特許第6562345号(P6562345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562345
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】管内走行装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/10 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   B61B13/10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-125374(P2015-125374)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-7520(P2017-7520A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年6月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [発行者名] 一般社団法人 日本機械学会 [刊行物名] ロボティクス・メカトロニクス講演会2015 講演論文集 [発行年月日] 2015年 5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】馬 書根
(72)【発明者】
【氏名】加古川 篤
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3180975(JP,U)
【文献】 特開2012−076475(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/076806(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/012087(WO,A1)
【文献】 特開2009−001069(JP,A)
【文献】 特開平08−133073(JP,A)
【文献】 特開平06−072359(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0190682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/10
F16L 55/26
G01N 29/265
G01N 21/84
G01N 21/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の軸方向に対してそれぞれ屈曲した状態でジグザグ状に配列され、前記配管の軸方向に対して直交する軸方向周りに回動可能に設けられる少なくとも4つのリンク部と、
前記リンク部間及び前記配管の軸方向の前後両端側に位置する前記リンク部の開放側の端部にそれぞれ設けられ、前記配管の軸方向へ前記配管の内壁面上を移動可能な移動部材を有する複数の移動ユニットとを備える管内走行装置であって、
前記配管の径方向の一方側に張り出して設けられる前記移動ユニットのうち少なくとも2つの前記移動ユニットの前記移動部材は、第1駆動手段によって前記配管の軸方向へ前記内壁面上を能動的に移動可能、且つ、前記配管の周方向へ前記内壁面上を受動的に移動可能な第1全方向移動部材であり、
前記配管の径方向の他方側に張り出して設けられる前記移動ユニットのうち少なくとも1つの前記移動ユニットの前記移動部材は、ロール姿勢角を変えるために、前記配管の周方向へ前記内壁面上を能動的に移動可能、且つ、前記配管の軸方向へ前記内壁面上を受動的に移動可能なロール回転用部材であり、
前記第1全方向移動部材を有する前記移動ユニット及び前記ロール回転用部材を有する前記移動ユニット以外の前記移動ユニットの前記移動部材は、前記配管の軸方向へ前記内壁面上を移動可能、且つ、前記配管の周方向へ前記内壁面上を移動可能な第2全方向移動部材であり、
前記第1全方向移動部材を前記配管の前記内壁面に押し付けるための付勢手段を備えており、
前記配管の軸方向の前後両端側に位置する前記リンク部の開放側の端部にそれぞれ設けられる前記移動ユニットは、前記配管の径方向の他方側にそれぞれ張り出して設けられており、前記それぞれの移動ユニットの前記移動部材の一方又は両方が、前記ロール回転用部材であることを特徴とする管内走行装置。
【請求項2】
