【実施例】
【0019】
次に、本発明の詳細を実施例に基づいて説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、本発明において、各成分の測定法は以下の通りである。
【0020】
(アデニル酸の測定法)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、5‘−アデニル酸二ナトリウム七水和物を標準に用いて、試料中のアデニル酸含量を測定する。本発明におけるアデニル酸含量は、5’−アデニル酸2ナトリウム7水和物換算の値である。
HPLCの条件
・分離カラム: MICGEL CDR-10(60℃、4.6mm×250mm、三菱化学製)
・移動相: 2M 酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.3)
・流速: 2mL/min
・検出: 紫外線検出器(210nm)
【0021】
(ポリアミンの測定法)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、スペルミン、スペルミジン、プトレッシンの各遊離型ポリアミンを標準に用いて、その合計量として、試料中のポリアミンを測定する。
HPLCの条件
・分離カラム: CAPCELL-PAK C18 UG-120(35℃、4.6×100mm、資生堂製)
・移動相: A:メタノール及び水の混液(6:4)、B:メタノール及び水の混液(8:2)
・流速: 1.7mL/min
・グラジエント:0→8分 100%A液、8→20分 100→0% A液、20→35分 0% A液。
・検出: 蛍光励起波長365nm、蛍光測定波長510nm
【0022】
(遊離アミノ酸の測定法)
試料中の遊離アミノ酸の含量は、アミノ酸分析計(日立高速アミノ酸分析計L-8900)を用いて測定した。
但し、茶葉中のアミノ酸の定量分析のみ、後藤らの方法(茶業研究報告 1993年77巻29頁)に準じ、HPLCを用いて行った。
【0023】
1.本発明の葉面散布剤の調製
(葉面散布剤R1)
酵母エキスNT(興人ライフサイエンス社製、アデニル酸10.0%、ポリアミン0.32%、遊離アミノ酸10%を含む)を水で溶解し、葉面散布剤とした。葉面散布剤R1は、酵母エキスNTの濃度が0.01g/Lである水溶液。R1中のアデニル酸0.001g/L、ポリアミン0.032mg/L。
(葉面散布剤R2)
酵母エキスNTが0.1g/Lである水溶液(R2中のアデニル酸0.01g/L、ポリアミン0.32mg/L)。
(葉面散布剤R3)
酵母エキスNTが1g/Lである水溶液(R3中のアデニル酸0.1g/L、ポリアミン3.2mg/L)。
(葉面散布剤R4)
酵母エキスNTが0.3g/Lである水溶液(R4中のアデニル酸0.03g/L、ポリアミン1.0mg/L)。
(葉面散布剤R5)
酵母エキスNTが0.1g/L、展着剤であるキサンタンガム(CPケルコ社)が0.02g/Lとなるように溶解した水溶液(R5中のアデニル酸0.01g/L、ポリアミン0.32mg/L)。
【0024】
2.比較例として用いる葉面散布剤の調製
(葉面散布剤C1) 水
(葉面散布剤C2)
RNA(キリンビール社)を0.1g/Lとなるように水に溶解したもの。
(葉面散布剤C3)
酵母エキスP1G(アサヒフード&ヘルスケア社)を0.1g/Lとなるように水に溶解したもの。
(葉面散布剤C4)
ポリアミンを0.72g/L(スペルミジン400mg/L、スペルミン200mg/L、プトレッシン120mg/L)となるように水に溶解したもの。
(葉面散布剤C5)
グルタミン酸0.1g/L、展着剤であるキサンタンガム(CPケルコ社)が0.02g/Lとなるように溶解した水溶液。
【0025】
3.葉面散布剤の評価
(3−1) 根菜類の二十日大根に使用した場合の評価
土壌として一部化学肥料が配合されている「花と野菜の土」(サンテツ社製)を用いて、赤丸二十日大根を播種・定植後、本葉が出てから14株ずつの4区分を作り、区分ごとにそれぞれ葉面散布剤R1〜R3、C1を毎週1回散布した。葉の表・裏が完全に濡れるまで実施した。最初の散布から二十日後に、生育した二十日大根を区分ごとにすべて収穫した。
【0026】
葉面散布剤R1〜R3、C1のそれぞれについて、それを散布した収穫物の収量(重量、葉長)を確認した。また、根部について糖度ブリックス計を用いて糖度を測定した。
【0027】
その結果、葉面散布剤R1〜R3については、対照のC1と比較し、総重量が約10%増えた。また、R2、R3については糖度も上がった。
以上の結果から、赤丸二十日大根に対しては本葉面散布剤の効果が認められた。
葉面散布剤R1〜R3の中では、葉面散布剤R2が収穫量、糖度ともに良かったことから、葉面散布剤の酵母エキスNTの濃度としては0.05〜1.0g/Lが望ましいと思われる。
