(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(2)化合物又はその塩の含有量が、前記(1) A−B−A型トリブロック共重合体100質量部に対して、0.25〜20質量部である、請求項1に記載の癒着防止材。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.癒着防止材
本発明の癒着防止材は、(1)両末端に反応性の官能基を有するA−B−A型トリブロック共重合体(以下、「(1)A−B−A型トリブロック共重合体」、「(1)トリブロック共重合体」又は「第1成分」ということもある)、及び(2)該A−B−A型トリブロック共重合体と反応可能な化合物又はその塩(以下、「(2)反応性化合物」又は「第2成分」ということもある)を含有し、かつ該(1)トリブロック共重合体のAブロックが、ポリ(ε−カプロラクトン−co−グリコール酸)を含み、該(1)トリブロック共重合体のBブロックが、ポリエチレングリコール鎖を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の癒着防止材は、(1)トリブロック共重合体と(2)反応性化合物とを含むことにより、温度に応答してゾル−ゲル転移を示し、特に、体温によってゲル化するという特徴を有する。
【0020】
本発明の癒着防止材は、体内等の湿潤条件下においても、体液等で希釈されることがなく、長期間にわたってゲル状態を維持できる。
【0021】
さらに、本発明の癒着防止材は、(1)トリブロック共重合体と(2)反応性化合物とを含むことから、後述する理由により、体内等の湿潤条件下において、従来よりも体液等で希釈されにくく、長期間にわたってゲル状態を維持できる。
【0022】
本発明の癒着防止材は、これまでの粘度の高いゲル状の癒着防止材と違って、粘度が低く、適用時に液体状(ゾル)である。そのため、腹腔鏡下の手術において、狭いポートから所望の侵襲部位に適用することができ、取扱い性に優れる。
【0023】
また、本発明の癒着防止材は、フィルム状(シート状)の癒着防止材と違って、適用時は液体状(ゾル)である。そのため、複雑な形状又は構造の侵襲部位にも適用が容易である。
【0024】
そして、本発明の癒着防止材は生分解性であり、生体組織によって適度に吸収及び排泄される。そのため、生物学的に安全性の高いものである。
【0025】
本発明の癒着防止材は、前記(1)トリブロック共重合体及び(2)反応性化合物を含有していれば、特に限定されない。例えば、
(I) (1)トリブロック共重合体及び(2)反応性化合物のみからなる癒着防止材;
(II) 前記(I)に、さらに(3)前記トリブロック共重合体以外の温度応答性ポリマー(以下、「(3)他の温度応答性ポリマー」ということもある)を含有する癒着防止材;
(III) 前記(I)又は(II)に、さらに水を含有する癒着防止材;
(IV) 前記(I)〜(III)の何れか1つに、さらに薬物、色素、又は造影剤を含有する癒着防止材;
等が挙げられる。なお、本明細書中において、「含有する」又は「含む」なる表現については、「含有する」、「含む」、「実質的にのみからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0026】
以下の記載では、特に断りがない限り、本発明の癒着防止材が固体状であるものとして説明するが、本発明の癒着防止材は固体状の形態に限定されない。即ち、本発明の癒着防止材は、液体状及び固体状のいずれの形態も含むものとする。
【0027】
固体状の本発明の癒着防止材は、例えば、(1)トリブロック共重合体に(2)反応性化合物(固体状)を単に加えて得られるもの;溶媒で溶解した液体状の本発明の癒着防止材を乾燥させることにより得られるもの(前記工程(iii)の後の状態)等が挙げられる。
【0028】
液体状の本発明の癒着防止材は、例えば、(1)トリブロック共重合体に(2)反応性化合物(液体状)を単に混合して得られるもの;(1)トリブロック共重合体及び(2)反応性化合物を、溶媒に溶解させることにより得られるもの(前記工程(ii)の後の状態);前記固体状の本発明の癒着防止材を水又は水を含む媒体に溶解させることによって得られるもの等が挙げられる。
【0029】
ゲル状の本発明の癒着防止材は、例えば、前記固体状の本発明の癒着防止材を水又は水を含む媒体に溶解させたものを加温して得られるもの等が挙げられる。
【0030】
1−1.(1)両末端に反応性の官能基を有するトリブロック共重合体
本発明の癒着防止材は、(1)両末端に反応性の官能基を有するA−B−A型トリブロック共重合体((1)トリブロック共重合体)を含有する。
【0031】
(1)A−B−A型トリブロック共重合体は、生分解性であって、Aブロックがポリ(ε−カプロラクトン−co−グリコール酸)(PCGA)を含み、Bブロックがポリエチレングリコール(PEG)鎖を含み、かつ、両末端に反応性の官能基(Fc)を有する。
【0032】
反応性の官能基(Fc)としては、特に限定はなく、例えば、縮合反応可能な基、付加反応可能な基等が挙げられる。
【0033】
縮合反応可能な基としては、例えば、アミノ基等のスクシンイミドエステル基と縮合反応可能な基;スクシンイミドエステル基、ニトロフェニルエステル基、1,2,3,4,5-ペンタフルオロフェニルエステル基、4-クロロフェニルエステル基等のアミノ基と縮合反応可能な活性エステル基;アルデヒド等のアミノ基とシッフ塩基結合形成可能な基;アミノ基等のアルデヒド基とシッフ塩基結合形成可能な基;チオエステル基等のシステイン残基と縮合反応可能な基;システイン残基等のチオエステル基と反応可能な基;フェニルボロン酸基等のジオール基と反応可能な基;ジオール基等のフェニルボロン酸基と反応可能な基等が挙げられる。中でも、好ましくはスクシンイミドエステル基及びアミノ基であり、より好ましくはスクシンイミドエステル基である。
【0034】
付加反応可能な基としては、例えば、チオール−エン クリック反応可能な基;ディールス アルダー反応可能な基;クリック反応可能な基;無触媒クリック反応可能な基等が挙げられる。
【0035】
反応性の官能基としては、好ましくは縮合反応可能な基であり、より好ましくはスクシンイミドエステル基及びアミノ基であり、特に好ましくはスクシンイミドエステル基である。
【0036】
(1)A−B−A型トリブロック共重合体は、Aブロックと、反応性を有する官能基(Fc)との間に、さらにリンカー部分(以下、「link」ということもある)を含むことができる。該リンカーとしては、特に限定はなく、例えば、コハク酸又はその誘導体(例えば、無水コハク酸、コハク酸ジメチル等のコハク酸ジアルキルエステル)、エチレンジイソシアナート、エチレングリコール、エチレンジアミン、ピペラジン、グリシン等のアミノ酸及びそのオリゴマー、並びにこれらの組合せから形成(誘導)される基等が挙げられる。
【0037】
本発明で使用する(1)トリブロック共重合体の各物性;例えば、(1)トリブロック共重合体に対するPCGAブロック(Aブロック)及びPEGブロック(Bブロック)の質量比率;
PCGAブロック及びPEGブロックの各重量平均分子量;
(1)トリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び当該数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn);
PCGA中のε−カプロラクトンとグリコール酸とのモル比;ε−カプロラクトン及びグリコール酸の各重合度;等の各物性は、特に限定されない。
【0038】
上記各物性の好ましい一例を挙げると、
