特許第6562451号(P6562451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NECプラットフォームズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6562451-監視回路及び監視装置 図000002
  • 特許6562451-監視回路及び監視装置 図000003
  • 特許6562451-監視回路及び監視装置 図000004
  • 特許6562451-監視回路及び監視装置 図000005
  • 特許6562451-監視回路及び監視装置 図000006
  • 特許6562451-監視回路及び監視装置 図000007
  • 特許6562451-監視回路及び監視装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6562451
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】監視回路及び監視装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/18 20060101AFI20190808BHJP
   H03K 17/78 20060101ALI20190808BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H03K17/18
   H03K17/78 G
   G05B23/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-88949(P2015-88949)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-208332(P2016-208332A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】星 俊明
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−127449(JP,U)
【文献】 特開平5−242390(JP,A)
【文献】 実開昭63−142922(JP,U)
【文献】 特開2001−126573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B23/02
H01H9/54
H03K17/18
H03K17/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身が通電されているか否かに応じて、監視対象となる設備の状態を通知する状態通知回路と、
前記設備の状態の変化に応じて、前記状態通知回路の通電状態を切り替える切替回路と、
前記状態通知回路と直列に接続され、前記状態通知回路に流れる電流を調整する電流調整回路と、を備え、
前記電流調整回路は、抵抗とコンデンサとが並列に接続された回路であり、
前記抵抗の抵抗値は、前記コンデンサが定常状態となったときに前記状態通知回路に流れる電流の電流値が、前記状態通知回路が動作可能な最低限の電流値となるように定められた抵抗値である、
監視回路。
【請求項2】
前記切替回路は、前記設備が正常か否かに応じて、前記状態通知回路の通電状態を切り替え、
前記状態通知回路は、自身が通電されているか否かに応じて、前記設備の異常を通知する、
請求項1に記載の監視回路。
【請求項3】
前記コンデンサは、セラミックコンデンサである、
請求項2に記載の監視回路。
【請求項4】
前記コンデンサの静電容量は、100pF以下である、
請求項3に記載の監視回路。
【請求項5】
前記切替回路は、前記設備が異常である場合に、前記状態通知回路を通電し、前記設備が正常である場合には、前記状態通知回路を通電せず、
前記状態通知回路は、自身が通電されている場合に、前記設備の異常を通知する、
請求項1乃4いずれか1項に記載の監視回路。
【請求項6】
前記切替回路は、前記設備が正常である場合に、前記状態通知回路を通電し、前記設備が異常である場合には、前記状態通知回路を通電せず、
前記状態通知回路は、自身が通電されている場合に、前記設備が正常であることを通知する、
請求項1乃4のいずれか1項に記載の監視回路。
【請求項7】
監視対象となる設備の状態の変化に応じて通電状態が切り替えられ、自身が通電されているか否かに応じて、前記設備の状態を通知する状態通知回路と、
前記状態通知回路と直列に接続され、前記状態通知回路に流れる電流を調整する電流調整回路と、を備え、
前記電流調整回路は、抵抗とコンデンサとが並列に接続された回路であり、
