特許第6562325号(P6562325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6562325
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】LED集魚灯
(51)【国際特許分類】
   A01K 79/00 20060101AFI20190808BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20190808BHJP
【FI】
   A01K79/00 H
   F21S2/00 642
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-132714(P2018-132714)
(22)【出願日】2018年6月26日
【審査請求日】2018年11月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518134448
【氏名又は名称】株式会社KOU
(72)【発明者】
【氏名】竹内 孝充
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3202618(JP,U)
【文献】 特開2017−143782(JP,A)
【文献】 特開2015−111540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 79/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED光源を有する発光部と、前記LED光源を点灯させる電源部と、前記LED光源を空冷する放熱部とを備えたLED集魚灯であって、
前記発光部は、烏賊の捕食対象の小魚やプランクトンの可視域光であるピーク565nmを中心としてその近辺波長の光を均等に照射する第一LED光源と、前記烏賊の可視域光であるピーク480nmの光を照射する第二LED光源とを一体に備え、
前記放熱部は、前記発光部の背面に設けた背面放熱フィンと、前記発光部の両側面に設けた側面放熱フィンとを備え、
前記側面放熱フィンは、前記発光部の正面側から背面側へ通気させる通気路を有することを特徴とするLED集魚灯。
【請求項2】
前記発光部が、該発光部の正面において突出するレンズを備えていることを特徴とする請求項1記載のLED集魚灯。
【請求項3】
前記電源部が、給電線を介して前記発光部とは別体に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のLED集魚灯。
【請求項4】
前記発光部の使用電力が100W未満であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のLED集魚灯。
【請求項5】
前記側面放熱フィンの先端が補強枠に連結されており、前記補強枠に、支持具に対し着脱自在な取付部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のLED集魚灯。
【請求項6】
前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載のLED集魚灯を複数、少なくとも一つのLED集魚灯の照射光波長を他のLED集魚灯の照射光波長と異ならせて組み合わせて成ることを特徴とするLED集魚灯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED集魚灯、より詳しくは、捕獲目的魚とその食物連鎖に必要な波長を発光し、効率のよい集魚の為の環境を簡易に構築できるLED集魚灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、漁業や観光釣船に於いて集魚の為には主としてメタルハライド灯が用いられてきており、発光効率は最も効果的と言われてきたが、一方では膨大な点灯燃料を必要とし、場合に依っては漁場までの航行燃料よりも多大な燃料を要することもあった。
その為、最近ではこれに代わりLEDに依る集魚灯が登場してきたが、製作側が集魚に必要な要素や厭忌事項を十分に把握しないまま、ただ大光量を出す事にのみ傾倒するあまりに、必ずしも高効率な結果を上げているとは言い難く、登場して相当な時間が経過していてもLED集魚灯が既存機種に代わり大々的に普及していないことがその現状を物語っていると言える。
【0003】
現在までにLEDの特性である指向性の強さや発光波長の設定のし易さを利用した集魚灯で、収穫効率を向上させるための装置が提案されている(下記特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5510549号公報
【特許文献2】特開2017−143782号公報
