特許第6562389号(P6562389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562389
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】核酸の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   C12N15/10 ZZNA
   C12N15/10 120Z
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-504620(P2017-504620)
(86)(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公表番号】特表2017-510305(P2017-510305A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】US2015025335
(87)【国際公開番号】WO2015157650
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/978,322
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】浜田 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド スウェンソン
【審査官】 金田 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−539366(JP,A)
【文献】 SUR KUNAL; MCFALL SALLY M; YEH EMILIE T; ET AL,JOURNAL OF MOLECULAR DIAGNOSTICS,米国,AMERICAN SOCIETY FOR INVESTIGATIVE PATHOLOGY,2010年 9月 1日,VOL:12, NR:5,PAGE(S):620 - 628,URL,http://dx.doi.org/10.2353/jmoldx.2010.090190
【文献】 SCOTT M BERRY; ELAINE T ALARID; DAVID J BEEBE,LAB ON A CHIP,ROYAL SOCIETY OF CHEMISTRY,2011年 1月 1日,VOL:11, NR:10,PAGE(S):1747 - 1753,URL,http://dx.doi.org/10.1039/c1lc00004g
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ核酸を容器中に嵌入されたフィルターに吸着すること;
(b)フィルターを、水と混和しない第1の非混和性流体洗浄液で洗浄すること;及び
(c)ポリ核酸を、(i)水ベースの溶出液を用いてフィルターから溶出し、次いで(ii)水と混和しない非混和性流体押圧液を用いて水ベースの溶出液を押し出すこと;
を含み、精製ポリ核酸の溶液が得られる、ポリ核酸の精製方法。
【請求項2】
更に、工程(a)の後及び工程(b)の前に、フィルターをアルコールベースの洗浄液で洗浄することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、工程(a)の後及び工程(b)の前に、フィルターを水と混和しない第2の非混和性流体洗浄液で洗浄し、次いでフィルターをアルコールベースの洗浄液で洗浄することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリ核酸がDNA及び/又はRNAである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
フィルターがガラスマイクロファイバーフィルターである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の非混和性流体洗浄液が、(i)水と接触したときに、水から実質的に分離相を形成し、(ii)水の比重より小さい比重を有する流体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
第1の非混和性流体洗浄液の比重が、前記方法で使用されるアルコールベースの洗浄液の比重よりも小さい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アルコールベースの洗浄液がエタノール及び水を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
アルコールベースの洗浄液が、更に塩及び/又は緩衝液を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アルコールベースの洗浄液が、更に親水性高分子を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
親水性高分子が、ポリエチレングリコール高分子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水ベースの溶出液が緩衝液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水ベースの溶出液が、DNアーゼフリー及び/又はRNアーゼフリーの水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
水と混和しない非混和性流体洗浄液、水ベースの溶出液及び水と混和しない非混和性流体押圧液を含んでなる、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法に用いられる試薬キット。
【請求項15】
更にアルコールベースの洗浄液を含んでなる、請求項14に記載の試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床サンプル又は他の血液、細胞、又は組織サンプルから、DNA又はRNAなどの核酸を精製することを含む、核酸精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA及びRNAサンプルを用いる分子生物学技術は、しばしば核酸の精製サンプルを得ることに依存する。生物(例えば、ヒト、動物、植物、細菌、ウイルスなど)から得ることができる、組織、細胞、全血、血漿、血清、抽出物や、実験室で発育又は維持される組織又は細胞培養物など、多くのDNA源又はRNA源がある。DNA又はRNAの更なる使用は一般的に、ポリ核酸が他の細胞の酵素、タンパク質、化合物、及び/又は残屑を含まないように、サンプル中の他の成分からDNA又はRNAを単離する必要がある。このような他の物質からのDNA又はRNAの単離により、例えば、PCR、RT−PCR、TMA、LAMP、LCR、配列決定、核酸ハイブリダイゼーション解析、又は酵素反応や核酸を用いるハイブリダイゼーション反応等に基づく、当該技術分野で公知の多くの技術によるポリ核酸のその後の処理が可能となる。
【0003】
DNA又はRNAを単離するための最も初期の技術の1つは、例えば、プロテイナーゼKを用いて細胞又は組織サンプルを溶解し、非核酸物質(例えば、タンパク質、オルガネラなど)を抽出するために等量のフェノール/クロロホルム溶液を溶解物に加え、そして更なる使用のために核酸を含有する水相を除去することであった。通常、核酸はエタノール又はイソプロパノールでの沈殿によって水相から捕集される。技術の改良としては、RNアーゼ(リボヌクレアーゼ)を不活性化するのに役立つように有機相に少量のイソアミルアルコールを加えること、及び/又はタンパク質変性及び酵素不活性化に役立つためにグアニジニウムチオシアナートなどのカオトロピック剤を加えることが更に挙げられる。フェノール/クロロホルム抽出は、それがもたらす高純度及び高回収率のため、非核酸物質を除去することで核酸を精製する際の「究極の判断基準(gold standard)」と考えられるが、手間を要し、自動化が困難で、そして有害な有機溶媒の使用を必要とする等の難点がある。
【0004】
