特許第6562393号(P6562393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6562393ブレーキパッド用摩擦材の金型、製造装置、製造方法および予備成形物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562393
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ブレーキパッド用摩擦材の金型、製造装置、製造方法および予備成形物
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/02 20060101AFI20190808BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20190808BHJP
   F16D 69/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B30B11/02 F
   F16D65/092 C
   F16D69/00 R
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-127494(P2013-127494)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-429(P2015-429A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年3月8日
【審判番号】不服2017-16423(P2017-16423/J1)
【審判請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 博志
(72)【発明者】
【氏名】北見 琢也
(72)【発明者】
【氏名】宮道 素行
(72)【発明者】
【氏名】柳 道則
【合議体】
【審判長】 平岩 正一
【審判官】 西村 泰英
【審判官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−42944(JP,U)
【文献】 特開2004−347095(JP,A)
【文献】 特許第5442120(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0085604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/02
F16D 65/092
F16D 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料が投入される型枠に嵌る金型部材と、
前記金型部材の表面のうち前記型枠に投入される前記粉体材料に当接する領域を形成する押圧面であって、前記押圧面の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の押圧面と、を備え、
前記押圧面は、前記両端部に平坦な部分を有する、
ブレーキパッド用摩擦材の金型。
【請求項2】
前記押圧面は、ブレーキロータの内周側に対応する部分からブレーキロータの外周側に対応する部分へ向かって傾斜している、
請求項1に記載のブレーキパッド用摩擦材の金型。
【請求項3】
前記押圧面に対向する他の押圧面であり、前記金型によって成形された摩擦材がプレッシャプレートに接触することになる領域を形成する平らな他の押圧面を更に備える、
請求項1または2に記載のブレーキパッド用摩擦材の金型。
【請求項4】
ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料が投入される型枠と、
前記型枠に嵌る金型部材と、
前記金型部材の表面のうち前記型枠に投入される前記粉体材料に当接する領域を形成する押圧面であって、前記押圧面の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の押圧面と、
前記金型部材を押圧し、前記型枠に投入される前記粉体材料を前記押圧面で加圧成形する押圧手段と、を備え、
前記押圧面は、前記両端部に平坦な部分を有する、
ブレーキパッド用摩擦材の製造装置。
【請求項5】
前記押圧面に対向する他の押圧面であり、前記金型によって成形された摩擦材がプレッシャプレートに接触することになる領域を形成する平らな他の押圧面を更に備える、
請求項に記載のブレーキパッド用摩擦材の製造装置。
【請求項6】
金型部材が嵌る型枠にブレーキパッド用摩擦材の粉体材料を投入し、
前記金型部材を押圧し、前記金型部材の表面のうち前記型枠に投入される前記粉体材料に当接する領域を形成する押圧面であって前記押圧面の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪み且つ前記両端部に平坦な部分を有する凹状の押圧面で、前記型枠に投入される前記粉体材料を加圧成形する、
ブレーキパッド用摩擦材の製造方法。
【請求項7】
