(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在、透析用剤としては、重炭酸透析用剤が主に用いられており、塩化ナトリウムを含む多数の電解質成分及びブドウ糖を含むA剤と、重炭酸ナトリウムを含むB剤を合わせた2剤型の透析剤が一般的な透析剤として市販されている。
【0003】
従来、透析用A剤は、電解質成分を濃縮液形態で含む液状A剤、電解質成分を固体状で含む固体状A剤があったが、液状A剤は、輸送コスト、病院等での保管スペース、病院内での作業性、使用後の容器の廃棄等の点で問題視されており、近年では、固体型の透析用A剤が国内では主流となっている。また、固体状A剤では、電解質成分、特に微量電解質成分(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等)が不均一に分布するのを防ぐために、電解質成分の全て又は一部が混合或いは造粒された状態で使用されている。一方、透析用B剤は、単一組成物であるため、粉末状態で使用されている。
【0004】
通常、透析用A剤には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、pH調節剤及びブドウ糖が含まれており、透析用B剤には重炭酸ナトリウムが含まれている。近年、塩化ナトリウム以外の電解質成分を含むA剤と、塩化ナトリウムを含むS剤と、重炭酸ナトリウムを含むB剤からなる3剤型透析用剤も提唱されている(特許文献1参照)。この3剤型透析用剤では、透析時にS剤とB剤の添加量の比率を調節することによって、患者の病態に応じて、透析中でも重炭酸イオン濃度を自在に変化させつつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の電解質濃度を一定に維持できる透析液を調製することが可能となる。
【0005】
現在の国内外の一般的な透析装置、透析用剤、及び透析手法では、透析液中の重炭酸濃度を、患者間にある個体差、透析処置を開始する際の患者の状態、透析処置中に変化する患者の状態や病態等に応じて、個別に設定したり、経時的に変化させたりすることができないという欠点があるが、特許文献1で提唱されている3剤型透析用剤を使用すれば、これらの欠点を解消することが可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献1には、塩化ナトリウムを含まず、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを含む固体状透析用A剤について、有機酸を含む場合に生じる固化の抑制、溶解性、貯蔵安定性、製造簡便性等の点については触れられておらず、更なる検討の余地が残っている。
【0007】
塩化ナトリウムは、他の微量電解質成分(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等)に比べ化学的に不活性であり、安定であること、また結晶水を持たない硬質な結晶性粒子であり、流動性が良いことが知られている。塩化ナトリウムを含む固体状透析用A剤では、電解質成分を造粒しても、70重量%以上の塩化ナトリウムが含まれているため、固体状透析用A剤内で塩化ナトリウムが緩衝剤のごとく働き、他の微量電解質同士の相互作用を抑制し、製造時に原料の粘性が大きくなるという不具合を防ぐことができる。
【0008】
一方、塩化ナトリウムを含まない造粒物では、このような塩化ナトリウムを造粒に供することによって得られる、様々な利点を受けることができないので、従来の製造方法では、塩化ナトリウムを含まない固体状透析用A剤を製造しようとしても、製造時に他の微量電解質同士が相互作用して、原料の粘性が大きくなり、効率的な製造ができないという問題点がある。具体的には、塩化ナトリウムを配合せずに、塩化マグネシウムや塩化カルシウム、酢酸ナトリウムを含む造粒物を製造する場合、塩化マグネシウムと塩化カルシウムと酢酸ナトリウムの相互作用が生じ、これらに含まれる結晶水が一部遊離するため、原料の混合中に急激に粘性が増し、混合機内の壁面や撹拌翼に粒子が付着したり、混合機からの排出を困難にさせたりするという不具合がある。特に、この不具合は、湿式造粒を行う際に頻発し、微量電解質同士の相互作用の進行により粘性が大きく増すと、塊状の造粒物を与えたり、たとえ粘性が増さないように添加する水分量をコントロールして混合又は造粒したとしても、微量電解質同士の相互作用による物質の構造変化に伴い、一部原材料よりも細かい粒子が形成され、造粒物の粉化が発生したりする。更に、塩化ナトリウムを含まない造粒物を従来の製造方法で製造すると、貯蔵中に固化が生じ易くなったり、透析液調製のために水を添加した際に細かい粒子が凝集して溶解性不良を起こしたりする等の欠点もある。この場合の溶解性不良とは、透析液調製のために、透析用剤を溶解する際に生じる溶け残りを指し、溶解速度が遅い透析用剤ではその溶解性不良のリスクが増す。
【0009】
透析液調製時に透析用剤の溶け残りが発生すると、調製される透析液中の各電解質濃度が予め設定された濃度とならず、濃度異常を生じる。この濃度異常の発生している透析液を用いて透析を行うと、体内の電解質が正常な範囲内に是正されず、場合によっては重篤な電解質濃度異常を引き起こす可能性がある。これを防止するために、透析用剤の溶解装置や透析装置には安全装置が備え付けられているが、そもそも安全装置を作動させること自体が望ましくない。そのため、溶解性不良を起こさないためには、溶解性の良い(溶解速度の良好な)製剤を使用することが重要であり、既存の溶解装置に設定されている溶解所要時間内に、使用する透析用剤全量が確実に溶解するように設計されていることが必要である。透析施設で広く使用されている溶解装置として、例えば、全自動溶解装置DAD−50NX−ST(日機装株式会社製)があり、当該溶解装置では、溶解所要時間が約4分という短時間に設定されている。また、A剤溶解装置AHI-502(東亜ディーケーケー株式会社製)も溶解装置として広く普及しており、当該溶解装置では、装置内に溜められた所定量の水に、透析用剤を少しずつ添加し、透析液が定められた電導度に達すると自動的に添加を停止するシステムを採用しており、溶解所要時間は約9分に設定されている。この溶解装置に、溶解性が不良な(溶解速度の遅い)透析用剤が使用された場合、透析液が所定の電導度に達し透析用剤の添加が停止した後に、溶け残った透析用剤が遅れて溶解するために濃度異常が発生してしまう。このように、一般的に臨床で使用されている溶解装置においては、用いられる透析用剤の溶解性が悪い場合には、得られる透析液の品質、並びに調製効率に大きな影響を及ぼすことが懸念される。