PCGAブロック及びPEGブロックの質量比率は、PCGAブロックが(1)トリブロック共重合体の20〜75質量%を構成し、かつPEGブロックが(1)トリブロック共重合体の25〜80質量%を構成することが好ましい。
【0039】
PCGAブロックの重量平均分子量は、0.8k〜2.0k(800〜2000)が好ましく、
PEGブロックの重量平均分子量は、0.8k〜2.0k(800〜2000)が好ましく、
(1)トリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、2.4k〜6.0k(2400〜6000)が好ましく、
(1)トリブロック共重合体の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、1.0〜1.8が好ましく、
PCGA中のε−カプロラクトンとグリコール酸とのモル比は、ε−カプロラクトン(CL):グリコール酸(GA)=3.0:1〜5.0:1(モル比)が好ましく、
ε−カプロラクトンの重合度は、5〜20が好ましく、
グリコール酸の重合度は、1〜5が好ましい。
【0040】
なお、上記各モル比、重合度及び質量比率は、例えば、
1H−NMR等の公知の方法を用いて測定することができる。上記各数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、上記
1H−NMR に加えてGPC(Gel Permeation Chromatography)等を用いて測定できる。
【0041】
本発明で使用する(1)A−B−A型トリブロック共重合体としては、以下の式(A):
【0043】
で表すことができ、Fc−PCGA−b−PEG−b−PCGA−Fcとも称される(ここでFcは、反応性の官能基を意味し、b はblockを意味する)。上記式(A)中のx、y及びzは、それぞれ上述の各物性を満たすことができるような値であれば制限はない。中でも、例えば、xは15〜50の数が好ましく、20〜45の数がより好ましい。yは5〜20の数が好ましく、7〜15の数がより好ましい。zは1〜5の数が好ましく、1〜3の数がより好ましい。また、式(A)中に記載された2つのyは、ともに同じ数であってもよいし、異なる数であってもよい。このことは、式(A)中に記載された2つのzについても同様である。なお、x、y及びzは、ポリマー中の各ユニットの平均個数を表し、
1H−NMR及びGPCから求められる。式(A)中の[ ]で示されるPCGAブロック内では、ε−カプロラクトンユニットとグリコール酸ユニットとの配列に規則性は無く、上記式(A)の配列の順に限定されない。また、y及びzは、片方のPCGAブロック内に含まれるε−カプロラクトンユニット及びグリコール酸ユニットそれぞれのユニットの平均個数を示す。
【0044】
該Fc−PCGA−b−PEG−b−PCGA−Fcは、Fc基とPCGA基との間にリンカー部位を有していてもよい。かかる化合物としては、下記一般式(A’)で表すことができる。
【0046】
上記式A’中のx、y及びzは、前記と同じであり、Fc’は、上記反応性の官能基と同じ基である。また、linkとしては、特に制限はなく、例えば、ジカルボン酸ユニット、ジオールユニット、モノペプチドユニット、ジペプチドユニット、オリゴペプチドユニット等が挙げられる。該ジカルボン酸としては、アルキレンジカルボン酸が挙げられ、該アルキレンとしては、特に制限はなく、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等が挙げられる。該linkはさらに置換基を有していてもよい。該置換基としては特に制限はなく、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0047】
中でも、(1)トリブロック共重合体としては、好ましくは下記の一般式(A-1)で表されるトリブロック共重合体であり
【0049】
(式中、x、y、z及びFc’は前記と同じ。)、
より好ましくは、下記一般式(A-2)で表されるトリブロック共重合体である
【0051】
(式中、x、y及びzは前記と同じ。)。
【0052】
(1)A−B−A型トリブロック共重合体は、室温と体温付近との間にゲル転移温度を有する。具体的には、(1)トリブロック共重合体を水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の水を含む媒体に溶解させた場合、室温付近ではゾル状態であり、体温付近まで加温するとゲル状態に変化する。(1)A−B−A型トリブロック共重合体自体は、常温かつ無溶媒の状態では固体であるが、例えば、(1)A−B−A型トリブロック共重合体の25wt%溶液は、ゾル−ゲル転移温度が40℃である。さらに該溶液と、後述する(3)A−B−A型トリブロック共重合体以外の温度応答性ポリマーの25wt%溶液とを1:1の比率で混合することにより、ゾル−ゲル転移温度を約33℃に低下させることができる。つまり、本発明において、(1)A−B−A型トリブロック共重合体と(3)A−B−A型トリブロック共重合体以外の温度応答性ポリマーとの配合割合を適宜調整することにより、ゾル−ゲル転移温度を変化させることができる。
【0053】
前記(1)トリブロック共重合体は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明の癒着防止材における(1)トリブロック共重合体の含有量は、通常、5〜30質量%程度、好ましくは10〜25質量%程度である。
【0055】
トリブロック共重合体の製造方法(重合方法)の一例については、後述する。
【0056】
1−2.(2)A−B−A型トリブロック共重合体と反応可能な化合物
本発明の癒着防止材は、上記(1)トリブロック共重合体とともに、(2)反応性化合物を含有する。これにより、本発明の癒着防止材は、温度に応答するゾル−ゲル転移性を保持しつつ、体内等の湿潤条件下において、ゲル状態を長期間維持できる。これらの効果が奏される理由としては、(1)トリブロック共重合体と(2)反応性化合物とを混合させると、(1)トリブロック共重合体における反応性の官能基と(2)反応性化合物における反応性の基とが共有結合を形成し、ゲル状態を維持することが理由であると推測される。本発明の癒着防止材は、(2)反応性化合物を配合することによって、癒着防止効果が向上するだけなく、癒着防止材の投与量も低減することができる。
【0057】
(2)反応性化合物としては、特に制限はなく、例えば、縮合反応可能な化合物、付加反応可能な化合物等が挙げられる。(2)反応性化合物は、塩であってもよい。該塩としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等)、有機酸(酢酸、蟻酸等)等が挙げられる。
【0058】
縮合反応可能な化合物としては、例えば、スクシンイミドエステル基と反応可能なアミノ基含有化合物;スクシンイミドエステル基含有化合物、ニトロフェニルエステル基含有化合物、1,2,3,4,5−ペンタフルオロフェニルエステル基含有化合物、4−クロロフェニルエステル基含有化合物等のアミノ基と反応可能な活性エステル基を有する化合物;アルデヒド等アミノ基とシッフ塩基結合形成可能な基を有する化合物;システイン残基を反応可能なチオエステル基含有化合物;チオエステル基と反応可能なシステイン残基含有化合物;ジオール基と縮合反応可能なフェニルボロン酸基含有化合物;フェニルボロン酸と反応可能なジオール基含有化合物等が挙げられる。
【0059】
付加反応可能な化合物としては、例えば、チオール−エン クリック反応可能な基を有する化合物;ディールス アルダー反応可能な基を有する化合物;クリック反応可能な基を有する化合物;無触媒クリック反応可能な基を有する化合物等が挙げられる。
【0060】