前記加圧成形の際は、前記押圧面と共に、前記押圧面に対向する他の押圧面であり、前記金型によって成形された摩擦材がプレッシャプレートに接触することになる領域を形成する平らな他の押圧面で前記粉体材料を加圧成形する、
請求項に記載のブレーキパッド用摩擦材の製造方法。
【請求項8】
ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料を加圧成形した予備成形物と、
前記予備成形物の表面のうちブレーキロータに接触する摩擦面を形成することになる摩擦面形成領域であって、前記摩擦面形成領域の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に膨らむ凸状の摩擦面形成領域と、を備え、
前記摩擦面形成領域は、前記両端部に平坦な部分を有する、
ブレーキパッド用摩擦材の予備成形物。
【請求項9】
プレッシャプレートに接触する面を形成することになる平らな領域を更に備える、
請求項に記載のブレーキパッド用摩擦材の予備成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキパッド用摩擦材の金型、製造装置、製造方法、予備成形物およびブレーキパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキパッドには、制動時の鳴きを防止することを目的とした面取り部分(チャンファー部という場合もある)が両端部に設けられる(例えば、特許文献1を参照)。ブレーキパッドの摩擦材は、通常、硬度や密度等の物性が概ね均一となるような設計上の配慮がなされている(例えば、特許文献2−4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−132991号公報
【特許文献2】特開2006−83978号公報
【特許文献3】特開2011−127710号公報
【特許文献4】特開2011−158006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキパッドの制動時の鳴きは、両端部における摩擦材の硬度や密度が中心部よりも高いと発生しやすくなる傾向にある。しかし、粉体材料を金型に入れて圧縮成形する場合、金型に投入された粉体材料のうち金型に接触する部分の粉体材料が圧縮力や熱を比較的受けやすいため、両端部における摩擦材の硬度や密度が中心部よりも比較的高くなりやすい。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ブレーキパッドの両端部の摩擦材の物性を適切化するブレーキパッド用摩擦材の金型、製造装置、製造方法、予備成形物およびブレーキパッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料を押圧成形する金型の押圧面を、押圧面の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の面にした。
【0007】
詳細には、ブレーキパッド用摩擦材の金型であって、ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料が投入される型枠に嵌る金型部材と、前記金型部材の表面のうち前記型枠に投入される前記粉体材料に当接する領域を形成する押圧面であって、前記押圧面の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の押圧面と、を備える。
【0008】
ブレーキパッドの摩擦材は、通常、摩擦材の粉体材料を予備成形した後、押圧面に押圧されながら加熱加圧成形される。予備成形後の粉体材料は概ね固められた状態となっているため、流動性は失われている。一方、押圧成形前の粉体材料は、金型の押圧面の形状に合わせて流動できる。
【0009】
そこで、上記金型は、粉体材料を押圧して成形する金型であり、粉体材料が投入される型枠に嵌る金型部材を備えている。また、金型部材の表面のうち型枠に投入される粉体材
料に当接する領域には、粉体材料を押圧する押圧面を備えている。押圧面は、両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の面を形成しているため、流動性が失われる前の粉体材料が投入される型枠に金型部材が嵌り、押圧面が粉体材料を押圧すると、型枠内の粉体材料が押圧面の形状に合わせて流動することになる。その結果、上記金型は、粉体材料を押圧面の両端部側から中心部側へ寄せ集め、予備成形物のうち摩擦面を形成することになる面を、両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に膨らむ凸状に形成する。
【0010】
上記金型によって成形された予備成形物は、摩擦面を形成することになる面が両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に膨らむ凸状に形成されており、且つ予備成形後の粉体材料は概ね固められた状態となっていて流動性が既に失われているため、平らな摩擦面を形成する金型にて加圧成形を行うと、少なくとも両端部の硬度や密度が中心部より高くなりにくい。よって、上記金型によって成形した予備成形物から製造したブレーキパッドであれば、ブレーキパッドの両端部の摩擦材の物性を適切化できる。