【0010】
また、塩化ナトリウムを含まない固体状透析用A剤では、原料全体に占める塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの割合が、塩化ナトリウムを含む固体状透析用A剤の場合に比べ相対的に高くなるため、それに伴い、原料中に含まれる絶対的な水分量(結晶水量)も高くなり、固化、溶解性不良、ブドウ糖の貯蔵安定性の問題がより顕著になるという欠点がある。特に、ブドウ糖の貯蔵安定性に関しては、ブドウ糖が固体状透析用A剤中に含まれる場合、相対的な水分含有量の増加の影響の他に、塩化ナトリウムが含まれていない分、ブドウ糖と、ブドウ糖の分解を促す塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び他の微量電解質との接触面積が大きくなるために、ブドウ糖がより不安定化し易くなるという問題点もある。
【0011】
一方、特許文献2には、塩化ナトリウムの一部又は全部を除いた状態で、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び酢酸ナトリウムを含むA剤用造粒物を、飽和水蒸気量又はそれ以下に加湿された加湿気体を用いて湿式造粒する方法が開示されている。特許文献2に記載の湿式造粒法では、電解質成分同士の相互作用が生じるが、加湿気体の湿度をコントロールすることで粘性の増加を抑え、収率よく透析用固体A剤を製造できる。しかしながら、特許文献2に記載の湿式造粒法では、湿式造粒する際の加湿気体の湿度コントロールが必要とされ、更に造粒と乾燥を別工程で行うため、簡易な製造方法といえるものではない。また、塩化カルシウムや塩化マグネシウムに加湿気体を吹き付けることによりそれらを発熱させるといった造粒方法は、連続製造には適さない。即ち、このような造粒方法では、バッチ間における装置内の温湿度管理が求められると共に、製造を重ねるにつれて原料の発熱の程度が変化し、一定の生産条件で一定の品質の製品を製造することが困難となる。更に、特許文献2では、前記湿式造粒法で得られるA剤用造粒物の溶解性や貯蔵安定性については検討されていない。更に、特許文献2に記載の湿式造粒法で得られるA剤用造粒物は、最終的には、塩化ナトリウムと混合した後に透析用A剤として使用される。そのため、特許文献2では、前述するような塩化ナトリウム非存在下で生じるブドウ糖の不安定化等については問題になっておらず、ブドウ糖の安定性に配慮したA剤用造粒物の製造技術を開示するものではない。
【0012】
また、塩化ナトリウムを含まないA剤用造粒物の製造を試みて、たとえ乾式造粒をしようとしても、バインダーの役割を果たす自由水が含まれていないため、粒子同士が結合せず、造粒されないという別の不具合が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、塩化ナトリウムを含まず、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含むA剤用造粒物を、従来行われている造粒及び乾燥という各操作を、別の工程として行わず、簡便に製造できる方法を提供することである。また、本発明の目的は、塩化ナトリウムを含まず、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含み、且つ優れた溶解性を備えており、また、貯蔵時に生じる固化を低減することができ、更にブドウ糖と共存させてもブドウ糖の劣化を抑制する効果を備えるA剤用造粒物、当該A剤用造粒物を用いた透析用A剤、及び当該透析用A剤を用いた透析用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、塩化ナトリウムを含まず、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含むA剤用造粒物の製造方法において、少なくとも塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含む電解質原料を110℃以上の温度条件で加熱して造粒物を得る方法を採用することにより、電解質原料の粘度の上昇を抑制し、装置内への付着を抑制するとともに、製品排出を容易にし、更には従来別工程で行われている造粒と乾燥を同時に進行させることができるので、効率的にA剤用造粒物が得られることを見出した。また、本発明者は、前記製造方法で得られたA剤用造粒物は、優れた溶解性を備えており、透析液の調製の簡便化が図れることを見出した。更に、本発明者は、前記製造方法で得られたA剤用造粒物は、貯蔵時の固化が抑制され、更にブドウ糖と共存させてもブドウ糖の劣化を抑制でき、優れた貯蔵安定性をも備えていることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0016】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 塩化ナトリウムを含まず、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含む、透析用A剤に使用される造粒物の製造方法であって、
