(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6562439
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】金属酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 35/00 20060101AFI20190808BHJP
C01B 13/18 20060101ALI20190808BHJP
C01G 33/00 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
C01G35/00 D
C01B13/18
!C01G33/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-100368(P2019-100368)
(22)【出願日】2019年5月29日
(62)【分割の表示】特願2019-49452(P2019-49452)の分割
【原出願日】2019年3月18日
【審査請求日】2019年5月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023415
【氏名又は名称】株式会社アサカ理研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 博人
【審査官】
佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−333006(JP,A)
【文献】
特開2001−192209(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/011373(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10023702(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00 − 99/00
C01B 13/18
C01F 1/00 − 17/00
B01J 20/00 − 20/28
B01J 20/30 − 20/34
F27D 17/00 − 99/00
B01D 53/00 − 53/12
B01D 53/34 − 53/85
B01D 53/96
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内の発熱体を備える壁面を除く他の少なくとも1つの壁面に沿ってケイ酸カルシウム板を着脱自在に備える加熱炉内で、フッ素を含有する金属水酸化物を焼成し、該金属水酸化物から気化するフッ素を該ケイ酸カルシウム板に吸着させ、該金属水酸化物よりもフッ素の含有量が低下した金属酸化物を得ることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属酸化物の製造方法において、前記金属水酸化物は、水酸化タンタル又は水酸化ニオブであることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉の壁面はリフラクトリ−セラミックファイバーを含む断熱材を備えることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の金属酸化物の製造方法において、前記リフラクトリ−セラミックファイバーは全量の30〜60質量%のAl2O3と、全量の40〜60質量%のSiO2とを含むことを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉は、1つの側面に開閉扉を備える一方、底面に前記発熱体を備える箱形炉であり、該底面と、天面と、該開閉扉を備える側面とを除く3つの側面に沿って前記ケイ酸カルシウム板を備えることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉は、1つの側面に開閉扉を備える一方、該開閉扉を備える側面を除く3つの側面に前記発熱体を備える箱形炉であり、底面又は、天面に沿って前記ケイ酸カルシウム板を備えることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載の金属酸化物の製造方法において、前記ケイ酸カルシウム板は、内側に補強部材を備えることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の金属酸化物の製造方法において、前記補強部材は炭化ケイ素板からなることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉は、電気炉であることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化タンタルの製造方法として、タンタルを含む鉱石を微粉砕した後、フッ酸に溶解し、硫酸を加えてフッ化タンタル酸(H
2TaF
7)を生成させ、該フッ化タンタル酸を4-メチル−2−ペンタノン(慣用名:メチルイソブチルケトン、MIBK)等の溶媒により抽出し、水に逆抽出した後、アルカリを添加して水酸化タンタル(Ta(OH)
5)とし、該水酸化タンタルから酸化タンタル(Ta
2O
5)を得る方法が知られている。
【0003】
ところで、前記水酸化タンタルは前記フッ化タンタル酸に由来するフッ素を含んでおり、酸化タンタルとしたときに該フッ素が残留していると、該フッ素により装置等が腐食されるという問題がある。
【0004】