前記抵抗の抵抗値は、前記コンデンサが定常状態となったときに前記状態通知回路に流れる電流の電流値が、前記状態通知回路が動作可能な最低限の電流値となるように定められた抵抗値である、
監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視回路及び監視装置に関し、特に、設備を監視する装置における回路に流れる電流を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、リレー接点の開閉状態を監視するデータ処理装置において、リレー接点とフォトカプラの発光側との間に過渡電流発生回路を設けることで、小さな消費電力で接点の状態を良好に維持できるようにする技術を開示している。
【0003】
この過渡電流発生回路は、コレクタがリレー接点の一方に接続された電流増幅用PNP型トランジスタと、このトランジスタのエミッタとフォトカプラの発光側との間に接続された電流制限抵抗と、フォトカプラの発光側と上記トランジスタのベースとの間に接続されたツェナーダイオードと、このツェナーダイオード及び上記トランジスタのベースに一端が接続され他端が抵抗を介してリレー接点の一方に接続されたコンデンサと、このコンデンサの他端とリレー接点の一方との間に接続されたダイオードと、上記トランジスタと並列に接続された電流制限抵抗とを備えている。
【0004】
特許文献1は、このような過渡電流発生回路を備えることにより、リレー接点が浄化作用を保つ最低レベルを上限値として、過渡的な電流を予め定められた時間接点に供給することができるようにしている。これにより、接点部で満足な接触を得られるようにして、低消費電力で且つ信頼度の高い接点入力回路が構成できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−142922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、リレー接点が浄化作用を保つ最低レベルを上限値として、過渡的な電流を予め定められた時間接点に供給することができるようにするために、過渡電流発生回路の回路構成が複雑となり、回路規模が増大してしまっているという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上述したような課題を解決するために、簡易な回路構成で、通電状態を切り替える回路における接触不良を防止することができる監視回路及び監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る監視回路は、自身が通電されているか否かに応じて、監視対象となる設備の状態を通知する状態通知回路と、前記設備の状態の変化に応じて、前記状態通知回路の通電状態を切り替える切替回路と、前記状態通知回路と直列に接続され、前記状態通知回路に流れる電流を調整する電流調整回路と、を備え、前記電流調整回路は、抵抗とコンデンサとが並列に接続された回路である。
【0009】
本発明の第2の態様に係る監視装置は、監視対象となる設備の状態の変化に応じて通電状態が切り替えられ、自身が通電されているか否かに応じて、前記設備の状態を通知する状態通知回路と、前記状態通知回路と直列に接続され、前記状態通知回路に流れる電流を調整する電流調整回路と、を備え、前記電流調整回路は、抵抗とコンデンサとが並列に接続された回路である。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明の各態様によれば、簡易な回路構成で、通電状態を切り替える回路における接触不良を防止することができる監視回路及び監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る遠方監視制御システムの構成図である。
図2】比較例に係る表示入力回路の構成図である。
図3】比較例に係る表示入力回路の電圧及び電流を示す図である。
図4】実施の形態に係る遠方監視制御装置の筐体を示す図である。
図5】実施の形態に係る表示入力回路の構成図である。
図6】実施の形態に係る表示入力回路の電圧及び電流を示す図である。
図7】実施の形態に係る遠方監視制御システムの通電パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。以下の実施形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、それに限定されるものではない。また、以下の記載及び図面では、説明の明確化のため、当業者にとって自明な事項等については、適宜、省略及び簡略化がなされている。
【0013】
<発明の実施の形態>