少なくとも塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含む電解質原料を110℃以上の温度条件で加熱して造粒物を得る工程を含むことを特徴とする、製造方法。
項2. 前記塩化マグネシウムの少なくとも一部が、水和物の形態である、項1に記載の製造方法。
項3. 前記電解質原料の水分含量が、塩化マグネシウムの無水物重量換算100重量部当たり、350重量部以下である、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 前記電解質原料に自由水が実質的に含まれていない、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5. 前記加熱が、A剤用造粒物の水分含量が塩化マグネシウムの無水物重量換算100重量部当たり250重量部以下になるように行われる、項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
項6. 前記加熱後に得られた造粒物に有機酸を添加する工程を含む、項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
項7. 項1〜6のいずれかに記載の製造方法で得られる、透析用A剤に使用される造粒物。
項8. 項7に記載の造粒物を含む、透析用A剤。
項9. 更にブドウ糖を含む、項8に記載の透析用A剤。
項10. 更に塩化ナトリウムを含む、項8又は9に記載の透析用A剤。
項11. 項8〜10のいずれかに記載の透析用A剤、及び重炭酸ナトリウムを含む透析用B剤を含む、透析用剤。
項12. 前記透析用A剤が塩化ナトリウムを含んでおらず、
更に塩化ナトリウムを含む透析用S剤を含み、
前記透析用A剤、前記透析用B剤、及び前記透析用S剤からなる3剤型の透析用剤である、項11に記載の透析用A剤。
項13. 前記透析用A剤が塩化ナトリウムを含み、
前記透析用A剤、及び前記透析用B剤からなる2剤型の透析用剤である、項11に記載の透析用剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塩化ナトリウムを含まず、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含むA剤用造粒物の製造において、電解質原料を110℃以上の温度条件で加熱して造粒物を得る方法を採用することにより、造粒時の電解質原料の粘度の上昇を抑制し、造粒時に造粒装置内の壁面や撹拌翼に原料が付着するのを抑制できるので、簡便且つ効率的にA剤用造粒物を製造することが可能になる。また、本発明によれば、造粒時の加熱によって乾燥も同時に進行させることができるので、工程を簡略化して効率的にA剤用造粒物を製造することもできる。
【0018】
また、本発明で得られるA剤用造粒物は、優れた溶解性を備えており、一般的に用いられている溶解装置を使用し、透析液を調製する際に、迅速に溶解することで溶け残りを防ぐと同時に、透析液濃度異常のリスクを低減することができ、安全な透析液を安定的に、且つ効率的に供給することが可能となる。更に、本発明で得られるA剤用造粒物は、貯蔵時の固化が抑制され、更にブドウ糖と共存させてもブドウ糖の劣化を抑制でき、貯蔵安定性の点でも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.A剤用造粒物の製造方法
本発明の製造方法は、塩化ナトリウムを含まず、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含むA剤用造粒物の製造方法であって、少なくとも塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含む電解質原料を加熱して造粒物を110℃以上の温度条件で加熱して造粒物を得る工程を含むことを特徴とする。以下、本発明の製造方法について詳述する。
【0020】
電解質原料
本発明の製造方法では、塩化ナトリウムを含まず、少なくとも塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含む電解質原料を使用して造粒する。
【0021】
電解質原料に用いられる塩化マグネシウムは、水和物又は無水物のいずれを使用してもよいが、塩化マグネシウムの一部又は全てが水和物の形態であることが好ましい。塩化マグネシウムの水和物を使用すると、造粒時の加熱によって塩化マグネシウムの水和物に含まれる結晶水の少なくとも一部が離脱してバインダーとしての役割を果たし、電解質原料を効率的に造粒させることが可能になる。
【0022】
塩化マグネシウムの水和物としては、具体的には、塩化マグネシウム二水和物、塩化マグネシウム四水和物、塩化マグネシウム六水和物、塩化マグネシウム八水和物、塩化マグネシウム十二水和物等の1〜12水和物が挙げられる。これらの塩化マグネシウムの水和物の中でも、好ましくは塩化マグネシウム六水和物が挙げられる。これらの塩化マグネシウムの水和物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
また、前記電解質原料において、塩化マグネシウムの一部又は全部を水和物の形態で含有させる場合、電解質原料に含まれる塩化マグネシウムの総量当たりに占める塩化マグネシウムの水和物の割合については、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムに含まれる結晶水が電解質原料中で占める割合が後述する範囲を充足するように適宜設定すればよいが、電解質原料に含まれる塩化マグネシウム総量100重量部当たり、例えば、六水和物形態の塩化マグネシウムが40〜100重量部、好ましくは70〜100重量部、更に好ましくは100重量部となる割合が挙げられる。ここで、塩化マグネシウムの総量とは、塩化マグネシウムが水和物の形態の場合には、結晶水(水和物中の水分子)の重量を含めて算出される総重量である。
