(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結部は、対向するフランジで構成され、1点で切り離された環状体の内周面に前記フランジの縁に接する溝部が設けられ、前記環状体の切離部において対向する前記環状体の端部の一方に固定した棒材の自由端側を、前記環状体の他方の端部に設けた挿通部に通し、前記棒材の自由端に嵌められた筒材を前記棒材の軸線方向に進退させ、前記環状体の切離部の間隔を変えることにより前記環状体の径を調整するクランプにより、手動で接離自在とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の真空配管トラップ装置。
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の真空配管トラップ装置を、単結晶成長装置の真空炉から真空ポンプへ延びる真空配管に取り付け、前記真空配管の清掃を行う前に、前記給入口から洗浄水を注入して前記捕集筒内に付着した酸化珪素(SiO)を前記真空配管および前記真空配管トラップ装置内で水洗し、前記吸気口から前記排気口へ熱風を流して前記真空配管及び捕集筒を乾燥させた後に前記真空配管の開放作業を行なうことを特徴とする配管清掃方法。
【背景技術】
【0002】
半導体製品基板となるシリコン単結晶成長方法として、チョクラルスキー(Czochralski)法(以下、単に「CZ法」という)が広く使用されている。このCZ法を用いた単結晶成長装置では、シリコン単結晶(インゴット)の引き上げを行なう真空炉内の真空状態(減圧状態)を保つため、真空炉が真空ポンプと配管で連結されている(以下、真空炉と真空ポンプとを連結する配管を「真空配管」という)。
【0003】
単結晶成長工程において真空炉内では酸化珪素が生成されるため、真空炉と真空ポンプとを直接連結すると、酸化珪素(SiO)の粉塵が真空ポンプに侵入し真空ポンプの損傷を引き起こすという問題があった。
【0004】
そこで、真空配管には、酸化珪素(SiO)の粉塵を効率的に捕集するためのトラップ(以下、真空配管トラップという)が必要となる。
【0005】
真空配管トラップとしては、一般に、流路に直交するフィン(邪魔板)を複数設けた形式のものが広く採用されている。そして、そのような真空トラップは、シリコン単結晶成長装置に限らず、その他の半導体の製造に関する装置にも使用されており、これまでに様々なトラップ装置が提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、ハウジング内に排気ガスの流路を形成して凝縮ガスを回収する単数または複数の凝縮板が取り付けられ、ハウジングに設けたガス導入口からガス導出口に至る間の前記流路の抵抗が傾向的に漸増されているトラップが開示されている。このトラップによれば、凝縮ガスはトラップ内において均等に凝縮され、固着物がトラップ内に偏りなく形成される。しかも、ガス導出口近傍では流路抵抗が大きいので、凝縮ガスの素通りが抑制される。
【0006】
また、特許文献3には、排気経路に接続されるガスの経路を内部に有した容器により構成され、前記流路が、複数の環状の第1流路と、各前記第1経路の間を接続する第2流路とで構成され、前記第1流路の流路断面積を所定の位置で変化させたトラップ装置が開示されている。このトラップ装置によれば、流路の位置に応じてガスの流速が制御されるので、流速の比較的小さいところでは固形物の蓄積が促進され、この一方、流速の比較的大きいところでは固形物の蓄積が回避される。したがって、流路中の所定の位置に固形物を蓄積させることが可能であるとともに、流路のコンダクタンスを低下させたくないところには固形物を蓄積させないようにすることができる。
【0007】
しかしながら、従来のトラップシステムでは、酸化珪素粉塵の捕集・回収効率が必ずしも十分でなかった。また、多数のフィンを有するトラップシステムでは、清掃に手間や時間を要するという問題があった。さらに、酸化珪素(SiO)の堆積したトラップシステムを清掃するために大気開放すると開放時の環境や条件によって粉塵爆発を起こす場合がある一方、従来のトラップシステムには、その対策が施されているものが少なく、清掃作業に粉塵爆発の危険が伴うという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、酸化珪素(SiO)の粉塵爆発を防止しながら、酸化珪素の粉塵を効率よく捕集し、かつ、安全に清掃でき、かつ、清掃作業に要する手間や時間を低減できるシリコン単結晶成長装置の真空配管トラップ装置及び該装置を利用した配管清掃方法並びに上記配管トラップ装置を含む真空配管トラップシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、単結晶成長装置の真空炉と真空ポンプとの間に真空配管を介して接続され、単結晶成長により発生する粉塵を捕集して回収する真空配管トラップ装置が提供され、