中でも、(2)反応性化合物としては、縮合反応可能な基を有する化合物又はその塩が好ましく、アミノ基含有化合物又はその塩がより好ましい。
【0061】
アミノ基含有化合物又はその塩としては、特に限定はなく、例えば、ポリリシン、4-arm-PEG-NH
2(4分岐したポリエチレングリコールの末端が第一級アミノ基であるもの)、PEI(ポリエチレンイミン)、BSA(ウシ血清アルブミン)、Cationic Gelatine(カチオン性のゼラチン)等のポリアミン化合物又はそれらの塩が挙げられる。
【0062】
ポリアミン化合物の数平均分子量(Mn)は、特に限定はなく、通常200〜100,000であり、好ましくは500〜10,000であり、より好ましくは1,000〜6,000である。
【0063】
(2)反応性化合物は、市販品を使用することができ、市販品がない場合は、公知の製造方法に従い製造することができる。例えば、4-arm-PEG-NH
2は、特開2013-227543号公報に記載の製造方法等に従い、4-arm-PEG(日油株式会社製)とアミノ化剤(例えば、アンモニア等)とを反応させることにより製造することができる。
【0064】
(2)反応性化合物は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
(2)反応性化合物の含有量は、特に限定はなく、例えば、(1)A−B−A型トリブロック共重合体100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、0.025〜10質量部がより好ましい。
【0066】
1−3.(3) A-B-A型トリブロック共重合体以外の温度応答性ポリマー
本発明の癒着防止材は、さらに、(3) A−B−A型トリブロック共重合体以外の温度応答性ポリマー(以下、「(3)他の温度応答性ポリマー」ともいう)を含有していてもよい。
【0067】
(3)他の温度応答性ポリマーとしては、公知の温度応答性ポリマーであれば特に限定はなく、例えば、ポリ乳酸;ポリグリコール酸;ポリカプロラクトン;乳酸−グリコール酸共重合体;PCGA−b−PEG−b−PCGA;PLGA−b−PEG−b−PLGA;プルロニック(ポロキサマーとも呼ぶ。PEG-b-PPG-b-PEG、該PPGはポリプロピレングリコールを意味している。「プルロニック」はBASF社の登録商標。)等が挙げられる。
【0068】
中でも、(3)他の温度応答性ポリマーとしては、上記(1)トリブロック共重合体と類似構造であるPCGA−b−PEG−b−PCGA、PLGA−b−PEG−b−PLGA等のトリブロック共重合体が好ましく、PCGA−b−PEG−b−PCGAがより好ましい。(3)他の温度応答性ポリマーとしてPCGA−b−PEG−b−PCGAを用いる場合、該PCGA−b−PEG−b−PCGAの各物性;例えば、トリブロック共重合体に対するPCGAブロック(Aブロック)及びPEGブロック(Bブロック)の質量比率;PCGAブロック及びPEGブロックの各重量平均分子量;トリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び当該数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn); PCGA中のε−カプロラクトンとグリコール酸とのモル比;ε−カプロラクトン及びグリコール酸の各重合度;等の各物性は、特に限定されない。PCGAブロック及びPEGブロックの質量比率、PCGAブロックの重量平均分子量、PEGブロックの重量平均分子量、トリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)、トリブロック共重合体の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)、PCGA中のε−カプロラクトンとグリコール酸とのモル比、ε−カプロラクトンの重合度、及びグリコール酸の重合度は、上記1−1に記載した(1)A−B−A型トリブロック共重合体の各物性と同じである。
【0069】
本発明で使用する(3)他の温度応答性ポリマーとしては、例えば、下記一般式(B):
【0072】
上記式(B)中のx、y及びzは、それぞれ上述の各物性を満たすことができるような値であり、例えば、xは15〜50の数が好ましく、20〜45の数がより好ましい。yは5〜20の数が好ましく、10〜15の数がより好ましい。zは1〜5の数が好ましく、1〜3の数がより好ましい。また、式(B)中に記載された2つのyは、ともに同じ数であってもよいし、異なる数であってもよい。このことは、式(B)中に記載された2つのzについても同様である。なお、x、y及びzは、ポリマー中の各ユニットの平均個数を表し、
1H−NMR及びGPCから求められる。式(B)中の[ ]で示されるPCGAブロック内では、ε−カプロラクトンユニットとグリコール酸ユニットとの配列に規則性は無く、上記式(B)の配列の順に限定されない。また、y及びzは、片方のPCGAブロック内に含まれるε−カプロラクトンユニット及びグリコール酸ユニットそれぞれのユニットの平均個数を示す。
【0073】
該(3)他の温度応答性ポリマーは、1種単独で使用してもよく、又は2種を組み合わせて使用してもよい。2種を組み合わせて使用する場合、その割合は特に限定されない。
【0074】
本発明の癒着防止材において、(3)他の温度応答性ポリマーは含有されていなくてもよいが、(3)他の温度応答性ポリマーを含有する場合、その含有量は、特に限定はない。中でも、(3)他の温度応答性ポリマーの含有量としては、(1)A−B−A型トリブロック共重合体100質量部に対して1〜400質量部が好ましく、50〜200質量部がより好ましい。本発明において、(3)他の温度応答性ポリマーを本発明の癒着防止材に添加することにより、該癒着防止材のゲル化温度を最適なものに調節可能であり、(1)トリブロック共重合体の使用量を抑え、かつ、ゲル化後におけるゲルの維持期間及び加水分解に至る期間を調節することができる。
【0075】
1−4.その他の成分
本発明の癒着防止材は、さらに公知の薬物、色素、造影剤等を混合し、医薬組成物、薬物徐放デバイス等として用いることができる。
【0076】
薬物としては、特に限定はなく、例えば、生理活性を有するペプチド化合物、蛋白質類、核酸類、その他の抗生物質、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、鎮咳去痰剤、鎮静剤、筋弛緩剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗うつ剤、抗アレルギー剤、強心剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、抗凝血剤、止血剤、抗結核剤、ホルモン剤、麻薬拮抗剤、等が挙げられる。これらの薬物は、1種又は2種以上を併用して含有させてもよい。
【0077】
色素としては、特に限定はなく、公知の色素が使用できる。造影剤としては、特に限定はなく、公知の造影剤が使用できる。
【0078】
本発明の医薬組成物における薬物の配合量は、薬物の種類等により適宜選択することができ、例えば、癒着防止材100質量部に対して、通常0.00001〜50質量部、好ましくは0.0001〜1質量部程度の薬物を混合することができる。
【0079】
本発明の癒着防止材は、他の薬物と組み合わせて適用することにより、薬物の副作用の低減、薬物の治療効果増強等といった効果を得る場合がある。
【0080】
本発明の癒着防止材を薬物と混合すると、室温付近では液体状態であるため適用時における取扱いが容易であり、一方、体温付近では不溶のゲル状態となるため、適用後は不溶物となり薬物の早期拡散を抑制し、投与部位での薬物の滞留性を向上させることができる。