【0024】
また、塩化マグネシウムの一部又は全部を水和物の形態で使用する場合、前記電解質原料において、塩化マグネシウムに含まれる結晶水(水和物中の水分子)の総量については、例えば1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、更に好ましくは4〜20重量%を占めていることが望ましい。このような割合で塩化マグネシウムの結晶水を含むことによって、造粒時に電解質原料の粘度の上昇抑制効果を高めてA剤用造粒物の製造効率化をより一層向上させると共に、溶解性の向上、貯蔵時の固化抑制、及びブドウ糖安定化を一層効果的に図ることが可能になる。
【0025】
また、前記電解質原料における塩化マグネシウムの含有量については、透析用A剤によって調製される透析液のマグネシウムイオン濃度が0.5〜2.0mEq/L、好ましくは0.75〜1.5mEq/lとなるように、A剤用造粒物に必要に応じて含まれる他のマグネシウム塩の含有量等を勘案して適宜設定すればよいが、例えば、前記電解質原料の総量100重量部当たり、塩化マグネシウムの無水物重量換算で1〜50重量部、好ましくは1〜25重量部、更に好ましくは1〜15重量部が挙げられる。本発明において、「電解質原料の総量」とは、必要に応じて含まれる結晶水及び自由水も含めた総重量を指し、「塩化マグネシウムの無水物重量換算」とは、塩化マグネシウムが水和物の形態の場合には、結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、無水物の重量に換算して求められる値である。
【0026】
電解質原料に用いられる塩化カルシウムは、水和物又は無水物のいずれを使用してもよいが、塩化カルシウムの一部又は全てが水和物の形態であることが好ましい。塩化カルシウムの水和物を使用すると、造粒時の加熱条件によっては、塩化カルシウムの水和物に含まれる結晶水の少なくとも一部が離脱してバインダーとしての役割を果たすこともある。
【0027】
塩化カルシウムの水和物としては、具体的には、塩化カルシウム一水和物、塩化カルシウム二水和物、塩化カルシウム四水和物、塩化カルシウム六水和物等の1〜6水和物が挙げられる。これらの塩化カルシウムの水和物の中でも、好ましくは塩化カルシウム二水和物が挙げられる。これらの塩化カルシウムの水和物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
前記電解質原料において、塩化カルシウムの一部又は全部を水和物の形態で含有させる場合、電解質原料に含まれる塩化カルシウムの総量当たりに占める塩化カルシウムの水和物の割合については、特に制限されないが、例えば、電解質原料に含まれる塩化カルシウム総量100重量部当たり、例えば、二水和物形態の塩化カルシウムが40〜100重量部、好ましくは70〜100重量部、更に好ましくは100重量部となる割合が挙げられる。ここで、塩化カルシウムの総量とは、塩化カルシウムが水和物の形態の場合には、結晶水(水和物中の水分子)の重量を含めて算出される総重量である。
【0029】
前記電解質原料における塩化カルシウムの含有量については、透析用A剤によって調製される透析液のカルシウムイオン濃度が1.5〜4.5mEq/l、好ましくは2.5〜3.5mEq/lとなるように、A剤用造粒物に必要に応じて含まれる他のカルシウム塩の含有量等を勘案して適宜設定すればよいが、例えば、前記電解質原料の総量100重量部当たり、塩化カルシウムの無水物重量換算で1〜75重量部、好ましくは5〜50重量部、更に好ましくは10〜35重量部が挙げられる。本発明において、「塩化カルシウムの無水物重量換算」とは、塩化カルシウムが水和物の形態の場合には、結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、無水物の重量に換算して求められる値である。
【0030】
前記電解質原料は、粉体状であることを限度として、必要に応じて自由水が含まれていてもよい。本発明の製造方法において、塩化マグネシウムの少なくとも一部が水和物の形態である場合、造粒時の加熱によって塩化マグネシウムに含まれる結晶水が離脱して、バインダーとして機能するため、自由水が含まれていなくてもよいが、塩化マグネシウムとして水和物の形態のものを使用しない場合には、バインダーとして自由水を添加しておくことが好ましい。また、塩化マグネシウムとして水和物の形態のものを使用する場合であっても、造粒時の加熱によって離脱する結晶水以外に、バインダーとして機能する水分を補充するために、自由水を添加しておいてもよい。本発明において、「自由水」とは、電解質原料において水和物形態で含まれる結晶水とは別に、他の分子とは結びつきがない状態で添加される水である。
【0031】
前記電解質原料における自由水の含有量については、水和物形態の塩化マグネシウムの含有量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、塩化マグネシウムの無水物重量換算100重量部に対して0〜150重量部、好ましくは0〜100重量部、更に好ましくは0〜50重量部が挙げられる。電解質原料における自由水の含有量を前記範囲に調節することによって、造粒時に電解質原料の粘度の上昇を抑制してA剤用造粒物をより一層効率的に製造できると共に、水への溶解性をより一層向上させ、更には貯蔵時の固化抑制及びブドウ糖の安定化をより一層向上させて、格段に優れた貯蔵安定性を備えさせることが可能になる。
【0032】