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る遠方監視制御システム1の構成について説明する。図1に示すように、遠方監視制御システム1は、制御所2と、複数の被制御所3とを有する。制御所2は、遠方監視制御装置10が設置される。複数の被制御所3のそれぞれは、遠方監視制御装置11と、被監視制御装置12と、電源13とが設置される。
【0014】
遠方監視制御システム1は、高速道路又は発電所などの様々なシステムの監視制御を行う。高速道路や発電所のような大規模なシステムでは、遠方監視制御装置10、11は、制御所2と被制御所3に別々に設置される。よって、小規模なシステムでは、遠方監視制御装置10、11は、同一の場所に設置されていてもよい。
【0015】
制御所2の遠方監視制御装置10は、伝送路を介して、各被制御所3の遠方監視制御装置11と通信することで、各被制御所3の遠方監視制御装置11及び被監視制御装置12を介して、監視及び制御の対象となる設備の状態監視および制御を行う。遠方監視制御装置10は、設備を制御する制御信号を、各被制御所3の遠方監視制御装置11に送信する。遠方監視制御装置10は、設備の状態を通知する状態信号を、各被制御所3の遠方監視制御装置11から受信する。
【0016】
被制御所3の遠方監視制御装置11は、電気回路を介して、被監視制御装置12と通信することで、監視及び制御の対象となる設備の状態監視および制御を行う。遠方監視制御装置11は、後述するように、被監視制御装置12との間にまたがる電気回路の通電状態に応じて、監視及び制御の対象となる設備の状態を通知する状態信号を、制御所2の遠方監視制御装置10に送信する。この電気回路は、「表示入力回路110」として、後述される。また、被制御所3の遠方監視制御装置11は、制御所2の遠方監視制御装置10から受信した制御信号に基づいて、被監視制御装置12を介して、監視及び制御の対象となる設備を制御することもできる。
【0017】
被監視制御装置12は、遠方監視制御装置11との間にまたがる電気回路の通電状態を切り替えることで、監視及び制御の対象となる設備の状態を遠方監視制御装置11に通知する。被監視制御装置12は、監視及び制御の対象となる設備における異常もしくは復旧を検出したときに、上述の電気回路の通電状態を切り替えることで、設備の異常もしくは復旧を遠方監視制御装置11に通知する。
【0018】
電源13は、遠方監視制御装置11に電源電圧を供給する。この電源13は、後述の電源111として機能する。
【0019】
例えば、遠方監視制御システム1が高速道路を監視するシステムである場合には、管制室が制御所2に該当し、料金所およびパーキングエリアなどが被制御所3に該当する。遠方監視制御装置10は、管制室の電気室に設置される。遠方監視制御装置11は、料金所およびパーキングエリアなどの電気室に設置される。被監視制御装置12は、料金所およびパーキングエリアなどの電気室に設置される。
【0020】
管制室の遠方監視制御装置10は、料金所およびパーキングエリアなどの遠方監視制御装置11を監視する。遠方監視制御装置11は、その遠方監視制御装置11と同一の被制御所3(料金所又はパーキングエリアなど)内に設置された被監視制御装置12を監視する。
【0021】
被監視制御装置12は、設備の異常を検出したときに、上述の電気回路の通電状態を切り替えることで、設備の異常を遠方監視制御装置11に通知する。ここで、設備の異常は、例えば、情報表示板の回路故障、及び、トンネルの火災発生検知器の異常検知などである。遠方監視制御装置11に通知された設備の異常は、遠方監視制御装置10に通知される。管制室では、遠方監視制御装置10は、遠方監視制御装置11からの設備の異常の通知に応じて、遠方監視制御装置10に接続された情報表示端末(例えば、パーソナルコンピュータなど)に設備の異常を表示する。情報表示端末に表示された設備の異常を確認したオペレータは、直ちに設備に向かい、保守作業を実施する。
【0022】
その後、被監視制御装置12は、設備の復旧を検出したときに、上述の電気回路の通電状態を切り替えることで、設備の復旧を遠方監視制御装置11に通知する。遠方監視制御装置11に通知された設備の復旧は、遠方監視制御装置10に通知される。遠方監視制御装置10は、遠方監視制御装置11からの設備の復旧の通知に応じて、情報表示端末に表示されていた設備の異常を消灯する。言い換えると、遠方監視制御装置10は、設備が正常であることを情報表示端末に表示する。これにより、管制室のオペレータは、情報表示端末の表示によって、設備の状態が復旧したことを認識する。
【0023】
続いて、本発明の実施の形態に係る表示入力回路110について説明する前に、図2を参照して、比較例となる表示入力回路100について説明する。