続いて、核酸を固相に吸着させ、不要物質を洗い流し、核酸を溶出する技術が開発されている。固相は多くの場合シリカ粒子であるが、ガラス繊維、ビーズ又は粉末、ヒドロキシアパタイト、陰イオン交換樹脂、及び珪藻などの他の材料も使用される。ポリ核酸はカオトロピック塩の存在下で固相に結合し、非結合物質はアルコール含有溶液を用いて洗い流され、そして最終的にポリ核酸は、低イオン強度溶液を用いて固相から溶出され、実質的にポリ核酸の純品が得られる。
【0005】
数社から、固相材料の使用を特徴とするDNA及びRNAの精製キットが販売されている。このようなキットでは一般に、固相材料はカラム又は膜の形態で、或いは常磁性粒子へのコーティングとして提供されている。常磁性粒子を使用する場合、洗浄又は溶出緩衝液を除去する際に、粒子を隔離する(sequester)ために磁石が使用される。しかしながら、常磁性粒子は比較的高価であり、そして粒子を扱うことは自動化のコストを増加させる。カラム又は膜を固相として使用する場合、洗浄及び溶出緩衝液は遠心分離か真空を適用することによって取り出される(draw through)。カラム及び膜は、洗浄液が全空隙容量を有効に通過するようにデザインされ、そして処理される必要がある。固相内の液体ホールドアップ、又は、同様に、固相中の空隙スペースの不十分な洗浄は、核酸産物を妨害し又は汚染する可能性のある不純物、阻害剤又はその他の化合物が除去されない可能性があることを意味する。遠心分離は液体をむらなく除去する試みのためにしばしば使用されるが、自動システムは必然的により大きくなり、より複雑で、そして高価となる。一般に、当技術について改良が試みられている方法では、まだ1つ又は複数の下記の問題に悩まされている:(1)核酸産物の低い収率、(2)洗浄廃液の容量増加;(3)所望よりもより希釈された核酸産物溶液;(4)PCR阻害剤の残留;及び(5)長い処理時間。
【0006】
したがって、自動化し易く単純な液体処理工程に基づく方法がまだ求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、核酸精製のための固相材料としてガラスマイクロファイバーフィルターを使用する場合、その後に行われる標準プロトコルを使用する酵素ベース処理で用いるのに十分に純粋な産物が得られないことを見出した。例えば、細胞サンプルは溶解緩衝液で処理され、そして核酸(DNA及びRNA)をガラス繊維に結合させるために、圧力によりガラスマイクロファイバーフィルターに溶解物を通過させる。次いでフィルターを圧力により水性エタノールで2回洗浄し、そして核酸をヌクレアーゼのない水を用いて溶出した。得られた物質を標的として用いてPCRの実施を試みた結果、増幅反応は失敗した。得られた物質中の阻害剤の存在は、対照反応(control reaction)の使用により、確認された。
【0008】
したがって、核酸サンプルを迅速に、ハイスループットで、高純度の収量で得るために、厚いフィルター及び/又はより大きなフィルター及び/又は多様な細孔径のフィルターに適合することができる核酸精製法がまだ求められている。更に、コンパクトなシステムでの自動化が可能であり、そのうえ、運転コストを低減しつつ約1mL又はそれ以上のサンプル量を処理する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、固相としてのフィルター及び圧力駆動操作を用いてポリ核酸を精製する方法を提供する。第1の実施態様は、(1)ポリ核酸をフィルターに吸着すること、(2)フィルターを非混和性流体洗浄液で洗浄すること、及び(3)水ベースの溶出液を用いてフィルターからポリヌクレオチドを溶出して精製ポリ核酸の溶液を得ること、を含む。
【0010】
第2の実施態様は、(1)ポリ核酸をフィルターに吸着すること、(2)フィルターをアルコールベースの洗浄液で洗浄すること、(3)フィルターを非混和性流体洗浄液で洗浄すること、及び(4)水ベースの溶出液を用いてフィルターからポリヌクレオチドを溶出して精製ポリ核酸の溶液を得ること、を含む。
【0011】
第3の実施態様は、(1)ポリ核酸をフィルターに吸着すること、(2)フィルターを非混和性流体洗浄液で洗浄すること、(3)フィルターをアルコールベースの洗浄液で洗浄すること、(4)フィルターを非混和性流体洗浄液で洗浄すること、及び(5)水ベースの溶出液を用いてフィルターからポリヌクレオチドを溶出して精製ポリ核酸の溶液を得ること、を含む。
【0012】
更なる実施態様は、フィルターを、アルコールベースの洗浄液の2つ又はそれ以上の異なる組成物、及び/又は非混和性流体洗浄液の2つ又はそれ以上の異なる組成物で洗浄することを含む。
【0013】
更なる実施態様は、上記実施態様のいずれかの溶出工程後に、フィルターを非混和性流体洗浄液で洗浄することを含む。
【0014】
別の実施態様では、溶出工程は、水ベースの溶出液をフィルターの入口側に配置し(place)、非混和性流体洗浄液を水ベースの溶出液の上部に又は後側に層状にし、そして2つの溶液を、フィルターを通過させて精製ポリ核酸の溶液を得ることによって行われる。
【0015】
種々の実施態様の方法は、DNA、RNA、及び/又はDNA及びRNAの混合物など、いかなるタイプのポリ核酸を精製する場合にも使用することができる。ポリ核酸は天然由来(例えば、いかなるタイプの細胞からも抽出される)又は合成由来であってもよい。
【0016】
固相、及び容器内に固相を保持できる多孔性下部を備えた容器、並びに少なくとも1つの非混和性流体洗浄液、溶出液、及び場合によりアルコールベースの洗浄液を、本発明の方法を実施することができる容器中の固相に送達するための液体送達手段を含むシステムもまた提供される。システムは更に、容器中の固相を通していずれかの溶液を移動させるために、圧力ヘッドを与えることができる圧力源を含んでいてもよい。システムはまた更に、容器中の固相を通していずれかの溶液の流れを誘発できる真空源を含む。また、更なる実施態様では、システムは更に、容器中の固相を通して溶液のいずれかを移動させる(drive)ために遠心力を与えることができる遠心分離器を含んでいてもよい。
【0017】
いくつかの実施態様では、本発明の方法を実施するための装置は単一サンプルを処理するためのコンパートメント及びフィルターを有し、一方、他の実施態様では複数のコンパートメント及びフィルターセットが提供され、場合によっては並行して行うことができる複数サンプル処理用として提供される。複数サンプル処理の例として、多孔性ウェルを底に備えたマルチウェルマイクロタイタープレートを容器として使用することができ、フィルターは各ウェル中に嵌入させることができる。単一サンプル又は複数サンプル処理のための装置は、手動、半自動又は自動で本方法を実施するためのシステムに組み込むことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のこれらの及び他の対象及び特性は、本発明の下記の詳細な説明を添付図面と併せて読む場合に、より十分に明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】精製方法の実施態様を実施するのに有用な装置の1つの実施態様を示す。
図2A】実施例3に記載の発明の実施態様に従って得られた精製核酸サンプルのリアルタイムRT−PCR解析に対する成長曲線を示す。
図2B】実施例3に記載の発明の実施態様に従って得られた精製核酸サンプルのリアルタイムRT−PCR解析に対する成長曲線を示す。
図3A】実施例3に記載の発明の実施態様に従って得られた精製核酸サンプルのリアルタイムRT−PCR解析の産物に対する融解曲線を示す。
図3B】実施例3に記載の発明の実施態様に従って得られた精製核酸サンプルのリアルタイムRT−PCR解析の産物に対する融解曲線を示す。
図4A】実施例3に記載の発明の実施態様に従って調製されたサンプルから得られたPCR産物の電気泳動解析の結果を示す。
図4B】実施例3に記載の発明の実施態様に従って調製されたサンプルから得られたPCR産物の電気泳動解析の結果を示す。
図5】実施例5に記載の発明の実施態様に従って得られた精製核酸サンプルのリアルタイムPCR解析に対する成長曲線を示す。
図6】実施例5に記載の発明の実施態様に従って得られた精製核酸サンプルのリアルタイムPCR解析の産物に対する融解曲線を示す。
図7】実施例5に記載の発明の実施態様に従って調製されたサンプルから得られたPCR産物の電気泳動解析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