前記真空配管トラップ装置は、
連結部により互いに分離可能に連結される上筐体及び下筐体と、
前記下筐体に収納される有底の捕集筒と、
前記捕集筒内に収納されるフィルタと、を備え、
前記上筐体には、前記真空炉からの気体を取り込むことができる吸気口が設けられ、
前記下筐体には、前記捕集筒から気体を排出するための排気口が設けられ、
前記上筐体及び下筐体には、液体の給入口および排出口が設けられ、
前記フィルタは、前記捕集筒の底部に軸支された円筒の周面から該円筒の各径方向に延在するようにそれぞれ配設された短冊状の複数の不燃性ブレードフィルタを有する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、上述の真空配管トラップシステムを利用した配管清掃方法が提供され、
前記配管清掃方法は、
上述の本発明に係る真空配管トラップ装置を、単結晶成長装置の真空炉から真空ポンプへ延びる真空配管に取り付け、前記真空配管の清掃を行う前に、前記給入口から洗浄水を注入して前記捕集筒内に付着した酸化珪素(SiO)を前記真空配管および前記真空配管トラップ装置内で水洗し、前記吸気口から前記排気口へ熱風を流して前記真空配管及び捕集筒を乾燥させた後に前記真空配管の開放作業を行なうことを備える。
【0012】
また、本発明の第3の態様によれば、上述の真空配管トラップシステムを利用した配管清掃方法が提供され、
前記配管清掃方法は、
上述の本発明に係る真空配管トラップ装置を、単結晶成長装置の真空炉から真空ポンプへ延びる不燃性の真空配管に取り付け、前記真空配管の清掃を行う前に、内部部品の燃焼温度を下回る温度のガスを前記吸気口から前記排気口へ流すことにより前記捕集筒内の酸化珪素を酸化して二酸化珪素(SiO
2)とし、前記給入口から高圧水を注入して前記捕集筒内の二酸化珪素(SiO
2)を前記排出口から排出することを備える。
【0013】
さらに、本発明の第4の態様によれば、上述の本発明に係る真空配管トラップ装置と、該真空配管トラップ装置と前記成長炉とを接続する配管と、を備える真空配管トラップシステムが提供され、
前記配管は、一端が前記真空炉に接続される第1配管と、対応する複数の湾曲部を介して前記第1配管の他端と前記真空配管トラップ装置とを接続する複数の第2配管と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、酸化珪素の粉塵爆発を防止でき、効率良く粉塵を捕集できる真空配管トラップ装置、及び、簡易かつ安全に真空配管を清掃できる配管清掃方法、並びに上記効果を奏する配管トラップ装置を含む真空配管トラップシステムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。図面において同一の要素・部材には同一の参照符号を付し、その重複説明は適宜省略する。また、図中の各部材の形状・サイズについては、説明を容易にするために適宜拡大・縮小・変更・省略しているため、現実の縮尺・比率・形状と合致していない場合があり、また、その説明においても、紙面の上下方向に即してそれぞれ「上」「下」の用語を便宜的に用いたため、重力加速度の方向と一致しない場合がある点に留意されたい。また、「実質的に」の用語は、測定誤差をも含む趣旨で使用される。
【0017】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による真空配管トラップシステムの設置状態を真空炉と真空ポンプとの関係で示す概略図の一例である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の真空配管トラップシステム9は、真空配管3と真空配管トラップ装置59とを備える。真空配管トラップ装置59は、加熱部11と捕集部12とを含み、単結晶成長装置の真空炉1と、この単結晶成長装置の内部を真空状態に保つための真空ポンプ2との間で真空配管3を介して設置されている。真空炉1は機台(土台)4に立てられた架台5に支持されており、真空炉1の炉底板101(