【0024】
図2に示すように、表示入力回路100は、電源111と、メカニカルリレー112と、フォトカプラ113と、抵抗114と、内部DI118とを有する。メカニカルリレー112は、被監視制御装置12に含まれ、フォトカプラ113、抵抗114及び内部DI118は、遠方監視制御装置11に含まれる。
【0025】
メカニカルリレー112に一端は、電源111のプラス端子と接続されている。メカニカルリレー112の他端は、フォトカプラ113のフォトダイオードの一端(アノード)と接続されている、フォトカプラ113のフォトダイオードの他端(カソード)は、抵抗114の一端と接続されている。抵抗114の他端は、電源111のマイナス端子と接続されている。すなわち、表示入力回路100は、メカニカルリレー112と、フォトカプラ113と、抵抗114とが直列に接続された回路となる。
【0026】
フォトカプラ113のフォトトランジスタのコレクタは、内部DI118と接続されている。フォトカプラ113のフォトトランジスタのエミッタは、アースと接続されている。
【0027】
電源111は、表示入力回路100に電圧を供給する。ここでは、電源111が100Vの直流電圧を供給する例について説明する。よって、メカニカルリレー112がオンとされている間、表示入力回路100では、メカニカルリレー112、フォトカプラ113、抵抗114の順に直流電流が流れる。
【0028】
メカニカルリレー112は、メカニカルリレー112の端子間の接続(オン)および非接続(オフ)を切り替える回路である。メカニカルリレー112の端子間が接続状態とされることで、表示入力回路100に直流電流が流れ、メカニカルリレー112の端子間が非接続状態とされることで、表示入力回路100に直流電流が流れないようにされる。
【0029】
メカニカルリレー112は、被監視制御装置12が設備の異常を検出したときに、被監視制御装置12によってオンにされる。メカニカルリレー112は、被監視制御装置12が設備の復旧を検出したときに、被監視制御装置12によってオフにされる。言い換えると、メカニカルリレー112は、被監視制御装置12が設備が異常であると判定している間は、被監視制御装置12によってオンにされる。一方、被監視制御装置12が設備が正常であると判定している間は、被監視制御装置12によってオフにされる。
【0030】
フォトカプラ113は、フォトダイオード(発光ダイオード、発光素子)と、フォトトランジスタ(受光素子)とを有する。メカニカルリレー112がオンにされ、フォトカプラ113のフォトダイオードに電流が流れている間、フォトダイオードが発光する。フォトダイオードが発光すると、フォトカプラ113のフォトトランジスタは、フォトカプラ113のフォトダイオードが発光した光の受光に応じて、そのコレクタからエミッタに向けて電流を流す。これにより、内部DI118に電流が流され、内部DI118が動作する。メカニカルリレー112がオフにされ、フォトカプラ113のフォトダイオードに電流が流れていない間は、フォトダイオードは発光しない。この場合、フォトカプラ113のフォトトランジスタ、及び内部DI118には電流は流れず、内部DI118は動作しない。
【0031】
抵抗114は、表示入力回路100に流れる電流を調整するための抵抗である。ここでは、抵抗114が2000Ωである例について説明する。
【0032】
内部DI118は、フォトカプラ113のフォトトランジスタによって電流が流されているか否かに応じて、監視及び制御の対象となる設備の状態を通知する回路である。内部DI118は、フォトカプラ113のフォトトランジスタによって内部DI118に電流が流されている間、設備の異常を通知する状態信号を、遠方監視制御装置10に送信する。内部DI118は、フォトカプラ113のフォトトランジスタによって内部DI118に電流が流されていない間は、設備の異常を通知する状態信号を、遠方監視制御装置10に送信しない。
【0033】
図2に示す表示入力回路100において、電源111の電圧値をE、フォトカプラ113の抵抗値をR、抵抗114の抵抗値をRとすると、表示入力回路100全体に流れる電流値Iは以下の式で求められる。
【0034】
I=E/(R+R
【0035】
ここで、フォトカプラ113の抵抗Rを0Ωとして、上記の式を計算すると、表示入力回路100に流れる電流は以下のようになる。
【0036】
I=100(V) / 2000(Ω) = 0.05(A) = 50(mA)
【0037】
計算の結果から、図3に示すように、表示入力回路100全体の電流は、50mAで一定することがわかる。よって、表示入力回路100における消費電力は、100V×50mA=5Wとなる。
【0038】