重要なDNA又はRNAとしては、ヒト、他の哺乳類、他の動物、植物、細菌、ウイルス、又はいかなる他の生命体、生体又は死体などの、全ての生物のDNA又はRNAが挙げられる。いくつかの実施態様におけるDNA又はRNAは天然のポリ核酸であり、そして本方法は、細胞内部のそれらの天然源からポリ核酸を抽出するためのプロトコルの一部、又は溶解物からポリ核酸を精製するためのプロトコルの一部として使用され得る。その起源は臨床サンプルであってもよく、そしてポリ核酸は診断アッセイの一部として解析される。天然のポリ核酸は、細胞培養物、組織サンプル、血液サンプルなどのようないかなるタイプのサンプルから由来していてもよい。他の実施態様におけるDNA又はRNAは分子生物学的反応の産物であってもよい。例えば、いくつかの実施態様では、DNAサンプルは、例えばゲノムDNAを増幅させることによるなどの天然のDNA源、又はRNA転写産物から産出されるcDNAなどの天然RNA源から由来していてもよい。
【0021】
DNA又はRNAポリ核酸はいかなる長さであってもよく、本発明の方法は複数の長さの組み合わせにも適用し得る。通常、核酸は40ベースほどの短いものでもよく、50キロベースほどの長いものであってもよい。核酸は一本鎖又は二本鎖、又はいかなる他の複数本鎖の構造形態であってもよい。いくつかの実施態様では、DNA及びRNAの両方が本精製法の対象であり得る。他の実施態様において、洗浄及び溶出条件は、DNAかRNAの精製用に最適化される。
【0022】
本発明の方法では、DNA及び/又はRNAは固相上に吸着され、他の物質は洗い流され、次いでDNA及び/又はRNAは固相から溶出される。吸着核酸から不純物を洗い流すために、固相は本明細書に記載の非混和性流体洗浄液で洗浄される。非混和性流体での洗浄は1回、2回又はそれ以上の回数行ってもよく、そして下記に記載の他の洗浄もまた同様に行ってもよい。非混和性流体による複数回の洗浄は連続的に行ってもよく、及び/又は他の溶液での洗浄を間に入れてもよい。
【0023】
固相もまたフィルターとみなしてもよい。いくつかの実施態様では、固相はホウケイ酸塩ガラスなどのガラスベースの材料である。いくつかの実施態様では、ホウケイ酸塩ガラスフィルターは結合剤を含まない。例えば、フィルターは、いかなる形態のフィルター形態であってもよい、ホウケイ酸塩ガラス結合剤のないマイクロファイバーであってもよい。フィルターの厚さは、50〜3000μmの範囲であってもよく、そして例示的実施態様としては100μm、250μm、500μm、675μm、1000μm、又は2000μmが挙げられる。特定の厚さは製品に依存してもよい。更に、フィルターは固相の全厚さを増加させるように積み重ねることができる。積層フィルター(stacking filter)は、例えば、デバイスの結合能を増加させるのに使用することができる。マイクロファイバーのフィルターは、その構造が0.5〜3.0μmの範囲の粒子を保持するように形成してもよく、そして例示的実施態様としては0.7μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、又は2.7μmのサイズが挙げられる。また、保持された特定の粒子径は製品に依存してもよい。複数の細孔径を含有するフィルターは多層化してもよく、又は複数のフィルターを容器中で積み重ねるとき、個々のフィルターは同じ又は異なる細孔径を有していてもよい。1つの実施態様では、フィルターは、ワットマン(Whatman)ガラスマイクロファイバー結合剤のないフィルター、グレードGF/B(675μm厚さ、1.0μm粒子保持評価)の特性を有する。他の実施態様では、フィルターは、ワットマンマイクロファイバーフィルター、グレードGF/A(260μm厚さ、1.6μm粒子保持評価(retention rating))、GF/C(260μm厚さ、1.2μm粒子保持μm厚さ、0.7μm粒子保持評価)の特性を有する。
【0024】
非混和性流体洗浄液。非混和性流体洗浄液は、核酸物質がフィルターに吸着された後、少なくとも1回、フィルターを洗浄するために使用される。非混和性流体洗浄液は、本発明の方法を実行するときに分離できるものであり、(i)水と接触するとき、実質的に水とは別の相を形成し、好ましい実施態様では流体と水の間にメニスカスを形成する流体を含む。好ましい実施態様では、その流体は、(ii)水の比重よりも小さい比重を有し、(iii)精製法の対象である核酸を含む酵素反応を実質的に妨害せず又は阻害せず、(iv)フィルター及びフィルターを収容する容器などの精製システムの装置構成要素と化学的に適合するものである。
【0025】
非混和性流体洗浄液は、フィルターの入口側に配置され、そして次いでフィルターの中を動くとき、フィルターの空隙スペースを通して、流れの方向に、空隙スペースを占有した溶液を押すように機能する。特に、非混和性流体洗浄液は、フィルター中に空隙スペースを占有する水溶液又はアルコールベースの洗浄液全てを押すように機能する。別の態様では、非混和性流体洗浄液は、通常は核酸物質と共に溶出されるであろう、フィルター中にホールドアップされた酵素阻害剤を除去し又はその量を実質的に減少させるように機能する。別の態様では、非混和性流体洗浄液は、核酸物質の検出を妨害するかもしれない成分をサンプルから除去し又は実質的に減少させるように機能する。非混和性流体洗浄液で洗浄することによって、例えば血清サンプル中の、例えばビリルビンを除去又は低減することができる。
【0026】
いくつかの実施態様では、非混和性流体は疎水性高分子である。高分子は無機高分子であってもよく、そして好ましい実施態様はシリコーン油(シリコーン流体としても公知)である。いくつかの実施態様では、高分子は、鉱油(ミネラルオイル)、パラフィン油、Vapor Lock (Qiagen Inc., Valencia, CA)、ベビーオイル又はホワイトオイルなどの有機高分子であってもよい。高分子は、天然、合成、又は半合成製品であってもよい。他の例としては、魚油又は、例えば、ダイズ、オリーブ、ピーナツ、トウモロコシ、又はカノーラから由来する植物油が挙げられる。非混和性流体洗浄液は複数の疎水性高分子タイプを含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、非混和性流体は非高分子有機化合物である。いくつかの実施態様では、非混和性流体洗浄液は高分子及び非高分子有機化合物を含んでいてもよい。いくつかの好ましい実施態様では、非混和性流体は1〜20cStの範囲の粘度を有し、そしていくつかの好ましい実施態様では、粘度は1〜10cStの範囲である。
【0027】
上記にリストされた非混和性流体の4基準(i)−(iv)に適合することに加えて、非高分子化合物は、精製核酸を含むダウンストリームプロセシング(後処理プロセス)のいずれとも物理的に適合する必要がある。例えば、核酸を高温でインキュベート又は加熱しようとする場合、次いで非混和性流体がサンプル中に残る場合、非混和性流体はプロセスを妨害しない蒸気圧及び沸点を有している必要がある。即ち、沸点はプロセス温度よりも適切に大きい必要があり、及び/又は蒸気圧は、揮発性又は体積膨張がプロセスを妨害しないようにプロセス温度では適切に低い必要がある。例えば、精製核酸を例えば95℃において変性工程を有する熱サイクル反応に使用する場合、非混和性流体の沸点は何れもこの温度よりも十分に大きい必要がある。
【0028】
非混和性流体の比重は一般的に水の比重よりも小さい。したがって、洗浄液は、本発明の方法の遂行中に非混和性流体洗浄液をフィルターに置くと、フィルター内にどのような水溶液があってもその上に存在する傾向がある。このように、非混和性流体洗浄液はフィルター材料を通して進むことができ、そしてフィルター中の空隙にホールドアップされていた水溶液を押すことができる。
【0029】
非混和性流体洗浄液の1つの機能は、酵素反応を妨害し又は阻害する物質を減少させ又は除去することである。本精製法のいくつかの実施態様では、非混和性流体洗浄液のいくらかは溶出産物中に残り得る。非混和性流体洗浄液が産物中に残るとき、溶出液及び非混和性流体をその後の反応中に併せて使用してもよく、ここで、非混和性流体は、水より低い比重を有するため、サンプルの上限境界に上がることができる。1つの実施態様では、非混和性流体は防湿層として機能する。
【0030】