また、前記電解質原料における水分含量については粉体状であることを限度として特に制限されず、前述する塩化マグネシウムに含まれる結晶水の量、自由水の添加量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、塩化マグネシウムの無水物重量換算100重量部当たり、350重量部以下が挙げられる。本発明において、「電解質原料における水分含量」とは、水和物の形態で含まれる結晶水と、添加される自由水の合計量である。A剤用造粒物の製造効率化及び貯蔵安定性をより一層向上させるという観点から、前記電解質原料における水分含量として、塩化マグネシウムの無水物換算重量100重量部当たり、好ましくは100〜300重量部、更に好ましくは150〜250重量部が挙げられる。
【0033】
更に、前記電解質原料には、塩化カルシウム及び塩化マグネシウム以外に、必要に応じて、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グルコン酸イオン、コハク酸イオン、リンゴ酸イオン等の供給源となる有機酸塩及び/又は無機塩が含まれていてもよい。
【0034】
カルシウムイオンの供給源となる化合物としては、例えば、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩が挙げられる。これらの有機酸のカルシウム塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
マグネシウムイオンの供給源となる化合物としては、例えば、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム等のマグネシウムの有機酸塩が挙げられる。これらのマグネシウムの有機酸塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ナトリウムイオンの供給源となる化合物としては、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等のナトリウムの有機酸塩が挙げられる。これらのナトリウムの有機酸塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
カリウムイオンの供給源となる化合物としては、例えば、塩化カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム等のカリウムの無機塩及び/又は有機酸塩が挙げられる。これらのカリウムの無機塩及び/又は有機酸塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
酢酸イオンの供給源となる化合物としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩;二酢酸ナトリウム、二酢酸カリウム等の二酢酸アルカリ金属塩が挙げられる。これらの酢酸のアルカリ金属塩及び二酢酸アルカリ金属塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
塩化物イオンの供給源となる化合物としては、例えば、塩化カリウム等が挙げられる。
【0040】
これらの有機酸塩及び/又は無機酸塩については、最終的に調製される透析液に含有させるべき各種イオンの種類に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは、カリウムの無機塩及び/又は有機酸塩と酢酸のアルカリ金属塩、更に好ましくは塩化カリウムと酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0041】
電解質原料において、これらの有機酸塩及び/又は無機塩の含有量については、最終的に調製される透析液に備えさせる各イオン濃度に応じて適宜設定される。具体的には、A剤に含まれる電解質成分の含有量は、A剤用造粒物以外に含まれる電解質成分量等を勘案し、最終的に調製される透析液が下記表1に示す各イオン濃度を満たすよう、適宜設定すればよい。
【0043】
電解質原料を用いた造粒
本発明の製造方法では、前記電解質原料に加熱を行うことによって造粒する。前記電解質原料を加熱することによって、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び必要に応じて添加される他の電解質成分が結合して、優れた溶解性及び貯蔵安定性を備えるA剤用造粒物を形成することが可能になる。また、前記電解質原料は、水分量が少ないため、造粒時に電解質原料の粘度が上昇するのを抑制し、効率的にA剤用造粒物を製造することが可能になる。更に、前記電解質原料を110℃以上の温度条件で加熱することによって、造粒と共に乾燥も同時に進行するので、従来の湿式造粒のように造粒後に乾燥処理を行わなくてよく、A剤用造粒物の簡便な製造が可能になる。
【0044】
造粒する際の加温条件については、110℃以上であることを限度として特に制限されないが、A剤用造粒物の製造効率化及び貯蔵安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくは110〜200℃、更に好ましくは130〜170℃が挙げられる。
【0045】
また、加熱時間については、加熱温度、造粒に供する電解質原料の量、製造されるA剤用造粒物の水分含量等を勘案して適宜設定すればよいが、例えば、1〜45分間、好ましくは5〜30分間、更に好ましくは10〜25分間が挙げられる。
【0046】