前記ロール回転用部材は、一対の半球状に形成される車輪であって、第2駆動手段によって前記リンク部の軸方向周りに能動的に回転可能、且つ、前記リンク部の軸方向に対して直交する軸方向周りに受動的に回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項3】
前記第1全方向移動部材及び前記第2全方向移動部材は、オムニホイールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を走行する管内走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフラ設備の耐用年数超過が問題視され始めており、中でも流体の輸送に使用される配管設備の老朽化が深刻化している。未然に漏洩事故を防ぐためには定期的な配管検査が必要になるが、人間は小さな配管内に入ることができないため、埋設された配管を掘り起こしたり、配管そのものを分解する必要がある。しかし、人手によるこれらの作業は時間や労力が掛かり、危険も伴う。そのため、近年は、カメラや肉厚測定センサを管内走行装置に搭載した配管検査ロボットによる検査が注目されており、様々な配管検査ロボットが開発されている。
【0003】
このような配管検査ロボットとしては、例えば、移動速度の速い自走式の管内走行装置を用いたものが多く提案されている。自走式の管内走行装置としては、独立した複数のクローラ式走行体からなる駆動モジュールが車体の周方向に支持機構を介して放射状に取り付けられた管内走行装置がこれまでに開発されている(例えば、特許文献1参照)。このような管内走行装置では、それぞれの駆動モジュールの速度を調整することにより前進後退だけなく、その場で上下左右への方向転換を行うことができる。しかしながら、このような配管走行装置では、バネ等を用いた支持機構によって直径が常に放射状に膨らもうとするため、分岐管等では、空いた空間に駆動モジュールの一部が逃げてしまい、進行が妨げられてしまう虞がある。また、径方向に空間的に余裕のない配管内で複数の駆動モジュールを配置しなければならないため、小型化が難しいという問題がある。
【0004】
一方で、近年、小型化を実現し、狭く細長い空間に適した構造となるように、複数の車輪、リンク、関節を連結させてジグザグ状に構成し、全体の幅を拡張することによって配管の内壁面を押し付けることができる連結車輪型の配管検査ロボットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の装置では、複数の駆動部と、該駆動部を連結する複数の連結部と、前記駆動部及び前記連結部を通る2本の操縦用ケーブルと、該操縦用ケーブルの張力を調節する張力調節部とを有しする少なくとも1個の駆動ユニットを有している。また、前記駆動部は、モータによって回転可能な車軸と、該車軸に装着された車輪とを有している。そして、この特許文献2の装置は、前記2本の操縦用ケーブルを互いに同一の張力によって引っ張ることによって、前記駆動ユニットはジグザグ状に屈折し、前記駆動部の車輪が前記配管の内壁に接触した状態で、前記駆動ユニットは直進し、前記2本の操縦用ケーブルを互いに異なる張力によって引っ張ることによって、前記駆動ユニットはジグザグ状に屈折し且つ螺旋状に配列し、前記駆動部の車輪が前記配管の内壁に接触した状態で、前記駆動ユニットは螺旋状に進むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−072359号公報
【特許文献2】特開2012−076475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、曲管や分岐管の湾曲方向に合うように、進行方向を変える際には、配管の軸方向周りのロール回転が必要となるが、特許文献2のような従来の装置では、螺旋運動しながらでしかロール回転を行うことができないため、前後方向に移動を繰り返して進行方向を変えなければならず、進行方向を配管の湾曲方向に合わせるのに時間を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、配管内においてその場でロール姿勢角を変えることによって、進行方向を迅速に配管の湾曲方向に合わすことができる管内走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る管内走行装置は、配管の軸方向に対してそれぞれ屈曲した状態でジグザグ状に配列され、前記配管の軸方向に対して直交する軸方向周りに回動可能に