【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の請求項1に係る放射性物質採取装置は、水中に局所的に存在する放射性物質を採取する放射性物質採取装置であって、平面視における特定の領域である検出領域内における放射線の強度を測定する放射線検出手段と、前記検出領域内の物質を採取する放射性物質採取手段と、前記放射線検出手段において検出された放射線の検出強度が、前記放射線検出手段について定められた第1の閾値を超えた場合に、前記検出領域内の物質を前記放射性物質採取手段に採取させる制御を行う制御手段と、を具備し、前記放射線検出手段と前記放射性物質採取手段とが連動して水中を移動可能とされたことを特徴とする。
この発明においては、放射線検出部によって、水中における特定の検出領域内に放射性物質が存在していると認識された場合に、この検出領域内の物質が放射性物質採取手段によって採取される。この際、放射線検出手段と放射性物質採取手段は、放射性物質の分布を測定すべき水中を連動して移動可能とされる。
本発明の請求項2に係る放射性物質採取装置は、前記放射線を発した放射性物質が前記検出領域内において存在する位置である領域内位置を推定する領域内位置推定手段を具備し、前記制御手段は、前記放射性物質採取手段に、前記領域内位置における物質を採取させることを特徴とする。
この発明においては、検出領域内における放射性物質の位置(領域内位置)が推定され、この位置における物質が選択されて放射性物質採取手段に採取される。ここで推定される領域内位置とは、放射線検出手段に対する放射性物質の相対的な位置関係であり、検出された放射性物質の絶対的な位置座標ではない。
本発明の請求項3に係る放射性物質採取装置は、前記放射線検出手段において、平面上に離散的に配置された複数の放射線検出器が用いられ、前記領域内位置推定手段は、複数の前記放射線検出器のうち検出出力が極大値をとった前記放射線検出器の前記検出領域に対する位置関係より前記領域内位置を推定することを特徴とする。
この発明においては、放射線検出手段において用いられた複数の放射線検出器において放射線の検出強度が極大であったものと、検出領域との間の位置関係に基づいて領域内位置が推定される。
【0010】
本発明の請求項4に係る放射性物質採取装置は、前記放射線検出手段において、一次元配列された複数の前記放射線検出器が用いられたことを特徴とする。
この発明においては、一次元配列された複数の放射線検出器が放射線検出手段において用いられる。
本発明の請求項5に係る放射性物質採取装置において、前記放射線検出手段は、前記放射線検出器の配列方向が互いに交差するように、複数の前記放射線検出器がそれぞれ一次元配列された2つの測定ヘッドを具備し、前記検出領域は、2つの前記測定ヘッドそれぞれにおいて前記放射線検出器が配列された区間によって規定され、前記領域内位置推定手段は、2つの前記測定ヘッドのそれぞれにおいて前記検出出力が極大値をとった前記放射線検出器の前記測定ヘッドにおける位置より、前記領域内位置を推定することを特徴とする。
この発明においては、放射線検出手段において、交差する2つの測定ヘッドが用いられ、検出領域は、この測定ヘッドによって規定される。また、領域内位置は、2つの測定ヘッドそれぞれの中における検出強度が極大となった放射線検出器の位置に基づいて推定される。
本発明の請求項6に係る放射性物質採取装置は、前記放射線検出手段において、平面視において環状に配列された複数の前記放射線検出器が用いられ、前記検出領域は、複数の前記放射線検出器に囲まれた領域であることを特徴とする。
この発明においては、放射線検出手段において、環状に配列された放射線検出器が用いられる。また、検出領域は、この複数の放射線検出器で囲まれた領域となる。
本発明の請求項7に係る放射性物質採取装置において、前記放射線検出器は、前記放射線を吸収することにより発光するシンチレータと、前記シンチレータが発した光を検出するフォトダイオードとを具備することを特徴とする。
この発明においては、シンチレータとフォトダイオードとが組み合わされた放射線検出器が用いられる。
【0011】