加熱後に得られるA剤用造粒物の水分含量については、特に制限されないが、例えば、製造されるA剤用造粒物の水分含量が塩化マグネシウムの無水物換算重量100重量部に対して0〜250重量部程度であればよい。このような水分含量になる程度まで加熱することによって、優れた溶解性及び貯蔵安定性を備えるA剤用造粒物を得ることが可能になる。より一層優れた溶解性及び貯蔵安定性を備えるA剤用造粒物を得るという観点から、前記電解質原料に対する加熱は、製造されるA剤用造粒物の水分含量が、塩化マグネシウムの無水物換算重量100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部、更に好ましくは50〜160重量部となる程度に行うことが望ましい。
【0047】
造粒時の加熱方法については、特に制限されず、例えば、前記電解質原料の調製に使用した混合機を加温しながら必要に応じて撹拌する方法;送風定温乾燥機を用いて静置加熱する方法;流動層乾燥機(転動流動層乾燥機、振動流動層乾燥機等含む)を用いて電解質原料の流動層を形成して加熱する方法等が挙げられる。これらの加熱方法の中でも、好ましくは流動層乾燥機を用いて加熱する方法が挙げられる。110℃以上での加熱を流動層乾燥機にて行うことによって、粒径180μm以下の微細な粒子が生じるのを抑制し、粒径が180〜1700μm程度のA剤用造粒物を効率的に得ることが可能になる。
【0048】
有機酸(pH調節剤)の添加
本発明の製造方法で得られるA剤用造粒物には、最終的に調製される透析液のpHを調整するために、有機酸が含まれていてもよい。従来のA剤用造粒物では、pH調節剤として有機酸(特に酢酸)を添加すると、貯蔵時に固化を進行させ易くなる傾向を示すが、本発明の製造方法で得られるA剤用造粒物では有機酸を添加しても、固化を十分に抑制でき、優れた貯蔵安定性を備えることができる。
【0049】
A剤用造粒物に含まれる有機酸の種類については、透析用剤に使用できることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸、グルコン酸等が挙げられる。これらの有機酸の中でも、好ましくは酢酸、クエン酸、更に好ましくは酢酸(特に、氷酢酸)が挙げられる。これらの有機酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0050】
A剤用造粒物における有機酸の含有量は、最終的に調製される透析液に備えさせるpH、有機酸の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、A剤用造粒物における有機酸の含有量は、最終的に調製される透析液のpHが7.2〜7.6、好ましくは7.2〜7.5となるように適宜設定すればよい。
【0051】
有機酸の添加タイミングについては、特に制限されないが、造粒時の加熱による有機酸の分解を抑制するという観点から、造粒後に添加することが好ましい。
【0052】
A剤用造粒物
前記製造方法で得られたA剤用造粒物は、透析用A剤の添加原料として使用される。
【0053】
また、本発明の製造方法によれば、塩化ナトリウムを含まず、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含むA剤用造粒物に対して、従来技術では実現し得ない優れた溶解性を備えさせることができる。即ち、本発明では、更に、塩化ナトリウムを含まず、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含むA剤用造粒物であって、以下の条件での溶解時間が230秒以内、好ましくは50〜220秒という溶解特性を備えるA剤用造粒物が提供される。
(溶解条件)
1L容ビーカー(底面積50cm
2)中に半径15mmの撹拌子を750rpmで回転させた状態で、造粒物44.13gを投入した後に、20℃の精製水を流速667g/分の速度で90秒間ビーカーの上部から壁を伝わらせて添加して、精製水の添加終了後から造粒物が完全に溶解するまでの溶解時間を目視にて計測する。
【0054】
2.透析用A剤
本発明の透析用A剤は、前記A剤用造粒物を含有する。本発明の透析用A剤は、前記A剤用造粒物のみからなるものであってもよく、また、必要に応じて、透析用剤に使用される他の化合物が含まれていてもよい。
【0055】
例えば、本発明の透析用A剤には、患者の血糖値の維持の目的で、前記A剤用造粒物と共にブドウ糖を含んでいてもよい。ブドウ糖は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の電解質との接触によって不安定化される傾向があるが、本発明の透析用A剤では、前記A剤用造粒物を使用することによってブドウ糖を含有させても、ブドウ糖を安定に維持することができる。
【0056】
本発明の透析用A剤中のブドウ糖の含有量は、最終的に調製される透析液に備えさせるブドウ糖濃度に応じて適宜設定される。具体的には、本発明の透析用A剤中のブドウ糖の含有量は、最終的に調製される透析液におけるブドウ糖濃度が0〜2.5g/l、好ましくは1.0〜1.5g/lとなるように適宜設定すればよい。
【0057】
また、本発明の透析用A剤は、必要に応じて、塩化ナトリウムが含まれていてもよい。透析用A剤に塩化ナトリウムが含まれている場合には、本発明の透析用A剤は、重炭酸ナトリウムを含むB剤と共に、2剤型の透析用剤として使用される。
【0058】
本発明の透析用A剤における塩化ナトリウムの含有量については、透析用A剤中のナトリウム塩の量等を勘案し、最終的に調製される透析液が前記表1に示す各イオン濃度を満たすように適宜設定すればよい。
【0059】
本発明の透析用A剤は、重炭酸ナトリウムを含む透析用B剤と共に、重炭酸透析液を調製するための透析用剤として使用される。
【0060】
3.透析用剤
本発明の透析用剤は、前記透析用A剤、及び重炭酸ナトリウムを含む透析用B剤を含有する。
【0061】