設けられる少なくとも4つのリンク部と、前記リンク部間及び前記配管の軸方向の前後両端側に位置する前記リンク部の開放側の端部にそれぞれ設けられ、前記配管の軸方向へ前記配管の内壁面上を移動可能な移動部材を有する複数の移動ユニットとを備える管内走行装置であって、前記配管の径方向の一方側に張り出して設けられる前記移動ユニットのうち少なくとも2つの前記移動ユニットの前記移動部材は、第1駆動手段によって前記配管の軸方向へ前記内壁面上を能動的に移動可能、且つ、前記配管の周方向へ前記内壁面上を受動的に移動可能な第1全方向移動部材であり、前記配管の径方向の他方側に張り出して設けられる前記移動ユニットのうち少なくとも1つの前記移動ユニットの前記移動部材は、ロール姿勢角を変えるために、前記配管の周方向へ前記内壁面上を能動的に移動可能、且つ、前記配管の軸方向へ前記内壁面上を受動的に移動可能なロール回転用部材であり、前記第1全方向移動部材を有する前記移動ユニット及び前記ロール回転用部材を有する前記移動ユニット以外の前記移動ユニットの前記移動部材は、前記配管の軸方向へ前記内壁面上を移動可能、且つ、前記配管の周方向へ前記内壁面上を移動可能な第2全方向移動部材であり、前記第1全方向移動部材を前記配管の前記内壁面に押し付けるための付勢手段を備えており、前記配管の軸方向の前後両端側に位置する前記リンク部の開放側の端部にそれぞれ設けられる前記移動ユニットが、前記配管の径方向の他方側にそれぞれ張り出して設けられており、前記それぞれの移動ユニットの前記移動部材の一方又は両方が、前記ロール回転用部材であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る管内走行装置は、前記ロール回転用部材が、一対の半球状に形成される車輪であって、第2駆動手段によって前記リンク部の軸方向周りに能動的に回転可能、且つ、前記リンク部の軸方向に対して直交する軸方向周りに受動的に回転可能であることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る管内走行装置は、前記第1全方向移動部材及び前記第2全方向移動部材が、オムニホイールであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る管内走行装置によれば、配管内において、第2駆動手段によってロール回転用部材を配管の周方向へ前記内壁面上を能動的に移動させることによって、その場でロール姿勢角を変えることができるので、進行方向を迅速に配管の湾曲方向に合わすことができる。また、この際、他の第1全方向移動部材及び第2全方向移動部材は、配管の周方向へ前記内壁面上を受動的に移動可能であるので、ロール回転用部材の配管の周方向への能動的な移動に追随して移動することができる。これにより、本発明に係る管内走行装置では、曲管や分岐管に対しても効率良く走行することができるので、カメラや肉厚測定センサ等の検査手段を搭載しておけば、検査時間の短縮を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、第2駆動手段によってロール回転用部材を配管の周方向へ能動的に移動させて、ロール回転角を一定に保ったまま、付勢手段によって第1全方向移動部材を配管の内壁面に押し付けた状態で、第1駆動手段によって第1全方向移動部材を配管の軸方向へ能動的に移動させることによって、従来のような螺旋運動も必要に応じて行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、配管の軸方向の前後両端側に位置するリンク部の開放側の端部にそれぞれ設けられる移動ユニットは、配管の径方向の第1全方向移動部材を有する移動ユニットの反対側である他方側にそれぞれ張り出して設けられており、それぞれの移動ユニットの移動部材の一方又は両方が、ロール回転用部材であるので、より安定的にロール姿勢角を変えることができる。