図2参照)に接続される真空配管3は、加熱部11を介して真空配管トラップ装置59に接続され、その側壁に開口された排気口32(
図2参照)から再び真空ポンプ2に向って延びている。
【0019】
図1において、加熱部11は、外部加熱方式による構造となっているが、真空配管の内部に設けても良い。
【0020】
本実施形態における第1の特徴点は、真空配管トラップシステム9が、排ガスラインのコンダクタンスに優れた態様で配置されている点にある。より具体的には、
図1に示すように、真空配管トラップシステム9が機台4上及び架台5の中で真空炉1の直下に設置され、これにより、真空炉1から真空配管トラップシステム9までの真空配管3は、極めて短い距離で延設されている。
【0021】
このように、本実施形態の真空配管トラップシステム9は、炉底板101に極力近い位置に装着されることから、高温の排気ガスが急冷され、ダストのトラップ効率を向上させている。なお、炉底板101と本真空配管トラップシステム9の位置とが離れざるを得ない場合は、加熱部11で真空配管3を保温すれば良い。
【0022】
さらに、
図2に示すように、真空配管3は、一端が炉底板101に接続される第1配管103と、この第1配管103の他端から分流する2本の第2配管B1,B2とを含む。第2配管B1,B2は、分流点近傍の婉曲部C1,C2を経由して加熱部11に接続される。このように、本実施形態の真空配管3は複数の第2配管に分流しながらも、屈曲部を持たない構成となっているために、優れたコンダクタンスを提供する。また、
図1に示すように、真空配管3のうち、真空配管トラップシステム9から真空ポンプ2までの部分も略直線状に延設される。このように、真空配管トラップ装置59を間に挟んで真空炉1から真空ポンプ2までの間で真空配管3に屈曲部が存在しない。このため、気体は真空配管3内を円滑に流れ、粉塵等のダストが付着する箇所が存在しないので、真空配管3の清掃が非常に簡単になる。
【0023】
真空配管3は、不燃性材料、例えば、SUS配管やアルミ配管などの金属材料または静電気防止金属を編み込んだテフロン(登録商標)系樹脂配管、合金から形成されることが望ましい。これにより、例えば塩化ビニールなどの絶縁性材料で真空配管3が形成した場合に排気時の静電発火(花)等に起因して粉塵爆発が発生する恐れを解消することができる。
図2に示すように、真空配管トラップ装置59は、加熱部11と、加熱部11の下流側に配置される捕集部12を備えている。
【0024】
加熱部11は排気通路をなすベローズ管13と、該ベローズ管13を包囲するヒータ14で構成される。ヒータ14には、配管に対して自在に着脱できる公知のジャケットヒータが採用されており、清掃時には取り外してベローズ管13を露出させることができる構造となっている。そのため、清掃作業時には、ベローズ管13の向きを作業し易い状態に変えることができる。ベローズ管13とレデューサ24との連結部分には、バタフライバルブ15が介装されている。バタフライバルブ15には、圧力条件等が調整された公知のバタフライバルブが採用されている。このバタフライバルブには逆流を防止するインターロック(図示せず)が入っており、操作者は炉側の操作と連動して判断した上で開閉動作する。
【0025】
捕集筐体20は、上筐体21と、上流側に開口が設けられた有底筒状の下筐体22と、上筐体21及び下筐体22の連結部に介挿されるセンターリング23とを含む。上筐体21は、下筐体22の開口を塞ぐ円盤状の蓋体をなす。上筐体21と下筐体22の連結部は、対向するフランジで構成され、クランプ50により手動で接離自在とされている。クランプ50の具体的構成については後に詳述する。
【0026】
下筐体22の開口の縁にはフランジが設けられ、上筐体21と連結できるようになっている。下筐体22のフランジと上筐体21との密着面にはセンターリング23が介挿され、その外周面よってシールリング33の位置(密着面の中央への配置)が決まるようになっている。また、センターリング23には、センターリング23の貫通孔がその開口となる有底円筒状の捕集筒29が固定されている。捕集筒29は、センターリング23が上筐体21と下筐体22の連結部に介挿された状態において、下筐体22に収容される。