本精製法のいくつかの実施態様では、非混和性流体洗浄液を溶出産物と一緒に捕集されるのを防止してもよい。別の場合、非混和性流体洗浄液は、相分離、抽出、及び他の化学的又は物理的技術によって、溶出産物から非混和性流体洗浄液を除去してもよい。非混和性流体洗浄液が溶出産物中に残存しているか否かにかかわらず、非混和性流体洗浄液それ自体が、いかなる下流の(その後の)酵素反応と適合するかを考慮する必要がある。
【0031】
候補となる非混和性流体は多くのグレードで入手でき、そして類似の高分子は種々の源から調製することができ、このようにして非混和性流体及びいかなる下流反応との非混和性流体洗浄液の適合性を、流体を選択し又は溶液を製造しようとするときに、確認する必要がある。例えば、精製核酸物質をPCR反応に使用しようとする場合、流体及び洗浄液を直接サンプルに加えることにより、もしあれば、阻害効果を確認することができる。
【0032】
当業者は、酵素反応における試薬の適合性を確認する必要性及びその方法に精通している。本明細書に記載の精製法での使用に適切な非混和性流体及び非混和性流体洗浄液は、精製産物を用いた酵素反応を含む、下流反応を実質的に妨害又は阻害しないものである。例えば好ましい洗浄液流体は、核酸増幅反応を実質的に妨害又は阻害しないものである。例示的増幅反応としては、PCR、RT−PCR、TMA、LAMP、LCRなどが挙げられる。反応を実質的に妨害又は阻害することは、生成製品の量及びタイプが、1つ又は複数の非混和性流体又は非混和性流体洗浄液がない場合には、生成製品の量及びタイプと異なることを意味する。1つ又は複数の非混和性流体及び非混和性流体洗浄液は、それに続く反応に対して影響が全くない必要はなく、ただ、それが有し得るいかなる影響も所定の適用に対して許容レベル内であればよい。
【0033】
非混和性流体及び洗浄液はまた、精製法を行うのに使用される装置と化学的に適合する必要がある。例えば、非混和性流体及び洗浄液は装置構成要素を溶解、浸出、又は変形させてはならない。装置は少なくともフィルター及びフィルターを収容する容器を含む。
【0034】
アルコールベースの洗浄液。いくつかの実施態様では、アルコールベースの洗浄液は固相を洗浄するのに使用される。いくつかの実施態様では、2つ又はそれ以上のタイプのアルコールベースの洗浄液が使用される。アルコールベースの洗浄液はC1−C4アルカノールなどの低級アルコールを含む。アルキル基は直鎖又は分枝鎖であってもよく、そして1つ又はそれ以上のヒドロキシル基を含有していてもよい。例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、及びtert−ブタノールが挙げられる。更なる例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、及び他のポリオールが挙げられる。好ましい実施態様では、アルコールはエタノールである。洗浄液には複数のタイプのアルコールが存在していてもよい。
【0035】
アルコールベースの洗浄液は、約5%から最大100%までのアルコールを含んでいてもよい。いくつかの好ましい実施態様では、アルコールベースの洗浄液は10〜70%アルコールを含み、そして他の好ましい実施態様では、20〜50%アルコールを含む。洗浄液が100%アルコールでないとき、別の液体成分は水であってもよい。いくつかの実施態様では、アルコールベースの洗浄液は、24%エタノール水、50%エタノール水、70%エタノール水、又は100%エタノールである。いくつかの実施態様では、溶液は更に、1つ又はそれ以上の塩、緩衝液、非イオン性及び/又はイオン性界面活性剤、親水性高分子、保存剤、及び/又は抗菌剤を含有していてもよい。このような成分はいずれも、それらが一旦固相から溶出されれば、それが固相からの吸着核酸の実質的なロスをもたらさず、又は核酸のいかなるダウンストリームプロセシングをも妨害しないものであれば、含んでいてもよい。一般に、このような成分はいずれも、核酸及び核酸を標的とする酵素反応を含む更なる下流使用(downstream use)に適合し得る。
【0036】
この洗浄液、並びに核酸を処理するときに使用される他の洗浄液及び他の試薬においては、溶液に使用される水は一般的に蒸留水であり、この方法を実施する必要性及び目的に応じて、一般的にはDNアーゼフリー及び/又はRNアーゼフリーの水である。
【0037】
塩の好ましい例としては、塩化ナトリム、塩化カリウム、及び酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、又は酢酸アンモニウムが挙げられ、緩衝液の好ましい例としては、トリス−HCl、HEPES、及び他のグッドの緩衝液が挙げられる。塩濃度は通常10〜200mMである。緩衝液濃度は通常10〜500mM、好ましくは20〜200mMであり、そしてpHは6〜11、好ましくは7〜10である。非イオン界面活性剤の好ましい例としては、ポリソルベート80(1つの商品名はTween80(登録商標))、他のポリソルベート、NonidetP−40(登録商標)、TritonX−100(登録商標)などが挙げられる。非イオン界面活性剤は通常1〜10%、好ましくは1〜5%の濃度で存在する。親水性高分子の好ましい例としては、PEG8000などのポリエチレングリコールが挙げられる。保存剤の好ましい例としては、アジ化ナトリウム、ProClin150、ProClin200、及びProClin300が挙げられる。保存剤は通常0.1〜10%の濃度で存在する。塩、緩衝液、界面活性剤、及び保存剤のこれらの例は限定を意図するものではなく、代表的なものであり、そして代替品は当業者によって容易に見出すことができる。
【0038】
いくつかの実施態様では、アルコールベースの洗浄液は、50%エタノール含有100mM NaCl水溶液、50%エタノール含有10mMトリス−HCl水溶液、100mM NaCl水溶液、又は50%エタノール含有10mMトリス−HCl水溶液である。いくつかの実施態様では、アルコールベースの洗浄液は、24%エタノール含有pH7.5緩衝水溶液、又は24%エタノール含有25mM HEPES(pH7.5)水溶液、又は24%エタノール含有25mM HEPES(pH7.5)、30mM NaCl水溶液である。いくつかの実施態様では、アルコールベースの洗浄液は更に8.5%(w/v)PEG8000、及び/又は更に0.1%(v/v)ProClin300を含む。これらの例は、限定を意図するものではなく、用いることができるアルコールベースの洗浄液の典型的なものである。ここに記載した種々の溶液を使用することができ、ここに記載した、成分、濃度、pH等の選択を変更できることは、当業者であれば判断できるであろう。
【0039】
溶出液。水ベースの溶出液は固相から吸着核酸を溶出するのに使用される。溶出液は水溶液を含み、最大100%の水であってもよい。いくつかの実施態様では、溶出液は更に塩及び/又は緩衝液を含有する。塩の好ましい例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、又は酢酸アンモニウムが挙げられ、そして緩衝液の好ましい例としてはトリス−HCl、HEPES、及び他のグッド緩衝液が挙げられる。塩濃度は通常50mM以下である。緩衝液濃度は通常10〜500mM、好ましくは20〜200mMであり、そしてpHは6〜11、好ましくは7〜10である。塩及び緩衝液のこれらの例は、限定を意図するものではなく、代表的なものであり、そして代替品は当業者によって容易に見出すことができる。溶出液に使用される水は一般的には蒸留水であり、この方法を実施する必要性及び目的に応じて、一般的にはDNアーゼフリー及び/又はRNアーゼフリーである。1つの実施態様では、DNAを溶出する溶出液は、10mM(pH9.0)トリス−HClである。1つの実施態様では、RNAを溶出する溶出液は蒸留水である。いくつかの実施態様では、例えば50mM以下の低イオン強度水溶液が使用される。当業者は、溶出液の適合性を、固相から放出された核酸物質の収量を評価することによって試験することができる。一般的に、固相から放出された物質の収量は高く、少なくとも80%又は少なくとも90%であってもよく、又はほぼ定量的であり得る。放出量が適用の目標に適している限り、低収量でも容認できる。
【0040】