【0015】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、ロール回転用部材は、一対の半球状に形成される車輪であるので、進行方向に対して車輪の半径を大きくとることができ、配管内の進行方向に対する障害物走破性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、第1全方向移動部材及び第2全方向移動部材は、オムニホイールであるので、第2駆動手段によってロール回転用部材を配管の周方向へ能動的に回転させた際に、ロール回転用部材に安定的に追随して回転することができ、より効率良くロール姿勢角を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る管内走行装置の一例を示す概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る管内走行装置の一例を示す概略側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る管内走行装置の一例を示す概略平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る管内走行装置の一例を示す概略正面図である。
図5図3のA−A線断面図である。
図6図5の部分拡大断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る管内走行装置の螺旋運動を行う際の状態の一例を示す概略側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る管内走行装置の螺旋運動を行う際の状態の一例を示す概略平面図である。
図9】本発明の実施形態に係る管内走行装置が曲管を走行する際の状態の一例を示す概略平面図であって、(a)はロール回転前を示しており、(b)はロール回転後を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る管内走行装置1について、図面を参照しつつ説明する。管内走行装置1は、例えば、配管10内の点検等を行うためのカメラや肉厚測定センサ等を搭載して、配管10内を走行するために利用できるものであって、図1図4に示すように、配管10の軸方向に対してそれぞれ屈曲した状態でジグザグ状に配列され、配管10の軸方向に対して直交する軸方向周りに回動可能に設けられる4つのリンク部2(2a〜2d)と、リンク部2a、2b間に設けられる移動ユニット3a、リンク部2c、2d間に設けられる移動ユニット3b、リンク部2b、2d間に設けられる移動ユニット5、配管10の軸方向の前後両端側に位置するリンク部2a、2dの開放側の端部にそれぞれ設けられる移動ユニット4a、4bの5つの移動ユニットとを備えている。尚、管内走行装置1は、上記の用途に限定されるものではなく、配管10内を走行して行われる他の作業等にも利用できるものである。また、図1,3,4では、配管10は省略して図示している。
【0019】
4つのリンク部2a〜2dは、それぞれ略同形状の円筒状に形成されている。これらの4つのリンク部2a〜2dは、ジグザグ状に配列されており、前後方向に隣り合うそれぞれのリンク部2(2a〜2d)の軸方向のなす角及びそれぞれのリンク部2(2a〜2d)の寸法は略同一に形成されている。尚、隣り合うそれぞれのリンク部2(2a〜2d)の軸方向のなす角及びそれぞれのリンク部2(2a〜2d)の寸法は、管内走行装置1が走行する配管10の径等に応じて、適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。また、隣り合うそれぞれのリンク部2(2a〜2d)の軸方向のなす角及びそれぞれのリンク部2(2a〜2d)の寸法は、必ずしも全て略同一である必要はなく、異なるように構成されていても良い。
【0020】
リンク部2aは、管内走行装置1の進行方向の最前方に位置しており、開放側の端部である前端には、リンク部2aの軸方向上に位置するロール回転軸6を介して移動ユニット4aが設けられており、後端には、略コの字型に形成されている第1連結部7が設けられている。リンク部2bは、リンク部2aの後方に位置しており、前端及び後端のそれぞれには、略コの字型に形成されている第1連結部7の溝内に納まる幅に形成されている第2連結部8が設けられている。リンク部2cは、リンク部2bの後方に位置しており、前端には、略コの字型に形成されている第1連結部7が設けられており、後端には、第1連結部7の溝内に納まる幅に形成されている第2連結部8が設けられている。リンク部2dは、リンク部2cの後方であり、管内走行装置1の進行方向の最後方に位置しており、前端には、略コの字型に形成されている第1連結部7が設けられており、開放側の端部である後端には、リンク部2dの軸方向上にあるロール回転軸6を介して移動ユニット4bが設けられている。
【0021】