【0081】
特に、本発明の癒着防止材を持続性注射剤とした場合には、薬物の配合量は、薬物の種類、持続放出させる期間等によって定められる。例えば、薬物がペプチド化合物の場合、約1週間〜約1ケ月の徐放性癒着防止材とするためには、通常、医薬組成物全質量に対し、10質量%〜50質量%程度含有させればよい。
【0082】
本発明の癒着防止材は、配合されるこれら薬物の効果を失活させることなく、均一に混合することが可能であり、侵襲部位の治癒期間中は、侵襲部位に滞留し、混合した薬物を徐放して薬物の効果を阻害せずに発揮させ、治癒後は安全に体内に吸収分解されるものである。
【0083】
さらに詳述すれば、本発明の癒着防止材においては、感染症の問題に鑑み、抗菌性を有する薬剤を含有させることができる。その中でも、抗菌性に関して広い抗菌スペクトルを有する薬剤が好ましい。
【0084】
本発明の癒着防止材とこれら薬剤の混合方法は特に制限はなく、公知の方法が使用できる。例えば、癒着防止材と薬剤とを単に混合する方法、癒着防止材の成分である各ポリマーに薬剤の効能を失うことなく結合させる方法等が挙げられる。
【0085】
2.癒着防止材の製造方法
本発明の癒着防止材の製造方法は、特に限定はなく、例えば、下記(i)、(ii)並びに(iii)の工程:
(i)ポリエチレングリコール(PEG)又は脂肪族ジオールの存在下、ε−カプロラクトン及びグリコリドを重合させて、A−B−A型トリブロック共重合体を製造する工程、
(ii)前記工程(i)で得られたA−B−A型トリブロック共重合体の両末端に、反応性の官能基を形成する工程、並びに
(iii)前記工程(ii)で得られたA−B−A型トリブロック共重合体((1)トリブロック共重合体)と該A−B−A型トリブロック共重合体と反応可能な化合物((2)反応性化合物)とを混合する工程、
を順に含んでいる。
【0086】
当該製造方法によれば、上述の(1)トリブロック共重合体及び(2)反応性化合物を含有する癒着防止材を好適に製造することができる。
【0087】
工程(i)
本発明の製造方法における工程(i)は、PEG、又は脂肪族ジオールの存在下、ε−カプロラクトン及びグリコリドを重合させて、A-B-A型トリブロック共重合体を製造する工程である。
【0088】
重合方法としては、特に制限はなく、例えば、上記式(B)のトリブロック共重合体であれば、Sn(Oct)
2(オクチル酸錫)等の触媒の存在下、PEGを高分子開始剤として、ε−カプロラクトン及びグリコリドを重合することにより製造することができる。触媒の使用量は、特に制限はなく、好ましくはε−カプロラクトン及びグリコリドの混合物100質量部に対して、0.1〜10質量部である。
【0089】
脂肪族ジオールとしては、特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の直鎖状の炭素数1〜6のアルキレンジオールが挙げられる。
【0090】
ε−カプロラクトン、グリコリド、PEG、及び脂肪族ジオールの各原料の使用量は、特に限定はなく、例えば、上述のトリブロック共重合体の好ましい各物性を満たすように適宜調整すればよい。なお、ε−カプロラクトン、グリコリド、PEG、脂肪族ジオール及びSn(Oct)
2は、それぞれ乾燥させたものを使用してもよい。
【0091】
工程(i)における反応は、無溶媒で行ってもよく、又は溶媒を用いてもよい。
【0092】
工程(i)における反応温度は、通常50〜200℃であり、好ましくは100〜180℃であり、より好ましくは120〜170℃である。
【0093】
工程(i)における反応時間は、通常1〜72時間であり、好ましくは6〜48時間であり、より好ましくは10〜24時間である。
【0094】
工程(i)は、密閉容器中で行ってもよい。その容器としては、特に制限はなく、ステンレス製密閉容器、耐圧仕様のガラス製密閉容器等が挙げられる。
【0095】
工程(i)は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。反応圧力は、特に制限はなく、常圧で反応を実施してもよいし、加圧下で反応を行ってもよい。
【0096】
重合終了後は、良溶媒及び貧溶媒を用いて再沈殿させ、さらに当該沈殿物を乾燥させることにより、白色粉末のトリブロック共重合体を得ることができる。上記良溶媒としては、例えばクロロホルムを使用することができ、上記貧溶媒としては、例えばジエチルエーテルを使用することができる。
【0097】
工程(ii)
本発明の製造方法における工程(ii)は、工程(i)で得られたA-B-A型トリブロック共重合体の両末端をキャップ化する(エンドキャップ)工程である。
【0098】
該工程(ii)によって、(1)両末端に反応性の官能基を有するA-B-A型トリブロック共重合体((1)トリブロック共重合体)が製造できる。
【0099】
反応性の官能基を形成する方法としては、特に制限はない。例えば、工程(i)で得られたA-B-A型トリブロック共重合体とリンカー部位を形成させる化合物とを反応させる工程(ii-1)、及び該工程(ii-1)で得られたリンカー部位を有するA-B-A型トリブロック共重合体と、反応性の官能基を形成させる化合物とを反応させる工程(ii-2)を含んでいる。該反応性の官能基が、例えば、スクシンイミドエステル基である場合は、工程(i)で得られたA-B-A型トリブロック共重合体と無水コハク酸とを反応させて、両末端にカルボキシル基(COOH基)を有するA-B-A型トリブロック共重合体を得る工程(ii-1)、及び該工程(ii-1)で得られたトリブロック共重合体(両末端にCOOH基を有するA-B-A型トリブロック共重合体)とN−ヒドロキシスクシンイミドとを縮合剤の存在下で反応させて、両末端にスクシンイミドエステル基を有するA-B-A型トリブロック共重合体を製造する工程(ii-2)を経て製造できる。
【0100】
工程(ii-1)
リンカー部位を形成させる化合物としては、ジカルボン酸、ジオール、モノペプチド、オリゴペプチド等のユニットを形成させる化合物が挙げられる。例えば、ジカルボン酸ユニットを形成させる化合物としては、例えば、炭素数1〜6のアルキレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0101】
該リンカー部位を形成させる化合物の使用量としては、特に制限はなく、例えば、工程(i)で得られた、A-B-A型トリブロック共重合体100質量部に対して、10〜500質量部である。
【0102】
工程(ii-1)の反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系溶媒;水;これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0103】
溶媒の使用量は、工程(i)で得られたA-B-A型トリブロック共重合体100質量部に対して、通常10質量部以上であり、好ましくは20〜500質量部であり、より好ましくは40〜100質量部である。
【0104】
工程(ii-1)における反応温度は、通常100〜200℃であり、好ましくは100〜150℃であり、より好ましくは120〜150℃である。
【0105】
工程(ii-1)における反応時間は、通常5〜72時間であり、好ましくは12〜48時間であり、より好ましくは20〜30時間である
工程(ii-1)は、密閉容器中で行ってもよい。その容器としては、特に制限はなく、ステンレス製密閉容器、耐圧仕様のガラス製密閉容器等が挙げられる。
【0106】
工程(ii-1)は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。反応圧力は、特に制限はなく、常圧で反応を実施してもよいし、加圧下で反応を行ってもよい。