非混和性流体押圧液(push solution)。非混和性流体押圧液は、フィルターを通して溶出液を移動させるのを助けるために使用される。非混和性流体押圧液は、本発明の方法を実行するときに分離できるものであり、(i)水と接触するとき、実質的に水とは別の相を形成し、そして好ましい実施態様では流体と水の間にメニスカスを形成する流体を含む。好ましい実施態様では、その流体はまた、(ii)水の比重よりも小さい比重を有し、(iii)精製法の対象である核酸を含む酵素反応を実質的に妨害せず又は阻害せず、そして(iv)フィルター及びフィルターを収容する容器などの精製システムの装置構成要素と化学的に適合するものである。
【0041】
非混和性流体押圧液は、フィルターの入口側に配置させ、次いでフィルターの中を進行させたとき、フィルターの空隙スペースを通して、流れの方向に、空隙スペースを占有した水ベースの溶出液を押すように機能する。下記のように溶出工程において非混和性流体押圧液を用いることによって、溶出液を効率的に捕集することができる。
【0042】
非混和性流体押圧液は、非混和性流体洗浄液で上記した、疎水性高分子、非高分子有機化合物、又はその組み合わせであってもよい。いくつかの好ましい実施態様では、非混和性流体押圧液は1〜300cStの範囲の粘度を有し、いくつかの好ましい実施態様では、範囲は10〜100cStで、そして他の好ましい実施態様では、範囲は20〜50cStである。非混和性流体押圧液を選択するための特性及び考慮点は、上記した非混和性流体洗浄液と同じである。
【0043】
本明細書に記載の精製法において、核酸物質は固相の上に吸着され、他の物質は水非混和性流体性洗浄液を用いて洗い流され、そして次に核酸物質は固相から溶出される。
【0044】
固相、一般的にはフィルターである固相は、容器中の1つの区画(コンパートメント)に加えられる溶液がフィルターを通過できるように構成された容器中に嵌入される。容器は円形、四角形、又は多面体の断面であってもよい。容器は、物質が管類(tubing)又は他の送達手段によってフィルターの入口側に直接送達される、独立型ユニット又は閉鎖若しくは部分的閉鎖システムの一部を含んでいてもよい。独立型実施態様の例は図1に示される。容器100は、第1の開口部130及び第2の開口部150、及び容器の断面にわたる多孔性支持体110を有して提供される。容器100中の第1のコンパートメント140は、容器壁、多孔性支持体110、及び第1の開口部130によって画成される空間に存在する。便宜上、第1のコンパートメント140の容量は、この方法で使用される予定の洗浄液及び溶出液の標準容量を収容するように構成することができる。それでもなお、核酸物質の連続的適用及び連続的洗浄もまた考えられる。コンパートメントは、使用されるであろう最大容量溶液を収容するような大きさである必要はない。いくつかの実施態様では、第1のコンパートメント140は、50μL〜1000μL又はそれ以上の溶液を収容することができ、少なくとも最大200μL、少なくとも最大400μL、少なくとも最大600μL、又は少なくとも最大800μLの溶液を収容し得る。インビトロ診断アッセイサンプルを処理するのに便利な第1のコンパートメント140の典型的な容量は、50μL〜1000μL又はそれ以上の範囲であってもよい。他の実施態様では、容器は洗浄液の連続フロー用に構成することができる。この場合、洗浄液量の容量は流量及び時間によって決定される。
【0045】
フィルター120は、第1のコンパートメント140内に備えられ、多孔性支持体110上にあり、その多孔性支持体110はフィルター120に対する機械的な支持体を備えそしてフィルター120の位置を決定する。フィルター120は本質的に容器の全断面にわたる。フィルター120のアクティブなフィルター面積は全断面積を占める必要はない。しかしながら、フィルター120の形状及び構造は、コンパートメント140に入れられた溶液が、第2の開口部150を介して容器100を出るためにフィルター120を通過せざるを得ないように、断面積を効果的に満たす必要がある。
【0046】
一般に、圧力勾配は、コンパートメント140に置かれた溶液を強制的にフィルター120を通過させるために使用される。陽圧は第1の開口部130を介してコンパートメント140にかけられればよい。他の実施態様では、陰圧はフィルター120を通して溶液を取り出すために第2の開口部150を介してかけられればよい。いくつかの実施態様では、装置は、容器の入口側では陽圧、出口側では陰圧の両方又はいずれかを適用すればよい。場合によっては、液体をフィルターに通過させる手順は、第1の開口部130を介して陽圧を、次いで陰圧を、そして次に陽圧をかけることを含んでいてもよく、ここで少なくとも液体のいくらかは、フィルターに移り、次いでフィルターを通って戻り、そして次にフィルターを通って移動する。
【0047】
フィルターを通して溶液を移動させるのに必要な圧力量は、フィルターの細孔径及び空隙容量、溶液の粘度、及びそれが通過している間におけるフィルター中の溶液の所望の滞留時間などの、多くの因子によって決まる。当業者はこれらの因子によって決まる圧力の有用な作動範囲を容易に決定することができる。いくつかの実施態様では、同じ作動圧力がすべての工程(例えば、吸着、洗浄、溶出)において使用される。いくつかの実施態様では、各溶液にかけられる圧力は各溶液の特性及び/又は目的に合わせられる。例えば、高い圧力差を、高粘度の溶液をフィルターを通過させるのに使用してもよい。そして、圧力差は溶液がフィルターと接触している間の時間を調整するのに使用することができる。例えば、吸着工程の時間は、核酸物質が固相に吸着するのに十分な時間を可能にするように調整してもよい。時間は一般に、細孔径、空隙容量、溶液粘度、核酸のサイズなどによって決まり、そして特殊なフィルターに対して容易に最適化することができる。プロセスのタイミング要件を考慮して、特にプロセスが自動化されるとき、得られる精製物質の収量に基づいて、圧力、そしてそれ故の各洗浄の時間は容易に最適化することができる。通常、最大で300kPaまでの範囲の圧力が本方法で使用される。いくつかの実施態様では、圧力差を積極的にかけることなく重力及び毛細作用の下で、溶液がフィルターを通過できるようにしてもよい。
【0048】
いくつかの実施態様では、核酸物質は溶液の一部であり、それは、例えば、細胞溶解物、組織溶解物、関連核酸物質を利用できるようにするために処理された臨床サンプル、又は他の反応液であってもよい。いくつかの実施態様では、その溶液は更に、当技術分野で周知のような、pH緩衝液、塩、変性剤、及び/又はカオトロープなどの、固相上への核酸物質の吸着を促進する作用剤(agent)を含有する。通常、溶液中の核酸物質の濃度は1〜10000コピー/1nLである。通常、溶液から精製される核酸物質の質量は1fg〜50μgである。
【0049】
フィルター上に核酸物質を吸着させるために、核酸物質を含有する溶液を第1のコンパートメント140に加え、次いで圧力勾配をかけることによってフィルターを通過させる。溶液容量及び第1のコンパートメント140の容量に応じて、プロセスはすべての核酸物質を処理するのに1回又はそれ以上の回数、反復する必要があり得る。サンプル液の流量は一般的に、核酸の吸着を最大化するために、核酸を十分な時間フィルター材料に接触させ、結合できるように最適化される。
【0050】
一度核酸物質を吸着させた後、フィルターを洗浄する。1つの実施態様では、フィルターは非混和性流体洗浄液で洗浄される。洗浄液を第1のコンパートメント140に置き、フィルターを通して洗浄液を押し進めるように圧力勾配をかける。フィルターは非混和性流体洗浄液で1回又はそれ以上の回数、洗浄してもよい。
【0051】
別の実施態様では、吸着に続いて、フィルターを先ずアルコールベースの洗浄液で洗浄し、そして次に非混和性流体洗浄液で洗浄する。アルコール洗浄工程を用いる全てのプロトコルは、アルコール洗浄工程に続く核酸を含むプロセスをアルコールが阻止又は妨害する場合、アルコールが最終溶出液中に確実に存在しないように、開発する必要がある。例えば、アルコールは逆転写酵素及びポリメラーゼの阻害剤であると認識されているので、アルコール洗浄と溶出の間の洗浄工程により、その系からアルコールが十分に除去されることが好ましいといえる。各洗浄タイプの容量は独立して変わる。いくつかの実施態様では、アルコール洗浄液及び非混和性流体洗浄液の所望容量に達するために、1つ又はそれ以上の分量(バッチ)を必要としてもよい。
【0052】