【特許文献3】特開2017−50283号公報
【特許文献4】特許第5536615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献は主に大型LED集魚灯に関して記されており、取付け方法も複雑で専門職の技術が必要であり、また船舶全体の総重量・形態に比して高所に取付けられる集魚灯の重量や、横風の影響を十分に考慮しているとはいえず、上記集魚灯の耐風面積や重量が大きくなりがちで、横風や横波の影響を強く受けやすく中小型船舶の集魚灯環境を改変するには至っていない。
【0006】
また、その発光波長帯の構成も、実験室内での魚体の習性を基に記されている為、必ずしも自然界の海中における捕獲対象魚の食物連鎖を基にした理想的波長帯を適量に含有しているといえないと推察される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、LED光源を有する発光部と、前記LED光源を点灯させる電源部と、前記LED光源を空冷する放熱部とを備えたLED集魚灯であって、前記発光部は、烏賊の捕食対象の小魚やプランクトンの可視域光であるピーク565nmを中心としてその近辺波長の光を均等に照射する第一LED光源と、前記烏賊の可視域光であるピーク480nmの光を照射する第二LED光源とを一体に備え、前記放熱部は、前記発光部の背面に設けた背面放熱フィンと、前記発光部の両側面に設けた側面放熱フィンとを備え、前記側面放熱フィンは、前記発光部の正面側から背面側へ通気させる通気路を有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、前記発光部が、該発光部の正面において突出するレンズを備えていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記電源部が、給電線を介して前記発光部とは別体に設けられていることを特徴としている。但し、当電源部への給電の電圧・電流は状況に合わせて変更することを前提としている。
【0011】
また、本発明は、前記発光部の使用電力が100W未満であることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記側面放熱フィンの先端が補強枠に連結されており、その補強枠には、支持具に対し着脱自在な取付部が設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記LED集魚灯を複数、少なくとも一つのLED集魚灯の照射光波長を他のLED集魚灯の照射光波長と異ならせて組み合わせて成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は旧来品に有りがちであった二灯以上のLEDを用いた多灯LED発光型ではなく、電源を船舶の下部に別置きとした100W以下の小型単一基盤発光型とし、それを直接放熱フィンが付いた筐体に固定して放熱効果を大きく向上させる事により、小型でも総発光量を多くすることで、最大光量/本体単位重量の指数を従来品より小さくすることができ、高い位置に取付けても、集魚灯、電源、及び船舶の総合重心の位置を旧来品より下げることが可能となる為、横波に対し船舶の横揺れを低減しリスクを下げる事を可能としている。
【0015】
旧来の一般的LED集魚灯は大光量を求める余り、単光源ではなく多灯式が採用されがちであるが、そうすると熱が籠らないよう光源同士の距離を離して設置する必要があり、それに依る放熱も器具の背面に集中する事になる為、器具が大型となりがちである。
【0016】
並びに本発明は同上の理由による小型化と、放熱フィンを発光部筐体の後部及びその左右に直結して設ける事で、最大光量/見付面積の指数も旧来品より小さくでき、更にLED発光体の見付面にLEDを保護する風防レンズを大きく張り出させて設ける事で、船舶に対する横風、言い換えれば当該発明品に正面方向から吹付ける風圧を上下左右に受け流すことを可能にしており、上記の実質的指数を更に下げる効果を出す事ができ、風に依る船の転倒モーメントを減少させることができる。
【0017】
また青色のみの集魚灯では烏賊は一旦集まるものの、長時間つり上げの対象として留まらないと記されているものもあるが、原因はそこに食物連鎖が生じていない為であるので、本発明の発光部は、捕獲目的魚種の捕食対象の小魚やプランクトンの可視光:ピーク565nmを中心としてその近辺波長を均等に発光する第一LED光源と、前記捕獲目的魚種、例えば烏賊を対象とするのであればピーク480nmの可視光を照射する第二LED光源とを、一つのLED基盤上に備える事で、第一LED光源でそれらの波長を可視域とする動物性プランクトンや小型魚を捕獲対象魚の餌として集め、第二LED光源が、それを捕獲対象魚に映像として視認させることで、捕食対象魚は船舶の底に潜みながら継続的に小型魚の捕食体制に入ることになり、釣り人に長時間つり上げの機会を与えることができる。