【0107】
反応終了後、精製工程を行ってもよく、又はそのまま次の反応を行ってもよい。精製工程を行う場合は、得られる反応混合物から、未反応の原料化合物等を、蒸留、ろ過、遠心分離等の通常の分離方法により除去し、両末端にリンカー部位を有するA-B-A型トリブロック共重合体を取り出すことができる。
【0108】
工程(ii-2)
反応性の官能基を形成させる化合物としては、N−ヒドロキシスクシンイミド、パラニトロフェノール等が挙げられる。中でも、好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミドである。
【0109】
該反応性の官能基を形成させる化合物の使用量としては、特に制限はなく、例えば、工程(ii-1)で得られたリンカー部位を有するA-B-A型トリブロック共重合体100質量部に対して、2〜40質量部である。
【0110】
該工程(ii-2)の反応は、溶媒中で行うことができる。該溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系溶媒;トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性有機溶媒;水;これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0111】
溶媒の使用量は、(ii-1)で得られた、両末端にリンカー部位を有するトリブロック共重合体100質量部に対して、通常50質量部以上であり、好ましくは100〜2000質量部であり、より好ましくは200〜1000質量部である。
【0112】
縮合剤としては、公知の縮合剤を使用することができ、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド(EDC)等が挙げられる。該縮合剤の使用量としては、特に制限はなく、例えば、工程(ii-1)で得られたリンカー部位を有するA-B-A型トリブロック共重合体100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。
【0113】
工程(ii-2)の反応では、必要に応じて反応促進剤を加えることができる。反応促進剤としては、例えば、ジメチルアミノピリジン(DMAP)等が挙げられる。該反応促進剤の使用する場合、その使用量としては、特に制限はなく、例えば、工程(ii-1)で得られたリンカー部位を有するA-B-A型トリブロック共重合体100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。
【0114】
工程(ii-2)における反応温度は、反応初期の約2時間の反応温度が、通常0〜30℃であり、より好ましくは0〜5℃であり、その後の反応温度が、通常10〜100℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0115】
工程(ii-2)における反応時間は、最初の2時間の工程を含めて通常5〜48時間であり、より好ましくは8〜24時間である。
【0116】
工程(ii-2)は、密閉容器中で行ってもよい。その容器としては、特に制限はなく、ステンレス製密閉容器、耐圧仕様のガラス製密閉容器等が挙げられる。
【0117】
工程(ii-2)は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。
【0118】
反応圧力は、特に制限はなく、常圧で反応を実施してもよいし、加圧下で反応を行ってもよい。
【0119】
反応終了後、精製工程を行ってもよく、又はそのまま使用してもよい。精製工程を行う場合は、得られる反応混合物から、未反応の原料化合物等を、蒸留、ろ過、遠心分離等の通常の分離方法により除去し、(1)両末端に反応性の官能基を有するトリブロック共重合体((1) トリブロック共重合体)を取り出すことができる。
【0120】
工程(iii)
本発明の製造方法における工程(iii)は、(1)トリブロック共重合体、及び(2)反応性化合物を混合する工程である。さらに、本発明の製造方法における工程(iii)は、必要に応じて、(1)トリブロック共重合体、及び(2)反応性化合物だけでなく、(3)他の温度応答性ポリマーを混合することができる。
【0121】
該(2)反応性化合物の使用量としては、特に制限はなく、例えば、(1)トリブロック共重合体100質量部に対して、0.1〜100質量部であり、好ましくは0.2〜50質量部であり、より好ましくは0.25〜20質量部である。
【0122】
本発明の癒着防止材のうち、(3)他の温度応答性ポリマーを含有する場合、該(2)反応性化合物の使用量としては、特に制限はなく、例えば、(1)トリブロック共重合体100質量部に対して、0.01〜100質量部であり、好ましくは0.01〜20質量部であり、より好ましくは0.025〜10質量部である。
【0123】
該(3)他の温度応答性ポリマーの使用量としては、特に制限はなく、例えば、(1)トリブロック共重合体100質量部に対して、0〜400質量部であり、好ましくは50〜200質量部である。
【0124】
溶媒としては、特に限定はなく、例えば、水、水を含む媒体、アセトン等が挙げられる。中でも、水を含む媒体が好ましい。水を含む媒体としては、上述の水を含む媒体(即ち、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、食塩の入っていないリン酸緩衝液等)を使用することができる。溶媒の使用量は、(1)トリブロック共重合体が6〜25質量%程度となるように溶媒を使用することが好ましい。
【0125】
混合方法としては、上記各成分が均一に混合できれば特に限定はない。例えば、(1)トリブロック共重合体を含む溶液と(2)反応性化合物を溶媒に溶解又は分散させた溶液を混合する方法;(1)トリブロック共重合体を含む溶液に溶媒を含まない固体又は油状の(2)反応性化合物を加えて混合する方法等が挙げられる。
【0126】
さらに、(3)他の温度応答性ポリマーを含有する本発明の癒着防止材の混合方法としては、(1)トリブロック共重合体、(2)反応性化合物及び(3)他の温度応答性ポリマーが均一に混合できれば特に限定はない。例えば、(1)トリブロック共重合体及び(3)他の温度応答性ポリマーを、各々別個に溶媒に溶解又は分散させた溶液を調製してから合一し、その後に(2)反応性化合物を混合する方法;固体状の(1)トリブロック共重合体と溶媒を含まない固体又は油状の(3)他の温度応答性ポリマーのいずれかを溶媒に溶解又は分散させた溶液を調製して、該溶液に、もう一方の成分を加えて混合し、次いで、これに(2)反応性化合物を混合する方法等が挙げられる。
【0127】
溶媒としては、特に限定はなく、例えば、水、水を含む媒体、アセトン等が挙げられる。中でも、水を含む媒体が好ましい。水を含む媒体としては、上述の水を含む媒体(即ち、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、食塩の入っていないリン酸緩衝液等)を使用することができる。溶媒の使用量は、(1)トリブロック共重合体が5〜30質量%程度となるように溶媒を使用することが好ましい。
【0128】
なお、(3)他の温度応答性ポリマーを含有する本発明の癒着防止材の場合、その溶媒の使用量は、(1)トリブロック共重合体が5〜30質量%程度となるように溶媒を使用することが好ましい。
【0129】
該工程(iii)は、必要に応じて、酸性溶液(例えば、塩酸)、アルカリ性溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を加えてpHを適宜調整することができる。