リンク部2aの後端に設けられる第1連結部7とリンク部2bの前端に設けられる第2連結部8は、それぞれ配管10の軸方向に直交する移動ユニット3aの車軸31周りに不図示のベアリング等を介して回動可能に連結されている。また、リンク部2bの後端に設けられる第2連結部8とリンク部2bの前端に設けられる第1連結部7は、それぞれ配管10の軸方向に直交する移動ユニット5の車軸51周りに不図示のベアリング等を介して回動可能に連結されている。また、リンク部2cの後端に設けられる第2連結部8とリンク部2dの前端に設けられる第1連結部7は、それぞれ配管10の軸方向に直交する移動ユニット3bの車軸31周りに不図示のベアリング等を介して回動可能に連結されている。これにより、管内走行装置1は、配管10の径に応じてそれぞれのリンク部2a〜2dが回動して、配管10内に挿入される。
【0022】
移動ユニット3a及び移動ユニット3bは、それぞれリンク部2a、2b間及びリンク部2c、2d間に設けられるものであって、図2に示すように、それぞれ移動ユニット4a、4b及び移動ユニット5とは反対側の配管10の径方向の一方側(図2中の山側)に張り出すように設けられている。移動ユニット3a及び移動ユニット3bは、それぞれ配管10の軸方向に直交する車軸31と、車軸31に固定され、配管10の軸方向へ配管10の内壁面11a上を転動するオムニホイール(第1全方向移動部材)32とを備えている。
【0023】
このオムニホイール32は、車軸31の両端側にそれぞれホイール本体33が固定されており、それぞれのホイール本体33には外周の接線方向に配置された不図示の軸が外周方向に所定角度間隔で複数設けられ、それらの軸にゴム等で外周を被膜した略樽型のローラ34がそれぞれ取り付けられている。このローラ34が取り付けられる軸は、車軸31の軸方向に対して直交するように設けられている。また、それぞれのホイール本体33は、周方向に所定角度だけずれた状態で対向するように車軸31に固定されており、車軸31の回転に伴って一体として回転するように構成されている。これにより、オムニホイール32は、ホイール本体33が配管10の軸方向へ回転するだけでなく、ローラ34が配管10の周方向へと受動的に回転することにより、周方向へも移動することが可能である。
【0024】
また、リンク部2bの内部には、図5及び図6に示すように、移動ユニット3bのオムニホイール32を配管10の軸方向へ能動的に回転させるための駆動力を発生させるモータ(第1駆動手段)12が内蔵されている。このモータ12の回転軸13は、図6に示すように、モータ12からの駆動力を伝達する傘歯車機構16に連結されている。傘歯車機構16は、回転軸13に固定され、回転軸13の回転に伴って回転する傘歯車と、回転軸13に直交する車軸31に固定されている傘歯車とが噛み合うように構成されている。従って、モータ12の駆動力によって回転軸13が回転することにより、傘歯車機構16を介して車軸31に駆動力が伝達され、車軸31が回転する。これにより、車軸31に固定されているオムニホイール32が配管10の軸方向へ能動的に回転することができる。尚、ここでは、リンク部2bの内部に内蔵されるモータ12によって、移動ユニット3bのオムニホイール32を配管10の軸方向へ能動的に回転させる場合のみについて説明しているが、リンク2aの内部にもリンク2bと同様に移動ユニット3aのオムニホイール32を配管10の軸方向へ能動的に回転させるための駆動力を発生させるモータ12が内蔵されており、同様の原理によって移動ユニット3aのオムニホイール32も配管10の軸方向へ能動的に回転することができる。このように管内走行装置1では、前後に独立したモータ12等の駆動手段を持つことにより、互いの出力を干渉させてより高い推進力を得ることができる。また、曲管やT字管等においては、前部が後部を牽引し、後部が前部を押し出すことにより、それらの配管内を安定的に移動することができる。また、モータ12は、外部に設けられるコントローラから不図示のケーブルを介して送られる制御信号によって制御できるように構成されており、モータ12の駆動方向を制御することにより、オムニホイール32の回転方向を切り替えることができる。尚、コントローラからモータ12へと送られる制御信号は、無線により送られるように構成されていても良い。
【0025】