【0027】
本実施形態の第2の特徴は、粉塵の主要な捕集手段として、捕集筒29内に回転可能に収納される回転フィルタ70が配設されている点にある。
【0028】
回転フィルタ70は、捕集筒29の底部に枢設された回転軸62に、支持台64を介して軸支される。
【0029】
図3は、捕集筒29のうち、上筐体とフィルタ天蓋65とを除いた平面図の一例である。
図2および
図3に示すように、回転フィルタ70は、主として、頂面がフィルタ天蓋65に被覆されて回転軸62と同心円状に配設された円筒66と、この円筒66の周面から回転軸62の各径方向に延在するようにそれぞれ配設された複数のブレードフィルタBFとで構成される。円筒66の底部には段差Sが設けられ、支持台64は、その頂面の周縁が段差Sに嵌合することにより、回転フィルタ70を固定する。ブレードフィルタBFは、不燃性の材料、例えばSUS304などの金属で形成される。また、
図2に示すように、各ブレードフィルタBFは、正面視において、中央に深い切り込みが設けられた短冊形状をなすように形成されている。
【0030】
図4は、上筐体21と下筐体22との連結部に取り付けられるクランプ50の具体的構成を示す平面図の一例である。
図4に示すように、クランプ50は、厚みを有するチェーンを環状とし、その両端を接続用挿通棒52で接続したもので、チェーンにより形成された環状部分が本発明の環状体51となっている。環状体51の内周面には前記フランジの縁に接する溝部が設けられ、チェーンの両端が対向配置されている切離部53において、その一方の端部に棒材54が軸を介して回転自在に固定されている。また、棒材54の自由端側には、外周に羅条が形成され、内周に羅条の形成された筒材55が嵌められている。そして、これら棒材54と筒材55が接続用挿通棒52を構成するものとなっている。
【0031】
棒材54の自由端側は、固定端を中心として環状体51の端部に対し揺動自在とされ、環状体51の棒材54の固定されていない端部に設けられた挿通部に通した状態で、筒材55を周方向に回転させ棒材54の軸線方向に進退させることで、切離部53の間隔を手動で変えることができるものとなっている。そして、環状体51の径を手動により締め付け強度の調整することで、上筐体21と下筐体22を気密な連結状態とし、または連結状態を解除することが可能となっている。また、棒材54の自由端側を環状体51の端部の挿通部から外した状態(
図4の想像線で示す状態)とすることで、フランジへの着脱を自在に行うことができるものとなっている。しかしながら、上筐体21と下筐体22の連結部は、
図4の構成に限ることなく、例えばフランジに設けた貫通孔に挿通したボルトを介して気密な連結状態としてもよい。
【0032】
上筐体21のレデューサ24との接続部の近傍には、外部から液体を供給し、また、内部から液体を排出するための開口がレデューサ24を間に挟んで対向するように配設され、これらの開口にそれぞれ連通するように液体給入口27および液体排出口26が設けられている。また、捕集筒29および下筐体22の側壁には排気口32が貫通して設けられ、レデューサ24から吸気口を介して捕集筒29へ吸入された気体が排気口32から排出される。
【0033】
図2及び
図3に示す真空配管トラップシステム9を利用した配管清掃方法について、本発明に係る配管清掃方法の第1実施形態として以下に説明する。
【0034】
先ず、真空ポンプ2を用いて真空炉1を真空引きし、気圧を、例えば約20Torrにまで下げ、この減圧状態でシリコンを結晶成長させ、単結晶の引き上げが完了すると真空炉1を一旦停止する。真空炉1の停止状態を確認した後、電源OFFが確認できたら、冷却水、例えば約40℃の温水を液体給入口27から捕集筒29内へ供給する。供給された冷却水はブレードフィルタBF間の隙間などを下降して流れ、捕集筒29内に充満すると液体排出口26(
図6から
図8に示す例では液体排出口28)から排出されるが、このとき、捕集筒29内に浮遊していた酸化珪素(SiO)の粉塵を固化(ヘドロ状)する。固化した酸化珪素(SiO)はブレードフィルタBFの表面に付着する。冷却水による捕集筒29の冷却が終了すると、冷却水の吸入を止め、図示しないポンプにより捕集筒29内の残留水を排出させた後、捕集筒29内を乾燥させる。この乾燥は自然乾燥によってもよいが、装置のスループットを考慮すると、加熱部11から、例えば100℃以上200℃以下の温風を捕集筒29へ吹き込み排気口32から排出させることにより、捕集筒29及び真空配管3の内部を早急に乾燥させることができ、装置のデッドタイムを大幅に短縮することができる。これは、その後のプロセスへの水分による影響を避けるためでもあり、また、真空度の低下を防止するためでもある。