【0011】
なお、前記押圧面は、ブレーキロータの内周側に対応する部分からブレーキロータの外周側に対応する部分へ向かって傾斜していてもよい。ブレーキロータの外周側の部分は内周側の部分に比べて車軸からの距離が遠くなるため、ブレーキロータの外周側の部分の周速は、ブレーキロータの内周側の部分の周速に比べて速い。しかし、押圧面が、ブレーキロータの内周側に対応する部分からブレーキロータの外周側に対応する部分へ向かって傾くように傾斜していれば、上記金型は、予備成形物のうち摩擦面を形成することになる面を、ブレーキロータの内周側に対応する部分から外周側に対応する部分へ向かうに従って徐々に膨らむように形成することになる。このように形成された予備成形物を、平らな摩擦面を形成する金型にて加圧成形すると、少なくとも外周側の密度や硬度が内周側よりも低くなりにくい。よって、回転するブレーキロータの周速に応じて物性が適切化できる。
【0012】
また、前記押圧面は、前記両端部に平坦な部分を有するものであってもよい。押圧面の両端部に平坦な部分があれば、鳴き等の防止を目的とする摩擦材の面取り部分の物性が概ね均一となるため、面取り部分が強度的に安定する。
【0013】
また、本発明は、製造装置としての側面から捉えることも可能である。例えば、本発明は、ブレーキパッド用摩擦材の製造装置であって、ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料が投入される型枠と、前記型枠に嵌る金型部材と、前記金型部材の表面のうち前記型枠に投入される前記粉体材料に当接する領域を形成する押圧面であって、前記押圧面の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の押圧面と、前記金型部材を押圧し、前記型枠に投入される前記粉体材料を前記押圧面で加圧成形する押圧手段と、を備えるものであってもよい。
【0014】
また、本発明は、製造方法としての側面から捉えることも可能である。例えば、本発明は、ブレーキパッド用摩擦材の製造方法であって、金型部材が嵌る型枠にブレーキパッド用摩擦材の粉体材料を投入し、前記金型部材を押圧し、前記金型部材の表面のうち前記型枠に投入される前記粉体材料に当接する領域を形成する押圧面であって前記押圧面の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の押圧面で、前記型枠に投入される前記粉体材料を加圧成形するものであってもよい。
【0015】
また、本発明は、中間生成物としての側面から捉えることも可能である。例えば、本発明は、ブレーキパッド用摩擦材の予備成形物であって、ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料を加圧成形した予備成形物と、前記予備成形物の表面のうちブレーキロータに接触する摩擦面を形成することになる摩擦面形成領域であって、前記摩擦面形成領域の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に膨らむ凸状の摩擦面形成領域と、を備えるものであってもよい。
【0016】
また、本発明は、最終製品としての側面から捉えることも可能である。例えば、本発明は、ブレーキパッドであって、ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料を熱成形した熱成形物と、前記熱成形物の表面の一部を形成し、ブレーキロータに接触する摩擦面と、を備え、前記熱成形物は、少なくとも両端部の硬度または密度が中心部よりも高くない。
【発明の効果】
【0017】
上記ブレーキパッド用摩擦材の金型、製造装置、製造方法、予備成形物およびブレーキパッドであれば、ブレーキパッドの両端部の摩擦材の物性を適切化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】実施形態に係るブレーキパッド用摩擦材の金型を示した図の第1例である。
図1B】実施形態に係るブレーキパッド用摩擦材の金型を示した図の第2例である。
図2A】金型の押圧面の形状をポリゴン表示した図の第1例である。
図2B】金型の押圧面の形状をポリゴン表示した図の第2例である。
図3】金型を使ったブレーキパッド用摩擦材の製造方法を示した図の一例である。
図4A】ブレーキパッドの製造方法を示した図の第1例である。
図4B】ブレーキパッドの製造方法を示した図の第2例である。
図5】ブレーキパッドの摩擦面上を摺動するブレーキロータの周速を矢印で表した図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様を例示したものであり、本願発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0020】