また、図5及び図6に示すように、移動ユニット3a、3bには、管内走行装置1が配管内10に挿入された際に、図2に二点鎖線で示す矢印Bの回動方向にそれぞれのリンク部2を付勢することによって、移動ユニット3a、3bのそれぞれのオムニホイール32を配管10の一方側の内壁面11aに押し付けるためのコイルバネ(付勢手段)9がそれぞれ設けられている。このコイルバネ9は、詳しくは図示しないが、一端側が第1連結部7に取り付けられており、他端側が第2連結部8に取り付けられている。これにより、管内走行装置1は、配管10内へ挿入されると、このコイルバネ9によって移動ユニット3a、3bのそれぞれのオムニホイール32が内壁面11aに押し付けられる。そして、この状態で、モータ12の駆動力によってそれぞれのオムニホイール32を配管10の軸方向へ能動的に回転させることにより、それぞれのオムニホイール32は内壁面11a上を転動し、管内走行装置1は配管10内を走行することができる。尚、移動ユニット3a、3bのそれぞれのオムニホイール32を配管10の一方側の内壁面11aに押し付けるための付勢手段は、コイルバネ9に限定されてものではなく、それぞれのリンク部2を図2に二点鎖線で示す矢印Bの回動方向に付勢する付勢力を発生させることができるものであれば良い。
【0026】
移動ユニット5は、リンク部2b、2c間に設けられるものであって、図2に示すように、移動ユニット3a、3bとは反対側の配管10の径方向の他方側(図2中の谷側)に張り出すように設けられている。この移動ユニット5は、移動ユニット3a、3bと同形状に構成されており、配管10の軸方向に直交する車軸51と、車軸51に固定され、配管10の軸方向へ配管10の内壁面11b上を転動するオムニホイール(第2全方向移動部材)52とを備えている。
【0027】
このオムニホイール52は、オムニホイール32と同様のものであり、車軸51の両端側にそれぞれホイール本体53が固定されており、それぞれのホイール本体53には外周の接線方向に配置された不図示の軸が外周方向に所定角度間隔で複数設けられ、それらの軸にゴム等で外周を被膜した略樽型のローラ54がそれぞれ取り付けられている。また、それぞれのホイール本体53は、周方向に所定角度だけずれた状態で対向するように車軸51に固定されており、車軸51の回転に伴って一体として回転するように構成されている。これにより、オムニホイール52は、ホイール本体33が配管10の軸方向へ回転するだけでなく、ローラ54が配管10の内壁面11b上を周方向へと受動的に回転することにより、周方向へも移動することが可能である。尚、ここでのオムニホイール52は、オムニホイール32とは異なり、モータ等の駆動手段からの駆動力によって配管10の軸方向へ能動的に回転するものではなく、配管10の軸方向へも受動的に回転するものであるが、これに限定されるものではなく、オムニホイール52もオムニホイール32と同様にモータ等の駆動手段からの駆動力によって配管10の軸方向へ能動的に回転するように構成しても良い。また、移動ユニット3a、3b及び移動ユニット5に設けられる移動部材は、オムニホイール等の全方向移動車輪に限定されるものではなく、配管10の軸方向に移動ができ、且つ、その移動方向に対して直交する方向(配管の周方向)に移動ができるものであれば良く、例えば、進行方向に対しては十分な摩擦を得ることができ(グリップ力が高く)、それに直交する方向には滑りやすいという特性を有する材質のものを複数互いに異なる方向に組み合わせて、それぞれを歩行時の脚の軌道に合わせて動かすことによって同様の機能を持たせるようにしても良い。
【0028】
移動ユニット4a、4bは、リンク部2aの開放側の端部である前端及びリンク部2dの開放側の端部である後端にそれぞれロール回転軸6を介して設けられるものであって、図2に示すように、移動ユニット3a、3bとは反対側の配管10の径方向の他方側(図2中の谷側)に張り出すように設けられている。移動ユニット4a、4bは、それぞれリンク部2a、2dの軸方向に対して直交する車軸41と、車軸41の両端側にそれぞれ配管10の軸方向に受動的に回転可能に支持されるロール回転用部材である一対の半球状に形成される車輪42とを備えている。
【0029】