【0035】
その後は、捕集部12から捕集筒29を取り外し、その清掃を行なう。このとき、ベローズ管13とレデューサ24の連結部分にはバタフライバルブ15が介装されているので、加熱部11と捕集部12との連結部に付着した捕集物質の粉末が落下したり飛散したりすることなく、捕集部12を取り外すことができる。
【0036】
捕集部12の具体的な取り外し作業は、ベローズ管13とレデューサ24の連結を解除し、上筐体21と下筐体22の連結を解除した後、センターリング23と一体の捕集筒29を下筐体22から抜き取ればよい。次いで、回転フィルタ70を捕集筒29から取り外し、ブレードフィルタBFの表面に膜のように付着した酸化珪素(SiO)を洗浄水、例えば高圧スプレー状の洗浄水などを用いて洗い流せばよい。
【0037】
ここで、捕集筒29を上筐体21から取り外す際に捕集筒29内の捕集物質の粉体が飛散することがある。捕集部12の清掃作業をその場で行なう場合には問題無いが、清掃作業を別の場所で行なう場合には、捕集筒29を上筐体21と一体のまま清掃作業場所まで運搬することが好ましい。そのためには、
図2に示す下筐体22を、上筐体21との連結部から底面側において流れ方向に互いに分離可能な構造にすることが好ましい。
【0038】
図5に、分離可能に構成された下筐体40を有する真空配管トラップシステム10の要部を示す。なお、
図5において、
図1〜4に示す実施形態と実質的に同じ部分には、同じ符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0039】
図5に示す捕集筐体20の下筐体40は、上方筒部41と有底筒部42とで構成されている。上方筒部41と有底筒部42の各開口の縁にはフランジが設けられている。そして、上方筒部41の一方の開口は上筐体21に連結され、他方の開口は有底筒部42に連結されている。また、上方筒部41と有底筒部42との密着面にはセンターリング43とシールリング44が介挿されている。そのため、上筐体21と筒部41を連結させたまま、有底筒部42を筒部41から取り外すことができる。従って、捕集筒29を上筐体21と一体のまま外すことができる。
【0040】
上述の取り外し・清掃は、各結晶製造工程の終了ごとに行ってもよいが、酸化珪素(SiO)粉塵の捕集能力に余裕がある場合は、結晶製造―冷却の工程を繰り返し、反復回数が設計値に到達した段階で取り外し・清掃の工程に移行することにしてもよい。または、結晶製造―冷却―洗浄―乾燥の工程を繰り返し、反復回数が設計値に到達した段階で取り外し・清掃の工程に移行することにしてもよい。
【0041】
本実施形態によれば、不燃性の材料で形成された複数のブレードフィルタBFを含む回転フィルタ70により真空配管3内の粉塵を捕集するので、効率良く粉塵を捕集・回収することができる。
【0042】
また、液体給入口27から高圧冷却水を注入して捕集筒29内に付着した酸化珪素(SiO)の少なくとも一部を二酸化ケイ素化するとともに汚泥化して固化するので粉塵爆発の恐れがなくなって清掃作業の安全が確保され、さらに、レデューサ24から排気口32へ熱風を流して捕集筒29及び真空配管3を乾燥させた後に真空配管3の開放作業を行なうので、簡易に捕集部12及び真空配管3を掃除することができる。
(2)第2実施形態
【0043】
図6は、本発明の第2実施形態による真空配管トラップシステムの詳細構成を示すための、捕集部を破断した正面図の一例である。本実施形態の真空配管トラップシステム79は、真空配管3と、加熱部11および捕集筐体212を含む真空配管トラップ装置109と、を備える。
【0044】
図2との対比により明らかなように、本実施形態の真空配管トラップシステム79の特徴点は、
図2の液体排出口26に代えて、捕集筒29の底部に設けられた開口と、これに対応して下筐体22に設けられた開口とを連通するように配設された液体排出口28を備える点にある。本実施形態の真空配管トラップシステム10のその他の構成は、
図2に示す真空配管トラップシステム9と実質的に同一である。
【0045】