図1Aは、実施形態に係るブレーキパッド用摩擦材の金型を示した図の第1例である。金型1は、ディスクブレーキに適用されるブレーキパッドの摩擦材を予備成形するための金型であり、金型部材2と押圧面3とを備える。金型部材2は、ブレーキパッド用摩擦材の粉体材料が投入される型枠に嵌る。押圧面3は、金型部材2の表面のうち型枠に投入される粉体材料に当接する領域を形成する面である。押圧面3は、図1AのA−A断面図が示すように、押圧面3が凹状に窪んでいる。押圧面3の片側半分は、A−A断面に対して直交する仮想直線を軸とする円弧に沿って窪んでいる。そして、押圧面3は、左右対称に形成されている。よって、押圧面3は、押圧面3の端部T側から中心部C側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の曲面を形成するが、ブレーキロータの内周側に対応する部分Nからブレーキロータの外周側に対応する部分Gへ向かっては傾斜しない。なお、押圧面3は、両端部に平坦な部分を有している。
【0021】
ところで、図1Aでは、押圧面3の中心線の延長線と直交する第2の仮想直線を軸とする円弧に沿って窪む態様を採っているが、本実施形態に係る金型1は、そのような態様に限定されるものではない。図1Bは、実施形態に係るブレーキパッド用摩擦材の金型を示した図の第2例である。本実施形態に係る金型1は、例えば、図1Bに示すように、A−A断面が押圧面3の中心線に対してΘ度だけ傾けられており、そのような角度に傾いたA−A断面に対して直交する第1の仮想直線の延長線と直交する第2の仮想直線を軸とする円弧に沿って窪む態様を採ってもよい。また、本実施形態に係る金型1は、押圧面3の中心線に対してΘ度未満に傾いた第1の仮想直線の延長線と直交する第2の仮想直線を軸とする円弧に沿って窪む態様を採ってもよいし、押圧面3の中心線に対してΘ度よりも大きく傾いた第1の仮想直線の延長線と直交する第2の仮想直線を軸とする円弧に沿って窪む
態様を採ってもよい。押圧面3の中心線に対する第1の仮想直線の傾きを大きくすると、ブレーキロータの外周側に対応する部分の硬度や密度が内周側よりも更に低くなりにくい。
【0022】
図2Aは、金型1の押圧面3の形状をポリゴン表示した図の第1例である。押圧面3は、押圧面3の端部T側から中心部C側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の曲面を形成している。すなわち、押圧面3は、長手方向における2つの端部T側から中心部C側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の曲面を形成するが、ブレーキロータの内周側に対応する部分Nからブレーキロータの外周側に対応する部分Gへ向かっては傾斜しない。そして、押圧面3は、両端部に平坦な部分を有している。
【0023】
なお、A−A断面が押圧面3の中心線に対してΘ度だけ傾けられており、そのような角度に傾いたA−A断面に対して直交する第1の仮想直線の延長線と直交する第2の仮想直線を軸とする円弧に沿って窪む態様を採った場合、金型1の押圧面3は次のようになる。図2Bは、金型1の押圧面3の形状をポリゴン表示した図の第2例である。押圧面3の中心線の延長線と直交する第2の仮想直線を軸とする円弧に沿って窪む態様を採った場合、金型1の押圧面3は、押圧面3の端部T側から中心部C側へ向かうにつれて徐々に窪み、更に、ブレーキロータの内周側に対応する部分Nからブレーキロータの外周側に対応する部分Gへ向かって傾斜する。なお、押圧面3は、図2Aに示した金型1と同様、両端部に平坦な部分を有している。
【0024】
本実施形態に係る金型1は、押圧面3がこのように形成されているため、この金型1を使って予備成形した予備成形物は次のような形態を呈する。
【0025】
図3は、金型1を使ったブレーキパッド用摩擦材の製造方法を示した図の一例である。上記金型1を使って予備成形を行う場合、金型1が嵌る型枠4内に粉体材料5を投入する(図3(A))。次に、型枠4内に投入された粉体材料5を上型6(金型1)と下型7とで挟むように図示しないプレス機(本願でいう「押圧手段」の一例である)で押圧する(図3(B))。これにより、型枠4内には、粉体材料5を加圧成形した予備成形物8が残留する(図3(C))。なお、実施形態に係る金型1は、図3に示したように、上型6として用いる態様に限定されるものでなく、下型7として適用することも可能である。実施形態に係る金型1を下型7として適用する場合、予備成形物8をプレッシャプレートと共に熱成形し、プレッシャプレートに圧着させるべく、上型6は、図3に示す下型7のように、粉体材料5を押圧する面を平坦にすることが好ましい。
【0026】
金型1の押圧面3は、両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の曲面を形成しているため、流動性が失われる前の粉体材料が型枠4に投入され、押圧面3が粉体材料を押圧すると、型枠4内の粉体材料が押圧面3の形状に合わせて流動することになる。その結果、金型1は、予備成形物8のうち摩擦面を形成することになる面を、両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に膨らむ凸状に形成することになる。また、鳴き等の防止を目的として摩擦材の面取り部分が設けられることになる両端部については、平坦に形成されることになる。