本発明の請求項8に係る放射性物質採取装置は、前記放射線検出手段の位置である装置位置を認識する装置位置認識手段を具備し、前記制御手段は、前記領域内位置及び前記装置位置から、前記放射線を発した放射性物質の位置である放射性物質位置を認識することを特徴とする。
この発明においては、放射線検出手段の絶対的な位置である装置位置が装置位置認識手段によって認識される。このため、この装置位置と領域内位置に基づいて、放射性物質が存在すると推定される絶対的な位置(放射性物質位置)が推定される。
本発明の請求項9に係る放射性物質採取装置は、前記放射性物質位置を記憶する放射性物質位置記憶手段を具備することを特徴とする。
この発明においては、放射性物質位置が放射性物質位置記憶手段によって記憶される。このため、放射性物質が採取されると同時に、放射性物質が存在した位置(絶対的な位置)の情報も放射性物質採取装置内において記憶される。
本発明の請求項10に係る放射性物質採取装置において、前記放射性物質採取手段は、前記検出領域内における物質を吸引する可撓性の吸引ホースを具備し、前記吸引ホースの吸引口が、前記領域内位置に制御されることを特徴とする。
この発明においては、可撓性の吸引ホースによって、検出領域内の領域内位置における物質が吸引される。
本発明の請求項11に係る放射性物質採取装置は、前記放射性物質採取手段によって採取された前記検出領域内の物質から発せられた放射線の強度を測定する試料確認手段を具備し、前記制御手段は、前記試料確認手段において検出された放射線の検出強度が、前記試料
確認手段に対して予め定められた第2の閾値以下である場合に、前記検出領域内の物質を前記放射性物質採取手段に再度取得させる制御を行うことを特徴とする。
この発明においては、採取された物質内における放射性物質の有無が判定され、放射性物質が存在しないと判定されると、物質の採取が再度行われる。
本発明の請求項12に係る放射性物質採取装置は、前記放射線検出手段の出力にマルチチャンネルアナライザ(MCA)及び/又はマルチチャンネルスケーラ(MCS)が接続されたことを特徴とする。
この発明においては、マルチチャンネルアナライザ(MCA)、マルチチャンネルスケーラ(MCS)が用いられることにより、同時に複数種類のエネルギーの放射線の強度を測定することができる。
本発明の請求項13に係る放射性物質採取装置は、水底に沿って移動可能とされたことを特徴とする。
この発明においては、放射性物質採取装置が水底に沿って移動可能とされるため、放射性物質採取装置が水底を走査することができる。
【0012】
本発明の請求項14に係る放射性物質分析方法は、前記放射性物質採取装置を用いて採取された前記検出領域内の物質に含まれる放射性物質の分析を行うことを特徴とする。
この発明においては、上記の放射性物質採取装置を用いて採取された放射性物質が、地上等で分析される。
本発明の請求項15に係る放射性物質分析方法は、前記放射性物質採取装置を用いて水中における複数の測定箇所でそれぞれ前記検出領域内の物質を採取し、複数の前記測定箇所でそれぞれ採取された前記検出領域内の物質に含まれる放射性物質の水底における分布を測定することを特徴とする。
この発明においては、複数の測定箇所においてそれぞれ検出領域内の物質が採取される。これによって、放射性物質の水底における分布が測定される。
本発明の請求項16に係る放射性物質分析方法は、前記放射性物質採取装置を用いて水中における複数の測定箇所でそれぞれ前記検出領域内の物質を採取し、複数の前記測定箇所において前記放射性物質位置記憶手段に記憶された複数の前記放射性物質位置に基づいて、複数の前記測定箇所でそれぞれ採取された前記検出領域内の物質に含まれる放射性物質の水底における分布を測定することを特徴とする。
この発明においては、複数の測定箇所においてそれぞれ検出領域内の物質が採取されるだけでなく、複数の測定箇所のそれぞれにおける放射性物質位置も認識される。これによって、放射性物質の水底における分布が測定される。