このように、回転フィルタ70の周縁領域を間に挟んで高さ方向で対向するように液体給入口27と液体排出口28とを配置することにより、後に詳述するように、液体給入口27から高圧水を注入した際に、回転フィルタ70を回転させながらブレードフィルタBFに強い衝撃を与え、これにより、ブレードフィルタBFの表面に膜をなすように付着した粉塵を高速で除去することが可能になる。
【0046】
前述の第1実施形態では、冷却水を捕集筒29内に流すことで捕集筒29内に浮遊していた酸化珪素(SiO)粉塵を固化してブレードフィルタBFの表面に付着させた後、捕集筒29内を乾燥させ、その後に捕集部12の捕集筒29を取り外して、その清掃を行なうこととした。
【0047】
しかしながら、清掃前に真空配管3及び捕集筒29内の酸化珪素(SiO)粉塵を燃焼して二酸化珪素(SiO
2)とすれば、粉塵爆発の恐れがなくなり、また、そのまま洗浄すれば、逐一真空配管トラップシステムを解体する必要もなくなり、大幅にスループットを高めることができる。
本実施形態の真空配管トラップシステム79を利用した配管清掃方法について、配管清掃方法の第2実施形態として以下に説明する。
【0048】
まず、前述の第1実施形態と同様に、真空ポンプ2を用いて真空炉1を真空引きし、所定の減圧状態でシリコンを結晶成長させ、単結晶の引き上げが完了すると真空炉1を一旦停止する。ここで、本実施形態では、真空配管3として、不燃性の材料、例えば、ステンレスやアルミなどの金属材料またはこれらの合金から形成された配管を使用する。これにより、例えば塩化ビニールなどの材料で形成された真空配管を使用した場合に発生し得る粉塵爆発の問題を解消することができる。
【0049】
真空炉1の停止状態を確認した後、レデューサ24から排気口32へ向けて温風を送り、これにより、真空配管3及び真空配管トラップシステム内の酸化珪素(SiO)粉塵を燃焼して二酸化珪素(SiO
2)とする。温風の温度は、酸化珪素(SiO)が酸化を始める温度を下限とし、真空配管トラップシステム79内の内部部品、例えばカーボン部品が燃焼を始める温度(燃焼温度)200℃を下回る温度とする。これにより、真空配管3及び真空配管トラップシステム内のSiO粉塵は二酸化珪素(SiO
2)となって回転フィルタ70のブレードフィルタBFなどに膜をなすように付着する。
【0050】
カーボン部品が燃焼を始める温度200℃を上限とする温度調整は、炉内が完全に暗くなったことを確認した上で操作しても良いし、熱電対などの温度センサを用いて、温度を感知し、自動的に操作が行われるようにしても良い。
【0051】
次いで、液体給入口27から例えば約20℃〜50℃の高圧水を捕集筒29内へ注入する。高圧水は回転フィルタ70の周縁領域を経由して、対向配置される液体排出口28から排出される。このとき、高圧水による強い衝撃で回転フィルタ70のブレードフィルタBFに膜をなすように強く厚く付着した二酸化珪素(SiO
2)が吹き飛ばされるように剥がれて高圧水と共に排出される。回転フィルタ70は、回転軸62を中心に回転可能に配置されているので、高圧水の衝撃で回転し、これにより、多数のブレードフィルタBFが高圧水に打たれて二酸化珪素(SiO
2)が除去・回収されることになる。回転フィルタ70をより円滑に回転させるため、緩やかな螺旋状となるようにブレードフィルタBFを故意に傾けて円筒66(
図3参照)に配設してもよいし、また、回転フィルタ70をさらに確実に回転させるため、既知の回転駆動装置を取り付けてもよい。
【0052】
図7は、真空配管トラップシステム79の一変形例を示す構成を示す一部破断正面図の一例である。
図5との対比により明らかなように、本例の真空配管トラップシステム80は、
図5の液体排出口26に代えて、捕集筒29の底部に設けられた開口と、これに対応して下筐体22に設けられた開口を連通するように配設された液体排出口28を備える点にある。本実施形態の真空配管トラップシステム80のその他の構成は、
図5に示す真空配管トラップシステム9と実質的に同一であり、
図6に示す真空配管トラップシステム79の下筐体22を、上筐体21との連結部から底面側において流れ方向に分離可能な構成としたものであり、さらに、真空配管トラップシステム80を利用した配管清掃方法も前述の真空配管トラップシステム79の場合と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0053】