【0130】
なお、(1)A−B−A型トリブロック共重合体が溶解又は分散しにくい場合は、該溶液又は分散液を加温することによりゲル化させて、その後室温に戻す操作を繰り返して、溶解又は分散させることができる。
【0131】
3.癒着防止材の適用方法
本発明の癒着防止材は、ヒトを含むほ乳類の生体組織に対して適用することができる。
【0132】
その適用方法としては、特に制限はなく、例えば、固体(粉末)状の本発明の癒着防止材を水又は水を含む媒体に溶解して得られたゾル状の水溶液を、塗布、スプレー、ディップ等により、臓器等の生体組織を被覆する方法が挙げられる。
【0133】
塗布方法としては、従来から使用されている方法を用いることができるが、例えば、ゾル状の癒着防止材を注射器等で生体組織に塗布する方法等が挙げられる。
【0134】
スプレー(噴霧)方法としては、従来から使用されている方法を用いることができるが、例えば、噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサー式スプレー、トリガー式スプレー、エアゾール式スプレー、人力噴霧器、動力噴霧器等が挙げられる。
【0135】
ディップ(浸漬)方法としては、特に制限はなく、例えば、液体状の癒着防止材を、臓器等が被覆される程度に腹腔内に注ぎ、その後に余分な液体状の癒着防止材を吸引等によって抜き取る方法等が挙げられる。
【0136】
本発明の癒着防止材は、液体状(ゾル状)の水溶液を適用するだけでなく、ゲル状にした後に適用してもよく、また固体(粉末)状の癒着防止材をそのまま生体組織に適用することも可能である。
【0137】
ゲル状の癒着防止材を用いる場合は、例えば、本発明の癒着防止材に水又は水を含む媒体を添加し、加温することで容易に得ることができる。
【0138】
そして、得られたゲル状の癒着防止材の適用方法としては、スパチュラ、刷毛等で生体組織に塗布する方法等が挙げられる。
【0139】
また、固体(粉末)状の癒着防止材を用いる場合は、例えば、固体(粉末)状の癒着防止材のまま生体組織に適用することができる。その場合、生体内の水分によって固体(粉末)状の癒着防止材がゾル状態となり、続いて、体温によってゲル状の癒着防止材とすることができる。
【0140】
固体(粉末)状の癒着防止材の適用方法としては、スパチュラ、刷毛等で生体組織に刷り込むように塗布する方法等が挙げられる。
【0141】
4.癒着防止材の性質
本発明の癒着防止材は、上述したように、良好な生体適合性、生分解性及び温度応答性を有する。
【0142】
ここで、温度応答性ゾル−ゲル転移とは、一般に癒着防止材を含有する溶液がゲル化温度を境にして、ゾル(液体)状態から、ゲル(固体)状態への転移を示す性質をいう。具体的には、ゾル(液体)状の癒着防止材をゲル化温度以上の温度に加熱するとゲル状態となり、それ以下の温度に冷却すると再び溶解して透明のゾル状態に戻るという性質をいう。
【0143】
本明細書では、癒着防止材の水溶液のゲル化温度は、動的粘弾性試験により、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G’’を上回る温度として求めている。また、ゲル化温度は、試験管倒置法により癒着防止材の水溶液の粘度変化を測定することにより求めることができる。
【0144】
本発明の癒着防止材の水溶液は、10〜50℃程度の範囲にゲル化温度が存在し、かかる範囲で容易にゲル化温度を調節でき、その応用範囲は極めて広範である。例えば、25〜35℃の範囲にゲル化温度を有する本発明の癒着防止材の水溶液では、室温(例えば10〜20℃程度)と体温(35〜40℃程度)付近の間にゲル化温度が存在することより、ゾル(液体)状態のまま体内に投与することができ、体内でハイドロゲルを形成することができる。
【0145】
ゲル状の癒着防止材が生体組織の癒着の防止するためには、一般に1ヶ月程度、好ましくは2週間程度の期間にわたって、癒着防止材が患部(侵襲部位)に存在することが望ましい。
【0146】
本発明の癒着防止材は、室温付近では液体(ゾル)状態であるため、例えば、注射器等で生体組織に適用(塗布)させる際に取扱いが容易であり、一方、体温付近では不溶のゲル状態となるため、体内に適用後は不溶物となることから、生体組織での癒着防止材の滞留性を向上させることができる。
【0147】
本発明の癒着防止材は、その他の医療材料に用いることができる。
【実施例】
【0148】
以下に実施例及び製造例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0149】
[製造例1]
トリブロック共重合体(B1)の合成
PEG(1,000)(Polyethylene glycol(1,000)、和光純薬工業株式会社製)のみを140℃オイルバス中で3時間減圧乾燥させた後、ε−カプロラクトン(和光純薬工業株式会社製)、グリコリド(Polysciences社製)及びSn(Oct)
2(和光純薬工業株式会社製)を加えて、さらに6時間乾燥させた。次いで、160℃オイルバス中で12時間重合を行った。反応終了後、良溶媒にクロロホルム、貧溶媒にジエチルエーテルを用いて再沈殿を行い、白色沈殿物を得た。当該沈殿物を乾燥後、白色粉末のPCGA−b−PEG−b−PCGAトリブロック共重合体(後述する化学式6に示す構造式(B)。以下、「CP-OH」ということもある)を得た。トリブロック共重合体(B1)の各物性を、以下の表1に示す。
【0150】
[製造例2]
トリブロック共重合体(B2)の合成
PEG(1,000)に代えて、PEG(1,540)(Polyethylene glycol(1,540)、和光純薬工業株式会社製)を使用する以外は製造例1と同様にして、白色粉末のPCGA−b−PEG−b−PCGAトリブロック共重合体(B2)を得た。トリブロック共重合体(B2)の各物性を、以下の表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
a)
1H-NMR (solvent:CDCl
3)により測定
b) GPC (eluent:DMF, standard:PEG、TOSOH製Tosoh GPC-8020 series system)により測定
c) Degree of polymerization of ε−caprolactone.
d) Degree of polymerization of glycolide.
[製造例3]
(1)両末端に反応性の官能基を有するトリブロック共重合体の合成
【0153】
【化6】
【0154】
工程(i)
製造例2で得られたCP-OH(B2)を19.86g、無水コハク酸(東京化成工業株式会社製)3.87g及びトルエン0.01Lを、0.1Lのフラスコに入れ、130℃で24時間還流させて反応させた。その後、エバポレーターによりトルエンを留去し、クロロホルムを加えて吸引ろ過により未反応の無水コハク酸を取り除き、両末端にカルボキシル基を有するPCGA−b−PEG−b−PCGA(上記化学式6に示す構造式(C)。以下、「CP-COOH」という)を20.63g得た。
【0155】
工程(ii)
工程(i)で得られたCP-COOHを20.63g、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)1.78g、ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.47 g、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1.59g及び塩化メチレン0.1Lを0.1Lフラスコに加え、氷冷下で2時間、室温下で24時間反応させた。エバポレーターにて濃縮後、吸引ろ過によりジシクロヘキシル尿素(DCUrea)及び未反応のNHSを取り除き、貧溶媒としてジエチルエーテル : メタノール = 10 : 1を用いて再沈殿して、両末端がスクシンイミドエステル化(キャップ)されたPCGA−b−PEG−b−PCGA(上記化学式6に示す構造式(1a)。以下、「CP-OSu」という)の白色沈殿物を14.2g得た(OSu導入率:98%以上)。
