのでカム溝とローラとの間の摩擦を低減することができる。したがって、ロータを回転させるモータの省電力化及び小型化を効率的に行うことができる。
【0012】
第2には、前記ローラは、ベアリング構造を有することを特徴とする。
上記構成により、カム溝とローラとの間の摩擦をさらに軽減することができる。これにより、ロータを回転させるモータがピストンから受ける負荷をさらに軽減することができる。したがって、ロータを回転させるモータをさらに省電力化及び小型化することができる。
【0013】
第3には、前記内周面には、前記収容部の開口部から前記収容部の深さ方向に延びて前記カム溝に連通するとともに、前記ローラを前記開口部側から収容可能な導入溝が配置され、前記導入溝は、前記シリンダ内のエアを圧縮させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分に連通していることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、ローラを容易にカム溝に収容できるとともに、カム溝と導入溝の連通部分にはローラは入り込まないので、ピストンが往復運動中でもローラがカム溝から外れることはなく、ピストンを確実に往復運動させることができる。
【0015】
第4には、前記ローラは、前記ロータの回転軸を挟むように一対で取り付けられ、前記カム溝は、前記内周面の半周あたり1周期振幅していることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、一対のローラをカム溝により同期して振幅させることができる。またピストンには平面視で中心対称となる2箇所においてローラから力を受けるので、ピストンに対して往復運動に起因する力を均一に印加することができ、ピストンの往復運動を安定化させることができる。
【0017】
本発明に係るポンプは、前述のピストンの往復運動機構の前記シリンダに吸入弁と吐出弁が取り付けられてなることを特徴とする。
上記構成により、機構全体を小型化・軽量化するとともに、機構に取り付けられるモータの省電力化及び小型化が可能なポンプとなる。
【0018】
本発明に係るコンプレッサーは、前述のピストンの往復運動機構の前記シリンダに吸入弁と吐出弁が取り付けられてなるコンプレッサーであって、前記シリンダ内のエアを吐出させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分の傾きが、前記シリンダ内にエアを吸引させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分の傾きよりも緩やかになっていることを特徴とする。
【0019】
上記構成により、機構全体を小型化・軽量化するとともに、機構に取り付けるモータの省電力化及び小型化が可能なコンプレッサーとなる。また、エアを吐出するときのピストンに印加する力を、ピストンを引き戻す際にピストンに印加する力よりも大きくすることができるので、シリンダ内のエアを強い力で排出可能なコンプレッサーとなる。
【0020】
本発明に係る真空ポンプは、前述のピストンの往復運動機構の前記シリンダに吸入弁と吐出弁が取り付けられてなる真空ポンプであって、前記シリンダ内にエアを吸引させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分の傾きが、前記シリンダ内のエアを吐出させる方向に前記ピストンを移動させる前記カム溝の部分の傾きよりも緩やかになっていることを特徴とする。
【0021】
上記構成により、機構全体を小型化・軽量化するとともに、機構に取り付けるモータの省電力化及び小型化が可能な真空ポンプとなる。また、ピストンを引き戻す際にピストンに印加する力を、ピストンを繰り出す際にピストンに印加する力よりも大きくすることができるので、シリンダにエアを強い力で吸引可能な真空ポンプとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るピストンの往復運動機構によれば、ピストンを往復運動させる機構がピストン内部に配置されるので、機構全体を小型化及び軽量化することができる。また、ピストンは、回転運動はせず往復運動を行うのみであるとともに、ピストンは収容部とカム溝により軽量化されるので、ロータを回転させるモータに対する負荷を軽減することができる。また、ローラはカム溝に転接するのでカム溝とローラとの間の摩擦を低減することができる。したがって、ロータを回転させるモータの省電力化及び小型化を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態のピストンの往復運動機構を備えたポンプの一実施例であり、ピストンが下死点にあるときの正面の断面図であり、A矢視図も併せて表している。
【