【0018】
本発明のもう一つの特徴として、非常に着脱し易い事があげられる。今までの集魚灯はその大きさや重量、また取り付け部分の複雑さから、取付けや取替えに専門家の技術が必要とされる為、どうしても一種類の器具に多くの魚種を寄せる為の汎用性を組み込む必要があった。これは言い換えればその季節に旬となる魚種に特化した集魚環境を構築しにくいという事の裏返しでもあるので、本発明では漁師や船主が簡単にLED灯具を取り替えられる機構を持たせている。季節の変化や規制解禁で捕獲目的魚が変わった場合にその魚種に最適の灯具へと取り替える事で、効率の高い漁が可能となる。またこの機能は灯具の故障などへの対応も短時間で行える事も併せ持つ為、旧来のように灯具が故障した場合、漁を諦め寄港する必要もなく、海上で他の器具を点灯させたままでも対処可能となり総合的なロスを減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態のLED集魚灯の正面図である。
図2】本実施形態のLED集魚灯の平面図である。
図3】本実施形態のLED集魚灯の側面図である。
図4】本実施形態のLED集魚灯の背面図である。
図5】本実施形態のLED集魚灯の放熱作用の説明図である。
図6】本実施形態のLED集魚灯の放熱作用の説明図である。
図7】本実施形態のLED集魚灯の支持具への取り付け操作を説明する側面図である。
図8】本実施形態のLED集魚灯の支持具への取り付け操作を説明する部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図4に示すように、本実施形態のLED集魚灯10は、LED光源11を有する発光部1と、LED光源11を点灯させる電源部2と、LED光源11を空冷する放熱部3と、支持具5に対し着脱自在な取付部4とから構成されている。
【0021】
発光部1は、捕獲目的魚種の捕食対象の小魚やプランクトンの可視域光を照射する第一LED光源と、この捕獲目的魚種の可視域光を照射する第二LED光源とを一つのLED基板上に一体に備えている。本実施形態の発光部1は、その使用電力が100W未満であり、第一LED光源は、ピーク565nmを中心としてその近辺波長を均等に発光し、第二LED光源は、烏賊の可視光であるピーク480nmの波長を発光する。また、本実施形態の発光部1は、その正面において突出するレンズ12を備えている。
【0022】
電源部2は、図4に示すように、AC/DC変換電源22から成り、給電線21を介して上記発光部1とは別体に設けられている。
【0023】
放熱部3は、発光部1の背面に設けた背面放熱フィン31と、発光部1の左右両側面に設けた側面放熱フィン32とを備えている。そして各側面放熱フィン32は、発光部1の正面側から背面側へ通気させる通気路33を形成している。
【0024】
取付部4は、円柱状の突起部41と、突起部41の先端側に形成された鍔部42を備えた傘状の突起から成り、側面放熱フィン32の先端が連結された補強枠43の側面に外向きに突設されている。
【0025】
このように本実施形態の集魚灯10は、発光部1の背面に背面放熱フィン31を設け、発光部1の両側面に、背面放熱フィン31と一部連結するように一体成型された側面放熱フィン32を設けており、LED光源11の基板より発せられる熱を効率よく大気中に発散させることができる為、LEDの本来有する能力を最大値で点灯させることが可能となり、発光効率=総発光光束量/使用電力を、従来品より向上させている為、青白発光器具でも5350lm/60W、白色発光器具に於いては8300lm/60Wで138lm/Wと、現在最も発光効率が高いと言われるメタルハライドランプの発光効率130lm/Wを抜くまでとなっている。
【0026】
また、本実施形態の集魚灯10は、発光部1の両側面に、発光部1の正面側から背面側へ通気させる通気路33を形成するように側面放熱フィン32を設けているので、図5に示すように、発光部1の正面に当たった風を同通気路に導くことができ、側面放熱フィン32による放熱効果を高めることができる。
【0027】
しかも、本実施形態の集魚灯10は、発光部1の正面において前方へ突出するレンズ12を設けているので、正面からの風を抵抗少なく側面放熱フィン32により成された通気路から背面放熱フィン31側へスムーズに導くことができ、背面放熱フィン31による放熱効果も高めることができる。
【0028】
従来の集魚灯では多光源はその機構上、例え単光源であっても発光保護面は、器具に風が当たった場合、まずはその表面に器具を押す速度圧が発生し、また背面でも複雑に巻込む風に依り吸引力が働き、その両方の合力が器具に発生するが、本実施形態の集魚灯10は、発光部1の正面に大きな球形のレンズ12を設ける事で、図5に示すように、風は自然に両サイドに分割されるように流れ、背面にも渦を巻かずに流れ込み易くなる為、背面の吸引力も減少させることが可能となっている。これは建築基準法の風圧計算に用いられる形状係数からも明らかである。