【0156】
[製造例4]
上記製造例2で得られたCP-OH(1.8k-1.5k-1.8k) (100mg, 19.4μmol)を粉末の状態でサンプル管に入れて、さらにリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH=7.4)294μlを加えて、80℃の温浴に5秒浸漬後(ゲル化)、ボルテックスミキサーにより30秒間撹拌し、室温に戻す(ゾル化)する操作を3回繰り返し、溶解させ、25.5wt%の混合ポリマー水溶液(最終濃度25.0wt%)を得た(以下、単に「比較ポリマー水溶液」とする。)。
【0157】
[製造例5]
ポリマー水溶液の調製(CP-OSu:CP-OH=1mol:2mol)
製造例3で得られたトリブロック共重合体(CP-OSu)(50.3mg, 9.1μmol, OSu基:18.2μmol)と製造例1で得られたCP-OH (50.1mg, 17.9μmol)とをそれぞれ固体(粉末)の状態でサンプル管に入れて、さらにリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH=7.4)268μlを加えて、80℃の温浴に5秒浸漬後(ゲル化)、ボルテックスミキサーにより30秒間撹拌し、室温に戻す(ゾル化)する操作を3回繰り返し、溶解させた。1M NaOH 16μlを加えてpH=7.4に調整し、26.1wt%の混合ポリマー水溶液(最終濃度25.0wt%)を得た(以下、単に「ポリマー水溶液」とする。)。
【0158】
[製造例6]
ポリリシン溶液の調製
ポリアミン化合物としてポリリシン[Poly(L-Lysine)臭化水素酸塩 (Sigma Aldrich社製mol wt 1,000-5,000)] 6.5 mgをPBS (pH = 7.4) 40 μlで溶解させて、1M NaOH 5μlとを加えて、ポリリシン溶液( pH = 7.4, 0.144 mg/ml)を調製した。
【0159】
[製造例7]
比較例用ポリリシン溶液の調製
ポリアミン化合物としてポリリシン[(Poly(L-Lysine)臭化水素酸塩 (Sigma Aldrich社製mol wt 1,000-5,000)]32.9 mgをPBS(pH=7.4) 83 μlで溶解させて、1M NaOH 17μlとを加えて、ポリリシン溶液(pH = 7.4, 0.329 mg/ml)を調製した。
【0160】
[実施例1]
本発明の癒着防止材の製造
[工程(iii)]
上記製造例5で得られたポリマー溶液284 μl(OSu基:18.2 μmol)と上記製造例6で得られたポリリシン溶液18.0 μl(Poly(L-Lysine)臭化水素酸塩:2.51 mg)とを混合し、室温でボルテックスミキサーにより約10秒間撹拌することで、OSu基とNH
2基を約1:1の割合で含む癒着防止材1(302 μl)を調製した(Poly(L-Lysine):2.51 mg, 0.83 wt%)。
【0161】
[実施例2〜6]
第2成分である(2)反応性化合物の種類、及び癒着防止材中の(2)反応性化合物の含有量を表2のように代えた以外は、実施例1と同様にして、液体状の癒着防止材2〜6(実施例2〜6)を得た。
【0162】
<第2成分>
・Poly-L-lysine hydrobromide (分子量:4,000-15,000) [Sigma Aldrich社製]
・PEI(分子量:10,000) [和光純薬工業株式会社製]
・BSA(分子量:66,000) [和光純薬工業株式会社製]
・4-arm PEG-NH
2(分子量:5,140) (特開2013-227543号公報に記載の方法に従い製造)
4-arm PEG-NH2の製造
4-arm PEG-OH (商品名:SUNBRIGHT PTE-5000(登録商標)、分子量5,143、日油株式会社製) 1.2507 g (243 μmol) を110℃減圧条件下で2時間乾燥した。室温に冷却後、4-arm PEG-OHを脱水塩化メチレン10mlに溶解させ、この溶液にトリエチルアミン(TEA)1.1ml(7.8 mmol)を加えた。得られた混合溶液を氷冷下で撹拌しながら、ゆっくりとメタンスルホニルクロリド(MeSO
2Cl)300μl(3.9 mmol)を滴下した。氷冷下で2時間、次いで室温で10時間撹拌した後、エバポレーターにより溶媒を留去し、この濃縮物をクロロホルム5mlで再溶解させた。そして、貧溶媒にジエチルエーテル100mlを用い、再沈殿により精製し、得られた白色粉末を減圧乾燥した。そして、得られた粉末をアンモニア水50mlに溶解させ、室温で2日間撹拌した。撹拌後、塩化メチレン50mlで抽出して、有機層を回収し、エバポレーターで溶媒を除いた。得られた濃縮物を塩化メチレンに再溶解させ、貧溶媒にジエチルエーテルを用いて再沈殿させた。その沈殿物を濾過し、得られた粉末をクロロホルム5 mlに再溶解させ、貧溶媒にジエチルエーテル100 mlを用いて再沈殿を行った。その沈殿物を濾過し、得られた粉末を乾燥後、4-arm PEG-NH
2(収量: 0.38 g, 収率: 30%)を得た。
【0163】
[比較例1]
比較例1は、上記製造例5で得られたポリマー水溶液のみである。
【0164】
[比較例2]
上記製造例4で得られた比較ポリマー水溶液 292 μl(23.6 μmol)と製造例7で調製したポリリシン溶液7.6 μl(Poly(L-Lysine):2.51 mg)とを混合し、室温でボルテックスミキサーにより約10秒間撹拌することで、比較混合ポリマー溶液300 μlを調製した。
【0165】
[試験例1]
混合直後のゲル化の判定
表2に記載の第1成分を含むポリマー溶液と第2成分を含む溶液とを各々サンプル管(直径約1cm)中で混合し、室温で約10秒間撹拌した後、25℃で5分間放置し、試験管傾斜法により、混合直後にゾル状態であるか、又はゲル状態であるかを判断した。
【0166】
具体的には、所定温度で所定時間経過した後、上記サンプル管を約135度傾斜させ、約30秒の間に、流れなければ「ゲル」、流れたら「ゾル」と判断した。その結果は下記表2に示した。
【0167】
[試験例2]
水中におけるゲル状態の維持期間の評価
小サンプル管(内径約1cm)に入った実施例1〜6の混合ポリマー水溶液、比較例1の溶液及び比較例2の溶液をそれぞれ37℃で10分間インキュベートしてゲル化させた。その後、各サンプル管を、PBS (pH = 7.4, 37℃) 25 mlが入った大きなサンプル管(内径約3cm)にそれぞれ浸漬し、37℃の恒温槽で静置した。所定時間ごとに取り出し、試験管傾斜法により、水中における各溶液のゾル−ゲル転移の有無を調べた。
【0168】
具体的には、下記表2に記載の所定温度で所定時間経過した後、上記サンプル管を傾斜させ、約30秒の間に、流れなければ「ゲル」、流れたら「ゾル」と判断した。
【0169】
表2には、37℃で1分間加熱後の状態とゲル状態の維持期間(日)の結果を示した。
【0170】
【表2】
【0171】
<評価結果>
実施例1〜6で得られた癒着防止材は、室温(25℃)で第1成分と第2成分とを混合しただけではゾルの状態であり、さらに、実施例1では3日間4℃で放置してもゲル化は起こらず、ゾルのままであった。
【0172】
したがって、本発明の癒着防止材は、体温まで温度を上げなければ、ゲル化しないことが分かった。
【0173】