図2】本実施形態のピストンの往復運動機構を備えたポンプの一実施例であり、ピストンが上死点にあるときの正面の断面図である。
【
図3】本実施形態のピストンの往復運動機構のピストンの断面図である。
【
図4】本実施形態のピストンの往復運動機構のピストンの底面図であって、ピストンの周方向に角度情報を付したものである。
【
図5】ピストンの収容部の内周面を
図4に示す角度情報に対応して周方向に展開して表したカム溝の模式図である。
【
図6】ピストンの収容部の内周面を
図4に示す角度情報に対応して周方向に展開して表したカム溝の変形例(その1)の模式図である。
【
図7】ピストンの収容部の内周面を
図4に示す角度情報に対応して周方向に展開して表したカム溝の変形例(その2)の模式図である。
【
図8】ピストンの収容部の内周面を
図4に示す角度情報に対応して周方向に展開して表したカム溝の変形例(その3)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1、
図2に、本実施形態のピストンの往復運動機構を備えたポンプの一実施例で、ピストンが下死点(
図1)、及び上死点(
図2)にあるときのそれぞれの正面の断面図を示す。
本実施形態のポンプ100は、シリンダ1の中心軸とモータ8の回転軸6が同軸となるように配置され、モータ8に接続したロータ5とピストン2がシリンダ1内部に収容された形態を有している。このときピストン2は、シリンダ1内径に対してすきまを持ったはめあい関係なのでシリンダ1との関係において往復運動の制約がない自由な状態である。
【0026】
シリンダ1の上端には、吐出弁10と吸気弁11が取り付けられている。本実施形態のポンプ100は、例えば内部圧力を上げたい容器(不図示)と吐出弁10とをチューブ(不図示)で接続するとコンプレッサー(ポンプ100)として機能し、逆に内部圧力を下げたい容器(不図示)と吸気弁11とをチューブ(不図示)で接続すると真空ポンプ(ポンプ100)として機能する。
【0027】
まず、本実施形態のポンプ100(ピストンの往復運動機構)の動作について説明する。モータ8の動作により回転軸6が回転すると、回転軸6に固定されたロータ5と、ロータの側面に取り付けられたローラ3a,3bがともに回転する。すると、ローラ3a,3bは、ピストン2の収容部2aの内周面に設けられたカム溝2cの側面2d,2eに転接するとともに回転に伴う力をカム溝2cに印加する。このとき、カム溝2cにはピストン2を回転させる力とピストン2をカム溝2cの振幅方向、すなわち収容部2aの深さ方向(回転軸6の軸心方向)に移動させる力が印加される。しかし、回り止めピン9によりピストン2の回転は制限される。よって、ピストン2は、回転することなく、ローラ3a,3bが移動するカム溝2cの波型形状に倣って回転軸6の軸心方向に往復運動をすることになる。したがって、本実施形態のピストンの往復運動機構は、カム溝2c側が従動側となる所謂逆カム構造となっている。
【0028】
次に、本実施形態のポンプ100(ピストンの往復運動機構)の構成について説明する。本実施形態のポンプ100では、平面視によるピストン2の中心の移動方向を表す直線上に回転軸6の軸心が配置された形となり、ピストン2の中心の移動方向と回転軸6の軸心が同軸となっている。ロータ5は回転軸6を同軸配置で収容し、側面から止めネジ5aにより回転軸6に対して固定されており、これによりロータ5は回転軸6と同軸で回転することができる。ロータ5の先端には回転軸6の方向と直交するローラシャフト4が貫通しており、ローラシャフト4の両端にはローラ3a,3bが取り付けられている。ローラ3a,3bの回転軸はローラシャフト4の長手方向と同軸である。図に示すように、ローラ3a,3bはローラシャフト4を軸とするベアリング構造(ころがり軸受構造)が好適であるが、すべり軸受け構造としてもよい。また、ロータ5のモータ8側の部分は、シリンダ1に接続されたベアリング7により支持され、ロータ5の回転の安定度を高めている。
【0029】
ピストン2は、ピストン2のロータ5側に開口部2bを有しロータ5を収容する収容部2aと、収容部2aの内周面において回転軸6の軸心方向(収容部2aの深さ方向)に振幅しつつ周回する波型形状を有し、ローラ3a,3bが収容されるカム溝2cと、を備えている。
【0030】
また、ピストン2の側面の開口部2b側には、回り止めピン9が捻じ込まれ、シリンダ1の回り止めピン9に対向する位置には、ピストン2の往復方向(移動方向)に伸びるスリット1aが形成され、回り止めピン9の頭部がスリット1a内に配置される。前述のようにピストン1は、回転軸6の軸心方向(収容部2aの深さ方向)に往復運動するが、同時にロータ5の回転運動に伴う力も受ける。しかし、回り止めピン9がスリット1aの長辺に当接するため、ピストン2の回転運動を制限し、ピストン2の軸心方向の往復運動のみを許容する。なお、シリンダ1及びピストン2の断面が円形以外の形状であれば、ピストン2が回転することはないので、回り止めピン9及びスリット1aは不要である。