別の実施態様では、吸着に続いて、フィルターを、先ず非混和性流体洗浄液で、次いでアルコールベースの洗浄液で、そして次いで再び非混和性流体洗浄液で洗浄する。各洗浄タイプの容量は独立して変動する。いくつかの実施態様では、洗浄液の所望容量に達するために、1つ又はそれ以上の分量を必要としてもよい。
【0053】
1つ又は複数の洗浄工程が完了した後、核酸物質は溶出工程においてフィルターから溶出される。物質を溶出するために、溶出液を第1のコンパートメント140に加え、圧力勾配をかけ、そして溶出物質はそれが第2の開口部150を出るときに捕集される。いくつかの実施態様では、溶出液は、圧力勾配がかけられる前に、数秒、数十秒、又は1分、或いは、5分、10分又はそれ以上の時間フィルターとの接触が許容される。いくつかの実施態様では、使用される溶出液の容量は約20〜60μLである。より多い希釈核酸サンプルを受け入れる場合、より大きい容量を使用してもよい。いくつかの実施態様では、例えば実施例に記載のように、溶出液容量は約30〜50μLである。いくつかの実施態様では、溶出液が通過した後、非混和性流体押圧液を第1のコンパートメント140に加え、フィルターを通過させ、残存溶出液全てを押し出し、そして捕集する。残存溶出液を押すための非混和性流体押圧液の使用は、捕集された精製核酸量が最大化される実施態様において有用である。例えば、溶出液容量が50μLで、10μLの溶出液がそれに続く処理工程では十分である場合、非混和性流体押圧液は必要なく、しかし、より大きい容量、例えば25μLの溶出液が所望の場合、非混和性流体押圧液は有用であり得る。
【0054】
溶出工程の他の実施態様では、物質を溶出するために、大量の溶出液を第1のコンパートメント140に加え、次いで大量の非混和性流体を溶出液の上部に層状化し、次いで圧力勾配をかける。追加の非混和性流体押圧液は、水ベースの溶出液をフィルターを通して押し出し、フィルター中の残留溶出液の滞留を回避するのに役立つ。非混和性流体押圧液の容量は、溶出液の0.5〜2倍、好ましくは1〜1.5倍の容量である。
【0055】
DNA又はRNAを精製する方法の1つの実施態様において、DNA又はRNAを含有する溶液は、ガラスマイクロファイバーフィルターを通過させて、マイクロファイバー上にDNA又はRNAを吸着させ、フィルターを非混和性流体洗浄液(例えば、シリコーン油)で洗浄し、次いで溶出液(例えば、水)をフィルターに通過させ、DNA又はRNAを捕集管に溶出させる。場合により、非混和性流体押圧液は、上記の実施態様のいずれかに従って溶出工程で使用される。
【0056】
DNA精製法の1つの実施態様は、マイクロファイバー上にDNAを吸着させるためにDNAを含有する溶液をガラスマイクロファイバーフィルターに通過させること、フィルターをアルコールベースの洗浄液(例えば、10mMのトリス/100mM NaCl溶液中の50%エタノール)で洗浄すること、フィルターを非混和性流体洗浄液(例えば、シリコーン油)で洗浄すること、次いで溶出液(例えば、10mMトリス(pH9.0)溶液)で吸着DNAを捕集管中に溶出することを含む。場合により、非混和性流体押圧液は、上記の実施態様のいずれかに従って溶出工程で使用される。
【0057】
RNA精製法の1つの実施態様は、マイクロファイバー上にRNAを吸着させるためにRNAを含有する溶液をガラスマイクロファイバーフィルターに通過させること、フィルターを非混和性流体洗浄液(例えば、シリコーン油)で洗浄すること、フィルターをアルコールベースの洗浄液(例えば、10mMのトリス/100mM NaCl溶液中の50%エタノール)で洗浄すること、フィルターを非混和性流体洗浄液(例えば、シリコーン油)で洗浄すること、次いで溶出液(例えば、RNアーゼのない水)で吸着RNAを捕集管中に溶出することを含む。場合により、非混和性流体押圧液は、上記の実施態様のいずれかに従って溶出工程で使用される。
【0058】
種々の溶液は、使用者の便宜のために、キットとして、全部又は一部を、併せて供給してもよい。キットは、別々に瓶詰めされた試薬として下記溶液の1つ、いくつか又はすべてを含んでいてもよい;非混和性流体洗浄液、アルコールベースの洗浄液、溶出液、及び非混和性流体押圧液。好ましい実施態様では、キットは非混和性流体洗浄液及び溶出液を含む。別の好ましい実施態様では、キットは非混和性流体洗浄液、アルコールベースの洗浄液、及び溶出液を含む。別の好ましい実施態様では、キットは、非混和性流体洗浄液、アルコールベースの洗浄液、溶出液、及び非混和性流体押圧液を含む。いくつかの実施態様では、同じ試薬を非混和性流体洗浄液としても非混和性流体押圧液としても使用することができる。試薬は、容器の所与のシステム及びタイプに対して1〜25の精製操作を実施するのに十分な容量で供給されてもよい。より大きい容量も考えられ、大きい容量は、本方法を自動化装置で行うときに望ましいといえる。
【0059】
いくつかの実施態様では、試薬は、濃縮液として、例えば、使用前に希釈する10倍濃縮溶液として供給してもよい。いくつかの実施態様では、試薬は、例えば使用前に1又は複数の液体成分を加えることによって液体状体又は溶液に戻す(reconstitute)凍結乾燥粉末などの固体成分として供給してもよい。溶液を希釈し又は元に戻す液体成分はキットで供給してもよい。通常、希釈又は復元(reconstitution)のための液体は、上記のように、適用のために適切な純度を有する水である。
【0060】
キットは更に発明の方法に記載の試薬を使用するための指示文書を含んでいてもよい。
【0061】
上記の実施態様のいずれにおいても、キットは更にフィルターを嵌入した容器を含んでいてもよい。
【実施例】
【0062】
実施例1 フィルターデバイス
【0063】
フィルターデバイスは、ワットマンガラスマイクロファイバーフィルター、GF/Bグレード(Whatman, GE Healthcare Life Sciences, Piscataway, NJ)を、円筒状ポリプロピレンカートリッジ中の支持リブ付構造(supporting ribbed structure)の上部に嵌めることによって作製した。ワットマンフィルターは、カートリッジの内径(6.0mm)よりやや大きくなるようにカットし、そして支持構造に対して所定の位置に圧入した。
【0064】
実施例2 ヒト血漿からHIV RNAの精製
この実施例では、10種の非混和性流体を、ヒト血漿からRNAの精製のための非混和性流体洗浄液用として試験した。
【0065】
HIV陰性ヒト血漿を、1000HIV粒子/1mLを含有するヒト血漿サンプルを供給するために、HIV陽性ヒト血漿(Acrometrix OptiQual HIV-1 High Control)でスパイクした。220μLの1−チオグリセロール(10μL/mL)を21.8mLのK4リシス緩衝液(4Mグアニジニウムチオシアナート、770mM酢酸カリウム、0.78%(w/v)N−ラウリルサルコシン、0.05Mビストリス(pH6.4))に加えることによって、チオグリセロールK4リシス緩衝液を使用直前に調製した。
【0066】
サンプル(1.0mL)を5mLチューブに分取し、そこにチオグリセロール処理K4リシス緩衝液1.8mLを加え、溶液をボルテックスによって混合した。更に、担体RNA[10mg/mLのPolyA(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)の5μL]を加え、溶液をボルテックスによって混合した。サンプル溶液を56℃で10分間インキュベートした後,無水イソプロパノール(1.9mL)を加え、そして溶液をボルテックスによって混合した。
【0067】
得られた溶液のうち700μLを、実施例1で作製されたフィルターデバイスに移した。フィルター上方より液体に圧力(〜40kPa)をかけることによって、各溶液部分をフィルターに通過させ、全サンプルがフィルターを通過するまでこの方法を繰り返し、RNAをフィルターに吸着させた。
【0068】
次いで、各フィルターにおいて、300μLの洗浄液をフィルターの上部に加え、溶液上方に圧力をかけてフィルターに洗浄液を通すことによって、下表に示される非混和性流体洗浄液の1つで洗浄した。
【0069】
【表1】
【0070】
次いでフィルターをアルコールベースの洗浄液で洗浄した。水性エタノール溶液(70%エタノール、700μL)をフィルターの上部に加え、そして圧力をかけることによってフィルターを通過させ、そしてこの洗浄方法を1回以上繰り返した。
【0071】