このように、第2実施形態によれば、温風を流して真空配管3及び真空配管トラップシステム79,80内の酸化珪素(SiO)粉塵を二酸化珪素(SiO
2)とし、さらに高圧水を注入することで回転フィルタ70等に付着した二酸化珪素(SiO
2)を吹き飛ばして除去・回収するので、極めて安全かつ高い精度で真空配管3及び真空配管トラップシステムを清掃することができる。
【0054】
また、上記実施形態によれば、真空配管トラップシステム9,10,79,80が真空炉1の直下に設置されるので、排ガスラインのコンダクタンスに優れ、清掃が容易な真空配管トラップシステム及び配管清掃方法が提供される。
【0055】
さらに、真空配管3が、例えばステンレスやアルミなどの不燃性材料から形成されているので、粉塵爆発の可能性が低く極めて安全な真空配管トラップシステム及び配管清掃方法が提供される。
【0056】
なお、上記いずれの実施形態においても、清掃作業のために取り外す部材の総重量はおよそ30kgとなるため、運搬には高さ調整機構付きの台車を使用することが好ましい。また、クランプ50を構成する環状体51のように切離部を有し下筐体22や筒部41に着脱自在の環状体を利用し、把持部を取り付けることが好ましい。更に、清掃作業の回数を増やすことが可能な場合には、捕集部12の寸法を小さいものとし、軽量化を図ってもよい。更にまた、真空配管3を、真空炉1の出口から真空配管トラップシステム9,10,79,80に至る全経路で保温してもよく、この場合、酸化珪素が真空配管トラップシステム9,10,79,80以外の部位で凝集することを防止することができる。
【0057】
図8は、真空配管トラップシステム80の一変形例であって、捕集部320を容易に着脱できるようにした例の構成を示す一部破断正面図の一例である。
図8に示す下筐体140は、上方筒部41と下方筒部142と、有底筒部152とを含み、上方筒部41と下方筒部142との各開口の縁、下方筒部142と有底筒部152の各開口の縁にはそれぞれフランジが設けられている。下方筒部142と有底筒部152との密着面には、センターリング143とシールリング144が介挿されている。そのため、上筐体21と上方筒部41と下方筒部142とを連結させたままで、有底筒部152を下方筒部142から取り外すことができる。従って、捕集筒129を上筐体21と一体のまま外すことができる。有底筒部152は、本実施形態において掃除トレーとして機能する。
【0058】
本変形例によれば、着脱を容易にすることで、掃除作業の負荷軽減が図れるばかりでなく、水洗時の水分除去が早く、操業時間の短縮に繋がる利点がある。
【0059】
以上、本発明の実施形態のいくつかについて説明したが、本発明は上記形態に限るものでは決してなく、当業者であれば、本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない範囲で、種々の変更を加えて本発明を実現できる。
【0060】
例えば、上述した実施形態の真空配管トラップシステムでは、第1及び第2実施形態のいずれの配管清掃方法をも実現できるように、フィルタとして回転フィルタ70を備える場合を取り上げたが、これに限るものではない。例えば第1実施形態の真空配管トラップシステムでは、取り外しさえ容易なものであれば、例えば支持台64に回転不能に支持された円筒66に、その周面から各径方向に延在する複数の短冊状のブレードフィルタBFを配設したフィルタを使用してもよい。同様に、第2実施形態の真空配管トラップシステム79,80においても、例えば複数の液体給入口および液体排出口を上筐体21及び下筐体22底部のそれぞれに、それぞれが重力加速度の方向で対をなすように対応付けて配設すれば、回転しないフィルタを用いても膜状に付着した二酸化珪素(SiO
2)の除去・回収が可能である。
【0061】
当業者は、特許請求の範囲に規定された本願発明の技術的範囲を逸脱することなく本発明の趣旨に沿って様々な変更、同等な置換、又は改良などを行うことができる。
【解決手段】上筐体21と、該上筐体21に分離可能に連結され、単結晶成長により発生する粉塵を捕集する捕集筒29を収納する下筐体22と、前記捕集筒29内に収納される回転フィルタ70と、を備える真空配管トラップシステム9において、該回転フィルタ70を、捕集筒29の底部に枢設された円筒66と、該円筒66の周面から径方向に延在するように配設された短冊状の複数の不燃性ブレードフィルタBFで構成する。