【0031】
図3に、本実施形態のピストンの往復運動機構のピストンの断面図を示し、
図4に、本実施形態のピストンの往復運動機構のピストンの底面図であって、ピストンの周方向に角度情報を付したものを示す。また、
図5に、ピストンの収容部の内周面を
図4に示す角度情報に対応して周方向に展開して表したカム溝の模式図を示す。
【0032】
図3に示すように、カム溝2cは、ピストン2の収容部2aの内周面に形成され、
図4に示すように、平面視でピストン2(及び回転軸6の軸心)と同軸の中心対称の形状を有している。また、
図5に示すように、カム溝2cは、収容部2aの深さ方向に振幅する波型形状を有しているが、カム溝2cの幅は、常にローラ3a,3bが通過できるようにローラ3a,3bの径よりも若干大きめの幅が保たれるように形成されている。
【0033】
図5において、一方のローラ3aが、0°から180°側に向けてカム溝2c内を移動し、他方のローラ3bが180°から360°側に向けてカム溝2c内を移動する。また、カム溝2cの波型形状は、内周面を180°(半周)移動するたびに1周期振幅する正弦波(余弦波)的な曲線となっている。これにより、一対のローラ3a,3bをカム溝2cにおいて同期して振幅させることができる。そして、0°から90°、及び180°から270°が、シリンダ1内のエアを吐出(圧縮)する方向にピストン2を移動させる(ピストン2を上死点側に移動させる)カム溝2cの部分となっており、90°から180°、及び270°から360°が、シリンダ1内にエアを吸引する方向にピストン2を移動させる(ピストン2を下死点側に移動させる)カム溝2cの部分となっている。このようなカム溝2cは、以前であれば特殊工具を使う必要があり簡単に製作できないものであったが、現在では3Dプリンターを利用すれば容易に製作可能である。ここで、ピストン2の材料は樹脂が好適である。
【0034】
図6に、ピストンの収容部の内周面を
図4に示す角度情報に対応して周方向に展開して表したカム溝の変形例(その1)の模式図を示す。
図6に示すカム溝2cでは、シリンダ1内のエアを吐出させる方向にピストン2を移動させるカム溝2cの部分(0°〜110°周辺、180°〜290°周辺)の長さが、シリンダ1内にエアを吸引させる方向にピストン2を移動させるカム溝2cの部分(110°周辺〜180°、290°周辺〜360°)の長さよりも長くなっている。そして、シリンダ1内のエアを吐出させる方向にピストン2を移動させるカム溝2cの部分(0°〜110°周辺、180°〜290°周辺)の傾きが、シリンダ1内にエアを吸引させる方向にピストン2を移動させるカム溝2cの部分(110°周辺〜180°、290°周辺〜360°)の傾きよりも緩やかになっている。
【0035】
本実施形態のポンプ100(ピストンの往復運動機構)では、モータ8のトルク(回転力)をピストン2の往復運動の力に変換している。そこで、
図6のようにカム溝2cを設計すると、ロータ5(モータ8)の回転速度が一定の場合、エアの吐出工程(圧縮工程)にかかる時間がエアの吸引工程にかかる時間よりも長くなるが、吐出工程時におけるピストン2の往復運動の力を強くすることができる。従って、シリンダ1内のエアを強い力で吐出可能なコンプレッサーとして用いることができる。
【0036】
図7に、ピストンの収容部の内周面を
図4に示す角度情報に対応して周方向に展開して表したカム溝の変形例(その2)の模式図を示す。
図7に示すカム溝2cでは、シリンダ1内にエアを吸引させる方向にピストン2を移動させるカム溝2cの部分(0°〜110°周辺、180°〜290°周辺)の長さが、シリンダ1内からエアを吐出させる方向にピストン2を移動させるカム溝2cの部分(110°周辺〜180°、290°周辺〜360°)の長さよりも長くなっている。そして、シリンダ1内にエアを吸引させる方向にピストン2を移動させるカム溝2cの部分(0°〜110°周辺、180°〜290°周辺)の傾きが、シリンダ1内からエアを吐出させる方向にピストン2を移動させるカム溝2cの部分(110°周辺〜180°、290°周辺〜360°)の傾きよりも緩やかになっている。
【0037】
図7のようにカム溝2cを設計すると、ロータ5(モータ8)の回転速度が一定の場合、エアの吸引工程にかかる時間がエアの吐出工程(圧縮工程)にかかる時間よりも長くなるが、吸引工程時におけるピストン2の往復運動の力を強くすることができる。従って、シリンダ1内にエアを強い力で吸引可能な真空ポンプとして用いることができる。
図5乃至
図7のように、カム溝2cは、複数の周期性を持った波型形状にする必要があるが、その形状は正弦波(余弦波)的な曲線に限定されず機能上の負荷の大小によってその波型形状を設計することになる。