前記透析用B剤には、必要に応じてブドウ糖が含まれていてもよい。前記透析用B剤にブドウ糖を含有させる場合、その含有量は、最終的に調製される透析液におけるブドウ糖濃度が0〜2.5g/l、好ましくは1.0〜1.5g/lとなるように適宜設定すればよい。但し、前記透析用B剤は、重炭酸ナトリウム以外の電解質成分が含まれていないことが望ましく、含有成分が実質的に重炭酸ナトリウムからなるものが好適である。透析用B剤は、輸送や保管の観点から固形状であることが望ましい。また、固形状の透析用B剤の形状としては、具体的には粉末剤、顆粒剤等が挙げられる。
【0062】
前記透析用B剤の使用量は、最終的に調製される透析液中の重炭酸イオンが20〜40mEq/l、好ましくは25〜35mEq/lとなるように適宜設定すればよい。
【0063】
前記透析用A剤に塩化ナトリウムが含まれている場合には、本発明の透析用剤は、前記透析用A剤、及び重炭酸ナトリウムを含む透析用B剤からなる2剤型の透析用剤として使用される。
【0064】
また、前記透析用A剤に塩化ナトリウムが含まれていない場合には、本発明の透析用剤は、前記透析用A剤、塩化ナトリウムを含む透析用S剤、及び重炭酸ナトリウムを含む透析用B剤からなる3剤型の透析用剤として使用される。当該3剤型の透析用剤は、特許文献1に記載されているように、透析時に透析用S剤と透析用B剤の添加量の比率を調節することによって、患者の病態に応じて、透析中でも重炭酸イオン濃度を自在に変化させつつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の電解質濃度を一定に維持できる透析液を調製することが可能になる。
【0065】
前記透析用S剤には、必要に応じてブドウ糖が含まれていてもよい。前記透析用S剤にブドウ糖を含有させる場合、その含有量は、最終的に調製される透析液におけるブドウ糖濃度が0〜2.5g/l、好ましくは1.0〜1.5g/lとなるように適宜設定すればよい。但し、前記透析用S剤は、塩化ナトリウム以外の電解質成分が含まれていないことが望ましく、含有成分が実質的に塩化ナトリウムからなるものが好適である。前記透析用S剤は、輸送や保管の観点から固形状であることが望ましい。また、固形状の透析用S剤の形状としては、具体的には粉末剤、顆粒剤等が挙げられる。
【0066】
前記透析用S剤の使用量は、前記透析用A剤中のナトリウム塩の量等を勘案し、最終的に調製される透析液が前記表1に示すナトリウム濃度を満たすように適宜設定すればよい。
【0067】
本発明の透析用剤は、重炭酸透析液を調製するために使用される。具体的には、前記透析用A剤、前記透析用B剤、及び前記透析用A剤に塩化ナトリウムが含まれていない場合には前記透析用S剤を、所定量の水(好ましくは精製水)に混合し希釈させることによって、重炭酸透析液が調製される。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0069】
試験例1
(1)自由水の未添加でのA剤用造粒物の製造
実施例1〜7及び比較例1〜4
塩化カリウム6.26kg、塩化カルシウム二水和物9.26kg、塩化マグネシウム六水和物4.27kg、及び酢酸ナトリウム27.56kgをナウタミキサ(製造元:ホソカワミクロン株式会社、型番:NX−2J)で1時間撹拌混合し、電解質原料(塩化マグネシウムの無水物換算重量100重量部当たりの水分含量は227重量部)を得た。この電解質原料3kgを流動層乾燥機(製造元:株式会社長門電機工作所、型番:10F型)で、表2に示す条件で加熱して造粒と共に乾燥を行った。得られた造粒物を目開き1.7mmの篩で篩過し、A剤用造粒物を得た(実施例1〜6及び比較例1〜3)。また、前記電解質原料2kgを金属製バットに乗せ送風定温乾燥機(製造元:株式会社アドバンテック、型式:DRS420DA)で、表2に示す条件で加熱して造粒と共に乾燥を行い、目開き1.7mmの篩で篩過し、A剤用造粒物を得た(実施例7及び比較例4)。この結果、自由水を添加しなくても、110℃以上の加熱によって造粒物を形成できることが確認された。
【0070】
【表2】
【0071】
比較例5
塩化カリウム0.264kg、塩化カルシウム二水和物0.391kg、塩化マグネシウム六水和物0.180kg、及び酢酸ナトリウム1.164kgを混合し、電解質混合物(塩化マグネシウムの無水物換算重量100重量部当たりの水分含量は227重量部)を得た。この混合物を転動流動層造粒コーティング装置(製造元:株式会社パウレック、型番FD−MP-01S型)に投入し、撹拌翼とロータディスクを300rpmで回転させ、温度30℃、湿度27%RHの空気を0.8m
3/分の流量で吹き付けて25分間混合・撹拌を行い造粒した。この吹付条件では、電解質原料に塩化マグネシウムの無水物重量換算100重量部当たり、194重量部の自由水が供給された状態で造粒されていた。造粒後に、80℃、相対湿度0.76%RHの乾燥エアーを用いて2.0m
3/分の流量で15分間乾燥を行い、目開き1.7mmの篩で篩過することによって、A剤用造粒物を得た。
【0072】
比較例6
造粒後の乾燥条件を、110℃、相対湿度0.76%RHの乾燥エアーを使用して乾燥時間を18分間に変更したこと以外は、前記比較例5と同条件でA剤用造粒物を得た。
【0073】
比較例7
造粒後の乾燥条件を、130℃、相対湿度0.40%RHの乾燥エアーを使用して乾燥時間を12分間に変更したこと以外は、前記比較例5と同条件でA剤用造粒物を得た。
【0074】
比較例8
塩化カリウム0.264kg、塩化カルシウム二水和物0.391kg、塩化マグネシウム六水和物0.180kg、及び酢酸ナトリウム1.164kgを混合し、A剤用混合物(塩化マグネシウムの無水物換算重量100重量部当たりの水分含量は227重量部)を得た。
【0075】
(2)A剤用造粒物又はA剤用混合物の収率、水分含量、及び粒度分布