しかしながら、遠方監視制御装置11は、図4に示すように、JEM規格(日本電機工業会規格)によって、そのサイズと合計消費電力とが決定されている。JEM規格では、遠方監視制御装置11は、最大の合計消費電力が500Wまでと定められている。なお、サイズは、幅700mm、高さ2300mmと定められている。
【0039】
よって、図2に示す表示入力回路100を遠方監視制御装置11に実装する場合には、表示入力回路100を、100個までしか実装できないことになる。
【0040】
ここで、抵抗114の抵抗を大きくし、表示入力回路100に流れる電流を小さくすることで、表示入力回路100における消費電力を低減して、より多くの表示入力回路100を実装することが可能となる。しかしながら、メカニカルリレー112をオンにして通電時に流れる電流がある程度大きくなければ、メカニカルリレー112の酸化による接触不良を防止することができないという問題がある。一方で、上述したようにJEM規格によって遠方監視制御装置11の消費電力の上限値は制限されているため、表示入力回路100に流れる電流を大きくしてしまうと、遠方監視制御装置11に実装できる表示入力回路100の数が少なくなってしまうという問題がある。
【0041】
以下、本発明の実施の形態に係る表示入力回路110として、そのような問題を解決する表示入力回路110について説明する。
【0042】
続いて、図5を参照して、本発明の実施の形態に係る表示入力回路110について説明する。なお、説明の簡略化のため、図2に示す表示入力回路100と同様の内容については、適宜、その説明を省略する。
【0043】
図5に示すように、表示入力回路110は、図2に示す表示入力回路100と比較して、さらに、電流調整回路117を有している。電流調整回路117は、フォトカプラ113と抵抗114の間に接続されている。電流調整回路117は、遠方監視制御装置11に含まれる。
【0044】
すなわち、表示入力回路110は、メカニカルリレー112と、フォトカプラ113と、電流調整回路117と、抵抗114とが直列に接続された回路となる。よって、メカニカルリレー112がオンとされている間、表示入力回路110では、メカニカルリレー112、フォトカプラ113、電流調整回路117と、抵抗114の順に直流電流が流れる。
【0045】
電流調整回路117は、表示入力回路110の通電直後には表示入力回路110に最大の電流を流し、時間の経過とともに表示入力回路110に流れる電流を徐々に低下させた後、一定の電流値を維持する回路である。より具体的には、電流調整回路117は、抵抗115と、コンデンサ116とが並列に接続された回路である。ここでは、抵抗115が18000Ωである例について説明する。
【0046】
電流調整回路117は、通電時にはコンデンサ116に電荷が溜まっておらず、電流調整回路117のインピーダンスは0Ωとなる。このときには、表示入力回路110は、図2に示す表示入力回路100と等価となり、表示入力回路110に流れる電流は、図3に示す場合と同様に50mAとなる。
【0047】
時間が経過し、コンデンサ116の電荷量が最大になると、電流調整回路117のインピーダンスは、抵抗115の抵抗値となる。よって、表示入力回路110に流れる電流値は、図3に示す電流値よりも低い一定値が維持される。すなわち、コンデンサ116に溜まっている電荷量に応じて、電流調整回路117のインピーダンスが変化し、表示入力回路110全体の電流が変化する。
【0048】
図5に示す表示入力回路110において、電源111の電圧値をE、フォトカプラ113の抵抗値をR、抵抗114の抵抗値をR、電流調整回路117のインピーダンスをZとした場合に、フォトカプラ113の抵抗Rを0Ωとすると、表示入力回路110全体の抵抗Rの抵抗は以下の式で求められる。
【0049】
=R+Z
【0050】
コンデンサ116の静電容量をC、抵抗115の抵抗値をR、周波数をfとすると、電流調整回路117のインピーダンスZは以下の式で求められる。
【0051】
Z=1/√((1/R+(2πfC)
【0052】
表示入力回路110に流れる電流は直流電流であるため、通電時の周波数を無限大とすると、電流調整回路117のインピーダンスZは0Ωに近くなる。よって、通電時の電流は50mAとなる。
【0053】
時間が経過し電荷が最大まで溜まると、コンデンサ116に対して電流は流れなくなり、周波数は0Hzに近くなる。これによって、電流調整回路117のインピーダンスZは、抵抗115の抵抗値である18000Ωとなる。よって、電荷が最大まで溜まった場合の電流は以下のようになる。
【0054】
I=100(V)/(2000+18000)(Ω)=0.005(A)=5(mA)
【0055】