本発明の請求項17に係る放射性物質分析方法は、前記放射性物質採取装置における前記放射線検出手段を用いて複数の測定箇所に対応した複数の前記検出領域内における放射線の強度を測定し、複数の前記測定箇所に対応した複数の前記検出領域のうち、検出された放射線の検出強度が最も高かった前記検出領域内の物質が前記放射性物質採取手段によって採取されるように前記第1の閾値を設定し、検出された放射線の強度が最も高かった前記検出領域内の物質を前記放射性物質採取手段を用いて採取し、採取された物質に含まれる放射性物質の分析を行うことを特徴とする。
この発明においては、前記の放射性物質採取装置において、まず、放射線検出手段のみを用いて複数の測定箇所に対応した複数の検出領域で測定が行われる。測定が行われた検出領域のうち、最も放射線の検出強度が高かった検出領域における検出強度に基づいて、第1の閾値が設定される。その後、放射性物質採取手段を用いて、この検出領域内の物質が採取される。
本発明の請求項18に係る放射性物質分析方法は、水中を移動する移動体に前記放射性物質採取装置を固定し、前記放射性物質採取装置を水底における複数の前記測定箇所間で移動させることを特徴とする。
この発明においては、移動体を用いて上記の放射性物質採取装置を水底で走査することによって、複数の測定箇所における放射性物質が採取される。
本発明の請求項19に係る放射性物質分析方法において、前記移動体は遠隔操作無人探査機(ROV)であることを特徴とする。
この発明においては、遠隔操作無人探査機(ROV)を用いて上記の移動が行われる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の放射性物質採取装置は以上のように構成されているので、特に水底に局所的に存在する小さな放射性物質片を高効率で採取することができ、この放射性物質片の分析を採取後に地上等で高精度で行うことができる。
この際、領域内位置推定手段が用いられることによって、小さな放射性物質片を領域内位置において、より効率的に採取することができる。また、領域内位置(検出領域内における放射性物質片の相対的位置)と装置位置(放射線検出手段等の絶対的な位置)とを組み合わせて用いることによって、採取された放射性物質片の存在した絶対的な位置を正確に認識することができる。また、放射性物質の分布を正確に求めることができる。
また、一次元配列された放射線検出器を放射線検出手段において用いることによって、簡易な構成で放射性物質片の領域内位置を推定でき、特に2つの測定ヘッドを用いることによって、領域内位置の推定をより容易に行うことができる。放射線検出手段をこうした簡易な構成とすることによって、放射線検出手段を小型軽量とすることができ、その移動(走査)がより容易となる。特に、シンチレータとフォトダイオードを組み合わせた放射線検出器を用いれば、個々の放射線検出器を小型軽量とすることができ、低出力の電源を用いても放射線検出器を動作させることができるため、水中等で用いる場合に特に好ましい。
また、吸引口の位置を変えることが容易である可撓性の吸引ホースが用いられる場合には、放射性物質片が存在すると推定された領域内位置における物質を選択的に吸引する動作を特に容易に行うことができる。試料確認手段を用いた場合には、より確実に放射性物質片を採取することができる。
また、放射線検出手段においてMCAやMCSを用いることにより、特定の核種を含む放射性物質を選択的に採取する、あるいは存在すると認識された放射性物質に含まれる核種を認識することができる。
【0014】
また、本発明の放射性物質分析方法においては、上記の放射性物質採取装置を用いることによって、採取された放射性物質片を地上等で高精度で分析することができ、かつその分布状況も正確に調べることができる。特に、こうした放射性物質分析方法は、放射性物質片の採取が困難でありかつその正確な位置を求めることが困難である水中(海中)における放射性物質を調べる際に好適である。
この際、初めに放射線検出手段のみを用いて複数の測定箇所において放射線強度を検出し、最も高い放射線強度が得られた測定箇所における放射線強度から第1の閾値を設定してから、改めて放射性物質採取手段に検出領域内の物質を採取させれば、特に放射線強度の高い土壌を選択的かつ効率的に採取することができる。
この場合に、ROVをこの放射性物質採取装置と組み合わせることによって、水中等における放射性物質片の採取を精密かつ容易に行うことができる。