【0028】
【表1】
【0029】
(3−2)葉物類の小松菜に使用した場合の評価
土壌として市販の「花と野菜の土」を用いて、小松菜を播種・定植後本葉が出てから、葉面散布剤R1〜R3、C1を毎週1回散布した。葉の表・裏が完全に濡れるまで実施した。
【0030】
葉面散布剤R1〜R3、C1のそれぞれについて、それを散布した収穫物の収量(重量、葉長)を確認した。また、根部について糖度ブリックス計を用いて糖度を測定した。
【0031】
その結果、葉面散布剤R2、R3については、無添加のC1と比較して収量が上がり、特にR2では総重量が約10%増えた。このことから、小松菜においては葉面散布剤R1〜R3の中ではR2が良く、酵母エキスNTの葉面散布濃度としては0.1g/Lが良いという結果が得られた。
【0032】
【表2】
【0033】
(3−3) 核酸と酵母エキスとの比較
サンプルとして、葉面散布剤R2と葉面散布剤C2〜4を用いた以外は、3-1と同様に、赤丸二十日大根について葉面散布を行った。葉長、糖度(Brix値)や食味等について評価した。その結果を
図1、
図2のグラフに示す。食味は、7名のパネラーが生食し、甘さ、辛味、苦味、旨味について官能評価を行った。
【0034】
葉面散布剤R2で処理した赤丸二十日大根の葉長は、RNAや酵母エキスを含む葉面散布剤(C2、C3)と同様に、コントロールC1と比べて大きくなる傾向となった。また、葉面散布剤R2処理では、僅かに糖度が高くなる傾向が見られた。
官能評価の結果は表3に示す通り、葉面散布剤R2で処理した大根は、C2、C3よりも甘味、辛味、旨味が強く、苦味は少なく、総合的に食味が良くなる結果が得られた。
【0035】
【表3】
【0036】
(3−4) ポリアミンとの比較
土壌は、「花と野菜の培養土」(サンテツ社製)を入れた各プランター(58×18×15cm)に小松菜(味彩)の種を播種し、60日後に収穫した。温度コントロールは特に行わなかった。葉面散布は、定植後本葉が出てから10日に1回実施。散布の仕方は、葉の表・裏が完全に濡れるまで噴霧した。上記の土壌に対して、葉面散布剤R4、ポリアミン0.72g/L含む葉面散布剤C4、C1をそれぞれ散布した。
【0037】
その結果を表4に示す。葉面散布剤R4はコントロールと比べて約1.5倍量の収量増となった。なお、葉面散布剤R4のポリアミン濃度は1.0mg/Lであり、ポリアミン単独水溶液のC4と比べると720分の1の濃度である。R4は他の成分(ヌクレオチド等)との相乗効果があることが推測される。
【0038】
【表4】
【0039】
(3−5) 茶葉に使用したときの評価
やぶきた種で、2番茶収穫後約2か月後の芽長が5〜10cm、樹畝幅約1m、畝長さ10cmの茶樹に農業噴霧用噴霧器で葉面が濡れるように、葉面散布剤R5、C1、C5を20L/ha散布した。散布回数は摘茶前に2回(1回目の散布2〜3日後に2回目を散布)。
2回目の散布の2日後、芽を採取し、十分に水洗して水を切った後、70℃の熱風乾燥器で乾燥して測定用サンプルとした。茶葉中のアミノ酸の定量分析は後藤らの方法(茶業研究報告1993年77巻29頁)に準じ、高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。
コントロールとして水を散布したC1についても同様に芽を採取し、同様の操作を行った。
【0040】
結果は表5に示した通り、本発明の葉面散布剤R5処理により、コントロールのC1に対し、茶葉中のテアニン含有量が約2倍に増加した。旨味も高まり、味質向上できることが確認できた。
【0041】
【表5】
【0042】
(3−6) トマトに対して使用した場合の評価
土壌として市販の「花と野菜の土」を用いて、トマト(ホーム桃太郎)を播種・定植後本葉が出てから、葉面散布剤R3、C1を毎週1回散布した。葉の表・裏が完全に濡れるまで実施した。生育したトマトの果実を収穫後、それらの重量、水分、糖度、遊離アミノ酸、遊離グルタミン酸、リコピンについて測定を行った。
遊離アミノ酸、グルタミン酸は、日立アミノ酸分析計にて測定した。リコピンは、文献(日食工誌、39、925-928、1992)に従い、それに固有な可視光吸収帯から決定した。すり潰したトマト試料を抽出溶媒としてアセトン-ヘキサン(4:6)で抽出した。リコピン量を算出する式は以下の通りである。
リコピン(mg/100g)=-0.0485Abs(663nm)+0.204Abs(645nm)+0.372Abs(505nm)-0.0806Abs(453nm)とした。
結果は表6に示したとおり、R3を葉面散布したものは、C1とくらべて遊離グルタミン酸含量はやや低いものの、遊離アミノ酸合計含量は多くなり、リコピン含量は著しく高くなり、栄養価が高いものとなった。
【0043】
【表6】