フィルターを同じ量で同じ非混和性洗浄液を用いて再び洗浄した。非混和性洗浄液による第2の洗浄後、カートリッジを新しい0.5mL遠心管上に置いた。溶出液である水(50μL)をフィルターの上部に加え、30秒間フィルターと接触させ、次に水面上の空間を加圧することによってフィルターを通過させて吸着核酸を新しいチューブに溶出させた。
【0072】
2タイプの対照もまた比較目的で調製した。第1に、HIV陰性ヒト血漿を、HIVでスパイクすることなくサンプルとして処理した(標的なしの対照)。第2に、HIV陽性サンプルを、非混和性洗浄液での洗浄処理をすることなく処理した(非混和性洗浄なしの対照)。
【0073】
実施例3 RT−PCRによるHIVサンプルの解析
HIV RNAを検出するためのプライマーは、下記の配列を用いて合成し、ワンステップRT−PCR反応で使用した:
配列番号1(フォーワードプライマー)
5’−AGTTGGAGACATCAAGCAGCCATGCAAAT
配列番号2(リバースプライマー)
5’−TGATATGTCAGTTCCCCTTGGTTCTCT
フォーワードプライマーはHIV RNA標的に基づいたcDNAの形成をプライミングし、そしてフォーワード及びリバースプライマーはcDNA鎖に基づいたDNA産物を増幅させるプライマーペアとして動作する。予想されるDNA産物は155bpである。
【0074】
25μLサンプル当たり、1xSensiFAST(商標)SYBR No-ROX One-Step mix (Bioline USA, Taunton, MA)、0.6μMフォーワードプライマー、0.346μMリバースプライマー、10U/μL RNアーゼ阻害剤、及び0.25μL逆転写酵素溶液を含有する、プライマープレミックス液を調製した。RT−PCR反応液を、プライマープレミックス液(15μL)と実施例2で精製したサンプル(10μL)と結合させることによって調製した。各サンプルをRT−PCRで重複して(in duplicate)分析した。RT−PCR解析におけるHIVの理論量は200コピー/サンプルである。
【0075】
RT−PCR解析は下記条件でSmartCycler(登録商標)SC1000-1 (Sunnyvale, CA) で行った。
RT段階:45℃で900秒間、そして95℃で120秒間;
PCR段階:95℃で5秒間、61℃で5秒間、及び72℃で10秒間の40サイクル。
【0076】
融解曲線は、熱サイクルが完了後60℃〜95℃までの0.2℃/秒の温度傾斜中で測定した。
【0077】
各サンプルのRT−PCR産物を、2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を用いた電気泳動によって解析した。
【0078】
図2A−2Bは成長曲線を示し、そして図3A−3Bは、10個のサンプル(10の異なる非混和性洗浄液で洗浄することにより精製)及び2つの対照のRT−PCR増幅用のSmartCycler(登録商標)で測定した融解ピークグラフを示す。
【0079】
図で示すように、10個のサンプル(重複して分析)では、各々予想産物が産生されていた。各サンプルに対するサイクル閾値(Ct)はサンプル8個に対して約32(表2参照)であることが認められた。種々の洗浄に対する類似Ct値は、各非混和性洗浄液がPCR阻害物質を除去するのに同様に有効であったこと、そして全体として精製プロトコルは類似量の精製RNA標的を送達することができたことを示していた。2つのサンプル(ダイズ油及びオリーブ油)は高いCt値を示し、これらの流体はいくらかの阻害をもたらすことを示唆する。この程度の阻害が実質的であるかどうかは、適用の必要性及び目標によって決まる。「非混和性洗浄なし」の対照は陰性であり、増幅産物が認められなかったことから、核酸をフィルターに吸着させ、アルコール洗浄液で洗浄し、水で溶出するだけでは、PCR阻害物質が適切に除去されなかったことが示された。「標的なし」の対照は陰性であったことから、いかなる汚染も存在しなかったことが示された。
【0080】
【表2】
【0081】
図3A〜3Bで示される融解曲線では、10個のサンプルの約83〜84℃に一つのピークがあるのに対し、2つの対象ではピークは見られなかった。即ち、10個のサンプルは二本鎖増幅産物を含むが、2つの対象では増幅産物を含まないことが示された。
図4A−4Bは同じサンプル及び対照の電気泳動図を示す。約58秒におけるピークは155bp増幅産物に対応する。尚、約41秒と110秒におけるピークは分子サイズマーカーである。いずれの結果も類似していることから、RT−PCR反応により、他の非特異増幅反応が起こることなく予想された増幅産物を再現可能に産生できることが分かった。
【0082】
実施例4 ヒト血漿由来のHBV DNAの精製
本実施例では、DNAサンプル調製のための市販キット及びQuickGeneDNA全血キットS(Fujifilm Corp.)の試薬と併せて、4つの異なる容量の非混和性流体洗浄液を、ヒト血漿由来のDNAを精製するために用い、これらを比較した。
【0083】
HBV陰性ヒト血漿をHBV陽性ヒト血漿 (Acrometrix OptiQual HBV High Positive Control) でスパイクし、28150HBV粒子/1mLを含有するヒト血漿サンプルを用意した。
【0084】
QuickGeneDB−Sプロテアーゼ溶液(EDB)(150μL)を5mLのコニカルチューブの底に置き、そして次にスパイクHBVサンプル(1.0mL)をチューブに分取した。QuickGeneDB−Sリシス緩衝液(LDB)(1.25mL)を各チューブに加え、そして混合物を直ちにピペットによって混合し、ボルテックスで混合し、そして56℃で2分間インキュベートした。無水エタノール(1.25mL)を加えて、そして溶液をボルテックスによって混合した。
【0085】
得られた溶液のうち600μLを、実施例1で調製したフィルターデバイスに移した。フィルター上方より液体に圧力(〜40kPa)をかけることによって、各溶液部分をフィルターに通過させ、全サンプルがフィルターを通過するまでこのステップを繰り返し、DNAをフィルターに吸着させた。
【0086】
次いで、DNAを吸着した各フィルターを、QuickGeneDB−Sアルコールベースの洗浄緩衝液(WDB)(750μL)で3回洗浄した。次に、各フィルターにおいて、50μL洗浄液、100μL洗浄液、300μL洗浄液、又は750μL洗浄液のいずれかをフィルター上部に加え、溶液上方に圧力をかけて溶液をフィルターに通過させることによって、非混和性流体洗浄液であるシリコーン流体(5cSt)で1回洗浄した。
【0087】
この非混和性流体洗浄液による洗浄後、カートリッジをきれいな0.5mL遠心分離管上に置いた。QuickGeneDB−S溶出緩衝液(50μL)をフィルターの上部に加え、30秒間フィルターと接触させるようにし、次に溶液上の空間を加圧することによってフィルターを通して吸着核酸をクリーンチューブに溶出した。
【0088】
2タイプの対照も比較目的で調製した。第1に、HBV陰性ヒト血漿を、HBVでスパイクすることなくサンプルとして処理した(標的なしの対照)。第2に、HBV陽性サンプルを処理してフィルターに吸着させたが、フィルターは非混和性流体洗浄液で洗浄しなかった(非混和性流体洗浄なしの対照)。
【0089】
実施例5 RT−PCRによるHBVサンプルの分析
HBV DNAを検出するためのプライマーは下記の配列で合成し、そしてPCR反応で使用した:
配列番号3(フォーワードプライマー)
5’−GACCACCAAATGCCCCTAT
配列番号4(リバースプライマー)
5’−TGAGATCTTCTGCGACG。
フォーワード及びリバースプライマーはHBV DNA標的の132bp配列を増幅させるためにプライマーペアとして動作する。
【0090】
25μLサンプル当たり1xSensiFAST(商標)SYBR No-ROX Kit (Bioline USA, Taunton, MA)、0.4μMのフォーワードプライマー、及び0.4μMのリバースプライマーを含有する、プライマープレミックス液を調製した。PCR反応液は、プライマープレミックス液(15μL)と実施例4で精製したサンプル(10μL)とを結合させることによって調製した。各サンプルをPCRで重複して分析した。PCR解析におけるHBVの理論量は5630コピー/サンプルである。
【0091】