そこで、前記水酸化タンタルを電気炉等の加熱炉で焼成して含有するフッ素を気化させる一方、脱水して前記酸化タンタルとする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3613324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水酸化タンタルを電気炉等の加熱炉で焼成して酸化タンタルとする方法では、該加熱炉が新しいうちは焼成後の酸化タンタルのフッ素の残留量を、例えば全量の5ppm未満として十分に少なくすることができる。
【0007】
しかしながら、前記水酸化タンタルの焼成を繰り返すと、焼成後の酸化タンタルのフッ素の残留量が次第に増加し、十分に少なくすることができなくなるという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、加熱炉を用いて前記水酸化タンタルの焼成を繰り返したときにも、焼成後の酸化タンタルのフッ素の残留量を十分に少なくすることができる金属酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、加熱炉を用いて水酸化タンタルの焼成を繰り返したときに、焼成後の酸化タンタルにおけるフッ素の残留量が次第に増加し、十分に少なくすることができなくなる理由について鋭意検討した。
【0010】
この結果、本発明者らは、水酸化タンタルから気化したフッ素が、前記加熱炉の壁面を構成する断熱材、例えば、全量の30〜60質量%のAl
2O
3と、全量の40〜60質量%のSiO
2とを含むリフラクトリ−セラミックファイバーに吸着されること、該断熱材に吸着されるフッ素の量が飽和に達するとそれ以上のフッ素が吸着されず、又は該断熱材からフッ素が脱着するために、焼成後の酸化タンタルにおけるフッ素の残留量が増加することを知見した。
【0011】
本発明者らは、前記知見に基づきさらに検討を重ねた結果、前記加熱炉内にケイ酸カルシウム板を配置することにより、前記断熱材から脱着するフッ素又は前記水酸化タンタルから気化するフッ素を該ケイ酸カルシウム板により吸着することができ、焼成後の酸化タンタルにおけるフッ素の残留量を十分に少なくすることができることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
そこで、前記目的を達成するために、本発明の金属酸化物の製造方法は、炉内の発熱体を備える壁面を除く他の少なくとも1つの壁面に沿ってケイ酸カルシウム板を着脱自在に備える加熱炉内で、フッ素を含有する金属水酸化物を焼成し、該金属水酸化物から気化するフッ素を該ケイ酸カルシウム板に吸着させ、該金属水酸化物よりもフッ素の含有量が低下した金属酸化物を得ることを特徴とする。
【0013】
本発明の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉の炉内の発熱体を備える壁面に沿って前記ケイ酸カルシウム板を配置すると、該発熱体により発生する熱の炉内への伝達が妨げられるので好ましくない。そこで、本発明の金属酸化物の製造方法では、前記加熱炉の前記発熱体を備える壁面を除く他の少なくとも1つの壁面に沿ってケイ酸カルシウム板を配置することにより、前記加熱炉の壁面を構成する断熱材から脱着するフッ素又は前記金属水酸化物から気化するフッ素を該ケイ酸カルシウム板により吸着することができ、焼成後の金属酸化物におけるフッ素の残留量を十分に少なくすることができる。
【0014】
また、本発明の金属酸化物の製造方法では、前記加熱炉において、前記ケイ酸カルシウム板は着脱自在とされているので、該ケイ酸カルシウム板がフッ素により飽和されたときには、新しいケイ酸カルシウム板と交換することによりその機能を維持することができる。
【0015】
本発明の金属酸化物の製造方法は、前記金属水酸化物が、水酸化タンタル又は水酸化ニオブである場合に好適に用いることができる。
【0016】
本発明の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉の壁面は、例えば、リフラクトリ−セラミックファイバーを含む断熱材を備えており、前記リフラクトリ−セラミックファイバーとしては、例えば全量の30〜60質量%のAl
2O
3と、全量の40〜60質量%のSiO
2とを含むものを挙げることができる。
【0017】
また、本発明の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉は、例えば、1つの側面に開閉扉を備える一方、底面に前記発熱体を備える箱形炉を挙げることができ、該箱形炉は、例えば、該底面と、天面と、該開閉扉を備える側面とを除く、他の3つの側面に沿って前記ケイ酸カルシウム板を備えている。また、本発明の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉は、例えば、1つの側面に開閉扉を備える一方、該開閉扉を備える側面を除く3つの側面に前記発熱体を備える箱形炉を挙げることもでき、該箱形炉は、例えば、底面又は、天面に沿って前記ケイ酸カルシウム板を備えている。
【0018】
また、本発明の金属酸化物の製造方法において、前記ケイ酸カルシウム板は、内側に補強部材を備えることが好ましく、前記補強部材として、例えば、炭化ケイ素板を用いることができる。
【0019】
また、本発明の金属酸化物の製造方法において、前記加熱炉としては、電気炉を好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の金属酸化物の製造方法に用いる加熱炉の一実施形態の構成を示す説明的平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の金属酸化物の製造方法に用いる加熱炉1は、箱形の電気炉であり、直方体のケース2の一方の側面に開閉扉3を備えている。
【0023】
ケース2の底面4を除く各壁面及び開閉扉5は内面側に断熱材5を備えている。断熱材5は、例えば、全量の30〜60質量%のAl