計算の結果から、電荷が最大に達した以降は5mAで一定することがわかる。すなわち、表示入力回路110全体の電流は、図6に示すように遷移する。
【0056】
(1)通電時は、コンデンサ116の電荷が溜まっていないため、電流調整回路117のインピーダンスは0Ωとなる。このため、図6に示すように、通電時の表示入力回路110全体の電流は、図4に示す場合と変わらない。
(2)時間が経過し、コンデンサ116の電荷が最大になり、コンデンサ116が過渡状態から定常状態に遷移すると、電流調整回路117のインピーダンスは抵抗115の抵抗値に安定する。このため、電流調整回路117全体の電流値を、一定の低電流値に安定させることができる。
【0057】
ここで、図6では、通電時の時間をAで示し、コンデンサ116の電荷が最大となった時間をBで示している。時間Aでは、電流調整回路117全体の電流の大きさは、図3に示す場合と変わらないが、時間Aから時間Bの間は徐々に低下し、時間B以降は、約5mAで安定している。
【0058】
続いて、図5に示す表示入力回路110において、定常状態になるまでの時間を求める。抵抗114の抵抗値をR、抵抗115の抵抗値をR、コンデンサ116の静電容量をCとすると時定数は以下の式で求められる。
【0059】
τ=C・R・R/(R+R
【0060】
この式から時定数τは、コンデンサ116の静電容量Cが1pFの場合、以下のようになる。
【0061】
τ=C・R・R/(R+R
=1・10−12・2000(Ω)・18000(Ω)/(2000+18000)(Ω)
=1.8・10−9
【0062】
また、過渡現象において電流は5τほど時間が経過したところで安定する。この時間を定常状態までの時間とすると、以下のように求められる。
【0063】
t=5・1.8・10−9=9.0・10−9[秒]
【0064】
よって、コンデンサ116の静電容量が1pFの場合、9.0・10−9秒で定常状態となる。
【0065】
ここで、セラミックコンデンサで、静電容量が大きいものの場合(C=100pF)の時定数は100倍となる。この場合、定常状態となるまでの時間は9.0・10−7秒となる。しかしながら、この場合であっても、極めて小さい値となるので、コンデンサ116として静電容量が大きいセラミックコンデンサを使用しても問題ない。また、以上に計算したように、そのセラミックコンデンサの静電容量が100pF以下であれば、十分に問題のない時間で表示入力回路110における電流を定電流とすることができる。
【0066】
すなわち、好ましくは、コンデンサ116として使用するコンデンサは、使用可能な電圧、単価の安さ、静電容量の小ささを考慮しセラミックコンデンサを使用するとよい。セラミックコンデンサは、耐圧25V〜20KVで、静電容量は1〜100pFのものが一般的に使用されている。
【0067】
異常に説明したように、図5に示す表示入力回路110の電流は、時間が経過すると、図2に示す表示入力回路100と比較して10分の1となる。そのため、図5に示す表示入力回路110は、遠方監視制御装置11に対して、図2に示す表示入力回路100よりも、10倍の個数を実装することができる。よって、10倍の状態信号の伝達が可能となる。
【0068】
ここで、図5に示す表示入力回路110は、通電時には、図2に示す表示入力回路100と変わらないことから、その実装数を増やした場合には通電時の消費電力合計の大きさはJEM規格で規定された500Wを超えてしまう。そのため、低電流に安定するまでの時間が長いと表示入力回路110全体の温度が上ってしまうようにも思える。しかしながら、本実施の形態では、上述したようにコンデンサ116として静電容量がとても小さいものを使用しているため、コンデンサ116の電荷量が最大になるまでの時間を短くすることができる。このように、温度上昇する前に低電流に安定するため、通電時の電流の大きさは、図2に示す表示入力回路100と変わらなくても問題ない。
【0069】
第1の効果は、本実施の形態に係る表示入力回路110は通電時の電流の大きさが、比較例に係る表示入力回路100と変わらないことである。その理由は、 通電時はコンデンサ116に電荷が溜まっていないため、電流調整回路117のインピーダンスが0Ωとなるためである。これによれば、通電時に流れる電流を大きくし、メカニカルリレー112の酸化による接触不良を防止することができる。
【0070】
第2の効果は、時間の経過とともにとともに表示入力回路110全体の電流を徐々に低下させて、最終的に一定の低電流を維持できることである。その理由は、時間が経過し、コンデンサ116の電荷が最大になると、電流調整回路117のインピーダンスが抵抗115の抵抗値に安定するためである。これによれば、表示入力回路110及びそれが実装された遠方監視制御装置11の温度上昇を抑制し、故障などを防止することができる。