【0038】
図8に、ピストンの収容部の内周面を
図4に示す角度情報に対応して周方向に展開して表したカム溝の変形例(その3)の模式図を示す。本実施形態のポンプ100(ピストンの往復運動機構)を組み立てる際、ローラ3a,3bを備えたロータ5をピストン2の収容部2aに挿入する必要があるが、その際、ローラ3a,3bが収容部2aの開口部2b(縁)に干渉し、収容部2aにロータ5を挿入することはできない(
図1等参照)。
【0039】
そこで、
図8に示すように、収容部2aの内周面には、収容部2aの開口部2bから収容部2aの深さ方向に延びてカム溝2cに連通するとともに、ローラ3a,3bを開口部2b側から収容可能な導入溝2f,2gを配置することが好適である。そして、導入溝2f(2g)は、0°〜90°の範囲のいずれかの部分、導入溝2g(2f)は、180°〜270°の範囲のいずれかの部分に連通させることが好適である。また、一方の導入溝2fと他方の導入溝2gの角度差は180°であり、導入溝2f,2gはローラ3a,3bの幅よりもやや大きな幅を有している。これにより、ロータ5を収容部2aに収容する際に一対のローラ3a,3bを同時に導入溝2f,2gに導入し、カム溝2cに収容することができる。
【0040】
一方、ロータ5を回転させると、0°〜90°の範囲、及び180°〜270°の範囲において、ローラ3a,3bは、ピストン2を上死点に移動させる方向にカム溝2cに力を印加するので、ローラ3a,3bはカム溝2cの収容部2aの底面側の側面2dに転接し、その反対側の導入溝2f,2gが連通している側面2eに転接することはない。また、仮に側面2eに接触したとしても、ローラ3a,3bは側面2eに力を印加することはない。よって、側面2eでカム溝2cに連通した導入溝2f,2gにローラ3a,3bが入り込むことはない。
【0041】
以上より、ローラ3a,3bを容易にカム溝2cに収容できるとともに、カム溝2cと導入溝2f,2gの連通部分にはローラ3a,3bは入り込まないので、ピストン2が往復運動中でもローラ3a,3bがカム溝2cから外れることはなく、ピストン2を確実に往復運動させることができる。なお、導入溝2f,2gは、
図5のみならず、
図6、
図7に示すカム溝2cにも適用できる。
【0042】
本実施形態において、ローラ3a,3bは一対でロータ5に配置されている。これに対応して、カム溝2cは、内周面の半周あたり1周期振幅した波型形状を有している。これにより、ローラ3a,3bをカム溝2c上で同期して振幅させることができる。またピストン2には平面視で中心対称となる2箇所においてローラ3a,3bから力を受けるので、ピストン2に対して往復運動に起因する力を均一に印加することができ、ピストン2の運動を安定化させることができる。しかし、ローラ3a,3bは、いずれか一方のみとしてもよく、この場合カム溝2cは、内周面の1周あたり収容部2aの深さ方向に1周期振幅した波型形状を有することになる。
【0043】
さらに、本実施形態は、ロータ5にローラ3a,3bを取り付けたが、カム溝2cには収容されるが自身は回転しない凸部(不図示、ローラ3a,3bと同じ径のもの)を取り付けてもよい。この場合、カム溝2cとの摩擦が大きくなるので、凸部及びカム溝2cに潤滑油を塗布することが好ましい。
【0044】
工場内電源からモータの電力を取るような場合、購入時の低価格の優先順位が高く、低消費電力、軽量、小型化に対する動機の優先順位が低くなっていたが、近年発達してきた自立型のロボット、自立型搬送機器、ウェラブル機器などに搭載されるそれらポンプ、コンプレッサー、および真空ポンプはバッテリーで駆動するので、限られたエネルギーを使って最大の機能を発揮するために、可能な限り軽量、低消費電力、小型化であることの優先順位が高くなっており、そのような環境のもと、本実施形態のポンプ100(ピストンの往復運動機構)はこれからの需要に即したものといえる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
ピストンを往復運動させる機構を小型化及び軽量化させるとともに、ピストンからの負荷を低下させることにより機構に取り付けるモータの省電力化及び小型化が可能なピストンの往復運動機構、およびこれを用いたポンプ、コンプレッサー、真空ポンプとして利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1………シリンダ、1a………スリット、2………ピストン、2a………収容部、2b………開口部、2c………カム溝、2d………側面、2e………側面、2f………導入溝、2g………導入溝、3a,3b………ローラ、4………ローラシャフト、5………ロータ、5a………止めネジ、6………回転軸、7………ベアリング、8………モータ、9………回り止めピン、10………吐出弁、11………吸気弁、100………ポンプ。