2O
3と、全量の40〜60質量%のSiO
2とを含むリフラクトリ−セラミックファイバーを含んでいる。
【0024】
また、ケース2の底面4の下部には発熱体6を収容するハウジング7が設けられている。発熱体6は、例えば、ニクロム線であり、図示しない電源に接続されて発熱し、加熱炉1内を加熱する。
【0025】
また、加熱炉1は、ケース2の底面4と天面8とを除く3つの側面に沿って、ケイ酸カルシウム板9が着脱自在に配置されている。ケイ酸カルシウム板9としては、厚さ5〜30mmのものをそのまま、又は適宜所要の大きさに合わせて切断加工して用いることができる。
【0026】
また、加熱炉1は、必要に応じてケイ酸カルシウム板8のさらに内側に、
図1及び
図2に仮想線で示す補強部材9を備えていてもよい。補強部材9としては、厚さ5〜30mmの炭化ケイ素板をそのまま、又は適宜所要の側面の大きさに合わせて切断加工して用いることができる。
【0027】
本実施形態の金属酸化物の製造方法では、加熱炉1を、水酸化タンタル又は水酸化ニオブ等のフッ素を含有する金属水酸化物の焼成に用いることができる。前記金属水酸化物は焼成により含有するフッ素が気化してフッ素の含有量が低下する一方、脱水により金属酸化物になる。
【0028】
このとき、前記フッ素は断熱材5に吸着されるが、断熱材5が該フッ素により飽和されると、前記焼成の際に断熱材5から脱着し、又は前記金属水酸化物から気化した該フッ素が前記金属酸化物に再吸収され、該金属酸化物の該フッ素の残留量を十分に少なくすることができなくなることが懸念される。
【0029】
しかし、本実施形態の金属酸化物の製造方法において、加熱炉1は、ケース2の底面4と天面7とを除く3つの側面に沿って、ケイ酸カルシウム板8が配置されているので、前記焼成の際に断熱材5から脱着し、又は前記金属水酸化物から気化した該フッ素をケイ酸カルシウム板8により吸着することができる。この結果、本実施形態の金属酸化物の製造方法によれば、前記金属酸化物の前記フッ素の残留量を十分に少なくすることができる。
【0030】
また、本実施形態の金属酸化物の製造方法において、加熱炉1は、ケイ酸カルシウム板8が着脱自在とされているので、ケイ酸カルシウム板8自体がフッ素により飽和されたときには、新たなケイ酸カルシウム板8と交換することによりその機能を維持することができる。
【実施例】
【0032】
本実施例では、開閉扉内面、底面及び天面を除く3側面に沿って、300mm×300mm×25mmのケイ酸カルシウム板を配置した電気炉(内法830mm×900mm×400mm)を用いて、850ppmの濃度のフッ素を含む水酸化タンタル10gを焼成して酸化タンタルを得た。
【0033】
前記焼成は、1000℃まで6時間で昇温し、1000℃に3時間保持した後、自然冷却することにより行った。焼成前の前記水酸化タンタルに含まれているフッ素の量と、焼成後の酸化タンタルに含まれているフッ素の量とをイオンクロマトグラフィー(メトローム社製、商品名:930コンパクトICFlex)により測定した。結果を表1に示す。
【0034】
〔比較例1〕
本比較例では、ケイ酸カルシウム板を配置しない電気炉を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、720ppmの濃度のフッ素を含む水酸化タンタル10gを焼成して酸化タンタルを得た。焼成前の前記水酸化タンタルに含まれているフッ素の量と、焼成後の酸化タンタルに含まれているフッ素の量とを実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0035】
〔実施例2〕
本実施例では、開閉扉内面、底面及び天面を除く3側面に沿って、300mm×300mm×25mmのケイ酸カルシウム板を配置した電気炉(内法830mm×900mm×400mm)を用い、実施例1と全く同一にして、638ppmの濃度のフッ素を含む水酸化タンタル10gを焼成して酸化タンタルを得た。焼成前の前記水酸化タンタルに含まれているフッ素の量と、焼成後の酸化タンタルに含まれているフッ素の量とを実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0036】
〔比較例2〕
本比較例では、ケイ酸カルシウム板を配置しない電気炉を用いた以外は、実施例2と全く同一にして、688ppmの濃度のフッ素を含む水酸化タンタル10gを焼成して酸化タンタルを得た。焼成前の前記水酸化タンタルに含まれているフッ素の量と、焼成後の酸化タンタルに含まれているフッ素の量とを実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から、内部にケイ酸カルシウム板を配置した加熱炉を用いる本実施形態の金属酸化物の製造方法によれば、内部にケイ酸カルシウム板を配置しない加熱炉を用いる場合に比較して、焼成後の酸化タンタルに含まれるフッ素濃度を十分に低くすることができることが明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1…加熱炉、 2…ケース、 3…開閉扉、 5…発熱体、 8…ケイ酸カルシウム板、 9…補強部材(炭化ケイ素板)。
【要約】
【課題】焼成後の金属酸化物のフッ素の残留量を十分に少なくすることができる金属酸化物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の金属酸化物の製造方法は、炉内の発熱体6を備える壁面4を除く他の少なくとも1つの壁面に沿ってケイ酸カルシウム板を着脱自在に備える加熱炉1内で、フッ素を含有する金属水酸化物を焼成し、該金属水酸化物から気化するフッ素を該ケイ酸カルシウム板に吸着させ、該金属水酸化物よりもフッ素の含有量が低下した金属酸化物を得る。
【選択図】
図1