また1灯を大型化するのではなく、高出力でコンパクトに構成する事は、器具重量/総合光束量も軽く抑える事ができる為、横波を受けた時の揺れや転倒リスクを減らしたい軽量船舶に於いては最適な方向性といえる。
【0029】
なお、図6に示すように、発光部1の正面においてレンズが前方へ突出していない場合であっても、発光部1の正面に当たった風は、側面放熱フィン32の通気路へ導かれるため、側面放熱フィン32による放熱効果は発揮される。
【0030】
また、本実施形態の集魚灯10は、捕獲目的魚種の捕食対象の小魚やプランクトンの可視域光を照射する第一LED光源と、この捕獲目的魚種の可視域光を照射する第二LED光源とを備えているので、捕獲目的魚とその食物連鎖に必要な波長を発光し、効率のよい集魚の為の環境を構築することができる。
【0031】
従来のLED集魚灯は、目標製品がメタルハライドの高輝度さにあった為、ただひたすら高出力を目指していた。また実験室で、例えば光に対する烏賊の挙動を探り、それを基にした特許も提唱されている。しかし烏賊が青色系に反応する事は生態学からも示されていた事であり、烏賊はあくまでも捕食の為に夜間に行動するので、発明者の海上での観察では、烏賊は種類により青色系の光471nm、484nm、501nmの波長帯のどれかで物を見ているようであるが、そこに食物連鎖が構成されていないと、つまりは自分の餌になるようなものが居ないと、自己の保護の為にその場をはなれようとするものと考えられる。その為、まずは烏賊の餌になる小魚と、それが捕食する動物性プランクトンを集められなければ釣人の為の集魚灯にはなり得ないものと考え、事実青色LED灯のみの集魚灯では烏賊が余り釣れないと言われるのもそれが原因と考えている。
【0032】
また、本実施形態のLED集魚灯10は、複数の側面放熱フィン32の先端が連結する補強枠43に取付部4を設けているので、図7及び図8に示すように、LED集魚灯10を、船体に設けた集魚灯支持具5に対して簡単に取り付け、取り外しすることができる。
【0033】
大型のLEDでは捕獲目的魚種に合わせて波長を、言い換えればLEDを取り替える事は大変困難である為、既存品の多くは包括的な波長を具備した器具となる傾向にあったが、別な見方をすれば目的魚種捕獲に不必要なエネルギーを消費している事になるので、そのやり方は不経済であったと言える。
本発明ではこれを解消する為に、上記の如く器具のコンパクト化を図った訳であるが、その取付け方法も、図7に示すように、支持具5の支持アングルに落ち込み部の長さが異なる逆L字型の上溝51及び下溝52を設けておき、図7(a)に示すように、最初に、LED集魚灯10の上側の取付部4Aを上溝51の途中まで先に落とし込み、次に、下側の取付部4Bが下溝52に合致したところでそのまま取付部4Bも下溝52へ落とし込むことによって、本実施形態のLED集魚灯10を支持具5に取り付けることができる。
【0034】
この取り付け構造によれば、図7(b)に示すように、LED集魚灯10が単純に下から何らかの力Fで押し上げられても、上側の取付部4Aは上溝51から外れていない為、LED集魚灯10そのものが外れて落下する事はまず有り得ず、入れた時と同様に、人の手でこの下側の取付部4Bを横にずらして下溝52から外さなければ上側の取付部4Aを上溝51から外すことは出来ない為、風圧や船舶の揺れで灯具が一人で外れる事は皆無に近いものと考える。
【0035】
このように本実施形態のLED集魚灯10は、季節が変わり、捕獲目的魚が変わってもその魚種の視認性の高い波長をもつLEDを船主自らが装着する事ができる為、大変効率が良い漁火環境が簡易に構築できる特徴を持っている。
【符号の説明】
【0036】
10 LED集魚灯
1 発光部
11 LED光源
12 レンズ
2 電源部
21 給電線
22 AC/DC変換電源
3 放熱部
31 背面放熱フィン
32 側面放熱フィン
33 通気路
4 取付部
41 突起部
42 鍔部
43 補強枠
5 支持具
51 上溝
52 下溝
【要約】
【課題】捕獲目的魚とその食物連鎖に必要な波長を発光し、効率のよい集魚の為の環境を簡易に構築できるLED集魚灯を提供すること。
【解決手段】LED光源11を有する発光部1と、LED光源1を点灯させる電源部2と、LED光源11を空冷する放熱部3とを備えたLED集魚灯10であって、放熱部3は、発光部1の背面に設けた背面放熱フィン31と、発光部1の両側面に設けた側面放熱フィン32とを備え、この側面放熱フィン32は、発光部1の正面側から背面側へ通気させる通気路33を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8