また、実施例1〜6で得られた癒着防止材は、37℃で1分間加熱した後、いずれもゲル化し、その後PBS中37℃で加温し続けたところ、ゲルの状態を1日から30日程度維持し続けた。
【0174】
一方、比較例1及び比較例2の溶液は、37℃で1分間加熱した直後にゲル化したものの、PBS中37℃で加温し続けたところ、ゲル状態を維持した期間は24時間未満であった。
【0175】
[試験例3]
温度低下によるゾル化の判定
実施例1〜6の癒着防止材、比較例1の溶液及び比較例2の溶液を、上記試験例2のように37℃に加温してゲル化させ、所定時間経過した後、ゲルの温度をそれぞれ4℃に下げた。それから1分間経過後に、各ゲルを試験管傾斜法により、その状態を調べた。
【0176】
具体的には、各試料の入ったサンプル管を傾斜させ、約30秒の間に、流れなければ「ゲル」、流れたら「ゾル」と判断した。
【0177】
【表3】
【0178】
<評価結果>
実施例1〜6の癒着防止材は、37℃で表3に記載した保持時間加温した後、温度を4℃に下げても、いずれもゲル状態を維持した(実施例1の癒着防止材については
図3参照。)。
【0179】
一方、比較例1及び2のゲルは、37℃で1分間又は1時間保持した後、温度を4℃に下げると、いずれもゾルに戻った。
【0180】
[実施例7]
CP-OSu/CP-OH + ポリリシン (1,000-5,000) 水溶液(25wt%, OH : OSu = 2 : 1、OSu : NH2 = 約1 : 1)調製方法
サンプル管に、製造例3で得られたCP-OSu 50.3 mg (9.1 μmol, OSu基: 18.0 μmol) と、製造例1で得られたCP-OH 50.1 mg (17.9 μmol, OH: 35.8 μmol) とを粉末の状態で加え、これにPBS (pH = 7.4, 10 mM) を268 μl滴下した後に室温でボルテックスミキサーにより約1分撹拌した。得られた溶液を約90℃の温浴に5〜10秒間浸漬し、ボルテックスミキサーにより約1分間撹拌した。その後、サンプル管を氷水に浸漬し、約10分間放置した。上記の加熱と撹拌の操作を2回繰り返し、均一に溶解したポリマー水溶液7を得た。このポリマー水溶液7(pH = 6.3)に1M NaOHを16 μl加えて、26.1 wt%ポリマー水溶液(CP-OSu/CP-OH) 284μlを得た。
【0181】
また、ポリリシン[Poly(L-Lysine)臭化水素酸塩(Sigma Aldrich社製、分子量1,000-5,000)]6.5 mgをサンプル管で秤量し、次いでこのサンプル管に40 μl PBS (pH = 7.4, 10 mM) を加えて、ソニケーターにより超音波照射を行うことで溶解させた。さらに、この溶液に、1M NaOH 5 μlを加えてpH値を調整し、ポリリシン(1,000-5,000)水溶液(0.144 mg/ml, pH = 7.4)を調製した。
【0182】
上記ポリマー水溶液(CP-OSu/CP-OH)284μlを、氷冷下で冷却後に撹拌し、攪拌中のポリマー水溶液に上記ポリリシン水溶液18.0 μl (2.51 mg)を加えて、ボルテックスミキサーにより約10秒間撹拌し、癒着防止材7(CP-OSu/CP-OH + ポリリシン水溶液, 25wt%, OH : OSu = 2 : 1, OSu基とNH
2基の割合が約 1 : 1)302 μlを調製した。
【0183】
[比較例3]
CP-OSu/CP-OH水溶液(25wt%, OH : OSu = 2 : 1)
上記実施例7で調製したポリマー水溶液7(pH = 6.3)に1M NaOHを加えてpH値を調整し、25.0 wt%ポリマー水溶液(pH = 7.4)を調製した。
【0184】
[比較例4]
CP-OH水溶液(25wt%)調製方法
製造例2で得られたCP-OH 100 mgを秤量し、PBS (pH = 7.4, 10 mM) を300 μl滴下した後、室温でボルテックスミキサーにより約1分撹拌した。そして、約90℃の温浴に5-10秒間浸漬し、ボルテックスミキサーにより約1分間撹拌した後で氷水に浸漬し、約10分間放置した。
【0185】
<実施例7、比較例3及び比較例4で使用したポリマー>
CP-OSu:両末端OSu化PCGA1.8k-b-PEG1.5k-b-PCGA1.8k(CL/GA = 3.6)、OSu基導入率: 約98%
CP-OH:PCGA1.8k-b-PEG1.5k-b-PCGA1.8k (CL/GA = 3.6) (25wt%:Tgel = 33℃)
[試験例4]
血球透過性(血球バリヤー性能)の評価
実施例7で得られた癒着防止材7について、牛血中に含まれる血球が癒着防止材又は比較ポリマー水溶液中を透過する時間を評価した。
【0186】
<血球透過試験の実験方法>
ろ紙(No.131, 125 mm)を直径1.0 cmに切り、PBS (pH = 7.4, 10 mM) に約5分間浸漬することで吸水させた。その濡れたろ紙をサンプル管No.01(株式会社マルエム製、内径15mm、高さ35mm)の底に置き、その上部に実施例7の癒着防止材溶液150 μlを滴下し、サンプル管外部を37℃の温浴に2分間浸漬することにより、ゲル化させた(中心部分のゲルの厚さの実測値: 約1 mm)。形成した膜状のゲル上部に、37℃に加熱した牛血を10 μl滴下し、サンプル管の蓋を閉じた。このサンプル管の外部を37℃の温浴に浸漬し、所定時間毎にサンプル管底のろ紙を底面側から観察し、ろ紙が赤くなった時間を血球透過時間と決定し、その結果を表4に示した。
【0187】
【表4】
【0188】
<評価結果>
本発明の癒着防止材(実施例7)は、血球透過時間が4日であった(
図4参照。)。癒着防止材について、一般に、72時間以内に損傷を受けた漿膜組織が再生することから、その期間、細胞の浸潤をバリアすれば、癒着防止機能を発揮できると考えられる。血球の大きさは細胞と同程度であることから、本発明の癒着防止材は、癒着防止材としての効果を十分に期待できるものであると推定される。
【0189】
[試験例5]
組織接着性試験
テフロン(登録商標)の板材A(縦30mm×横20mm×厚さ5 mm)と、板材の中央部分に縦10 mm×横10 mmの貫通穴を空けたテフロン(登録商標)の板材B(縦20mm×横20mm×厚さ5 mm)とを重ね合わせて接着させた板材AB(
図5のa参照)の穴に、鶏肝のブロック体(縦10 mm×横10 mm、厚さ 6 mm)を収容した試料Aを作製した。
【0190】
上記試料Aをサンプル管No.7(株式会社マルエム製、内径35mm、高さ78mm)に入れ、鶏肝の周りに、板材C(縦10mm×横10mm×厚さ3 mmの型)を置き、板材ABCとした。この板材ABCを平行に保った状態で、鶏肝表面に実施例7の癒着防止材(液体状)、比較例3のポリマー水溶液又は比較例4のポリマー水溶液を100 μl滴下し、平行状態のまま37℃で約15分間放置した(
図5のb〜f参照)。次に、板材Cを取り除き、ブロック体を含む板材ABを、直立させたサンプル管No.7の中で角度45°に固定した(
図5のg)。次いで、このブロック体を含む板材AB全体を37℃に加熱したPBS (pH = 7.4, 10 mM)25 mlで満たし、37℃恒温槽に放置した。その後、所定時間毎にゲルの状態を確認し、その結果を表5に示した。
【0191】
【表5】
【0192】
<評価結果>
実施例7の癒着防止材は、鶏肝表面に対する組織接着時間が8時間以上であった(
図6参照。)。
【0193】
一方、比較例3及び比較例4のポリマー水溶液は、1時間未満で鶏肝表面からほぼ剥がれることがわかった(
図7及び8参照。)。
【0194】
これより、本発明の癒着防止材(実施例7)は、比較例3及び比較例4のポリマー水溶液に比べて、ゲル化後における組織接着性の面でも非常に優れていることが確認された。