得られた各A剤用造粒物及びA剤用混合物の収率、水分含量及び粒度分布を求めた。収率は、実施例1〜7及び比較例1〜4については、加熱造粒乾燥に供した電解質原料の重量に対して得られた、1.7mm以下の粒径を持つA剤用造粒物重量の割合を算出することによって求め、比較例5〜7については、造粒に供した電解質原料の重量に対して、造粒及び乾燥を経て得られた、1.7mm以下の粒径を持つA剤用造粒物重量の割合を算出することによって求めた。水分含量は、カールフィッシャー水分計(製造元:平沼産業、型番AVQ-6)を用いて測定した。粒度分布はA剤用造粒物10gをロボットシフター(製造元:株式会社セイシン企業、型番:RPS-105)を用いて、音波強度20、音波周波数51Hz、分級時間5分、スイープ時間0.3分、パルス間隔1秒の測定条件により、10g中に含まれる、粒径175μm以下の粒子の割合を算出した。
【0076】
得られた結果を表3に示す。実施例1〜7の条件では、いずれも加熱時に電解質原料の粘度上昇が抑えられ、流動層乾燥機内への電解質原料の付着を抑制できており、97%以上という高い収率でA剤用造粒物を製造できた。また、実施例1〜7で得られた造粒物の水分含量は、いずれも6.7%未満であり、十分に水分量を低減できていた。更に、粒径180μm以下の粒子の割合については、実施例1〜7では、比較例1〜8に比して、十分に低値であり、微粉の発生が抑制されていた。
【0077】
【表3】
【0078】
(3)有機酸を含むA剤用造粒物の製造及び性能評価
前記で得られたA剤用造粒物及びA剤用混合物各1kgに対し、pH調節剤として酢酸をそれぞれ0.117kgの割合で添加、混合し、酢酸含有A剤用造粒物及び酢酸含有A剤用混合物を得た(実施例8〜14及び比較例9〜16)。
【0079】
酢酸含有A剤用造粒物及び酢酸含有A剤用混合物の製造において、各A剤用造粒物又はA剤用混合物と酢酸と混合した際の流動性について、以下の判定基準に従って評価した。
<流動性の判定基準>
○:流動性が高く、混合を容易且つ十分に行うことができる。
△:流動性がやや低く、十分な混合を行い難い。
×:流動性が低く、十分な混合を行うことができない。
【0080】
また、酢酸含有A剤用造粒物及び酢酸含有A剤用混合物をポリエチレン袋に包装後、30kgの重りの下で20℃、40%RHの環境下で1日間保存した。保存後の酢酸含有A剤用造粒物及び酢酸含有A剤用混合物を、自然落下にて目開き1.7mmの篩に通過させ、篩上に残った固化物の重量比を固化率として算出した。
【0081】
また、保存後に目開き1.7mmの篩で、固化がほとんど生じていない酢酸含有A剤用造粒物(実施例1〜7及び比較例14、15)はそのまま、保存後に固化の割合が多かった酢酸含有A剤用造粒物及び酢酸含有A剤用混合物(比較例1〜5、8)については、軽く砕いてから、目開き1.7mmの篩を通過させたものを用いて、水への溶解性を測定した。具体的には、空の底面積50cm
31Lビーカー中に半径15mmの撹拌子を750rpmで回転させておき、篩過した酢酸含有A剤用造粒物44.13gを投入し、20℃の精製水を流速667g/分の速度で90秒間ビーカーの上部から壁を伝わらせて添加した。目視にて酢酸含有A剤用造粒物が、精製水の添加終了後から完全に溶解するまでの時間を溶解時間として求めた。
【0082】
得られた結果を表4に示す。この結果から、実施例8〜14の酢酸含有A剤用造粒物では、製造時の流動性が高く、製造が容易に行われ、しかも保存後の固化も十分に抑制できていた。また、実施例8〜14の酢酸含有A剤用造粒物では、優れた溶解性も備えていた。一方、比較例13〜15の酢酸含有A剤用造粒物では、それぞれ酢酸含有前の水分含量が実施例1、3、及び5と同程度であるにも拘わらず、保存後に全体、又は一部が固化していたことから、従来法で製造されるA剤用造粒物では貯蔵安定性が不十分であることが分かり、また比較例13〜15の酢酸含有A剤用造粒物は溶解性の点でも、劣っていた。
【0083】
【表4】
【0084】
試験例3
(1)透析用A剤の調製
試験例1で得られた実施例8〜14及び比較例9〜16の各酢酸含有A剤用造粒物及び酢酸含有A剤用混合物104.4gと、ブドウ糖87.50gを混合し、透析用A剤(実施例15〜21及び比較例17〜24)を得た。
【0085】
(2)175倍濃縮A剤溶液のpH
上記で得られた各透析用A剤を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムとアルミニウム箔とポリエチレン製フィルムが積層されている積層体で形成されたラミネート袋(透湿度は実質的に0g/m
2・24h)に収容して密封し、40℃、相対湿度75%RHで14日間保存した。
【0086】
保存5日後に、各透析用A剤を収容したポリエチレン製袋を開封し、各透析用A剤の固化の有無を確認した。この場合の固化とは、粒径が1.7mm以上の凝集物の有無で判定した。
【0087】
また、上記で得られた保存前、保存5日後、及び保存14日後の各透析用A剤191.9gを精製水に溶解して透析液の35倍濃縮A剤溶液を調製し、0.2μmフィルターでろ過した液について分光光度計を用いて、波長284nmにおける吸光度を測定することによって溶液中の5−ヒドロキシメチルフルフラール(以下、5−HMFと記載)量を測定した。なお、5−HMFはブドウ糖の分解によって生じる化合物であり、上記吸光度が低値である程、ブドウ糖が安定に維持されていることを示す。
【0088】
得られた結果を表5に示す。この結果、実施例15〜21の透析用A剤は、いずれも、保存後に固化を生じておらず、しかも5−HMF量の上昇が抑制されており、保存前の値と同程度であることから、優れた貯蔵安定性を備えていることが確認された。また、比較例21では、酢酸含有前の水分含量が実施例15と同程度であるにも関わらず、保存後に固化が生じ、更に5−HMF量が多くなっており、従来法で製造されるA剤用造粒物では貯蔵安定性が不良であることが確認できる。
【0089】
【表5】