リンク部2dの内部には、図5に示すように、管内走行装置1のロール姿勢角を変えるために、移動ユニット4bの一対の半球状の車輪42をリンク部4bの軸方向周りに能動的にロール回転させるための駆動力を発生させるモータ(第2駆動手段)14が内蔵されている。このモータ14の回転軸15には、ロール回転軸6が装着されており、回転軸15の回転に伴ってロール回転軸6もリンク部4bの軸方向周りに回転するように構成されている。また、移動ユニット4bの車軸41は、図5に示すように、ロール回転軸6を貫通するようにして取り付けられている。従って、モータ14の駆動力によって回転軸15が回転することにより、回転軸15と共にロール回転軸6が回転する。これにより、管内走行装置1では、車軸41がロール回転軸6と共に回転し、車軸41の両端側に設けられている一対の半球状の車輪42をリンク部4bの軸方向周りに能動的にロール回転させることによって、配管10の周方向へ内壁面11上を能動的に移動させることができる。尚、ここでは、リンク部2dの内部に内蔵されるモータ14によって、移動ユニット4bの一対の半球状の車輪42をリンク部2bの軸方向周りに能動的にロール回転させる場合のみについて説明しているが、リンク部2aの内部にもリンク部2dと同様にモータ14が内蔵されており、同様の原理によって移動ユニット4aの一対の半球状の車輪42をリンク部2aの軸方向周りに能動的にロール回転させることができる。また、モータ14は、モータと同様に外部に設けられるコントローラから不図示のケーブルを介して又は無線により送られる制御信号によって制御できるように構成されている。
【0030】
以下、本実施形態に係る管内走行装置1の走行動作の一例について、図面を参照しつつ説明する。管内走行装置1では、配管10内を直進する場合には、図1図4に示すように、移動ユニット4a、4bの一対の半球状の車輪42を傾けずに、移動ユニット3a、3bのそれぞれのオムニホイール32を一方の内壁面11aに押し付けた状態で、モータ12の駆動力によって移動ユニット3a、3bのそれぞれのオムニホイール32を配管10の軸方向へ能動的に回転させる。これにより、それぞれのオムニホイール32は内壁面11a上を転動し、且つ、移動ユニット4a、4bの一対の半球状の車輪42及び移動ユニット5のオムニホイール52が配管10の軸方向へ配管10の内壁面11b上を受動的に転動することにより、配管10内を直進走行することができる。
【0031】
また、配管10内を螺旋状に走行する場合には、管内走行装置1は、例えば、図7及び図8に示すように、移動ユニット4aの一対の半球状の車輪42をモータ14の駆動力によってリンク部4aの軸方向周りに能動的にロール回転させて傾いた状態にし、そのロール回転角を一定維持したまま、モータ12の駆動力によって移動ユニット3a、3bのそれぞれのオムニホイール32を配管10の軸方向へ能動的に回転させる。これにより、従来のような螺旋運動も必要に応じて行うことができる。
【0032】
また、管内走行装置1では、例えば、図9に示すような曲管10aを走行する場合には、管内走行装置1の屈曲方向を曲管10aの湾曲方向に合わせる必要がある。この場合には、図9(a)に示す状態から、移動ユニット4a、4bのそれぞれの一対の半球状の車輪42をモータ14の駆動力によってリンク部4a、4bの軸方向周りに能動的にロール回転させることにより管内走行装置1のロール姿勢角をその場で変えて、図9(b)に示すように、管内走行装置1の屈曲方向(進行方向)を曲管10aの湾曲方向に合わせるようにする。そして、この図9(b)に示す状態で、モータ12の駆動力によって移動ユニット3a、3bのそれぞれのオムニホイール32を配管10の軸方向へ能動的に回転させることにより、管内走行装置1は曲管10a内を走行することができる。
【0033】
尚、本実施形態に係る管内走行装置1では、リンク部2aの開放側の端部である前端及びリンク部2dの開放側の端部である後端のそれぞれにロール回転可能な一対の車輪42を有する移動ユニット4a、4bを設けた例を示しているが、いずれか一方のみをロール回転可能に構成するようにしても良い。また、移動ユニット5の移動部材52を能動的にロール回転可能に構成するようにしても良い。また、本実施形態に係る管内走行装置1では、4つのリンク部2(2a〜2d)をジグザグ状に配列している例を示しているが、これに限定されるものではなく、リンク部2は4つ以上ジグザグ状に設けられていても良い。
【0034】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 管内走行装置
2 リンク部
3 移動ユニット
32 オムニホイール(第1全方向移動部材)
4 移動ユニット
42 半球状の車輪
5 移動ユニット
52 オムニホイール(第2全方向移動部材)
9 コイルバネ(付勢手段)
10 配管
11 内壁面
12 モータ(第1駆動手段)
14 モータ(第2駆動手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9