【0071】
第3の効果は、図3に示す遠方監視制御装置11に実装できる表示入力回路の数を増加できることである。その理由は、本実施の形態に係る表示入力回路110全体の電流が、比較例に係る表示入力回路100の10分の1になったことに伴い消費電力も10分の1となったため、JEM規格を遵守しつつも、図3に示す遠方監視制御装置11に実装できる表示入力回路の数が10倍になったためである。
【0072】
以上に説明したように、本実施の形態では、メカニカルリレー112およびフォトカプラ113において必要な電流の大きさが異なる点に着目し、通電時にメカニカルリレー112に流れる電流は高電流とし、時間の経過とともに表示入力回路110全体の電流を一定の低電流に安定させる方法を提案した。電気回路の分野で、この目的を実現できるのは、過渡現象を利用するのが唯一の手段として挙げられる。電気回路で過渡現象を発生させるのはコンデンサもしくはコイルを用いた回路になるが、通電時の電流が時間の経過とともに減少し低電流に安定するものはコンデンサを用いた回路のみになる。コイルを用いた回路の場合、電流0mAから時間経過とともに上昇し、電流が一定の高電流に安定する。すなわち、コイルを用いた回路の場合、電流の大きさがコンデンサとは逆に推移してしまう。そのため、本実施の形態では、コンデンサ116による過渡現象を利用している。
【0073】
また、コンデンサを用いた過渡現象はコンロやストーブの着火、カメラのフラッシュ発光など通電時の電流の大きさが利用されることが一般的であるが、本実施の形態では通電時の電流のみならず定常状態に電気回路を流れる電流も信号の通信に利用している点が異なる。
【0074】
<発明の実施の形態の変形例1>
図5に示す表示入力回路110において抵抗115の抵抗値をより大きくした場合にも、フォトカプラ113が動作可能な電流を下回らない限り、電流を低下させることで消費電力を低下させることができる。これによって、より多くの回路を実装することができる。
【0075】
例えば、フォトカプラ113が動作可能な電流(動作に必要な最低限の電流)が2mAとすると、抵抗115で使用できる最大の抵抗値は以下の式で求められる。
【0076】
R=(100(V)/0.002(A))−2000(Ω)=48000(Ω)
【0077】
上記式で算出した抵抗値を、図5に示す表示入力回路110に適用して、時間経過後もフォトカプラ113が動作可能な電流が流れることを確認すると以下となる。
【0078】
Z=1/√((1/R+(2πfC))=
=1/√((1/48000)+(2π・0・C)
=48000(Ω)
【0079】
I=100(V)/(2000+48000)(Ω)
=0.002(A)=2(mA)
【0080】
よって、フォトカプラ113が動作可能な最低限の電流に基づいて算出した抵抗値を持つ抵抗を、図5に示す表示入力回路110における抵抗115として使用すると、図2より25倍の回路を実装することができることがわかる。このように、表示入力回路110における抵抗115の抵抗値は、上述した実施の形態の例(18000Ω)に限られない。
【0081】
また、このように、電流調整回路117が定電流となった場合(そのコンデンサ116が定常状態となった場合)における電流の電流値が、フォトカプラ113が動作可能な最低限の電流値となるように、電流調整回路117の抵抗115の抵抗値を定めることで、遠方監視制御装置11に対して、より多くの表示入力回路110を実装できるようにすることができる。
【0082】
<発明の実施の形態の変形例2>
また、上述の実施の形態では、図7の左図に示すように、異常発生時にメカニカルリレー112をオンにして通電し、通常時にメカニカルリレー112をオフにして通電しないようにしていたが、これに限られない。図7の右図に示すように、異常発生時にメカニカルリレー112をオフにして通電しないようにし、通常時にメカニカルリレー112をオンにして通電するようにしてもよい。なお、図7では、フォトカプラ113及び電流調整回路117(抵抗115、コンデンサ116)の図示は省略している。
【0083】
これは、例えば、被制御所3の遠方監視制御装置11自身の電源装置13の故障状態も監視する場合に有効である。通常時は、メカニカルリレー112を常時オンにして、表示入力回路110を通電状態にして内部DI118に電流を流し、内部DI118は、正常状態を通知する状態信号を、制御所2の遠方監視制御装置10に送信し続ける。この場合、制御所2では、遠方監視制御装置10は、正常状態を通知する状態信号の受信に応じて、遠方監視制御装置10に接続された情報表示端末に、被制御所3の遠方監視制御装置11の電源装置13の状態が正常であることを表示してもよい。