PCR解析は次の条件でSmartCycler(登録商標)SC1000-1 (Cepheid, Sunnyvale, CA)で行った:
初期変性:95℃で120秒間;
PCR段階:95℃で5秒間、57℃で10秒間、及び72℃で15秒間の40サイクル。
【0092】
融解曲線は、熱サイクルが完了後60℃から98℃までの0.2℃/秒の温度傾斜中で測定した。
【0093】
各サンプルのPCR産物を、2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を用いた電気泳動によって測定した。
【0094】
図5は成長曲線を示し、そして図6は、4つのサンプル(4つの異なる容量の非混和性流体洗浄液で洗浄することにより精製)及び2つの対照のPCR増幅用のSmartCycler(登録商標)で測定した融解ピークグラフを示す。
【0095】
図に示すように、4つのサンプル(重複して分析)では各々予想産物が産生されていた。各サンプルに対するサイクル閾値(Ct)は4つのサンプルに対して約26(表2参照)であることが認められた。種々の洗浄に対して類似のCt値であったことより、各非混和性洗浄液がPCR阻害物質を除去するのに同様に有効であったこと、そして全体として精製プロトコルは類似量の精製DNA標的を送達できたことが分かった。増幅産物の融解温度は非混和性流体洗浄の容量増加に従って若干の増加を示していた。
【0096】
吸着DNAサンプルを非混和性流体洗浄液で洗浄しない場合、増幅産物は得られなかった。「非混和性洗浄なし」の対照は陰性であったことから、核酸をフィルターに吸着させ、市販洗浄液で洗浄し、次いで溶出緩衝液で溶出するという標準プロトコルでは、PCR阻害物質は適切に除去されなかったことが分かる。「標的なし」の対照の1つは、少量の非特異増幅産物を示したが、その他の点では陰性対照は陰性であった。
【0097】
【表3】
【0098】
図7は同じサンプル及び対照の電気泳動図を示す。約58秒におけるピークは132bp増幅産物に対応する。結果が類似していることから、PCR反応が、精製サンプル中に非特異増幅反応が全く無しに予想増幅産物を再現可能に産生したことが確認された。
【0099】
実施例6 ゲノムDNAの捕集効率
(1)ウシ型結核菌BCGのgDNAの抽出
2%小川培地(S)(Kyokuto Pharmaceutical Industries)で28日間インキュベートしたウシ型結核菌BCG(Japanese Society for Bacteriology)のコロニーを捕集し、滅菌水に懸濁し、そして加熱滅菌した(121℃で20分)。次に、DNAをQiagen社のDNAゲノムチップ抽出精製キットを用いて精製した。コピー数を、得られた精製gDNAの光学吸光度を測定することによって決定した。
【0100】
(2)核酸精製カートリッジによる核酸精製法。
ウシ型結核菌BCGのgDNA(3×10のコピー数)及び1.7M塩酸グアニジン(和光純薬工業株式会社)を含有する40%イソプロピルアルコール水溶液の900μL中に2μgのサケ精子DNA(SIGMA)を含有するサンプルを調製した。サンプルを実施例1に従って調製したフィルターデバイスに移し、そしてフィルター(6kPa)に通してDNAをフィルター上に吸着させた。
【0101】
50mMトリス−HCl(pH8.0)(和光純薬工業株式会社)、150mM塩化ナトリウム(和光)及び1%Tween80(和光)を含有する50%エタノール水溶液からなる700μLの第1の洗浄液をフィルターに通すことによって、フィルターを先ず洗浄した。
【0102】
次いで、50mMトリス−HCl(pH8.0)(和光純薬工業株式会社)及び150mM塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社)を含有する50%エタノール水溶液からなる700μLの第2の洗浄液で、フィルターを洗浄した。次に、シリコーン油(粘度:5cs)(信越化学工業)からなる300μLの第1の非混和性流体洗浄液を、洗浄液上方に圧力(25〜100kPa)をかけることによって、フィルターに通過させた。
【0103】
DNAを溶出するために、先ず10mMトリス−HCl(pH8.0)(和光純薬工業株式会社)溶出液 30μLをカートリッジに加え、1〜5分間ガラスマイクロファイバーフィルターと接触できるようにし、次いでシリコーン油(粘度:5cs)(信越化学工業)からなる非混和性流体押圧液30μLを溶出緩衝液の上部に加えた。溶液上方から圧力(25〜100kPa)をかけることによって、溶出液及び非混和性流体押圧液をフィルターに通過させた。
【0104】
(3)溶出サンプルの容量収量
この実施例のセクション(2)に記載のカートリッジ精製法は8サンプル行い、そして溶出によって捕集したサンプルの容量を測定した。セクション(2)の精製法から非混和性流体押圧液を省略した方法も比較として行った。結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
表4に示すように、非混和性流体押圧液をプロトコルから除外すると、捕集溶出液の容量は少なく、また、変動する(5から10μLまで)。データに示されるように、比較方法におけるように水ベースの溶出液だけを使用すると、下記のセクション(4)に記載の定量的測定法を実施するために必要となる溶出液の最低量の12.5μLは得られなかった。非混和性流体洗浄液の使用は少なくとも3つの利点をもたらす。捕集容量はそれに続く解析工程の容量の要件を満たし、溶出容量はより一貫性があるため、自動化及びデータ解析に役立つものであり、そして初期サンプル中の核酸の量は、溶出容量がより定量的に近いことから、より正確に定量することができる。
【0107】
(4)リアルタイムPCRによる溶出サンプルの定量分析
この実施例のセクション(1)及び(2)のプロトコルに従って、3×10のコピー数のウシ型結核菌BCGgDNAを含有する4つのサンプル(900μL)を調製そして精製し、そして溶出液中のDNA量をSmartCycler(登録商標)II(Cepheid)を用いてリアルタイムPCRによって測定した。
【0108】
ウシ型結核菌中の挿入配列IS6110を検出するためのプライマーは下記の配列で合成した:
配列番号5(フォーワードプライマー)
5’−TGGGTAGCAGACCTCACCTAT
配列番号6(リバースプライマー)
5’−AACGTCTTTCAGGTCGAGTACG
配列番号7(プローブ)
5’FAM−TGGCCATCGTGGAAGCGACCCGC−TAMRA
FAMは蛍光色素フルオレセインであり、そしてTAMRAは蛍光色素テトラメチルローダミンである。フォーワード及びリバースプライマーは、IS6110標的の192bp配列を増幅するためのプライマーペアとして作用する。
【0109】
PCR反応液を、(最終濃度):1xTaq緩衝液(TaKaRa)、3mM MgCl(TaKaRa)、400mM dNTP(TaKaRa)、1単位のTaKaRa Ex HSポリメラーゼ、500nMフォーワードプライマー、500nMリバースプライマー、及び280nMのプローブオリゴで調製した。
【0110】
PCR解析を、下記条件でSmartCycler(登録商標)II(Cepheid, Sunnyvale, CA)で行った。
初期変性:97℃で60秒間;
PCR段階:97℃で6秒間、61℃で6秒間、及び72℃で6秒間の40サイクル。
【0111】
プローブオリゴから放出された色素により生成したフルオレセインを、4つのサンプルの各々で測定した。SmartCycler(登録商標)IIで決定されたCt値を表5に示した。精製プロトコルにおいて溶出液中で得られたgDNAの収量は、対照サンプルに対して定量結果を較正することによって決定した。対照サンプルは、同じ濃度のgDNA(3×10のコピー数/900μL)で調製しているが、セクション(3)の精製プロトコルを行っていないものである。複製の対照サンプルのCt値は28.44及び28.92であった。平均Ct=28.68は、100%収量を表すことになる。DNAの計算収量によって示されるように、本質的にすべてのgDNAは、精製プロセスにおいて吸着され、次いで放出された。
【0112】
【表5】
【0113】
本発明は特定の実施態様及び適用に関して記載されているが、当業者は本明細書に記載の発明の適用及び方法の範囲を十分理解しよう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7