【0027】
すなわち、実施形態に係る金型1の押圧面3が、押圧面3の端部T側から中心部C側へ向かうにつれて徐々に窪む凹状の曲面を形成しており、更に、部分N側から部分G側へ向かって傾斜しているため、予備成形物8は、粉体材料5を加圧成形した予備成形物8と、予備成形物8の表面のうちブレーキロータに接触する摩擦面を形成することになる摩擦面形成領域9であって、摩擦面形成領域9の両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に膨らむ凸状の摩擦面形成領域9と、を備えることになる。この予備成形物8をプレッシャプレートと共に加圧しながら熱成形し、通常の工程である加熱、研摩、表面焼き、及び塗
装等を経て、以下のようなブレーキパッドが出来る。
【0028】
図4Aは、ブレーキパッドの製造方法を示した図の第1例である。上記予備成形物8を使って予備成形を行う場合、予備成形物8を嵌めた型枠10にプレッシャプレート13を載せる(図4A(A))。次に、型枠10内に嵌められた予備成形物8を下型11がプレッシャプレート13に押し付けるようにプレス機で押圧する(図4A(B))。型枠10や下型11は、ヒータで加熱されているものとする。また、予備成形物8を押圧する下型11の押圧面12は、平坦である。型枠10内に嵌められた予備成形物8を下型11でプレッシャプレート13に押し付けるようにプレス機で押圧すると、熱成形された摩擦材15がプレッシャプレート13に圧着され、ブレーキパッド14が出来上がる(図4A(C))。上記予備成形物8から熱成形した摩擦材15は、次のような物性を呈する。
【0029】
摩擦材15は、両端部側から中心部側へ向かうにつれて徐々に膨らむ凸状の摩擦面形成領域9を有する予備成形物8から熱成形したものである。そして、摩擦材15を構成する粉体材料は、予備成形によって概ね固められた状態となっており、流動性が失われている。このため、予備成形物8から熱成形した摩擦材15は、少なくとも両端部の硬度や密度が中心部より高くなりにくい。また、摩擦材15は、両端部が平坦な予備成形物8を熱成形したものであるため、鳴き等の防止を目的として面取り部分が形成されることになる両端部については、硬度や密度が概ね均一な物性を呈することになり、面取り加工が施された場合であっても面取り部分が強度的に安定する。
【0030】
なお、図2Bに示した金型1を用いた場合、予備成形物8の摩擦面形成領域9は、ブレーキロータの外周側に対応する部分G側からブレーキロータの内周側に対応する部分N側へ向かって傾斜することになる。換言すると、予備成形物8は、中心部付近およびブレーキロータの外周側に対応する部分が厚く、両端部付近およびブレーキロータの内周側に対応する部分が薄くなる。この予備成形物8から熱成形した摩擦材15は、次のような物性を呈する。
【0031】
すなわち、図2Bに示した金型1を用いた場合、摩擦材15は、ブレーキロータの内周側に対応する部分N側からブレーキロータの外周側に対応する部分G側へ向かうにつれて徐々に盛り上がっている予備成形物8から熱成形したものとなるため、このような予備成形物8から熱成形した摩擦材15は、少なくとも外周側の密度や硬度が内周側よりも低くなりにくい。
【0032】
ところで、摩擦材15の面取り部分は、熱成形、加熱等の熱処理後に研削加工を施して形成してもよいが、例えば、下型11の押圧面12の両端部を盛り上げて斜めの傾斜を設けておいてもよい。図4Bは、ブレーキパッドの製造方法を示した図の第2例である。下型11の押圧面12の両端部を盛り上げて斜めの傾斜を設けておけば、図4Bに示すように、熱成形と同時に摩擦材15の両端部に面取り加工を施すことができる。
【0033】
図5は、ブレーキパッドの摩擦面上を摺動するブレーキロータの周速を矢印で表した図の一例である。ブレーキパッドの摩擦面上を摺動するブレーキロータの周速は、摩擦面内で一様ではない。例えば、ディスクブレーキのブレーキロータは、外周側の周速が内周側の周速よりも速い。このため、摩擦材の摩耗は、ブレーキロータの外周側に対応する部分の方が内周側に対応する部分よりも進行しやすい。しかし、図2Bに示す金型1で作った予備成形物8から熱成形した摩擦材15であれば、両端部の硬度や密度が中心部より高くなりにくく、また、少なくとも外周側の密度や硬度が内周側よりも低くなりにくいため、摩擦材の摩耗等がより一様に進行することになり、回転するブレーキロータの周速に応じて適切化した摩擦材の物性が実現することになる。
【符号の説明】
【0034】
1・・金型:2・・金型部材:3・・押圧面:4・・型枠:5・・粉体材料:6・・上型:7・・下型:8・・予備成形物:9・・摩擦面形成領域:10・・型枠:11・・下型:12・・押圧面:13・・プレッシャプレート:14・・ブレーキパッド:15・・摩擦材
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5