【0084】
一方、被制御所3の遠方監視制御装置11の電源装置13が故障となった場合は、電流を流せなくなるため、内部DI118は、正常状態を通知する信号を、制御所2の遠方監視制御装置10に送信できなくなる。この場合、制御所2の遠方監視制御装置10は、正常状態を通知する状態信号を受信できなくなるため、遠方監視制御装置10に接続された情報表示端末で、被制御所3の遠方監視制御装置11の電源装置13の状態が異常であることを表示するようにしてもよい。
【0085】
<発明の他の実施の形態>
また、遠方監視制御装置11内にパルス信号入力回路を実装する場合にも、パルス信号入力回路が図2に示す表示入力回路100と同様な回路であるため、本発明を適用することができる。
【0086】
すなわち、本発明を適用したパルス信号入力回路が表示入力回路110と異なる点は、フォトカプラ113のフォトトランジスタが出力する電流がパルス信号として扱われる点である。パルス信号は、単位時間当たりに電流を通電した回数を計測する用途に使われる。
【0087】
遠方監視制御システム1が、時間雨量の監視するシステムである例を挙げて説明すると、監視対象の設備となる雨量計の受水器が一定量を超えたときに溜まっている雨水が排出される。雨水が排出されたタイミングで雨量計に実装されている回路が通電され、排出が終わると通電をやめる。すなわち、この回路は、表示入力回路110(パルス信号入力回路)における被監視制御装置12側の回路として機能する。このように、監視対象となる設備が被監視制御装置12を兼ねていてもよい。通電してから非通電に切り替わることで、遠方監視制御装置11からパルス信号が出力されて、遠方監視制御装置10で、そのパルス信号の数が、雨量計の受水器が一定量を超えた回数として計上される。また、遠方監視制御装置10は、受水器の一定量と、一時間あたりに通電された回数(パルス信号が入力された回数)で時間雨量を算出する。例えば、遠方監視制御装置10は、受水器の一定量を0.5mm、一時間あたりに6回排出された(パルス信号を6つ受信した)とすると、時間雨量を3.0mmとして算出する。
【0088】
このように、パルス信号は通電もしくは非通電の切り替えによって発生する信号となるため、パルス信号入力回路の構造は表示入力回路110と同様になる。また、このように、表示入力回路110によって通知される設備の状態は、設備が異常であるか否かのみに限られない。
【0089】
以上に説明したように、本実施の形態に係る表示入力回路110(監視回路)は、自身が通電されているか否かに応じて、監視対象となる設備の状態を通知する状態通知回路(フォトカプラ113及び内部DI118)と、設備の状態の変化に応じて、状態通知回路の通電状態を切り替える切替回路(メカニカルリレー112)と、状態通知回路と直列に接続され、状態通知回路に流れる電流を調整する電流調整回路117とを備えている。そして、電流調整回路117は、抵抗115とコンデンサ116とが並列に接続された回路である。
【0090】
これによれば、上述したようにコンデンサ116による過渡現象を利用して、通電直後におけるコンデンサ116の過渡状態では表示入力回路110に流れる電流を高電流として切替回路の接触不良を防止し、その後のコンデンサ116の定常状態では表示入力回路110に流れる電流を低電流とすることができるため、装置に実装できる表示入力回路110を増加することができる。
【0091】
ここで、電流調整回路117は、抵抗115とコンデンサ116とが並列に接続された回路構成とされている。すなわち、本実施の形態によれば、簡易な回路構成で、通電状態を切り替える回路(メカニカルリレー112)における接触不良を防止することができる。これは、本願発明者が、このような回路構成によって一時的に高電流が発生した場合であっても、温度上昇などの問題がないことを見出したことで得られた構成である。また、好ましくは、上述したように、コンデンサ116として、セラミックコンデンサを利用するとよい。また、さらに好ましくは、上述したように、そのセラミックコンデンサの静電容量が100pF以下であるとよい。
【0092】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 遠方監視制御システム
2 制御所
3 被制御所
10、11 遠方監視制御装置
12 被監視制御装置
13 電源
100、110 表示入力回路
111 電源
112 メカニカルリレー
113 フォトカプラ
114、115 抵抗
116 コンデンサ
117 電流調整回路
118 内部DI
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7